JP2014175590A - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】高発光効率と耐久性を両立した有機薄膜発光素子を提供すること。
【解決手段】陽極および陰極からなる1対の電極と、前記1対の電極間に配置された有機層からなる有機電界発光素子であって、前記有機層がホスト材料とド−パント材料からなる発光層とを有し、ホスト材料の還元電位Erd(Host)とド−パント材料の還元電位Erd(Dopant)の絶対値の差ΔErdが
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V
の関係を満たすことを特徴とする有機電界発光素子。
【選択図】 なし
【解決手段】陽極および陰極からなる1対の電極と、前記1対の電極間に配置された有機層からなる有機電界発光素子であって、前記有機層がホスト材料とド−パント材料からなる発光層とを有し、ホスト材料の還元電位Erd(Host)とド−パント材料の還元電位Erd(Dopant)の絶対値の差ΔErdが
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V
の関係を満たすことを特徴とする有機電界発光素子。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電気エネルギーを光に変換できる有機電界発光素子に関する。本発明は、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機および光信号発生器などの分野に利用可能である。
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機薄膜発光素子の研究が、近年活発に行われている。この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、蛍光材料を選ぶことによる多色発光が特徴であり、注目を集めている。
この研究は、コダック社のC.W.Tangらによって有機薄膜素子が高輝度に発光することが示されて以来、多数の実用化検討がなされており、有機薄膜発光素子は、携帯電話のメインディスプレイなどに採用されるなど着実に実用化が進んでいる。しかし、まだ技術的な課題も多く、中でも素子の高発光効率化と長寿命化の両立は大きな課題のひとつである。特に青色発光素子に関しては高効率発光・長寿命の両立に対する有効な解決手段が見出されておらず、更なる特性向上が必要であった。
青色発光素子の高効率発光・長寿命化に関して、例えば特許文献1には、発光層中のホスト材料とドーパント材料の軌道エネルギーの関係を規定した発光素子が開示されている。
本発明は高効率発光かつ耐久寿命に優れた有機薄膜発光素子を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上述の問題を解決するために鋭意検討した結果、発光層に用いられるホスト材料とドーパント材料の還元電位の差が発光素子の寿命特性に密接に関わっていることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、陽極および陰極からなる1対の電極と、前記1対の電極間に配置された有機層からなる有機電界発光素子であって、前記有機層がホスト材料とド−パント材料からなる発光層とを有し、ホスト材料の還元電位Erd(Host)とド−パント材料の還元電位Erd(Dopant)の絶対値の差ΔErdが
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V
の関係を満たすことを特徴とする有機電界発光素子である。
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V
の関係を満たすことを特徴とする有機電界発光素子である。
本発明により、高発光効率かつ耐久寿命に優れた有機薄膜発光素子を提供することができる。
本発明の発光素子の実施の形態について詳細に説明する。本発明の発光素子は、陽極および陰極からなる1対の電極と、前記1対の電極間に配置された有機層からなる有機電界発光素子であって、前記有機層がホスト材料とド−パント材料からなる発光層とを有し、ホスト材料の還元電位Erd(Host)とド−パント材料の還元電位Erd(Dopant)の絶対値の差ΔErdが、
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V
の関係を満たすことを特徴とする。
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V
の関係を満たすことを特徴とする。
有機層は、発光層のみからなる構成の他に、1)発光層/電子輸送層、2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、3)正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層、4)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層などの積層構成が挙げられる。また、上記各層は、それぞれ単一層、複数層のいずれでもよい。
本発明において、発光層はホスト材料とドーパント材料から形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであってもいずれでもよいが、ホスト材料を複数用いる場合は還元電位の絶対値が最も小さい材料の還元電位をErd(Host)とする。またドーパント材料を複数用いる場合には還元電位の絶対値が最も小さい材料の還元電位をErd(Dopant)とする。ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、発光層全体に対するドープ濃度が20重量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法は、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
一般に発光素子を高効率化させる場合、発光層に多くの電子を注入するのが効果的であるが、電子を注入すればするほど発光層内の電子と正孔のキャリアバランスが崩れたり、発光領域が発光層の陽極側の界面に極端に偏る傾向があった。そのため、素子の発光効率の低下や連続駆動による劣化が問題となることがあった。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、発光層を形成するホスト材料のErd(Host)とドーパント材料のErd(Dopant)が下記のような関係を満たすと、発光素子の長寿命化と高効率化の両立が可能になることを見出した。
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V。
ΔErdはその値が大きいほど、発光層中のドーパント材料がホスト材料よりも還元されやすい、すなわち電子を受け取りやすいことを示す。この値が十分に大きいとドーパント材料は発光層中で電子トラップ性を発現し、この効果によりキャリアバランスの崩れや発光領域の極端な偏りが解消されるため、発光素子が長寿命化かつ高効率化すると考えられる。ΔErdの値として好ましくは0.20V<ΔErd<0.70Vであり、さらに好ましくは0.25V<ΔErd<0.50Vである。
本発明に用いられるホスト材料は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などが使用できる。
特に、ホスト材料がアントラセン骨格もしくはピレン骨格を有する化合物を含んでいると、素子を低電圧で駆動することができ、高い発光効率が得られるため好ましい。アントラセン骨格もしくはピレン骨格を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には国際公開第2005/113531号に記載の化合物1〜151、国際公開第2010/114266号に記載の化合物1〜150、国際公開第2011/115378号に記載の化合物1〜73、国際公開第2007/029798号に記載の化合物1〜357、国際公開第2008/108256号に記載の化合物1〜182、特開2011−204844号公報の化25〜化30に記載の化合物などが挙げられる。
またドーパント材料については、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体(例えば2−(ベンゾチアゾール−2−イル)−9,10−ジフェニルアントラセンや5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンなど)、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどのアミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−(2’−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−gh]クマリンなどのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などを用いることができる。
特に、前記ドーパント材料がホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、ジベンゾチオフェンジオキサイド骨格および/またはベンゾアゾール骨格を有する化合物、またはビス(アジニル)アミン配位子が配位したホウ素化合物を含む場合、これらの化合物は還元されやすいため、ドープした発光層の電子トラップ性が増し、発光素子の耐久性が向上するため好ましい。これらのドーパント材料のうち1種類もしくは2種類以上が含まれていることが好ましい。
さらに、前記ドーパント材料は一般式(1)、(3)、(5)、(7)のいずれかで表される化合物を1種類以上含むと発光効率が向上するため好ましい。
式中、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。L1は単結合、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基である。Ar1は下記一般式(2)で表される縮合多環芳香族基である。n1は1以上の整数である。n1が2以上の場合、L1、R1、R2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
式中、R3〜R12は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基およびシリル基からなる群より選ばれる。ただしR3〜R12のうち、少なくとも一組の隣接する置換基は環の形成に用いられる。また、R3〜R12のうち少なくとも一つはL1との連結に用いられる。
式中、Ar2は3つ以上の環が縮合した芳香族炭化水素基であり、かつフェナントリル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基以外の基から選ばれる。L2は単結合、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基である。X1は下記一般式(4)で表される基である。n2は1以上の整数である。n2が2以上の場合、L2、X1はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
式中、R13〜R20は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、シリル基および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。ただしR13〜R20のうちいずれか一つがL2との連結に用いられる。
R21〜R30はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、シリル基および−P(=O)R31R32からなる群より選ばれる。R31およびR32はアリール基またはヘテロアリール基である。R21〜R30は隣接する置換基同士で環を形成してもよい。n3は1〜2の整数である。ただし、R21〜R30の少なくとも1つはX2との連結に用いられる。X2は下記一般式(6)で表される基である。
R33〜R36はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基の中から選ばれる。R33〜R36は隣接する置換基同士で環を形成していても良い。Y1は酸素原子、硫黄原子もしくは−N(R37)−である。R37は水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基およびヘテロアリール基の中から選ばれる。Y2は−N=または−C(R38)=である。R38は水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基およびヘテロアリール基の中から選ばれる。
ZおよびZ´は少なくとも1つの窒素を含有する6員芳香族環に相当する独立したアジン環系を表し、Q1およびQ2は各々独立に選ばれた置換基であって、その2つが連結することによりZまたはZ´に対して縮合環を形成し得るものを表し、m1およびm2は各々独立に0〜4を表し、R39およびR40は各々独立に選ばれた置換基を表し、A1〜A4およびA1’〜A4’は、各々独立に選ばれた炭素原子または窒素原子を表す。
一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。また、ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基、フルオランテニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
ヘテロアリール基とは、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ナフチリジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上30以下の範囲である。
カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基およびシリル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、前記一般式(1)で説明すると、R1とR2、R2とL1もしくはR1とL1の間で共役または非共役の縮合環を形成するものである。L1が単結合の場合、R1とAr1もしくはR2とAr1の間で縮合環を形成してもよい。これら縮合環は環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
アリーレン基とは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などの芳香族炭化水素基から導かれる2価もしくは3価の基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。一般式(1)のL1がアリーレン基の場合、核炭素数は6以上30以下の範囲が好ましい。アリーレン基としては、具体的には、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、4,3’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基などが挙げられる。より好ましくは1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基である。
ヘテロアリーレン基とは、ピリジル基、キノリニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ナフチリジル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基から導かれる2価もしくは3価の基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリーレン基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2〜30の範囲である。
R3〜R12の隣接する置換基とは、具体的にはR3とR4、R4とR5、R5とR6、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R12とR3のいずれかの組み合わせを指す。これらの隣接する置換基で形成された環の大きさについては特に限定されないが、分子構造の安定性の観点から5員環もしくは6員環が好ましい。また、形成される環は脂肪族環でも芳香族環でもよい。隣接する置換基で形成された環はさらに置換基を有していてもよく、もしくはさらに縮環されていてもよい。形成される環には炭素以外のヘテロ原子が含まれていてもよいが、電子供与性窒素が含まれると電子親和性が損なわれるため、電子供与性窒素以外の原子で環が構成されているのが好ましい。なお電子供与性窒素とは、隣接原子との間の結合がすべて単結合である窒素原子を表す。特に、炭素および水素のみで環が構成されていると電気化学的安定性が増し、素子の耐久性向上に寄与するため好ましい。また形成される環に電子受容性窒素が含まれている場合は、電子による還元がスムーズに行なわれるようになり、電子親和性が高くなる。これにより、駆動電圧と発光効率が向上するため好ましい。なお電子受容性窒素とは隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。
一般式(1)において上記を満たすAr1としては、特に限定されるものではないが、以下のような例が挙げられる。
R3〜R12のうち少なくとも一つはL1との連結に用いられるとは、R3〜R12のいずれかの位置でL1と連結すること、およびR3〜R12の隣接する置換基で形成された環上のいずれかの位置でL1と連結することをいう。また、R3〜R12のいずれかの位置でL1と連結するとは、R3〜R12が結合している炭素原子とL1とが直接連結することをいう。
一般式(1)で表される化合物はホスフィンオキサイド基を有する。ホスフィンオキサイド基は三方錐形の嵩高い立体構造を取るために立体障害が大きく、分子間の相互作用を抑制する効果を持つ。この効果によって分子間の相互作用を抑制することにより、濃度消光を防ぐことができるため、ホスフィンオキサイド基は発光効率の向上に寄与する。さらにホスフィンオキサイド基は強い電子求引性基であることから、一般式(1)の化合物は電子親和性に優れた材料であり、発光層の電子トラップ性を向上させることができる。
n1は1以上の整数であるが、材料の分子量が大きすぎると昇華性が低下して真空蒸着時に熱分解する確率が大きくなる。従ってn1は1または2が好ましく、特にn1=1が好ましい。
また一般式(1)で表される化合物はフルオランテンに炭化水素環もしくは複素環が縮合した構造Ar1を有する。この骨格は5π電子系の5員環構造を有する。5π電子系の5員環構造は、電子が1つ入る(還元される)と、6π電子系となり芳香族安定化が起こる(ヒュッケル則)。このため、5π電子系の5員環構造は高い電子親和性を示す。このため一般式(1)で表される化合物をドーパント材料に用いることで発光層の電子トラップ性を向上させることができる。さらにAr1はフルオランテン骨格に炭化水素環もしくは複素環が縮合しており、フルオランテンよりも広いπ共役平面を有するため、発光スペクトルのピークが可視光領域にシフトし、強い青色〜緑色の蛍光を示す。従って、Ar1を有する一般式(1)で表される化合物を青色〜緑色の蛍光ドーパント材料として用いると発光効率の向上に寄与するため好ましい。
一般式(1)において、L1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基の場合、一般式(1)で表される化合物の蛍光量子収率が向上し、発光素子の効率が向上するため好ましい。
また一般式(1)において、R1およびR2がアリール基またはヘテロアリール基の場合、電気化学的安定性が増し、発光素子の耐久性が向上するため好ましい。
Ar1が下記一般式(8)もしくは(9)で表される場合、電荷輸送性がさらに向上するため好ましい。またAr1のπ電子共役系が適度に広がり、強い青色〜緑色の蛍光発光を示すことから、ドーパント材料として用いると発光効率が向上するため好ましい。
式中、R41〜R52は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基およびシリル基からなる群より選ばれる。ただしR41〜R52のうち、少なくとも一つの位置でL1と連結する。
一般式(8)におけるR47およびR52は置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。R47およびR52が置換もしくは無置換のアリール基であることで、分子間におけるπ共役平面の重なりを適度に回避することが可能となる。また、アリール基であることで耐熱性が向上する。その結果、一般式(8)で表される骨格の高い電荷輸送性を損なうことなく、昇華性の向上、蒸着安定性の向上、結晶性の低下及び高いガラス転移温度による薄膜安定性の向上が可能となる。また発光材料として用いる際には、分子間の相互作用による濃度消光の抑制にも寄与する。
一般式(8)におけるR47およびR52は置換もしくは無置換のフェニル基であることがより好ましい。R47およびR52が置換もしくは無置換のフェニル基であることで、分子間におけるπ共役平面の重なりを適度に回避することが可能となる。また、適度な分子量になるため、昇華性、蒸着安定性がさらに向上する。
一般式(8)で表されるAr1はR43、R44、R47、R49、R50、R52のいずれかの位置でL1と連結するのが好ましく、特にR43またはR44の位置で連結するのが好ましい。一般式(8)で表される骨格はR43およびR44の位置で共役が広がりやすく、L1との連結に用いられることで、効率的に共役が広がる。これにより、一般式(1)で表される化合物は、電気化学的により安定になり、さらに発光効率が向上する。
式中、R53〜R66は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基およびシリル基からなる群より選ばれる。ただしR53〜R66のうち、少なくとも一つの位置でL1と連結する。
一般式(9)におけるR53は置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。R53が置換もしくは無置換のアリール基であることで、分子間におけるπ共役平面の重なりを適度に回避することが可能となる。また、アリール基であることで耐熱性が向上する。その結果、一般式(9)で表される骨格の高い電荷輸送性を損なうことなく、昇華性の向上、蒸着安定性の向上、結晶性の低下及び高いガラス転移温度による薄膜安定性の向上が可能となる。また発光材料として用いる際には、分子間の相互作用による濃度消光の抑制にも寄与する。
一般式(9)におけるR53は置換もしくは無置換のフェニル基であることがより好ましい。R53が置換もしくは無置換のフェニル基であることで、分子間におけるπ共役平面の重なりを適度に回避することが可能となる。また、適度な分子量になるため、昇華性、蒸着安定性がさらに向上する。
一般式(9)で表されるAr1はR53、R55、R63またはR64の位置のいずれかでL1と連結するのが好ましい。特にR55またはR63の位置で連結すると分子間の相互作用抑制効果が高く、発光効率の向上に寄与するため好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
次に、一般式(3)で表される化合物について詳細に説明する。一般式(3)で表される化合物における置換基の説明は上記と同様である。
R13〜R20のうちいずれか一つの位置でL2と連結するとは、R13〜R20が連結している炭素原子とL2が直接結合することをいう。
一般式(3)で表される化合物はジベンゾチオフェンジオキサイド基を有する。ジベンゾチオフェンジオキサイド基は硫黄原子と結合した2つの酸素原子がチオフェン骨格平面に対してそれぞれ直交した立体構造を取るために立体障害が大きく、分子間の相互作用を抑制する。この効果によって分子間の相互作用を抑制することにより、濃度消光を防ぐことができるため、ジベンゾチオフェンジオキサイド基は発光効率の向上に寄与する。さらにジベンゾチオフェンジオキサイド基は強い電子求引性基であることから、一般式(3)の化合物は電子親和性に優れた材料であり、発光層の電子トラップ性を向上させることができる。
また一般式(3)で表される化合物は、3つ以上の環が縮合した芳香族炭化水素基のうち、フェナントリル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基以外の基から選ばれるAr2を有する。一般に芳香族炭化水素基は電子による還元や正孔による酸化をスムーズに繰り返し行うことができるため、発光素子の耐久性向上に寄与する。また芳香族炭化水素基のうち3つ以上の環が縮合しているものは、2つの環が縮合しているものと比較して強い蛍光発光を示すため、発光効率の向上に寄与する。ただし3つ以上の環が縮合した芳香族炭化水素基のうちフェナントリル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基は発光スペクトルが紫外領域に存在しており、これを長波長シフトさせて青色発光を得ることは難しい。従って、Ar2は3つ以上の環が縮合した芳香族炭化水素基のうち、フェナントリル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基以外の基から選ばれる。
本発明の一般式(3)で表される化合物は、分子中にジベンゾチオフェンジオキサイド基とAr2を有していることから、強い蛍光発光、高い電子親和性、薄膜安定性、電気化学的安定性などの特長を併せ持っている。これらの特性により、本発明の一般式(3)で表される化合物を発光層のドーパント材料に用いると、発光効率と耐久性に優れた有機薄膜発光素子を得ることができる。
また一般式(3)において、Ar2を構成する縮合環の数を増やして共役系を伸ばしていくと、発光スペクトルが過剰に長波長側にシフトし、緑色〜赤色発光を示すため、縮合環の数は3以上8以下が好ましい。
Ar2として好ましくはアントラセニル基、ベンゾ[a]アントラセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ジベンゾ[g,p]クリセニル基、ベンゾ[c]フルオレニル基、ジベンゾ[a,c]フルオレニル基、フルオランテン骨格を含む芳香族炭化水素基などが挙げられ、特に好ましくはフルオランテン骨格を含む芳香族炭化水素基である。
フルオランテン骨格を含む芳香族炭化水素基とは、フルオランテン骨格を分子構造内に有する基であり、置換基を有していても有していなくてもよい。隣接する置換基で環を形成してもよい。すなわち本発明において「フルオランテン骨格を含む」とは、ベンゾフルオランテン骨格やベンゾアセアントリレン骨格など、フルオランテン骨格の一部の環にさらに縮合環が付随する骨格も含むものである。隣接する置換基で形成された環の大きさについては特に限定されないが、分子構造の安定性の観点から5員環もしくは6員環が好ましい。また、形成される環は脂肪族環でも芳香族環でもよい。隣接する置換基で形成された環はさらに置換基を有していてもよく、もしくはさらに縮環されていてもよい。フルオランテン骨格は5π電子系の5員環構造を有する。5π電子系の5員環構造は、電子が1つ入る(還元される)と、6π電子系となり芳香族安定化が起こる(ヒュッケル則)。このため、5π電子系の5員環構造は高い電子親和性を示す。このため一般式(1)で表される化合物の電子親和性をさらに強めることができ、発光素子の駆動電圧低下や、耐久性の向上に寄与することができるため好ましい。フルオランテン骨格を含む基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、16以上40以下の範囲である。具体的には、例えば、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、ベンゾアセアントリレニル基、ベンゾアセフェナントレニル基、インデノフルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基などが挙げられる。
Ar2は無置換でも置換されていても構わないが、置換されている場合の置換基はアルキル基もしくはアリール基が好ましい。Ar2とL2が連結する位置は特に限定されないが、蛍光量子収率の向上に寄与することから、Ar2がアントラセニル基の場合は9位および/または10位、ベンゾ[a]アントラセニル基の場合は7位および/または12位、ピレニル基の場合は1位、3位、6位および/または8位、クリセニル基の場合は6位および/または12位、ジベンゾ[g,p]クリセニル基の場合は2位および/または10位、ベンゾ[c]フルオレニル基の場合は5位および/または9位、ジベンゾ[a,c]フルオレニル基の場合は3位および/または11位、フルオランテニル基の場合は3位で連結するのが特に好ましい。
さらに、Ar2は一般式(10)で表される基であると好ましい。
式中、R67〜R78は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基およびシリル基からなる群より選ばれる。ただしR67〜R78のうちn2個の位置でL2と連結する。
一般式(10)で表される基はフルオランテンにベンゼン環が1つ縮環したベンゾフルオランテン骨格を有しており、電子親和力に優れた骨格である。またフルオランテンに比べπ共役系が広くなっているため、蛍光量子収率が高く、強い青色発光を呈することから、発光素子の高効率化に寄与する。
一般式(10)においてR67〜R78のうちR69、R70、R73、R78の中からn2個の位置でL2と連結すると、一般式(3)で表される化合物の蛍光量子収率が上がり、発光効率がより向上するため好ましい。特にR69および/またはR70の位置でL2と連結すると、分子間相互作用が効率よく抑制され、発光効率がより向上するためさらに好ましい。
一般式(3)において、n2は1以上の整数であるが、材料の分子量が大きすぎると昇華性が低下して真空蒸着時に熱分解する確率が大きくなる。従ってn2は1または2が好ましく、特にn2=1が好ましい。
また一般式(4)において、R13の位置でL1と連結する場合、分子のねじれによって分子間の相互作用が抑制され、濃度消光を防ぐことができるため好ましい。またR15の位置でL2と連結する場合、ジベンゾチオフェンジオキサイド基の持つ電子求引性が分子全体に作用しやすくなり、一般式(3)で表される化合物の電子親和性がより増すため好ましい。
一般式(3)で表される化合物としては特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
次に、一般式(5)で表される化合物について詳細に説明する。一般式(5)で表される化合物における置換基の説明は上記と同様である。
一般式(5)で表される化合物は、X2との連結にR21、R23、R26、R28のうち1箇所または2箇所が用いられると、化合物同士の相互作用が抑制され、高効率発光が可能となるため好ましい。
さらに、X2との連結に用いられた置換位置以外にR21、R23、R26、R27、R28のうち少なくとも一つがアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基であると好ましい。ここでのアルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基とは、好ましくは、炭素数1以上4以下の飽和炭化水素基、置換されていてもいなくてもよい炭素数6以上18以下の芳香族炭化水素基、または置換されていてもいなくてもよい炭素数2以上18以下の芳香族複素環基である。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ピリジル基、キノリニル基、ジベンゾフラニル基、カルバゾリル基などが好ましい。
上記一般式(5)に表される化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
次に、一般式(7)で表される化合物について詳細に説明する。
アジン環ZおよびZ´として好ましくは、A1〜A4およびA1’〜A4’がすべて炭素原子であり、m1およびm2はnが2以上であり、そしてQ1及びQ2が連結して芳香族環を形成する炭素原子数2以上の置換基を表わすような、キノリニル又はイソキノリニル環である。R39およびR40はフッ素原子であることが望ましい。
上記一般式(7)に表される化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
また発光層にはリン光発光材料が含まれていてもよい。リン光発光材料とは、室温でもリン光発光を示す材料である。ドーパントしてリン光発光材料を用いる場合は基本的に室温でもリン光発光が得られる必要があるが、特に限定されるものではなく、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体化合物であることが好ましい。中でも室温でも高いリン光発光収率を有するという観点から、イリジウム、もしくは白金を有する有機金属錯体がより好ましい。リン光発光性のドーパントと組み合わせて用いられるホストとしては、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ピリジン、ピリミジン、トリアジン骨格を有する含窒素芳香族化合物誘導体、ポリアリールベンゼン誘導体、スピロフルオレン誘導体、トルキセン誘導体、トリフェニレン誘導体といった芳香族炭化水素化合物誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体といったカルコゲン元素を含有する化合物、ベリリウムキノリノール錯体といった有機金属錯体などが好適に用いられるが、基本的に用いるドーパントよりも三重項エネルギーが大きく、電子、正孔がそれぞれの輸送層から円滑に注入され、また輸送するものであればこれらに限定されるものではない。また2種以上の三重項発光ドーパントが含有されていてもよいし、2種以上のホスト材料が含有されていてもよい。さらに1種以上の三重項発光ドーパントと1種以上の蛍光発光ドーパントが含有されていてもよい。
好ましいリン光発光性ホストまたはドーパントとしては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
なお、ホスト材料およびドーパント材料の還元電位はサイクリックボルタンメトリー法により求めることができる。本発明においては、以下の装置と測定条件を用いた。
電気化学測定装置:北斗電工製 HSV−100
参照電極:Ag/AgNO3
対向電極:白金電極
作用電極:グラッシーカーボン
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(サンプル濃度1×10−5mol/L)
支持電解質:テトラブチルアンモニウムパークロレート(0.1mol/L)
温度:20℃。
参照電極:Ag/AgNO3
対向電極:白金電極
作用電極:グラッシーカーボン
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(サンプル濃度1×10−5mol/L)
支持電解質:テトラブチルアンモニウムパークロレート(0.1mol/L)
温度:20℃。
本発明の発光素子において、陽極と陰極は素子の発光のために十分な電流を供給するための役割を有するものであり、光を取り出すために少なくとも一方は透明または半透明であることが好ましい。通常、基板上に形成される陽極を透明電極とする。
陽極に用いる材料は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料、かつ光を取り出すために透明または半透明であれば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)酸化亜鉛インジウム(IZO)などの導電性金属酸化物、あるいは、金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなど特に限定されるものでないが、ITOガラスやネサガラスを用いることが特に好ましい。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。透明電極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが好ましい。例えば300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、20Ω/□以下の低抵抗の基板を使用することが特に好ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いられることが多い。
また、発光素子の機械的強度を保つために、発光素子を基板上に形成することが好ましい。基板は、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。または、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、第一電極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成しても良い。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
陰極に用いる材料は、電子を効率よく発光層に注入できる物質であれば特に限定されない。一般的には白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれらの金属とリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの低仕事関数金属との合金や多層積層などが好ましい。中でも、主成分としてはアルミニウム、銀、マグネシウムが電気抵抗値や製膜しやすさ、膜の安定性、発光効率などの面から好ましい。特にマグネシウムと銀で構成されると、本発明における電子輸送層および電子注入層への電子注入が容易になり、低電圧駆動が可能になるため好ましい。
さらに、陰極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、シリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などの有機高分子化合物を、保護膜層として陰極上に積層することが好ましい例として挙げられる。ただし、陰極側から光を取り出す素子構造(トップエミッション構造)の場合は、保護膜層は可視光領域で光透過性のある材料から選択される。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど特に制限されない。
正孔輸送層は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層または混合する方法、もしくは、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物を用いる方法により形成される。また、正孔輸送材料は、電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率良く輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率良く輸送することが好ましい。そのためには適切なイオン化ポテンシャルを持ち、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。このような条件を満たす物質として、特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、4,4’−ビス(N,N−ビス(4−ビフェニリル)アミノ)ビフェニル(TBDB),ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(TPD232)といったベンジジン誘導体、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)などのスターバーストアリールアミンと呼ばれる材料群、カルバゾール骨格を有する材料、中でもカルバゾール多量体、具体的にはビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのカルバゾール2量体の誘導体、カルバゾール3量体の誘導体、カルバゾール4量体の誘導体、トリフェニレン化合物、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、フラーレン誘導体、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましい。さらにp型Si、p型SiC等の無機化合物も使用できる。
また正孔輸送層には電子ブロック性の優れた化合物を用いるのが好ましい。中でも、カルバゾール骨格を含有する化合物は電子ブロック性に優れ、発光素子の高効率化に寄与できるので好ましい。さらに上記カルバゾール骨格を含有する化合物が、カルバゾール2量体、カルバゾール3量体、またはカルバゾール4量体骨格を含有することが好ましい。これらは良好な電子ブロック性と、正孔注入輸送特性を併せ持っているためである。また高い正孔移動度を有する点で優れているトリフェニレン骨格を含有する化合物を正孔輸送層に用いると、キャリアバランスが向上し、発光効率向上、耐久寿命向上といった効果が得られるので好ましい。トリフェニレン骨格を含有する化合物が2つ以上のジアリールアミノ基を有していると、さらに好ましい。上記カルバゾール骨格を含有する化合物、またはトリフェニレン骨格を含有する化合物はそれぞれ単独で正孔輸送層として用いてもよいし、互いに混合して用いてもよい。また本発明の効果を損なわない範囲で他の材料が混合されていてもよい。また正孔輸送層が複数層で構成されている場合は、いずれか1層にカルバゾール骨格を含有する化合物、あるいは、トリフェニレン骨格を含有する化合物が含まれていればよい。
陽極と正孔輸送層の間には正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層を設けることで発光素子が低駆動電圧化し、耐久寿命も向上する。正孔注入層には通常正孔輸送層に用いる材料よりもイオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく用いられる。具体的には、TPD232のようなベンジジン誘導体、スターバーストアリールアミン材料群が挙げられる他、フタロシアニン誘導体等も用いることができる。また正孔注入層がアクセプター性化合物単独で構成されているか、またはアクセプター性化合物が別の正孔輸送材料にドープされて用いられていることも好ましい。アクセプター性化合物の例としては、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化アンチモンのような金属塩化物、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ルテニウムのような金属酸化物、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネート(TBPAH)のような電荷移動錯体が挙げられる。また分子内にニトロ基、シアノ基、ハロゲンまたはトリフルオロメチル基を有する有機化合物や、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなども好適に用いられる。これらの化合物の具体的な例としては、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(HAT−CN6)、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、C60、およびC70などが挙げられる。
これらの中でも、金属酸化物やシアノ基含有化合物が取り扱いやすく、蒸着もしやすいことから、容易に上述した効果が得られるので好ましい。好ましい金属酸化物の例としては酸化モリブデン、酸化バナジウム、または酸化ルテニウムがあげられる。シアノ基含有化合物の中では、(a)分子内に、シアノ基の窒素原子以外に少なくとも1つの電子受容性窒素有する化合物、(b)分子内にハロゲンとシアノ基の両方を有している化合物、(c)分子内にカルボニル基とシアノ基の両方を有している化合物、または(d)分子内にハロゲンとシアノ基の両方を有し、さらにシアノ基の窒素原子以外に少なくとも1つの電子受容性窒素を有する化合物が強い電子アクセプターとなるためより好ましい。このような化合物として具体的には以下のような化合物があげられる。
正孔注入層がアクセプター性化合物単独で構成される場合、または正孔注入層にアクセプター性化合物がドープされている場合のいずれの場合も、正孔注入層は1層であってもよいし、複数の層が積層されていてもよい。またアクセプター化合物がドープされている場合に組み合わせて用いる正孔注入材料は、正孔輸送層への正孔注入障壁が緩和できるという観点から、正孔輸送層に用いる化合物と同一の化合物であることがより好ましい。
本発明において、電子輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送する層である。電子輸送層には、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望まれる。そのため電子輸送層は、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質で構成されることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、電子輸送層が陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たすならば、電子輸送能力がそれ程高くない材料で構成されていても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料で構成されている場合と同等となる。したがって、本発明における電子輸送層には、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体が挙げられるが、駆動電圧を低減し、高効率発光が得られることから、炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成され、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いることが好ましい。
電子受容性窒素を含む芳香族複素環は、高い電子親和性を有する。電子受容性窒素を有する電子輸送材料は、高い電子親和力を有する陰極からの電子を受け取りやすくし、より低電圧駆動が可能となる。また、発光層への電子の供給が多くなり、再結合確率が高くなるので発光効率が向上する。
電子受容性窒素を含むヘテロアリール環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、フェナンスロイミダゾール環などが挙げられる。
これらのヘテロアリール環構造を有する化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル))ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の観点から好ましく用いられる。また、これらの誘導体が、縮合多環芳香族骨格を有していると、ガラス転移温度が向上すると共に、電子移動度も大きくなり発光素子の低電圧化の効果が大きいのでより好ましい。さらに、素子耐久寿命が向上し、合成のし易さ、原料入手が容易であることを考慮すると、縮合多環芳香族骨格はアントラセン骨格、ピレン骨格またはフェナントロリン骨格であることが特に好ましい。上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。
好ましい電子輸送材料としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
これら以外にも、特開2001−267080号公報、特開2004−281390号公報、国際公開第2004−63159号、国際公開第2003−60956号、Appl. Phys. Lett. 74, 865、Org. Electron. 4, 113 (2003)、国際公開第2010−113743号、国際公開第2010−1817号等に開示された電子輸送材料も用いることができる。
混合しうる電子輸送材料としては、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、ピレンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体が挙げられる。
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。また、ドナー性化合物を含有してもよい。ここで、ドナー性化合物とは電子注入障壁の改善により、陰極または電子注入層からの電子輸送層への電子注入を容易にし、さらに電子輸送層の電気伝導性を向上させる化合物である。
本発明におけるドナー性化合物の好ましい例としては、アルカリ金属、アルカリ金属を含有する無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属を含有する無機塩またはアルカリ土類金属と有機物との錯体などが挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属の好ましい種類としては、低仕事関数で電子輸送能向上の効果が大きいリチウム、ナトリウム、セシウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウムといったアルカリ土類金属が挙げられる。
また、真空中での蒸着が容易で取り扱いに優れることから、金属単体よりも無機塩、あるいは有機物との錯体の状態であることが好ましい。さらに、大気中での取扱を容易にし、添加濃度の制御のし易さの点で、有機物との錯体の状態にあることがより好ましい。無機塩の例としては、LiO、Li2O等の酸化物、窒化物、LiF、NaF、KF等のフッ化物、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Rb2CO3、Cs2CO3等の炭酸塩などが挙げられる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の好ましい例としては、原料が安価で合成が容易な点から、リチウムが挙げられる。また、有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、リチウムと有機物との錯体がより好ましく、リチウムキノリノールが特に好ましい。これらのドナー性化合物を2種以上混合して用いてもよい。
好適なドーピング濃度は材料やドーピング領域の膜厚によっても異なるが、例えばドナー性化合物がアルカリ金属、アルカリ土類金属といった無機材料の場合は、電子輸送材料とドナー性化合物の蒸着速度比が10000:1〜2:1の範囲となるようにして共蒸着して電子輸送層としたものが好ましい。蒸着速度比は100:1〜5:1がより好ましく、100:1〜10:1がさらに好ましい。またドナー性化合物が金属と有機物との錯体である場合は、電子輸送材料とドナー性化合物の蒸着速度比が100:1〜1:100の範囲となるようにして共蒸着して電子輸送層としたものが好ましい。蒸着速度比は10:1〜1:10がより好ましく、7:3〜3:7がより好ましい。
また、上記のようなドナー性化合物がドープされた電子輸送層は、複数の発光素子を連結するタンデム構造型素子における電荷発生層として用いられていてもよい。
電子輸送層にドナー性化合物をドーピングして電子輸送能を向上させる方法は、薄膜層の膜厚が厚い場合に特に効果を発揮するものである。電子輸送層および発光層の合計膜厚が50nm以上の場合に特に好ましく用いられる。例えば、発光効率を向上させるために干渉効果を利用する方法があるが、これは発光層から直接放射される光と、陰極で反射された光の位相を整合させて光の取り出し効率を向上させるものである。この最適条件は光の発光波長に応じて変化するが、電子輸送層および発光層の合計膜厚が50nm以上となり、赤色などの長波長発光の場合には100nm近くの厚膜になる場合がある。
ドーピングする電子輸送層の膜厚は、電子輸送層の一部分または全部のどちらでも構わない。一部分にドーピングする場合、少なくとも電子輸送層/陰極界面にはドーピング領域を設けることが望ましく、陰極界面付近にドーピングするだけでも低電圧化の効果は得られる。一方、ドナー性化合物が発光層に直接接していると発光効率を低下させる悪影響を及ぼす場合があり、その場合には発光層/電子輸送層界面にノンドープ領域を設けることが好ましい。
本発明において、陰極と電子輸送層の間に電子注入層を設けてもよい。一般的に電子注入層は陰極から電子輸送層への電子の注入を助ける目的で挿入されるが、挿入する場合は、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いてもよいし、上記のドナー性化合物を含有する層を用いてもよい。また電子注入層に絶縁体や半導体の無機物を用いることもできる。これらの材料を用いることで発光素子の短絡を有効に防止して、かつ電子注入性を向上させることができるので好ましい。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点でより好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li2O、Na2S及びNa2Seが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2、BaF2、SrF2、MgF2及びBeF2等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。さらに有機物と金属の錯体も好適に用いられる。電子注入層に有機物と金属の錯体を用いる場合は膜厚調整が容易であるのでより好ましい。このような有機金属錯体の例としては有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、ピリジルフェノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、リチウムと有機物との錯体がより好ましく、リチウムキノリノールが特に好ましい。
発光素子を構成する上記各層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されないが、通常は、素子特性の点から抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
有機層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmであることが好ましい。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる機能を有する。ここで電気エネルギーとしては主に直流電流が使用されるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるよう選ばれるべきである。
本発明の発光素子は、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
マトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置され、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法は、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動はその構造が簡単であるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
本発明におけるセグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、このパターンの配置によって決められた領域を発光させる方式である。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が検討されているパソコン用途のバックライトに本発明の発光素子は好ましく用いられ、従来のものより薄型で軽量なバックライトを提供できる。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
ITO透明導電膜を160nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入材料として、化合物(HI−1)を5nm、正孔輸送材料として、化合物(HT−1)を80nm蒸着した。次に、発光材料に、ホスト材料として(H−1)を、ドーパント材料として化合物(D−1)を発光層全体に対するドープ濃度が3重量%になるようにして36nmの厚さに蒸着した。次に、化合物(1E−1)を電子輸送層として30nmの厚さに蒸着して積層した。
ITO透明導電膜を160nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を “セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入材料として、化合物(HI−1)を5nm、正孔輸送材料として、化合物(HT−1)を80nm蒸着した。次に、発光材料に、ホスト材料として(H−1)を、ドーパント材料として化合物(D−1)を発光層全体に対するドープ濃度が3重量%になるようにして36nmの厚さに蒸着した。次に、化合物(1E−1)を電子輸送層として30nmの厚さに蒸着して積層した。
次に、化合物(2E−1)を電子注入層として1nm蒸着した後、マグネシウムと銀の共蒸着膜を蒸着速度比がマグネシウム:銀=10:1(=0.5nm/s:0.05nm/s)で100nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子を10mA/cm2で直流駆動したところ、外部量子効率4.3%、駆動電圧4.0V、輝度半減時間8000時間の耐久性に優れた青色発光素子が得られた。
なお、(HI−1)、(HT−1)、(H−1)、(D−1)、(1E−1)、(2E−1)は下記に示す化合物である。サイクリックボルタンメトリー法により求めた(H−1)の還元電位Erd(Host)は−2.28V、(D−1)の還元電位Erd(Dopant)は−1.89Vであり、ΔErdは0.39Vであった。
実施例2
ホスト材料に化合物(H−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cm2で直流駆動したところ、外部量子効率4.2%、駆動電圧4.1V、輝度半減時間8200時間の耐久性に優れた青色発光素子が得られた。なお(H−2)は下記に示す化合物である。(H−2)の還元電位Erd(Host)は−2.33V、(D−1)の還元電位Erd(Dopant)は−1.89Vであり、ΔErdは0.44Vであった。
ホスト材料に化合物(H−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cm2で直流駆動したところ、外部量子効率4.2%、駆動電圧4.1V、輝度半減時間8200時間の耐久性に優れた青色発光素子が得られた。なお(H−2)は下記に示す化合物である。(H−2)の還元電位Erd(Host)は−2.33V、(D−1)の還元電位Erd(Dopant)は−1.89Vであり、ΔErdは0.44Vであった。
実施例3〜5
ドーパント材料として表1に記載した材料を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。使用したホスト材料及びドーパント材料の還元電位と、ΔErdの値は表1に示した。また各実施例の結果についても表1に示した。なお、(D−2)〜(D−4)は下記に示す化合物である。
ドーパント材料として表1に記載した材料を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。使用したホスト材料及びドーパント材料の還元電位と、ΔErdの値は表1に示した。また各実施例の結果についても表1に示した。なお、(D−2)〜(D−4)は下記に示す化合物である。
比較例1〜4
ホスト材料及びドーパント材料として表1に記載した材料を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。使用したホスト材料及びドーパント材料の還元電位と、ΔErdの値は表1に示した。また各実施例の結果についても表1に示した。なお、(H−3)および(D−5)〜(D−7)は下記に示す化合物である。
ホスト材料及びドーパント材料として表1に記載した材料を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。使用したホスト材料及びドーパント材料の還元電位と、ΔErdの値は表1に示した。また各実施例の結果についても表1に示した。なお、(H−3)および(D−5)〜(D−7)は下記に示す化合物である。
Claims (4)
- 陽極および陰極からなる1対の電極と、前記1対の電極間に配置された有機層からなる有機電界発光素子であって、前記有機層がホスト材料とド−パント材料からなる発光層とを有し、ホスト材料の還元電位Erd(Host)とド−パント材料の還元電位Erd(Dopant)の絶対値の差ΔErdが
ΔErd=|Erd(Host)|−|Erd(Dopant)|>0.20V
の関係を満たすことを特徴とする有機電界発光素子。 - 前記ドーパント材料がホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、ジベンゾチオフェンジオキサイド骨格および/またはベンゾアゾール骨格を有する化合物、またはビス(アジニル)アミン配位子が配位したホウ素化合物を含む請求項1記載の発光素子。
- 前記ドーパント材料が一般式(1)、(3)、(5)、(7)のいずれかで表される化合物を1種類以上含む請求項2記載の発光素子。
- 前記ホスト材料がアントラセン骨格もしくはピレン骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の発光素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013049083A JP2014175590A (ja) | 2013-03-12 | 2013-03-12 | 有機電界発光素子 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013049083A JP2014175590A (ja) | 2013-03-12 | 2013-03-12 | 有機電界発光素子 |
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JP2021064797A (ja) * | 2015-08-18 | 2021-04-22 | ノヴァレッド ゲーエムベーハー | 有機発光ダイオード(oled)の正孔注入層(hil)として使用される金属アミド |
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