JP2014162754A - 癌幹細胞特異的に発現する細胞膜タンパク質に対するモノクローナル抗体 - Google Patents

癌幹細胞特異的に発現する細胞膜タンパク質に対するモノクローナル抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ZnT1に対するモノクローナル抗体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、細胞表面上に発現するZnT1と結合する抗体を取得するために、ZnT1の細胞外領域ペプチドとZnT1を発現する細胞を免疫原として用いて、モノクローナル抗体の作成を試みた結果、目的の抗体を取得したことに基づくものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、Zinc transporter 1 (ZnT1)に対する抗体、及び該抗体を含む診断用組成物等の組成物に関する。
近年、腫瘍を形成する細胞集団の中に、治療抵抗性や腫瘍形成能を持つ癌幹細胞が存在することが明らかとなってきた。通常の抗癌薬などを用いた治療後に残存するごく少数の癌幹細胞が腫瘍を形成してしまうため、癌幹細胞特異的な治療法の開発が望まれている。
これまでに、癌幹細胞のマーカーとして、いくつかの細胞表面タンパク質が同定されている。これらのマーカーは、癌の種類によっても異なっていることが報告されている。例えば、急性骨髄性白血病においては、CD34CD38細胞が癌幹細胞として同定されており (非特許文献1) 、乳癌においては、固形癌としては初めてCD24CD44EpCAM細胞が腫瘍形成能及び多分化能を持つことが報告された (非特許文献2) 。また、大腸癌では、CD133分画に腫瘍形成能の高い癌幹細胞が存在し、最近LGR−5細胞及びDclk−l細胞などが癌幹細胞として報告された(非特許文献3及び非特許文献4) 。
表面マーカーの多くは機能未知、または癌幹細胞との関連性が分かっていないが、機能的に癌幹細胞を分離する方法も存在している。癌幹細胞は、ABCG2をはじめとした薬剤を排出するトランスポーターを高発現しており、薬剤耐性を持つため、治療の障害となることが問題となっている (非特許文献5及び非特許文献6) 。ABCG2はBreast cancer resistance protein (BCRP) とも言われ、ABCトランスポーターの一種で、細胞内の薬剤を排出する役割を担っており、細胞に薬剤耐性を付与する (非特許文献7及び非特許文献8) 。この性質を利用した分離方法として、サイドポピュレーション法が開発された (非特許文献9)。蛍光色素のHoechst(ヘキスト)を癌細胞に添加すると細胞核が染色されるが、ABCG2を高発現し薬剤排出能を持つ細胞群は、Hoechstを排出できるため、染色されない分画に検出される。この性質を用いると、FCM(Flow cytometry)解析によって癌幹細胞群を分離することが出来る。この方法は、造血幹細胞の幹細胞を分離するために開発されたが、今日では固形癌の癌幹細胞の分離にも有用であることがわかっている。
以上のように、癌幹細胞のマーカーとして利用できそうなマーカーはいくつか報告はされているが、癌幹細胞を標的とした癌の治療法の確立にまでは至っておらず、依然として、有効な治療に利用可能な癌幹細胞のマーカー及び該マーカーを認識する抗体などの開発が望まれている。
Bonnet及びDick,Nat Med 3,730−737 1997 Al−Hajjら,Proc Natl Acad Sci USA 100,3983−3988 2003 Kobayashiら,Stem Cells 30, 2631−2644 2012 Nakanishiら,Nat Genet 45,98−103 2013 Deanら,Nat Rev Cancer 5,275−284 2005 Al−Ejehら,Carcinogenesis 32,650−658 2011 Hirschmann−Jaxら,Cell Cycle 4,203−205 2005 Doyleら,Oncogene 22,7340−7358 2003 Kondoら,Proc Natl Acad Sci USA 101,781−786 2004
本発明は、ZnT1(Zinc transporter 1)タンパク質に対するモノクローナル抗体を提供するものである。
さらに、本発明は、該抗体を含むZnT1発現細胞の検出用組成物を提供する。
発明者らは、癌幹細胞分画において、ZnT1タンパク質(以下、特に断らない限り、ZnT1と記載する)が高発現していることを初めて見出した。
ZnT1は細胞内の亜鉛を細胞外に排出する唯一の多重膜貫通型トランスポーターである。癌幹細胞とZnT1の関連性につての知見は少なく、この関連性を解析するために、ZnT1特異的な抗体が不可欠であった。しかしながら、現在市販されている抗ZnT1抗体は全てポリクローナル抗体であり、ZnT1が発現する細胞の細胞表面を認識する抗体は存在しておらず、ZnT1発現細胞のみを選別してその性質を解析することは不可能であった。そこで、発明者らは、抗ZnT1モノクローナル抗体の作製を試みたところ、細胞表面に存在するZnT1を特異的に認識する抗体の調製に、初めて成功した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(8)である。
(1)細胞上に発現するZnT1を特異的に認識する抗体又はその断片。
(2)前記ZnT1の細胞外領域に特異的に結合することを特徴とする上記(1)に記載の抗体又はその断片。
(3)受託番号 NITE P−1532のハイブリドーマ細胞クローンから産生されることを特徴とする抗体又はその断片。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の抗体とZnT1との結合を競合阻害する抗体又はその断片。
(5)ヒト化抗体又はキメラ抗体であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の抗体又はその断片。
(6)前記断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、一本鎖抗体、scFv、ダイアボディー、dsFvのいずれかである上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の抗体断片。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の抗体又はその断片を含む、ZnT1発現細胞を検出するためのキット。
(8)被験者由来の生物学的サンプルと上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の抗体又は抗体断片とを接触させ、該生物学的サンプルに含まれる細胞上のZnT1と該抗体又は抗体断片が結合したことを検出することを含む、該生物学的サンプル中のZnT1発現細胞の存否を判定する方法。
これまで公知の抗ZnT1抗体はポリクローナル抗体であり、細胞上に発現するZnT1を認識せず、また、非特異的な結合傾向も高かった。
このような従来の抗ZnT1抗体に比べ、本発明の抗ZnT1モノクローナル抗体は、細胞上に発現するZnT1と特異的に結合することが可能である。そのため、本発明の抗ZnT1モノクロール抗体を使用すれば、ZnT1発現細胞の検出や選別を行うことができる。
ZnT1強制発現ベクターの構築。(A)ZnT1遺伝子をベクターにクローニングするために使用したプライマーのリスト。下線部:制限酵素切断サイトを示す。(B)作製した発現ベクターの模式図。CMVp、B-actinpは、各々、プロモーターである。 ウエスタンブロッティング解析によるZnT1-FLAGの発現確認。ZnT1-FLAGの発現を確認するための抗体として、抗FLAG抗体を使用した。図中の「ZnT1-FLAG」は、anti-FLAG agaroseを用いて精製したZnT1-FLAGに対する結果を、また、「mock」、「ZF」は、各々、mock細胞ライセート、ZnT1-FLAG強制発現細胞ライセートに対する結果を示す。矢印1:N型糖鎖修飾型ZnT1の二量体ZnT1、矢印2:N型糖鎖非修飾型ZnT1の二量体ZnT1、矢印3:N型糖鎖修飾型ZnT1の単量体、矢印4:N型糖鎖非修飾型ZnT1の単量体 FCM(フローサイトメトリー)解析によるZnT1の発現確認。(A)HEK293、(B)CHO-K1、(C)B16-F10トランスフェクタント。抗FLAG抗体を用いた染色の際には、膜透過処理(0.1% Saponin処理)を行っている。 抗FLAG抗体を用いた蛍光染色によるZnT1の発現確認。青:DAPI、緑:ZnT1-FLAG (Alexa 488)。染色は、細胞をパラホルムアルデヒド(PFA;Paraformaldehyde)で固定し、Saponinを用いて膜透過処理を行った。 高濃度亜鉛存在下でのZnT1強発現細胞の生存性評価。生存性の評価は、Cell Counting Kit-8(同人化学)を用いた。 ZnT1ペプチドを用いたELISA法による免疫後マウス抗血清の抗体価の評価。Pre:免疫前マウス血清、5p5c:ZnT1ペプチド5回+細胞5回免疫マウス血清、BSA:固相化BSA、Peptide:固相化ZnT1ペプチド。追加免疫に用いた細胞は、HEK293-ZnT1-URES-Venusである。 免疫後マウス抗血清の精製ZnT1-FLAG及びCHO-K1-ZnT1-FLAGに対するウエスタンブロッティング。精製したZnT1を2,4,8μg泳動し、抗血清を使用してウエスタンブロッティングを行った。5p5cはZnT1ペプチドで5回及び細胞で5回免疫したマウスの血清、anti-FLAGは、抗FLAG抗体を用いた結果である。Purified ZnT1:精製ZnT1-FLAG、m:CHO-K1-mock由来ライセート、ZF:CHO-K1-ZnT1-FLAG由来ライセート、実線矢印:単量体ZnT1、点線矢印:二量体ZnT1。 2G1抗体のZnT1強制発現CHO-K1及びB16-F10細胞に対する結合性をFCM解析により評価した。細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA;Paraformaldehyde)固定下での結合性を評価した。 2G1抗体のZnT1強制発現HEK293細胞に対する結合性をFCM解析により評価した。(A)HEK293-Venus 細胞 (Venus) 及びHEK293-ZnT1-IRES-Venus細胞(ZnT1-IRES-Venus)に対する2G1抗体の結合性の評価 (プロット) 。(B)Venus陽性細胞に対する2G1の結合性評価 (ヒストグラム)。2G1抗体のコントロールとして、Mouse IgG1を使用した。 免疫沈降法を用いた2G1抗体の結合特異性の解析。検出は抗FLAG抗体を用いた。矢印1:二量体ZnT1、矢印2:単量体ZnT1。
本発明は、細胞表面上に発現しているZnT1と特異的に結合する抗体又はその断片、該抗体又は該抗体の断片を含むZnT1発現細胞の検出用組成物を提供する。
ZnT1は細胞膜表面に発現する亜鉛トランスポーターである。亜鉛輸送トランスポーターはZnT family (SLC30A)とZrt, Irt like protein (ZIP) family (SLC39A)に分類され、ZnT familyのタンパク質は細胞質内の亜鉛を細胞外または細胞内小器官に輸送する役割を持ち、ZIP familyは逆に細胞外または細胞内小器官の亜鉛を細胞質側に輸送する。
ZnT1は細胞内の亜鉛を細胞外に排出する唯一のトランスポーターであり、そのN末端及びC末端が細胞質側に存在する6回膜貫通タンパク質である(Palmiter, 1995 EMBO J 14, 639-649) 。生体内では、特に小腸の絨毛付近で高発現であり、腺窩や粘膜固有層では低発現であることが示されている(McMahon, 1998 J Nutr 128, 667-670.;Yu, 2007 J Histochem Cytochem 55, 223-234.;Wang, 2010 IUBMB Life 62, 176-182)。
本発明の抗体の抗原となるZnT1としては、ZnT1をコードするcDNAなどから調製された組換えタンパク質などを使用することができる。あるいは、ZnT1を細胞表面に発現する適当な細胞などを抗原として使用してもよい。ZnT1をコードする核酸配列は、GenBankなどの公開されたデータベースなどから検索できる。取得した遺伝子配列情報などに基づいて作製したプローブ又はPCR増幅用のプライマーペアなどを使用して、適当なDNAライブラリーからZnT1をコードするDNA(cDNAなど)を調製することができる。あるいは人工DNA合成法で、全cDNAを調製することができる。一例として、配列番号1にヒトZnT1に対応するアミノ酸配列、配列番号2にcDNA配列を示す。
ヒトZnT1の細胞外領域は、配列番号1に示すアミノ酸配列における第271番目〜第318番目の部分、第101番目〜第112番目部分に相当すると考えられている(なお、細胞外領域の境界については、多少の前後(1〜5アミノ酸残基、好ましくは、1〜3アミノ酸残基、より好ましくは1〜2アミノ酸残基)が生じ得る。
本発明の細胞表面上に発現しているZnT1と特異的に結合する抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などが含まれ、該抗体の断片には、Fab又はF(ab’)などの抗体断片、又は、単一鎖抗体などが含まれる。
本発明の抗体が細胞表面上に発現しているZnT1に特異的に結合することは次のように示すことができる。ZnT1をコードする核酸配列を発現ベクターに挿入し、ベクターを適当な宿主細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入する。ZnT1発現宿主細胞又はZnT1非発現宿主細胞と、本発明の抗体とを接触させ、一定時間反応させる。過剰な抗体を洗浄後、細胞をELISA法、RIA法、又はフローサイトメトリー法で細胞に結合している抗体量を測定する。非発現宿主細胞と比較してZnT1発現宿主細胞に本発明の抗体がより多く結合することで細胞表面上に発現しているZnT1への結合を示すことができる。
本発明の抗体及びその断片の例として、例えば、受託番号 NITE P−1532(2G1)のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体及びその断片が挙げることができる。
さらに本発明の抗体及びその断片としては、実施例において単離されたモノクローナル抗体とエピトープが重複する(または同一の)抗体が特に好ましい。このような抗体を、本発明においては実質的に同じ部位に結合する抗体と呼ぶ。2つの抗体が抗原蛋白質と実質的に同じ部位に結合するかどうかは、例えば競合実験により決定することができる。具体的には、実施例の抗ZnT1抗体又はその断片とZnT1との結合が、第二の抗ZnT1抗体又はその断片によって競合阻害を受けるとき、第一の抗体と第二の抗体は実質的に同じ抗原部位に結合していると判断される。このように、実施例で単離した抗体のZnT1結合部位と実質的に同じ部位に結合する抗体であって、細胞表面上に発現するZnT1と特異的に結合する抗体は本発明に含まれる。
本発明の抗ZnT1抗体又はその断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又はそれらの断片であってもよい。特に、モノクローナル抗体が好ましい。「モノクローナル」というのは、実質的に均一な抗体の集団より得られた抗体の特性を示唆するものであって、抗体が特定の方法により製造されることを限定するものではない。例えば、本発明において用いられるモノクローナル抗体を、例えばハイブリドーマ法(Kohler and Milstein,Nature256:495(1975))、又は、組換え方法(米国特許第4,816,567号)により製造してもよい。本発明において使用するモノクローナル抗体は、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい(Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991))。本発明におけるモノクローナル抗体には、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラス由来であり、鎖の残りの部分が別の種、又は別の抗体クラス若しくはサブクラス由来である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、抗体変異体、並びにその断片が含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。
本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合、例えば、哺乳類宿主動物に対して、免疫原及びアジュバントの混合物をインジェクトすることにより調製することができる。通常は、免疫原としての抗原及び/又はアジュバントを宿主動物の皮下又は腹腔内へ複数回インジェクトする。アジュバントの例には、完全フロイト及びモノホスホリル脂質A合成−トレハロースジコリノミコレート(MPL-TDM)が含まれる。免疫原処理の後、血中に産生されたZnT1に対する抗体を、ZnT1結合特異性などを指標にして、所望の抗体を取得することができる。
また、本発明の抗体がモノクローナル抗体の場合、例えば、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。
この方法には以下に示す4つの工程が含まれる:(i)宿主動物又は、宿主動物由来にヒトZnT1を免疫する、(ii)モノクローナル抗体分泌性(又は潜在的に分泌性)のリンパ球を回収する、(iii)リンパ球を不死化細胞に融合させる、(iv)所望のモノクローナル抗体を分泌する細胞を選択する。マウス、ラット、モルモット、ハムスター、又は他の適当な宿主動物が、免疫動物として選択され免疫原がインジェクトされる。
免疫後、宿主動物から得られたリンパ球はハイブリドーマ細胞を樹立するために、ポリエチレングリコールなどの融合剤を用いて不死化細胞株と融合する。融合細胞としては、例えば、ラットもしくはマウスのミエローマ細胞株が使用される。細胞融合を行った後、融合しなかったリンパ球及び不死化細胞株の成長又は生存を阻害する一又は複数の基質を含む適切な培地中で細胞を生育させる。通常の技術では、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く親細胞を使用する。この場合、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンがHGPRT欠損細胞の成長を阻害し、ハイブリドーマの成長を許容する培地(HAT培地)に添加される。得られたハイブリドーマから、所望の抗体を産生するハイブリドーマを選択し、該ハイブリドーマが生育する培地から、常法に従い、目的のモノクローナル抗体を取得することができる。
このようにして調製したハイブリドーマをインビトロ培養し、あるいは、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの腹水中でインビボ培養し、目的の抗体を培養上清、あるいは、腹水から調製することができる。
本発明の核酸は、本発明の抗体における重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードするものである。本発明の核酸である重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする核酸をベクターに挿入し、これを細胞内で発現させてもよい。
ベクターの種類としては特に限定はなく、その後に導入される宿主細胞の種類等によって適宜選択すればよい。これらを抗体として発現させるために適当な宿主細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入し、組換型の抗体を調製することもできる。
本発明の抗ZnT1抗体の実施形態には、遺伝子組換え抗体が含まれる。遺伝子組換え抗体としては、特に限定はされないが、例えば、キメラ抗体、ヒト型化抗体及びヒト抗体等が挙げられる。ここで、キメラ抗体とは、異なる動物種由来の可変領域と定常領域を連結した抗体、特に、マウス由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に連結した抗体であり(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81,6851-6855,(1984)等を参照)、キメラを作製する場合、そのように連結した抗体が得られるよう、当業者に周知の遺伝子組換え技術によって容易に構築できる。
本発明のキメラ抗体には、ヒト(型)化抗体が含まれる。ヒト型化抗体は、フレームワーク領域はヒト由来で、CDRはマウスなど他の動物由来の領域からなる抗体のことである。例えば、ヒト型化抗体は、マウス抗体の可変領域からそのCDRをヒト可変領域に移植し、重鎖及び軽鎖可変領域を再構成した後、これらヒト型化された再構成ヒト可変領域をヒト定常領域に連結することで作製することができる。このようなヒト型化抗体の作製法は、当分野において周知である(例えば、Nature,321,522-525(1986); J.Mol.Biol.,196,901-917(1987); Queen C et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86: 10029-10033(1989) 等を参照)。ヒト型化抗体重鎖又はヒト型化抗体軽鎖を宿主細胞内において発現させるために、ヒト型化抗体重鎖又はヒト型化抗体軽鎖をベクターに挿入してもよい。ベクターの種類としては特に限定はなく、その後に導入される宿主細胞の種類等によって適宜選択することができる。これらを抗体として発現させるために適当な宿主細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入し、宿主細胞内で抗体を再構築させて、組換型の抗体を調製することもできる。
ヒト抗体(完全ヒト抗体)とは、可変領域の抗原結合部位である超過変領域(Hyper Variable region)、可変領域のその他の部分及び定常領域の構造が、ヒトの抗体と同じ構造を有するものである。ただし、超可変部位は他の動物由来であってもよい。ヒト抗体は、公知の技術により当業者であれば容易に作製することができる。ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka,K.et al.,Nature Genetics,(1997)16,133-143; Kuroiwa,Y.et.al.,Nuc.Acids Res.,(1998)26,3447-3448; Yoshida,H.et.al.,Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects,(1999)10,69-73(Kitagawa,Y.,Matuda,T.and Iijima,S.eds.),Kluwer Academic Publishers; Tomizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(2000)97,722-727等を参照)や、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得する方法(Wormstone,I.M.et.al,Investigative Ophthalmology & Visual Science.,(2002)43(7),2301-8; Carmen,S.et.al.,Briefings in Functional Genomics and Proteomics,(2002)1(2),189-203;Siriwardena,D.et.al.,Opthalmology,(2002)109(3),427-431等を参照)により取得することができる。
本発明の抗体の断片としては、抗ZnT1抗体の一部分の領域を意味し、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv(variablefragment of antibody)、一本鎖抗体(重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域等)、scFv、diabody(scFv二量体)、dsFv(ジスルフィド安定化可変領域)、並びに、CDRを少なくとも一部に含むペプチド等が挙げられる。
Fabは、抗体分子をタンパク質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、重鎖のN末端側約半分と軽鎖全体とがジスルフィド結合で結合した、抗原(ZnT1)結合活性を有する抗体断片である。Fabの作製は、抗体分子をパパインで処理して断片を取得する他、例えば、FabをコードするDNAを挿入した適当な発現ベクターを構築し、これを適当な宿主細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入後、細胞内でFabを発現させることで実施することができる。
また、F(ab’)は、抗体分子をタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、抗原(ZnT1)結合活性を有する抗体断片である。F(ab’)は、抗体分子ペプシンで処理して断片を取得する他、Fabをチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させて作製することも可能で、さらに、Fabと同様に遺伝子工学的手法によっても作製することができる。Fab’は、上記F(ab’)のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した、抗原(ZnT1)結合活性を有する抗体断片である。Fab’も、Fab等と同様に遺伝子工学的な手法により作製することができる。
scFvは、1本の重鎖可変領域(VH)と1本の軽鎖可変領域(VL)とを適当なペプチドリンカーを用いて連結した、VH−リンカー−VLないしはVL−リンカー−VHポリペプチドで、抗原(ZnT1)結合活性を有する抗体断片である。scFvは、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードするcDNAを取得し、遺伝子工学的手法により作製することができる。
diabody(ダイアボディー)は、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一抗原結合活性であっても、又は、一方を異なる抗原結合活性であってもよい。diabodyは、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするcDNAを取得し、重鎖可変領域と軽鎖可変領域をペプチドリンカーで結合したscFvを発現するcDNAを構築して、遺伝子工学的手法により作製することができる。
dsFvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを、該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基は、Reiterらにより示された方法などにより、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。dsFvは、抗体の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築して遺伝子工学的手法により作製することができる。
CDRを含むペプチドは、重鎖又は軽鎖のCDR(CDR1〜3)の少なくとも1領域以上を含むように構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接又は適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。CDRを含むペプチドは、抗体の重鎖又は軽鎖のCDRをコードするDNAを構築し、発現ベクターに挿入する。ベクターの種類としては特に限定はなく、その後に導入される宿主細胞の種類等によって適宜選択すればよい。これらを抗体として発現させるために適当な宿主細胞(例えば、CHO細胞などの哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入し製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)及びtBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することもできる。
本発明には、本発明の抗体を含む、ZnT1発現細胞の検出用組成物も含まれる。前述の通り、ZnT1発現細胞が癌幹細胞の性質を有している可能性が高いことから、悪性腫瘍組織等から得た、被験者由来の生物学的サンプル(組織サンプル、細胞(群)サンプル、体液サンプルなど)中に、本発明の抗体によって認識される細胞が含まれるか否かを検討することによって、該サンプルに癌幹細胞が含まれる可能性を調べることができる。すなわち、被験者由来の生物学的サンプルと本発明の抗体又はその抗体断片とを接触させ、該生物学的サンプルに含まれる細胞上のZnT1を該抗体又はその抗体断片との結合を検出することで、該生物学サンプル中にZnT1発現細胞が存在するか否かを判定することができる。
本発明の抗体と細胞表面上発現しているZnT1との結合は、当該技術分野において通常用いられる方法によって検出することができる。その方法としては、例えば、ELISA法、フローサイトメトリー解析法などが挙げられる。
本発明のZnT1発現細胞の検出用組成物には、本発明の抗体(例えば、受託番号 NITE P−1532のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体)又はその断片が含まれており、さらに、該抗体を安定化するための緩衝剤や、BSAなどの安定化剤が含まれていてもよい。
上記ZnT1発現細胞の検出用組成物は、キットとして提供されてもよい。ZnT1発現細胞の検出用組成物がキットとして供給される場合、本発明の抗体を含む組成物の他、上記検出方法を実施するために必要は試薬(緩衝液、抗体等に結合させる標識化合物など)、あるいは、ELISA用のプレートなどが含まれていてもよい。
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
ネイティブなZnT1と結合する抗体を作成するために、ZnT1の細胞外領域に相当するペプチド、及び、ZnT1を細胞表面上に高発現する細胞を免疫原として用い、目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製し、所望の抗体を取得した。
以下に、その詳細を記載する。
1.ZnT1強制発現細胞の構築
1−1.細胞
ZnT1を発現させて免疫原とする細胞に、ヒト胎児腎由来細胞株HEK293を使用した。また、抗体のスクリーニングには、チャイニーズハムスター卵巣細胞株CHO-K1とマウスメラノーマ細胞株B16-F10にZnT1を強制発現させたものを使用した。
ヒト胎児腎由来細胞株HEK293はDMEM-HG-10% FCS (200 mM L-glutamine 10 mL、NaHCO3 7 mL、30% Glucose 5.8 mL、10 % FCS in DMEM) で培養した。チャイニーズハムスター卵巣細胞株CHO-K1及びマウスメラノーマ細胞株B16-F10はDMEM/Ham’s F12-10% FCS (10% FCS in DMEM/Ham’s F12)で培養した。これらの細胞は37℃、5% CO2存在下で培養し、80% confluentの時に0.02% EDTA-PBSで細胞を剥がした後に1/10-1/20で継代した。
1−2.ZnT1発現ベクターの作製
すでにクローニングされているヒトZNT1(配列番号2)のcDNAは5’末端及び3’末端に制限酵素サイトを付加したプライマーを用いて増幅した (図1;pcDNA3.1(+)-IRES-Venusベクターに挿入する場合に、配列番号3及び配列番号4のプライマーセットを使用し、pCAGGS-neoベクターに挿入する場合には、配列番号5及び配列番号6、又は、配列番号7及び配列番号8のプライマーセットを使用した)。PCR産物をQIAGEN Gel Extraction Kit (QIAGEN) を用いてアガロースゲルから抽出した後、これとpcDNA3.1(+)-IRES-Venusベクター及びpCAGGS-neoベクターを制限酵素によって処理した後、ライゲーションした (図1) 。ベクターを用いて大腸菌コンピテントセルDH5α株を形質転換し、50 μg/mLの濃度でアンピシリンを含むLB-Agar培地 (1% NaCl、1% Trypton、0.5% Bacto Yeast Extract、1.5% Agar) で選択した。大腸菌をLB培地 (1% NaCl、1% Trypton、0.5% Bacto Yeast Extract) で培養し、QIAGEN Plasmid Midi Kit (QIAGEN) を用いてプラスミドを回収した。また、pCAGGS-neoベクターに挿入されたZNT1遺伝子のcDNA配列の3’末端側に、上記の方法と同様にFLAGタグの配列を挿入した。ABI 3100 Genetic Analyzer (Applied Biosystems) によってDNA配列を確認した。
1−3.ZnT1発現細胞の作製
1−2.で作製したpcDNA3.1(+)-ZnT1-IRES-Venusベクターは、HEK293細胞に、pCAGGS-neo-ZnT1-FLAGベクターは、CHO-K1細胞及びB16-F10細胞にLipofectamin 2000 (Invitrogen)を用いてトランスフェクションし、HEK293-ZnT1-IRES-Venus細胞、CHO-K1-ZnT1-FLAG細胞及びB16-F10-ZnT1-FLAG細胞を樹立した。また、mock細胞として、pcDNA3.1(+)-IRES-Venusベクター及びpCAGGS-neoベクターをトランスフェクションし、HEK293-Venus細胞、CHO-K1-mock細胞及びB16-F10-mock細胞を樹立した。細胞は400μg/mLのG418を加えた選択培地で培養を行い、発現確認後、限界希釈法によってクローニングした。
1−4.発現確認
1−4−1.ライセートと精製ZnT1-FLAGの調製
細胞を回収し、2×107 cells/mLになるようにRIPA buffer (0.1% SDS、1% Triton-X-100、1% sodiumdeoxycholate、2 mM EDTA in PBS) に懸濁し、Proteinase inhibitor cocktail set III (Promega)を1/100 (v/v) になるように加えた。4℃、1時間インキュベート後、4℃、10,000 rpmで10分間遠心し、上清を回収し、細胞ライセートを調製した。ZnT1-FLAGを精製するために、CHO-K1-ZnT1-FLAGのライセートをSepharose 4Bと4℃で15分間インキュベートした。3000 rpm、4℃、2分間遠心した後、上清をanti-FLAG M2 agarose (SIGMA)と4℃で一昼夜インキュベートした。遠心後、上清を捨て、100 μg/mL FLAG peptide-TBSでZnT1-FLAGタンパク質を溶出した。溶出後、限外濾過によって濃縮した。
1−4−2.ウエスタンブロッティング
各細胞から調製したライセートに対し、N型糖鎖を除去する酵素であるPNGaseの存在下又は非存在下にて、37℃で2時間反応させた。反応産物を8% SDS-PAGEで電気泳動を行った後、抗FLAG抗体でウエスタンブロッティングを行った。
その後、常法に従い、Anti-FLAG M2 antibody (SIGMA, 以下抗FLAG抗体) を1/1000 (v/v)として3% BSA-PBSTに希釈し、室温で90分間反応させ、二次抗体としてHRP-Goat-anti-mouse IgGAM (ZYMED)を室温で45分間反応させ、ZnT1-FLAGの発現を確認した。
ウエスタンブロッティング解析の結果、ZnT1強制発現細胞のライセートにおいて80 kDa付近及び180 kDa付近にバンドが確認された(図2)。また、PNGaseの処理後では約68kDa付近と約160kDa付近にバンドが観察された (図2)。
1−4−3.FCM(フローサイトメトリー)解析
細胞を回収し、4% paraformaldehydeを加えて室温で10分間固定した。10% NGS-0.1% Saponin-FACS buffer (0.2% BSA、0.2% sodium azide in PBS) で膜透過した後、0.1% Saponin-FACS bufferに希釈した抗FLAG抗体で4℃、20分間染色した。二次抗体としてFITC-Goat-anti-mouse IgG (H+L) (Invitrogen)で4℃、20分間染色した。その後、Epics-XL (Beckman Coulter) を用いてFCM解析を行った。
FCM解析ではVenus及びFLAGタグを用いてZnT1の発現を確認した。HEK293-ZnT1-IRES-Venus細胞の発現はレポータータンパク質としてVenusを用いて行い、レシピエント細胞であるHEK293細胞よりも蛍光が強く検出された(図3A)。CHO-K1-ZnT1-FLAG細胞及びB16-F10-ZnT1-FLAG細胞ではFLAGタグが細胞内部位に存在しているため、膜透過処理を行ってから検出した結果、mock細胞に比べて蛍光が強く検出された (図3B及びC)。
1−4−4.蛍光染色
ZnT1-FLAGの局在を確認するため、細胞を蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察を行った。5×103個の細胞を33% FCS-PBS 150 μLに懸濁し、サイトスピンを使用して、4℃、800 rpmでスライドガラスに貼付けた。4% paraformaldehydeを加えて室温で10分間固定し、0.1% saponin-3% BSA-PBSで膜透過してから一次抗体として抗FLAG抗体を反応させた。二次抗体にはAlexa 488-anti-mouse IgGを1/100希釈で用いた。
観察の結果、細胞表面、細胞質内両方で染色が認められたものの、細胞膜表面がより強く染色されていたことから、細胞膜上に多く発現していることが示唆された(図4)。
1−4−5.亜鉛耐性の評価
機能的にZnT1が発現しているかどうかを確かめるために、ZnT1強制発現細胞の亜鉛耐性を調べた。
細胞を2×105 cells/mLで10% FCSを含む培地中に懸濁し、100μLを96well plateに撒いた。50 mM HCl-DMSO中にZnCl2を溶解し、1μLを培養液中に加え、37℃で18時間培養した。Cell Counting Kit-8 (同人化学) を10μL加え、1時間ごとに450 nm/630 nmの吸光度を測定した。
その結果、ここで作製した全てのトランスフェクタントはmock細胞と比較して高濃度の亜鉛存在下でも生存できることが示された (図5)。特にHEK293-ZnT1-IRES-Venus細胞で顕著に亜鉛耐性が見られた。これらの結果から、強制発現細胞はZnT1を機能的に発現していることが示された。
2.抗ZnT1モノクローナル抗体の樹立
2−1.マウス
5週齢の雌BALB/cマウスを日本クレアより購入した。これらのマウスはSPFにて飼育後、実験に使用した。全ての実験は東京大学ライフサイエンス委員会によって承認を得、ライフサイエンス委員会のガイドラインに従って行った。
2−2.マウスへの免疫
ヒトZnT1の細胞外部位のアミノ酸配列(FSWKGCSEGDFCVNPCFPDPCKAFVEIINSTHASVYEAGPCWVLYLDP(48mer);配列番号9;ZnT1ペプチド)で表される合成ペプチド-KLH conjugate(ZnT1ペプチド-KLH)をSIGMAから購入した。1匹あたりComplete Freund’s adjuvant 100μLと生理食塩水100μLに溶解させた20μgのZnT1ペプチド-KLHを 皮下に注射し、2週間後に眼底採血によって血液を取得した。さらにその1週間後にIncomplete Freund’s adjuvant 100μLと生理食塩水100μLに溶解させた20μgのZnT1ペプチド-KLHをマウスに追加免疫した。以降、同様にして2週間ごとに計5回免疫し、各免疫後一週間後に血液を採取した。血液は37℃で1時間インキュベートした後に4℃、15000 rpmで遠心、上清を回収し、血清とした。
計5回のZnT1ペプチド-KLHの免疫終了後、同じマウスに1匹あたりSIGMA adjuvant system 100μLと生理食塩水100μLに懸濁した1×107個のHEK293-ZnT1-IRES-Venus細胞を腹腔内に免疫した。追加免疫は2週間ごとに計5回行い、各免疫後1週間後に血液を採取した。
2−3.血清の抗体価の評価
KLHを含まないZnT1ペプチドをPBSに懸濁し、5μg/mLとした。これを96 well plate (Nunc)に100μLずつ加え、4℃、一昼夜でZnT1ペプチドをコートした。PBSTで洗浄後、イムノブロック(DSファーマバイオメディカル)でブロッキングし、各濃度になるようにイムノブロックに溶解した血清を2時間室温で反応させた。二次抗体にはHRP-Goat-anti-mIgGAM(ZYMED)を用いた。
得られた血清はZnT1ペプチドに対する反応性は確認されたものの、細胞表面上に発現するZnT1及び、変性させたZnT1に対して反応性が見られなかった。
そこで、ZnT1ペプチドを免疫したマウスに細胞表面上にZnT1を発現するHEK293-ZnT1-IRES-Venusを追加免疫した。この追加免疫後に得られた血清は、CHO-K1-ZnT1-FLAGを用いたFCM解析において細胞表面上のZnT1に対して特異的な結合が観察されなかったが、ELISA法によって固相化したZnT1ペプチドに結合性を示し(図6)、ウエスタンブロッティング解析においてCHO-K1-ZnT1-FLAG細胞ライセート及び精製ZnT1に対して特異的な反応性が観察された(図7)。
2−4.ハイブリドーマの調製及びスクリーニング
以上の結果に基づいて、5p5cマウスからハイブリドーマを作製し、モノクローナル抗体の調製を試みた。
マウスミエローマ細胞PAIはGIT培地(和光純薬)で37℃、5%CO2存在下で培養し、継代中は細胞濃度が1×106 cells/mLを超えないように保ち、細胞融合するまでに継代は三回までとした。
対数増殖期にあるPAI細胞を1,000 rpm、5分間遠心した後、細胞ペレットをDMEM-HGで2回洗浄し、20 mLのDMEM-HGに再懸濁して細胞数をカウントした。細胞融合3日前に1×107 cellsのHEK293-ZnT1-IRES-Venus細胞で免疫し、ブーストをかけた(5p5c-boostマウス)。
5p5c-boostマウス由来の脾臓細胞とPAI細胞の細胞数が5 : 1になるように混合し、常法により、ハイブリドーマを調製した。
HAT培地で選別したところ、287ウェルが陽性であった。これらのウェルの培養上清を用いて、一次スクリーニングとして精製ZnT1-FLAGを用いたウエスタンブロッティング解析及びZnT1ペプチドを用いたELISAを行った。その結果、ウエスタンブロッティングでは70ウェルが、ELISAでは31ウェルが陽性であった。その後、二次スクリーニングにおいて、12ウェルを選択し、三次スクリーニングに供した。三次スクリーニングにおいて、FCM解析により、CHO-K1-ZnT1-FLAG細胞の表面に発現するZnT1-FLAG特異的な反応を確かめた。その結果、ハイブリドーマ2G1の上清(2G1上清)が細胞表面上のZnT1特異的に反応を示すことを確認した。なお、2G1上清は、ZnT1ペプチドに反応性を示さず、また、ウエスタンブロッティング法において、ZnT1と反応しなかった。
得られたハイブリドーマ2G1を限界希釈法によってクローン化し、抗ZnT1モノクローナル抗体を得た。
2−5.ハイブリドーマ2G1から産生されるモノクローナル抗体(2G1抗体)
ハイブリドーマ2G1の培養上清をProtein G sepharose (GE Healthcare)と混合し、4℃で一昼夜混和した。3000 rpm、2分間遠心し、上清を捨てた後、ゲルをPBSに懸濁し、ムロマックカラム(室町化学工業)に注いだ。PBSで洗浄後、0.1 M Glycine-HCl (pH2.7)を用いて溶出した。各フラクションのタンパク質濃度をNano Drop 1000で測定し、抗体が含まれる分画を回収、5 kDaフィルターを用いて6000 rpmで限外濾過した。
生成された2G1抗体のアイソタイプはマウスIgG1で、軽鎖はκ鎖であった。
次に、ZnT1を細胞表面に発現する種類の細胞(CHO-K1、B16-F10及びHEK293)を2G1抗体が認識するかどうかFCM解析により確認を行った。その結果、2G1抗体は、いずれの細胞に対しても結合性を有することが分かった(図8(CHO-K1及びB16-F10)及び図9(HEK293))。
次に、2G1は細胞表面上のZnT1を立体構造特異的に認識することが考えられたため、免疫沈降法によって2G1のZnT1の構造特異的な反応性を評価した。
CHO-K1-ZnT1-FLAG及びモック細胞のライセートとSepharose 4Bを混合し、4℃で2時間混和した。抗FLAG抗体及びハイブリドーマ2G1由来の培養上清をProtein G sepharoseと4時間混和した。ライセート-Sepharose 4Bを3000 rpm、2分間遠心した上清と抗体-Protein G sepharoseを3000 rpm、2分間遠心した沈殿を混合し、4℃で一昼夜反応させた。混合物を15000 rpm、2分遠心した後、沈殿をPBSでよく洗浄した。これに4×SDS bufferを加え、96℃、5分間変性させた後、SDS-PAGEに供した。
2G1抗体によってZnT1を免疫沈降させることができたのに対し(図10A)、コントロールのmouse IgG1を用いた場合には、沈殿にZnT1は認められなかった(図10B)。なお、抗FLAG抗体でも、ZnT1-FLAGを免疫沈降できることも確認した(図10C)。
以上のように、2G1抗体は変性後のZnT1を認識せず、細胞膜上のZnT1の細胞外部位を認識すること、及び、変性前のZnT1を免疫沈降できたこと、さらに細胞外部位の配列のZnT1ペプチドに対しては反応性を示さなかったことから立体構造特異的にZnT1を認識していると考えられる。
ハイブリドーマ2G1のクローン化細胞は、識別の表示を2G1として、2013年2月7日(寄託日)付で、千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(〒292−0818)、NITE 特許微生物寄託センター(NPMD)に、受託番号 NITE P−1532として寄託された。
本発明は、細胞表面上に発現するZnT1を認識する抗体を提供する。ZnT1が癌幹細胞のマーカーとして有用である可能性があることから、当該抗体は、癌幹細胞の選別等への利用可能性があり、癌幹細胞に関する治療的研究において、重要な役割を担うことが期待される。

Claims (8)

  1. 細胞上に発現するZnT1を特異的に認識する抗体又はその断片。
  2. 前記ZnT1の細胞外領域に特異的に結合することを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその断片。
  3. 受託番号 NITE P−1532のハイブリドーマ細胞クローンから産生されることを特徴とする抗体又はその断片。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の抗体とZnT1との結合を競合阻害する抗体又はその断片。
  5. ヒト化抗体又はキメラ抗体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抗体又はその断片。
  6. 前記断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、一本鎖抗体、scFv、ダイアボディー、dsFvのいずれかである請求項1乃至5のいずれかに記載の抗体断片。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体又はその断片を含む、ZnT1発現細胞を検出するためのキット。
  8. 被験者由来の生物学的サンプルと請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体又は抗体断片とを接触させ、該生物学的サンプルに含まれる細胞上のZnT1と該抗体又は抗体断片が結合したことを検出することを含む、該生物学的サンプル中のZnT1発現細胞の存否を判定する方法。
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