JP2014100700A - 汚染土壌の除染方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 土地の制限を受けることなく簡単且つ安価に少なくとも汚染土壌表層部の有害物質量を低減させる汚染土壌の除染方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも表層部が有害物質で汚染された汚染土壌に重水素硫酸水溶液を散布する水溶液散布工程S1、重水素硫酸水溶液を散布した表層部に水を散布する散水工程S2、水を散布した表層部を乾燥させる乾燥工程S3を有する。散水工程S2及び乾燥工程S3を繰り返し行うことで、有害物質を汚染土壌の表層部から深層部に沈降させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、汚染土壌の除染方法に関する。
放射性物質、特に放射性セシウムの農地土壌における除染技術として、非特許文献1に記載の如きものが知られている。例えば、表土の剥ぎ取りや、水による土壌撹拌・除去などの技術が挙げられている。しかし、これらの方法は、土壌を除去することが困難な山林等の土地には適用し難く、また、除去作業に重機等の大型機械器具が必要となりコスト高となっていた。さらに、除去した汚染土壌の処理の問題も生じる。
農林水産省 平成23年9月14日 「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)について」 http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110914
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、土地の制限を受けることなく簡単且つ安価に少なくとも汚染土壌表層部の有害物質量を低減させる汚染土壌の除染方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る汚染土壌の除染方法の特徴は、少なくとも表層部が有害物質で汚染された汚染土壌に重水素硫酸水溶液を散布する水溶液散布工程、前記重水素硫酸水溶液を散布した表層部に水を散布する散水工程、前記水を散布した表層部を乾燥させる乾燥工程を有し、前記散水工程及び前記乾燥工程を繰り返し行うことで、前記有害物質を前記汚染土壌の表層部から深層部に沈降させることにある。
上記構成によれば、まず、汚染土壌表層部に重水素硫酸水溶液を散布し、次に、重水素硫酸水溶液を散布した表層部に水を散布する。ここで、重水素硫酸水溶液の凝集効果により土壌の単粒が団粒化し、水散布後の乾燥工程により水が気化して土壌中には隙間が生じる。尚、水は気化(蒸発)するが、重水素硫酸(D2SO4)は気化せず、上述の凝集効果に寄与しなかった重水素硫酸は、表層部に残存している。そこで、再度水を散布すると、残存する重水素硫酸は有害物質と共に先の工程により生じた隙間を介してより下層へ移動し、下層でも同様に単粒の団粒化を生じさせる。そして、乾燥させることで、水が気化し下層においても隙間が生じる。従って、散水工程と乾燥工程を繰り返し行うことで、残存する重水素硫酸(D2SO4)を有害物質と共に除々に下層へ移動させると共に土壌の団粒化を促進させ、有害物質の通り道となる隙間を深層部まで延長させることができる。このように、水溶液散布工程の後に、散水工程及び乾燥工程を繰り返し行うだけでよいので、除染作業は土地の制限を受けることなく簡単に行うことができ、土壌を除去することなく、表層部の有害物質量を減少させることができる。
ここで、前記水溶液散布工程において、重水素硫酸が前記汚染土壌1m3に対して0.0003体積%以上0.002体積%以下となるように前記重水素硫酸を散布することが望ましい。重水素硫酸が土壌に対して0.0003体積%未満の場合、上述の凝集効果による土壌の団粒化が十分に促進されない。他方、重水素硫酸が土壌に対して0.002体積%を超えても、上記凝集効果はあまり向上せず、コスト高となってしまう。
前記水溶液散布工程において、前記重水素硫酸水溶液を加温した状態で散布するとよい。発明者らに実験によれば、重水素硫酸水溶液を加温した状態で散布した場合、常温に比べ、より多くの有害物質が汚染土壌から移動(流出)することが判明した。これは、上記重水素硫酸水溶液の凝集効果が常温に比べ促進されているものと考えられる。従って、上記構成によれば、残存する重水素硫酸によってより多くの有害物質を下層へ移動させることが可能となる。
さらに、前記散水工程において、前記水は熱湯であることが望ましい。発明者らの実験によれば、重水素硫酸水溶液を散布した土壌を加温した状態にすることで、汚染土壌からさらに多くの有害物質が汚染土壌から移動(流出)することが判明した。従って、上記構成によれば、重水素硫酸水溶液を散布した後に熱湯を散布することで、残存する重水素硫酸によってさらに多くの有害物質を下層へ移動させることができる。
また、前記乾燥工程の後に、乾燥させた表層部に前記重水素硫酸水溶液を再度散布する水溶液再散布工程をさらに有するようにするとよい。上述のように、凝集効果に寄与しなかった重水素硫酸は気化せず表層部に残存するが、その残存量は次第に減少する。そのため、乾燥工程の後に重水素硫酸水溶液を再度散布することで、重水素硫酸を補充し、さらに深層部での土壌の団粒化を促進させて、より深く有害物質を沈降させることができる。
前記水溶液散布工程を降雪前に行い、この水溶液散布工程直後の散水工程を前記表層部に積雪した雪の雪解け水により行うようにしても構わない。この場合、重水素硫酸水溶液を散布した後に人為的に散水する必要がないばかりか、数回にわたって散水したのと同様に除々に土壌の凝集効果が働いて浸透性が向上する。
また、前記散水工程を前記表層部に降雨した雨水により行うようにしてもよい。人為的に散水する必要がなく、作業負担が軽減でき、より簡単に除染作業を行うことができる。しかも、乾燥工程を自然乾燥とすれば、さらに作業が簡便となる。
前記有害物質は、例えば放射性セシウムである。上述の重水の凝集効果により、表層部の放射性セシウムを水と共に深層部へ沈降させることができるので、土壌を除去することなく、空間線量を簡単に低下させることができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る汚染土壌の除染方法の他の特徴は、有害物質で汚染された汚染土壌と重水素硫酸水溶液とを混合する混合工程と、この混合物を所定時間経過後に脱水する脱水工程とを有し、前記脱水工程により前記汚染土壌から前記重水素硫酸水溶液へ抽出された前記有害物質を前記混合物から分離することにある。
発明者らの実験によれば、汚染土壌と重水素硫酸水溶液とを混合した混合物では、所定時間経過後、有害物質の多くが汚染土壌から重水素硫酸水溶液へ移動(流出)することが判明した。これは、汚染土壌と重水素硫酸水溶液の混合により土壌に隙間が生じ、その隙間を介して有害物質が水溶液中へ流出していることと考えられる。従って、上記構成によれば、汚染土壌から有害物質を重水素硫酸水溶液を介して分離回収でき、汚染土壌を効率よく洗浄することができる。
係る場合、前記混合工程の後に、前記混合物を前記所定時間加熱する加熱工程をさらに有することが望ましい。発明者らの実験によれば、常温に比べ、高温時の方がより多くの有害物質が移動(流出)していることが判明した。従って、上記構成によれば、さらに多くの有害物質を分離でき、洗浄効率(除染効率)が向上する。
上記本発明に係る汚染土壌の除染方法の特徴によれば、土地の制限を受けることなく簡単且つ安価に少なくとも汚染土壌表層部の有害物質量を低減させることが可能となった。
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
本発明に係る汚染土壌の除染方法の工程を示すフロー図である。 各工程における土壌の状態を説明する図であり、(a)は溶液散布工程、(b)は散水工程、(c)は乾燥工程、(d)は(c)の後に再度散水工程を行った状態、(e)は(d)の後に乾燥工程を行った状態を示す。 水分子酸素原子間最近接距離(3.2A)における重水濃度と強度との関係を示すグラフである。 重水素硫酸溶液による土壌中における凝集効果を説明する図であり、(a)は重水素硫酸溶液の散布前、(b)は重水素硫酸溶液の散布後の状態を示す。 粒度試験の結果を示すグラフである。 本発明に係る重水素硫酸水溶液を加えた常温の試験土壌と加温した状態の試験土壌における放射線量を相対比較した結果を示すグラフであり、(a)は土壌の比較結果、(b)は液体成分の比較結果を示す。 重水素硫酸水溶液を加え加温した状態の試験土壌から抽出した液体成分の放射線量の時間変化を示すグラフであり、(a)はセシウム134、(b)はセシウム137を示す。 水を加え加温した試験土壌と重水素硫酸水溶液を加え加温した試験土壌から抽出した液体成分の放射線量の測定結果を示すグラフであり、(a)は土壌1gあたりのセシウム134、(b)は土壌1gあたりのセシウム137、(c)は液体成分1mlあたりのセシウム134、(d)は液体成分1mlあたりのセシウム137を示す。 水を加え加温した試験土壌と重水素硫酸水溶液を加え加温した試験土壌から抽出した液体成分の放射線量を相対比較した結果を示すグラフであり、(a)はセシウム134、(b)はセシウム137の結果を示す。 水を加えた常温の試験土壌と重水素硫酸水溶液を加えた常温の試験土壌における放射線量を相対比較した結果を示すグラフであり、(a)は土壌の比較結果、(b)は液体成分の比較結果を示す。 希硫酸を加え加温した試験土壌と重水素硫酸水溶液を加え加温した試験土壌における放射線量を相対比較した結果を示すグラフであり、(a)は土壌の比較結果、(b)は液体成分の比較結果を示す。
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
[汚染土壌の概要]
本発明に係る汚染土壌の除染方法は、例えば、図2(a)に示すように、土壌1の表層部2上(地表GL)に分布した有害物質としての放射性セシウムCsを、表層部2の土壌を除去することなく、水Wを介して土壌1の表層部2から深層部3まで沈降させる。なお、深層部3とは、例えば、作物・植栽深さより深い部分を指す。
[除染工程の概要]
この除染方法は、図1,2に示すように、表層部2が放射性セシウムCsで汚染された土壌1の表層部2に重水素硫酸水溶液ALを散布する水溶液散布工程S1と、重水素硫酸水溶液ALを散布した表層部2に水Wを散布する散水工程S2と、水Wを散布した表層部2を乾燥させる乾燥工程S3とからなる。散水工程S2は、例えば、人為的に適宜期間をおいて行われる。また、乾燥工程S3は、自然乾燥により行う。
[重水素硫酸水溶液の製法]
本実施形態において、上述の重水素硫酸水溶液ALは、例えば、重水素硫酸:水を体積比で1:9で混合して作製される。また、この重水素硫酸水溶液のpHは1.0〜2.5の範囲内で調整される。散水工程後の土壌において、土壌1m3あたりの重水素濃度を0.0003体積%〜0.002体積%とすることができる。なお、後述する土壌に対する含有率となるように、例えば水で30倍以上100倍以下に希釈してもよい。
[重水素硫酸水溶液の効果]
ここで、図3に、水分子酸素原子間最近接距離(3.2A)における重水濃度と強度との関係を対数にて示す。同図に示すように、土壌1m3に対する重水濃度0.0003体積%以上0.002体積%以下の範囲内では、最も酸素原子間の距離が接近し、水分子間の相互作用(分子間力)が強いと考えられる。0.0003体積%未満では、相互作用が低下し後述する凝集効果が発現しにくい。他方、0.002体積%を超えても、相互作用に変化が大差はなく凝集効果に大差がない。なお、図3は、重水(D2O)濃度に関するグラフであるが、重水素硫酸(D2SO4)においても同様であると推測される。
[凝集効果]
ところで、土壌1には、図4(a)に示す如く、単粒1aと団粒1bとが存在する。また、団粒1bは単粒1aが固まったものである。土壌は、経年経過等によって単粒1aが集積、密集して、隙間が少なく透水性、通気性が低下する(単粒構造)。この状態では、雨水等が土壌1の深層部3へ浸透せず、放射性セシウムCsも表層部2に分布した状態が続く。
このような土壌に重水素硫酸水溶液ALを表層部2に散布すると、図4(b)に示すように、上述の水分子間の相互作用によって、単粒1aが互いに引き付けられて凝集して団粒1bが形成される。この団粒化により、同図の如く、団粒1b間に隙間4が生成され、透水性、通気性が向上する(団粒構造)。その結果、放射性セシウムCsは表層部2から深層部3へ沈降(移動)することとなる。よって、土壌1の表層部2の放射性セシウムCsが減少し、地表近傍の空間線量(放射線量)を低減させることができる。
[検証実験]
発明者は、上記効果を検証するために各種実験を行った。
1)透水性試験
試験土壌に対し、重水素硫酸の原液を水で30倍に希釈した水溶液を0.5l/m2上散布した部分を散布部分と、同土壌に同量の水を散布した部分と無散布部分とし、一定期間、PH及び透水性(mm/h)を測定した。
Figure 2014100700
表1に示すように、散布から1月経過後にいずれにも散水した状態では、散布部分及び無散布部分のいずれでも透水性は向上したが、散布部分の方がより透水性が高い。これは、上述の重水素硫酸による凝集効果により土壌の団粒化が生じ隙間が多く形成しているためと考えられる。
また、散布から2月経過後にいずれも散水せず乾燥した状態では、1月経過後に比べ、散布部分及び無散布部分のいずれでも透水性は大幅に向上したが、散布部分の方がより透水性が高い。これは、乾燥状態はもともと含水量が少ないため透水性が高くなり、且つ、散布部分はさらに重水素硫酸による凝集効果により土壌の団粒化が生じ隙間が多く形成しているため、さらに透水性が高くなると考えられる。
2)粒度試験(土質調査)
土壌に対し重水素硫酸水溶液を散布していない処理前の土壌試料と、容積(水+土壌試料)1000ccに対し希釈倍率50倍及び100倍の重水素硫酸水溶液を散布した散布後の土壌試料1,2について、それぞれ粒度試験を実施した。なお、粒度試験(沈降分析)は、沈降理論(Stokes)に基づいて行われている方法であり、試料と水とを分散させた後に時間〜沈降量を測定するものである。縦軸に透過質量百分率(%)、横軸に粒径(mm)を示す。
図5に示すように、処理前の土壌試料では、粒径が0.008mm以下の土壌粒子が約40%存在し、粒径0.005mm未満の粘土分が多く存在していた。他方、重水素硫酸水溶液を散布した土壌試料では、いずれも粒径が0.008mm以下の土壌粒子が約5%程度に大幅に減少し、粒径0.005mm未満の粘土分は3〜4%程度となった。そして、粒径が0.008mm〜0.1mmの範囲内の土壌粒子が大幅に増加した。このことから、重水素硫酸水溶液を散布することで、重水素硫酸水溶液の凝集効果により粒径の小さいものが凝集されて粒径のより大きい粒子となり、粒子間に隙間が生成されると考えられる。なお、試験結果から希釈倍率による大きな差はなく、希釈倍率の高い重水素硫酸水溶液を用いる方がより経済的である。
[除染工程の詳細説明]
次に、除染方法の各工程について、図2を参照しながら詳しく説明する。
まず、図2(a)に示すように、例えば、重水素硫酸水溶液を土壌1m3当たり50cc散布し、表層部2の上層部2aに重水素硫酸DSを分布させる(水溶液散布工程S1)。次に、同図(b)に示すように、表層部2に水Wを散布する(散水工程S2)。散水量は、表層部2の水分の飽和状態(含水100%)となる量とする。これにより、土壌1m3あたりの重水素濃度を0.0003体積%〜0.002体積%とし、上述の重水素硫酸の凝集効果によって、表層部2の上層部2aで図4(b)に示す如き団粒化が生じる。
次に、図2(c)に示すように、表層部2を自然乾燥させる(乾燥工程(S3))。これにより、水Wが気化して上層部2a中に隙間が生じる。一方、凝集効果に寄与しなかった重水素硫酸DSは気化することなく上層部2aに残存する。そして、同図(d)の如く、再度散水して表層部2の水分を飽和状態(含水100%)とする。これにより、残存した重水素硫酸DSは下層部2bへ浸透すると共に先の散水工程と同じく土壌の団粒化を促進させる。また、放射性セシウムCsは、水Wにより先の散水工程S2及び乾燥工程S3により生成された隙間をつたって、図(e)の如く下層部2bへ沈降する。その後、再度乾燥させることで、下層部2bにも重水素硫酸DSの凝集効果により隙間が生成される。このように、散水工程及び乾燥工程を繰り返し行うことで、重水素硫酸DSが徐々に深層部3に向かって浸透すると共に隙間を生成する。そして、放射性セシウムCsは順次形成される隙間をつたって表層部2から深層部3へ沈降する。
次に、本発明に係る第二実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、同様の部材には同一の符号を付してある。
上記第一実施形態では、水溶液散布工程に常温の重水素硫酸水溶液を用い、散水工程に常温の水を用いた。しかし、第二実施形態においては、水溶液散布工程において加温した重水素硫酸水溶液を用い、散水工程に熱湯を用いる。これにより、より効率よく有害物質を土壌下層へ移動させることができる。
ここで、発明者は、本願発明の有用性を確認すべく以下の試験を行った。
[試験1]
試験土壌に本願の重水素硫酸水溶液を加えて、120分常温(実施例B)及び約90℃で加温(実施例A)し、その後に土壌と液体成分とを分離し、それぞれ放射線量を測定した。放射線量の測定(分析方法)は、文部科学省放射能測定法シリーズ7のゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー法を用いた。図6に、測定値の大きいものを基準にそれぞれ相対比較した結果を示す。同図に示すように、常温時に比べ加温した状態の方が、土壌中の放射線量が低くく、液体成分の放射線量が高い。この結果、加温した状態の方がより凝集効果による団粒化が促進され、より多くの有害物質が下層へ移動可能と推測できる。
[試験2]
試験土壌に本願の重水素硫酸水溶液を加えて、60分、120分間約90℃で加温し、その後に土壌と液体成分とを分離し、上記と同様に放射線量を測定した。図7に、液体1mlあたりのセシウム134及び137の放射線量の測定結果を示す。同図に示す値は、試験土壌の放射線量を基準にした相対値を示す。この値は、液体成分の放射線量相対値を示すことから、汚染土壌の除染率と捉えることができる。なお、参考までに常温10分の結果を併記する。同図に示すように、時間の経過に従い相対値が増加している。よって、加温した状態の重水素硫酸水溶液を散布した後に熱水を散水することで、加温状態を継続することができ、より土壌の団粒化が促進されることで、より多くの有害物質が下層へ移動可能となると推測できる。
[試験3]
試験土壌にそれぞれ本願の重水素硫酸水溶液と水を加えたものを、120分約90℃で加温し、その後に土壌と液体成分に分離し、上記と同様に放射線量を測定した。その測定結果を図8に示す。同図に示すように、水のみの場合に比べ、加温した重水素硫酸水溶液の方が土壌からの放射線量が低く液体からの放射線量が高い。また、図9に、120分経過後の液体1mlあたりのセシウム134及び137の放射線量の水との比較結果を示す。同図に示す値は、試験土壌の放射線量を基準にした相対値を示す。同図に示すように、水に比べ重水素硫酸水溶液の放射線量が高い。この結果からも、重水素硫酸水溶液を散布することで、より多くのセシウム(有害物質)を下層へ移動可能となることが裏付けられた。
[試験4]
上記試験3(図9)は加温した状態における本願重水素硫酸水溶液と水との比較であったが、常温においても同様の試験を行った。その結果を図10に示す。同図に示す値は、測定値の大きいものを基準とした相対値である。同図に示すように、常温においても、水のみの場合に比べ、重水素硫酸水溶液の方が土壌からの放射線量が低く液体からの放射線量が高い。すわなち、常温においても水よりも重水素硫酸水溶液の方が、より多くの有害物質を土壌下層へ移動させることが可能である
[試験5]
上記試験2〜4は水との比較であったが、本願重水素硫酸水溶液と同等のpH(約4.3)希硫酸との比較を行った。この試験では、120分約95℃で加温した。その結果を図11に示す。この図においても、図10と同様の相対値を用いている。同図に示すように、希硫酸よりも重水素硫酸水溶液の方が土壌からの放射線量が低く、液体からの放射線量が高い。すなわち、希硫酸よりも重水素硫酸水溶液の方が、より効率よく汚染物質を土壌下層へ移動させることが可能であることが伺える。
ところで、上記第一、第二実施形態では、自然の状態の土壌に重水素硫酸水溶液を散布し散水する例について、説明した。しかし、この場合に限られず、除染作業によって汚染土壌の表層部を除去し隔離した汚染土壌においても、上記実施形態と同様に、重水素硫酸水溶液を散布し散水することで、有害物質を汚染土壌から分離することができる。係る場合、隔離された汚染土壌であるので、例えば、散布する重水素硫酸水溶液及び散水する水を加熱せずに汚染土壌を加熱することも可能である。この場合であっても、第二実施形態と同様に常温時よりも効率よく有害物質を除去することができる。
但し、上記第一、第二実施形態では、汚染土壌全体に重水素硫酸を行きわたらせる(浸透させる)ために、時間を要する。そこで、第三実施形態においては、汚染土壌と重水素硫酸水溶液とを混合し、その混合物を所定時間経過後脱水する。土壌と重水素硫酸水溶液とを混合(攪拌)するので、重水素硫酸水溶液を土壌に散布する上記各実施形態に比べ、短時間で重水素硫酸を土壌全体に行きわたらせることができる。よって、上記各試験結果に示すように、短時間で汚染土壌から有害物質を抽出することができ、大量の汚染土壌を処理できることができる。第三実施形態における重水素硫酸水溶液のpHは、1.0以上5.0以下であるとよい。この数値範囲内であれば、上記各実施形態と同様の効果を短時間に得ることができる。より好ましくは、重水素硫酸水溶液のpHは、1.0以上3.0以下である。
第三実施形態として、例えば、タンク等の容器に上記各実施形態の重水素硫酸水溶液(例えば、pH=1.0〜3.0の範囲内)と汚染土壌とを投入し、所定時間攪拌及び加熱する。その後、その混合物を加圧、脱水し、土壌と液体成分を分離する。上記試験1〜4に示すように、汚染物質(セシウム)は汚染土壌から液体成分へ移動するので、脱水工程により汚染土壌から有害物質が除去(分離)される。このように、汚染土壌と重水素硫酸水溶液とを混合して処理することで、散水や乾燥を繰り返し行う必要がなく、短時間で大量の汚染土壌の除染が可能となる。なお、混合物を加熱せず常温で処理することも可能であるが、上記試験1に示すように、加熱(高温)することで有害物質の抽出効率は向上する。
最後に、本発明のさらに他の実施形態の可能性について説明する。
上記第一、第二実施形態において、図1に示す如く、水溶液散布工程S1の後に、散水工程S2及び乾燥工程S3を繰り返し行った。しかし、同図の一点鎖線で示す如く、乾燥工程S3の後に、水溶液再散布工程S4を設けても構わない。水溶液再散布工程S4を設けることで、散水工程S2及び乾燥工程S3を繰り返し行うことで減少する表層部2中の重水素硫酸を補充することができ、さらに深層部での土壌の団粒化を促進させることができる。なお、水溶液再散布工程S4は、土壌の状態等を観察し、適宜行えばよい。
上記第一実施形態において、散水工程S2を人為的な散水により行った。しかし、人為的な散水に限らず、降雨を利用しても構わない。また、水溶液散布工程を降雪前に行い、この水溶液散布工程S1直後の散水工程S2を雪の雪解け水により行うようにしてもよい。これらにより、作業負担が軽減される。さらに、雪解け水を用いる場合、雪解けは日によって又は時間帯によって発生の有無が異なるので、数回にわたって散水したのと同様に除々に土壌の凝集効果が働いて浸透性が向上する。
また、上記第一、第二実施形態において、乾燥工程S3を自然乾燥により行ったが人為的に行うことも可能である。但し、作業負担が増大する点で上記実施形態が優れている。
上記各実施形態において、有害物質として放射性セシウムを例に説明したが、これに限られるものではなく、他の放射性物質でも適用可能である。また、放射性物質に限らず、カドミウム、クロム、鉛等の重金属等の物質でも適用可能である。
上記第一、第二実施形態において、重水素硫酸水溶液を、重水素硫酸:水を体積比で1:9で混合して作製した。しかし、重水素硫酸水溶液は、この混合率に限られるものではなく、重水素硫酸が汚染土壌に対して0.0003体積%以上0.002体積%以下となるように調整すればよい。また、同様に、希釈倍率や散布量も上記数値範囲となるように適宜設定すればよい。
本発明は、農地、公園、山林等、土地の用途、種別に制限されることなく、放射性セシウム等の有害物質による汚染土壌の除染方法として利用することができる。また、上述の各土地から除去した汚染土壌に対しても利用することができる。
1:土壌、1a:単粒、1b:団粒、2:表層部、3:深層部、4:隙間、AL:重水素硫酸水溶液、DS:重水素硫酸、Cs:放射性セシウム(有害物質)、GL:地表、W:水

Claims (10)

  1. 少なくとも表層部が有害物質で汚染された汚染土壌に重水素硫酸水溶液を散布する水溶液散布工程、
    前記重水素硫酸水溶液を散布した表層部に水を散布する散水工程、
    前記水を散布した表層部を乾燥させる乾燥工程を有し、
    前記散水工程及び前記乾燥工程を繰り返し行うことで、前記有害物質を前記汚染土壌の表層部から深層部に沈降させる汚染土壌の除染方法。
  2. 重水素硫酸が前記汚染土壌1m3に対して0.0003体積%以上0.002体積%以下となるように前記重水素硫酸水溶液を散布する請求項1記載の汚染土壌の除染方法。
  3. 前記水溶液散布工程において、前記重水素硫酸水溶液を加温した状態で散布する請求項1又は2記載の汚染土壌の除染方法。
  4. 前記散水工程において、前記水は熱湯である請求項3記載の汚染土壌の除染方法。
  5. 前記乾燥工程の後に、乾燥させた表層部に前記重水素硫酸水溶液を再度散布する水溶液再散布工程をさらに有する請求項1〜4のいずれかに記載の汚染土壌の除染方法。
  6. 前記水溶液散布工程を降雪前に行い、この水溶液散布工程直後の散水工程を前記表層部に積雪した雪の雪解け水により行う請求項1,2,5のいずれかに記載の汚染土壌の除染方法。
  7. 前記散水工程を前記表層部に降雨した雨水により行う請求項1,2,5のいずれかに記載の汚染土壌の除染方法。
  8. 前記有害物質は、放射性セシウムである請求項1〜7のいずれかに記載の汚染土壌の除染方法。
  9. 有害物質で汚染された汚染土壌と重水素硫酸水溶液とを混合する混合工程と、
    この混合物を所定時間経過後に脱水する脱水工程を有し、
    前記脱水工程により前記汚染土壌から前記重水素硫酸水溶液へ流出した有害物質を前記混合物から分離する汚染土壌の除染方法。
  10. 前記混合工程の後に、前記混合物を前記所定時間加熱する加熱工程をさらに有する請求項9記載の汚染土壌の除染方法。
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