〔第1の実施の形態〕
成形金型で成形により製造された樹脂の成形部材には、基準形状の寸法より小さい場合と大きい場合がある。
<成形部材の成形形状が基準形状より小さい場合>
図1のAは、成形部材の形状が小さい場合の一例として、成形部材の突出長が基準長より短い場合の成形部材およびこての断面(図1のBのIA−IA線断面)を示している。図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
成形部材2は樹脂成形部材の一例であり、形状補正の対象である。この成形部材2は電子機器の一例である携帯端末装置のリアケースの一部である。この成形部材2の形状補正にはこて4が用いられる。こて4は、発熱によって形状補正を行う発熱成形治具の一例であり、また、電子機器の製造装置の一例である。
成形部材2は熱可塑性樹脂で成形されている。この熱可塑性樹脂にはたとえば、ナイロン、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、ポリカーボネートなどが用いられ、加熱成形が用いられる。この加熱成形には加熱温度としてたとえば、120〔°〕ないし330〔°〕程度の熱が用いられる。
この成形部材2には一例として本体部6から突出する凸部8が形成されている。この凸部8は図示しない他の成形部材の凹部と嵌合する。つまり、凸部8は凹凸嵌合による嵌合構造の一部であり、たとえば、爪部である。凹部は、凸部8が嵌め込まれる窪み部分であり、たとえば、庇部に隣接する隙間部分である。
この凸部8が突出している本体部6の外面部は平坦面である。凸部8は、複数の面部8−1、8−2、8−3を含んでいる。面部8−1は一例として傾斜面部である。この面部8−1は本体部6の外面部を基準とし、傾斜角度θ1で傾斜している。面部8−2は本体部6の外面部と平行面部である。面部8−3は本体部6の外面部から突出した直立面部である。
この場合、凸部8が突出すべき基準長Lref を二点鎖線で示している。凸部8の突出長はL1であり、基準長Lref より短い(Lref >L1)。つまり、凸部8は幅ΔL1(=Lref −L1)だけ短い。
こて4は、発熱成形治具の一例である。このこて4には、熱源部10、成形面12および非成形面14−1、14−2が含まれる。
熱源部10は加熱手段の一例である。この熱源部10の発熱によりこて4が加熱される。これにより、こて4の成形面12が成形部材2を加熱成形するに必要な温度に加熱される。
成形面12は、成形部材2の凸部8に対応する凹部で形成されている。この成形面12には成形面部12−1、12−2、12−3、12−4が含まれる。成形面部12−1、12−2は、凸部8の面部8−1に対応する。成形面部12−1の傾斜角度θ2は傾斜角度θ1より大きい(θ2>θ1)。成形面部12−2の傾斜角度θ3は傾斜角度θ1より小さい(θ3<θ1)。これにより、成形面部12−1、12−2は、頂部に稜線を備える山形成形面部となっている。
成形面部12−3は凸部8の面部8−2に対応する平坦面である。この成形面部12−3には樹脂逃がし部16が形成されている。この樹脂逃がし部16は可塑化した樹脂18(図2のA)を逃がす部分であるとともに、流入した樹脂18を成形する。この実施の形態の樹脂逃がし部16の形状は直方体状の凹部である。非成形面14−1または14−2から樹脂逃がし部16の内壁面までの距離L2は、既述の基準長Lref に設定されている。つまり、このような寸法設定は、樹脂逃がし部16に流動して硬化させた樹脂18により、凸部8の突出長L1を基準長Lref に補正成形するためである。
非成形面14−1または14−2から成形面部12−3の距離L3は、凸部8の突出長L1より大きく設定されている。つまり、凸部8の面部8−2と成形面部12−3との間にクリアランス幅ΔL2が設定され、このクリアランス幅ΔL2の空間で樹脂18を流動させる。成形面部12−4は凸部8の面部8−3に対応する。
非成形面14−1、14−2にはセラミックシート20が設置されている。このセラミックシート20は断熱材の一例である。これにより、こて4の熱が遮断される。つまり、成形部材2の本体部6側への熱移動が阻止されるので、成形部材2の無用な熱変形が防止される。
図1のBは、図1のAのIB−IB線断面を示している。凸部8には二つの突出部8−4、8−5が形成されている。この突出部8−4と突出部8−5の間には窪み8−6が形成され、樹脂欠落部22が生じている。この樹脂欠落部22は、凸部8の先端側の二点鎖線で示す包囲部分である。
こて4の成形面12には図1のBに示すように、成形面部12−5、12−6、12−7、12−8、12−9が含まれる。これらの成形面部12−5、12−6、12−7、12−8、12−9により、直方体状のキャビティに対し、成形面部12−6、12−8がテーパ面を形成している。
図2のAは、凸部8の形状補正処理を示している。図2のBは、図2のAのIIB −IIB 線断面を示している。本体部6の凸部8にこて4を押し当てることにより加熱による補正成形を行う。こて4の成形面部12−1、12−2の押し当てにより、加熱された凸部8の傾斜面8−1の樹脂18が流動し、クリアランス幅ΔL2の空間部24を通過し、樹脂逃がし部16に流れ込み、成形される。
図3のAは、形状補正された凸部8を示している。図3のBは、図3のAのIIIB−IIIB線断面を示している。樹脂逃がし部16に流れ込んだ樹脂18を冷却して硬化させると、こて4の成形面12のキャビティ形状に成形される。この実施の形態では、凸部8の原型の面部8−1は、成形面部12−1、12−2の形状により、面部8−1a、8−1bの谷面部に成形される。面部8−2は原型位置より前方に突出する。突出した面部8−2には樹脂逃がし部16(図1)により突出部26が形成される。また、面部8−3は、前方に突出する。このように、凸部8は、突出部26の生成により、基準長Lref の突出長を備えた形状に補正される。つまり、樹脂18の移動により面部8−2側に樹脂18の移動分だけ増加し、面部8−2の突出と突出部26とにより、凸部8の成形寸法が調整される。この結果、成形部材2の形状精度が高められる。
<成形部材の成形形状が基準形状より大きい場合>
図4のAは、成形部材の形状が大きい場合の一例として、成形部材の突出長が基準長より長い場合の成形部材およびこての断面(図4のBのIVA −IVA 線断面)を示している。図4おいて、図1と同一部分には同一符号を付してある。
成形部材2にある凸部8の形状は既述の凸部8(図1)と相似形である。この場合、凸部8が突出すべき基準長Lref を二点鎖線で示している。凸部8の突出長はL4であり、基準長Lref より長い(L4>Lref )。つまり、凸部8は幅ΔL3(=L4−Lref )だけ長い。
こて4には同様に熱源部10、成形面12および非成形面14−1、14−2が含まれている。熱源部10はこて4を加熱する電熱コイルなどの加熱手段の一例である。この熱源部10の発熱により、こて4の成形面12が成形部材2を加熱成形するに必要な温度に加熱される。
成形面12は、成形部材2の凸部8に対応する凹部で形成されている。この成形面12には成形面部12−10、12−11、12−12が含まれる。成形面部12−10は、面部8−1に対応する。成形面部12−10の傾斜角度θ4は傾斜角度θ1と同等である。
この場合、凸部8の幅をW1とする。凸部8の基準幅Wref に対し、幅W1はW1<Wref の関係である。そこで、こて4の成形面部12−10の縁部から成形面部12−12の縁部までの幅W2(=Wref )とし、W2>W1に設定する。つまり、こて4の成形面12内に基準幅Wref に凸部8を補正するための樹脂逃がし部16が形成されている。これに対応し、凸部8の面部8−3の下側には基準幅Wref を充足するための幅ΔW1(=Wref−W1)を持つ樹脂逃がし部28が設定される。この樹脂逃がし部28は可塑化した樹脂18(図5のA)を逃がす部分であるとともに、流入した樹脂18を成形する。この実施の形態の樹脂逃がし部28の形状は成形面部12−12を幅方向(図中下方)に拡張した空間である。非成形面14−1、14−2には同様にセラミックシート20が設置されている。
図4のBは、図4のAのIVB −IVB 線断面を示している。凸部8には二つの突出部8−4、8−5が形成されている。この突出部8−4と突出部8−5の間には窪み8−6が形成されているが、凸部8の先端側には樹脂過剰部30が生じている。この樹脂過剰部30は、凸部8の正規形状に対し、その先端側の二点鎖線より外側の部分である。
こて4の成形面12には図4のBに示すように、成形面部12−5、12−6、12−7、12−8、12−9が含まれることは既述の通りである。
図5のA(図5のBのVA−VA線断面)は、凸部8の形状補正の処理を示している。図5のBは、図5のAのVB−VB線断面を示している。本体部6の凸部8にこて4を押し当てることにより加熱による補正成形を行う。こて4の成形面部12−10、12−11、12−12の押し当てにより、加熱された凸部8の傾斜面8−1の樹脂18が流動し、樹脂逃がし部28に流れ込み、成形される。この場合、凸部8の先端側の樹脂18が樹脂逃がし部28側に移動し、樹脂逃がし部28で成形されるとともに、凸部8の先端側の樹脂18が減少状態に成形される。
図6のA(図6のBのVIA −VIA 線断面)は、形状補正された凸部8を示している。図6のBは、図6のAのVIB −VIB 線断面を示している。樹脂逃がし部28に流れ込んだ樹脂18を冷却して硬化させると、図6の樹脂逃がし部28のキャビティ形状に成形される。これにより、凸部8の樹脂過剰部30から流動した樹脂18が面部8−3の下側にある樹脂逃がし部28側に流れて成形される。凸部8の面部8−1、8−2は樹脂18の減少で原型位置より後退位置に補正される。一方、面部8−3は樹脂逃がし部28に流入した樹脂18により、進出した位置に補正される。つまり、凸部8は、基準幅Wref の幅を持つ形状に補正される。つまり、凸部8は、樹脂18の移動によって減少させ、凸部8の成形寸法が調整される。この結果、成形部材2の形状精度が高められる。
上記形状補正では、成形部材2の凸部8の形状補正を記載しているが、成形部材2に凹部が存在する場合にも同様の形状補正を行うことができる。その場合、凹部に対し、こて4の成形面12は、形状補正の対象である凹部に対応する形状とすればよい。
また、こて4は、図7に示すように、複数のこて部の一例として第1のこて部4−1および第2のこて部4−2を備えてもよい。こて部4−1、4−2は製造装置の一例である。また、こて部4−1は第1の成形部の一例であり、こて部4−2は第2の成形部の一例である。各こて部4−1、4−2は独立して凸部8の方向に進退可能である。各こて部4−1、4−2は独立して個別に加熱する構成としてもよい。その場合、こて部4−1には熱源部10−1が備えられ、こて部4−2には熱源部10−2が備えられればよい。そして、このように第1および第2のこて部4−1、4−2を備えた場合には、こて部4−1、4−2の押し当て順序を異ならせてもよい。たとえば、成形部材2の凸部8に対し、こて部4−1を先行して押し当てる。これにより可塑化した凸部8にこて部4−2を押し当てることにより、成形部材2の凸部8の形状補正を行ってもよい。このようにしても、既述した形状補正を行うことができ、成形部材2の凸部8の形状精度が高められる。
<第1の実施の形態の効果>
上記実施の形態によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(a) 凹凸嵌合を含む成形部材2の形状補正ないし再成形により形状精度を高めることができる。これにより、既述の成形部材2などの樹脂成形の歩留りを向上させることができる。
(b) 成形部材2の形状精度の向上により、成形部材2の凹凸嵌合の精度と信頼性を高めることができる。
〔第2の実施の形態〕
図8は、携帯端末装置の一例を示している。図8に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されるものではない。
この携帯端末装置40は、電子機器の一例である。この携帯端末装置40には、本体部42が設置されている。この本体部42の前面にはフロントケース44が取り付けられている。本体部42には表示モジュール46が配置され、その画面部48がフロントケース44の開口部50に配置されている。本体部42の背面側にはリアケース52が取り付けられている。
図9は、携帯端末装置40を分解して示している。本体部42の前面側には回路基板53が設置され、フロントケース44が被せられる。本体部42には電池パック54を収納する収納部56が形成されている。電池パック54が設置された本体部42の背面にはリアケース52が被せられる。
図10は、上面側から本体部42およびリアケース52を示している。図11は、背面側から本体部42およびリアケース52を示している。
本体部42およびリアケース52には複数の嵌合機構55が備えられ、本体部42とリアケース52は嵌合機構55により着脱可能である。各嵌合機構55が本体部42およびリアケース52の縁部に配置されるとともに、長手方向に一定の間隔で配置されている。この実施の形態では、8組の嵌合機構55を備えている。各嵌合機構55はたとえば、本体部42側(図10)にある嵌合部55−1と、リアケース52の背面側(図11)にある嵌合部55−2とを備えている。嵌合部55−1と嵌合部55−2は凹凸による嵌合と、この嵌合が素材の伸縮性により保持される。斯かる構成により、本体部42が弾性を備えるリアケース52で挟み込まれ、長手方向にある複数の嵌合機構55によりリアケース52が本体部42に着脱可能且つ強固に取り付けられている。また、リアケース52と本体部42との係合は、既述のように、左右4箇所ずつの嵌合機構55によって平衡が取られ、安定した固定状態に維持される。
図12は、図8のXII −XII 線断面を示している。本体部42の背面側には、リアケース52が着脱可能に取り付けられている。これら本体部42、フロントケース44およびリアケース52は、樹脂成形部材の一例である。この樹脂成形部材には熱可塑性樹脂としてたとえば、ナイロン、ABS樹脂、ポリカーボネートなどが用いられる。
本体部42には電池パック54の収納部56が形成され、この収納部56を包囲する立壁部58が形成されている。この立壁部58にはリアケース52が被せられて固定される。
図13は、図12のXIII部を拡大して示している。立壁部58には、リアケース52を固定するための凹部60および凸部62が形成されている。これに対し、リアケース52の内壁面には、凸部64および凹部66が形成されている。凹部60にはリアケース52側の凸部64が嵌まり込み、凸部62はリアケース52側の凹部66に嵌まり込む。つまり、本体部42とリアケース52の間には、凹部60および凸部64の第1の嵌合構造Iと、凸部62および凹部66の第2の嵌合構造IIの2つを備えている。これら2つの嵌合構造I、IIを以て、リアケース52は本体部42に着脱可能に固定される。このリアケース52の固定により、収納部56内の電池パック54がカバーされるので、この嵌合構造が持つ嵌合強度はカバー機能を維持するうえで不可欠である。
図14のAは、形状補正前の本体部42の凹部60および凸部62を示している。凹部60は一例として、本体部42の湾曲部分に樹脂成形により形成された窪みである。これに対し、凸部62は、凹部60の壁部から突出する庇形状の突出部である。
この例では、凸部62に成形不良により複数の欠落部68−1、68−2、68−3が生じている。欠落部68−1、68−2、68−3は、樹脂欠損であり、嵌合に必要な樹脂量が不足している部分である。このため、斯かる欠落部68−1、68−2、68−3は、リアケース52の凹部66に対し、凸部62の嵌合不良を来す。
図14のBは、形状補正後の本体部42の凹部60および凸部62を示している。この例では、凸部62にあった複数の欠落部68−1、68−2、68−3が凸部62の一部の樹脂18(図2に示す樹脂18)の一部を可塑化(溶解)して再硬化させて補填されている。二点鎖線部分は補填された樹脂18を示している。正規の形状に補正されたことにより、凸部62は、リアケース52の凹部66に対して適正な嵌合が可能になり、嵌合精度が高められる。
<凹部60および凸部62の形状補正>
(1) 凸部62の先端部を短縮する形状補正
図15のAは、突出長が大きい凸部62を備えた本体部42の断面を示している。この凸部62の突出長L6は凸部62の基準長Lref より大きく成形されている。この突出長L6は、凹部60の内壁面からの基準長Lref より長さΔL6だけ大きい。この場合、基準長Lrefおよび突出長L6は凹部60の内壁面を基準にしている。
このように凸部62が正規の形状より大きい場合には、図15のBに示すように、凸部62の先端部分の樹脂18を他の箇所に移動させることにより、正規形状に補正する。破線部は凸部62の先端部分の加熱により樹脂18を可塑化し、他の部分に移動させることにより、凸部62の突出長L6が基準長Lref に補正されている。
(2) 凸部62の先端部を拡張する形状補正
図16のAは、突出長が短い凸部62を備えた本体部42の断面を示している。凸部62の突出長L7は凸部62の基準長Lref より短く成形されている。この突出長L7は、凹部60の内壁面からの基準長Lref より長さΔL7だけ短い。
このように凸部62が正規の形状より短い場合には、図16のBに示すように、凸部62の先端部分に他の箇所から樹脂18を移動させることにより、正規形状に補正する。凸部62の先端部分には、加熱により可塑化した樹脂18を他所から移動して増量することにより、凸部62が突出長L7から基準長Lref に補正されている。図16のBにおいて、破線は補正前の原形を示している。
<こて4の形態>
図17のAおよびBはこて4の形態を示している。図17のAおよびBにおいて、図1と同一部分には同一符号を付してある。
こて4は、図17のAに示すように、上下方向に2段に分割したこて部4−1、4−2を含んでいる。この場合、こて部4−1、4−2間には摺動部72が設けられている。こて部4−1、4−2は一体として前後に移動可能であるとともに、こて部4−1は摺動部72によりこて部4−2と独立して成形部材2に対して矢印a(図中左右方向)で示すように、前後方向に摺動可能である。
こて4は、図17のBに示すように、前後方向に2段に分割してこて部4−1、4−2を含んでいる。この場合、こて部4−1、4−2間には摺動部74が設けられている。こて部4−1、4−2は一体として前後に移動可能であるとともに、こて部4−1は摺動部74によりこて部4−2と独立して成形部材2に対して矢印b(図中上下方向)で示すように、上下方向に摺動可能である。
本体部42(成形部材2)の形状補正には図17のAまたは図17のBに示すいずれのこてを用いてもよい。
<本体部42(成形部材2)の形状補正および補正条件>
(1) 図17のAに示すこて4を用いる形状補正
図18のAおよびBは、図17のAに示すこて4を用いる形状補正を示している。
本体部42の形状補正には、図18のAに示すように、本体部42およびこて4の位置決めを行なう。こて4は、図18のBに示すように、こて部4−1、4−2を一体として本体部42に対し、矢印a1の方向に移動する(つまり、こて4の横スライド)。こて4を本体部42の形状補正箇所に押し当て、本体部42を加熱する。
この状態からこて部4−1のみを矢印a2の方向に移動し、可塑化した樹脂18を樹脂逃がし部16側に移動させる(つまり、こて部4−1のみの横スライド)。
こて4の所定の押当て時間が経過した後、こて4の押当て状態を解除する。つまり、本体部42からこて4を引き離し、本体部42を冷却する。
本体部42にはたとえば、ABS樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が用いられる。斯かる場合の補正成形条件について、ABS樹脂であれば、こて4の発熱温度は120〔°〕〜140〔°〕であればよいし、ポリカーボネートであれば、こて4の発熱温度は150〔°〕〜180〔°〕であればよい。本体部42の可塑化時間はこて4の発熱温度に依存し、発熱温度が高ければ、溶融時間が短縮される。寸法調整には、押当て時間や発熱温度を考慮すればよい。
こて4の押し当て時間は、上記発熱温度に応じた所定時間、たとえば、5〔秒〕前後であればよい。また、加熱された本体部42の冷却時間は、本体部42が常温に低下するまでの時間であればよい。
(2) 図17のBに示すこて4を用いる形状補正
図19のAおよびBは、図17のBに示すこて4を用いる形状補正を示している。
本体部42の形状補正には、図19のAに示すように、本体部42およびこて4の位置決めを行なう。こて4は、図19のBに示すように、こて部4−1、4−2を一体として本体部42に対し、矢印b1の方向に移動する(つまり、こて4の横スライド)。こて4を本体部42の形状補正箇所に押し当て、本体部42を加熱する。
この状態からこて部4−1のみを矢印b2の方向に移動し(つまり、こて部4−1のみの縦スライド)、可塑化した樹脂18を樹脂逃がし部16側に移動させる。
こて4の所定の押当て時間が経過した後、こて4の押当て状態を解除する。つまり、本体部42からこて4を引き離し、本体部42を冷却する。
本体部42にはたとえば、ABS樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が用いられる。斯かる場合の補正成形条件については、既述の通りである。
<成形部材の位置決め>
図20は、本体部42および固定台76を示している。本体部42は既述の成形部材2の一例である。この本体部42は既述のリアケース52を外した状態である。この本体部42の形状補正には固定台76が用いられる。固定台76は基準面を持つ定盤の一例である。この固定台76には成形部材位置決め面78、こて装置位置決め面80およびこて移動量基準面82が含まれる。
成形部材位置決め面78には、載置面78−1および支持面78−2が含まれる。この実施の形態では、載置面78−1が一例として平坦面である。この載置面78−1には成形部材2の一例である本体部42が載置される。この載置面78−1には立壁部84が形成されている。この立壁部84の外面部に支持面78−2が形成されている。本体部42は、支持面78−2より移動が阻止され、載置面78−1の基準位置に維持される。
こて装置位置決め面80はこて装置86(図21)の基準位置を決定する。こて装置86の基準位置は、こて4の押し当て位置である。このこて装置位置決め面80は立壁部84の外面に形成されている。
こて移動量基準面82はこて4の(図21)の基準位置を決定する。こて装置86の基準位置は、こて4の移動量を決定する基準位置である。こて装置86は、携帯端末装置40の製造装置の一例である。立壁部84の頂部には、凸部88が立設されている。この凸部88にこて移動量基準面82が形成され、このこて移動量基準面82はこて装置位置決め面80と平行面である。
本体部42は矢印c1方向に移動させて載置面78−1に載置される。載置面78−1に載置された本体部42は矢印c2方向に移動させることにより、本体部42の縁面90を支持面78−2に当てられる。これにより、本体部42が固定台76の基準位置に固定される。
<こて装置86および本体部42の形状補正>
図21は、本体部42、固定台76およびこて装置86を示している。本体部42は固定台76に固定されている。この場合、本体部42の凸部62が補正成形部分92である。
こて装置86にはこて4、台座94およびダイヤルゲージ96が含まれる。こて4が成形面12を補正成形部分92に向けて台座94に配置される。こて4には熱源部10を備える。
台座94は、こて4を支持する支持部材である。この台座94は固定台76に対して矢印dで示すように、平行移動可能である。この台座94の前面には、こて装置位置決め面80に当接する基準面98が設けられている。この基準面98によりこて装置86が固定台76の基準位置に設定される。
ダイヤルゲージ96は設定移動量の検出手段の一例である。このダイヤルゲージ96は台座94の上面に設置されている。このダイヤルゲージ96には移動量を検出する接触子100が備えられている。この接触子100がこて移動量基準面82に接触する。この接触により、本体部42に対するこて4の押し当て量が監視される。
図22のAおよびBは、こて装置86による本体部42の形状補正を示している。
こて装置86は図22のAに示すように、矢印d1方向に平行移動させ、こて4を本体部42の形状補正位置である補正成形部分92に押し当てる。この移動はダイヤルゲージ96の検出量により監視され、こて4の平行移動量つまり、押し当て量および押し当て位置が監視される。このこて4の押し当てにより補正成形部分92が熱変形し、適正形状に修正される。
所定時間の押し当てによる形状補正を完了すると、図22のBに示すように、こて装置86を矢印d2方向に後退させる。これにより、形状補正された本体部42を冷却させ、形状補正を完了する。
図23は、こて装置86の形状補正および移動量の監視を示している。図23のAは、こて4の押し当て前の状態、図23のBは、こて4の押し当て状態を示している。
こて4の押し当て前には、こて装置86のダイヤルゲージ96の指針102は、移動量0を示している。こて装置86を本体部42側に移動させ、こて4を本体部42に押し当てる。これにより、ダイヤルゲージ96の接触子100はこて移動量基準面82に接触する。この状態でこて装置86を本体部42側に移動させると、その移動量により指針102が破線で示す元位置から実線で示す位置に回動し、図23のBに示すように、その移動量が指針102に表示される。つまり、押当て量がこて装置86の移動量として指針102に現れ、この移動量ΔLがこて4の押当て量である。
<こて装置86の制御系統>
図24は、こて装置86の制御系統の一例を示している。こて装置86には加熱機能部、移動機能部および移動量監視機能部が含まれる。
こて4には電熱コイル104が含まれる。電熱コイル104は加熱機能部であり、既述の熱源部10(図1)の一例である。この電熱コイル104には給電部106が接続され、この給電部106を通して電源108から給電されている。電源108には交流電源の他、直流電源を用いてもよい。給電部106は、制御部110によって制御される。
こて4はアクチュエータ112を備える。このアクチュエータ112は、既述の台座94とともにこて4を移動させる移動機能部の一例であり、こて4を独立して移動させる手段である。このアクチュエータ112は制御部110によって制御される。
制御部110はたとえば、コンピュータによって構成される。この制御部110には制御情報として、入力部114の設定入力、ダイヤルゲージ96、温度センサ116の検出出力が加えられる。温度センサ116は、こて4の発熱温度を検出する。
斯かる構成によれば、こて4の発熱温度が検出温度に基づき、制御部110により設定温度に制御される。また、こて4の移動量が移動量監視機能部の一例であるダイヤルゲージ96の移動量の監視に基づき、所定の移動量に制御される。
図25は、こて装置86の制御系統の変形例を示している。この変形例ではこて4に複数のこて部4−1、4−2が含まれる場合である。この場合、こて部4−1には電熱コイル104−1が設置され、こて部4−2には電熱コイル104−2が設置されている。各電熱コイル104−1、104−2は加熱機能部であり、既述の熱源部10(図1)、10−1、10−2(図7)の一例である。この電熱コイル104−1、104−2には給電部106が接続され、この給電部106を通して電源108から給電されている。これにより、各こて部4−1、4−2が独立して加熱される。
制御部110には制御情報として、入力部114の設定入力、ダイヤルゲージ96、温度センサ116−1、116−2の検出出力が加えられる。温度センサ116−1は、こて部4−1の発熱温度を検出する。温度センサ116−2は、こて部4−2の発熱温度を検出する。
斯かる構成によれば、各こて部4−1、4−2の発熱温度が検出温度に基づき、制御部110により設定温度に制御される。また、こて4の移動量がダイヤルゲージ96の移動量の監視に基づき、所定の移動量に制御される。
この場合、こて部4−1の移動量を移動量監視手段である他のダイヤルゲージにより監視し、設定移動量にこて部4−1を移動させてもよい。
<第2の実施の形態の効果>
(a) 携帯端末装置40の本体部42やリアケース52などの成形部材の形状補正を行うので、むだな成形オペレーションを削減でき、形状精度の高い製品を提供できる。
(b) たとえば、0.1〔mm〕単位レベルのばらつきを生じる樹脂成形の形状誤差を形状補正によって補填でき、寸法精度の高い成形部材が得られる。短期間で多量な樹脂成形を行う場合において、多数の成形型や、複数箇所での成形による地域性などの形状誤差を形状補正によって補完でき、高精度な形状管理が行える。
(c) 形状が小さい場合には廃棄処分としていた成形部材を形状補正によって良品化でき、余分な成型オペレーションや、使えない部品の発生を防止でき、歩留りの向上とともに、樹脂成形の製造コストを低減できる。
(d) 嵌合構造がいびつであっても、形状補正により形状精度を高めることができるので、良好な嵌合構造を実現できる。
(e) 嵌合する形状はひさし部や爪部などの凸部の他、この凸部を嵌合させる凹部であってもよく、形状補正により凹凸嵌合の精度を高めることができる。
(f) 形状補正には成形部材にある樹脂を可塑化して移動することにより、位置的に樹脂の増減を行うので、廃棄する樹脂が生じることがなく、また、外部から樹脂を供給する必要もない。単純なこての押し当て処理で嵌合に必要な形状を実現できる。
(g) 樹脂逃がし部16または樹脂逃がし部28を備えたことにより、その樹脂逃がし部16、28に可塑化した樹脂18を流動させて逃がし、その樹脂18を嵌合に必要な形状に成形できる。
(h) 上記実施の形態では、セラミックシート20などの断熱材を備えたことにより、加熱部分と非加熱部分とを区分して樹脂18の可塑化と非可塑化を図ることができ、形状補正の精度を高めることができる。
(i) 熱変形させるこて位置を微調整でき、この微調整により形状補正の精度を高めることができる。
(j) 上記実施の形態では、成形部材の溶融不可範囲にセラミックシート20を備えたが、耐熱性金型を使用することにより、部分的な断熱処理を行ってもよい。これにより、可塑化しない部位が設定でき、形状補正の精度、嵌合精度を高め、さらには、樹脂の劣化を防止できる。
(k) 樹脂の逃がし部分の形状は、波形状でもよいし、被成形面の凹凸や平坦面であってもよい。
(l) こてと突き当て部分は、ダイヤルゲージ96などの位置決め調整機構を設けることにより、多数の成形金型で成形された寸法ばらつきの大きい成形部材に対応できる。つまり、成形部材の形状や寸法にこて位置を対応させ、微調整を行うことができるので、形状精度の高い補正処理が行える。
(m) 所定形状に成形された成形部材の寸法の微調整を容易に行える。形状補正の対象は、中間製品や最終製品のいずれでもよく、また、組み立て後の製品に対しても形状補正を行うことができる。
(n) 形状補正を行った成形部材では、つめ勘合などの嵌合精度が高められるので、従来嵌合状態がきつい場合に必要としていた潤滑剤、その塗布およびその管理を省略できる。また、別工程での潤滑剤の塗布作業が不要となり、そのコストを低減できる。また、外観などの塗布不可箇所への潤滑剤付着による外観不良や製造歩留りの悪化を防止できる。潤滑剤の蒸発などによる潤滑機能の低下を補完でき、装置の信頼性低下を抑制できる。
(o) つめ嵌合の嵌合量が大きく、嵌め合いがきつい場合に行われていた従来の切削を回避でき、切削による樹脂かすの発生を防止できる。
(p) 上記実施の形態では本体部42またはリアケース52を例示したが、形状補正の対象はこれに限定されない。他の樹脂成形部材2からなる各種の部品の形状補正に対応することができる。コストアップなく、どのような樹脂成形部品にも対応できる。こて4の熱による溶融変形を利用し、微量な寸法変更が可能である。形状は大小いずれでもよいし、削りカスなどが発生しないので、清掃が不要である。装置への組み込み後の最終調整であっても対応できる。微細な箇所の寸法ズレを補修でき、廃棄部品を削減でき、コスト改善およびゴミ削減が可能となる。たとえば、携帯端末装置40にあっては、リアケース52を外したときに、外部に露出する部位の調整として、装置状態での形状補修が可能である。操作感を確認しながら、良好な形状および嵌合状態に調整でき、嵌合状態が最適化された製品を提供できる。
(q) 樹脂逃がし部16、28を設定したので、溶融した樹脂18の移動箇所が特定され、予期しない形状変形を抑制できる。つまり、精度の高い形状補正が可能である。
(r) こて4には変形させない面部にはセラミックシート20などの熱伝導性の低い材料により必要形状を維持する構成とし、変形させたい箇所には樹脂18を移動させ、寸法の増または減とし、基準形状と同一または同等な形状へ補正することができる。
(s) 操作感、操作力がより厳密に管理された形状を持つ樹脂成形部品や装置を提供できる。しかも、従来廃棄されていた成形部材を利用品として活用し、提供できるので、製品コストを低減できる。さらに、成形部材の廃棄量を低減でき、環境負荷の削減にも寄与する。
〔第3の実施の形態〕
図26のAは、第3の実施の形態に係るこてを示している。図26のBは、図26のAのXXVIB −XXVIB 線断面を示している。図26のCは、熱源部の構成例を示している。図26のA、BおよびCにおいて、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付してある。
こて部4−1は、図26のAに示すように、可動可能な成形部の一例としてこて部4−2に可動可能に支持されている。こて部4−2はこて部4−1の支持部材であり、こて4の本体部を構成している。
こて4の成形面12にはこて部4−1の成形面部120−1およびこて部4−2の成形面部120−2が含まれる。成形面部120−2には長方形状の貫通窓部122および成形凸部124が含まれている。貫通窓部122にはこて部4−1が摺動可能に装着され、こて部4−1の成形面部120−1が露出している。
成形凸部124はこて部4−2に一体に形成されている。この成形凸部124は偏平な直方体形状であり、成形面部120−1の下縁側から突出している。
こて部4−1の上部には図26のBに示すように、長径凹部126が形成されている。これに対し、こて部4−2にはねじ孔128が形成されている。このねじ孔128には固定ねじ130が取り付けられており、この固定ねじ130の先端部がこて部4−1の長径凹部126内に挿入されている。これにより、こて部4−1はこて部4−2に固定ねじ130により着脱可能に固定されている。固定ねじ130の頭部132はこて部4−2の上部の窪み134内に設置されている。
こて部4−1には、図26のCに示すように、電熱コイル104が設置され、この電熱コイル104に給電部106(図25)から給電されている。
こて4は、図27に示すように、固定ねじ130を外すことにより、こて部4−1とこて部4−2に分離可能である。斯かる構成によれば、こて部4−1をこて部4−2の貫通窓部122に装着可能である。こて部4−1の成形面部120−1を貫通窓部122の所望の位置に調整可能である。ねじ孔128に装着した固定ねじ130を長径凹部126に固定すれば、成形面部120−1を所望の位置に固定できる。この長径凹部126は、成形面部120−2の進退方向に向かって長径である。この長径凹部126と固定ねじ130との係合により、成形面部120−1の位置が決定される。つまり、長径凹部126の長径長が位置調整幅である。こて部4−1の位置調整には、こて部4−1の背面側にある支持突部136を用いればよい。
<立壁部58の成形補正>
図28は、本体部42の立壁部58の初期形状を示している。この立壁部58の外面部には凹部60が形成され、この凹部60の上縁側には突出長の大きい凸部62−1、62−2が形成されている。凸部62−1、62−2の間には欠落部138が生じている。図29のAは、図28のXXIXA − XXIXA線断面を示している。図29のBは、図29のAのXXIXB − XXIXB線断面を示している。図29のCは、図29のAのXXIXC − XXIXC線断面を示している。
図30のAは、本体部42の立壁部58にこて4が押し当てられた状態を示している。これにより立壁部58の形状補正が行われる。図30のBは、こて4による本体部42の立壁部58の形状補正後の形状を示している。図31のAは、図30のBのXXXIA − XXXIA線断面を示している。図31のBは、図31のAのXXXIB − XXXIB線断面を示している。図31のCは、図31のAのXXXIC − XXXIC線断面を示している。
このように突出した凸部62−1、62−2は図31のAに示すように形状補正により偏平化され、凸部62−1、62−2の頂部側の樹脂18が図31のBに示すように、凸部62−1、62−2の側壁側に流動して成形されている。このような成形補正により凸部62−1、62−2は高さを減ずる方向に補正成形され、基準形状が実現されている。
〔第4の実施の形態〕
図32のAは、第4の実施の形態に係るこてを示している。図32のBは、こて部4−1を示している。図32のAおよびBにおいて、第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付してある。
こて部4−1の成形面部120−1は、上部側を凸面部140および下部側を凹面部142とする凹凸面部である。凹面部142が樹脂逃がし部16の一例である。その他の構成は、第3の実施の形態と同一であるので同一符号を付し、その説明を割愛する。
<立壁部58の成形補正>
図33のAは、立壁部58にこて4(図32のAおよびB)を押し当てた状態を示している。図33のBは、本体部42の立壁部58の補正成形後の形状を示している。
このように、図32のAおよびBに示すこて4を用いれば、凹面部142側に可塑化した樹脂18が流れ込んで成形される。この結果、凸部62−1、62−2の頂部に樹脂18が移動して補正される。図34のAは、図33のBのXXXIVA− XXXIVA 線断面を示している。図34のBは、図34のAのXXXIVB− XXXIVB 線断面を示している。図34のCは、図34のAのXXXIVC− XXXIVC 線断面を示している。
立壁部58の凸部62−1、62−2の突出長が低い場合には、凸部62−1、62−2の頂部側に樹脂18を凸部62−1、62−2の根元側から移動させて成形すればよい。このように成形補正すれば、凸部62−1、62−2は図34のAおよびBに示すように、樹脂18の移動により基準形状に補正成形される。
〔第5の実施の形態〕
図35のAは、第5の実施の形態に係るこてを示している。図35のBは、こて部4−1を示している。図35のAおよびBにおいて、第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付してある。
こて部4−1の成形面部120−1は、中央部を凸面部144とし、この凸面部144を挟んで凹面部146−1、146−2とする凹凸面部である。凹面部146−1、146−2が樹脂逃がし部16の一例である。その他の構成は、第3の実施の形態と同一であるので同一符号を付し、その説明を割愛する。
<立壁部58の成形補正>
図36のAは、立壁部58にこて4(図35のAおよびB)を押し当てた状態を示している。図36のBは、本体部42の立壁部58の補正成形後の形状を示している。
このように、図35のAおよびBに示すこて4を用いれば、凹面部146−1、146−2側に可塑化した樹脂18が流れ込んで成形される。この結果、凸部62−1、62−2の頂部に樹脂18が移動して補正される。図37のAは、図36のBのXXXVIIA − XXXVIIA線断面を示している。図37のBは、図37のAのXXXVIIB − XXXVIIB線断面を示している。図37のCは、図37のAのXXXVIIC − XXXVIIC線断面を示している。
立壁部58の凸部62−1、62−2は、図37のBに二点鎖線で示すように、幅が広く高さが不足している場合には、凸部62−1、62−2の側縁側から突出側に樹脂18を凸部62−1、62−2の頂部側に移動させる成形をすればよい。このような成形補正すれば、凸部62−1、62−2は図37のAおよびBに示すように、樹脂18の移動により基準形状に補正成形される。
〔第6の実施の形態〕
図38のAは、第6の実施の形態に係る補正成形を示している。図38のBは、凸部とこての関係を示している。図38のCは、補正成形された成形部材を示している。
この実施の形態では、図38のAに示すように、成形部材2には反対方向に向かって形状補正が可能な二つの凸部148が含まれている。いずれの凸部148も突出長が小さく、いずれか一方または双方を補正する必要がある。
この場合、こて4には成形面12が形成されている。この成形面12には、複数の成形凸部として成形凸部150−1、150−2、150−3、150−4と成形凹部152−1、152−2、152−3が含まれている。つまり、交互に形成された成形凸部150−1、150−2、150−3、150−4と成形凹部152−1、152−2、152−3とで凹凸面部が形成されている。この場合、成形凹部152−1、152−2、152−3は既述の樹脂逃がし部16を形成している。
このこて4の成形面12は、図38のBに示すように、凸部148の被成形面に向けられている。こて4の背面側には電熱コイル104が設置されている。この電熱コイル104の電熱により、こて4は凸部148を溶解し、成形可能な温度に設定される。このこて4を矢印eの方向に移動させ、成形面12が凸部148に押し当てられる。
これにより、凸部148は図38のCに示す形状に補正成形される。図39のAおよびBは、凸部148の補正成形前および補正成形後の形状を示している。この補正成形では、図39のAに示すように、凸部148の滑らかな面部が図39のBに示すように、こて4の成形面12の凹凸形状により、凹凸面154に成形されている。この凹凸面154では複数の突出部154−1、154−2、154−3と窪み部156−1、156−2が生じている。つまり、窪み部156−1、156−2の生成により流動した樹脂18が突出部154−1、154−2、154−3側に流動し、原形状の高さに幅ΔXだけ樹脂18が増量されることにより、基準幅Wrefが得られている。
<第3ないし第6の実施の形態の効果>
(a) より汎用的なこて4を構成することができる。たとえば、発熱させない部位と、樹脂変形させるための発熱部位とに分割することができる。上記実施の形態では、こて部4−1とこて部4−2とをねじ固定で一体化しているが、こて部4−2を共通部材とし、こて部4−1の成形面12の形状を成形形状に合わせて準備し、多様な補正成形を行うことができる。
(b) こて部4−1は、長径凹部126を形成し、固定ねじ130により所望の位置に微調整して設定することができる。つまり、補正寸法をこて部4−1の位置調整によって増減させることができる。
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態では、熱変形による樹脂寸法の微調整について説明したが、超音波エネルギを形状補正に用いてもよいし、熱変形と超音波変形とを併用してもよい。
(2) 上記実施の形態では、携帯端末装置の本体部やリアケースの形状補正を例示したが、これに限定されない。形状補正の対象は樹脂成形部材であればよく、他の電子機器の部品であってもよい。
(3) 上記実施の形態では、形状補正の箇所として凸部や凹部を例示したが、その形状は庇形状、噛み合い形状、爪形状などの突き出した部分(つまり、凸部)、窪んだ部分(つまり、凹部)の何れであってもよく、嵌合する形状であればよい。
以上説明したように、電子機器、その製造方法および製造装置の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。