JP2014164102A - 反射防止物品及び画像表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐汚染性及び耐擦傷性に優れる反射防止物品と、これを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体と、被覆層とをこの順で有する反射防止物品であって、前記微小突起構造体において、隣接する前記微小突起間の距離が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であり、前記微小突起群は、少なくともその一部が、頂部微小突起と、該頂部微小突起の周囲に隣接して形成されており該頂部微小突起よりも高さが低い複数の周辺微小突起と、からなる凸状突起群を構成し、前記被覆層側の表面が、前記頂部微小突起に由来する突出部を有することを特徴とする、反射防止物品。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止物品と、当該反射防止物品を備えた画像表示装置に関するものである。
近年、フィルム形状の反射防止物品である反射防止フィルムに関して、透明基材(透明フィルム)の表面に多数の微小突起を密接して配置することにより、反射防止を図る方法が提案されている。この方法は、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、入射光に対する屈折率を基板の厚み方向に連続的に変化させ、これにより屈折率の不連続界面を消失させて反射防止を図るものである。
このモスアイ構造に係る反射防止物品では、隣接する微小突起の間隔dが、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長Λmin以下(d≦Λmin)となるよう、微小突起が密接して配置される。又、各微小突起は、透明基材に植立するように、更に透明基材より先端側に向かうに従って徐々に断面積が小さくなるように(先細りとなるように)作製される。
このような微細凹凸を表面に有する反射防止物品は、外部に露出されて使用される場合が多いが、微細凹凸の存在により、表面が平滑な部材と比較して清掃が困難であるという問題があった。また、微細凹凸構造の耐擦傷性が実用上未だ不十分であり、例えば微細凹凸構造に他の物体が接触した場合に、反射防止機能が局所的に劣化したり、接触箇所に白濁や傷等が発生して外観不良が発生したりする場合があった。
これに対して、例えば特許文献1では、指紋拭き取り性及び耐擦傷性を向上させることを目的として、微細凹凸構造の表面に、動摩擦係数が0.2以下のシランカップリング剤の加水分解縮合体からなる被覆層を、微細凹凸構造に追従して形成した反射防止物品が開示されている。
また、特許文献2には、防汚性及び耐擦傷性を付与させることを目的として、凹凸層を特定の活性エネルギー線硬化樹脂で形成することにより、当該凹凸層表面を水接触角25°以下、弾性率200MPa以上とした反射防止物品が開示されている。
しかしながら、反射防止物品の耐汚染性及び耐擦傷性は、さらなる向上が求められている。
特開2010−44184号公報 特許第4689718号公報
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐汚染性及び耐擦傷性に優れる反射防止物品と、当該反射防止物品を備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明に係る反射防止物品は、透明基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体と、被覆層とをこの順で有する反射防止物品であって、
前記微小突起構造体において、隣接する前記微小突起間の距離が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であり、
前記微小突起群は、少なくともその一部が、頂部微小突起と、該頂部微小突起の周囲に隣接して形成されており該頂部微小突起よりも高さが低い複数の周辺微小突起と、からなる凸状突起群を構成し、
前記被覆層側の表面が、前記頂部微小突起に由来する突出部を有することを特徴とする。
本発明に係る反射防止物品においては、反射防止性能の観点から、前記被覆層を形成する材料の屈折率が、前記微小突起構造体を形成する材料の屈折率よりも小さいことが好ましい。
本発明に係る画像表示装置は、画像表示パネルの出光面上に、前記本発明に係る反射防止物品を配置してなることを特徴とする。
本発明によれば、耐汚染性及び耐擦傷性に優れる反射防止物品と、当該反射防止物品を備えた画像表示装置を提供することができる。
本発明に係る反射防止物品の一例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る反射防止物品の他の一例を模式的に示す断面図である。 凸状突起群の説明に供する図である。 頂点を複数有する微小突起の説明に供する図である。 ドロネー図を示す図である。 隣接突起間距離の計測に供する度数分布図である。 微小突起の高さの説明に供する度数分布図である。 微小突起の谷底の包絡面が凹凸面(うねり)を呈する形態を示す概念断面図である。 微小突起構造体の形成工程を説明する図である。 本発明に係る画像表示装置の一例を模式的に示す断面図である。
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明において、(メタ)アクリル樹脂は、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂の各々を表し、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
また、本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
また、本発明において電磁波とは、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
I.反射防止物品
本発明に係る反射防止物品は、透明基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体と、被覆層とをこの順で有する反射防止物品であって、
前記微小突起構造体において、隣接する前記微小突起間の距離が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であり、
前記微小突起群は、少なくともその一部が、頂部微小突起と、該頂部微小突起の周囲に隣接して形成されており該頂部微小突起よりも高さが低い複数の周辺微小突起と、からなる凸状突起群を構成し、
前記被覆層側の表面が、前記頂部微小突起に由来する突出部を有することを特徴とする。
従来、特許文献1及び2のような微小突起の高さが均一な微小突起構造体を有する場合、構造上、全微小突起に一斉に、汚染物が付着しやすく、また外力が負荷されやすい。そのため、材料の選択のみでは、耐汚染性や耐擦傷性の向上に限界があり、さらなる向上の手段が求められていた。
それに対して、本発明の反射防止物品は、前記微小突起構造体を有することにより、反射防止効果を奏し、さらに、当該微小突起構造体上に形成された被覆層と、被覆層側の表面に前記突出部を有することにより、耐汚染性及び耐擦傷性に優れる。本発明の反射防止物品が、被覆層と前記突出部を有することにより耐汚染性及び耐擦傷性に優れるのは、まず、被覆層側表面に他の物体や手指等が接触した際に、他の部分に比べて高さの高い突出部に接触しやすく、突出部以外の部分には接触し難いことから、汚れの付着や損傷が突出部に集中し、突出部以外の部分においては低減する結果、被覆層側表面全体としては汚れの付着及び損傷が低減するためと推定される。更に、被覆層の存在により、微小突起構造体表面の強度が向上する他、微小突起間の谷部がある程度以上充填されることから、谷部に塵埃等の異物が溜まることが抑制されたり、微小突起同士のスティッキングが抑制されるためと推定される。
また、本発明の反射防止物品は、耐汚染性及び耐擦傷性に優れることから、反射防止機能の劣化や外観不良の発生も低減され、耐久性に優れる。
また、本発明の反射防止物品は、前記被覆層の材料を適宜選択することにより、さらに耐汚染性、耐擦傷性等の機能を向上することができる。
図1は、本発明に係る反射防止物品の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す反射防止物品1は、透明基材2の一方の面に、当該透明基材2側から順に、微小突起構造体3、被覆層4を有する。図1に示す反射防止物品1では、微小突起構造体3が、透明基材2とは別の材料からなる微小突起層3aに形成されている。
図2は、本発明に係る反射防止物品の他の一例を模式的に示す断面図である。図2に示す反射防止物品1’は、透明基材2の一方の面に、当該透明基材2と一体となって微小突起構造体3が形成され、当該微小突起構造体3上に被覆層4を有する。
また、図1に示す反射防止物品1及び図2に示す反射防止物品1’においては、微小突起構造体3を構成する微小突起群の一部が、相対的に高さの高い頂部微小突起51と、該頂部微小突起51の周囲に隣接して形成されており該頂部微小突起51よりも高さが低い複数の周辺微小突起52とからなる凸状突起群5を構成し、被覆層4側の表面に、頂部微小突起51に由来する突出部6を有する。なお、図1及び図2は、連続する微小突起の頂点を結ぶ折れ線により断面を取って示す図である。
以下、本発明に係る反射防止物品が有する透明基材、微小突起構造体及び被覆層について、順に説明する。
<透明基材>
前記透明基材としては、反射防止物品に用いられる公知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。前記透明基材に用いられる材料としては、例えば、透明樹脂が挙げられる。透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等を挙げることができる。
また、前記透明基材に用いられる材料としては、前記透明樹脂の他に、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等の各種透明無機材料等も挙げられる。
前記透明基材は、反射防止を図る電磁波領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
前記透明基材の厚みは、本発明の反射防止物品の用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、前記透明基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
本発明に用いられる透明基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
また、後述する微小突起構造体が、透明基材とは別の材料からなる微小突起層に形成される場合は、透明基材と当該微小突起層との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性を向上させるためのプライマー層を透明基材上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材および微小突起層との双方に密着性を有すれば良い。
前記プライマー層の材料としては、例えば、フッ素系コーティング剤及びシランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。前記フッ素系コーティング剤の市販品としては、例えば、フロロテクノロジー製のフロロサーフ FG−5010Z130等が挙げられ、前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマー DS−PC−3B等が挙げられる。
<微小突起構造体>
本発明の反射防止物品は、透明基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体を有する。
当該微小突起構造体は、図1に示したように、前記透明基材とは別の材料からなる微小突起層に形成されていても良いし、図2に示したように、透明基材の一方の面を賦形等することにより、透明基材の表面に形成されたものであっても良い。
前記微小突起構造体を構成する微小突起は、隣接する前記微小突起間の距離d(以下、「隣接突起間距離d」と称する。)が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下Λmin以下(d≦Λmin)となるよう密接して配置される。この隣接突起間距離dに係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起であり、基材側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。本発明に係る反射防止物品では、微小突起が密接して配置されることにより、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。隣接突起間距離dに係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
本発明に係る反射防止物品を、視認性の向上を主目的として画像表示パネルに配置して使用する場合は、この最短波長Λminは、個人差、視聴条件を加味した可視光領域の最短波長(通常380nm)に設定され、隣接突起間距離dは、ばらつきを考慮して通常100〜300nmとされる。
また、前記微小突起構造体は、当該微小突起構造体を構成する微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有する。これにより、前記微小突起構造体と、外界(本発明においては被覆層)との間の急激で不連続な屈折率変化を、連続的で漸次変化する屈折率変化に変えることが可能となるため、本発明の反射防止物品は反射防止効果を発揮する。光の反射は、物質界面の不連続な急激な屈折率変化によって生じる現象であるから、前記微小突起構造体表面に於ける屈折率変化を、空間的に連続的に変化する様にすることによって、前記微小突起構造体表面に於ける光反射が減るのである。
前記微小突起構造体を構成する各微小突起は、基材に植立するように、さらに基材より先端側に向かうに従って徐々に断面積が小さくなるように(先細りとなるように)作製され、具体的な形状としては、例えば、半球、回転楕円体の半裁形状及び円錐形や四角錐形等の錐形体等が挙げられる。
前記微小突起の高さHは、反射防止効果の観点から、通常50〜350nmである。
[凸状突起群]
前記微小突起構造体を構成する微小突起群は、少なくともその一部が、頂部微小突起と、該頂部微小突起の周囲に隣接して形成されており該頂部微小突起よりも高さが低い複数の周辺微小突起と、からなる一群の微小突起の集合(本発明において「凸状突起群」と称する。)を構成する。
本発明の反射防止物品は、前記微小突起構造体が前記凸状突起群を有することにより、前記微小突起構造体上に被覆層を形成した後の被覆層側表面に、前記凸状突起群が有する頂部微小突起に由来した突出部が形成される。
図3は、複数の微小突起によって構成される凸状突起群の説明に供する断面図(図3(a))、斜視図(図3(b))、平面図(図3(c))である。図3に示す凸状突起群5は、相対的に高さの高い頂部微小突起51と、その周囲に隣接して配置された相対的に高さの低い複数の周辺微小突起52からなる。尚、この図3は、理解を容易にするために模式的に示す図であり、図3(a)は、その一部が凸状突起群5を構成している連続する微小突起の頂点を結ぶ折れ線により断面を取って示す図である。この図3(a)、(b)及び(c)において、XY方向は、透明基材2の面内方向であり、Z方向は微小突起の高さ方向である。
また、本発明において、前記頂部微小突起51は、前記周辺微小突起52よりも相対的に高さが高く、高さの差hが10nm以上のものをいう。なお、当該高さの差hとは、頂部微小突起51の頂部の高さから周辺微小突起52の頂部の高さまでの透明基材平面に対する垂線方向の距離(図3中のh)を意味する。高さの差hが10nm以上であることにより、被覆層側表面に形成される突出部の高さを充分に高くすることができることから、耐汚染性及び耐擦傷性がさらに向上し、また、被覆層側表面の滑りをさらに良くすることができるので、製造工程等における反射防止物品の取り扱いがより容易になる。中でも、頂部微小突起51と周辺微小突起52との高さの差hは、20nm以上であることが好ましい。また、前記高さの差hは、被覆層側表面のざらつき感を抑える観点から、50nm以下であることが好ましい。
なお、1つの凸状突起群が有する頂部微小突起は、1つのみであっても良いし、複数であっても良い。1つの凸状突起群において頂部微小突起が複数ある場合、複数の頂部微小突起とは、互いに隣接して配置され且つ高さの差が10nm未満の相対的に高さの高い複数の微小突起であり、当該複数の頂部微小突起の周囲に隣接して形成される相対的に高さが10nm以上低い微小突起が周辺微小突起である。
本発明の反射防止物品は、特に限定されないが、前記凸状突起群は1つの頂部突起と、複数の周辺微小突起とからなるものであることが好ましい。
なお、前記微小突起構造体が前記凸状突起群を有することは、原子間力顕微鏡(AFM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することができる。
前記凸状突起群においては、周辺微小突起が頂部微小突起に比べて相対的に高さが低くなっているので、前記凸状突起群を構成する各微小突起の各頂点を含んで構成され、頂部微小突起の頂点から下端部に至る部分に形成される曲面(以下、「凸状突起群の包絡面」と称する。)は、図3に示すように、頂部微小突起51の頂点(P1)から下端部(r0)へ向けて幅広となり、略釣鐘形状となる。
ここで、凸状突起群の包絡面とは、例えば図3に示す凸状突起群5では、各微小突起の頂点(P1、P2、・・)を含んでなるベジェ曲線(又は、Bスプライン曲線)等によって作成され、曲線の一の下端部r0から頂部微小突起51の頂点(P1)を経て、他の下端部r0に至る部分に形成される曲面のことである。
このように、包絡面が略釣鐘形状の曲面である場合には、凸状突起群は、群全体として、いわゆるモスアイ構造における単一の微小突起が発揮する効果と同様の作用効果を発揮しうる。よって、凸状突起群を備える反射防止物品は、単一の微小突起のみが存在するときと、同等若しくはそれ以上の反射防止効果をも発揮しうるものである。
一つの凸状突起群の包絡面における下端部間の距離の最大値を、凸状突起群の幅W(図5中のW)と定義したとき、当該凸状突起群の幅Wが、780nm以下であるときには、単一の微小突起の間における隣接突起間距離dがλmax(780nm)以下であるときと同様に、凸状突起群は、群全体として、可視光線帯域の最大波長において反射防止効果の向上に寄与しうる。
また、凸状突起群の幅Wが、380nm以下であれば、同様に、可視光線帯域の全波長の光線に対する反射防止効果の向上に寄与することができる。
また、前記微小突起構造体を構成する微小突起群は、前記凸状突起群を有することにより、各微小突起の高さに高低差がある。これにより、本発明の反射防止物品は、反射防止性能が広帯域化され、白色光のような多波長の混在する光、或いは、広帯域スペクトルを持つ光に対して、全スペクトル帯域で低反射率を実現するのに有利である。これは、前記微小突起群によって良好な反射防止性能を発現し得る電磁波の波長帯域が、隣接突起間距離dの他に、突起高さにも依存するためである。
前記微小突起構造体が有する全微小突起のうち、前記凸状突起群を構成する微小突起の個数の割合(以下、この割合を「凸状突起群構成比率」と称する場合がある。)は、特に限定されないが、通常10%以上とする。反射防止物品の耐汚染性及び耐擦傷性を向上する効果を十分に発揮させる点から、前記凸状突起群構成比率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
なお、前記凸状突起群には、前記周辺微小突起にのみ隣接し、且つ前記頂部微小突起よりも高さが低い微小突起は含まれない。また、凸状突起群同士が隣接して形成される場合において、周辺微小突起が互いに隣接する凸状突起群に共有される場合がある。
前記凸状突起群を構成する微小突起の個数の割合は、例えば、前記微小突起構造体の表面をSEM等により観察し、画像解析により存在を確認できた微小突起の個数のうち、凸状突起群を構成する微小突起の個数の割合を算出することにより、求めることができる。
また、上述したように、本発明の反射防止物品においては、前記凸状突起群の頂部微小突起に由来して、被覆層側表面に突出部が形成されるため、前記凸状突起群構成比率が高いほど、被覆層側表面に形成される突出部の数は多くなる。
また、前記微小突起構造体が有する全微小突起のうち、前記頂部微小突起の個数の割合は、特に限定されないが、5%以上であることが好ましい。
また、前記微小突起構造体においては、特に限定されないが、凸状突起群の周辺に配置される微小突起が、当該凸状突起群の頂部微小突起から離れるに連れて、順次高さが低くなっていくように配置されていることが好ましい。これにより、被覆層側表面において、突出部以外の部分はさらに汚れや傷が付きにくくなるので、本発明の反射防止物品は、耐汚染性及び耐擦傷性がさらに向上する。
[各微小突起の形状]
前記微小突起構造体を構成する微小突起群の中には、頂点を複数有する微小突起(以下、「多峰性の微小突起」と称する場合がある。)が含まれていても良い。多峰性の微小突起を含むことにより、本発明の反射防止物品は反射防止性能がより向上する。なお、多峰性の微小突起との対比により、頂点が1つのみの微小突起を「単峰性の微小突起」と称する場合がある。また多峰性の微小突起、単峰性の微小突起に係る各頂点を形成する各凸部を、適宜、「峰」と称する。
図4は、微小突起の頂点を複数有する多峰性の微小突起の説明に供する斜視図(図4(a))、平面図(図4(b))である。なおこの図4は、理解を容易にするために模式的に示す図である。図4(a)及び(b)において、XY方向は、透明基材の面内方向であり、Z方向は微小突起の高さ方向である。本発明の反射防止物品において、単峰性の微小突起は、透明基材より離れて頂点に向かうに従って徐々に断面積(高さ方向に直交する面(図4においてXY平面と平行な面)で切断した場合の断面積)が小さくなって、頂点が1つにより作製される。一方、多峰性の微小突起としては、例えば、複数の微小突起が結合したかのように、先端部分に溝gが形成され、頂点が2つになったもの(図示略)、頂点が3つになったもの(図4の51B)、さらには頂点が4つ以上のもの(図示略)等が挙げられる。なお単峰性の微小突起の形状は、回転放物面の様な頂部の丸い形状、或いは円錐の様な頂点の尖った形状で近似することができる。一方、多峰性の微小突起の形状は、単峰性の微小突起の頂部近傍に溝状の凹部を切り込んで、頂部を複数の峰に分割したような形状で近似することができる。多峰性の微小突起の形状は、或いは、複数の峰を含み高さ方向(図4ではZ軸方向)を含む仮想的切断面で切断した場合の縦断面形状が、極大点を複数個含み各極大点近傍が上に凸の曲線になる代数曲線Z=a+a+・・+a2n2n+・・で近似されるような形状である。
多峰性の微小突起が混在する場合に、単峰性の微小突起のみによる場合に比して反射防止の性能を向上することができるのは、多峰性の微小突起は、隣接突起間距離dが同じ場合であっても、また突起高さHが同じ場合であっても、単峰性の微小突起と比べて、より光の反射率が低減するからであり、多峰性の微小突起は、頂部より下(中腹及び麓)の形状が同じ単峰性の微小突起よりも、頂部近傍における有効屈折率の高さ方向の変化率が小さくなる為である。
前記微小突起構造体が有する全微小突起のうち、多峰性の微小突起の個数の割合は、反射防止性を向上する効果を発揮する点からは、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。
[微小突起構造体の形状]
前記微小突起構造体に備えられた微小突起が一定周期で規則正しく配置されている場合、前記微小突起の隣接突起間距離dは、前記反射防止効果を得るためには、例えば特開昭50−70040号公報、特許第4632589号公報、特許第4270806号公報等に開示のように、突起配列の周期p(d=p)となる。反射防止を図る電磁波を可視光とすると、可視光帯域の最長波長をλmax、最短波長をλminとした場合に、最低限、可視光線帯域の最長波長において反射防止効果を奏し得る必要最小限の条件は、Λmin=λmaxである為、p≦λmaxとなり、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得る必要十分の条件は、Λmin=λminであるため、p≦λminとなる。
可視光線帯域の最長波長λmax、最短波長λminは、観察条件、光の強度(輝度)、個人差等にも依存して多少幅を持ち得るが、標準的には、λmax=780nm及びλmin=380nmとされる。これらにより、可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、前記微小突起の隣接突起間距離dが、d≦300nmであり、より好ましい条件は、d≦200nmとなる。なお反射防止効果の発現及び反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、隣接突起間距離dの下限値は、通常、d≧50nm、好ましくは、d≧100nmとされる。
一方、本発明の反射防止物品は、微小突起群の構造が、単純な周期性がないもの、さらには全く不規則な配置のものも含む。このように、前記微小突起群の微小突起が不規則に配置されている場合には、隣接突起間距離dはばらつきを有することになる。そこでこのような場合、隣接突起間距離dは以下のように算定される。
(1)先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と称する。)を検出する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。ここでドロネー図とは、各極大点を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。図5は、ドロネー図(白色の線分により表される図である)を原画像と重ね合わせた図である。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(隣接突起間距離)の度数分布を求める。図6は、図5のドロネー図から作成した度数分布のヒストグラムである。なお、突起の頂部に溝状等の凹部が存在したり、あるいは頂部が複数の峰に***している場合は、求めた度数分布から、このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に***している微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作成する。
具体的には、突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に***している微小突起(多峰性の微小突起)に係る微細構造においては、このような微細構造を備えていない微小突起(単峰性の微小突起)の場合の数値範囲から、隣接突起間距離が明らかに大きく異なることになる。これによりこの特徴を利用して対応するデータを除去することにより突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を検出する。より具体的には、例えば微小突起(群)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する単峰性の微小突起を選んで、その隣接突起間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接突起間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。図6の例では、隣接突起間距離が56nm以下のデータ(矢印Aにより示す左端の小山)を除外する。なお図6は、このような除外する処理を行う前の度数分布を示すものである。
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布から平均値dAVG及び標準偏差σを求める。ここでこのようにして得られる度数分布を正規分布とみなして平均値dAVG及び標準偏差σを求めると、図6の例では、平均値dAVG=158nm、標準偏差σ=38nmとなった。これにより隣接突起間距離dの最大値を、dmax=dAVG+2σとし、この例ではdmax=234nmとなる。
なお同様の手法を適用して、前記微小突起構造体が備える微小突起の高さHを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。図7は、このようにして求められる突起付け根位置を基準(高さ0)とした突起高さHの度数分布のヒストグラムを示す図である。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値HAVG、標準偏差σを求める。ここでこの図7の例では、平均値HAVG=178nm、標準偏差σ=30nmである。これによりこの例では、突起の高さは、平均値HAVG=178nmとなる。なお図7に示す突起高さHのヒストグラムにおいて、多峰性の微小突起の場合は、頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが混在することになる。そこでこの場合は、麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。すなわち、多峰性の微小突起の場合は、麓部を共有する複数の峰のうち最高峰の高さを該微小突起の高さとする。
突起が不規則に配置されている場合には、このようにして求められる隣接突起間距離dの最大値dmax=dAVG+2σ、突起の高さHの平均値HAVGが、規則正しく配置されている場合の上述の条件を満足することが必要である。具体的には、反射防止効果を発現する隣接微小突起間距離の条件は、dmax≦Λminとなる。最低限、可視光線帯域の最長波長において反射防止効果を奏し得る必要最小限の条件は、Λmin=λmaxである為、dmax≦λmaxとなり、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得る必要十分の条件は、Λmin=λminである為、dmax≦λminとなる。そして、可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、dmax≦300nmであり、更に好ましい条件は、dmax≦200nmである。また反射防止効果の発現及び反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、通常、dmax≧50nmであり、好ましくは、dmax≧100nmとされる。
また突起高さについては、十分な反射防止効果を発現する為には、突起の高さの平均値HAVGが、HAVG≧0.2×λmax=156nm(λmax=780nmとして)とされ、通常350nm以下とされる。
上述した図5〜図7に係る測定結果は、図4に示すような頂点を複数有する、多峰性の微小突起を含む実施形態における測定結果であり、図6に示す度数分布においては、隣接突起間距離d(横軸の値)について、20nm及び40nmの短距離の極大値と120nm及び164nmの長距離の極大値との2種類の極大値が存在する。これらの極大値のうちの長距離の極大値は、微小突起本体(頂部よりも下の中腹から麓にかけての部分)の配列に対応し、一方、短距離の極大値は頂部近傍に存在する複数の頂点(峰)に対応する。これにより極大点間距離の度数分布によっても、多峰性の微小突起の存在を見て取ることができる。
なお上述した突起の高さを測る際の基準位置は、突起付け根位置、すなわち隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合(例えば、後述するように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、微小突起の隣接突起間距離dに比べて大きな周期Dでうねった凹凸形状を有する場合等)は、(1)先ず、透明基材の表面又は裏面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が収束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを有し、且つ透明基材の表面又は裏面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
隣接する微小突起の間の谷底の高さ自体が場所によって異なる場合とは、例えば、図8に示すように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面7が微小突起の隣接突起間距離dに比べて大きな周期Dでうねり、凹凸面を形成する場合等が挙げられる。すなわち、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面7が、可視光線帯域の最長波長λmax以上の周期D(すなわちD>λmaxである)でうねった構成としてもよい。当該周期的なうねりは、透明基材の表裏面に平行なXY平面(図8参照)における1方向(例えばX方向)のみでこれと直交する方向(例えばY方向)には一定高さであっても良いし、或いはXY平面における2方向(X方向及びY方向)共にうねりを有していても良い。D>λmaxを満たす周期Dでうねった包絡面7が多数の微小突起からなる微小突起群に重畳することによって、微小突起群で完全に反射防止しきれずに残った反射光を散乱し、残留反射光、とくに鏡面反射光を更に視認し難くし、その結果、反射防止効果を一段と向上させることができる。
尚、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面7の周期Dが前面に渡って一定では無く分布を有する場合は、該包絡面7が形成する凹凸面について凸部間距離の度数分布を求め、その平均値をDAVG、標準偏差をΣとしたときの、
MIN=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離を以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微小突起群の残留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
MIN>λmax
である。通常、D又はDMINは1〜200μm、好ましくは10〜100μmとされる。
なお、前記周期Dは、本発明の反射防止物品を、厚み方向に切断した垂直断面のTEM写真又はSEM写真を用いて観察することにより測定することができる。
また、本発明の反射防止物品の良好な平滑性を確保するために、前記周期Dでうねった包絡面7により形成される凹凸面の高低差(図8中のh)は、10nm以下であることが好ましく、1nm〜5nmの範囲内であることがより好ましい。なお、前記包絡面7により形成される凹凸面の高低差は、例えば500nm以上離れた微小突起の谷底部の位置の高低差を測定することにより求めることができる。微小突起の谷底部の位置は、本発明の反射防止物品を、厚み方向に切断した垂直断面のTEM写真又はSEM写真を用いて観察することにより求めることができる。
前記微小突起構造体において、アスペクト比(平均突起高さHAVG/平均隣接突起間距離dAVG)は、特に限定されないが、0.8〜2.5であることが好ましく、更に、0.8〜2.1であることが好ましい。
前記微小突起構造体を、透明基材とは別の材料からなる微小突起層として積層する場合、当該微小突起層の厚みは、特に限定されないが、通常10〜300μmである。なお、この場合の微小突起層の厚みとは、微小突起層の透明基材側の界面から、最も高さの高い微小突起の頂部の高さまでの透明基材平面に対する垂線方向の距離を意味する(図1中のt1)。
前記微小突起構造体が透明基材と一体化したものである場合、前記微小突起構造体と前記透明基材との合計厚みは、特に限定されないが、通常20〜5300μmである。前記微小突起構造体と前記透明基材との合計厚みとは、透明基材の微小突起構造体が形成されていない面から、最も高さの高い微小突起の頂部の高さまでの透明基材平面に対する垂線方向の距離を意味する(図2中のt2)。
なお、前記微小突起構造体が、前記透明基材とは別層である微小突起層に形成される場合、層間の密着性、塗工適性、表面平滑性等の基材表面性能を向上させる点から、透明基材の少なくとも一方の面に、1層以上の中間層を介して、微小突起層が積層されている積層体となっていてもよい。
また、前記微小突起構造体は、透明基材の両面に形成されていても良い。
[微小突起構造体の材料]
前記微小突起構造体を透明基材とは別の層として積層する場合の、当該微小突起層は、樹脂を含有してなるものであることが好ましく、更に樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
前記微小突起層の形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。
前記樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を使用することができる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。なお、前記樹脂は、非反応性重合体を含有してもよい。
前記樹脂としては、中でも微小突起構造体の成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。本発明に用いられる電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体又は重合体を適宜混合したものであり、適宜重合開始剤を用いて電離放射線により硬化されるものである。
前記樹脂組成物は、さらに必要に応じて、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
前記微小突起構造体の表面は、被覆層との密着性を向上する点から、水酸基が存在していることが好ましい。表面に水酸基を存在させる方法としては、例えば微小突起構造体を形成する樹脂組成物中に水酸基を有する成分を含有させる方法、或いは、微小突起構造体の表面処理により水酸基を付与する方法等が挙げられる。水酸基を付与するための表面処理としては、例えば、酸素プラズマ処理、UVオゾン処理等が挙げられる。
<被覆層>
本発明の反射防止物品は、前記微小突起構造体上に前記被覆層を有し、当該被覆層側の表面が、前記頂部微小突起に由来する突出部を有することを特徴とする。
ここでの突出部とは、図1及び図2に示されるように、(1)前記微小突起構造体3が有する前記凸状突起群5の前記頂部微小突起51に被覆層4が追従することによって、又は、図示はしないが、(2)前記頂部微小突起が被覆層から露出することによって、被覆層側表面に相対的に高い頂部が形成されてなるものである。すなわち、前記頂部微小突起に由来する突出部には、(1)被覆層の表面が前記微小突起に追従して形成されてなる突出部と(2)頂部微小突起が被覆層から露出して形成されてなる突出部がある。
本発明の反射防止物品は、被覆層側表面に突出部を有することにより、上述したように耐汚染性及び耐擦傷性に優れる。すなわち、被覆層側表面に他の物体や手指等が接触した際に、他の部分に比べて高さの高い突出部に接触しやすく、突出部以外の部分には接触し難いことから、汚れの付着や損傷が突出部に集中し、突出部以外の部分においては低減する結果、被覆層側表面全体としては汚れの付着及び損傷が低減する。
なお、被覆層側の表面が、前記頂部微小突起に由来する突出部を有することは、原子間力顕微鏡(AFM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することができる。
本発明の反射防止物品の態様としては、被覆層が前記微小突起構造体上に全体的に追従して形成され、被覆層側表面の形状が前記微小突起構造体と同様に、反射防止効果をもたらす特定の微細凹凸構造となっている態様も好適に用いられる。この場合には、被覆層の材料に依存せず、反射防止効果を良好にすることができる。
また、本発明の反射防止物品の態様としては、被覆層が微小突起間の谷部において谷部の深さの70%以上を充填している態様も好適に用いられる。この場合は、微小突起間の谷部が埋められ、谷部に塵埃等の異物が溜まることが抑制され、且つ清掃が容易となる。さらに、微小突起同士のスティッキングが抑制される。そのため、このような構造であると、更に耐汚染性及び耐擦傷性が向上する。特に、図2に示すように、頂部微小突起51に由来して形成された突出部6さえあれば、頂部微小突起51以外の微小突起の部分は埋められて、これらの微小突起に追従して凸部が形成されていない態様が好適に用いられる。なお、このような態様においては、反射防止性能の観点から、被覆層を形成する材料の屈折率は、微小突起構造体を形成する材料の屈折率よりも小さいことが好ましい。
また、突出部による効果として、具体的には例えば、本発明の反射防止物品の被覆層側表面と他の物体との間に塵埃が付着すると、当該物体が反射防止物品に対して相対的に摺動した際に、該塵埃が研磨剤として機能して被覆層側表面の磨耗、損傷が促進されることになるが、この場合に、高さの高い突出部においては、塵埃が強く接触して損傷し、一方で、高さの低い突出部以外の部分においては、塵埃との接触は弱まるので、損傷が軽減され、汚れの付着も低減される。よって、耐擦傷性及び耐汚染性が向上し、無傷若しくは軽微な傷で残存した当該部分によって反射防止性能が維持され、更には外観不良の発生を低減することができる。
また、反射防止物品の被覆層側表面と対向するように配置された各種の部材表面が当該被覆層側表面と接触する部分は、そのほとんどが突出部となる。これにより、突出部を有しない被覆層側表面と比して、格段的に滑りを良くすることができ、製造工程等における反射防止物品の取り扱いが容易になる。
前記突出部において、前記被覆層側の表面が有する突出部の頂部と、当該突出部の周辺部、すなわち周辺微小突起の頂部上の被覆層側表面との平均高低差h(図1、2中のh)は、特に限定されないが、耐汚染性及び耐擦傷性付与の観点から、10nm以上であることが好ましい。また。前記平均高低差hは、耐汚染性及び耐擦傷性がさらに向上し、被覆層側表面の滑りをさらに向上させる点から、20nm以上であることが好ましく、被覆層側表面のざらつき感を抑える観点から、50nm以下であることが好ましい。
なお、平均高低差hは、突出部の頂部の高さから周辺微小突起の頂部上の被覆層側表面の高さまでの透明基材平面に対する垂線方向の距離である。
本発明においては、被覆層側表面の前記突出部の存在により、その構造上、耐汚染性及び耐擦傷性を向上することができるため、当該被覆層を形成する材料は特に限定されない。更に前記被覆層を形成する材料を適宜選択することにより、当該材料に応じた機能を本発明の反射防止物品に付与することができる。
前記被覆層としては、例えば、防汚層、耐擦傷層又は低屈折率層として機能する層等が挙げられ、これらの機能を兼ね備えた層が好適に用いられる。なお、前記被覆層は、単層からなるものであっても良いし、複数の層を積層した多層からなるものであっても良い。
本発明の反射防止物品は、耐汚染性をより向上するため、前記被覆層として防汚性を付与する材料を好適に用いることができる。なお、本発明において防汚性を付与するとは、表面エネルギーを低下させて汚れを付着させにくくしたり、表面を親水化することにより、付着した汚れを水で浮かせて拭き取りやすくしたりすることを意味する。
前記防汚性を付与する材料としては、例えばフッ素系化合物及びシリコーン系化合物等の一般的に防汚剤として用いられるものを含有する材料が挙げられる。
前記フッ素系化合物としては、例えばフッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、反応性官能基を有するフッ素系樹脂が好適に用いられる。中でも、微小突起構造体を構成する材料に比較的導入し易い水酸基と反応し得る点から、当該反応性官能基としてはアルコキシシリル基が好適に用いられる。反応性官能基を有するフッ素系樹脂としては、例えば、パ−フルオロポリエーテル基またはフルオロアルキル基を持つアルコキシシラン化合物等が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基又はフルオロアルキル基をもつアルコキシシラン化合物は、低い表面エネルギーを持つため、優れた耐汚染性及び撥水性効果を発揮し、パーフルオロポリエーテル基を含むことにより潤滑効果を発揮する。
本発明に用いられるフッ素系樹脂としては、中でも下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテルシランが、耐汚染性及び耐擦傷性を向上し、且つ、前記微小突起構造体との密着性を向上する点から好ましい。
式(1)
CFCFCF(OCFCFCFOCFCFCHCH−Si(OR)
(式(1)中、Rは炭素数4以下のアルキル基であり、nは1〜50の整数である。)
前記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテルシランは、nが1以上であることにより、耐汚染性及び耐擦傷性を向上することができ、nが50以下であることにより、被覆層の密着性を向上することができる。前記式(1)中のnは、3〜40であることが特に好ましく、10〜40であることが更に好ましい。
前記フッ素系樹脂の市販品としては、例えば、ダイキン社製のオプツールDSX、HD1100、HD2100、ハーベス社製のデュラサーフDS5100、HD4100、フロロテクノロジー社製のフロロサーフFG5010シリーズ等が挙げられる。
前記シリコーン系化合物としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン界面活性剤等が挙げられる。
前記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル;アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル等の反応性又は非反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。
前記シリコーンオイルの市販品としては、例えば、日本ユニカー(株)製のL−45、L−930、Y−7499、FZ−3704、FZ−3501、FZ−3785等、信越化学工業(株)製のKFシリーズ、FL100等、東レ・ダウコーニング(株)製のSH3746FLUID等が挙げられる。
前記シリコーン界面活性剤としては、例えば、前記シリコーンオイルのメチル基の一部を親水基に置換したものが挙げられる。親水性基としては、例えばポリエーテル、ポリグリセリン、ピロリドン、ベタイン、硫酸塩、リン酸塩、4級塩等が挙げられる。
前記シリコーン界面活性剤の市販品としては、例えば、日本ユニカー(株)製のシリコーン界面活性剤SILWET L−77、L−720、L−7001、FZ−2101、FZ−2120、FZ−2166、FZ−2191等が挙げられる。また、SUPERSILWET SS−2801、SS−2805、ABN SILWET FZ−2203等が挙げられる。
また、本発明の反射防止物品は、耐擦傷性をより向上するため、前記被覆層として耐擦傷性を付与する材料を用いることができる。なお、本発明において耐擦傷を付与する材料とは、前記微小突起構造体を形成する材料よりも、高硬度の材料を意味する。耐擦傷性を付与する材料で形成した被覆層及び微小突起構造体の硬度は、例えばJIS5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で測定することができる。
前記耐擦傷性を付与する材料は、少なくともバインダー成分を含むものであり、必要に応じて、更に、重合開始剤、ハードコート性や屈折率調整のための微粒子、さらに、機能性付与を目的として、上述した防汚剤、防眩剤、帯電防止剤等、コーティング適性の制御としてレベリング剤、ブロッキング防止を目的として易滑剤等、その他の成分を含んでいてもよい。
前記耐擦傷層の形成に用いられるバインダー成分としては、例えば所謂ハードコート層用材料として用いられる従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。前記バインダー成分は、硬化性化合物を含むことが好ましく、光硬化性化合物を含むことがより好ましい。バインダー成分としては、1種又は2種以上のバインダー成分を用いることができ、非硬化性化合物を含んでいてもよい。
光硬化性化合物としては、光硬化性官能基を有する化合物が挙げられる。光硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。光硬化性官能基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更により好ましい。
多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、2官能(メタ)アクリレートとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、これら(メタ)アクリレートは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
また、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートで好ましいものは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
前記耐擦傷性を付与する材料が、光硬化性化合物を有する場合、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いてもよい。光重合開始剤は、光照射により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を促進させるものである。
前記被覆層を形成する材料は、反射防止性能の観点から、その屈折率が、前記微小突起構造体を形成する材料の屈折率よりも小さいことが好ましい。
前記微小突起構造体を形成する材料よりも屈折率の小さい材料としては、例えば、低屈折率無機微粒子、低屈折率樹脂、低屈折率無機微粒子を含有する樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率無機微粒子としては、例えば、屈折率が1.55以下の無機微粒子を用いることができ、具体的には、アルミナAl(屈折率1.53)、シリカSiO(屈折率1.46)、フッ化マグネシウムMgF(屈折率1.38)、フッ化カルシウムCaF(屈折率1.36)等が挙げられる。
前記低屈折率樹脂としては、例えば、前記防汚性を付与する材料層として用いることができるフッ素系樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率無機微粒子を含有する樹脂に用いられる樹脂としては、前記低屈折率樹脂、及び前記微小突起構造体の形成に用いられる樹脂等が挙げられる。
前記被覆層を形成する材料の屈折率が、前記微小突起構造体を形成する材料の屈折率よりも小さい場合、被覆層側表面の形状に関わらず、本発明の反射防止物品は、前記微小突起構造体による反射防止性能が維持され得る。そのため、前記被覆層を形成する材料の屈折率が、前記微小突起構造体を形成する材料の屈折率よりも小さい場合、特に限定されないが、耐汚染性を向上する点から、微小突起間の谷部において、当該谷部の深さの70%以上が被覆層により充填されていることが好ましく、当該谷部の深さの85%以上が被覆層により充填されていることが好ましく、当該谷部の深さの100%が被覆層により充填されていることが特に好ましい。これにより、微小突起間の谷部に塵埃等の異物が溜まりにくく、且つ微小突起間の谷部に溜まった異物の除去が容易となり、さらに、スティッキングによる白化を防止することができ、反射防止物品の耐用期間を長くすることができる。
なお、微小突起間の谷部の深さとは、高さが同じ微小突起間の谷部の場合は、当該微小突起の頂部の高さから、当該谷部の最深部の高さまでの透明基材平面に対する垂線方向の距離を意味する。高さが異なる微小突起間の谷部の深さは、当該谷部を構成する微小突起のうち最も高さの低い微小突起の頂部の高さから、谷部の最深部の高さまでの透明基材平面に対する垂線方向の距離(例えば図3(a)に示すL)を意味する。
前記被覆層を形成する材料の屈折率は、反射防止性能の点から、前記微小突起構造体を形成する材料の屈折率よりも0.1以上小さいことが好ましく、0.2以上小さいことがより好ましい。
なお、前記被覆層を形成する材料の屈折率が、前記微小突起構造体を形成する材料の屈折率以上の場合は、前記被覆層側表面の形状は、反射防止性能の観点から、前記微小突起構造体の形状を追従した形状であることが好ましい。すなわち、前記被覆層側表面が、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備え、隣接する前記微小突起間の距離が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であって、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する微細凹凸構造を有することが好ましい。
前記被覆層の形成方法は、特に限定されず、被覆層を形成する材料によって適宜選択される。例えば、前記被覆層を形成する材料を、必要に応じて溶剤又はモノマー及び/又はオリゴマー中に分散させた被覆層用コーティング剤を用いて、液相法(ウェットプロセス)により形成することができる。液相法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。また、前記被覆層は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、CVD法等の気相法(ドライプロセス)によって形成することもできる。
前記被覆層は、特に限定されないが、被覆層による効果を十分に発揮する観点から、連続層であることが好ましい。
また、前記被覆層の厚さは、頂部微小突起由来の突出部が形成されるような膜厚であれば特に限定されない。前記微小突起構造体の各微小突起の頂部は、被覆層から露出していても良いが、当該各微小突起が被覆層に覆われている場合は、例えば各微小突起の頂部から被覆層表面までの透明基材平面に対する垂線の距離(例えば図1中のt3)は、通常、平均1〜50nmであり、10〜30nmであることが好ましい。
<反射防止物品の物性等>
また、本発明の反射防止物品は、反射防止を図る電磁波領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、反射防止物品の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
また、本発明の反射防止物品において、被覆層側表面に、剥離可能な保護フィルムを仮接着した状態で保管、搬送、売買、後加工又は施工を行い、適時、該保護フィルムを剥離除去する形態とすることもできる。これにより、本発明の反射防止物品の微細凹凸面が、保管、搬送等の間に損傷、汚染することによる反射防止性能の低下を防止することができる。
また、本発明の反射防止物品は、微小突起構造体を有しない面に接着剤層を形成し、更に当該接着剤層の表面に離型フィルムを剥離可能に積層してなる接着加工品とすることもできる。かかる形態においては、離型フィルムを剥離除去して接着剤層を露出せしめ、該接着剤層により所望の物品の所望の表面上に本発明の反射防止物品を貼り合わせ、積層することができ、簡便に所望の物品に反射防止性能を付与することができる。接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等の公知の接着形態のものが各種使用できる。
<反射防止物品の製造方法>
本発明の反射防止物品の製造方法は、上述した本発明の反射防止物品を製造することができる方法であれば特に限定されないが、例えば、(i)透明基材上に微小突起構造体を形成する工程、(ii)当該微小突起構造体上に被覆層を形成する工程、を含む製造方法が挙げられる。前記(ii)の工程における被覆層の形成方法は、既に説明した通りであるので、ここでは省略する。
以下、前記(i)の工程における微小突起構造体の形成方法について詳細に説明する。
透明基材上に、微小突起構造体を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、まず透明基材上に、微小突起構造体形成用樹脂組成物を塗布し、微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を、当該微小突起構造体形成用樹脂組成物に賦型した後、該樹脂組成物を硬化させることにより微小突起構造体を形成し、微小突起構造体及び透明基材からなる積層体を前記微小突起構造体形成用原版から剥離する方法等を挙げることができる。なお、微小突起構造体形成用原版に設けられた凹凸形状とは、多数の微小孔が密に形成されたものであり、微小突起構造体が備える微小突起群の形状に対応する形状である。
微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を微小突起構造体形成用樹脂組成物に賦型し、該樹脂組成物を硬化させる方法は、該樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
前記微小突起構造体形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。
前記微小突起構造体形成用原版の凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記微小突起構造体形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
前記微小突起構造体形成用原版に凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微小孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微小孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微小孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
前記微小突起構造体形成用原版に凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微小な孔をそれぞれ目的とする深さ及び形状に作製することができる。
このようにして、前記微小突起構造体形成用原版は、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微小孔が密に作製される。当該微小突起構造体形成用原版を用いて製造される微小突起構造体には、前記微小孔に対応して、頂部に近付くに従って徐々に径が小さくなる微小突起が密接して配置されてなる微小突起群が形成される。
また、前記微小突起構造体形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール状であっても良いが、前記微小突起構造体形成用原版は、生産性向上の観点からは、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
本発明において用いられるロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微小突起構造体の形状に対応する凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
図9に、微小突起構造体形成用の樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用い、微小突起構造体形成用原版としてロール金型を用いた場合に、透明基材上に微小突起構造体形成する方法の一例を示す。
図9は、透明基材2上に形成された紫外線硬化性樹脂組成物からなる微小突起層3a上に、微小突起構造体を形成する工程を示す図である。この製造工程は、樹脂供給工程において、ダイ12により、帯状フィルム形態の透明基材2に、微小突起層3aとなる微小突起構造体の受容層3a’を構成する未硬化で液状の紫外線硬化性樹脂組成物を塗布する。尚、紫外線硬化性樹脂組成物の塗布については、ダイ12による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ14により、反射防止物品の賦型用金型であるロール金型13の周側面に透明基材2を加圧押圧し、これにより透明基材2に未硬化の受容層3a’を密着させると共に、ロール金型13の周側面に作製された微小な凹凸形状の凹部に受容層3a’を構成する紫外線硬化性樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより透明基材2の表面に微小突起構造体を有する微小突起層3aが形成される。続いて剥離ローラ15を介してロール金型13から、硬化した微小突起層3aと一体に透明基材2を剥離する。必要に応じてこの透明基材2に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断する。これにより、ロール材による長尺の透明基材2に、賦型用金型であるロール金型13の周側面に作製された凹凸形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
微小突起構造体の少なくとも1部を上述した凸状突起群とするためには、個々の微小突起について、その高さに所定範囲のばらつきがあることが必須である。
個々の微小突起の高さのばらつきは、ロール金型に形成される微小孔の深さのばらつきによるものであり、このような微小孔の深さのばらつきは、陽極酸化処理におけるばらつきに起因するものと言える。これにより相対的に高さの高い頂部微小突起と、相対的に高さの低い複数の周辺微小突起とを混在させるには、陽極酸化処理におけるばらつきを大きくすることにより実現することができる。すなわち、陽極酸化処理における条件を、所定範囲に限定した場合に、微小孔のばらつきが、一定の規則性に基づいてばらつき、前記微小突起構造体に、一定割合で凸状突起群が形成される。
尚、多峰性の微小突起は、その頂部に対応する形状の凹部を備えた微小孔により作成されるものであり、このような微小孔は、極めて近接して作製された微小孔が、エッチング処理により一体化して形成されると考えられる。これにより、多峰性の微小突起と単峰性の微小突起とを混在させるには、陽極酸化処理におけるばらつきを大きくすることにより実現することができる。
また上述の実施形態では、ロール金型を使用した賦型処理により、フィルム形状の基材上に微小突起構造体の形成方法を生産する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、透明基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦型用金型を使用した枚葉の処理により微小突起構造体を作成する場合等、賦型処理に係る工程、金型は、透明基材の形状に応じて適宜変更することができる。
<反射防止物品の用途>
本発明に係る反射防止物品は、後述する画像表示装置の他、各種物品に用いることができる。また、後述する画像表示装置の実施形態では、反射防止物品を液晶表示パネル、電場発光表示パネル、プラズマ表示パネル等の各種画像表示パネルの表面側に配置して視認性を向上する場合であるが、本発明の反射防止物品は、これに限らず、例えば液晶表示パネルの裏面側に配置してバックライトから液晶表示パネルへの入射光の反射損失を低減させる場合(入射光利用効率を増大させる場合)にも広く適用することができる。尚、ここで画像表示パネルの表面側とは、該画像表示パネルの画像光の出光面であり、画像観察者側の面でもある。又、画像表示パネルの裏面側とは、該画像表示パネルの表面の反対側面であり、バックライト(背面光源)を用いる透過型画像表示裝置の場合は、該バックライトからの照明光の入光面でもある。
また、本発明の反射防止物品は、画像表示パネルの画面上に間隙を介して設置されるタッチパネル、各種の窓材、各種光学フィルタ等による表面側部材の裏面(画像表示パネル側)に配置する用途にも適用することができる。尚、この場合には、画像表示パネルと表面側部材との間の光の干渉によるニュートンリング等の干渉縞の発生の防止、画像表示パネルの出光面と表面側部材の入光面側との間の多重反射によるゴースト像の防止、更には、画面から出光されてこれら表面側部材に入光する画像光について、反射損失の低減等の効果を奏することができる。
また、本発明の反射防止物品は、上記に限らず、その他種々の用途に適用することができる。具体的には、店舗のショウウインドウや商品展示箱、美術館の展示物の展示窓や展示箱等に使用する硝子板表面(外界側)、或いは表面及び裏面(商品又は展示物側面)の両面に配置するようにしてもよい。尚、この場合、該硝子板表面の光反射防止による商品、美術品等の顧客や観客に対する視認性を向上することができる。
また、眼鏡、望遠鏡、写真機、ビデオカメラ、銃砲の照準鏡(狙撃用スコープ)、双眼鏡、潜望鏡等の各種光学機器に用いるレンズ又はプリズムの表面に配置する場合にも広く適用することができる。この場合、レンズ又はプリズム表面の光反射防止による視認性を向上することができる。又、更に書籍の印刷部(文字、写真、図等)表面に配置する場合にも適用して、文字等の表面の光反射を防止し、文字等の視認性向上することができる。又、看板、ポスター、其の他各種店頭、街頭、外壁等に於ける各種表示(道案内、地図、或いは禁煙、入口、非常口、立入禁止等)の表面に配置して、これらの視認性を向上することができる。又、更に白熱電球、発光ダイオード、螢光燈、水銀燈、EL(電場発光)等を用いた照明器具の窓材(場合によっては、拡散板、集光レンズ、光学フィルタ等も兼ねる)の入光面側に配置するようにして、窓材入光面の光反射を防止し、光源光の反射損失を低減し、光利用効率を向上することができる。又、更に時計、其の他各種計測機器の表示窓表面(表示観察者側)に配置して、これら表示窓表面の光反射を防止し、視認性を向上することができる。
また、更に、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物の操縦室(運転室、操舵室)の窓の室内側、室外側、或いはその両側の表面に配置して窓における室内外光を反射防止して、操縦者(運転者、操舵者)の外界視認性を向上することができる。又、更に、防犯等の監視、銃砲の照準、天体観測等に用いる暗視装置のレンズ若しくは窓材表面に配置して、夜間、暗闇での視認性を向上することができる。
また、更に、住宅、店舗、事務所、学校、病院等の建築物の窓、扉、間仕切、壁面等を構成する透明基板(窓硝子等)の表面(室内側、室外側、或いはその両側)の表面に配置して、外界の視認性、或いは採光効率を向上することができる。
又、更に、上述の実施形態においては、反射防止を図る電磁波の波長帯域を、専ら、可視光線帯域(の全域又は一部帯域)としたが、本発明はこれに限らず、反射防止を図る電磁波の波長帯域を赤外線、紫外線等の可視光線以外の波長帯域に設定してもよい。その場合は前記の各条件式中において、電磁波の波長帯域の最短波長Λminを、それぞれ、赤外線、紫外線等の波長帯域に於ける反射防止効果を希望する最短波長に設定すればよい。例えば、最短波長Λminが850nmの赤外線帯域の反射防止を希望する場合は、隣接突起間距離d(若しくはその最大値dmax)を850nm以下、例えば、d(dmax)=800nmと設計すればよい。尚、この場合は、可視光線帯域(380〜780nm)においては反射防止効果は期待し得ず、専ら波長850nm以上の赤外線に対しての反射防止効果を奏する反射防止物品が得られる。
以上例示の各種実施形態において、硝子板等の透明基板の表面、裏面、或いは表裏両面に本発明のフィルム状の反射防止物品を配置する場合、該透明基板の全面にわたって配置、被覆する以外に、一部分の領域にのみ配置することもできる。かかる例としては、例えば、1枚の窓硝子について、その中央部分の正方形領域において、室内側表面にのみフィルム状の反射防止物品を粘着剤で貼着し、その他領域には反射防止物品を貼着しない場合等を挙げることが出来る。透明基板の一部分の領域にのみ反射防止物品を配置する形態の場合は、特別な表示や衝突防止柵等の設置無しでも、該透明基板の存在を視認し易くして、人が該透明基板に衝突、負傷する危険性を低減する効果、及び室内(屋内)の覗き見防止と該透明基板の(該反射防止物品の配置領域における)透視性とが両立できると言う効果を奏し得る。
II.画像表示装置
本発明に係る画像表示装置は、画像表示パネルの出光面上に、前記本発明に係る反射防止物品を配置してなることを特徴とする。
図10に、画像表示パネル41の画像表示面に本発明の反射防止物品1を配置してなる画像表示装置40を示す。本発明の反射防止物品1を備えた画像表示装置40において、反射防止物品1は、画像表示パネル41と接着層を介して貼り合わされても良いし、反射防止物品1との間に空隙を空けて、LCD等のフラットパネルディスプレイによる画像表示パネル41が配置されても良い。反射防止物品1が、画像表示面と対向する面に前記微小突起構造体を有する場合には、反射防止物品1との間に空隙を空けて、LCD等のフラットパネルディスプレイによる画像表示パネル41が配置されることが好ましい。
画像表示装置に用いる本発明の反射防止物品は、特に限定されないが、フィルム状であることが好ましい。
本発明の画像表示装置は、出光面上に配置された反射防止物品が、反射防止性能を有し、且つ耐汚染性及び耐擦傷性に優れるため、外観不良の発生が抑えられ、耐久性に優れる。
なお、本発明の画像表示装置にあっては、単に表示機能のみを有する装置(例えば、LCDモニター、CRTモニター等)でも良いが、装置の機能の一部として表示機能を有する装置も該当する。例えば、前述の用途で述べた如く、PDA乃至は携帯情報端末、カーナビゲーションシステム等である。
[実施例1]
(微小突起構造体形成用金型の作製)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、印加電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微小孔が密に形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微小突起構造体形成用金型を得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微小孔間距離100nm、平均深さ200nmで、一部の微小孔に深さのばらつきがある形状であった。
(微小突起構造体形成用樹脂組成物の調製)
ジペンタエリスリトールへキサアクリレート(DPHA)20重量部、アロニックスM−260(東亜合成社製)70重量部、ヒドロキシエチルアクリレート10重量部、及び光重合開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化性の微小突起構造体形成用樹脂組成物を調製した。
(微小突起構造体の形成)
前記微小突起構造体形成用樹脂組成物を、前記微小突起構造体形成用金型の凹凸形状を有する面が覆われ、微小突起構造体が形成される微小突起層の硬化後の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cmの加重で圧着した。金型全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して微小突起構造体形成用樹脂組成物を硬化させた。その後、金型より剥離し、透明基材と、微小突起構造体との積層体を得た。得られた積層体表面の断面をSEMにより観察したところ、平均隣接微小突起間距離100nm、平均高さ200nmの微小突起群が形成されていた。また、微小突起群の一部に、高さが異なる凸状突起群に相当する構造が観察された。更に、得られた積層体表面をSEMにより上方から観察したところ、画像解析により存在を確認できた219個の微小突起のうち、約20%の微小突起が、凸状突起群を構成していることが確認された。
(被覆層の形成)
得られた積層体の微小突起構造体上に、フッ素含有コーティング剤((株)フロロテクノロジー製、フロロサーフFG5010Z130−0.1)を塗布、乾燥することにより、防汚層、耐擦傷層、及び低屈折率層として機能する被覆層を形成し、実施例1の反射防止物品を得た。得られた反射防止物品の被覆層側表面をSEMにより観察したところ、前記凸状突起群の頂部微小突起に由来した突出部が形成されていた。また、微小突起間の谷部において、当該谷部の深さの70〜100%が被覆層により充填されていた。
[比較例1]
実施例1において、被覆層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の反射防止物品とした。なお、比較例1の反射防止物品は、被覆層を有しないことにより、被覆層側表面に形成される突出部を有し得ない。
(評価)
各実施例及び各比較例で得られた反射防止物品について、下記の評価を行った。評価結果をそれぞれ表1に示す。
<反射率>
黒アクリル板(日東樹脂工業製、製品名CLAREX)に粘着剤(パナック製、製品名パナクリーンPDS1)により形成した厚さ25μmの粘着剤層を介して、実施例1及び比較例1で得られた反射防止物品の透明基材側を貼合し、分光器(島津製作所製、分光光度計UV−3100PC)を用いて、D65光源、2度視野の条件にて、5度反射Y値を測定した。
<ヘイズ>
実施例1及び比較例1で得られた反射防止物品のヘイズを、JIS K 7136に準拠して、村上色彩技術研究所社製、HM−150を用い、室温、大気中で測定した。
<耐汚染性評価>
(1)指紋付着性評価
黒アクリル板(日東樹脂工業製、製品名CLAREX)に粘着剤(パナック製、製品名パナクリーンPDS1)により形成した厚さ25μmの粘着剤層を介して、実施例1及び比較例1で得られた反射防止物品の透明基材側を貼合し、分光測色計(コニカミノルタ製、CM−2600d)を用いて、C光源、2度視野、L,a,b、N=3の条件にて、正反射光を含むSCI方式、及び正反射光を除いたSCE方式で測色した。
次いで、上記反射防止物品の被覆層側表面に、1μLの人工指紋液(JIS K2246:2007の記載に準じて調製した)が付着した人工指を圧力400g/cmで3秒間圧着することにより指紋を付着させ、指紋が付着した反射防止物品について、上記と同様にしてSCI方式及びSCE方式で測色した。
各反射防止物品において、指紋付着前後の色差(SCIΔEab)及び(SCEΔEab)を算出した。
(2)指紋拭取性評価
上記指紋付着性評価で用いた指紋が付着した反射防止物品の指紋を、ウエス(日本製紙クレシア製、製品名キムワイプ)で30往復乾拭きし、上記と同様にしてSCI方式及びSCE方式で測色した。
各反射防止物品において、指紋拭き取り前後の色差(SCIΔEab)及び(SCEΔEab)を算出した。
<耐擦傷性評価>
黒アクリル板(日東樹脂工業製、製品名CLAREX)に粘着剤(パナック製、製品名パナクリーンPDS1)により形成した厚さ25μmの粘着剤層を介して、実施例1及び比較例1で得られた反射防止物品の透明基材側を貼合し、分光測色計(コニカミノルタ製、CM−2600d)を用いて、C光源、2度視野、L,a,b、N=3の条件にて、正反射光を含むSCI方式、及び正反射光を除いたSCE方式で測色した。
次いで、上記反射防止物品の被覆層側表面を、ウエス(日本製紙クレシア製、製品名キムワイプ)を使用し荷重450gで400往復擦り試験を実施し、試験後の反射防止物品について、上記と同様にしてSCI方式及びSCE方式で測色した。
各反射防止物品において、往復擦り試験前後の色差(SCIΔEab)及び(SCEΔEab)を算出した。
(結果のまとめ)
実施例1で得られた反射防止物品は、一部が凸状突起群を構成する微小突起群を備えた微小突起構造体上に被覆層を有し、当該被覆層側表面に突出部を有していた。その結果、指紋付着前後及び指紋拭き取り前後における色差が小さく、耐汚染性に優れていた。さらに、往復擦り試験前後の色差も小さく、耐擦傷性にも優れていた。また、実施例1で得られた反射防止物品は、反射率が低く、反射防止性能に優れ、透明性にも優れていた。
一方、比較例1で得られた反射防止物品は、微小突起構造体上に被覆層を有していなかったため、反射防止性能及び透明性には優れていたものの、指紋付着前後の色差及び指紋拭き取り前後の色差が大きく、耐汚染性に劣っていた。さらに、往復擦り試験前後の色差も大きく、耐擦傷性にも劣っていた。
1、1’ 反射防止物品
2 透明基材
3 微小突起構造体
3a 微小突起層
3a’ 受容層
4 被覆層
5 凸状突起群
51 頂部微小突起
52 周辺微小突起
6 突出部
7 各微小突起間の谷底を連ねた包絡面
12 ダイ
13 ロール金型
14、15 ローラ
g 溝
40 画像表示装置
41 画像表示パネル

Claims (3)

  1. 透明基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微小突起構造体と、被覆層とをこの順で有する反射防止物品であって、
    前記微小突起構造体において、隣接する前記微小突起間の距離が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であり、
    前記微小突起群は、少なくともその一部が、頂部微小突起と、該頂部微小突起の周囲に隣接して形成されており該頂部微小突起よりも高さが低い複数の周辺微小突起と、からなる凸状突起群を構成し、
    前記被覆層側の表面が、前記頂部微小突起に由来する突出部を有することを特徴とする、反射防止物品。
  2. 前記被覆層を形成する材料の屈折率が、前記微小突起構造体を形成する材料の屈折率よりも小さい、請求項1に記載の反射防止物品。
  3. 画像表示パネルの出光面上に、請求項1又は2に記載の反射防止物品を配置してなる、画像表示装置。
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