JP2014116457A - インダクタの製造方法、インダクタ、および複合回路素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い定格電流値を有する薄型のインダクタの大量生産を可能とする。
【解決手段】インダクタ1は、第1の層10と、第2の層20と、第3の30とを備える。第1の層10は、フェライト焼結体11を含む。第2の層20は、第1の層10上に形成され、コイル22、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によってコイル22の巻線間に充填された保護層23を含む。第3の層30は、フェライト焼結体31を含み、第2の層30に接着される。
【選択図】図4
【解決手段】インダクタ1は、第1の層10と、第2の層20と、第3の30とを備える。第1の層10は、フェライト焼結体11を含む。第2の層20は、第1の層10上に形成され、コイル22、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によってコイル22の巻線間に充填された保護層23を含む。第3の層30は、フェライト焼結体31を含み、第2の層30に接着される。
【選択図】図4
Description
本発明は、磁性体基板上に導電性材料からなる巻線パターン(コイル)が形成された構成を備えるインダクタに関する。また本発明は、当該インダクタの製造方法、および当該インダクタが半導体素子と一体化された複合回路素子に関する。
この種のインダクタとして、一対の磁性体基板により磁性体粉と熱硬化性樹脂からなるコンポジット磁性体が挟持され、当該コンポジット磁性体中にコイルが埋め込まれた構成を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなインダクタを製造するには、先ず未硬化状態のコンポジット磁性体シートでコイルを挟持したものを、さらに一対の磁性体基板で挟持する。この積層物を加熱および加圧することにより、コンポジット磁性体が巻線間に充填されるとともに硬化する。
インダクタが用いられる電子機器の小型化に伴い、高い定格電流値を有しつつ積層方向の寸法が0.5mm以下となるような薄型のインダクタが求められている。上記の製造方法は、一対のコンポジット磁性体シートでコイルを挟持する工程が必須であるため、積層方向の寸法縮小すなわち薄型化が困難であるとともに、大量生産に不向きである。
よって本発明は、高い定格電流値を有する薄型のインダクタの大量生産を可能とする技術を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第1の態様は、インダクタの製造方法であって、
フェライト焼結体を含む第1の層上に、少なくとも1つのコイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記少なくとも1つのコイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第2の層を形成する工程と、
フェライト焼結体を含む第3の層を、前記第2の層に接着する工程とを備える。
フェライト焼結体を含む第1の層上に、少なくとも1つのコイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記少なくとも1つのコイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第2の層を形成する工程と、
フェライト焼結体を含む第3の層を、前記第2の層に接着する工程とを備える。
このような方法によれば、コイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填することによって磁気飽和が生じにくくなり、定格電流値を高めることができる。また充填処理はスクリーン印刷によって行なわれることから、第2の層を非常に薄く形成することができる。さらに大量のコイルに対して一括して充填処理を行なうことができるため、大量生産に適している。
前記第2の層を熱硬化させた後に、金属磁性体を含む接着剤で前記第3の層を前記第2の層に接着する方法としてもよい。あるいは、前記第3の層を前記第2の層に接触させた後に、前記第2の層の熱硬化を行なうことにより、前記第3の層を前記第2の層に接着する方法としてもよい。
前者の場合、第3の層の第2の層に対する高い接着強度を確保することができる。後者の場合、第2の層に含まれるコイルと第3の層に含まれるフェライト焼結体との密着性が高まるため、インダクタンスを向上させることができる。また接着層が不要であることから、インダクタのさらなる薄型化が可能となる。
前記第1の層の前記フェライト焼結体上に巻線パターンを電解めっきで形成することにより、前記少なくとも1つのコイルが形成される方法としてもよい。あるいは、前記少なくとも1つのコイルは、前記第1の層の前記フェライト焼結体に金属箔を接着し、前記金属箔上に巻線パターンに対応する形状のレジストを印刷し、エッチングにより前記レジストに覆われていない前記金属箔を除去し、前記レジストを除去することにより形成される方法としてもよい。
前者の場合、第2の層に含まれるコイルと第1の層に含まれるフェライト焼結体との密着性が高まるため、インダクタンスを向上させることができる。また接着層が不要であることから、インダクタのさらなる薄型化が可能となる。後者の場合、比較的安価なプロセスによりコイルを形成することができ、製造コストの抑制に寄与する。またコイルを金属箔によって形成していることから、インダクタのさらなる薄型化が可能となる。
前記第1の層上に複数のコイルを形成し、前記第3の層を前記第2の層に接着した後に、切断により前記複数のコイル同士を分離することにより、それぞれが少なくとも1つのコイルを含む複数のインダクタを得る方法としてもよい。この方法は、インダクタの大量生産に適している。
このような方法により製造されたインダクタは、高い定格電流値を有しつつも、積層方向の寸法を0.5mm以下に抑える薄型化が可能である。したがって、上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第2の態様は、インダクタであって、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
前記第2の層に接着されたフェライト焼結体を含む第3の層とを備える。
フェライト焼結体を含む第1の層と、
コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
前記第2の層に接着されたフェライト焼結体を含む第3の層とを備える。
電子機器の小型化に伴い、搭載される複合回路素子への小型化の要求も高まっている。上記のインダクタは、高い定格電流値を有しつつも薄型化が可能であるため、複合回路素子が小型化されて、当該要求に応えることができる。したがって、上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第3の態様は、複合回路素子であって、
第1電極を有する半導体素子と、
前記半導体素子と一体化されたインダクタとを備え、
前記インダクタは、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
前記第2の層に接着されたフェライト焼結体を含む第3の層と、
前記第1の層における前記第2の層が形成されている側とは反対側に設けられ、前記コイルおよび前記第1電極と電気的に接続された第2電極とを備える。
第1電極を有する半導体素子と、
前記半導体素子と一体化されたインダクタとを備え、
前記インダクタは、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
前記第2の層に接着されたフェライト焼結体を含む第3の層と、
前記第1の層における前記第2の層が形成されている側とは反対側に設けられ、前記コイルおよび前記第1電極と電気的に接続された第2電極とを備える。
また上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第4の態様は、インダクタの製造方法であって、
フェライト焼結体を含む第1の層上に、第1コイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記第1コイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第2の層を形成する工程と、
フェライト焼結体を含む第3の層上に、第2コイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記第2コイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第4の層を形成する工程と、
熱硬化させた前記第2の層と前記第4の層とを接着し、前記第1コイルと前記第2コイルを電気的に接続する工程とを備える。
フェライト焼結体を含む第1の層上に、第1コイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記第1コイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第2の層を形成する工程と、
フェライト焼結体を含む第3の層上に、第2コイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記第2コイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第4の層を形成する工程と、
熱硬化させた前記第2の層と前記第4の層とを接着し、前記第1コイルと前記第2コイルを電気的に接続する工程とを備える。
このような方法によれば、第1の態様について説明したものと同様の効果に加え、第2の層および第4の層における単位面積当たりのコイルの巻き数を減ずることができる。例えば、第1コイルと第2コイルの巻き数を半分にしても、両者が電気的に接続されることにより、全体としてのコイルの巻き数を維持することができる。コイルの巻き密度を低くすることができるため、コア部分の面積を大きく確保してインダクタンスを向上させることができる。またコイルの線径(断面積)を大きくすることができるため、コイルを流れる電流に対する抵抗が下がり、発熱を抑制することができる。
第2の態様と同様にして、上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第5の態様は、インダクタであって、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
第1コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第1コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
フェライト焼結体を含む第3の層と、
第2コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第2コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第3の層上に形成された第4の層とを備え、
前記第2の層と前記第4の層が接着されるとともに、前記第2の層のコイルと前記第4の層のコイルが電気的に接続されている。
フェライト焼結体を含む第1の層と、
第1コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第1コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
フェライト焼結体を含む第3の層と、
第2コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第2コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第3の層上に形成された第4の層とを備え、
前記第2の層と前記第4の層が接着されるとともに、前記第2の層のコイルと前記第4の層のコイルが電気的に接続されている。
また第3の態様と同様にして、上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第6の態様は、複合回路素子であって、
第1電極を有する半導体素子と、
前記半導体素子と一体化されたインダクタとを備え、
前記インダクタは、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
第1コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第1コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
フェライト焼結体を含む第3の層と、
第2コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第2コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第3の層上に形成された第4の層と、
前記第1の層における前記第2の層が形成されている側とは反対側に設けられ、前記コイルおよび前記第1電極と電気的に接続された第2電極とを備え、
前記第2の層と前記第4の層が接着されるとともに、前記第2の層のコイルと前記第4の層のコイルが電気的に接続されている。
第1電極を有する半導体素子と、
前記半導体素子と一体化されたインダクタとを備え、
前記インダクタは、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
第1コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第1コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
フェライト焼結体を含む第3の層と、
第2コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第2コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第3の層上に形成された第4の層と、
前記第1の層における前記第2の層が形成されている側とは反対側に設けられ、前記コイルおよび前記第1電極と電気的に接続された第2電極とを備え、
前記第2の層と前記第4の層が接着されるとともに、前記第2の層のコイルと前記第4の層のコイルが電気的に接続されている。
本発明によれば、高い定格電流値を有する薄型のインダクタの大量生産を可能とすることができる。
添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
図1の(a)は、本発明の第1の実施形態に係るインダクタ1を上方から見た外観を示す斜視図である。インダクタ1は、下基板10、コイル形成層20、および上基板30を備えている。それぞれ矩形板状を呈する下基板10と上基板30の間にコイル形成層20が形成されている。下基板10、コイル形成層20、および上基板30は、それぞれ本発明の第1の層、第2の層、および第3の層に対応している。
図1の(b)は、上記のインダクタ1を下方から見た外観を示す斜視図である。下基板10の下面10bには、銅箔からなる電極パターン16a、16bが形成されている。
図1の(c)は、上記のインダクタ1から上基板30を取り除き、コイル形成層20を露出させた状態を示している。下基板10の上面10aには、金属箔としての銅箔からなるコイル22が形成されている。巻線パターンの両端は端子22a、22bとされ、それぞれ電極パターン16a、16bと電気的に接続されている。
コイル22は、保護層23に覆われている。保護層23は、金属磁性体としての磁性金属粉と、熱硬化性樹脂とを含むコンポジット材料が熱硬化されたものである。コンポジット材料は、コイル22の巻線間に充填されている。
次に図2から図4を参照しつつ、上記のインダクタ1の製造方法を説明する。
先ず図2の(a)から(c)に示すように、磁性体としてのフェライト焼結体11の上面11aと下面11bにそれぞれ銅箔12a、12bが接着される。接着は、磁性金属粉を含む接着剤により行なわれる。図2の(b)は、図2の(a)と(c)における線IIB−IIBに沿う断面を示している。符号13a、13bは、それぞれ銅箔12a、12bとフェライト焼結体11との間に形成された接着層を示している。
次に、図2の(d)から(f)に示すように、周知の方法で挿通孔14が形成される。図2の(e)は、図2の(d)と(f)における線IIE−IIEに沿う断面を示している。挿通孔14は、フェライト焼結体11、銅箔12a、12b、および接着層13a、13bの積層方向に沿って延び、これらを貫通するように形成される。
次に、図2の(g)から(i)に示すように、周知の方法で挿通孔14に銅ペースト15が充填される。図2の(h)は、図2の(g)と(i)における線IIH−IIHに沿う断面を示している。この工程により、銅箔12a、12bが電気的に接続される。
次に、図3の(a)から(c)に示すように、銅箔12a上にコイルの巻線パターンに対応する形状のレジスト21aが形成され、銅箔12b上に電極パターン16a、16bに対応する形状のレジスト21bが形成される。図3の(b)は、図3の(a)と(c)における線IIIB−IIIBに沿う断面を示している。レジスト21a、21bは、それぞれ印刷により形成される。
次に、図3の(d)から(f)に示すように、周知の方法で銅箔12a、12bのエッチングが行なわれる。図3の(e)は、図3の(d)と(f)における線IIIE−IIIEに沿う断面を示している。レジスト21a、21bが形成された箇所を除いて銅箔12a、12bが除去され、当該部分において接着層13a、13bが露出する。
次に、図3の(g)から(i)に示すように、レジスト21a、21bが除去される。図3の(h)は、図3の(g)と(i)における線IIIH−IIIHに沿う断面を示している。この工程により、フェライト焼結体11を含む下基板10が得られる。
接着層13aの上面は、下基板10の上面10aとなる。当該上面10a上には、レジスト21aの除去により、所定の巻線パターン形状を有するコイル22が形成される。接着層13bの下面は、下基板10の下面10bとなる。当該下面10b上には、レジスト21bの除去により、所定の形状を有する電極パターン16a、16bが形成される。コイルの端子22a、22bは、それぞれ銅ペースト15を介して電極パターン16a、16bと電気的に接続される。
次に、図4の(a)から(c)に示すように、コイル22を覆う保護層23が形成される。具体的には、上述のコンポジット材料がスクリーン印刷によりコイルを覆うように塗布され、コイル22の巻線間に充填される。続いて当該コンポジット材料が熱硬化処理に供され、コイル22および保護層23を含むコイル形成層20が得られる。図4の(b)は、図4の(a)と(c)における線IVB−IVBに沿う断面を示している。
次に、図4の(d)から(f)に示すように、上基板30がコイル形成層20に接着される。上基板30は、フェライト焼結体31上に接着層32が形成されたものである。接着層32は、磁性金属粉を含む接着剤である。図4の(e)は、図4の(d)と(f)における線IVE−IVEに沿う断面を示している。
以上の工程により、フェライト焼結体11を含む下基板10と、コイル22および保護層23を含むコイル形成層20と、フェライト焼結体31を含む上基板30とを備えるインダクタ1が得られる。コイル形成層20は下基板10上に形成されており、上基板30は、コイル形成層20に接着されている。保護層23は、金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料が、スクリーン印刷によってコイル22の巻線間に充填されることにより形成されている。
次に図5を参照しつつ、上記の構成を有する複数個のインダクタ1を得るための方法を説明する。
先ず図2の(a)から(c)を参照して説明した工程により、必要個数のコイル22を形成可能な面積を有するフェライト焼結体11に銅箔12a、12bが接着される。続いて図2の(d)から(f)を参照して説明した工程により、必要個数のコイル22の端子22a、22bの数に対応する個数の挿通孔14が形成される。続いて図2の(g)から(i)を参照して説明した工程により、当該挿通孔14に銅ペースト15が充填される。
次に図3の(a)から(c)を参照して説明した工程により、必要個数のコイル22の数だけ、銅箔12a上に巻線パターンに対応する形状のレジスト21aが形成され、銅箔12b上に電極パターン16a、16bに対応する形状のレジスト21bが形成される。続いて図3の(d)から(f)を参照して説明した工程により、レジスト21a、21bが形成された箇所を除いて銅箔12a、12bがエッチング除去される。続いて図3の(g)から(i)を参照して説明した工程により、レジスト21a、21bが除去される。
次に、図4の(a)から(c)を参照して説明した工程により、下基板10上に形成された必要個数のコイル22の全てを覆うように、上述のコンポジット材料がスクリーン印刷によって塗布される。続いて当該コンポジット材料が熱硬化処理に供され、コイル形成層20が形成される。
次に、図4の(d)から(f)を参照して説明した工程により、形成されたコイル22の全てを覆うことが可能な面積を有する上基板30がコイル形成層20に接着される。続いて図5に示す一点鎖線に沿って周知の方法で切断がなされることにより、コイル22同士が分離される。これにより、それぞれが少なくとも1つのコイル22を有する複数個のインダクタ1を一度に得ることができる。
図6は、上記の製造方法により得られたインダクタ1の直流重畳特性の測定結果を示すグラフである。比較例として、フェライト粉と樹脂のコンポジット材料をコイルの保護層に用いた従来のインダクタの特性を併記する。
インダクタは、コイルに流す電流を大きくするほど、磁気飽和によりインダクタンスが低下していく。グラフ中に示す破線は、初期インダクタンスが30%低下した値を示しており、当該値に至る電流値が定格電流とされる。すなわちインダクタンスが低下しにくい特性を有するインダクタには、より多くの電流を流すことができる。
図6に示す測定結果より、本実施形態に係るインダクタ1は、比較例に係るインダクタよりも磁気飽和が生じにくい特性を有していることが判る。インダクタ1の初期インダクタンスが30%低下する電流値は、比較例に係るインダクタの1.5倍に達している。コイル22の保護層に磁性金属粉と熱可塑性樹脂のコンポジット材料を用いることにより、定格電流の大幅な向上が得られたことが判る。
また本実施形態においては、スクリーン印刷によってコンポジット材料をコイル22の巻線間に充填することにより保護層23を形成しているため、コイル形成層20を非常に薄く形成することができる。したがって上記のような高い定格電流値を有していながらも、積層方向の寸法が0.5mm以下となるような薄型のインダクタを得ることができる。さらにコイル22自体も銅箔により形成されているため、インダクタの薄型化に寄与している。
またコンポジット材料をコイル22の巻線間に充填するにあたり、スクリーン印刷を用いているため、図5を参照して説明したように、大量のコイル22に対して一括して保護層23を形成することができるため、大量生産に適している。
本実施形態に係るインダクタ1は、スイッチング電源やDC/DCコンバータ等のエネルギーを変換する回路の一部に用いられうる。具体的には、図7の(a)に示すように、スイッチング機能や電圧変換機能を有する半導体素子60とインダクタ1が一体化されて、複合回路素子100を構成する。図7の(b)は、半導体素子60とインダクタ1が分離された状態を示す斜視図である。
半導体素子60には、その上面60aから側面60bにかけて延びるように、本発明の第1電極としての接点電極60c、60dが設けられている。これらは銀ペーストの塗布および焼付けにより形成されうる。一方、図1の(b)に示したように、インダクタ1の下基板10の下面10b、すなわちコイル形成層20が形成されている側とは反対側には、本発明の第2電極としての電極パターン16a、16bが設けられている。半導体素子60とインダクタ1の一体化は、接点電極60b、60cが、それぞれ電極パターン16a、16bと電気的に接続されるように行なわれる。
複合回路素子100は、半導体素子60の下面に設けられた各種端子(図示せず)を回路基板(図示せず)に設けられた接点端子と電気的に接続することにより、当該回路基板上に実装される。半導体素子60の側面に設けられた接点電極60c、60dを回路基板上に形成された配線パターンにはんだ付けすることにより、インダクタ1と回路基板上に形成された回路との電気的接続がなされる。接点電極60c、60dを半導体素子の下面まで延ばし、上記各種端子とともに回路との電気的接続がなされる構成としてもよい。
電子機器の小型化に伴い、搭載される複合回路素子への小型化の要求も高まっている。上述のように本実施形態に係るインダクタ1は、高い定格電流値を有しつつも薄型化が可能であるため、複合回路素子100が小型化されて、当該要求に応えることができる。
次に図8を参照しつつ、本発明の第2の実施形態に係るインダクタ1Aについて説明する。インダクタ1Aは、第1の層としての下基板10Aおよび第3の層としての上基板30Aが接着層13a、13b、32を備えていない点において、第1の実施形態に係るインダクタ1と相違する。
本実施形態においては、先ずフェライト焼結体11の表面のうち、電極パターン16a、16b、およびコイル22の形成位置以外をマスクで覆い、電解めっきを行なうことにより、銅箔からなる電極パターン16a、16b、およびコイル22がフェライト焼結体11上に形成される。挿通孔14の形成および銅ペースト15の充填については、インダクタ1の製造方法と同様にして行なわれる。
また本実施形態においては、コイル22の巻線間に充填されたコンポジット材料を熱硬化する前に、フェライト焼結体31のみからなる上基板30Aを保護層23に接触させる。この状態で熱硬化処理を行なうことにより、上基板30Aがコイル形成層20に対して接着される。
このような構成によれば、コイル22とフェライト焼結体11、31の間に接着層13a、31が介在していないため、両者の密着性が高まることでインダクタンスの値を大きくすることができる。また接着層13a、13b、31が存在しないことにより、さらなる薄型化を可能にしている。
なお第1の実施形態に係るインダクタ1のコイル22を形成するための手法、すなわちフェライト焼結体11に銅箔12a、12bを接着し、エッチングにより電極パターン16a、16b、およびコイル22を形成する方法は、コストの面において優位性がある。
このようにして得られたインダクタ1Aは、図7に示した半導体素子60と一体化されることにより、複合回路素子を構成しうる。
次に図9を参照しつつ、本発明に係る第3の実施形態に係るインダクタ1Bについて説明する。インダクタ1Bは、2つのコイル形成層20、40を備えている点において、上記の実施形態に係るインダクタ1、1Aと相違する。すなわちインダクタ1Bは、下基板10、下コイル形成層20A、上基板30、および上コイル形成層40を備えている。下基板10、下コイル形成層20A、上基板30、および上コイル形成層40は、それぞれ本発明における第1の層、第2の層、第3の層、および第4の層に対応する。
第1の実施形態に係るインダクタ1と同様にして、フェライト焼結体11を含む下基板10上に、本発明の第1コイルとしての下コイル22Aが形成される。また第1の実施形態に係るインダクタ1と同様にして、磁性金属粉と熱硬化性樹脂のコンポジット材料を下コイル22Aの巻線間に充填し、熱硬化処理を行なうことにより保護層23Aが形成される。
一方、フェライト焼結体31上に接着層32を介して接着された銅箔に対し、第1の実施形態に係るインダクタ1と同様にしてエッチング処理がなされることにより、本発明の第2コイルとしての上コイル42が上基板30上に形成される。また第1の実施形態に係るインダクタ1と同様にして、磁性金属粉と熱硬化性樹脂のコンポジット材料を上コイル42の巻線間に充填し、熱硬化処理を行なうことにより保護層43が形成される。
次に、下コイル形成層20A上に接着層50が形成される。接着層50は、磁性金属粉を含む接着剤からなる。続いて接着層50の一部に挿通孔が形成され、当該部分に銅ペースト51が充填される。
次に、下コイル形成層20Aと上コイル形成層40が、接着層50を介して接着される。このとき下コイル22の接続部22cと上コイル42の接続部44c、および下コイル22の接続部22dと上コイルの接続部42dが、銅ペースト51を介して電気的に接続される。これにより、電極パターン16aからコイル22の端子22aを経由して外側から内側へ巻かれ、接続部22cから接続部42cに接続され、接続部42cから外側に巻かれて接続部42dに至り、接続部42dから接続部22dを経由して電極パターン16bに接続される一連の経路を有するコイルが形成される。
このような構成によれば、コイル形成層ごとの単位面積当たりのコイルの巻き数を減ずることができる。例えば、図8に示すインダクタ1Aのコイル22の巻き数は4である。一方、インダクタ1Bの下コイル22Aと上コイル42の巻き数はそれぞれ2であるが、下コイル22Aと上コイル42が電気的に接続されることにより、全体として巻き数4のコイルが実現されている。コイルの巻き密度を低くすることができるため、図9の中央において破線で囲まれた領域、すなわちコア部分の面積を大きく確保することができる。したがって同じ巻き数ながらインダクタンスの値を大きくすることができる。またコイルの線径すなわち銅箔パターンの断面積を大きくすることができるため、コイルを流れる電流に対する抵抗が下がり、発熱を抑制することができる。
このようにして得られたインダクタ1Bは、図7に示した半導体素子60と一体化されることにより、複合回路素子を構成しうる。
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
第1の実施形態に係るインダクタ1において、接着層13a、13bが省略される構成としてもよい。すなわち、電極パターン16a、16b、およびコイル22が、電解めっきを用いてフェライト焼結体11上に直接形成される構成としてもよい。
第1の実施形態に係るインダクタ1において、接着層31が省略される構成としてもよい。すなわち、コイル22を覆う未硬化状態のコンポジット材料に直接フェライト焼結体31を接触させ、その後熱硬化処理を行なうことにより、保護層23とフェライト焼結体31が接着される構成としてもよい。
第2の実施形態に係るインダクタ1Aにおいて、インダクタ1における接着層13a、13bが設けられる構成としてもよい。すなわち銅箔を接着層13a、13bを介してフェライト焼結体11に接着し、エッチング処理を行なうことにより、電極パターン16a、16b、およびコイル22が形成される構成としてもよい。
第2の実施形態に係るインダクタ1Aにおいて、インダクタ1における接着層32が設けられる構成としてもよい。すなわち、コイル22を覆うコンポジット材料が熱硬化された後に、接着層32を有する上基板30がコイル形成層20に接着される構成としてもよい。
第3の実施形態に係るインダクタ1Bにおいて、接着層13a、13b、32が省略される構成としてもよい。すなわち電解めっきを用いて、電極パターン16a、16b、および下コイル22Aがフェライト焼結体11上に直接形成され、上コイル42がフェライト焼結体31上に直接形成される構成としてもよい。
第3の実施形態に係るインダクタ1Bにおいて、接着層50が省略される構成としてもよい。すなわち、下コイル22Aを覆う未硬化状態のコンポジット材料と、上コイル42を覆う未硬化状態のコンポジット材料を直接接触させ、その後熱硬化処理を行なうことにより、下コイル形成層20Aと上コイル形成層40が接着される構成としてもよい。この場合、銅ペースト51は不要である。
第3の実施形態に係るインダクタ1Bにおいて、図9の破線で囲まれたコア部分には、フェライト焼結体からなるコアが配置される構成としてもよい。
全ての実施形態において、電極パターン16a、16b、およびコイル22(下コイル22A、上コイル42)の形状および数は、インダクタ1(1A、1B)の仕様に応じて適宜に定められうる。
上記の説明における「上」「下」という表現は、図面を参照した説明において便宜上用いたに過ぎず、製品の使用時における方向を限定する意図ではない。「上」および「下」は、それぞれ電極パターン16a、16bから遠い側、および近い側と言い換えることができる。
1、1A、1B:インダクタ、10、10A:下基板、11:フェライト焼結体、12a:銅箔、13a:接着層、16a、16b:電極パターン、20:コイル形成層、20A:下コイル形成層、21a:レジスト、22:コイル、22A:下コイル、23、23A:保護層、30、30A:上基板、31:フェライト焼結体、32:接着層、40:上コイル形成層、42:上コイル、43:保護層、50:接着層、60:半導体素子、60b、60c:接点電極、100:複合回路素子
Claims (11)
- フェライト焼結体を含む第1の層上に、少なくとも1つのコイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記少なくとも1つのコイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第2の層を形成する工程と、
フェライト焼結体を含む第3の層を、前記第2の層に接着する工程とを備える、インダクタの製造方法。 - 前記第2の層を熱硬化させた後に、金属磁性体を含む接着剤で前記第3の層を前記第2の層に接着する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記第3の層を前記第2の層に接触させた後に、前記第2の層の熱硬化を行なうことにより、前記第3の層を前記第2の層に接着する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記第1の層の前記フェライト焼結体上に巻線パターンを電解めっきで形成することにより、前記少なくとも1つのコイルが形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記少なくとも1つのコイルは、
前記第1の層の前記フェライト焼結体に金属箔を接着し、
前記金属箔上に巻線パターンに対応する形状のレジストを印刷し、
エッチングにより前記レジストに覆われていない前記金属箔を除去し、
前記レジストを除去することにより形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記第1の層上に複数のコイルを形成し、
前記第3の層を前記第2の層に接着した後に、切断により前記複数のコイル同士を分離することにより、それぞれが少なくとも1つのコイルを含む複数のインダクタを得る、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。 - フェライト焼結体を含む第1の層上に、第1コイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記第1コイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第2の層を形成する工程と、
フェライト焼結体を含む第3の層上に、第2コイルを形成する工程と、
スクリーン印刷によって、前記第2コイルの巻線間に金属磁性体および熱硬化性樹脂のコンポジット材料を充填して第4の層を形成する工程と、
熱硬化させた前記第2の層と前記第4の層とを接着し、前記第1コイルと前記第2コイルを電気的に接続する工程とを備える、インダクタの製造方法。 - フェライト焼結体を含む第1の層と、
コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
前記第2の層に接着されたフェライト焼結体を含む第3の層とを備える、インダクタ。 - フェライト焼結体を含む第1の層と、
第1コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第1コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
フェライト焼結体を含む第3の層と、
第2コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第2コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第3の層上に形成された第4の層とを備え、
前記第2の層と前記第4の層が接着されるとともに、前記第2の層のコイルと前記第4の層のコイルが電気的に接続されている、インダクタ。 - 第1電極を有する半導体素子と、
前記半導体素子と一体化されたインダクタとを備え、
前記インダクタは、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
前記第2の層に接着されたフェライト焼結体を含む第3の層と、
前記第1の層における前記第2の層が形成されている側とは反対側に設けられ、前記コイルおよび前記第1電極と電気的に接続された第2電極とを備える、複合回路素子。 - 第1電極を有する半導体素子と、
前記半導体素子と一体化されたインダクタとを備え、
前記インダクタは、
フェライト焼結体を含む第1の層と、
第1コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第1コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第1の層上に形成された第2の層と、
フェライト焼結体を含む第3の層と、
第2コイル、および金属磁性体と熱硬化性樹脂のコンポジット材料がスクリーン印刷によって当該第2コイルの巻線間に充填された保護層を含み、前記第3の層上に形成された第4の層と、
前記第1の層における前記第2の層が形成されている側とは反対側に設けられ、前記コイルおよび前記第1電極と電気的に接続された第2電極とを備え、
前記第2の層と前記第4の層が接着されるとともに、前記第2の層のコイルと前記第4の層のコイルが電気的に接続されている、複合回路素子。
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