JP2014203396A - 磁気質判別装置及び磁気質判別方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】保磁力の異なる複数種類の磁性体を判別する。【解決手段】搬送路を搬送される紙葉類に含まれる磁性体の磁気質を検知して判別する磁気質判別装置を、紙葉類の搬送面と所定角度を成す方向を磁界方向とするバイアス磁界を搬送路上に発生させて、バイアス磁界の変化により磁性体の磁気量を検知する磁気検知ユニットと、磁気検知ユニットより搬送方向上流側に配置されて、バイアス磁界の磁界方向と異なる方向を磁界方向とする着磁磁界を搬送路上に発生させて磁性体を着磁する着磁ユニットとによって構成し、磁気検知ユニットによる磁気検知位置では、着磁磁界及びバイアス磁界によって、所定保磁力より保磁力が小さい低保磁力磁性体と前記所定保磁力より保磁力が大きい他の磁性体とを異なる磁化方向に磁化する。【選択図】 図1
Description
この発明は、紙葉類の磁気を検知する磁気質判別装置及び磁気質判別方法に関し、特に、保磁力の異なる複数種類の磁性体を判別することができる磁気質判別装置及び磁気質判別方法に関する。
従来、偽造防止の観点から、小切手や商品券等の紙葉類の印刷に磁性体を含んだ磁気インクが用いられている。磁気を利用したセキュリティ技術は年々高度化しており、最近の紙葉類では、1枚の紙葉類に磁気特性の異なる複数種類の磁性体が含まれる場合もある。このような紙葉類の真偽判定を行うためには、紙葉類に含まれるそれぞれの磁性体を判別する必要がある。
紙葉類に含まれる複数種類の磁性体を判別する装置として、例えば、特許文献1には、保磁力が異なる磁性体を判別する装置が開示されている。この装置では、高保磁力の磁性体及び低保磁力の磁性体を高磁力の第1磁石によって同一の磁化方向に磁化してから第1センサによって両磁性体の磁気による検出信号を得る。その後、低磁力の第2磁石によって低保磁力の磁性体の磁化方向を変更してから、第2センサによって高保磁力の磁性体の磁気のみによる検出信号を得る。そして、高保磁力の磁性体及び低保磁力の磁性体から得られた第1センサによる検出信号と、高保磁力の磁性体から得られた第2センサによる検出信号との差分として低保磁力の磁性体のみから得られる検出信号を得るものである。
しかしながら、上記従来技術によれば、高磁力及び低磁力の2つの磁石と2つの磁気センサとが必要となるため、部品点数が増えて製造コストが増加するという問題があった。また、構造が複雑である上に磁気質判別装置のサイズが大きくなるという問題もあった。
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたもので、装置の小型化を実現しながら、保磁力の異なる複数種類の磁性体を判別することができる磁気質判別装置及び磁気質判別方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、搬送路を搬送される紙葉類に含まれる磁性体の磁気質を検知して判別する磁気質判別装置であって、前記紙葉類の搬送面と所定角度を成す方向を磁界方向とするバイアス磁界を前記搬送路上に発生させて、前記バイアス磁界の変化を検出することにより前記磁性体の磁気量を検知する磁気検知ユニットと、前記磁気検知ユニットより搬送方向上流側に配置されて、前記バイアス磁界の磁界方向と異なる方向を磁界方向とする着磁磁界を前記搬送路上に発生させて前記磁性体を着磁する着磁ユニットとを備え、前記磁気検知ユニットによる磁気検知位置では、前記着磁磁界及び前記バイアス磁界によって、所定保磁力より保磁力が小さい低保磁力磁性体と前記所定保磁力より保磁力が大きい他の磁性体とを異なる磁化方向に磁化することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記着磁磁界の磁界強度は、判別対象とする磁性体のうち最大の保磁力を有する磁性体を飽和磁化状態に着磁する磁界強度に設定されて、前記バイアス磁界の磁界強度は、判別対象とする前記低保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化する磁界強度かつ前記他の磁性体を飽和磁化状態に磁化しない磁界強度に設定されることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記着磁磁界の磁界強度を判別対象のうち最大の保磁力を有する磁性体の保磁力の1.5倍以上に設定して、前記バイアス磁界の磁界強度を、判別する前記高保磁力磁性体のうち最小の保磁力を持つ磁性体の保磁力の2倍以下に設定することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、磁性体の搬送方向を0度として、前記バイアス磁界の磁界方向を30〜60度又は120〜150度に設定して、前記着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定するか、又は前記バイアス磁界の磁界方向を−30〜−60度又は−120〜−150度に設定して、前記着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記磁気検知ユニットでは、磁性体を検知した検知信号の波形形状に基づいて、前記磁性体の保磁力を判別することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、磁性体を検知した検知信号がピーク位置に対して略左右対称な波形を示した場合に、前記磁性体は低保磁力磁性体であると判定することを特徴とする。
また、本発明は、搬送路を搬送される紙葉類に含まれる磁性体の磁気質を検知して判別する磁気質判別方法であって、前記紙葉類の搬送面と所定角度を成す方向を磁界方向とするバイアス磁界を前記搬送路上に発生させて前記バイアス磁界の変化を検出することにより前記磁性体の磁気量を検知する磁気量検知工程と、前記磁気量検知工程で磁気量を検知する位置よりも搬送方向上流側で、前記バイアス磁界の磁界方向と異なる方向を磁界方向とする着磁磁界を前記搬送路上に発生させて前記磁性体を着磁する着磁工程とを含み、前記磁気量検知工程で磁気量を検知する際には、前記着磁磁界及び前記バイアス磁界によって、所定保磁力より保磁力が小さい低保磁力磁性体と前記所定保磁力より保磁力が大きい他の磁性体とを異なる磁化方向に磁化することを特徴とする。
本発明によれば、磁性体を含む紙葉類が搬送される搬送面と所定角度を成す磁界方向にバイアス磁界を発生して該バイアス磁界の変化に基づいて磁気を検知する磁気量検知型の磁気検知ユニットと、搬送方向上流側でバイアス磁界の磁界方向と異なる方向の着磁磁界を発生させる着磁ユニットとによって、磁気検知ユニットによる磁気検知時には、磁性体が保磁力に応じて異なる磁化方向に磁化されているので、磁性体の保磁力に応じて異なる検知波形を得て各磁性体を判別することができる。
以下に添付図面を参照して、この発明に係る磁気質判別装置及び磁気質判別方法の好適な実施形態を詳細に説明する。本実施形態に係る磁気質判別装置は、小切手、商品券、有価証券等の紙葉類で利用される様々な磁性体による磁気を検知して磁性体の種類を判別する機能を有する。磁気質判別装置は、例えば紙葉類処理装置内で、紙葉類に含まれる磁性体の種類を判別して真の紙葉類であるか否かを判定するために利用される。
本実施形態に係る磁気質判別装置は、磁性体を検知した信号から、磁性体が高保磁力磁性体、中保磁力磁性体及び低保磁力磁性体のいずれであるかを判別することができる。判別対象とする磁性体は、保磁力が大きい順に、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、低保磁力磁性体となる。また、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体及び低保磁力磁性体とは、高保磁力磁性体と中保磁力磁性体の保磁力の比、中保磁力磁性体と低保磁力磁性体の保磁力の比がそれぞれ2倍以上あるものを言うが、保磁力の比は10倍以上あることが好ましい。具体的には、例えば、磁気質判別装置1は、50Oeの磁性体を低保磁力磁性体、300Oeの磁性体を中保磁力磁性体、3000Oeの磁性体を高保磁力磁性体として判別を行うが、以下では、それぞれの磁性体を低保磁力磁性体、中保磁力磁性体、高保磁力磁性体と記載する。
図1は、本実施形態に係る磁気質判別装置1による磁気質判別方法を説明するための模式図である。図1(b)は磁気質判別装置1の概要を示し、同図(a)は保磁力が異なる3種類の磁性体の磁化状態を示している。
図1(b)に示すように、磁気質判別装置1は、装置上方を搬送される紙葉類100に含まれる磁性体を着磁するための着磁ユニット3と、紙葉類100に含まれる磁性体の磁気を検知するための磁気検知ユニット2とを有している。
紙葉類100は、図示しない搬送機構によって、搬送路を図1(b)に示す矢印400の方向へ搬送される。磁気質判別装置1は搬送路の下方に設置され、磁気質判別装置1内では、着磁ユニット3が磁気検知ユニット2より搬送方向上流側に配置されている。紙葉類100に含まれる磁性体は着磁ユニット3の上方を通過する際に着磁される。そして、その後、紙葉類100がさらに搬送されて、磁気検知ユニット2の上方を通過する際に磁性体を検知する信号が取得され、得られた検知信号から磁性体の種類が判別される。
着磁ユニット3は着磁磁石20を含み、磁界の方向が図1(b)に破線矢印で示す方向となるように着磁磁界を発生させる。着磁磁界は、判別対象とする磁性体の全てを飽和磁化状態に着磁する磁界強度を有している。具体的には、判別対象とする磁性体のうち最大の保磁力を有する高保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁するため、着磁磁界の磁界強度を、高保磁力磁性体の保磁力の1.5倍以上とする。ただし、着磁磁界の磁界強度は、高保磁力磁性体の保磁力の3倍以上とすることが好ましい。
なお、磁性体検知時に、保磁力の異なる各磁性体の磁化方向を異なる方向とすることができれば、高保磁力磁性体を完全な飽和磁化状態に着磁する必要はなく、飽和磁化状態に近い状態に着磁できればよい。詳細については後述する。
磁気検知ユニット2は、バイアス磁界を発生させるためのバイアス磁石30と、バイアス磁界内を通過する磁性体を検知して信号を出力する磁気センサ10とを有している。バイアス磁石30は、その周囲に図1(b)に破線矢印で示すようにバイアス磁界を発生させる。磁気検知ユニット2では、磁気センサ10が、紙葉類100が搬送される搬送面(XY平面)と角度を成すように傾いた状態で配置されることを特徴としている。このような構成を有することにより、磁気センサ10からは、磁性体の磁気量に応じた検知信号が出力される。なお、本実施形態では、磁気センサ10が1つの磁気検出素子を含む場合を示すが、磁気センサ10が2つの磁気検出素子を含む態様であっても構わない。磁気センサ10は、磁性体が通過することにより、図1(b)で上下方向に揺らぐバイアス磁界の変化量を検出するように設置されている。例えば、磁気検出素子として磁気抵抗素子を利用して、この磁気抵抗素子の抵抗値の変化を電圧値の変化として出力し、この電圧値を磁性体の検出信号として利用する。このような磁気量検知型の磁気検知ユニット2の構成、機能及び動作については、例えば、日本特許第4894040号公報に開示されているので詳細な説明は省略する。
磁気検知ユニット2で発生させるバイアス磁界の磁界強度についても、着磁磁界の磁界強度と同様に、判別対象とする磁性体の保磁力に応じて設定される。図2は、磁気質判別装置1が判別対象とする低保磁力磁性体、中保磁力磁性体及び高保磁力磁性体の3種類の磁性体の飽和磁化曲線(B−H曲線)を模式的に示したものである。バイアス磁界の磁界強度は、中保磁力磁性体の保磁力602と高保磁力磁性体の保磁力603との間で、低保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁しながら中保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁することのないように設定される。例えば、中保磁力磁性体の保磁力602の1.5倍となるように設定する。なお、上述した着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度は、図2の点601に対応する。
次に、図1(b)に示す磁気質判別装置1によって、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、及び低保磁力磁性体の各磁性体を判別する方法について説明する。なお、以下では、磁界の方向を図中矢印と角度によって説明する。角度については、図1(a)右図に示すように、搬送方向400と一致するY軸正方向を0度として、搬送路上方となるZ軸正方向を90度、搬送方向400の逆方向となるY軸負方向を180度として表す。また、同じくY軸正方向を0度として、搬送路下方となるZ軸負方向を−90度、Y軸負方向を−180度として表すこととする。
着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度は、例えば、図1(b)に示す着磁磁石20のS極側かつ搬送方向側のエッジに対応する搬送路上の位置P1で、高保磁力磁性体の保磁力(3000Oe)の1.5倍の強度(4500G)であるものとする。また、例えば、磁気検知ユニット2におけるバイアス磁界の磁界強度は、磁気センサ10により各磁性体の磁気を検知する搬送路上の位置P4で、中保磁力磁性体の保磁力(300Oe)の1.5倍(450G)であるものとする。
磁気センサ10により磁性体の磁気を検知する位置P4では、バイアス磁界の磁界方向302が30〜60度の間に設定される。位置P1の着磁磁界の磁界方向201は判別対象とする磁性体の保磁力に基づいて設定されるが、例えば、高保磁力磁性体を判別対象とする場合には−100〜−170度の範囲内となるように設定される。以下では、位置P1の磁界方向が−160度であるものとして説明する。
紙葉類100に含まれる磁性体が高保磁力磁性体(3000Oe)である場合には、着磁ユニット3の上方を搬送方向400へ搬送されると、着磁磁界の磁界強度(4500G)が強力であるため、図1(b)に示す位置P1を通過する際に、飽和磁化状態又は飽和磁化状態に近い状態に着磁される。このとき、図1(a)に示すように、高保磁力磁性体の磁化方向501aは、位置P1における着磁磁界の磁界方向201と同じ方向(−160度)となる。高保磁力磁性体は、その磁化方向が−150〜−170度の間で飽和磁化状態となる。
紙葉類100は、図1(b)に示す位置P1を通過して、さらに搬送方向400へ搬送されるが、着磁磁界の磁界強度は徐々に弱まるため、この影響を受けることはない。このため、高保磁力磁性体の磁化状態は変化せず、位置P2を通過する際の高保磁力磁性体の磁化方向502aは、着磁位置P1での磁化方向501aを保った方向となる。
紙葉類100がさらに搬送されて、バイアス磁界に進入しても、バイアス磁界の磁界強度(450G)が高保磁力磁性体の保磁力(3000Oe)の1/6以下と弱いため影響を受けることはない。このため、位置P3を通過する際の磁化方向503a及び位置P4を通過する際の磁化方向504aについても、着磁時と同じ磁化方向501a(−160度)を保った方向となる。
紙葉類100に含まれる磁性体が中保磁力磁性体である場合には、図1(b)に示すように、着磁ユニット3の上方を搬送方向400へ搬送されると、高保磁力磁性体の場合と同様に位置P1で飽和磁化状態に着磁される。このときの中保磁力磁性体の磁化方向501bは、高保磁力磁性体の場合と同様に、位置P1での着磁磁界の磁界方向201と同じ方向となる。ところが、中保磁力磁性体では、高保磁力磁性体に比べて保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界による影響を受け続け、磁化方向は着磁磁界の方向に応じて変化する。そして、位置P2を通過するときには、中保磁力磁性体の磁化方向502bは着磁磁界の磁界方向202と同じ方向(180度付近)となる。更に、搬送されると着磁磁界の磁界方向が180度から170度の方向に変化しながら磁界強度は減衰し、中保磁力磁性体の磁化への作用は無くなる。
紙葉類100がさらに搬送されて、バイアス磁界に進入すると、ここでもバイアス磁界による影響を受ける。位置P3では、位置P3のバイアス磁界の磁界方向301と一致する方向へ向けて、位置P2での磁化方向502bから僅かに回転した磁化方向503bとなる。そして、位置P4でも該位置でのバイアス磁界の方向302と一致する方向へ向けて、位置P3の磁化方向503bから僅かに回転した方向504bとなる。ただし、バイアス磁界の磁界強度(450G)は、中保磁力磁性体の保磁力(300Oe)を飽和磁化状態にする強度より小さいために、中保磁力磁性体の最終的な磁化方向は、着磁磁界を抜けるときの磁化方向502b(180度付近)と位置P4でのバイアス磁界の磁界方向302(30〜60度)との間の方向504bとなる。例えば、位置P4での中保磁力磁性体の磁化方向504bは120度付近となる。
紙葉類100に含まれる磁性体が低保磁力磁性体である場合には、図1(b)に示すように、着磁ユニット3の上方を搬送方向400へ搬送されると、他の磁性体の場合と同様に位置P1で飽和磁化状態に着磁される。このときの低保磁力磁性体の磁化方向501cは、他の磁性体と同様に、位置P1での着磁磁界の磁界方向201と同じ方向となる。ところが、低保磁力磁性体は保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界による影響を受け続け、磁化方向は着磁磁界の方向に応じて変化する。このため、中保磁力磁性体と同様に、位置P2を通過するときの磁化方向502cは、着磁磁界の磁界方向202と同じ方向(180度付近)となる。
紙葉類100がさらに搬送されて、バイアス磁界に進入すると、ここでもバイアス磁界による影響を受ける。位置P3では、低保磁力磁性体の磁化方向502cは該位置でのバイアス磁界の磁界方向301と同じ磁化方向503cとなり、位置P4でもバイアス磁界の方向302と同じ磁化方向504cとなる。バイアス磁界の磁界強度(450G)が低保磁力磁性体の保磁力(50Oe)より十分に大きく、低保磁力磁性体が各位置で飽和磁化状態となるために、各位置での低保磁力磁性体の磁化方向は、各位置でのバイアス磁界の方向と一致する方向となる。
磁性体を飽和磁化状態とするためには、保磁力の3倍の磁界強度が必要とされている。このため、磁気質判別装置1では、磁気センサ10による磁気を検知する位置P4でのバイアス磁界の磁界強度を、判別対象とする低保磁力磁性体の保磁力の3倍以上かつ中保磁力磁性体の保磁力の2倍以下としている。ただし、中磁力磁性体の保磁力に相当する磁界の近傍を除く。このバイアス磁界では中保磁力の磁性体の出力が0となる為である。例えば、保磁力50Oeの低保磁力磁性体を飽和磁化状態としながら、保磁力300Oeの中保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁することがないように、磁界強度を450Oeに設定する。これにより、低保磁力磁性体の位置P4での磁化方向504cを、位置P4でのバイアス磁界方向302と同じ方向とすることができる。これに対して、中保磁力磁性体の磁化方向はバイアス磁界内で変化するが、変化後もバイアス磁界の磁化方向302と一致しない方向となるように着磁磁界が設定されている。このため、位置P4での中保磁力磁性体の磁化方向504bと低保磁力磁性体の磁化方向504cとを異なる方向とすることができる。
また、高保磁力磁性体では、バイアス磁界による影響を受けることなく着磁磁界の磁界方向201と同じ磁化方向501aを維持するが、着磁磁界の磁界方向201が、位置P4での中保磁力磁性体の磁化方向504b及び低保磁力磁性体の磁化方向504cと異なる方向となるように設定されているので、位置P4での高保磁力磁性体の磁化方向504aを、他の磁性体の磁化方向504b及び504cと異なる方向とすることができる。なお、高保磁力磁性体の磁化方向504aを、中保磁力磁性体及び低保磁力磁性体の磁化方向504b、504cと異なる方向とすることができれば、高保磁力磁性体を飽和着磁磁化状態に着磁する必要はなく、飽和着磁状態に近い状態に着磁する態様であっても構わない。
このように、磁気質判別装置1では、磁気検知ユニット2によって磁気を検知する搬送路上の位置P4で、高保磁力磁性体の磁化方向504a、中保磁力磁性体の磁化方向504b及び低保磁力磁性体の磁化方向504cが全て異なる方向となる点を1つの特徴としている。
図1に示す磁気質判別装置1では、着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度を、高保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁可能な磁界強度として、バイアス磁界の磁界強度を高保磁力磁性体の磁化状態に影響しない磁界強度としている。また、高保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁する位置P1の着磁磁界の磁界方向201と、磁性体を検知する位置P4でのバイアス磁界の磁界方向302とを、これらの方向が原点に対して対向する象限内にある様に設定している。さらに、位置P4でのバイアス磁界の磁界強度を、低保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化する強度かつ中保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化しない強度としている。以上の通り設定することにより、位置P4において、高保磁力磁性体の磁化方向504aを着磁磁界の磁界方向201と同じ方向として、低保磁力磁性体の磁化方向504cをバイアス磁界の磁界方向302として、中保磁力磁性体の磁化方向504bを高保磁力磁性体の磁化方向504aと低保磁力磁性体の磁化方向504cとの間の方向とすることができる。なお、上述した着磁磁界の磁界方向及び磁界強度を実現することができれば、着磁ユニット3に含まれる磁石20の種類、数及び形状等は特に限定されない。
次に、このように、それぞれ異なる磁化方向に磁化された高保磁力磁性体、中保磁力磁性体及び低保磁力磁性体を、磁気検知ユニット2の磁気センサ10で検知した際に得られる検知信号について説明する。
図3は、磁化方向507〜510に磁化された磁性体の直下近傍(約0.5mm位置)におけるZ軸方向の磁界分布を示している。磁化方向が上向き507のときにはZ軸方向の磁界分布は図3(a)の様になり、磁化方向が左向き508のときにはZ軸方向の磁界分布は図3(b)の様になり、磁化方向が斜め方向509、510の場合には図3(c)、(d)の様になる。バイアス磁石30によって発生するバイアス磁界中を、図3に示すように磁化された磁性体が通過するとバイアス磁界の方向及び密度に変化が生ずる。磁気センサ10は、このバイアス磁界の変化を検知信号として出力する。なお、図3の左方向が図1の180度方向、図3の上方向が図1の90度方向に対応している。
図4は、バイアス磁界の変化と磁気センサ10による検知信号との関係を説明する図である。図4では、通過する磁性体の磁化方向を上部に示し、バイアス磁界の磁力線の変化を下部に示している。図4(a)に示すように、磁気センサ10が磁性体を検知する位置P4を磁化方向505の磁性体が通過すると、磁力線は破線で示した初期状態から実線で示すように上方向に変化する。このとき、磁気センサ10からはバイアス磁界の磁界方向の変化及び磁束密度の変化に応じた正出力の検知信号が得られるように設定されている。これに対して、図4(b)に示すように、磁気センサ10が磁性体を検知する位置P4を磁化方向506の磁性体が通過すると、磁力線は破線で示した初期状態から実線で示したように下方向に変化する。このとき、磁気センサ10からはバイアス磁界の磁界方向の変化及び磁束密度の変化に応じた負出力の検知信号が得られるように設定されている。
図5は、図1(b)に示す磁気質判別装置1で、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103及び積層磁性体104、105を磁気検知ユニット2で検知した際の検知信号の波形を示している。縦軸が磁気センサ10からの出力、横軸が時間を示しており、各磁性体を含む紙葉類100が位置P4を通過した際に磁気センサ10から出力される検知信号が図5に示す波形となる。図5では、各図の上部に各検知信号に対応する各磁性体101〜105を示している。
図5(c)に示す低保磁力磁性体103では、略全域で正の出力を示し、波形はピーク位置に対して略左右対称な波形となる。低保磁力磁性体103については、バイアス磁界により飽和磁化される状態にあるため、磁気センサ10による検知信号の波形は、低保磁力磁性体が発する磁界によるものとはならない。低保磁力磁性体は透磁率が高く磁力線を集めるように作用することから、低保磁力磁性体が位置P4に近づくほど磁気センサ10から出力される検知信号の振幅が大きくなる。このため、低保磁力磁性体を検知して得られる検知信号は、位置P4近傍を通過する際に最大値を示して、その前後で略対称な波形を示す。
図5(b)は、中保磁力磁性体102の検知信号を示している。図1(b)に示す磁気質判別装置1の位置P4では、中保磁力磁性体の磁化方向は左斜め上方を向いている。このときの中保磁力磁性体の直下近傍でのZ軸方向の磁界分布は図3(d)のようになっており、この磁界分布の形を右からたどるように磁気信号が検知される。その結果、図5(b)に示すように、正の出力を示した後に負の出力を示す検知信号となる。低保磁力磁性体103と同様に略全域で正の出力となるが正の出力の波形はピーク位置に対して左右非対称な波形となることから、中保磁力磁性体102の検知信号と低保磁力磁性体103の検知信号とを区別することができる。
図5(a)は、高保磁力磁性体101の検知信号を示している。図1(b)に示す磁気質判別装置1の位置P4では、高保磁力磁性体の磁化方向は左斜め下方を向いている。このときの高保磁力磁性体の直下近傍でのZ軸方向の磁界分布は図3(c)のようになっており、この磁界分布の形を右からたどるように磁気信号が検知される。その結果、図5(a)に示すように、正の出力を示した後に負の出力を示す検知信号となる。中保磁力磁性体102と同様に正の出力で左右非対称の波形を示すが、高保磁力磁性体101の検知信号は、検知信号の大半で負の出力を示すことから、高保磁力磁性体101の検知信号と、低保磁力磁性体103及び中保磁力磁性体102の検知信号とを区別することができる。
図5(d)に示す高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102からなる積層磁性体104では、正の出力を示した後に負の出力を示す。積層磁性体104では、高保磁力磁性体101の検知信号と中保磁力磁性体102の検知信号を加算した波形となる。積層磁性体104の検知信号は、図5(a)に示す高保磁力磁性体101と同様に正負両方に振れる出力を示す。しかし、積層磁性体104の検知信号では高保磁力磁性体101の検知信号と異なり、正負の振幅が略同じ大きさとなることから、積層磁性体104の検知信号と高保磁力磁性体101の検知信号とを区別することができる。判別対象に含まれる積層磁性体が1種類のみで、高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102からなる積層磁性体104である場合は、この判別方法により当該積層磁性体104が紙葉類100上の所定の場所に存在していることを認識できる。
図5(e)に示す高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103からなる積層磁性体105では、正の出力を示した後に負の出力を示す。積層磁性体105では、高保磁力磁性体101の検知信号と低保磁力磁性体103の検知信号を加算した波形となる。積層磁性体105の検知信号は、図5(a)に示す高保磁力磁性体101と同様に正負両方に振れる出力を示す。しかし、積層磁性体105の検知信号では高保磁力磁性体101の検知信号と異なり、正負の振幅が略同じ大きさとなることから、積層磁性体105の検知信号と高保磁力磁性体101の検知信号とを区別することができる。判別対象に含まれる積層磁性体が1種類のみで、高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103からなる積層磁性体105である場合は、この判別方法により当該積層磁性体105が紙葉類100上の所定の場所に存在していることを認識できる。
この積層磁性体の判別方法において、判別すべき積層磁性体が、高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102との組合せ、又は高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103との組合せのうち、両組合せが共存する場合を除き、検知された積層磁性体の信号は、積層磁性体が高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102からなる積層磁性体104、又は高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103からなる積層磁性体105であると判断できる。
なお、図5の(d)および(e)での積層磁性体の検知信号の説明では、共に高保磁力磁性体101が上層にある場合について説明したが、高保磁力磁性体101が下層にある積層磁性体の検知信号もそれぞれ同様となり、積層の位置関係には影響されない。
なお、図5に示すように、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)間で区別可能な波形を有する検知信号を得るためには、例えば、図1に示すように、着磁磁石20のエッジ部分で着磁磁界の方向201を−160度付近として、磁気センサ10に対応する位置P4のバイアス磁界の方向302を30〜60度とする。
ただし、着磁位置P1における着磁磁界の方向201、磁気を検知する検知位置P4におけるバイアス磁界方向302及び搬送方向400の関係については、図1に示す関係に限定されるものではない。図6は、着磁磁界の磁界方向、バイアス磁界の磁界方向及び搬送方向が異なる磁気質判別装置1について説明する図である。図6(a)及び(c)は紙葉類100を順方向搬送する場合の関係を示し、同図(b)及び(d)は紙葉類100を逆方向搬送する場合の関係を示している。ここで、順方向搬送とは搬送方向400とバイアス磁界の磁界方向301との間の角度が90度以下となる場合を言い、逆方向搬送とは搬送方向400とバイアス磁界の磁界方向303との間の角度が90度以上となる場合を言う。
図6(a)に示す順方向搬送は、図1に対応するもので、搬送方向400を0度方向、検知位置P4のバイアス磁界の方向301を30〜60度とする場合である。順方向搬送では、図6(a)左図に示すように、着磁磁界の方向201を−100〜−170度の間に設定する。
図6(b)に示す逆方向搬送の磁気検知ユニット2は、同図(a)に示す順方向搬送の磁気検知ユニット2をZ軸周りに180度反転して設置した状態にある。図6(b)に示す逆方向搬送の場合には、検知位置P4のバイアス磁界の磁界方向303が、順方向搬送の場合の磁界方向301をZ軸に対して反転した方向、すなわち120〜150度の方向となる。そして、着磁位置P1での着磁磁界の磁界方向203についても、同様に、順方向搬送の場合の磁界方向201をZ軸に対して反転した方向、すなわち−10〜−80度となる。このような着磁磁界の磁界方向203を実現するため、着磁ユニット3に含まれる着磁磁石20を搬送路の上方に設置している。
図6(c)に示す順方向搬送の磁気検知ユニット2では、着磁磁界の磁界方向201は同図(a)に示す磁気検知ユニット2と同じ方向(−100〜−170度)であるが、バイアス磁界の磁界方向305が、同図(a)に示す磁気検知ユニット2のバイアス磁界の磁界方向301をY軸に対して反転した方向、すなわち−30〜−60度となっている。また、図6(d)に示す逆方向搬送の磁気検知ユニット2では、着磁磁界の磁界方向203は同図(b)に示す磁気検知ユニット2と同じ方向(−10〜−80度)であるが、バイアス磁界の磁界方向306が、同図(b)に示す磁気検知ユニット2のバイアス磁界の磁界方向303をY軸に対して反転した方向、すなわち−120〜−150度となっている。
このように、搬送方向400を0度として、バイアス磁界の磁界方向と着磁磁界の磁界方向の組み合わせを、図6(a)に示す30〜60度と−100〜−170度、同図(b)に示す120〜150度と−10〜−80度、同図(c)に示す−30〜−60度と−100〜−170度、又は同図(d)に示す−120〜−150度と−10〜−80度に設定すれば、図5に示すように、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)間で区別可能な波形を有する検知信号を得ることができる。
また、図6では、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102及び低保磁力磁性体103をそれぞれ判別する場合を示したが、例えば、低保磁力磁性体103と、その他の磁性体とを判別できればよい場合には、着磁磁界の磁界方向として設定可能な角度範囲が緩和される。図7は、図6に示す磁気質判別装置1で、低保磁力磁性体103と、その他の磁性体、すなわち高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102及び積層磁性体104とを判別する場合の着磁磁界の磁界方向とバイアス磁界の磁界方向との関係を説明する図である。図7(a)〜(d)が、それぞれ図6(a)〜(d)に対応している。
具体的には、図6(a)に示す順方向搬送の磁気質判別装置1で、低保磁力磁性体103とその他の磁性体とを判別する場合には、 図7(a)に示すように、着磁磁界の磁界方向を80〜100度以外の方向に設定すればよい。同様に、図6(b)〜(d)に示す磁気質判別装置1でも、低保磁力磁性体103とその他の磁性体とを判別する場合には、 図7(b)〜(d)に示すように、着磁磁界の磁界方向を80〜100度以外の方向に設定すればよい。このように設定することで、図5に示すように、低保磁力磁性体103では正出力のみを示し、その他の磁性体では一部又は全部が負出力となるので、これらを判別することが可能となる。
すなわち、搬送方向400を0度として、バイアス磁界の磁界方向を30〜60度又は120〜150度に設定して、着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定するか、又はバイアス磁界の磁界方向を−30〜−60度又は−120〜−150度に設定して着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定すれば、低保磁力磁性体103とその他の磁性体とを判別することができる。
図8は、図6(b)に示す逆方向搬送の場合の磁気質判別方法を説明するための模式図である。図8(b)は、磁気質判別装置1の概要を示し、同図(a)には、保磁力が異なる3種類の磁性体の磁化状態を示している。装置構成としては、着磁磁石20を含む着磁ユニット3が搬送路の上方に配置される点と、磁気センサ10及びバイアス磁石30を含む磁気検知ユニット2がZ軸周りに反転した形で配置される点とが、図1に示す磁気質判別装置1と異なっている。図8(b)に示す磁気質判別装置1では、着磁磁界の磁界方向203及びバイアス磁界の磁界方向303が、図1(b)に示す方向201及び302をZ軸に対して反転した方向となる。
紙葉類100に含まれる磁性体が高保磁力磁性体である場合には、着磁ユニット3の下方を搬送方向400へ搬送されると、着磁磁界の磁界強度(4500G)が強力であるため、図8(b)に示す位置P1を通過する際に、飽和磁化状態又は飽和磁化状態に近い磁化状態に着磁される。このとき、図8(a)に示すように、高保磁力磁性体の磁化方向511aは、位置P1における着磁磁界の方向203と同じ方向(−20度)となる。紙葉類100が搬送方向400へ搬送されても、これ以降は、高保磁力磁性体の磁化状態を変えるほどの磁界が存在しないため、その後の磁化方向512a、513a及び514aは、着磁時の磁化方向511a、すなわち着磁磁界の磁界方向203と同じ方向のままとなる。
紙葉類100に含まれる磁性体が中保磁力磁性体である場合には、位置P1で飽和磁化状態に着磁される。ところが、高保磁力磁性体に比べて保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間に、着磁磁界及びバイアス磁界による影響を受け続けて、位置P2での磁化方向512b、位置P3での磁化方向513bが変化する。最終的な磁化方向514bは、着磁磁界を抜けるときの位置P2の磁界方向204と、位置P4でのバイアス磁界の磁界方向303との間の方向となる。
紙葉類100に含まれる磁性体が低保磁力磁性体である場合には、保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界及びバイアス磁界による影響を受け続け、各位置P1〜P4での磁化方向511c〜514cは、その位置での磁界方向203、204、304及び303と同じ方向となる。
このように、逆方向搬送の場合も、図1に示す順方向搬送の場合と同様に、磁性体を検知する検知位置P4で、高保磁力磁性体の磁化方向514a、中保磁力磁性体の磁化方向514b及び低保磁力磁性体の磁化方向514cを全て異なる方向とすることができる。これにより、図5に示す順方向搬送の検知信号と同様に、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)間で異なる波形の検知信号を得ることができる。
図9は、図8(b)に示す逆方向搬送の磁気質判別装置1で、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103及び積層磁性体104、105を磁気検知ユニット2で検知した際の検知信号の波形を示している。縦軸が磁気センサ10の出力、横軸が時間を示しており、各磁性体を含む紙葉類100が位置P4を通過した際に磁気センサ10から出力される検知信号が図9に示す波形となる。なお、図9でも、図5と同様に、各図の上部に検知信号に対応する各磁性体101〜105を示している。
図9(c)に示す低保磁力磁性体103の検知信号の波形は、逆方向搬送の場合でも、順方向搬送の場合と同様に、略全域で正の出力を示し、波形はピーク位置に対して略左右対称な波形となる。
図9(b)に示す中保磁力磁性体102の検知信号では、略全域で正の出力を示す。この検知信号は、低保磁力磁性体103と同様に正の出力を示すが、ピーク位置に対して左右非対称な波形となることから、低保磁力磁性体103の検知信号と区別することができる。
図9(a)に示す高保磁力磁性体101の検知信号では、負の出力を示した後に正の出力を示す。この検知信号は、検知信号の大半で負の出力を示すことから、低保磁力磁性体103及び中保磁力磁性体102の検知信号と区別することができる。
図9(d)及び(e)に示す積層磁性体104、105では、負の出力を示した後に正の出力を示す。図4(d)の積層磁性体104では、高保磁力磁性体101の出力と中保磁力磁性体102の波形を加算した波形となり、同図(e)の積層磁性体105では、高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103の波形を加算した波形となる。積層磁性体104、105の検知信号は、図9(a)に示す高保磁力磁性体101と同様に正負両方の出力を示す。しかし、積層磁性体104、105の検知信号では高保磁力磁性体101の検知信号と異なり正負の振幅が略同じ大きさとなることから、積層磁性体104、105の検知信号と高保磁力磁性体101の検知信号とを区別することができる。
順方向搬送ではバイアス磁界内に進入してすぐに磁気を検知する位置P4に到達するが、逆方向搬送では、位置P4に至るまでの間に中保磁力磁性体102に対するバイアス磁界の影響が大きくなる。具体的には、バイアス磁界の影響を受けて中保磁力磁性体102の磁化量が減少し、図5(b)及び図9(b)の検知信号の比較から分かるように、逆方向搬送の検知信号は順方向搬送の検知信号より振幅が小さい波形となる。なお、高保磁力磁性体101については、保磁力に比べてバイアス磁界の磁界強度が小さいために、バイアス磁界の影響を受けることはない。
このように、順方向搬送と逆方向搬送とで磁性体の検知信号波形が異なるが、いずれの場合でも、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)で異なる検知信号を示すため、検知信号に基づいて各磁性体101〜103のそれぞれ及び、104又は105を判別することができる。
検知信号に基づく高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103のそれぞれ及び、積層磁性体(104又は105)の判別は、検知信号の振幅とピーク位置に対する信号波形の対称性とに基づいて判定する。例えば、負側のピーク位置の振幅が所定値より大きい場合は、負の出力が得られた時間と正の出力が得られた時間との割合から、検知信号の大半が負の出力であれば高保磁力磁性体101と判定し、そうでなければ積層磁性体104と判定する。また、負側のピーク位置の振幅が所定値より小さい場合は、正側の波形がピーク位置に対して略対称な波形であれば低保磁力磁性体103と判定し、非対称な波形であれば中保磁力磁性体102と判定する。なお、信号波形の対称性を判定する方法は特に限定されないが、例えば、ピーク位置から、両方向で振幅が0(ゼロ)となる位置までの横軸方向の距離を比較して対称性を判定してもよいし、元波形とピーク位置を軸として左右反転した波形との相関性から対称性を判定しても構わない。
本実施形態に係る磁気質判別装置1によれば、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、低保磁力磁性体及び積層磁性体を判別できるので、紙葉類100の種類によって、含まれる磁性体が異なる場合でも、各紙葉類100に含まれる磁性体の種類を判別して、紙葉類100の真偽判定を行うことができる。また、紙葉類100に、各磁性体によりパターンが描かれている場合でもこれを認識することができる。また、各磁性体の組み合わせによりコードが形成されている場合でも、各磁性体を正確に判別してコードを認識することができる。
上述してきたように、本実施形態によれば、着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度及び磁界方向と、磁気検知ユニット2によるバイアス磁界の磁界強度及び磁界方向とを適切に設定することにより、磁気検知ユニット2により磁気を検知する位置で、各磁性体の磁化方向を異なる方向とすることができるので、磁気を検知した検知信号の特徴から各磁性体を判別することができる。
例えば、着磁磁界の磁界強度を、高保磁力磁性体を飽和磁化状態にする磁界強度として、バイアス磁界の磁界強度を、低保磁力磁性体を飽和磁化状態としてかつ中保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化することのない磁界強度にすると共に、磁気検知ユニット2によって磁性体を検知する位置のバイアス磁界の方向を各磁性体を着磁する磁界の方向と異なる方向に設定することにより、検知信号の振幅及び波形から高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、低保磁力磁性体及び積層磁性体を判別することができる。
また、例えば、1つの着磁磁石20のみで上述した着磁磁界を実現して、1つの磁気センサ10により検知信号を得て各磁性体を判別することができるので、磁気質判別装置1を小型かつ安価な装置とすることができる。
以上のように、本発明は、小型の磁気質判別装置により保磁力の異なる複数の磁性体を検知して判別するために有用な技術である。
1 磁気質判別装置
2 磁気検知ユニット
3 着磁ユニット
10 磁気センサ
20 着磁磁石
30 バイアス磁石
100 紙葉類
2 磁気検知ユニット
3 着磁ユニット
10 磁気センサ
20 着磁磁石
30 バイアス磁石
100 紙葉類
Claims (7)
- 搬送路を搬送される紙葉類に含まれる磁性体の磁気質を検知して判別する磁気質判別装置であって、
前記紙葉類の搬送面と所定角度を成す方向を磁界方向とするバイアス磁界を前記搬送路上に発生させて、前記バイアス磁界の変化を検出することにより前記磁性体の磁気量を検知する磁気検知ユニットと、
前記磁気検知ユニットより搬送方向上流側に配置されて、前記バイアス磁界の磁界方向と異なる方向を磁界方向とする着磁磁界を前記搬送路上に発生させて前記磁性体を着磁する着磁ユニットと
を備え、
前記磁気検知ユニットによる磁気検知位置では、前記着磁磁界及び前記バイアス磁界によって、所定保磁力より保磁力が小さい低保磁力磁性体と前記所定保磁力より保磁力が大きい他の磁性体とを異なる磁化方向に磁化する
ことを特徴とする磁気質判別装置。 - 前記着磁磁界の磁界強度は、判別対象とする磁性体のうち最大の保磁力を有する磁性体を飽和磁化状態に着磁する磁界強度に設定されて、
前記バイアス磁界の磁界強度は、判別対象とする前記低保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化する磁界強度かつ前記他の磁性体を飽和磁化状態に磁化しない磁界強度に設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気質判別装置。 - 前記着磁磁界の磁界強度を判別対象のうち最大の保磁力を有する磁性体の保磁力の1.5倍以上に設定して、
前記バイアス磁界の磁界強度を、判別する前記高保磁力磁性体のうち最小の保磁力を持つ磁性体の保磁力の2倍以下に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気質判別装置。 - 磁性体の搬送方向を0度として、
前記バイアス磁界の磁界方向を30〜60度又は120〜150度に設定して、前記着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定するか、又は
前記バイアス磁界の磁界方向を−30〜−60度又は−120〜−150度に設定して、前記着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定する
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の磁気質判別装置。 - 前記磁気検知ユニットでは、磁性体を検知した検知信号の波形形状に基づいて、前記磁性体の保磁力を判別することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気質判別装置。
- 磁性体を検知した検知信号がピーク位置に対して略左右対称な波形を示した場合に、前記磁性体は低保磁力磁性体であると判定することを特徴とする請求項5に記載の磁気質判別装置。
- 搬送路を搬送される紙葉類に含まれる磁性体の磁気質を検知して判別する磁気質判別方法であって、
前記紙葉類の搬送面と所定角度を成す方向を磁界方向とするバイアス磁界を前記搬送路上に発生させて前記バイアス磁界の変化を検出することにより前記磁性体の磁気量を検知する磁気量検知工程と、
前記磁気量検知工程で磁気量を検知する位置よりも搬送方向上流側で、前記バイアス磁界の磁界方向と異なる方向を磁界方向とする着磁磁界を前記搬送路上に発生させて前記磁性体を着磁する着磁工程と
を含み、
前記磁気量検知工程で磁気量を検知する際には、前記着磁磁界及び前記バイアス磁界によって、所定保磁力より保磁力が小さい低保磁力磁性体と前記所定保磁力より保磁力が大きい他の磁性体とを異なる磁化方向に磁化する
ことを特徴とする磁気質判別方法。
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