本発明は、生分解性有機物を含む浄化液を地盤に注入し、土壌・地下水の汚染物質の濃度を低減し浄化する原位置浄化工法に関するものである。
土壌・地下水の環境汚染を浄化する技術の一つとしてバイオレメディエーションがある。バイオレメディエーションは、微生物を活性化する栄養剤溶液(以下、「浄化液」という)を地中の対象範囲に浸透させる工法である。
バイオレメディエーションによる原位置浄化工法は、浄化液を注入管を通して汚染地盤に注入し、原位置で土壌・地下水の汚染物質の濃度を低減し浄化することを目的とする。
従来の薬液注入工法としては地中に建て込んだ注入管を介して地盤固結材を加圧注入するダブルパッカ工法等がある。
従って、当然、浄化液を地盤に注入するために従来用いられている注入工法を適用することが考えられるが、本出願人の研究によればこれらの従来の加圧注入工法を用いたのでは浄化液が注入対象範囲外へ逸脱して、原位置浄化を行うことが難しいことが判った。その理由は浄化液がグラウトのような固結性がないことにあることを本出願人は見出した。
ダブルパッカ工法は、一つの注入管に注入用スリーブが33cm毎に複数設けられており、構造的に注入はスリーブごとの注入となる。注入箇所は、深い箇所のスリーブの注入から一つずつ浅い箇所へ移る。薬液注入ではグラウトがゲル化するためにこのような手法で注入効果が得られた(図10参照)。
ゲル化を伴う注入液(グラウト材)に、浄化材を加えて、浄化材をゲル中に包含して重金属を無害化する方法(特許文献1)等があるがバイオレメディエーションのようにゲル化を伴わない栄養剤溶液を用いる場合は、ゲル化剤の存在下ではゲルの存在のために直接浄化材が汚染物に作用しにくいことや浸透性の大きい層に注入液が先行して浸透して固化するため、細粒土の汚染地盤への浄化液の浸透が困難になる問題があった。
また、浸透ステージを引上げながらステージ毎に行った場合、注入時間がかかり、特に地表面方向に移向しやすく、割裂注入が生じ所定の層毎の土粒子間浸透が行われ難いという問題がある。また、地盤は砂質やシルト、粘土といった土質の異なる層が幾重にもなる互層であることが多く、汚染物が蓄積している細粒土層では割裂注入してしまい浄化液が浸透しにくいという問題があった。
特開2012−228685号公報
特許第4848553号公報
特許第3455952号公報
特許第3724644号公報
特許第5092103号公報
特許第3762353号公報
バイオレメディエーションにおいて、浄化液は微生物の栄養剤を水に溶かした非固化性水溶液であり、粘性や地中の挙動は水とほとんど同じである。ところで、このような浄化液は固結性がないため、地中に注入すると透水性が高い箇所へ流れ、地盤が互層の場合、シルト・粘土質には浸透させることが困難である。また、浄化液自体は土質の透水性に影響を及ぼすことなく、注入圧力により地下水と共に移動する。
一方、ゲル化を伴うグラウト材は、注入から一定時間後に固結する。透水性が高い土質にはグラウト材が浸透しやすいため、グラウト注入後は周辺と相対して透水性が低くなる。このため固結性グラウト材では、注入材料が土質の透水性に影響する点で非固化性浄化材とは大きな違いがある。そして地盤固結工法では砂地盤等透水性の大きな土層が固結止水されれば、それにて目的は達した。
しかし、このようなゲル化を伴うグラウトと共に浄化液を併用すると透水性に影響し、汚染物質が蓄積されやすい細粒土層への浸透が不十分となるという問題があった。
また、汚染領域におけるゲルの存在は、ゲルが不透水性であるため、ゲル化した浄化液中の浄化材が汚染物質に効果的に作用しにくいという問題がある。
一方、硬化性のない浄化液は注入するとゲル化しないため、どこまでも浸透してしまい、粗い層や層境に沿って逸脱しやすく、同時に汚染物質も押し出してしまう或は汚染物質が蓄積されやすい細粒土地盤には浸透しにくく原位置浄化が困難である。
例えば、図10に示すようなダブルパッカ工法での注入は、一つの注入管において一深度(通常33cm)ごとの注入となるが、任意の注入ステージ(吐出口)で注入(通常毎分吐出量10リットル〜15リットル)した後、次の箇所の注入ステージ(吐出口)に移動して注入する際に、当該注入の圧力によって先行して注入した浄化液を押し出すため、浄化液が粗い土層へ移向し、それに伴って汚染物質が押し出されて拡散しやすく、また細粒土中の汚染物質に浄化液が作用しにくいという問題がある。
また、ゲル化を伴うシリカグラウトと浄化材を併用して注入した場合(特許文献1、3)、ゲル化した浄化液中の浄化材が汚染物質に効果的に作用しない、あるいはゲルの存在により土中の微生物の活性化が阻害されるという問題がある。また、ゲル化を伴わない浄化材を注入した場合、浄化材が浸透しやすい土層に逸脱して汚染物の分布している地盤への浄化液の浸透が不十分となる。このため微生物の活性の環境が十分に整わず、汚染物質の濃度低減が進まないという問題が生ずる。
また、自然注入は、帯水層の深度に有孔管またはスリットを設けた井戸を介して、地上から浄化液を重力によって地中に浸透させる方法であるが、自然注入では、透水性の良い土質に浄化液は浸透するものの、シルト・粘土質では浸透しないという問題がある。
このように、従来技術の課題は、浄化液の浸透が不十分な箇所が生じて原位置浄化がしにくいという点にある。
従ってバイオレメディエーション等の実施にあたっては、以下の課題を解決することが要求される。
(1) 固結性のない浄化液を割裂して地表面に逸脱させることなく、汚染物質のある所定の位置にとどめて原位置浄化するためには低圧で土粒子間浸透させなくてはならない(図1参照)。
(2) 汚染物質は粒子の小さいシルト・粘土質に吸着され、シルト・粘土層に高濃度で存在するため、浄化液は透水性の悪い層にも浸透することが必要である。
(3) 地盤は、砂質やシルト、粘土といった土質の異なる層が幾重にもなる互層であることが多い。このため異なる土層にもそれぞれ浸透することが必要である。
(4) 汚染の分布は、平面・深度方向に濃淡があるため、適切な浄化にあたって汚染の分布・濃度に応じた浄化液を浸透させることが要求される。
(5) 汚染が濃い箇所には、確実に浄化液を浸透させることが重要である。
(6) 上述したように、図8の注入方法は勿論のこと、特許文献1、2、3、4に記載の注入方法ではゲル化を伴うため浄化の反応が不十分であり、一方上記反応性のない浄化材では、浄化液は所定の領域に浸透保持されないため、汚染物質も注入圧で原位置以外のところに押し出されてしまう。従って汚染物質が存在する汚染物質を移動させることなく、原位置で土粒子間浸透する限界圧力内の注入速度で浄化材を注入して浄化することが必要である。そのための注入速度は1〜6リットル/分程度である(図1、図2参照)。
(7) 汚染地盤に注入された浄化液が土粒子間浸透するためには、極めて低圧で注入しなくてはならないが、その場合施工時間が長くなりすぎるため、施工能率を上げなくてはならないから、複数の注入管からの同時注入する必要がある(図2参照)。
非固結性の浄化液を細粒土まで浸透させるには、注入の対象となる図2(b)の地盤条件で図1の土粒子間浸透限界内に注入するには、1箇所の吐出口から1〜6リットル/minであることが判った。これを経済速度で施工するには図2(a)から吐出口を複数設け或は注入管を注入細管とし、それを吐出口が異なる位置になるように複数の細管を結束して結束細管とすることにより、或はこれらの注入管を複数の注入削孔中に設けて同時注入することによって解決することができる。
本発明は従来技術における上述のような課題を解決することを目的としたものである。
本発明は、地盤中に設けた注入管から原地盤の微生物を活性化する栄養剤溶液(浄化液)を注入して汚染されている地盤を浄化する多点注入による原位置浄化工法であって、生分解性有機物を含む浄化液を汚染地盤に設けた複数の注入管から同時に注入することで、各注入管からの浄化液の流れを各注入管が受け持つ所定の領域ごとに相互に拘束し、浄化液の作用により汚染物質を浄化することを特徴とするものである。
本発明において、有害物を含む土または廃棄物中に、浄化液を複数の注入口から同時に土粒子間浸透させることにより所定の領域に拘束して、有害物や廃棄物を浄化することにより汚染領域の拡散を防ぐとともに、上述した方法により土壌浄化液を注入することにより、所定の領域に限定して浄化液を浸透させて汚染物を原位置で浄化することができ効果的である。
本発明における有害物とは、6価クロム、水銀、鉛、カドミウム等の重金属、土木工事等によって発生する廃泥土、焼却灰、汚泥、産業廃棄物、環境ホルモン、農薬残留物、有機溶剤、有機洗剤等の有機化合物、ダイオキシン等人体や環境に悪影響を及ぼす有害物を含む地盤であり、例として、アルキル水銀、総水銀、カドミウム、鉛、有機リン、六価クロム、ヒ素、シアン、PCB、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメ
タン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、13−ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン等が挙げられる。
バイオレメディエーションでの微生物による分解例としては、一例を示すと次のとおりである。
産業廃棄物中の有機物は細菌や糸状金菌等の微生物によって分解される。発ガン物質であるトリハロメタンの生成に関与するアンモニアは硝化菌により、工業用溶剤トリクロロエチレンはアンモニア酸化菌により分解される。また、農薬は土壌中の糸状菌、細菌、放射菌によって分解される。
これらの微生物は上記浄化液によって活性化されて上記汚染物質を分解する。
例えば、パラチオンはPseudomonas stuzeriとPseudomonas aeruginosaの共同により分解される。また、カーバメイト系殺虫剤はPenicillium、Trichodermaによって分解される。さらに、PCBはPseudomonas、Alcaligenesによって分解され、クロロベンゼンもPseudomonasによって分解される。
本浄化液によって活性化される土壌微生物としては、植物の葉に生息する微生物や菌類、細菌類がある。典型的には酵母、糸状菌、細菌である。
葉の表面に生息している微生物の種類としては、例えばPseudozyma属(P.antarctica、P.ruglosa、P.parantarctica、P.aphidisなど)やCryptococcus属(Cryptococcus laurenti、Cryptococcus flavusなど)、その他、Rhodotorula glutinis、Rhodotorula mucilaginosa、Sakaguchia dacryoidea、Sporidiobolus pararpseusやUstilago maydisなどが知られている。
例えばPseudozyma antarctica JCM3941、Pseudozyma antarctica JCM10317、Pseudozyma antarctica JCM3941、Pseudozyma ruglosa JCM10323およびPseudozyma parantarctica JCM11752等が挙げられる。
上記糸状菌としては、例えば、Acremonium属、Alternaria属、Arthrinium属、Aspergillus属、Aureobasidium属、Cladosporium属、Epicoccum属、Exophiala属、Fusarium属、Leptosphaeria属、Paecilomyces属、Penicillium属、Phoma属、Trichoderma属、Pseudotaeniolina属、Ulocladium属、Phaeosphaeriopsis属、Galactomyces属の糸状菌が挙げられる。
このようにして現地汚染地盤において栄養源を注入し、その土壌の微生物を活性化して増殖させ、汚染物質を分解させることができる。
地盤固結材を用いた地盤改良工法は特許文献1、2、3、4、5、6で既に知られている。本発明の浄化液の多点注入のための装置としては、例えば、特許文献1、2、4として挙げた装置と同様の機構のものを用いることができるが、本発明における微生物の栄養源となるバイオレメディエーション用の浄化液自体は非硬化性であり、硬化性注入液とは前述のように注入時の挙動が異なるため、上記注入装置を用いても本発明の手法を用いなくては所定の注入領域に注入して汚染物質を原位置浄化することは困難であることが判った。
その手法としては、まず本発明は図1に示すように浄化液を土粒子間浸透が可能な注入圧力限界内注入速度、即ち注入圧と注入速度が直線範囲内で注入されなくてはならない。この注入速度は毎分1〜6リットルである。
ところでその場合、注入速度が非常に小さい為、経済性が得られないため多数の吐出口から同時に注入することによって全体的に注入速度を大きくし、かつ互いの吐出口からの注入が互いを拘束して注入できるように注入することが必要である。このため図2ダルシー則から判るように浸透面積Aを大きくすることにより低圧で注入速度を多くすることが出来る。即ち図3〜図4の結束注入細管を用いることによりそれが可能になる。
同様の理由で図5、図6の柱状浸透可能な結束注入細管を用いれば一本の注入細管当たりの吐出速度を大きくして、低圧で全体としては大きな注入速度で図1の土粒子間浸透が可能になる。ことを本出願人は見出した。
図5は本発明の具体例である。図5は複数の注入地点の地盤中に生分解性有機物を含む浄化液を注入するための複数の注入管と、この注入管を介して地盤中に浄化液を注入するための複数のユニットポンプと、各注入地点において送液される浄化液の流量および/または圧力を計測するための流量・圧力計測装置と、各注入地点を表示するための監視盤と、前記ユニットポンプ、流量・圧力計測装置および監視盤を制御するための集中管理装置を備えた多点注入装置を用い、ユニットポンプを作動させ、監視盤において注入地点、各注入地点における浄化液の注入状況および各注入地点への浄化液の送液状況を一括監視し、ユニットポンプおよび流量・圧力計測装置を集中管理装置によって制御しつつ、複数の注入地点に同時にまたは選択的に注入することにより、各注入管からの浄化液の流れを各注入管が受け持つ所定の領域ごとに相互に拘束しながら浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止するとともに、前記浄化液の作用により汚染物質を浄化するものである。
図7、図8は本発明において浄化液の注入と汚染物質の脱逸を防いで原位置浄化する方法を示す。
送液ポンプと駆動装置は、それぞれ1台ずつで1ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつユニットごとに独立して稼働するように構成し、かつ各ユニットは全体として一括して制御することとし、浄化液を送液する各送液ポンプのインバーターを制御することにより、各送液ポンプの吐出速度を容易に設定することができ、1つの注入ステージの受け持ち土量に対応した吐出量と、それに必要な吐出時間を制御するものとするが、注入孔間隔や土質が異なっていても、水平方向や垂直方向に接する各注入管の受け持ち領域の境界面が互いに交錯して隣接する受け持ち領域をカバーするようにするようにする注入量を設定し、1ステージ当たりの注入が同一時間内に完了するようにシンクロナイズさせて注入すれば浄化液の流れは互いに拘束され、汚染物質は押し出されることなく原位置で効果的に浄化されることが可能になる。この際の注入管装置としては、後述する図3〜図6に示されるような注入管を用いることができる。
すなわち、各注入管の受け持ち領域の体積、透水係数、間隙率などに応じて、浄化液の注入量や注入速度あるいは注入圧を求め、各注入管からの浄化液の各領域内への浸透をシンクロナイズさせることで、浄化液の流れを各注入管が受け持つ所定の領域ごとに相互に拘束させることができる。
また、図14は1つの注入ポンプから複数の注入細管に注入管路が分岐バブルを介して分岐して同時注入するか、或は連続注入できる注入装置を示す。
本発明をバイオレメディエーションとして適用する場合、浄化液として炭化水素または蛋白質を主材とし、原位置に生息する微生物を活性化する栄養剤溶液を用いることができる。
また、バイオレメディエーションは微生物の活性化を汚染物質の浄化に利用するものであるが、浄化液としてマイクロバブルと原位置に生息する微生物を活性化する栄養剤を含有する浄化液を用い、これを汚染地盤に設けた複数の注入管から同時にまたは選択的に注入することとすれば、汚染物質の浄化作用をより効果的に発揮させることができる。
本発明によれば、バイオレメディエーション等の原位置浄化工法において、多点注入による浄化液の注入・浸透を、地盤の状況に応じて、各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うように同時間内で所定量の注入が拘束し合って完了するようにシンクロナイズさせて行うことで、浄化液を当該対象範囲に一様に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生したり、或は汚染物質が対象範囲外へ押し出され逸脱することを防止することができる。
また、浄化液の浸透不十分な箇所が発生しないため、また逸脱しないため対象範囲内に汚染物質を残存せしめて浄化材を作用させて、汚染の低減・浄化ができる。
非固化性浄化液の圧力・注入速度と限界注入速度の設定の関係を示すグラフである。
(a)はダルシー則を考慮した非固結性浄化液の柱状浸透の特性の模式図である。(b)は注入の対象となる地盤の粒子と透水性の関係を示す表を図として示したものである。
本発明の原位置浄化工法における注入管の受け持ち領域と浄化液の注入量、注入速度等の関係を概念的に示した図である。I、II、III、IV、Vは土層を示す。
(a)〜(d)は本発明の原位置浄化工法に用いられる注入管の一例を示す説明図である。(a)は注入細管を示す。(b)は結束注入細管、(c)、(d)はマイクロバブル製造装置を装置した注入細管と結束注入細管を示す。
浄化液を複数地点の複数の注入ステージの地盤中に結束注入細管で同時に注入できるように構成された多点注入装置の概要図である。
多点注入装置に用いられる柱状浸透が可能な注入管装置の一実施形態を示したもので、(a)は複数の注入管を結束して設置した場合の正面図、(b)、(c)はその要部拡大断面図である。
本発明の原位置浄化工法において受け持ち領域を持つ各注入管の柱状浸透源からの浄化液の注入をシンクロナイズさせることを概念的に示したもので、(a)は鉛直方向および水平方向全体のシンクロナイズを示した図、(b)は水平方向の1点における鉛直方向のシンクロナイズを示した図、(c)は受け持ち領域間で浄化液の浸透が拘束されることを示した図である。
図7(c)の受け持ち領域と浄化液の浸透の拘束の関係を平面的に示した図である。図7(a)、(b)、図8(a)をシンクロナイズして注入することにより図3の地盤を図7(c)、図8(b)のように互いに拘束して汚染物質を原位置浄化することができる。
マイクロバブル発生装置を用いてマイクロバブルを含む浄化液を注入する装置の一実施形態を示した図である。
バイオレメディエーションの浄化液の注入をダブルパッカ工法で行う従来工法での汚染物質の拡散移動の様子を概念的に示した図である。
(a)〜(d)は浄化液が地表面に逸出しないようにした注入管構造の例を示した図である。
注入細管を装着するセパレーターの例を示したもので、(a)は立面図、(b)は平面図である。
柱状導水部材を設けた結束注入細管の例を示したもので、(a)は立面図、(b)は水平断面図、(c)は拡大図である。
(a)、(b)は本発明の注入システムの例を示す概要図である。
図1〜図3は、本発明の原位置浄化工法における多点注入による各注入管の受け持ち領域と浄化液の注入量、注入速度等の関係を概念的に示した図である。
図3では、汚染浄化の対象地盤をI〜Vの5層に分けて考えている。各層の透水係数をKi、間隙率をαi、受け持ち体積をVi、浄化液の注入量をLi、毎分吐出量をliで表している。
本発明では、多点注入による浄化液の注入・浸透を、地盤の状況に応じて、各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うようにシンクロナイズさせて行うことを基本としており、例えば受け持ち領域の受け持ち体積Vi、透水係数Ki、間隙率αi応じて、浄化液の注入量Li、さらに毎分吐出量liを求めて注入を行うことで、浄化液を対象範囲ごと一様に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生することを防止することができる。
図4(a)〜(d)は、本発明の原位置浄化工法の実施に際して地盤中に挿入される注入管の一例を示し、このうち(b)、(d)に示す注入管は、複数の注入細管2aを各注入細管2aの先端吐出口5を管軸方向に一定長ずらし、かつひと束に結束することにより構成されている。
また、(c)、(d)に示す注入管は、マイクロバブル生成装置が接続され、空気を供給して好気性微生物の活性化をより促進させるために浄化液にマイクロバブルを混入して、注入できるように構成されている。
このように構成されていることにより、各注入細管2aの先端吐出口5から深さの異なる複数のステージ(地層)に、浄化液、あるいはマイクロバブルを混入した浄化液を同時に、または複数のステージを任意に選択して同時注入することができる。
本発明によるVOC(揮発性有機化合物)の浄化方法の一例を以下に示す。
浄化対象汚染物質をテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンとし、多点注入工法により浄化する。
浄化液としては炭水化物、蛋白質を主体とする有機物でであって、生分解性を有し、微生物の栄養源となる微生物によって代謝されるもの、好ましくは土壌中の微生物によって代謝分解される糖類を用いる。
具体的には、例えば、グルコースやフラクトースなどの単糖類、スクロース、マルトースあるいはガラクトースなどの2糖類、その他のオリゴ糖、デンプンやマルトデキストリンなどの多糖類、その他糖類を例示することができる。
浄化原理は以下の通りである。
(1) 地中に浸透させた浄化液により、元来地中に生息する好気性微生物が活性化する。
(2) 好気性微生物が地中の酸素を消費し、嫌気性雰囲気(酸素が少ない状態)を形成する。
(3) 嫌気性微生物が浄化液により活性化し始める。嫌気性微生物によって浄化液中の有機物が分解され、水素(H)を発生する。
(4) 嫌気性微生物がVOCの塩素(Cl)を水素(H)に置き換えて分解する。
(5) VOCが無くなると、嫌気性微生物は浄化液を消費した後に減少し、元の環境に戻る。
(6) 浄化液に関し、マイクロバブルを含む浄化液を用いると、空気が供給されて好気性微生物の活性化がより促進され、汚染物質の浄化を効果的に行うことができる。
上記浄化原理を不均質な汚染地盤において原位置浄化させるために本発明は以下の手法を用いるものとする。
図5、図6は、複数の注入地点において複数の注入ステージA,B,C,Dに、生分解性有機物を含む非硬化性浄化液を同時に注入できるように構成された多点注入装置並びに浄化工法を示したものである。
柱状浸透注入細管を用いた多点注入装置は上述したシンクロナイズ注入が容易である。図中5は吐出口であり、吐出口5を覆うゴムスリーブ等の逆止弁5aは、それを柱状に覆うスリットの入った膜やマットや網状体や帯状体からなる柱状導水部材である。浄化液は吐出口5から逆止弁5a、柱状空間導水部材6を経て柱状の浸透源7全体から吐出される。このため大きな浸透源から低圧で注入される(図2)。
図において、複数の注入地点にそれぞれ形成された各削孔1内に、図6に示す注入管装置の注入管2が建て込まれ、各注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に浄化液吐出口5が1箇所または複数個所形成され、かつ逆止弁5aと柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている。
さらに、このように構成された各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。また、削孔1の孔壁と各注入管2との間隙3内にシールグラウト4が所定区間長にわたって充填されている。このような構成により、削孔1と注入管2との間隙3内に、管軸方向に一定区間Lの連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に所定間隔おきに構成されている。
このような柱状浸透注入方式を用いることにより1ステージの注入源を長くとれるため、1ステージ当たりの注入速度を大きくしても低圧で注入できるため、汚染物質の移動を防ぐことができ、かつ結束注入管の径が小さくなるため削孔径を小さくすることができるという効果が生ずる。
また、図5に示すように、注入管2を介して地盤中に該浄化液を注入するための複数のユニットポンプ12と、各注入地点において送液される浄化液の流量および/または圧力を計測するための流量・圧力計測装置13と、各注入地点を液晶化表示するための監視盤と、前記ユニットポンプ12、流量・圧力計測装置13および監視盤を制御するための集中管理装置17を備えた多点注入装置を用い、前記ユニットポンプ12を作動させ、前記監視盤において注入地点、各注入地点における浄化液の注入状況、さらには各注入地点への浄化液の送液状況を一括監視し、ユニットポンプ12および流量・圧力計測装置13を集中管理装置17によって制御しつつ、複数の注入地点に同時に、あるいは選択的に注入することにより浄化液の流れを拘束し、浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止すると共に、所定の領域で汚染物質を浄化する。
すなわち、各注入管2には浄化液が貯蔵された浄化液貯蔵タンク10が導管11を介してそれぞれ接続され、各導管11には注入材貯蔵タンク10から各注入管2に注入材を圧送するためのユニットポンプ12、各注入地点における浄化液の流量と圧力を検出するための流量・圧力検出装置13、さらに浄化液の圧送を開始および遮断するためのバルブ14がそれぞれ接続されている。
各ユニットポンプ12は、インバーター等の回転数変速機15を備え、かつモータ等の独立した駆動源16によって個々に作動するように構成されている。また、各ユニットポンプ12、回転数変速機15、流量圧力検出器13およびバルブ14は、それぞれ集中管理装置17に接続され、すべて集中管理装置17によって個々に制御されるようになっている。
このような構成において、流量・圧力検出装置13からの流量/およびまたは圧力データの信号が集中管理装置17に送信されると、貯蔵タンク10から各注入管2にそれぞれ各ユニットポンプ12の作動により浄化液が任意の注入速度、注入圧力および注入量で圧送される。
そして、複数の注入地点において、浄化液が各注入管2の浄化液吐出口2aから柱状浸透源7に同時に、あるいは選択的に同時吐出され、さらに柱状浸透源7から周囲の地盤中に同時に浸透注入されることにより、複数の注入地点の複数の注入ステージA,B,C,Dの地盤中に浄化液を同時に注入することができる。
本発明の原位置浄化工法において、浄化液の注入をシンクロナイズさせることにより、受け持ち領域外への浄化液の浸透を拘束したときの改良率と改良形状の概念図を図7および図8に示す。シンクロナイズとは隣接する注入細管の受け持ち体積の注入が同一時間内に完了して、互いにその境界面或は注入範囲を拘束するように浄化液を浸透させることを意味する。
複数の注入管から同時に拘束的に浄化液の注入を行うことで、また各土層ごとに最高の吐出速度でかつ土粒子を移動させたり亀裂を生じさせない低圧で所定範囲に浄化液が収まるように浄化することで、他の深度で注入された浄化液を押し出すことなく、あるいは汚染物質を押し出して外部に拡散することなく、注入管から一様に浄化液が行き渡らせることができる。
多点注入工法を行うにあたり、隣り合う深度の注入期間を時間差なく行うことが望ましい。時間差が生じるとは、一方の注入が先行して終了し、隣り合う他方が注入を継続している状態を指す。その際、先行して終了した側の浄化液は、隣り合う他方から汚染物質と共に注入圧力によって押し出される。
浄化液を当該対象範囲に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生することを防止するには、多点注入工法での各深度の注入時間を揃えることが望ましい。
前述した図5の装置において、注入管装置は、図6に示すように管軸方向に複数の浄化液吐出口5と当該吐出口5を覆う逆止弁5aを有し、削孔内に設置された注入管2と、当該注入管2の外周部に浄化液吐出口5および逆止弁5aを有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように取り付けられた柱状空間導水部材6からなる柱状浸透源7と、削孔1の孔壁と注入管2および柱状空間導水部材6との間隙内に充填されたシールグラウト4とから構成され、柱状空間導水部材6は管軸方向の上下両側部および孔壁側部がシールグラウト4で覆われることにより独立した柱状浸透源7を形成し、シールグラウト4は注入管2、吐出口5および逆止弁5aを介して地盤中に注入される浄化液の吐出圧によって砕かれるような強度を有し、柱状浸透源7からシールグラウト4を破って所定の注入ステージに注入されることにより、大きな吐出量でも低圧で地盤に注入され、かつ他の注入ステージから、あるいは他の注入管からの浄化液が注入管内に逆流したりすることなく独立した各注入ステージごとに地盤中に注入されるように構成される。
本発明では、複数の吐出口5から同時に吐出される複数の浄化液は流液層が互いの浸透圧によって反発し合って混合されにくく、このため、注入液は層状に水平方向に地盤中に浸透することに着目した。
浄化液は実質的に地表面に逸出することなく水平方向に浸透するという現象が生ずるため、汚染地盤を縦方向にも水平方向にも一気に浄化することが可能となる。
したがって本発明では土層毎に最高の吐出速度でかつ1つの吐出口からは土粒孔間浸透が可能な低圧注入ができ、また、隣接する浄化液の浸透圧が反発し合って層状浸透させるため、低圧で目詰まりすることなく、しかも、大きな吐出量で、長時間浸透しつづけることが可能となる。
このように、本発明では、複数のステージを同時に、浸透すれば、浄化液の上層と下層における流れは互いの浸透圧によって拘束し合い、このため、上下方向への浸透が妨げられて水平方向に浸透することを見出した。注入液は各ステージの土層の状況に応じた、注入速度、注入量を選択して注入する。
吐出口が互いに軸方向に間隔を置いて位置するように細管を複数本結束することで、地盤状況が各層ごとに異なる地盤に対しても、これら各層毎に最適な注入を同時に達成し得る。しかも、地盤中の縦方向、横方向への立体的な同時注入も可能である。
本発明において、浄化液にマイクロバブルを用いることは極めて効果的である。すなわち、浄化液に関し、マイクロバブルを含む浄化液を用いると、マイクロバブル中の酸素が供給され好気性微生物の活性化がより促進され、汚染物質の浄化を効果的に行うことができる。
図9(a)〜(c)は、本発明の原位置浄化工法において、マイクロバブルを含む浄化液を注入するためのマイクロバブル発生装置の一実施形態を示したものである。
図9(a)において、符号64は、マイクロバブル(微細気泡)が混入された浄化液を生成するためのバブル発生装置(渦流発生装置)、65はバブル発生装置に送り込まれる浄化液を入れる浄化液タンク、そして符号66はバブル発生装置64において撹拌・混合・溶解された浄化液を地盤中に注入する注入管である。
バブル発生装置64は、動力によって高速回転する羽根車64aを内蔵し(図9(c)参照)、また、浄化液タンク65から延びる送液管67と空気を取り込むエア管68が接続され、さらに、バブル発生装置64内で撹拌・混合・溶解された浄化液と気体を地盤中に注入する注入管66に延びる圧送管69が接続されている。そして、送液管67、エア管68および圧送管69にバルブ70がそれぞれ取り付けられている。
このような構成において、バブル発生装置64内の羽根車64aが動力によって高速回転すると、浄化液タンク65から装置64内に浄化液が送液管67を介して吸引され、同時にエア管68を介して装置64内にエアが吸引される。
そして、装置64内で浄化液とエアが高速で回転する羽根車64aによって撹拌・混合・溶解された後、圧送管69を介して注入管66に圧送され、注入管66から地盤中に注入される。
この実施形態によれば、加圧タンク、溶液循環ポンプおよびコンプレッサー等が不要になり、装置の大幅な簡素化が可能になる。
一方、図9(b)において、符号64がバブル発生装置、65が浄化液タンクである。バブル発生装置64は、浄化液タンク65内の浄化液を、送液管67を介して循環させることにより浄化液内にマイクロバブルを発生させてマイクロバブルが混入された浄化液を生成する。
また、符号71は浄化液の原料液を配合する原料液配合ミキサー、72は浄化液タンク65内に生成されたマイクロバブルが混入された浄化液を、圧送管69を介して注入管66に圧送し、かつ注入管66を介して地盤にマイクロバブルが混入された浄化液を注入する注入ポンプである。
このような構成において、装置64内の羽根車64aが動力によって高速回転すると、浄化液タンク65内の浄化液が送液管67を介して吸引され、同時にエア管68を介して装置64内にエアが吸引される。そして、装置64内で浄化液とエアが撹拌・混合・溶解された後、送液管67を介して浄化液タンク65内に戻る。
こうして、浄化液タンク65内の浄化液が浄化液タンク65と装置64との間を、送液管67を介して循環することにより浄化液タンク65内にマイクロバブルが混入された浄化液が生成される。また、注入ポンプ72が作動することにより浄化液タンク65内のマイクロバブルが混入された浄化液が圧送管69を介して注入管66に圧送され、そして注入管66から地盤中に注入される。
以上は、本発明で用いる浄化液にマイクロバブルを混入させて地盤中に注入する方法の一例を示したものであるが、マイクロバブルを混入させる方法はこれに限定されない。例えば密閉した浄化液にマイクロバブル液を混入しながら循環させてもよい。
また、図9(a)に示すようにバブル発生装置から圧送管を介して直接地盤中に注入されてもよく、図9(b)に示すように浄化液タンクとバブル発生装置を循環させて注入ポンプを介して地盤中に注入してもよい。
図11、図12は本発明に用いる注入管装置の例を示したものである。
従来、固結性グラウトを注入細管2aを結束してなる結束注入細管2Aから注入する場合は結束注入細管2Aを削孔中のシールグラウト4中に設置すれば結束注入細管2Aの注入細管2aどうしに空間があっても固結性グラウトと削孔中のシールグラウト4が反応して、その空間を固結して閉束してしまうために問題はなかった。
しかし、浄化液は前述したように非固化性であるため結束注入細管2Aを用いた場合、結束注入細管2Aをシールグラウト4内に設置しても注入細管2aどうしの間隙が十分填されないで空間を残すため浄化液が注入細管2aの隙間から地上に流出して所定領域に注入されにくい。このために以下の手法を用いるものとする。
(1) 削孔内のみならず結束注入細管内2Aの注入細管2aどうしの空隙をシールグラウト4で充填する方法。このためにシールグラウト注入管21を結束注入細管内2A内に設けてその空隙を密封する(図11のシールグラウト用注入管21)。シールグラウト用注入管21はシールグラウト注入と共に抜き取っても構わない。
(2) 結束注入細管2Aにセパレーター30を設けて削孔地盤中のシールグラウト4中に設置する方法(図12参照)。
(3) 結束注入細管2Aをシールグラウト4中に設け、少なくとも汚染領域よりも上部に位置する結束注入細管2Aの間隙や汚染領域よりも上部にグラウトを注入する方法(図11(d)参照)。
(4) 結束注入細管2Aの少なくとも汚染領域よりも上部に袋体23を設け、袋体23の内部に固結材を注入して結束注入細管2Aの間隙を遮断する方法(図11(a)、(b)、(c)参照)。
(5) 上記(4)において袋体23を複数設け、袋体23間に設けた注入口からグラウトを注入する方法(図11(a)、(b)参照)。
(6) 結束注入管2Aを袋体9で包み、注入吐出口を袋体9の外に開口する方法(図13参照)。
図14は本発明の注入システムを示す。
図14(a)は浄化液を1つの注入ポンプから複数の注入細管(結束注入細管)に分岐バブルを介して同時に或は連続して注入するシステムを示す。注入圧力・注入速度・注入量の管理並びに、バブル、注入ポンプの作動はコントローラによって行われる。注入管2はそれぞれ注入細管でもよいし、4本の注入細管2を束ねてもよい。
図14(b)は図9のマイクロバブル発生装置を用いた例を示す。
浄化液の注入を、(A)従来技術であるダブルパッカ工法と、(B)本発明手段である多点注入工法の各々で行い、浄化液の浸透を評価した。注入地点から半径1mの範囲の土壌に、全有機炭素濃度が100mg/L以上となる浄化液量を設計し、注入を行った。
各々の工法での、注入地点から指定距離における浄化液の分布を、全有機炭素濃度によって表1に示す。
表1によると、従来技術(ダブルパッカ工法)では注入井戸から0.5mの位置における深度ごとの全有機炭素に485〜45mg/Lの幅が見られる。注入管から1.0mの位置においては、93〜20mg/Lであり、全体で485〜20mg/Lの幅であった。
一方、本発明の方法(図3を図5の様に配置した多点注入工法)では、注入井戸から0.5mの位置における深度ごとの全有機炭素に291〜234mg/Lの幅が見られる。注入井戸から1.0mの位置においては、228〜108mg/Lであり、全体で291〜108mg/Lの幅であった。
従来技術に比べて発明方法では、設計の全有機炭素濃度100mg/Lに対してバラつきが抑えられている。つまり、浄化液の浸透不十分な箇所が生じていないことが分かる。
1…削孔、2…注入管、2A…結束注入細管、2a…注入細管、3…間隙、4…シールグラウト、5…吐出口、5a…逆止弁、6…柱状空間導水部材、7…柱状浸透源、
10…浄化液貯蔵タンク、11…導管、12…ユニットポンプ、13…流量・圧力検出装置、14…逆止弁、15…回転数変速機、16…駆動源、17…集中管理装置、18…注入内管昇降装置、19…注入ステージ管理装置、
21…シールグラウト注入管、21a…吐出口、22…注入細管固定板、23…袋パッカー、24…グラウト注入管、24a…吐出口、
30…セパレーター、31…注入細管嵌合孔、32…シールグラウト注入管、
64…バブル発生装置、65…浄化液タンク、66…注入管、67…送液管、68…エア管、69…圧送管、70…バルブ、71…原料液配合ミキサー、72…注入ポンプ
本発明は、生分解性有機物を含む浄化液を地盤に注入し、土壌・地下水の汚染物質の濃度を低減し浄化する原位置浄化工法に関するものである。
土壌・地下水の環境汚染を浄化する技術の一つとしてバイオレメディエーションがある。バイオレメディエーションは、微生物を活性化する栄養剤溶液(以下、「浄化液」という)を地中の対象範囲に浸透させる工法である。
バイオレメディエーションによる原位置浄化工法は、浄化液を注入管を通して汚染地盤に注入し、原位置で土壌・地下水の汚染物質の濃度を低減し浄化することを目的とする。
従来の薬液注入工法としては地中に建て込んだ注入管を介して地盤固結材を加圧注入するダブルパッカ工法等がある。
従って、当然、浄化液を地盤に注入するために従来用いられている注入工法を適用することが考えられるが、本出願人の研究によればこれらの従来の加圧注入工法を用いたのでは浄化液が注入対象範囲外へ逸脱して、原位置浄化を行うことが難しいことが判った。その理由は浄化液がグラウトのような固結性がないことにあることを本出願人は見出した。
ダブルパッカ工法は、一つの注入管に注入用スリーブが33cm毎に複数設けられており、構造的に注入はスリーブごとの注入となる。注入箇所は、深い箇所のスリーブの注入から一つずつ浅い箇所へ移る。薬液注入ではグラウトがゲル化するためにこのような手法で注入効果が得られた(図9参照)。
ゲル化を伴う注入液(グラウト材)に、浄化材を加えて、浄化材をゲル中に包含して重金属を無害化する方法(特許文献1)等があるがバイオレメディエーションのようにゲル化を伴わない栄養剤溶液を用いる場合は、ゲル化剤の存在下ではゲルの存在のために直接浄化材が汚染物に作用しにくいことや浸透性の大きい層に注入液が先行して浸透して固化するため、細粒土の汚染地盤への浄化液の浸透が困難になる問題があった。
また、浸透ステージを引上げながらステージ毎に行った場合、注入時間がかかり、特に地表面方向に移向しやすく、割裂注入が生じ所定の層毎の土粒子間浸透が行われ難いという問題がある。また、地盤は砂質やシルト、粘土といった土質の異なる層が幾重にもなる互層であることが多く、汚染物が蓄積している細粒土層では割裂注入してしまい浄化液が浸透しにくいという問題があった。
特開2012−228685号公報
特許第4848553号公報
特許第3455952号公報
特許第3724644号公報
特許第5092103号公報
特許第3762353号公報
バイオレメディエーションにおいて、浄化液は微生物の栄養剤を水に溶かした非固化性水溶液であり、粘性や地中の挙動は水とほとんど同じである。ところで、このような浄化液は固結性がないため、地中に注入すると透水性が高い箇所へ流れ、地盤が互層の場合、シルト・粘土質には浸透させることが困難である。また、浄化液自体は土質の透水性に影響を及ぼすことなく、注入圧力により地下水と共に移動する。
一方、ゲル化を伴うグラウト材は、注入から一定時間後に固結する。透水性が高い土質にはグラウト材が浸透しやすいため、グラウト注入後は周辺と相対して透水性が低くなる。このため固結性グラウト材では、注入材料が土質の透水性に影響する点で非固化性浄化材とは大きな違いがある。そして地盤固結工法では砂地盤等透水性の大きな土層が固結止水されれば、それにて目的は達した。
しかし、このようなゲル化を伴うグラウトと共に浄化液を併用すると透水性に影響し、汚染物質が蓄積されやすい細粒土層への浸透が不十分となるという問題があった。
また、汚染領域におけるゲルの存在は、ゲルが不透水性であるため、ゲル化した浄化液中の浄化材が汚染物質に効果的に作用しにくいという問題がある。
一方、硬化性のない浄化液は注入するとゲル化しないため、どこまでも浸透してしまい、粗い層や層境に沿って逸脱しやすく、同時に汚染物質も押し出してしまう或は汚染物質が蓄積されやすい細粒土地盤には浸透しにくく原位置浄化が困難である。
例えば、図9に示すようなダブルパッカ工法での注入は、一つの注入管において一深度(通常33cm)ごとの注入となるが、任意の注入ステージ(吐出口)で注入(通常毎分吐出量10リットル〜15リットル)した後、次の箇所の注入ステージ(吐出口)に移動して注入する際に、当該注入の圧力によって先行して注入した浄化液を押し出すため、浄化液が粗い土層へ移向し、それに伴って汚染物質が押し出されて拡散しやすく、また細粒土中の汚染物質に浄化液が作用しにくいという問題がある。
また、ゲル化を伴うシリカグラウトと浄化材を併用して注入した場合(特許文献1、3)、ゲル化した浄化液中の浄化材が汚染物質に効果的に作用しない、あるいはゲルの存在により土中の微生物の活性化が阻害されるという問題がある。また、ゲル化を伴わない浄化材を注入した場合、浄化材が浸透しやすい土層に逸脱して汚染物の分布している地盤への浄化液の浸透が不十分となる。このため微生物の活性の環境が十分に整わず、汚染物質の濃度低減が進まないという問題が生ずる。
また、自然注入は、帯水層の深度に有孔管またはスリットを設けた井戸を介して、地上から浄化液を重力によって地中に浸透させる方法であるが、自然注入では、透水性の良い土質に浄化液は浸透するものの、シルト・粘土質では浸透しないという問題がある。
このように、従来技術の課題は、浄化液の浸透が不十分な箇所が生じて原位置浄化がしにくいという点にある。
従ってバイオレメディエーション等の実施にあたっては、以下の課題を解決することが要求される。
(1) 固結性のない浄化液を割裂して地表面に逸脱させることなく、汚染物質のある所定の位置にとどめて原位置浄化するためには低圧で土粒子間浸透させなくてはならない(図1参照)。
(2) 汚染物質は粒子の小さいシルト・粘土質に吸着され、シルト・粘土層に高濃度で存在するため、浄化液は透水性の悪い層にも浸透することが必要である。
(3) 地盤は、砂質やシルト、粘土といった土質の異なる層が幾重にもなる互層であることが多い。このため異なる土層にもそれぞれ浸透することが必要である。
(4) 汚染の分布は、平面・深度方向に濃淡があるため、適切な浄化にあたって汚染の分布・濃度に応じた浄化液を浸透させることが要求される。
(5) 汚染が濃い箇所には、確実に浄化液を浸透させることが重要である。
(6) 上述したように、図8の注入方法は勿論のこと、特許文献1、2、3、4に記載の注入方法ではゲル化を伴うため浄化の反応が不十分であり、一方上記反応性のない浄化材では、浄化液は所定の領域に浸透保持されないため、汚染物質も注入圧で原位置以外のところに押し出されてしまう。従って汚染物質が存在する汚染物質を移動させることなく、原位置で土粒子間浸透する限界圧力内の注入速度で浄化材を注入して浄化することが必要である。そのための注入速度は1〜6リットル/分程度である(図1、図2参照)。
(7) 汚染地盤に注入された浄化液が土粒子間浸透するためには、極めて低圧で注入しなくてはならないが、その場合施工時間が長くなりすぎるため、施工能率を上げなくてはならないから、複数の注入管からの同時注入する必要がある(図2参照)。
非固結性の浄化液を細粒土まで浸透させるには、注入の対象となる図2(b)の地盤条件で図1の土粒子間浸透限界内に注入するには、1箇所の吐出口から1〜6リットル/minであることが判った。これを経済速度で施工するには図2(a)から吐出口を複数設け或は注入管を注入細管とし、それを吐出口が異なる位置になるように複数の細管を結束して結束細管とすることにより、或はこれらの注入管を複数の注入削孔中に設けて同時注入することによって解決することができる。
本発明は従来技術における上述のような課題を解決することを目的としたものである。
本発明は、地盤中に設けた複数の注入管を介して汚染した地盤の複数の注入地点に栄養剤溶液(非固化性の浄化液)を注入して汚染されている地盤を浄化する多点注入による原位置浄化工法であって、複数の注入地点の地盤中に生分解性有機物を含む非固化性の浄化液を注入するための複数の注入管と、前記注入管を介して地盤中に該浄化液を注入するための1または複数の注入ポンプと、各注入地点において送液される浄化液の流量および/または圧力を計測するための流量・圧力計測装置とを備えた多点注入装置を用い、各注入管の受け持ち領域の体積、透水係数、間隙率に応じて、前記浄化液の注入量及び注入速度を求め、各注入地点における浄化液の注入状況および各注入地点への浄化液の送液状況に応じて前記注入ポンプを制御し、各注入管からの浄化液の各領域内への浸透を各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うように同時間内で所定量の注入が拘束し合って完了するようにシンクロナイズさせることで、浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止すると共に、浄化液の汚染対象領域外への逸脱とそれに伴う汚染物質の原位置からの逸脱を防いで、前記浄化液の作用により汚染物質を浄化することを特徴とするものである。
本発明において、有害物を含む土または廃棄物中に、浄化液を複数の注入口から同時に土粒子間浸透させることにより所定の領域に拘束して、有害物や廃棄物を浄化することにより汚染領域の拡散を防ぐとともに、上述した方法により土壌浄化液を注入することにより、所定の領域に限定して浄化液を浸透させて汚染物を原位置で浄化することができ効果的である。
本発明における有害物とは、6価クロム、水銀、鉛、カドミウム等の重金属、土木工事等によって発生する廃泥土、焼却灰、汚泥、産業廃棄物、環境ホルモン、農薬残留物、有機溶剤、有機洗剤等の有機化合物、ダイオキシン等人体や環境に悪影響を及ぼす有害物を含む地盤であり、例として、アルキル水銀、総水銀、カドミウム、鉛、有機リン、六価クロム、ヒ素、シアン、PCB、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、13−ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン等が挙げられる。
バイオレメディエーションでの微生物による分解例としては、一例を示すと次のとおりである。
産業廃棄物中の有機物は細菌や糸状金菌等の微生物によって分解される。発ガン物質であるトリハロメタンの生成に関与するアンモニアは硝化菌により、工業用溶剤トリクロロエチレンはアンモニア酸化菌により分解される。また、農薬は土壌中の糸状菌、細菌、放射菌によって分解される。
これらの微生物は上記浄化液によって活性化されて上記汚染物質を分解する。
例えば、パラチオンはPseudomonas stuzeriとPseudomonas aeruginosaの共同により分解される。また、カーバメイト系殺虫剤はPenicillium、Trichodermaによって分解される。さらに、PCBはPseudomonas、Alcaligenesによって分解され、クロロベンゼンもPseudomonasによって分解される。
本浄化液によって活性化される土壌微生物としては、植物の葉に生息する微生物や菌類、細菌類がある。典型的には酵母、糸状菌、細菌である。
葉の表面に生息している微生物の種類としては、例えばPseudozyma属(P.antarctica、P.ruglosa、P.parantarctica、P.aphidisなど)やCryptococcus属(Cryptococcus laurenti、Cryptococcus flavusなど)、その他、Rhodotorula glutinis、Rhodotorula mucilaginosa、Sakaguchia dacryoidea、Sporidiobolus pararpseusやUstilago maydisなどが知られている。
例えばPseudozyma antarctica JCM3941、Pseudozyma antarctica JCM10317、Pseudozyma antarctica JCM3941、Pseudozyma ruglosa JCM10323およびPseudozyma parantarctica JCM11752等が挙げられる。
上記糸状菌としては、例えば、Acremonium属、Alternaria属、Arthrinium属、Aspergillus属、Aureobasidium属、Cladosporium属、Epicoccum属、Exophiala属、Fusarium属、Leptosphaeria属、Paecilomyces属、Penicillium属、Phoma属、Trichoderma属、Pseudotaeniolina属、Ulocladium属、Phaeosphaeriopsis属、Galactomyces属の糸状菌が挙げられる。
このようにして現地汚染地盤において栄養源を注入し、その土壌の微生物を活性化して増殖させ、汚染物質を分解させることができる。
地盤固結材を用いた地盤改良工法は特許文献1、2、3、4、5、6で既に知られている。本発明の浄化液の多点注入のための装置としては、例えば、特許文献1、2、4として挙げた装置と同様の機構のものを用いることができるが、本発明における微生物の栄養源となるバイオレメディエーション用の浄化液自体は非硬化性であり、硬化性注入液とは前述のように注入時の挙動が異なるため、上記注入装置を用いても本発明の手法を用いなくては所定の注入領域に注入して汚染物質を原位置浄化することは困難であることが判った。
その手法としては、まず本発明は図1に示すように浄化液を土粒子間浸透が可能な注入圧力限界内注入速度、即ち注入圧と注入速度が直線範囲内で注入されなくてはならない。この注入速度は毎分1〜6リットルである。
ところでその場合、注入速度が非常に小さい為、経済性が得られないため多数の吐出口から同時に注入することによって全体的に注入速度を大きくし、かつ互いの吐出口からの注入が互いを拘束して注入できるように注入することが必要である。このため図2ダルシー則から判るように浸透面積Aを大きくすることにより低圧で注入速度を多くすることが出来る。即ち図3〜図4の結束注入細管を用いることによりそれが可能になる。
同様の理由で図5、図6の柱状浸透可能な結束注入細管を用いれば一本の注入細管当たりの吐出速度を大きくして、低圧で全体としては大きな注入速度で図1の土粒子間浸透が可能になる。ことを本出願人は見出した。
図5は本発明の具体例である。図5は複数の注入地点の地盤中に生分解性有機物を含む浄化液を注入するための複数の注入管と、この注入管を介して地盤中に浄化液を注入するための複数のユニットポンプ(注入ポンプ)と、各注入地点において送液される浄化液の流量および/または圧力を計測するための流量・圧力計測装置と、各注入地点を表示するための監視盤と、前記ユニットポンプ、流量・圧力計測装置および監視盤を制御するための集中管理装置を備えた多点注入装置を用い、ユニットポンプを作動させ、監視盤において注入地点、各注入地点における浄化液の注入状況および各注入地点への浄化液の送液状況を一括監視し、ユニットポンプおよび流量・圧力計測装置を集中管理装置によって制御しつつ、複数の注入地点に同時にまたは選択的に注入することにより、各注入管からの浄化液の流れを各注入管が受け持つ所定の領域ごとに相互に拘束しながら浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止するとともに、前記浄化液の作用により汚染物質を浄化するものである。
図7、図8は本発明において浄化液の注入と汚染物質の脱逸を防いで原位置浄化する方法を示す。
送液ポンプと駆動装置は、それぞれ1台ずつで1ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつユニットごとに独立して稼働するように構成し、かつ各ユニットは全体として一括して制御することとし、浄化液を送液する各送液ポンプのインバーターを制御することにより、各送液ポンプの吐出速度を容易に設定することができ、1つの注入ステージの受け持ち土量に対応した吐出量と、それに必要な吐出時間を制御するものとするが、注入孔間隔や土質が異なっていても、水平方向や垂直方向に接する各注入管の受け持ち領域の境界面が互いに交錯して隣接する受け持ち領域をカバーするようにするようにする注入量を設定し、1ステージ当たりの注入が同一時間内に完了するようにシンクロナイズさせて注入すれば浄化液の流れは互いに拘束され、汚染物質は押し出されることなく原位置で効果的に浄化されることが可能になる。この際の注入管装置としては、後述する図3〜図6に示されるような注入管を用いることができる。
すなわち、各注入管の受け持ち領域の体積、透水係数、間隙率などに応じて、浄化液の注入量や注入速度あるいは注入圧を求め、各注入管からの浄化液の各領域内への浸透をシンクロナイズさせることで、浄化液の流れを各注入管が受け持つ所定の領域ごとに相互に拘束させることができる。
また、図13は1つの注入ポンプから複数の注入細管に注入管路が分岐バブルを介して分岐して同時注入するか、或は連続注入できる注入装置を示す。
本発明をバイオレメディエーションとして適用する場合、浄化液として炭化水素または蛋白質を主材とし、原位置に生息する微生物を活性化する栄養剤溶液を用いることができる。
また、バイオレメディエーションは微生物の活性化を汚染物質の浄化に利用するものであるが、浄化液として原位置に生息する微生物を活性化する栄養剤を含有する浄化液を用い、これを汚染地盤に設けた複数の注入管から同時にまたは選択的に注入することとすれば、汚染物質の浄化作用をより効果的に発揮させることができる。
本発明によれば、バイオレメディエーション等の原位置浄化工法において、多点注入による浄化液の注入・浸透を、地盤の状況に応じて、各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うように同時間内で所定量の注入が拘束し合って完了するようにシンクロナイズさせて行うことで、浄化液を当該対象範囲に一様に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生したり、或は汚染物質が対象範囲外へ押し出され逸脱することを防止することができる。
また、浄化液の浸透不十分な箇所が発生しないため、また逸脱しないため対象範囲内に汚染物質を残存せしめて浄化材を作用させて、汚染の低減・浄化ができる。
非固化性浄化液の圧力・注入速度と限界注入速度の設定の関係を示すグラフである。
(a)はダルシー則を考慮した非固結性浄化液の柱状浸透の特性の模式図である。(b)は注入の対象となる地盤の粒子と透水性の関係を示す表を図として示したものである。
本発明の原位置浄化工法における注入管の受け持ち領域と浄化液の注入量、注入速度等の関係を概念的に示した図である。I、II、III、IV、Vは土層を示す。
(a)〜(d)は本発明の原位置浄化工法に用いられる注入管の一例を示す説明図である。(a)は注入細管を示す。(b)は結束注入細管を示す。
浄化液を複数地点の複数の注入ステージの地盤中に結束注入細管で同時に注入できるように構成された多点注入装置の概要図である。
多点注入装置に用いられる柱状浸透が可能な注入管装置の一実施形態を示したもので、(a)は複数の注入管を結束して設置した場合の正面図、(b)、(c)はその要部拡大断面図である。
本発明の原位置浄化工法において受け持ち領域を持つ各注入管の柱状浸透源からの浄化液の注入をシンクロナイズさせることを概念的に示したもので、(a)は鉛直方向および水平方向全体のシンクロナイズを示した図、(b)は水平方向の1点における鉛直方向のシンクロナイズを示した図、(c)は受け持ち領域間で浄化液の浸透が拘束されることを示した図である。
図7(c)の受け持ち領域と浄化液の浸透の拘束の関係を平面的に示した図である。図7(a)、(b)、図8(a)をシンクロナイズして注入することにより図3の地盤を図7(c)、図8(b)のように互いに拘束して汚染物質を原位置浄化することができる。
バイオレメディエーションの浄化液の注入をダブルパッカ工法で行う従来工法での汚染物質の拡散移動の様子を概念的に示した図である。
(a)〜(d)は浄化液が地表面に逸出しないようにした注入管構造の例を示した図である。
注入細管を装着するセパレーターの例を示したもので、(a)は立面図、(b)は平面図である。
柱状導水部材を設けた結束注入細管の例を示したもので、(a)は立面図、(b)は水平断面図、(c)は拡大図である。
本発明の注入システムの例を示す概要図である。
図1〜図3は、本発明の原位置浄化工法における多点注入による各注入管の受け持ち領域と浄化液の注入量、注入速度等の関係を概念的に示した図である。
図3では、汚染浄化の対象地盤をI〜Vの5層に分けて考えている。各層の透水係数をKi、間隙率をαi、受け持ち体積をVi、浄化液の注入量をLi、毎分吐出量をliで表している。
本発明では、多点注入による浄化液の注入・浸透を、地盤の状況に応じて、各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うようにシンクロナイズさせて行うことを基本としており、例えば受け持ち領域の受け持ち体積Vi、透水係数Ki、間隙率αi応じて、浄化液の注入量Li、さらに毎分吐出量liを求めて注入を行うことで、浄化液を対象範囲ごと一様に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生することを防止することができる。
図4(a)、(b)は、本発明の原位置浄化工法の実施に際して地盤中に挿入される注入管の一例を示し、(b)に示す注入管は、複数の注入細管2aを各注入細管2aの先端吐出口5を管軸方向に一定長ずらし、かつひと束に結束することにより構成されている。
このように構成されていることにより、各注入細管2aの先端吐出口5から深さの異なる複数のステージ(地層)に、浄化液を同時に、または複数のステージを任意に選択して同時注入することができる。
本発明によるVOC(揮発性有機化合物)の浄化方法の一例を以下に示す。
浄化対象汚染物質をテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンとし、多点注入工法により浄化する。
浄化液としては炭水化物、蛋白質を主体とする有機物でであって、生分解性を有し、微生物の栄養源となる微生物によって代謝されるもの、好ましくは土壌中の微生物によって代謝分解される糖類を用いる。
具体的には、例えば、グルコースやフラクトースなどの単糖類、スクロース、マルトースあるいはガラクトースなどの2糖類、その他のオリゴ糖、デンプンやマルトデキストリンなどの多糖類、その他糖類を例示することができる。
浄化原理は以下の通りである。
(1) 地中に浸透させた浄化液により、元来地中に生息する好気性微生物が活性化する。
(2) 好気性微生物が地中の酸素を消費し、嫌気性雰囲気(酸素が少ない状態)を形成する。
(3) 嫌気性微生物が浄化液により活性化し始める。嫌気性微生物によって浄化液中の有機物が分解され、水素(H)を発生する。
(4) 嫌気性微生物がVOCの塩素(Cl)を水素(H)に置き換えて分解する。
(5) VOCが無くなると、嫌気性微生物は浄化液を消費した後に減少し、元の環境に戻る。
上記浄化原理を不均質な汚染地盤において原位置浄化させるために本発明は以下の手法を用いるものとする。
図5、図6は、複数の注入地点において複数の注入ステージA,B,C,Dに、生分解性有機物を含む非硬化性浄化液を同時に注入できるように構成された多点注入装置並びに浄化工法を示したものである。
柱状浸透注入細管を用いた多点注入装置は上述したシンクロナイズ注入が容易である。図中5は吐出口であり、吐出口5を覆うゴムスリーブ等の逆止弁5aは、それを柱状に覆うスリットの入った膜やマットや網状体や帯状体からなる柱状導水部材である。浄化液は吐出口5から逆止弁5a、柱状空間導水部材6を経て柱状の浸透源7全体から吐出される。このため大きな浸透源から低圧で注入される(図2)。
図において、複数の注入地点にそれぞれ形成された各削孔1内に、図6に示す注入管装置の注入管2が建て込まれ、各注入管2の先端は閉塞され、先端の側部に浄化液吐出口5が1箇所または複数個所形成され、かつ逆止弁5aと柱状空間導水部材6がそれぞれ取り付けられている。
さらに、このように構成された各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。また、削孔1の孔壁と各注入管2との間隙3内にシールグラウト4が所定区間長にわたって充填されている。このような構成により、削孔1と注入管2との間隙3内に、管軸方向に一定区間Lの連続する複数の柱状浸透源7が管軸方向に所定間隔おきに構成されている。
このような柱状浸透注入方式を用いることにより1ステージの注入源を長くとれるため、1ステージ当たりの注入速度を大きくしても低圧で注入できるため、汚染物質の移動を防ぐことができ、かつ結束注入管の径が小さくなるため削孔径を小さくすることができるという効果が生ずる。
また、図5に示すように、注入管2を介して地盤中に該浄化液を注入するための複数のユニットポンプ12と、各注入地点において送液される浄化液の流量および/または圧力を計測するための流量・圧力計測装置13と、各注入地点を液晶化表示するための監視盤と、前記ユニットポンプ12、流量・圧力計測装置13および監視盤を制御するための集中管理装置17を備えた多点注入装置を用い、前記ユニットポンプ12を作動させ、前記監視盤において注入地点、各注入地点における浄化液の注入状況、さらには各注入地点への浄化液の送液状況を一括監視し、ユニットポンプ12および流量・圧力計測装置13を集中管理装置17によって制御しつつ、複数の注入地点に同時に、あるいは選択的に注入することにより浄化液の流れを拘束し、浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止すると共に、所定の領域で汚染物質を浄化する。
すなわち、各注入管2には浄化液が貯蔵された浄化液貯蔵タンク10が導管11を介してそれぞれ接続され、各導管11には注入材貯蔵タンク10から各注入管2に注入材を圧送するためのユニットポンプ12、各注入地点における浄化液の流量と圧力を検出するための流量・圧力検出装置13、さらに浄化液の圧送を開始および遮断するためのバルブ14がそれぞれ接続されている。
各ユニットポンプ12は、インバーター等の回転数変速機15を備え、かつモータ等の独立した駆動源16によって個々に作動するように構成されている。また、各ユニットポンプ12、回転数変速機15、流量圧力検出器13およびバルブ14は、それぞれ集中管理装置17に接続され、すべて集中管理装置17によって個々に制御されるようになっている。
このような構成において、流量・圧力検出装置13からの流量/およびまたは圧力データの信号が集中管理装置17に送信されると、貯蔵タンク10から各注入管2にそれぞれ各ユニットポンプ12の作動により浄化液が任意の注入速度、注入圧力および注入量で圧送される。
そして、複数の注入地点において、浄化液が各注入管2の浄化液吐出口2aから柱状浸透源7に同時に、あるいは選択的に同時吐出され、さらに柱状浸透源7から周囲の地盤中に同時に浸透注入されることにより、複数の注入地点の複数の注入ステージA,B,C,Dの地盤中に浄化液を同時に注入することができる。
本発明の原位置浄化工法において、浄化液の注入をシンクロナイズさせることにより、受け持ち領域外への浄化液の浸透を拘束したときの改良率と改良形状の概念図を図7および図8に示す。シンクロナイズとは隣接する注入細管の受け持ち体積の注入が同一時間内に完了して、互いにその境界面或は注入範囲を拘束するように浄化液を浸透させることを意味する。
複数の注入管から同時に拘束的に浄化液の注入を行うことで、また各土層ごとに最高の吐出速度でかつ土粒子を移動させたり亀裂を生じさせない低圧で所定範囲に浄化液が収まるように浄化することで、他の深度で注入された浄化液を押し出すことなく、あるいは汚染物質を押し出して外部に拡散することなく、注入管から一様に浄化液が行き渡らせることができる。
多点注入工法を行うにあたり、隣り合う深度の注入期間を時間差なく行うことが望ましい。時間差が生じるとは、一方の注入が先行して終了し、隣り合う他方が注入を継続している状態を指す。その際、先行して終了した側の浄化液は、隣り合う他方から汚染物質と共に注入圧力によって押し出される。
浄化液を当該対象範囲に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生することを防止するには、多点注入工法での各深度の注入時間を揃えることが望ましい。
前述した図5の装置において、注入管装置は、図6に示すように管軸方向に複数の浄化液吐出口5と当該吐出口5を覆う逆止弁5aを有し、削孔内に設置された注入管2と、当該注入管2の外周部に浄化液吐出口5および逆止弁5aを有する部分を含む管軸方向の一定範囲を覆うように取り付けられた柱状空間導水部材6からなる柱状浸透源7と、削孔1の孔壁と注入管2および柱状空間導水部材6との間隙内に充填されたシールグラウト4とから構成され、柱状空間導水部材6は管軸方向の上下両側部および孔壁側部がシールグラウト4で覆われることにより独立した柱状浸透源7を形成し、シールグラウト4は注入管2、吐出口5および逆止弁5aを介して地盤中に注入される浄化液の吐出圧によって砕かれるような強度を有し、柱状浸透源7からシールグラウト4を破って所定の注入ステージに注入されることにより、大きな吐出量でも低圧で地盤に注入され、かつ他の注入ステージから、あるいは他の注入管からの浄化液が注入管内に逆流したりすることなく独立した各注入ステージごとに地盤中に注入されるように構成される。
本発明では、複数の吐出口5から同時に吐出される複数の浄化液は流液層が互いの浸透圧によって反発し合って混合されにくく、このため、注入液は層状に水平方向に地盤中に浸透することに着目した。
浄化液は実質的に地表面に逸出することなく水平方向に浸透するという現象が生ずるため、汚染地盤を縦方向にも水平方向にも一気に浄化することが可能となる。
したがって本発明では土層毎に最高の吐出速度でかつ1つの吐出口からは土粒孔間浸透が可能な低圧注入ができ、また、隣接する浄化液の浸透圧が反発し合って層状浸透させるため、低圧で目詰まりすることなく、しかも、大きな吐出量で、長時間浸透しつづけることが可能となる。
このように、本発明では、複数のステージを同時に、浸透すれば、浄化液の上層と下層における流れは互いの浸透圧によって拘束し合い、このため、上下方向への浸透が妨げられて水平方向に浸透することを見出した。注入液は各ステージの土層の状況に応じた、注入速度、注入量を選択して注入する。
吐出口が互いに軸方向に間隔を置いて位置するように細管を複数本結束することで、地盤状況が各層ごとに異なる地盤に対しても、これら各層毎に最適な注入を同時に達成し得る。しかも、地盤中の縦方向、横方向への立体的な同時注入も可能である。
図10、図11は本発明に用いる注入管装置の例を示したものである。
従来、固結性グラウトを注入細管2aを結束してなる結束注入細管2Aから注入する場合は結束注入細管2Aを削孔中のシールグラウト4中に設置すれば結束注入細管2Aの注入細管2aどうしに空間があっても固結性グラウトと削孔中のシールグラウト4が反応して、その空間を固結して閉束してしまうために問題はなかった。
しかし、浄化液は前述したように非固化性であるため結束注入細管2Aを用いた場合、結束注入細管2Aをシールグラウト4内に設置しても注入細管2aどうしの間隙が十分填されないで空間を残すため浄化液が注入細管2aの隙間から地上に流出して所定領域に注入されにくい。このために以下の手法を用いるものとする。
(1) 削孔内のみならず結束注入細管内2Aの注入細管2aどうしの空隙をシールグラウト4で充填する方法。このためにシールグラウト注入管21を結束注入細管内2A内に設けてその空隙を密封する(図10のシールグラウト用注入管21)。シールグラウト用注入管21はシールグラウト注入と共に抜き取っても構わない。
(2) 結束注入細管2Aにセパレーター30を設けて削孔地盤中のシールグラウト4中に設置する方法(図11参照)。
(3) 結束注入細管2Aをシールグラウト4中に設け、少なくとも汚染領域よりも上部に位置する結束注入細管2Aの間隙や汚染領域よりも上部にグラウトを注入する方法(図10(d)参照)。
(4) 結束注入細管2Aの少なくとも汚染領域よりも上部に袋体23を設け、袋体23の内部に固結材を注入して結束注入細管2Aの間隙を遮断する方法(図10(a)、(b)、(c)参照)。
(5) 上記(4)において袋体23を複数設け、袋体23間に設けた注入口からグラウトを注入する方法(図10(a)、(b)参照)。
(6) 結束注入管2Aを袋体9で包み、注入吐出口を袋体9の外に開口する方法(図12参照)。
図13は本発明の注入システムを示す。
図13は浄化液を1つの注入ポンプから複数の注入細管(結束注入細管)に分岐バブルを介して同時に或は連続して注入するシステムを示す。注入圧力・注入速度・注入量の管理並びに、バブル、注入ポンプの作動はコントローラによって行われる。注入管2はそれぞれ注入細管でもよいし、4本の注入細管2を束ねてもよい。
浄化液の注入を、(A)従来技術であるダブルパッカ工法と、(B)本発明手段である多点注入工法の各々で行い、浄化液の浸透を評価した。注入地点から半径1mの範囲の土壌に、全有機炭素濃度が100mg/L以上となる浄化液量を設計し、注入を行った。
各々の工法での、注入地点から指定距離における浄化液の分布を、全有機炭素濃度によって表1に示す。
表1によると、従来技術(ダブルパッカ工法)では注入井戸から0.5mの位置における深度ごとの全有機炭素に485〜45mg/Lの幅が見られる。注入管から1.0mの位置においては、93〜20mg/Lであり、全体で485〜20mg/Lの幅であった。
一方、本発明の方法(図3を図5の様に配置した多点注入工法)では、注入井戸から0.5mの位置における深度ごとの全有機炭素に291〜234mg/Lの幅が見られる。注入井戸から1.0mの位置においては、228〜108mg/Lであり、全体で291〜108mg/Lの幅であった。
従来技術に比べて発明方法では、設計の全有機炭素濃度100mg/Lに対してバラつきが抑えられている。つまり、浄化液の浸透不十分な箇所が生じていないことが分かる。
1…削孔、2…注入管、2A…結束注入細管、2a…注入細管、3…間隙、4…シールグラウト、5…吐出口、5a…逆止弁、6…柱状空間導水部材、7…柱状浸透源、
10…浄化液貯蔵タンク、11…導管、12…ユニットポンプ、13…流量・圧力検出装置、14…逆止弁、15…回転数変速機、16…駆動源、17…集中管理装置、18…注入内管昇降装置、19…注入ステージ管理装置、
21…シールグラウト注入管、21a…吐出口、22…注入細管固定板、23…袋パッカー、24…グラウト注入管、24a…吐出口、
30…セパレーター、31…注入細管嵌合孔、32…シールグラウト注入管
本発明は、地盤中に設けた複数の注入管を介して汚染した地盤の複数の注入地点に栄養剤溶液(非固化性の浄化液)を注入して汚染されている地盤を浄化する多点注入による原位置浄化工法であって、複数の注入地点の地盤中に生分解性有機物を含む非固化性の浄化液を注入するための先端に吐出口を有する複数の注入管と、前記注入管を介して地盤中に該浄化液を注入するための複数の注入ポンプまたは分岐バルブを介した1つの注入ポンプと、各注入管に送液される浄化液の流量および圧力を計測するための流量・圧力計測装置とを備えた多点注入装置を用い、汚染浄化の対象地盤を土層毎に分け各注入管の吐出口を土層毎に位置せしめ、該吐出口の受け持ち領域の体積、透水係数及び間隙率に応じて、前記浄化液の注入量及び注入速度を設定し、各注入管における浄化液の注入状況および各注入地点への浄化液の送液状況に応じて前記注入ポンプの流量と圧力を制御し、各注入管の吐出口からの浄化液の浸透を隣接する各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うように同時間内で所定量の注入が拘束し合って完了するようにシンクロナイズさせることで、浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止すると共に、浄化液の汚染対象領域外への逸脱とそれに伴う汚染物質の原位置からの逸脱を防いで、前記浄化液の作用により汚染物質を浄化することを特徴とするものである。
図5は本発明の具体例である。図5は複数の注入地点の地盤中に生分解性有機物を含む浄化液を注入するための複数の注入管と、この注入管を介して地盤中に浄化液を注入するための複数のユニットポンプ(注入ポンプ)と、各注入管に送液される浄化液の流量および圧力を計測するための流量・圧力計測装置と、各注入地点を表示するための監視盤と、前記ユニットポンプ、流量・圧力計測装置および監視盤を制御するための集中管理装置を備えた多点注入装置を用い、ユニットポンプを作動させ、監視盤において注入管、各注入地点における浄化液の注入状況および各注入地点への浄化液の送液状況を一括監視し、ユニットポンプおよび流量・圧力計測装置を集中管理装置によって制御しつつ、複数の注入地点に同時にまたは選択的に注入することにより、各注入管からの浄化液の流れを各注入管が受け持つ所定の領域ごとに相互に拘束しながら浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止するとともに、前記浄化液の作用により汚染物質を浄化するものである。
すなわち、各注入管の受け持ち領域の体積、透水係数及び間隙率などに応じて、浄化液の注入量や注入速度あるいは注入圧を求め、各注入管からの浄化液の各領域内への浸透をシンクロナイズさせることで、浄化液の流れを各注入管が受け持つ所定の領域ごとに相互に拘束させることができる。
また、図13は1つの注入ポンプから複数の注入細管に注入管路が分岐バルブを介して分岐して同時注入するか、或は連続注入できる注入装置を示す。
本発明では、多点注入による浄化液の注入・浸透を、地盤の状況に応じて、各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うようにシンクロナイズさせて行うことを基本としており、例えば受け持ち領域の受け持ち体積Vi、透水係数Ki及び間隙率αi応じて、浄化液の注入量Li、さらに毎分吐出量liを求めて注入を行うことで、浄化液を対象範囲ごと一様に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生することを防止することができる。
また、図5に示すように、注入管2を介して地盤中に該浄化液を注入するための複数のユニットポンプ12と、各注入管に送液される浄化液の流量および圧力を計測するための流量・圧力計測装置13と、各注入地点を液晶化表示するための監視盤と、前記ユニットポンプ12、流量・圧力計測装置13および監視盤を制御するための集中管理装置17を備えた多点注入装置を用い、前記ユニットポンプ12を作動させ、前記監視盤において注入管、各注入地点における浄化液の注入状況、さらには各注入地点への浄化液の送液状況を一括監視し、ユニットポンプ12および流量・圧力計測装置13を集中管理装置17によって制御しつつ、複数の注入地点に同時に、あるいは選択的に注入することにより浄化液の流れを拘束し、浄化液の浸透が不十分な箇所が発生するのを防止すると共に、所定の領域で汚染物質を浄化する。
図13は浄化液を1つの注入ポンプから複数の注入細管(結束注入細管)に分岐バルブを介して同時に或は連続して注入するシステムを示す。注入圧力・注入速度・注入量の管理並びに、バルブ、注入ポンプの作動はコントローラによって行われる。注入管2はそれぞれ注入細管でもよいし、4本の注入細管2を束ねてもよい。