JP2014155392A - 電子部品及びdc−dcコンバータ - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、磁気飽和によるインダクタンス値の低下を抑制することを可能とする、並列接続されたDC−DCコンバータ用の電子部品及びこれを用いたDC−DCコンバータを提供することである。
【解決手段】電子部品10Aは、複数のDC−DCコンバータ回路2,3を並列接続し、各出力を足し合わせて一つの出力とするDC−DCコンバータ1に含まれる電子部品である。電子部品10Aは、本体20と、複数のDC−DCコンバータ回路2,3のそれぞれの一部を構成し、かつ、本体20に設けられている螺旋状のインダクタL1,L2とを備えている。インダクタL1,L2のそれぞれは、中心軸が略一致するように積み重ねられている。
【選択図】図3
【解決手段】電子部品10Aは、複数のDC−DCコンバータ回路2,3を並列接続し、各出力を足し合わせて一つの出力とするDC−DCコンバータ1に含まれる電子部品である。電子部品10Aは、本体20と、複数のDC−DCコンバータ回路2,3のそれぞれの一部を構成し、かつ、本体20に設けられている螺旋状のインダクタL1,L2とを備えている。インダクタL1,L2のそれぞれは、中心軸が略一致するように積み重ねられている。
【選択図】図3
Description
本発明は、電子部品及びDC−DCコンバータ、特に、並列接続されたDC−DCコンバータに用いられるインダクタに関する。
昨今の電子機器の高機能化及び高速化により、電源回路から供給される電流が増加している。これに伴って、マルチフェーズDC−DCコンバータと呼ばれるDC−DCコンバータが、広く流通している。
マルチフェーズDC−DCコンバータでは、特許文献1に記載されているように、複数のDC−DCコンバータが並列に接続され、各DC−DCコンバータの出力が足し合わされて出力されている。これにより、マルチフェーズDC−DCコンバータでは、各DC−DCコンバータへの負荷を低減し、電源回路から供給される大電流に対応している。また、各DC−DCコンバータの出力位相をずらすことにより、出力ノイズ(リプル)を低減させている。
ところで、マルチフェーズDC−DCコンバータは、複数のDC−DCコンバータにより構成されているため、その回路内に複数のインダクタを有している。これらのインダクタに想定以上の電流が流れると、磁気飽和が生じ、インダクタンス値が低下する。結果として、マルチフェーズDC−DCコンバータによる電力の変換効率が低下してしまう。しかし、今後、更なる供給電流の増加が予想される。これらの事情を勘案すると、マルチフェーズDC−DCコンバータに用いられるインダクタに対して、現状より大きな電流が流れても、インダクタンス値が低下しないことが求められている。
そこで、本発明の目的は、磁気飽和によるインダクタンス値の低下を抑制することを可能とする、並列接続されたDC−DCコンバータ用の電子部品及びこれを用いたDC−DCコンバータを提供することである。
本発明の第1の形態に係る電子部品は、複数のDC−DCコンバータ回路を並列接続し、各出力を足し合わせて一つの出力とするDC−DCコンバータに含まれる電子部品であって、本体と、前記複数のDC−DCコンバータ回路のそれぞれの一部を構成し、かつ、前記本体に設けられている複数の螺旋状のインダクタと、を備えており、前記複数の螺旋状のインダクタのそれぞれは、該複数のインダクタの中心軸が略一致するように積み重ねられていること、を特徴とする。
本発明の第2の形態に係るDC−DCコンバータは、複数のDC−DCコンバータ回路を並列接続し、各出力を足し合わせて一つの出力とするDC−DCコンバータであって、本体、及び前記複数のDC−DCコンバータ回路のそれぞれの一部を構成し、かつ、前記本体に設けられている複数の螺旋状のインダクタを有する電子部品を備えており、前記複数の螺旋状のインダクタのそれぞれは、該複数のインダクタの中心軸が略一致するように積み重ねられていること、を特徴とする。
前記電子部品及びDC−DCコンバータによれば、複数の螺旋状のインダクタの中心軸が略一致するように積み重ねられている。これにより、該インダクタで発生した磁束が相互に干渉することにより、磁束が集中する領域が減少する。結果として、磁気飽和によるインダクタンス値の低下を抑制することができる。
本発明の一形態である電子部品によれば、磁気飽和によるインダクタンス値の低下を抑制することが可能である。
以下で、本発明に係るマルチフェーズDC−DCコンバータ、電子部品の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。また、図2〜図4及び図6〜図9において、インダクタL1,L2,L1B,L2Bの中心軸が延在する方向をz軸方向とし、z軸方向から平面視したときに、電子部品10A,10B,10Cの各辺に沿った方向をx軸方向及びy軸方向と定義する。なお、x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。
(マルチフェーズDC−DCコンバータの構成)
図1に示すように、マルチフェーズDC−DCコンバータ1は、DC−DCコンバータ回路2,3を並列に接続し、DC−DCコンバータ回路2,3の出力を足し合わせて一つの出力としている。また、DC−DCコンバータ回路2,3による各出力位相は、図示しないドライバICがトランジスタTr1,Tr2のオンオフタイミングを制御することにより、可変である。
図1に示すように、マルチフェーズDC−DCコンバータ1は、DC−DCコンバータ回路2,3を並列に接続し、DC−DCコンバータ回路2,3の出力を足し合わせて一つの出力としている。また、DC−DCコンバータ回路2,3による各出力位相は、図示しないドライバICがトランジスタTr1,Tr2のオンオフタイミングを制御することにより、可変である。
(DC−DCコンバータ回路の構成)
DC−DCコンバータ回路2は、降圧型のDCチョッパ回路である。具体的には、DC−DCコンバータ回路2は、トランジスタTr1、ダイオードD1、インダクタL1及びコンデンサC1を備えている。トランジスタTr1とインダクタL1とは直列に接続されている。ダイオードD1は、グランドとトランジスタTr1及びインダクタL1との間に接続されている。コンデンサC1は、グランドとインダクタL1及び負荷Rとの間に接続されている。
DC−DCコンバータ回路2は、降圧型のDCチョッパ回路である。具体的には、DC−DCコンバータ回路2は、トランジスタTr1、ダイオードD1、インダクタL1及びコンデンサC1を備えている。トランジスタTr1とインダクタL1とは直列に接続されている。ダイオードD1は、グランドとトランジスタTr1及びインダクタL1との間に接続されている。コンデンサC1は、グランドとインダクタL1及び負荷Rとの間に接続されている。
DC−DCコンバータ回路2は、直流電源Vからの電流I1に対して、トランジスタTr1でオンオフを行うことにより、直流電源Vからの直流電圧を降圧し、負荷Rに出力する。インダクタL1及びコンデンサC1は、DC−DCコンバータ回路2からの出力電流を平滑にするためのものである。具体的には、トランジスタTr1がオンのときに、インダクタL1及びコンデンサC1に、エネルギー及び電荷が蓄積される。そして、トランジスタTr1がオフのときに、インダクタL1に蓄積されたエネルギーによって逆起電力が発生する。さらに、コンデンサC1から電荷が放出される。これにより、直流電源Vからの電流I1が、トランジスタTr1によって遮断されたときでも、負荷Rに安定して電力が供給される。また、ダイオードD1は、トランジスタTr1を保護ずるための環流ダイオードである。以上のように構成されたDC−DCコンバータ回路2によって、直流電源Vから負荷Rに対し、降圧された電流I1が伝えられる。DC−DCコンバータ回路3も、DC−DCコンバータ回路2と同様の構成を備えている。
(電子部品の概略構成)
第1実施例である電子部品10Aは、図2に示すように、直方体状を成している。また、電子部品10Aは、本体20、外部電極31〜34及びインダクタL1,L2(図2には図示しない)を備えている。
第1実施例である電子部品10Aは、図2に示すように、直方体状を成している。また、電子部品10Aは、本体20、外部電極31〜34及びインダクタL1,L2(図2には図示しない)を備えている。
(本体の構成)
本体20は、図3に示すように、絶縁体層22a〜22hが、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、この順に並ぶように積層されることにより構成されている。また、各絶縁体層22a〜22hは、z軸方向から平面視したときに、長方形状を成している。従って、絶縁体層22a〜22hが積層されることにより構成された本体20は、図2に示すように、直方体状を成している。さらに、絶縁体層22a〜22hは、フェライトなどの磁性材料により構成されている。以下で、各絶縁体層22a〜22hのz軸方向の正方向側の面を上面と称す。また、図2に示すように、本体20における、z軸方向の正方向側の面を面S1、y軸方向の負方向側の面を面S2、z軸方向の負方向側の面を面S3、y軸方向の正方向側の面を面S4と称す。
本体20は、図3に示すように、絶縁体層22a〜22hが、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、この順に並ぶように積層されることにより構成されている。また、各絶縁体層22a〜22hは、z軸方向から平面視したときに、長方形状を成している。従って、絶縁体層22a〜22hが積層されることにより構成された本体20は、図2に示すように、直方体状を成している。さらに、絶縁体層22a〜22hは、フェライトなどの磁性材料により構成されている。以下で、各絶縁体層22a〜22hのz軸方向の正方向側の面を上面と称す。また、図2に示すように、本体20における、z軸方向の正方向側の面を面S1、y軸方向の負方向側の面を面S2、z軸方向の負方向側の面を面S3、y軸方向の正方向側の面を面S4と称す。
(外部電極の構成)
外部電極31〜34は、図2に示すように、本体20の表面に設けられたコの字型の電極である。また、外部電極31〜34の材料は、Au,Ag,Cu,Pd,Ni等の導電性材料である。以下で外部電極31〜34について、具体的に説明する。
外部電極31〜34は、図2に示すように、本体20の表面に設けられたコの字型の電極である。また、外部電極31〜34の材料は、Au,Ag,Cu,Pd,Ni等の導電性材料である。以下で外部電極31〜34について、具体的に説明する。
外部電極31は、面S1〜S3のそれぞれにおけるx軸方向の中央よりも負方向側の領域に跨って設けられている。また、外部電極31は、インダクタL1の入力電極として機能する。つまり、直流電源Vからの電流I1は、トランジスタTr1を経由して、外部電極31からインダクタL1に流入する。
外部電極32は、面S1〜S3のそれぞれにおけるx軸方向の中央よりも正方向側の領域に跨って設けられている。また、外部電極32は、インダクタL2の入力電極として機能する。つまり、直流電源Vからの電流I2は、トランジスタTr2を経由して、外部電極32からインダクタL2に流入する。
外部電極33は、面S1,S3,S4のそれぞれにおけるx軸方向の中央よりも負方向側の領域に跨って設けられている。また、外部電極33は、インダクタL1の出力電極として機能する。つまり、外部電極31からインダクタL1に流入した電流I1は、外部電極33から出力され、電流I2と合流して、負荷Rに流入する。
外部電極34は、面S1,S3,S4のそれぞれにおけるx軸方向の中央よりも正方向側の領域に跨って設けられている。また、外部電極34は、インダクタL2の出力電極として機能する。つまり、外部電極32からインダクタL2に流入した電流I2は、外部電極34から出力され、電流I1と合流して、負荷Rに流入する。
(インダクタの構成)
インダクタL1は、DC−DCコンバータ回路2の一部を構成し、電子部品10Aに内蔵されている。また、インダクタL1は、導体層40〜42及びビア導体43,44により構成されている。なお、インダクタL1の材料は、Au,Ag,Cu,Pd,Ni等の導電性材料である。
インダクタL1は、DC−DCコンバータ回路2の一部を構成し、電子部品10Aに内蔵されている。また、インダクタL1は、導体層40〜42及びビア導体43,44により構成されている。なお、インダクタL1の材料は、Au,Ag,Cu,Pd,Ni等の導電性材料である。
導体層40は、図3に示すように、絶縁体層22bの上面に設けられている。また、導体層40は、絶縁体層22bの外縁に沿って設けられた線状の導体層である。これにより、導体層40は、z軸方向から平面視したときに、略ロの字型の形状を成している。ただし、導体層40は、絶縁体層22bにおける、x軸方向の負方向側の外縁とy軸方向の負方向側の外縁とが成す角の近傍で分断されている。そして、導体層40の一端は、絶縁体層22bにおけるy軸方向の負方向側の外縁から、本体20の外部に露出し、外部電極31と接続されている。また、導体層40の他端は、絶縁体層22bをz軸方向に貫くビア導体43の一端と接続されている。
導体層41は、図3に示すように、絶縁体層22cの上面に設けられている。また、導体層41は、絶縁体層22cの外縁に沿って設けられた線状の導体層である。これにより、導体層41は、z軸方向から平面視したときに、略ロの字型の形状を成している。ただし、導体層41は、絶縁体層22cにおける、x軸方向の負方向側の外縁とy軸方向の負方向側の外縁とが成す角の近傍で分断されている。そして、導体層41の一端は、ビア導体43の他端と接続されている。また、導体層41の他端は、絶縁体層22cをz軸方向に貫くビア導体44の一端と接続されている。
導体層42は、図3に示すように、絶縁体層22dの上面に設けられている。また、導体層42は、絶縁体層22dにおけるx軸方向の負方向側の外縁に沿って設けられた線状の導体層である。導体層42のy軸方向の負方向側の一端は、ビア導体44の他端と接続されている。また、導体層42のy軸方向の正方向側の他端は、本体20の外部に露出し、外部電極33と接続されている。
以上のように構成されたインダクタL1では、導体層40〜42及びビア導体43,44が全体として、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、時計回りに旋回する螺旋状を成している。これにより、外部電極31からインダクタL1に流入した電流I1は、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、本体20内を時計回りに旋回して、外部電極33から出力される。
インダクタL2は、DC−DCコンバータ回路3の一部を構成し、電子部品10Aに内蔵されている。また、インダクタL2は、導体層50〜52及びビア導体53,54により構成されている。なお、インダクタL2の材料は、Au,Ag,Cu,Pd,Ni等の導電性材料である。
導体層50は、図3に示すように、絶縁体層22fの上面に設けられている。また、導体層50は、絶縁体層22fにおけるx軸方向の正方向側の外縁に沿って設けられた線状の導体層である。導体層50のy軸方向の負方向側の一端は、絶縁体層22fをz軸方向に貫くビア導体53の一端と接続されている。また、導体層50のy軸方向の正方向側の他端は、本体20の外部に露出し、外部電極34と接続されている。
導体層51は、図3に示すように、絶縁体層22gの上面に設けられている。また、導体層51は、絶縁体層22gの外縁に沿って設けられた線状の導体層である。これにより、導体層51は、z軸方向から平面視したときに、略ロの字型の形状を成している。ただし、導体層51は、絶縁体層22gにおける、x軸方向の正方向側の外縁とy軸方向の負方向側の外縁とが成す角の近傍で分断されている。そして、導体層51の一端は、ビア導体53の他端と接続されている。また、導体層51の他端は、絶縁体層22gをz軸方向に貫くビア導体54の一端と接続されている。
導体層52は、図3に示すように、絶縁体層22hの上面に設けられている。また、導体層52は、絶縁体層22hの外縁に沿って設けられた線状の導体層である。これにより、導体層52は、z軸方向から平面視したときに、略ロの字型の形状を成している。ただし、導体層52は、絶縁体層22hにおける、x軸方向の正方向側の外縁とy軸方向の負方向側の外縁とが成す角の近傍で分断されている。そして、導体層52の一端は、ビア導体54の他端と接続されている。また、導体層52の他端は、絶縁体層22hのy軸方向の負方向側の外縁から、本体20の外部に露出し、外部電極32と接続されている。
以上のように構成されたインダクタL2では、導体層50〜52及びビア導体53,54が全体として、z軸方向の負方向側から正方向側に向かって、反時計回りに旋回する螺旋状を成している。これにより、外部電極32からインダクタL2に流入した電流I2は、z軸方向の負方向側から正方向側に向かって、本体20内を反時計回りに旋回して、外部電極34から出力される。
ところで、インダクタL1及びインダクタL2は、電子部品10における本体20内で、お互いの中心軸が略一致するように積み重ねられている。また、インダクタL1を通過する電流I1は、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、時計回りに旋回するのに対し、インダクタL2を通過する電流I2は、z軸方向の負方向側から正方向側に向かって、反時計回りに旋回する。つまり、インダクタL1を通過する電流I1の向きとインダクタL2を通過する電流I2の向きとは、反対方向である。従って、図4に示すように、電流I1によってインダクタL1で発生する磁束B1の方向と電流I2によってインダクタL2に発生する磁束B2の方向とは、逆である。
(製造方法)
以上のように構成された電子部品10Aの製造方法について以下に説明する。なお、以下では、一つの電子部品10Aについて説明するが、実際には、未焼成の複数の本体20がつながったマザー積層体を作製し、マザー積層体をカットした後に外部電極31〜34を形成して、複数の電子部品10Aを得る。
以上のように構成された電子部品10Aの製造方法について以下に説明する。なお、以下では、一つの電子部品10Aについて説明するが、実際には、未焼成の複数の本体20がつながったマザー積層体を作製し、マザー積層体をカットした後に外部電極31〜34を形成して、複数の電子部品10Aを得る。
まず、絶縁体層22a〜22hとなるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化ニッケル(NiO)を所定の比率で秤量した後、それぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を仮焼する。さらに、仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可塑剤、湿潤剤、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層22a〜22hとなるべきセラミックグリーンシートを作製する。
次に、絶縁体層22b,22c,22f,22gとなるべきセラミックグリーンシートにおいて、ビア導体43,44,53,54が形成されるべき位置にレーザービームを照射し、ビアホールを形成する。更に、Au,Ag,Pd,Cu,Ni等を主成分とする導電性ペーストをビアホールに対して充填することにより、ビア導体43,44,53,54を形成する。なお、ビアホールに導電性ペーストを充填する工程は、後述する導体層40〜42,50〜52を形成する工程と同時に行われてもよい。
次に、絶縁体層22b〜22d,22f〜22hとなるべきセラミックグリーンシートの表面上に、Au,Ag,Pd,Cu,Ni等を主成分とする導電性ペーストを、スクリーン印刷やフォトリソグラフィ法により塗布し、導体層40〜42,50〜52を形成する。
次に、絶縁体層22a〜22hとなるべきセラミックグリーンシートをこの順に並ぶように積層・圧着して、未焼成のマザー積層体を得る。その後、未焼成のマザー積層体を静水圧プレスなどにより加圧して本圧着を行う。
次に、マザー積層体をカット刃により所定寸法の本体20にカットする。その後、未焼成の本体20に、脱バインダー処理及び焼成を施す。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中において500℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、800℃〜900℃で2.5時間の条件で行う。
次に、外部電極31〜34を形成する。まず、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを本体20の表面に塗布する。次に、塗布した電極ペーストを約800℃の温度で1時間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極31〜34の下地電極が形成される。
最後に、下地電極の表面にNi/Snめっきを施す。これにより、外部電極31〜34が形成される。以上の工程により、電子部品10Aが完成する。
(効果)
以上のように構成された電子部品10Aによれば、磁気飽和によるインダクタンス値の低下を抑制することが可能である。具体的には、電子部品10Aに内蔵されたインダクタL1,L2は、お互いの中心軸が略一致するように積み重ねられ、さらに、インダクタL1を通過する電流I1の向きとインダクタL2を通過する電流I2の向きとは、反対方向である。従って、図4に示すように、電流I1によってインダクタL1で発生する磁束B1の方向と電流I2によってインダクタL2に発生する磁束B2の方向とは、逆である。これにより、磁束B1,B2は、インダクタL1ないしインダクタL2の内径で、互いに打ち消し合う。結果として、インダクタL1,L2における磁気飽和が生じにくくなり、インダクタL1,L2のインダクタンス値の低下が抑制される。また、これに伴い、マルチフェーズDC−DCコンバータ1における電力変換効率の低下も抑制される。
以上のように構成された電子部品10Aによれば、磁気飽和によるインダクタンス値の低下を抑制することが可能である。具体的には、電子部品10Aに内蔵されたインダクタL1,L2は、お互いの中心軸が略一致するように積み重ねられ、さらに、インダクタL1を通過する電流I1の向きとインダクタL2を通過する電流I2の向きとは、反対方向である。従って、図4に示すように、電流I1によってインダクタL1で発生する磁束B1の方向と電流I2によってインダクタL2に発生する磁束B2の方向とは、逆である。これにより、磁束B1,B2は、インダクタL1ないしインダクタL2の内径で、互いに打ち消し合う。結果として、インダクタL1,L2における磁気飽和が生じにくくなり、インダクタL1,L2のインダクタンス値の低下が抑制される。また、これに伴い、マルチフェーズDC−DCコンバータ1における電力変換効率の低下も抑制される。
ここで、本願発明者は、電子部品10Aが奏する効果を明確なものとするために、実験を行った。より具体的には、電子部品10Aを第1のサンプルとして作製した。さらに、電子部品10Aにおける、インダクタL1,L2を別々の本体に内蔵し、これらを基板上に配置して並列接続した第2のサンプルを作製した。各サンプルの大きさは、第1のサンプルが2.5mm×2.0mm×1.2mmである。第2のサンプルにおける、インダクタL1を内蔵した本体、及びインダクタL2を内蔵した本体の大きさはそれぞれ、2.5mm×2.0mm×0.6mmである。
実験では、第1及び第2のサンプルに直流電流を流し、その電流値を変化させて、各サンプルにおけるインダクタL1又はインダクタL2のインダクタンス値を測定した。図5では、縦軸は、インダクタンス値(μH)を示しており、横軸は、電流値(mA)を示している。なお、インダクタL1及びインダクタL2のインダクタンスは略同じである。
実験において、直流電流を流したところ、図5に示すように、第1のサンプルのインダクタンス値Ls1の減少率が、第2のサンプルのインダクタンス値Ls2の減少率よりも低いことが分かる。これは、インダクタL1に発生する磁束B1とインダクタL2に発生する磁束B2とが、互いに打ち消し合うことにより、磁気飽和が抑制され、結果として、インダクタンス値の低下が抑制されたことを示している。
ところで、電子部品10Aは、マルチフェーズDC−DCコンバータの小型化に寄与することができる。具体的には、従来、マルチフェーズDC−DCコンバータに含まれるインダクタは、DC−DCコンバータ回路毎に、基板上に別々に配置されていた。しかし、電子部品10Aは、DC−DCコンバータ回路2の一部を構成するインダクタL1と、DC−DCコンバータ回路3の一部を構成するインダクタL2とを内蔵している。つまり、電子部品10Aでは、従来、基板上に別々に配置されていた複数のインダクタを一つの電子部品で賄うことができる。これにより、電子部品10Aでは、マルチフェーズDC−DCコンバータの小型化に寄与することができる。
さらに、電子部品10Aでは、インダクタL1とインダクタL2に挟まれた絶縁体層22d及び22eの材料を磁性材料とし、インダクタL1,L2の内側の領域も磁性材料で満たされている。これにより、磁束B1,B2は、インダクタL1,L2内を、スムーズに進行することができ、互に打ち消し合う磁束の量が増加する。結果として、インダクタL1,L2における磁気飽和が生じにくくなり、インダクタL1,L2のインダクタンス値の低下が抑制される。
また、電子部品10Aでは、入力電極として用いられる外部電極31,32が、側面S1〜S3に設けられている。つまり、電子部品10Aでは、2つの入力電極が、同一の側面上に設けられている。また、出力電極として用いられる外部電極33,34が、側面S1,S3,S4に設けられている。つまり、電子部品10Aでは、2つの出力電極が、同一の側面上に設けられている。従って、電子部品10Aは、回路基板に搭載する際の取り扱いが容易である。
(電子部品10Bの構成)
以下に、第2実施例である電子部品10Bの構成について図面を参照しながら説明する。なお、第2実施例の外観図は、図2を援用する。
以下に、第2実施例である電子部品10Bの構成について図面を参照しながら説明する。なお、第2実施例の外観図は、図2を援用する。
電子部品10Aと電子部品10Bとの主な相違点は、インダクタL1,L2の構成である。その他、電子部品10Aの内容と重複する点については説明を省略する。なお、電子部品10BにおけるインダクタをインダクタL1B,L2Bとする。
インダクタL1Bは、インダクタL1と導体層42の部分が異なる。インダクタL1BにおけるインダクタL1と異なる導体層を、導体層42Bとする。導体層42Bは、図6に示すように、絶縁体層22dの上面に設けられている。また、導体層42Bは、絶縁体層22dにおける、x軸方向の負方向側の外縁及びy軸方向の正方向側の外縁に沿って設けられている。これにより、導体層42Bは、z軸方向から平面視したときに、L字型の形状を成している。また、導体層42Bの一端は、ビア導体44と接続されている。そして、導体層42Bの他端は、絶縁体層22dにおけるy軸方向の正方向側の外縁から本体20の外部に露出し、外部電極34と接続されている。
以上のように構成されたインダクタL1Bでは、導体層40,41,42B及びビア導体43,44は全体として、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、時計回りに旋回する螺旋状を成している。これにより、外部電極31からインダクタL1Bに流入した電流I1は、z軸方向の正方向側からz軸方向の負方向側に向かって、本体20内を時計回りに旋回して、外部電極34から出力される。
インダクタL2Bは、導体層50B,51B,52B及びビア導体53,54により構成されている。導体層50Bは、図6に示すように、絶縁体層22fの上面に設けられている。また、導体層50Bは、絶縁体層22fにおける、x軸方向の負方向側の外縁及びy軸方向の負方向側の外縁に沿って設けられた線状の導体層である。これにより、導体層50Bは、z軸方向から平面視したときに、L字型の形状を成している。また、導体層50Bの一端は、絶縁体層22fをz軸方向に貫くビア導体53の一端と接続されている。また、導体層50Bの他端は、本体20の外部に露出し、外部電極32と接続されている。
導体層51Bは、図6に示すように、絶縁体層22gの上面に設けられている。また、導体層51Bは、絶縁体層22gの外縁に沿って設けられた線状の導体層である。これにより、導体層51Bは、z軸方向から平面視したときに、略ロの字型の形状を成している。ただし、導体層51Bは、絶縁体層22gにおける、x軸方向の負方向側の外縁とy軸方向の正方向側の外縁とが成す角の近傍で分断されている。そして、導体層51Bの一端は、ビア導体53の他端と接続されている。また、導体層51の他端は、絶縁体層22gをz軸方向に貫くビア導体54の一端と接続されている。
導体層52Bは、図6に示すように、絶縁体層22hの上面に設けられている。また、導体層52Bは、絶縁体層22hの外縁に沿って設けられた線状の導体層である。これにより、導体層52Bは、z軸方向から平面視したときに、略ロの字型の形状を成している。ただし、導体層52Bは、絶縁体層22hにおける、x軸方向の負方向側の外縁とy軸方向の正方向側の外縁とが成す角の近傍で分断されている。そして、導体層52Bの一端は、ビア導体54の他端と接続されている。また、導体層52Bの他端は、絶縁体層22hのy軸方向の正方向側の外縁から、本体20の外部に露出し、外部電極33と接続されている。
以上のように構成されたインダクタL2Bでは、導体層50B〜52B及びビア導体53,54が、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、時計回りに旋回する螺旋状を成している。これにより、外部電極32からインダクタL2Bに流入した電流I2は、z軸方向の正方向側から負方向側に向かって、本体20内を時計回りに旋回して、外部電極33から出力される。
ところで、インダクタL1B,L2Bそれぞれが、独立して回路基板上に配置されている場合、図7で示すように、インダクタL1B,L2Bにおいて発生した磁束B1,B2の一部は、各インダクタL1B,L2Bのz軸方向の端面付近において、z軸方向と直交する方向に進行する。これにより、各コイルL1B,L2Bの軸方向の端面付近には、磁束が集中する領域A1〜A8が現れる。
一方、電子部品10Bでは、インダクタL1B,L2Bが、本体20内で、お互いの中心軸が略一致するように積み重ねられている。また、インダクタL1Bを通過する電流I1の向きとインダクタL2Bを通過する電流I2の向きとは、同じ方向である。これにより、電流I1によってインダクタL1Bで発生する磁束B1と電流I2によってインダクタL2Bに発生する磁束B2とが一体となり、磁束B3を形成する。これにより、磁束B1のうち、インダクタL1のz軸方向の負方向側の端面付近からz軸方向と直交する方向に進行していた磁束が減少する。また、磁束B2のうち、インダクタL2のz軸方向の正方向側の端面付近からz軸方向と直交する方向に進行していた磁束が減少する。すなわち、インダクタL1Bで発生する磁束B1とインダクタL2Bで発生する磁束B2は、図8において、図7のA3〜A6に対応する領域で減少している。結果として、図8に示すように、電子部品10Bでは、インダクタL1BとインダクタL2Bに挟まれた領域において、磁束の集中が抑制される。以上より、電子部品10Bでは、磁束が集中する領域が減少し、これに伴い、磁気飽和が緩和され、インダクタンス値の低下が抑制される。
(電子部品10Cの構成)
以下に、第3実施例である電子部品10Cの構成について図面を参照しながら説明する。
以下に、第3実施例である電子部品10Cの構成について図面を参照しながら説明する。
電子部品10Cと電子部品10Aとの主な相違点は、図9に示すように、外部電極33,34が、一体化されている点である。この一体化された外部電極を外部電極35とする。その他、電子部品10Aの内容と重複する点については説明を省略する。
電子部品10Cでは、外部電極35によって、インダクタL1からの出力とインダクタL2からの出力とが、足し合わされている。従って、基板上で、インダクタL1からの出力とインダクタL2からの出力とを接続する回路が不要となる。これにより、電子部品10Cは、マルチフェーズDC−DCコンバータ1の小型に寄与する。さらに、各出力を接続する工数を削減することができる。
(他の実施例)
本発明に係る電子部品は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、マルチフェーズDC−DCコンバータに含まれるDC−DCコンバータの数は3つ以上であってもよい。また、前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルに含まれるインダクタL1,L2のインダクタンス値は、略同じ値であったが、本発明に係る電子部品に含まれる複数のインダクタの其々のインダクタンス値は異なってもよい。
本発明に係る電子部品は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、マルチフェーズDC−DCコンバータに含まれるDC−DCコンバータの数は3つ以上であってもよい。また、前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルに含まれるインダクタL1,L2のインダクタンス値は、略同じ値であったが、本発明に係る電子部品に含まれる複数のインダクタの其々のインダクタンス値は異なってもよい。
さらに、本発明に係る電子部品は、マルチフェーズDC−DCコンバータだけでなく、並列接続されたDC−DCコンバータであれば、本発明に係る効果を得ることがきる。そして、本発明に係る電子部品は、並列接続された降圧型のDC−DCコンバータだけでなく、並列接続された昇圧型のDC−DCコンバータに用いてもよい。また、前記実施例において、電子部品10A〜10Cは、積層インダクタであったが、金属導線を巻回して形成したスパイラルコイル、あるいはプリント基板上にメッキ等で形成したスパイラルコイルとそのコイルの内径部や外層部を金属磁性粉等の磁性粉を含有した樹脂で覆った構成の電子部品であってもよい。
さらに、電子部品10Aにおいて、外部電極31,34を入力電極として用い、外部電極32,33を出力電極として用いてもよい。このとき、インダクタL1を通過する電流I1の向きとインダクタL2を通過する電流I2の向きとは、同じ方向になる。従って、電子部品10Aにおいて、外部電極31,34を入力電極として用い、外部電極32,33を出力電極として用いた場合には、電子部品10Aの奏する効果と電子部品10Bの奏する効果は、同じである。なお、電子部品10Bについても、上記と同様に、入出力に用いる電極を入れ替えることができる。
以上のように、本発明は、並列接続されたDC−DCコンバータ及びこれに用いられる電子部品に有用であり、特に、磁気飽和によるインダクタンス値の低下を抑制することができる点で優れている。
L1,L2,L1B,L2B インダクタ
1 マルチフェーズDC−DCコンバータ
2,3 DC−DCコンバータ回路
10A〜10C 電子部品
20 本体
1 マルチフェーズDC−DCコンバータ
2,3 DC−DCコンバータ回路
10A〜10C 電子部品
20 本体
Claims (7)
- 複数のDC−DCコンバータ回路を並列接続し、各出力を足し合わせて一つの出力とするDC−DCコンバータに含まれる電子部品であって、
本体と、
前記複数のDC−DCコンバータ回路のそれぞれの一部を構成し、かつ、前記本体に設けられている複数の螺旋状のインダクタと、
を備えており、
前記複数の螺旋状のインダクタのそれぞれは、該複数のインダクタの中心軸が略一致するように積み重ねられていること、
を特徴とする電子部品。 - 前記DC−DCコンバータは、該複数のDC−DCコンバータ回路からの各出力位相が可変となるように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。 - 前記インダクタの中心軸方向から見て、該インダクタの内側領域は、磁性材料により構成されていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品。 - 前記各出力が足し合わされて出力される外部電極を、
更に備えていること、
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品。 - 前記複数のDC−DCコンバータ回路の各入力に対応する複数の入力用外部電極と、
前記複数のDC−DCコンバータ回路の各入力に対応する複数の出力用外部電極と、
を備えていること、
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品。 - 複数のDC−DCコンバータ回路を並列接続し、各出力を足し合わせて一つの出力とするDC−DCコンバータであって、
本体、及び前記複数のDC−DCコンバータ回路のそれぞれの一部を構成し、かつ、前記本体に設けられている複数の螺旋状のインダクタを有する電子部品を備えており、
前記複数の螺旋状のインダクタのそれぞれは、該複数のインダクタの中心軸が略一致するように積み重ねられていること、
を特徴とするDC−DCコンバータ。 - 前記複数のDC−DCコンバータ回路はそれぞれ、出力位相が可変であること、
を特徴とする請求項6に記載のDC−DCコンバータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013025122A JP2014155392A (ja) | 2013-02-13 | 2013-02-13 | 電子部品及びdc−dcコンバータ |
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ID=51576754
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Country Status (1)
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JP (1) | JP2014155392A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2024084966A1 (ja) * | 2022-10-21 | 2024-04-25 | 株式会社村田製作所 | 複合パワーインダクタを備えたスイッチング電源装置 |
-
2013
- 2013-02-13 JP JP2013025122A patent/JP2014155392A/ja active Pending
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WO2024084966A1 (ja) * | 2022-10-21 | 2024-04-25 | 株式会社村田製作所 | 複合パワーインダクタを備えたスイッチング電源装置 |
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