JP2014165249A - 微細孔を備えた基板の製造方法 - Google Patents

微細孔を備えた基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザー光の走査速度を高めて、且つエッチング速度を従来と同等以上にすることにより製造効率を向上させた、微細孔を備えた基板の製造方法の提供
【解決手段】パルスレーザー光Lの焦点Fの走査速度を所定値に設定し、下記式(1)で表されるパルスピッチが0.03μm〜0.3μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数を調整し、基板1に前記レーザー光を照射して、前記レーザー光の焦点を前記基板の内部で、1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら略一定の速度で、レーザー光の光軸に沿う方向に走査し、前記焦点が通過した領域にエッチング耐性が低下した改質部2を形成し、前記改質部をエッチング処理で除去することにより、前記基板に微細孔を形成する、微細孔を備えた基板の製造方法。
式(1);パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
【選択図】図1

Description

本発明は、微細孔を備えた基板の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、基板にピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するパルスレーザー光を照射することによって、基板内にエッチング耐性を低下させた改質部を形成し、前記改質部をエッチングして微細孔を形成する、微細孔を備えた基板の製造方法に関する。
従来、ガラス基板の内部にパルス状のレーザーを照射し、その焦点を1パルス毎の照射領域が重なるようにシフトさせながら一定の速度で走査することにより、前記焦点が通過した領域およびその近傍(前記領域の周囲)においてエッチング耐性が低下した改質部を形成した後、改質部を選択的又は優先的にエッチングすることにより微細孔を形成する方法が知られている(特許文献1参照;非特許文献1〜2参照)。
特開2006−303360号公報
一般に、基板の改質が不充分であると、基板に改質部を形成した後に行うエッチング工程におけるエッチング速度が遅くなる傾向がある。このため、従来の基板の改質工程においては、基板を充分に改質させるために、レーザー光の走査速度を抑え、単位面積当りの積算の照射エネルギーを高める必要があると一般に考えられていた。すなわち、パルスレーザー照射の繰り返し周波数を一定に保ったまま走査速度を上げると、先発の照射パルスによる照射位置(改質位置)と後発の照射パルスによる照射位置(改質位置)とが重なる領域が小さくなる。つまり、単位面積当たりの積算の照射エネルギーが低くなり、改質部における改質の程度が低くなる。その結果、エッチング速度が遅くなると考えられていた。
このため、従来方法では走査速度を低めに抑えて基板を念入りに改質することが行われていた。例えば、非特許文献1の製法では、走査速度が0.03mm/s(繰返し周波数=100kHz、パルスピッチ=0.0003μm)であり、非特許文献2の製法では、走査速度が0.1mm/s(繰返し周波数=250kHz、パルスピッチ=0.0004μm)である。これらの走査速度で例えば5mm長の改質部を形成する場合、それぞれ約167秒、50秒を要する。この所要時間は、エッチング工程に要する時間(数時間)に比べると短時間であるが、エッチング工程は、大型のエッチング槽を用いるなどして多数の基板を一括して処理できるため、基板1枚当たりに要する加工時間は少なくて済む。一方、レーザー照射装置は高価であるため、レーザー照射装置の台数を増やして大量生産を行うことはコスト的に見合わない。また、1台のレーザー照射装置を用いて複数の基板を同時並行で加工することも困難である。したがって、微細孔を備えた基板を製造する場合においては、従来、レーザー照射工程の効率を向上させることが難しく、レーザー照射工程が製造工程全体の効率の律速になる問題があった。また、上記のようにレーザー照射の走査速度を低めに抑えて、単位面積あたりの積算の照射エネルギーを増やす従来方法は、加工スループットに劣るだけでなく、電力消費、設備投資の増大などの観点からも問題があった。
更に、従来のレーザー加工技術の主流は、レーザー光の光軸に対して略垂直方向に焦点を走査する方法である。一方、レーザー光の光軸に対して略平行方向(レーザー光の光軸に沿う方向)に焦点を走査し、その走査速度を高める試みは殆どなされていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レーザー光の光軸に沿う方向に焦点を走査する際の走査速度を高め、且つ、従来と同等以上のエッチング速度を得ることにより製造効率を向上させた、微細孔を備えた基板の製造方法の提供を課題とする。
本発明の第一実施形態の微細孔を備えた基板の製造方法は、微細孔を備えた基板の製造方法であって、
10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するパルス状のレーザー光の焦点が移動する際の、基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を1×10μm/sec〜4000×10μm/secに設定し、
下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.03μm〜0.3μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整し、
前記基板に、前記レーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を前記基板の内部で、1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら略一定の速度で、レーザー光の光軸に沿う方向に走査し、前記焦点が通過した領域及びその近傍域にエッチング耐性が低下した改質部を形成し、
前記改質部をエッチング処理で除去することにより、前記基板に微細孔を形成することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法である。
式(1)・・・パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
本発明の第一実施形態の微細孔を備えた基板の製造方法によれば、レーザー光の走査速度を従来よりも高めて、且つ従来と同等以上のエッチング速度を得ることにより製造効率を向上させることができる。
第一実施形態のレーザー走査速度は従来よりも格段に高速である。さらに、レーザー光の繰り返し周波数を調整することによって、従来よりも広いパルスピッチで改質部を形成することができる。このような加工条件で形成された改質部は、従来と同等以上の速度でエッチングされる。換言すれば、従来と同等以上のエッチング速度で除去することができる改質部を、従来よりも短い時間(改質工程に要する時間)で形成することができる。したがって、改質工程とエッチング工程とを合わせた工程全体の時間を短縮することができ、微細孔を備えた基板の製造方法の製造効率を従来よりも向上させることができる。
本発明の第二実施形態の微細孔を備えた基板の製造方法は、第一実施形態において、前記レーザー光の偏波が直線偏波であることを特徴とする。
レーザー光の偏波を直線偏波にすることにより、エッチング耐性がより低下して、より容易にエッチングされうる改質部を形成することができる。
本発明の第三実施形態の微細孔を備えた基板の製造方法は、第一実施形態又は第二実施形態において、前記レーザー光の1パルスのピーク強度を50TW/cm以上に設定することを特徴とする。
レーザー光の1パルスのピーク強度を50TW/cm以上に設定することにより、エッチング耐性がより低下して、より容易にエッチングされうる改質部を形成することができる。
本発明の第四実施形態の微細孔を備えた基板の製造方法は、第一〜第三実施形態の何れか一の実施形態において、前記基板が石英ガラス製であることを特徴とする。
前記基板が石英ガラス製であると、エッチング選択性の高い改質部を容易に形成することができる。その結果、石英ガラス基板中に、直線性が高い微細孔を容易に形成することができる。
本発明の微細孔を備えた基板の製造方法によれば、従来よりも高速なレーザー走査速度において、レーザー光の繰り返し周波数を調整することによって、従来よりも広いパルスピッチで改質部を形成することができる。このような加工条件で形成された改質部は、従来と同等以上の速度でエッチング可能な改質部である。換言すれば、従来と同等以上のエッチング速度が得られる改質部を、従来よりも短い時間(改質工程に要する時間)で形成することができる。
したがって、改質工程とエッチング工程とを合わせた工程全体の時間が短縮化されるので、微細孔を備えた基板の製造方法の製造効率を従来よりも向上させることができる。
本発明にかかる製造方法の概略を示す模式図である。 レーザー光の焦点の軌跡において、複数の改質部が非連続的に形成された様子を示す模式図である。 本発明にかかる製造方法の一例を示す模式図である。 試験例1の結果における、エッチング長とパルスピッチとの関係を表すグラフである。 試験例1の結果における、微細孔の断面の光学顕微鏡写真である。 試験例2の結果における、エッチング長とパルスピッチとの関係を表すグラフである。 試験例3の結果における、エッチング長とパルスピッチとの関係を表すグラフである。 試験例4の結果における、エッチング長とパルスピッチとの関係を表すグラフである。 本発明にかかる製造方法の別の例を示す模式図である。 試験例5の結果における、エッチング長とパルスピッチとの関係を表すグラフである。 試験例6の結果における、エッチング長とパルスピッチとの関係を表すグラフである。 試験例6の石英ガラス基板に形成された微細孔の長手方向の断面を示す、基板の厚み方向の断面写真である。
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
本発明の製造方法の第一実施形態は、基板の内部に、ピコ秒オーダー以下(例えば10ピコ秒未満)のパルス時間幅を有するレーザー光を照射して、前記基板の内部で、1パルス毎の焦点が重なるようにシフトさせながら略一定の速度で、レーザー光の光軸に沿う方向に前記焦点を走査し、前記焦点が通過した近傍域(周囲)にエッチング耐性が低下した改質部を形成する改質工程と、
前記改質部をエッチング処理によって基板から除去することにより、前記基板に微細孔を形成するエッチング工程とを含む。さらに、前記改質工程において、前記基板内部を前記レーザー光の焦点が移動する際の、前記基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を1×10μm/sec〜4000×10μm/secに設定し、下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.03μm〜0.3μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整する方法である。
式(1);パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
<改質工程>
図1に、改質工程の概念図を示す。基板1の第一の面側から、レーザー光Lを照射して、基板1の内部で、焦点Fを略一定の速度で走査する。このレーザー光Lは、連続光ではなく、一定の繰り返し周波数と一定のパルス時間幅で出射するパルス状のレーザー光である。焦点Fが通過した領域及びその近傍域(周囲)に、エッチング耐性が低下した改質部2を形成できる。図中の矢印は、レーザー光Lの走査方向を表す。図中、レーザー光Lを集光させるレンズは省略して描いていない。図1では、焦点Fの走査方向は基板の第一の面(図示略)に対して垂直であるが、走査方向はこれに制限されず、レーザー光の光軸と走査方向とが略平行である限りにおいて、前記走査方向は所望の向きに設定することができる。
一般に、改質された部分(改質部)のレーザー光の透過率は、改質されていない部分のレーザー光の透過率とは異なるため、改質された部分を透過させたレーザー光の焦点位置を制御することは困難である。このため、レーザー光Lは、改質部2が形成された領域を透過させず、レーザー照射する側から見て、基板の奥から手前へ焦点Fを引き上げるようにレーザー照射することが好ましい。図1の例においては、焦点Fを紙面上方(レーザー光Lが入射する基板1の第一の面)に向けて引き上げるように、焦点Fを基板1内部で走査している。この方法により、既に改質した奥側の改質部2の影響を受けることなく、手前側に連続した改質部2を容易に形成できる。
本発明の第一実施形態の改質工程において、ガラス基板を使用することが好ましい。ガラス基板に対して上記条件でレーザー光を照射することにより、エッチング耐性が充分に低下した改質部を形成できる。
前記ガラス基板としては、例えば、石英で構成されるガラス基板、珪酸塩を主成分とするガラスが挙げられ、より具体的には、例えば合成石英、ホウ珪酸ガラスで構成されるガラス基板などが適用できる。また、結晶性の石英にも同様に適用することが可能である。これらの中でも、加工性に優れる石英ガラスがより好ましい。なお、基板の形状は平板に限らず、例えば球形であってもよい。この場合、前記基板を基材と呼ぶこともできる。
尚、レーザー光を集光照射した場合、集光部の中央付近のレーザー強度が高く、その周辺では相対的にレーザー強度が小さい。また、ピコ秒オーダー以下(例えば10ピコ秒未満)のパルス時間幅を有するレーザー光を集光照射した場合、集光部では多光子吸収反応が起きるが、この多光子吸収反応において一つの電子が吸収する光子数も、集光部中央部程多い傾向にあると考えられる。それ故、基材に不純物が含まれており、その不純物の結合エネルギーがSi−O結合よりも小さい場合には、集光部の中央付近よりも外側の領域で不純物成分の結合が切断される。そのため、そのような不純物成分を含んだ基材の場合、集光部の中央付近のレーザー強度が高まるように、より高いピーク強度のレーザー照射が求められる場合がある。
一方、感光性ガラスは反応メカニズムが異なるため、本発明に適用することはできない。ここで、「感光性ガラス」とは、紫外線照射及び焼成処理によりガラス内に金属コロイドが発生し、さらに結晶が析出するガラスをいう。結晶が生じた領域のHFに対する耐性が低下するため、当該領域をエッチングして除去することができる。前記感光性ガラスとしては、CeOが含有されたガラスが挙げられる。一般に、CeOを含むガラスに紫外線照射及び焼成処理することにより、ガラス内に含有される金、銀、銅などが金属コロイドになり、さらにメタケイ酸リチウムの結晶が析出すると考えられている。HFにより、メタケイ酸リチウムの結晶を含む領域が選択的に(優先的に)エッチングされる。
ピコ秒オーダー以下のパルス時間幅を有するレーザー光のパルス幅の範囲は特に制限されず、例えば1フェムト秒以上から10ピコ秒未満とすれば良い。上記パルス時間幅のうち3ピコ秒未満、より好ましくは2ピコ秒未満であると、より効果的である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「ピコ秒オーダー以下」とは、「10ピコ秒未満」を意味する。
前記パルス幅を有するレーザー光を照射する装置としては、例えばチタンサファイアレーザー、ファイバーレーザー等が用いられる。また、本発明の製造方法で使用するレーザー装置は、レーザー光の繰り返し周波数を調整できる機構が備わっている装置が好ましい。
前記パルス時間幅がピコ秒オーダー以下であることにより、集光部(焦点及びその周囲)において、基板(基材)の電子温度とイオン温度とが非平衡状態で加熱される、いわゆる非熱過程の加工が進行する。そして、熱拡散長を極限まで抑えることができる。さらには多光子吸収によって開始される非線形加工が支配的であるため、加工後に得られる改質部の断面の径は、ナノスケールからマイクロスケール(例えば1nm〜500μm)である。これをエッチングすることにより、ナノスケールからマイクロスケールの孔径を有する微細孔が得られる。
一方、10ピコ秒以上のパルス時間幅を有するレーザー光を用いた場合では、基板(基材)の電子温度とイオン温度とが平衡状態になる熱的加工が支配的である。熱的加工においては熱拡散長が大きいため、ナノスケールからマイクロスケールの加工を行うことが困難である。約1〜10ピコ秒付近のパルス時間幅を境にして、全く異なる反応メカニズムにより改質部が形成される。
本発明の第1実施形態の改質工程では、レーザー光が基板内に焦点を結ぶ。この際、レーザー光を集光するためにレンズを用いることができる。例えば、シリンドリカルレンズを用いれば、一度に基板の広範囲にレーザー光を照射できる。
レーザー光の焦点は一定の範囲に広がりを持つので、「レーザー光の集光部」と言い換えられる。この広がりを有するため、焦点が通過した領域及びその近傍域(周囲)に改質部が形成される。
前記改質工程におけるレーザー光の偏波は、直線偏波、楕円偏波、円偏波、ランダム偏波のいずれでもよい。基板の材料にもよるが、通常、よりエッチング耐性が低下した改質部を形成する観点から、レーザー光の偏波は直線偏波又は直線偏波に似た楕円偏波であることが好ましい。
前記改質工程におけるレーザー光の照射強度を小さくするほど、焦点における照射エネルギーが小さくなり、上述した「電子温度とイオン温度とが非平衡状態で加熱される範囲」が小さくなる。その結果、改質部の領域が小さくなり、エッチングした後には小さな径の微細孔を形成することができる。しかし、レーザー光の照射強度を小さくし過ぎてしまうと、基板(基材)をエッチング可能な程度に改質することができず、微細孔を形成できない。基板をエッチング可能な程度に改質するためには、レーザーパルスのピーク強度を、ある一定値以上に設定する必要がある。その一定値以上の範囲における下限値近傍のパルスのピーク強度でレーザー照射することによって、非常に小さい孔径の微細孔を形成することができる。
エッチング可能な改質部を形成するために必要なレーザーパルスのピーク強度(1パルス当りのレーザーフルエンス/パルス時間幅)は、使用する基板の種類、レーザー波長及びパルス時間幅に依存するため、所定条件において予め実験することにより、前記ピーク強度の下限値を求めておくことが好ましい。
前記下限値近傍のピーク強度で照射する場合、前述したレーザー光の偏波方向がエッチング選択性に与える影響(依存性)が大きくなる。一方、前記下限値よりも十分に大きいピーク強度、例えばピーク強度が40TW/cm以上の場合には、前述したレーザー光の偏波方向がエッチング選択性に与える影響(依存性)が殆どなくなる。
本発明において、レーザー光の走査速度とは「基板内部をレーザー光の焦点が移動する際の、前記基板に対する前記焦点の相対速度」を意味する。基板及びレーザー照射装置の両方を動かして、レーザー光の焦点を走査する場合、前記レーザー光の走査速度は、レーザー照射装置と基板との相対的な速度である。
レーザー光の焦点を基板の内部で走査する方法としては、基板を固定してレーザー照射装置(レーザー光源)を動かす方法、レーザー照射装置を固定して基板を動かす方法、又は基板およびレーザー照射装置の両方を動かす方法が挙げられる。光源の駆動方式としては、例えばリニアーモーター、ピエゾアクチュエータ、といった駆動方式を採用することができる。これらの駆動方式であれば、レーザー光の走査速度(μm/sec)を従来よりも速い1×10μm/sec〜4000×10μm/secに設定することができる。
前記焦点の走査速度は、一定であることが好ましいが、駆動方式や装置の種類によっては厳密に一定にならないこともある。本明細書及び特許請求の範囲において、「略一定の走査速度」で前記焦点を走査するとは、厳密には一定速度でない場合、例えば走査速度が±10%変動する場合を含めて走査することを意味する。また、特に駆動初期の加速時及び駆動終期の減速時は、明らかに一定の走査速度ではないため、これらの場合は前記「略一定の走査速度」に含まれない。
本発明において、レーザー光のパルスピッチは、下記(1)式で定義される。
式(1);パルスピッチ(μm)=
{レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
この式(1)によれば、パルスピッチは、レーザー光の焦点の走査方向において、先発のパルスと後発のパルスとの距離を意味する。
本発明で使用するレーザー光はパルスレーザーであるため、焦点を走査した際に、レーザーによって照射される幾何学的焦点群(前述及び後述した焦点については回折光学的な焦点と幾何光学的な焦点とを明確に区別していないが、ここでは座標指定の意味合いが強いため、幾何学的焦点として説明する。)は離散的となる。一方、1パルス或いは複数のパルスによって形成される改質部は空間を有しているので、改質部についてはライン状の改質部が形成されると考えられる。しかし、前記焦点の走査速度を大きくし過ぎると、パルスピッチ(先発のパルスと後発のパルスとの距離)が大きくなり、先発のパルスによって形成された改質部と後発のパルスによって形成された改質部とが連結しない場合がある。つまり、前記軌跡において、複数の改質部が断続的(非連続)(飛び石状)に形成される場合がある。このように断続的な改質部が前記軌跡上に形成される模式的な様子を図2に示す。このように、複数の改質部が断続的に離れて形成された場合は、エッチング工程において微細孔を形成することができない。通常、走査速度を遅くして、改質部が重なるようにした場合には、これらの各改質部は連結し、ライン状の改質部を形成することができる。
図2において、レーザー光の焦点の軌跡L1上に、順に形成された改質部2a〜2dが並んでいる。基本的には、互いに隣接する各改質部の中心の距離(中心間距離)は、互いに隣接する箇所に照射された個々のレーザーパルスのパルスピッチ(先発のパルスと後発のパルスのパルスピッチ)に相当する。ただし、パルスピッチが十分小さい場合、先発のパルスによって形成された改質部に後発のパルスが閉じ込められる現象が起きる場合がある。この場合には中心間距離がパルスピッチに対応するとは限らない。互いに隣接する各改質部の端(縁)と端(縁)との距離(隣接距離)が短い場合には、後段のエッチング処理において、互いに隣接する各改質部が連結するようにエッチングが進行して、軌跡L1に相当する1本に連結した微細孔が形成される。
前記改質工程では、レーザー光の走査速度(μm/sec)を従来よりも速い1×10μm/sec〜4000×10μm/secに設定し、前記パルスピッチ(μm)が0.03μm〜0.3μmとなるように、レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整することによって、従来よりもパルスピッチを大きくすることができる。このような加工条件によって改質部を形成することにより、従来と同等以上にエッチング速度が向上した改質部が得られる。
前記走査速度(μm/sec)としては、1×10μm/sec〜100×10μm/secが好ましく、1×10μm/sec〜50×10μm/secがより好ましく、1×10μm/sec〜10×10μm/secが更に好ましく、1×10μm/sec〜6×10μm/secが特に好ましい。上記範囲の下限値以上(即ち、1×10μm/sec以上)の走査速度を採用することにより、従来よりも飛躍的に製造効率を向上させられる。上記範囲の上限値以下(即ち、100×10μm/sec以下)であることにより、改質部のエッチング耐性を充分に低下させることができる。
前記レーザー光の繰り返し周波数(kHz)としては、1kHz〜50×10kHzが好ましく、1kHz〜30×10kHzがより好ましく、2kHz〜3×10kHzが更に好ましく、3kHz〜1×10kHzが特に好ましく、5kHz〜0.5×10kHzが最も好ましい。上記範囲(即ち、1kHz〜50×10kHz)であることにより、改質部のエッチング耐性を充分に低下させることができる。
前記パルスピッチ(μm)としては、0.03μm〜0.3μmが好ましい。前記ピーク強度が異なると、最適なパルスピッチが0.03μm〜0.3μmの範囲においてシフトする場合がある。パルスピッチが0.03μm〜0.3μmであることにより、改質部のエッチング耐性を充分に低下させることができる。
本発明の第一実施形態において、レーザー光のピーク強度(1パルスあたりのレーザーフルエンス/パルス時間幅)は、7TW/cm以上であることが好ましい。7TW/cm以上であると、エッチング耐性を低下させた改質部を形成することができる。さらには、レーザー光のピーク強度を50TW/cm以上に設定することによって、エッチング耐性を充分に低下させた改質部を形成することができる。
レーザー光のピーク強度の上限は、基板が破壊されるような極端に高い強度でない限り特に制限されず、例えば700TW/cmが挙げられる。
本発明の第一実施形態において使用するレーザー光の波長(nm)は特に制限されないが、例えば300nm〜2000nmが好ましく、300nm〜1600nmがより好ましく、400nm〜1600nmが更に好ましい。
ガラス基板や石英基板において、Si−Oの結合エネルギーは、約6.5eVとされる。この結合エネルギーは、波長が約190nmの紫外光の光子エネルギーに相当する。他方、フェムト秒レーザーを集光照射した際には、集光部でのピーク強度が大きくなるため、多光子吸収反応が支配的となる。後述する試験例1のように、波長800nmのフェムト秒レーザーが、Si−Oの結合を切断するには、5光子吸収以上のエネルギーが必要である。他の波長であっても、集光部で多光子吸収反応によって6.5eV以上のエネルギーが得られるのであれば、同様にSi−Oの結合を切断することができる。一方で集光部近傍以外では結合を多光子吸収反応が起きないため、結合を切断可能なエネルギーとはならず、改質部を形成することはない。
本発明の第一実施形態において使用するレーザー光のパルス時間幅は特に制限されないが、例えば1fs以上10ps未満が好ましく、1fs以上3ps未満がより好ましく、1fs以上2ps未満が更に好ましい。
本発明の第一実施形態において、レーザー光を集光させるレンズの開口数(N.A.)を調整することによって、レーザーのスポット径を調整し、改質部及び微細孔の孔径を調整することができる。チタンサファイアレーザーを用いる場合、N.A.は0.2〜0.7であることが好ましい。N.A.が0.7よりも大きいと基板の深い領域で焦点がぼやけて、エッチング耐性が充分には低下しない改質部が形成されることがある。この場合は、液浸露光でレーザー照射することにより、焦点を充分に結像して、エッチング耐性が充分に低下した改質部を形成することができる。また、大きなピーク強度で照射することによって、同様にエッチング耐性が充分に低下した改質部を形成することができる。
本発明の第一実施形態において、レーザー光の光軸と前記焦点の走査方向とが略平行である。この場合のレーザーの光軸と走査方向とのなす角度は、0度以上30度未満が好ましく、0〜20度がより好ましく、0〜10度が更に好ましく、0〜5度が特に好ましい。上記範囲であると、エッチング耐性がより低下した改質部を容易に形成できる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、前記なす角度は0〜90度の範囲を取りうる角度である。ここで、前記レーザーの光軸と走査方向のなす角度とは、レーザーの光軸を表す直線と走査方向が表す直線とがなす角度のうち、鋭角側の角度を意味する。前記なす角度が、レーザーの光軸を表すベクトルと走査方向が表すベクトルとのなす角(両ベクトルがなす角の範囲は0〜180度)を表すことを意図してはいない。
前記改質工程において、1回の走査で形成する改質部の長手方向に直交する断面形状を円に近似した場合、その直径は、例えば0.3〜12μmの範囲で調整(形成)できる。調整する方法としては、レーザー光のピーク強度、レンズの開口数を変える等の方法が例示できる。ピーク強度が大きくなるほど、また開口数が小さいほど、改質部の径が大きくなる傾向がある。
レーザー照射後に形成される改質部の長手方向に直交する断面の形状は、おおよそ円又は楕円に近似できる形状、或いは、後述するような放射状に複数の直線領域が広がるような形状(以降、放射形状)となる。本明細書で例示した改質部の径は、特に明記しない限り、近似される円の直径又は近似される楕円の長径、或いは放射形状の中心からの最外点を結び、円状に近似した際の直径である。
<エッチング工程>
改質部をエッチングすることにより微細孔を形成する方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、公知の方法が適用できる。
例えば、基板の内部に形成した改質部の端部が基板の表面に露出する状態で、前記基板をエッチング液(エッチャント)に浸漬することによって、改質部を基板内部から除去し、微細孔を形成できる。前記エッチング液としては、例えばフッ酸(HF)や水酸化カリウム(KOH)の水溶液が用いられる。
エッチング後に形成される微細孔の孔径は、エッチング液に浸漬する時間を調整することによって、調整できる。例えば、改質部の直径を0.3μm〜10μmで形成した場合、前記改質部をエッチングすることにより、微細孔の孔径を0.31μm以上で形成することができる。また、前記基板の前記改質部以外の領域も、エッチング速度は遅いが、エッチングされうる。このため、エッチング液の濃度やエッチング時間などのエッチング条件を適宜調整することによって、微細孔の孔径を任意に変えることができる。
エッチング後に形成される微細孔の孔径の形状(微細孔の長手方向に直交する方向の断面形状)は、エッチング時間を短くするなどして微細孔の孔径を小さくすると、後述するような放射状に複数の直線領域が広がるような形状(以降、放射形状)となる。さらにエッチング時間を長くするなどして、微細孔の径を大きくすると、円又は楕円に近似できる形状となる。本明細書で例示した微細孔の孔径は、特に明示しない限り、放射形状の中心からの最外点を結び、円状に近似した際の直径、或いは円に近似される場合は円の直径である。
[試験例1]
チタンサファイアレーザーを用いて、図3に示した様に、石英ガラス基板1の第一の面1aからレーザー光Lを基板1内部に入射させ、レーザー光Lの光軸に沿って、当該光軸に平行に焦点Fを引き上げるように走査することにより、改質部2を形成した。形成した改質部2の両端は、基板1の第一の面1aと第二の面1b(第一の面に対向する面)にそれぞれ露出している。改質部2の長手方向の長さは、基板1の厚みと同じ500μmであり、改質部の径は最大で5μm程度であった。
具体的な照射条件は以下の通りである。
《照射条件》
・波長(中心波長)=800nm、スペクトル幅=10nm(±5nm)、パルス時間幅=〜220fs、対物レンズの開口数(N.A.)=0.5、偏波=円偏波、光軸と走査方向とのなす角度=約0度、で行った。
・ピーク強度(1パルス当りのレーザーフルエンス/パルス時間幅)=20,50,70,90TW/cmの各値で、それぞれ試験した。
・走査速度(μm/sec)を3000μm/secに設定し、繰り返し周波数(kHz)は、所定のパルスピッチとなる様に、10kHz〜200kHzの範囲で調整した。
・1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら一定の速度で走査した。
《エッチング条件》
改質部を形成した基板を、温度80℃のKOH水溶液(15wt%)に3時間浸漬し、基板の両面から同時に改質部のエッチングを行い、微細孔を形成した。
各条件で形成された改質部の断面は略円形、若しくは放射形状であり、その直径は約4〜9μmであった。また、各条件で形成された微細孔の断面は略円形、若しくは放射形状であり、その直径は約5~10μmであった。
試験例1の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図4に示す。「×」で示されたプロット群はピーク強度=20TW/cmで行った結果であり、「□」で示されたプロット群はピーク強度=50TW/cmで行った結果であり、「△」で示されたプロット群はピーク強度=70TW/cmで行った結果であり、「○」で示されたプロット群はピーク強度=90TW/cmで行った結果である。何れのピーク強度の場合も、走査速度は3000μm/secである。
これらの結果から、パルスピッチが0.03〜0.3μmの範囲において、ピーク強度は、20TW/cmよりも大きいことが好ましく、50TW/cm以上がより好ましく、70TW/cm以上が更に好ましいことが理解される。ピーク強度が20TW/cmの場合と50TW/cm以上の場合を比べると、後者のエッチング速度(エッチング長/3時間)の方が2倍以上速い。また、ピーク強度が20TW/cmである場合、パルスピッチは0.03〜0.1μmであることが好ましい。ピーク強度が50TW/cmである場合、パルスピッチは0.03〜0.2μmであることが好ましい。ピーク強度が70TW/cm以上である場合、パルスピッチは0.03〜0.3μmであることが好ましい。
試験例1の条件では、50〜90TW/cmのピーク強度で形成した改質部は、測定限界であるエッチング長250μmに達している。このため、各改質部のエッチング長の差異が見かけ上、無い。しかし、エッチング時間を短縮する又は改質部の長さを延長することにより、各改質部の差異が明確になるとともに、更に速いエッチング速度であることが明らかになる可能性が残されている。また、ピーク強度が20TW/cmでは、パルスピッチが0.2μmから0.3μmの範囲においてエッチング長がゼロとなっており、エッチングが進行しない結果となった。
ここでは図示しないが、従来のレーザー照射条件によって石英ガラス基板に改質部を形成する場合、パルスピッチは0.001μm未満であり、走査速度は0.1mm/sec以下であり、試験例1と同じエッチング条件におけるエッチング長は100〜150μmである。したがって、試験例1の方法は、従来方法よりも格段に速い走査速度で改質部を形成し、更に従来方法と同等以上の速度でエッチングできることが明らかである。
次に、試験例1で形成した微細孔の光学顕微鏡写真を図5に示す。図5は、石英基板にピーク強度70TW/cmでレーザー照射し、改質部をエッチングした後に出現した微細孔である。図5においては、微細孔は紙面に対して垂直方向に伸びて形成されている。
図5に示した写真はそれぞれパルスピッチの値が異なっており、(a)は0.015μm、(b)は0.06μm、(c)は0.3μmのパルスピッチである。この3つの写真を比較すると、(a)については断面形状が丸型の微細孔であるのに対し、(b)及び(c)では、丸型の微細孔に加えてクラック状の微細構造(放射形状)が形成されていることが分かる。この結果から、(a)のパルスピッチと(b)及び(c)のパルスピッチとでは、レーザー照射によって形成される改質部の構造が異なっていると推察される。そして、その差異がクラック状の微細構造となって(b)及び(c)の微細孔に出現したもののと考えられる。尚、(b)は(a)と(c)の特徴をあわせ持つ形状となっているものと考えられる。そして図4と図5の結果から、微細孔の断面の孔径が10μmより小さく、真円度の高い断面形状を有する微細孔を、速いエッチング速度で形成するためには、パルスピッチを0.03μm〜0.06μmとすることが好ましい。
[試験例2]
対物レンズの開口数(N.A.)=0.25に変更した以外は、試験例1と同様に行った。試験例2の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図6に示す。「□」で示されたプロット群はピーク強度=50TW/cmで行った結果であり、「△」で示されたプロット群はピーク強度=70TW/cmで行った結果である。
これらの結果から、0.03〜0.3μmのパルスピッチの範囲において、エッチング長はレーザーのスポット径(対物レンズの開口数)に殆ど依存しないことが理解される。
[試験例3]
対物レンズの開口数(N.A.)=0.8に変更した以外は、試験例1と同様に行った。試験例3の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図7に示す。「×」、「□」、「△」、「○」の各プロット群は、それぞれ、ピーク強度=20、50、70、90TW/cmで行った結果である。
N.A.=0.8の場合、レーザー光の焦点が結像し難く、焦点が比較的ぼやけてしまう。このため、試験例1及び2の結果と比べて、エッチング長が全体的に小さくなっている。N.A.=0.8の場合においても、最適なパルスピッチは0.03〜0.3μmであることが理解される。N.A.=0.8の場合、何れのピーク強度においても、パルスピッチが0.06〜0.2μmであることがより好ましい。
[試験例4]
偏波を直線偏波に変更した以外は、試験例1と同様に行った。試験例4の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図8に示す。「×」、「□」、「△」、「○」の各プロット群は、それぞれ、ピーク強度=20、50、70、90TW/cmで行った結果である。
ピーク強度が50TW/cm以上である場合、試験例4ではエッチング長はパルスピッチに殆ど依存することなく、十分なエッチング長を得ることができた。一方、ピーク強度が20TW/cmであり、且つパルスピッチが0.1μmよりも大きく0.3μmよりも小さい場合、エッチング長が格段に大きくなる。試験例4においては、図8に示されているように、パルスピッチ0.2μmでのエッチング長が特異的に大きくなる結果となった。
[試験例5]
チタンサファイアレーザーを用いて、図9に示した様に、石英ガラス基板1の第一の面1aからレーザー光Lを基板1内部に入射させ、レーザー光Lの光軸に沿って、当該光軸に平行に焦点Fを引き上げるように走査することにより、改質部2を形成した。形成した改質部2の一方の端部は基板1の第一の面1aに露出し、他方の端部は基板内部に位置している。改質部2の長手方向の長さは約800μmであり、改質部の径は最大で5μm程度であった。具体的な照射条件は、試験例1と同様である。
試験例5の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図10に示す。「△」で示されたプロット群は、走査速度は3000μm/sec、ピーク強度=70TW/cmで行った結果である。
この結果から、エッチング長を長くする(エッチング速度を高める)観点から、パルスピッチは0.06〜0.2μmの範囲が好ましいことが明らかである。
ここではピーク強度=70TW/cmの場合のみを示したが、他のピーク強度の場合においても同様の傾向が観察されており、パルスピッチは0.06〜0.3μmの範囲が好ましく、0.06〜0.2μmの範囲がより好ましい。
[試験例6]
偏波を直線偏波に変更した以外は、試験例5と同様に行った。試験例6の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図11に示す。「□」、「△」の各プロット群は、それぞれ、ピーク強度=50、70TW/cmで行った結果である。
試験例6の条件において、エッチング長はパルスピッチに殆ど依存しないことが理解される。ただし、単位時間当たりのエッチング長を長くする観点から、50TW/cmの場合のパルスピッチの範囲は0.06〜0.3μmが好ましく、70TW/cmの場合のパルスピッチの範囲は0.03〜0.3μmが好ましい。
試験例6の結果におけるエッチング長は測定限界に達しているため、実際は更に高速のエッチング速度が実現できることが明らかである。このことは、改質部の長さを延長するか又はエッチング時間を短縮することにより確認することができる。
試験例5の結果と試験例6の結果を比較すると、エッチング長を長くする(エッチング速度を高める)観点から、直線偏波の方が好ましいことが理解される。
試験例6における、偏波=直線、ピーク強度=70TW/cm、パルスピッチ=0.1μmの条件で形成した改質部をエッチングして得た石英ガラス基板の断面の写真を図12に示す。点線は基板1の第一の面1aを表す。点線の下方に垂直に延びた4本の白線が観察される。この白線が形成された微細孔を表す。微細孔の長手方向の断面の形状は極めて均一な直線である。点線の上方に延びた白線は、写真撮影時に基板内部の微細孔が基板表面に反射した鏡像である。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本発明にかかる微細孔を備えた基板の製造方法は、貫通配線基板等の製造に広く利用することができる。
L…レーザー光、F…レーザーの焦点(集光部)、1…基板、1a…第一の面、1b…第二の面、2,2a,2b,2c,2d…改質部、L1…焦点の軌跡

Claims (4)

  1. 微細孔を備えた基板の製造方法であって、
    10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するパルス状のレーザー光の焦点が移動する際の、基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を1×10μm/sec〜4000×10μm/secに設定し、
    下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.03μm〜0.3μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整し、
    前記基板に、前記レーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を前記基板の内部で、1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら略一定の速度で、レーザー光の光軸に沿う方向に走査し、前記焦点が通過した領域及びその近傍域にエッチング耐性が低下した改質部を形成し、
    前記改質部をエッチング処理で除去することにより、前記基板に微細孔を形成することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
    式(1)・・・パルスピッチ(μm)=
    {前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
  2. 請求項1に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
    前記レーザー光の偏波が直線偏波であることを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
    前記レーザー光の1パルスのピーク強度を50TW/cm以上に設定することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
    前記基板が石英ガラス製であることを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
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