JP2014145005A - 導電性樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性樹脂組成物から形成された成形体の表層部の一部又は全部に対して、良好な導電性が付与された導電性樹脂成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1成分の樹脂からなる母材に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物から、半製品10を作製する。この半製品10の表層部12は高抵抗であり、一方、内部13は導電性を示す。次に、表層部12の少なくとも一部に対して加熱処理を施し、前記母材の軟化点以上且つ半製品10の溶融点に比して低温の温度Tとする(好適には、同時に加圧処理を施す)。これにより導電性付与部24を形成して、導電性樹脂成形品26を得る。
【選択図】図4
【解決手段】少なくとも1成分の樹脂からなる母材に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物から、半製品10を作製する。この半製品10の表層部12は高抵抗であり、一方、内部13は導電性を示す。次に、表層部12の少なくとも一部に対して加熱処理を施し、前記母材の軟化点以上且つ半製品10の溶融点に比して低温の温度Tとする(好適には、同時に加圧処理を施す)。これにより導電性付与部24を形成して、導電性樹脂成形品26を得る。
【選択図】図4
Description
本発明は、少なくとも1成分の樹脂からなる母材中に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物からなる導電性樹脂成形品及びその製造方法に関する。
電気絶縁性の熱可塑性樹脂からなる母材中に、例えば炭素粒子等の導電性材料を分散させた導電性樹脂組成物からなる導電性樹脂成形品(以下、単に「成形品」と表記することもある)が知られている。この成形品の内部では、母材中に炭素粒子が互いに接触ないしは近接した状態で分散することによって導電性のネットワークが形成され、このネットワークを介して電気伝導が生じる。
その一方で、表面及びその近傍(表層部)は概して高抵抗である。このように内部と表層部で電気的性質が相違する理由は、以下のためであると推察される。
すなわち、この種の成形品は、溶融して流動性を示す導電性樹脂組成物を金型のキャビティに射出成形することによって得られる。射出成形では、導電性樹脂組成物がキャビティ内を流動する。
この流動の際、導電性樹脂組成物の表面は、金型のキャビティを形成する面に接触する。射出成形では、一般的に、金型の温度が溶融樹脂に比して低いため、キャビティ内に射出された導電性樹脂組成物では、金型と接触する表面が急冷される。その結果、この表面を含む表層部では、炭素粒子等が母材中を移動して導電性のネットワークを形成するよりも速い段階で母材が固化してしまうので、炭素粒子等が拘束されてその移動が制限される。このために十分なネットワークが形成されなくなり、結局、導電経路が不十分となるために高抵抗となる。
これに対し、内部では母材の固化が遅い。従って、導電材が母材中に十分に分散し、これによりネットワーク、すなわち、導電経路が形成されて導電性を示すようになる。
ところで、導電性の被塗装物に効率よく塗料を塗着させる塗装方法として、静電塗装が一般に行われている。この静電塗装では、接地してアース電位とした被塗装物の表面に、一般的にはマイナスに帯電させた塗料粒子を静電作用によって吸着させることで被塗装物を塗装する。
このような静電塗装において、導電性樹脂組成物からなる成形品を被塗装物とするときには、上記の通り表層部が高抵抗であるので、塗着効率を向上させることが困難である。何故なら、成形品の表層部に対して接地を行っても、該表層部が導電性を示さないためにアース電位とすることができず、このために成形品と塗料粒子との間に静電作用が生じ難くなるからである。
そこで、導電性を示す成形品の内部に対して接地を行うことが考えられる。しかしながら、成形品の内部を接地するためには、該内部に到達する孔等を形成する必要があり、このような孔を成形品の意匠面(ユーザーが視認し得る面)に形成すると、美観が損なわれるので好ましくない。
以上のような理由から、外観形状を損なうことなく接地を行ってアース電位とし、これにより静電塗装の塗着効率を向上させるべく、表層部まで良好な導電性を示す成形品が求められている。
そこで、例えば、特許文献1には、結晶性の熱可塑性樹脂に導電性材料として微細炭素繊維を配合した導電性樹脂組成物から成形品を得る成形方法が提案されている。結晶性の熱可塑性樹脂は、溶融状態からの冷却過程において、結晶化温度に至るまでは粘度が低い。このため、射出成形用の金型を熱可塑性樹脂の結晶化温度付近に予め設定しておくことによって、キャビティ内で熱可塑性樹脂の表層部が冷却されて固化するまでの間に、微細炭素繊維による導電性のネットワークを形成し得、表層部に導電性を示す成形品が得られる、とのことである。
上記の特許文献1に示す成形方法では、結晶性の熱可塑性樹脂を用いる必要があるため、導電性樹脂成形品を得ることが可能な材料が制限される。また、結晶性の熱可塑性樹脂の結晶化温度や、射出成形に用いる種々の金型ごとに、該金型を設定した温度に予め加熱しておく必要がある。すなわち、上記の成形方法では、定められた材料からなる導電性組成物を定められた方法で成形する必要があるため、導電性樹脂成形品を得るためのコストが高騰することや、製造工程が煩雑になるといった問題が生じる懸念がある。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、導電性樹脂組成物から形成された成形体の表層部の一部又は全部に対して良好な導電性が付与された導電性樹脂成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、少なくとも1成分の樹脂からなる母材中に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物からなる導電性樹脂成形品の製造方法であって、
前記導電性樹脂組成物を射出成形して、成形体としての半製品を得る工程と、
前記半製品の表面の少なくとも一部を、前記導電性樹脂組成物の軟化点以上且つ溶融点よりも低温に加熱する工程と、
を有することを特徴とする。
前記導電性樹脂組成物を射出成形して、成形体としての半製品を得る工程と、
前記半製品の表面の少なくとも一部を、前記導電性樹脂組成物の軟化点以上且つ溶融点よりも低温に加熱する工程と、
を有することを特徴とする。
この導電性樹脂成形品の製造方法では、導電性樹脂組成物を成形して得た半製品の表面及びその近傍(表層部)を上記の温度とすることによって、該表層部が溶融しない範囲で軟化する。このように樹脂が軟化した表層部では、導電性材料に対する拘束が解かれるので、該導電性材料が容易に移動し得るようになる。
その一方で、導電性材料同士の間には凝集力等が作用する。以上のような理由から、導電性材料が互いに接触ないしは近接した状態で母材中に分散する。この結果、導電性のネットワーク(導電経路)が形成され、電気伝導が生じるようになる。
従って、導電性樹脂組成物の表層部が溶融状態から急冷されること等によって、導電性のネットワークが十分に形成されていない半製品であっても、上記の加熱処理を行った表層部では、導電性材料が母材(樹脂)中を再び移動して該ネットワークを十分に形成することが可能になる。すなわち、上記の加熱処理を施すことで表層部に導電性を付与することができるため、成形体の表層部の一部又は全部が良好な導電性を示す導電性樹脂成形品を得ることが可能になる。
この場合、導電性樹脂組成物を成形して得た半製品に対して、上記の加熱処理を行うことで、表層部が導電性を示す導電性樹脂成形品を得ることができる。従って、導電性樹脂組成物を成形する工程において、例えば、樹脂として用いる材料や、射出成形を行う金型の温度等に関する特別な制限がない。このため、導電性樹脂成形品を得るためのコストを低減することや、製造工程を簡略化することが可能となる。
また、上記の加熱処理では、導電性樹脂組成物から成形した成形体が溶融しない範囲内で表層部を加熱しているため、成形体の外観形状を変化させることや損傷させることなく、表層部に導電性を付与することができる。
母材が相分離構造を形成する2成分以上の樹脂を含む場合、母材中では、例えば、一成分の樹脂を海とし、他成分の樹脂を島とした海島構造等の相分離構造を形成した組織構造が認められる。このような導電性樹脂組成物において、導電性材料によって良好な導電性のネットワークを形成するためには、樹脂の相分離構造の状態も重要となる。
具体的には、例えば、海を形成する樹脂中に導電性材料が含まれる場合、前記表層部が急冷されること等によって、該海を形成する樹脂中に島を形成する樹脂が不均一に分散していると、導電性材料の移動が島を形成する樹脂によって妨げられることがある。この場合、導電性材料によるネットワークが十分に形成されないので、良好な導電性を示す導電性樹脂成形品が得られない懸念がある。
この不都合を回避するべく、前記半製品を加熱する際に、前記相分離構造が構造相転移を起こす大きさの圧力を前記半製品に加えることが好ましい。半製品の表層部を加熱とともに加圧することで、導電性材料を含む樹脂を軟化させることができるとともに、成形体を溶融状態となるまで加熱することなく樹脂の相分離構造を変化(構造相転移)させることができる。すなわち、成形体の外観形状を変化させることなく、導電性樹脂組成物の海を形成する樹脂中に島を形成する樹脂を均一に分散させることができる。
これによって、軟化した海を形成する樹脂中に含まれる導電性材料が、島を形成する樹脂同士の間を効果的に移動することが可能になる。このため、成形体の表層部に導電性のネットワークを良好に形成することができる。
半製品に付与する圧力は、前記半製品の弾性変形域内の大きさであることが好ましい。この場合、導電性樹脂成形品を加圧から解放すると、弾性作用によって加圧前形状に戻る。このため、成形体の外観形状を変化させることや損傷させることをより効果的に抑制しつつ、表層部に導電性を付与することができる。
また、本発明は、少なくとも1成分の樹脂からなる母材中に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物からなる導電性樹脂成形品であって、
少なくとも一部が内部から表面にかけて、前記導電性材料同士が接触ないしは近接して導電性を示すことを特徴とする。
少なくとも一部が内部から表面にかけて、前記導電性材料同士が接触ないしは近接して導電性を示すことを特徴とする。
導電性樹脂組成物の射出成形によって得られる上記の導電性樹脂成形品は、樹脂として用いる材料や、射出成形を行う金型の温度等によらず、内部から表層部の一部又は全部にかけて、導電性材料による導電性のネットワークが良好に形成されている。従って、この導電性樹脂成形品は、内部から表層部まで良好な導電性を示し、容易且つ低コストに得ることができる。
母材は、上記したように相分離構造を形成する2成分以上の樹脂を含むものであってもよい。この場合、2成分以上の樹脂が海島構造を形成していても差し支えない。
本発明によれば、導電性樹脂組成物から得られた成形体(半製品)の表層部を、導電性樹脂組成物の軟化点以上且つ溶融点に比して低温に加熱するようにしている。このため、母材(樹脂)に含まれる導電性材料が移動することが可能となり、その結果、導電性材料が互いに接触又は近接して導電性のネットワークが形成される。これにより、半製品の外観形状を変化させることなく表層部の一部又は全部に導電性を付与することができ、内部から表層部まで良好な導電性を示す導電性樹脂成形品を容易且つ低コストに得ることができる。
以下、本発明に係る導電性樹脂成形品(成形品)及びその製造方法につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る成形品は、少なくとも1成分の樹脂からなる母材中に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物を成形して作製した成形体(半製品)に対し、その表面の少なくとも一部に対して加熱及び加圧処理を施すことによって得られたものである。そこで、先ず、母材が2成分の樹脂を含む半製品から成形品を得る場合を、図1〜図5を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る成形品の製造方法では、先ず、導電性樹脂組成物を射出成形することによって半製品10(図1参照)を形成する。この半製品10は、電気的性質が互いに相違する表層部12と内部13との2層構造をなす。この点については後述する。
なお、図1中の参照符号14は、スポット接合装置を構成する電極である。勿論、スポット接合装置は、電極14、14同士を互いに接近又は離間する方向に移動させる駆動部と、電極14、14に通電を行うための電源(いずれも不図示)とを備える。この種のスポット接合装置は周知であり、従って、その詳細な説明は省略する。
ここで、導電性樹脂組成物につき、表層部12の組織構造を示す図2を参照して説明する。この導電性樹脂組成物は、2成分の樹脂16、18を含む母材20中に導電性材料22が分散したものである。なお、表層部12では、図2中に「×」で表しているように、隣接する導電性材料22同士が大きく離間することで導電性材料22の連なりが途切れている。このため、導電性のネットワークが十分に形成されていない。
2成分の樹脂16、18は、互いに相分離して海島構造等の相分離構造を形成する熱可塑性樹脂である。ここでは、海を構成する樹脂16としてポリアミド(PA6)を採用し、且つ島を構成する樹脂18としてポリフェニルエーテル(PPE)を採用することとするが、特にこれに限定されるものではない。
また、導電性材料22は、母材20内で分散してネットワーク(導電経路)を形成することで該母材20に導電性を付与することが可能な物質であり、ここでは、カーボンブラック(CB)等の炭素微粒子を採用することとする。しかしながら、特にこれに限定されるものではなく、例えば、微細炭素繊維等を採用することもできる。
樹脂16、18及び導電性材料22を含む導電性樹脂組成物は、例えば、樹脂16(PA6)、樹脂18(PPE)、導電性材料22(CB)をそれぞれ、47wt%、47wt%、6wt%の割合で含んで構成することができ、海を構成する樹脂16中に導電性材料22が含まれる。
このような導電性樹脂組成物を射出成形することで得られる半製品10では、上記したように電気的性質が互いに相違する表層部12、内部13が形成される(図1参照)。具体的には、表層部12は高抵抗であり、一方、内部13は導電性を示す。これについて、図2及び図3を参照して説明する。
半製品10を得るためには、キャビティ(不図示)に溶融状態の導電性樹脂組成物(溶融樹脂)を射出する射出成形が行われる。この際、溶融樹脂は、キャビティを形成する金型(不図示)の表面に流動しつつ接触する。一般的に、金型の温度は溶融樹脂の温度に比して低いため、キャビティ内に射出された溶融樹脂では、金型と接触する表面が急冷される。
このため、急冷された表面近傍(表層部12)では、導電性材料22が樹脂16中を移動して導電性のネットワークを形成するよりも速く、且つ海を形成する樹脂16中に島を形成する樹脂18が均一に分散するよりも速く、樹脂16が固化する。すなわち、樹脂16の粘度が上昇すること及び樹脂18同士の間に十分な間隔が形成されない箇所が生じること等によって、導電性材料22が移動して互いにある程度凝集しつつ拡散することが制限される。このため、溶融状態から急冷された表層部12では、図2に示すように、導電性材料22による導電性のネットワークが十分に形成されない。
これに対し、金型と接触しないまま自然冷却された半製品10の内部13では、樹脂16が固化する速度に比して、導電性材料22によって導電性のネットワークが形成される速度が速い。また、樹脂16中に樹脂18が略均一に分散した相分離構造が形成されるため、樹脂18(島)同士が互いに過度に近接して導電性材料22の移動が阻害されることもない。すなわち、内部13では、一例を図3中に矢印で示すように、導電性材料22による導電性のネットワークが十分に形成され、その結果、良好な導電性を示す。
本実施形態では、表層部12の少なくとも一部を改質して内部13と同様の組織構造とし、これにより、内部13から表面の少なくとも一部にかけて導電性を示す部位、すなわち、図4に示す導電性付与部24、24を形成して成形品(導電性樹脂成形品)26を得る。
半製品10の表層部12の一部に導電性付与部24、24を設ける工程につき説明すると、図4に示すように、スポット接合装置の前記駆動部の作用下に半製品10の表層部12の一部を電極14、14によって挟持する。
この状態で、前記電源から電極14、14に通電が行われる。表層部12が高抵抗であるため、該表層部12において、電極14、14が接触した接触部位にジュール熱が発生する。これに伴い、該接触部位が加熱されて温度が上昇する。
接触部位の温度Tは、樹脂16(海)の軟化点以上且つ半製品10の溶融点に比して低温とする。従って、温度Tとなった接触部位では、半製品10が溶融しない範囲で、海島構造の海を構成する樹脂16が軟化する。このため、樹脂16に分散した導電性材料22に対する拘束が解かれるので、図5に示すように、導電性材料22が樹脂18同士の間を移動することが可能になる。
その一方で、導電性材料22同士の間には凝集力等が作用する。従って、該導電性材料22は、互いに接触ないしは近接した状態で、樹脂16中において、樹脂18同士の間に分散することが可能となる。この結果、図5中に矢印で示すように、導電性材料22によって導電性のネットワークが形成され、電気伝導が生じるようになる。
さらに、スポット接合装置では、上記のようにして表層部12の一部を加熱する際、電極14、14が半製品10を押圧する。換言すれば、挟持部位に圧力Pが付与される。なお、圧力Pの大きさは、導電性樹脂組成物中の相分離構造に変化が生じ、且つ半製品10の弾性変形域内である。
以上のようにして温度Tに加熱され且つ圧力Pが加えられた挟持部位では、海島構造の海を形成する樹脂16中に、島を構成する樹脂18が略均一に分散するように、導電性樹脂組成物の相分離構造が変化する。換言すれば、構造相転移が起こる。つまり、半製品10を溶融させるまで加熱することなく導電性樹脂組成物を相転移させ、樹脂16中に樹脂18を略均一に分散させることができる。
これによって、軟化した樹脂16中において、導電性材料22が樹脂18同士の間を効果的に移動するとともに、略同等の径の樹脂18(島)が略均一に分散して、内部13の組織構造(図3参照)と同様の組織構造となる。
結局、高抵抗である表層部12に対して加熱加圧処理を施すことにより、該加熱加圧処理を施した部位に、内部13と同様の導電性のネットワークを良好に形成することができる。すなわち、該部位の電気抵抗を低減させて導電性付与部24、24(図4参照)を形成し、成形品26を得ることができる。
すなわち、本実施形態によれば、表層部12を、半製品10が溶融しない程度の温度Tに加熱し、且つ半製品10の弾性変形域内の圧力Pで加圧することによって、半製品10の外観形状を変化や損傷させることなく、内部13から表層部12に至り良好な導電性を示す導電性付与部24、24を形成して、成形品26を得ることができる。
要するに、導電性樹脂組成物を射出成形して半製品10を得た後、該半製品10の表層部12に対して導電性を付与することができるため、例えば、結晶性の熱可塑性樹脂等の特別な相転移を行う樹脂を用いたり、射出成形を行う際の金型を予め設定温度に加熱したりする必要がない。換言すれば、半製品10を得るための制限を受けることがない。これによって、成形品26を得るためのコストの低減を図ることや、製造工程を簡略化することが可能になる。
このようにして導電性付与部24、24を形成した後、電極14、14に対する通電を停止するとともに、前記駆動部の作用下に電極14、14を成形品26から離間させる。これにより、成形品26がスポット接合装置から解放される。圧力Pが半製品10の弾性変形域内の大きさであるので、成形品26は、電極14、14で挟持される前の形状に戻る。
また、接触部位に対する加熱が停止されるので、導電性付与部24、24が降温して硬化する。この際には、図5に示す組織構造が維持される。すなわち、成形品26の表層部12は、常温において導電性を示す部位を有する。
このようにして得られた成形品26に対しては、静電塗装を行うことが可能である。この場合、表層部12中の導電性付与部24に対してアースケーブルを電気的に接続する等して、接地(アース接続)を行えばよい。導電性付与部24は、上記したように導電性を示す。従って、この接地により、成形品26を容易にアース電位とすることができる。しかも、内部13まで到達するような孔等を設ける必要がないので、成形品26の美観を損ねることもない。
次に、成形品26を単独、又は所定の部材と組み合わせた組立体として塗装ブース内に搬入し、さらに、例えば、マイナスに帯電した霧化塗料を吹きつける。上記したように成形品26は既にアース電位となっているため、成形品26と霧化塗料との間に電位差が生じる。
この電位差に基づき、成形品26と霧化塗料との間に静電誘引力が作用する。このため、霧化塗料が成形品26に引き寄せられて塗着する。すなわち、成形品26の美観を損ねることなく、該成形品26に対する塗着効率を向上させることができる。
なお、半製品10の全体に加熱加圧処理を行い、表層部12の全域に導電性を付与することも可能である。このためには、例えば、公知の加熱雰囲気炉内で、半製品10を上記の温度Tに加熱しつつ、加熱雰囲気の作用下に上記の圧力Pで加圧する等すればよい。
この場合、表層部12全域の導電性樹脂組成物が図3又は図5に示す組織構造となる。すなわち、表層部12全域に導電性付与部24を形成することができる。従って、表層部12(成形品)に対する塗着効率が向上する。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態に係る導電性樹脂組成物は、互いに相分離構造を形成する2成分の樹脂16、18を含むものとした。しかしながら、導電性樹脂組成物に含まれる樹脂は1成分であってもよいし、3成分以上であってもよい。1成分の樹脂を含む導電性樹脂組成物を射出成形して成形体を形成した場合、導電性材料22の移動が樹脂の相分離構造によって規制されることがないため、上記の加圧処理を施すことなく、導電性材料による導電性のネットワークを加熱処理のみで良好に形成することができる。
10…半製品 12…表層部
13…内部 14…電極
16、18…樹脂 20…母材
22…導電性材料 24…導電性付与部
26…導電性樹脂成形品
13…内部 14…電極
16、18…樹脂 20…母材
22…導電性材料 24…導電性付与部
26…導電性樹脂成形品
Claims (6)
- 少なくとも1成分の樹脂からなる母材中に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物からなる導電性樹脂成形品の製造方法であって、
前記導電性樹脂組成物を射出成形して、成形体としての半製品を得る工程と、
前記半製品の表面の少なくとも一部を、前記導電性樹脂組成物の軟化点以上且つ溶融点よりも低温に加熱する工程と、
を有することを特徴とする導電性樹脂成形品の製造方法。 - 請求項1記載の製造方法において、前記母材が相分離構造を形成する2成分以上の樹脂を含み、前記半製品を加熱する際に前記相分離構造が構造相転移を起こす大きさの圧力を前記半製品に付与することを特徴とする導電性樹脂成形品の製造方法。
- 請求項2記載の製造方法において、前記半製品に付与する圧力は、該半製品の弾性変形域内の大きさであることを特徴とする導電性樹脂成形品の製造方法。
- 少なくとも1成分の樹脂からなる母材中に導電性材料が分散した導電性樹脂組成物からなる導電性樹脂成形品であって、
少なくとも一部が内部から表面にかけて、前記導電性材料同士が接触ないしは近接して導電性を示すことを特徴とする導電性樹脂成形品。 - 請求項4記載の成形品において、前記母材が相分離構造を形成する2成分以上の樹脂を含むことを特徴とする導電性樹脂成形品。
- 請求項5記載の成形品において、前記2成分以上の樹脂が海島構造を形成していることを特徴とする導電性樹脂成形品。
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