JP2014091762A - 摺動グリース組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】境界潤滑域〜混合潤滑域、特に常温環境下であっても摺動部の焼付、過大摩耗及び/又は摩擦力増加等を実質的に防止又は軽減し得る手段を提供する。
【解決手段】本発明は、基油と、表面に開放孔を有する多孔質の有機繊維であって、平均繊維径が0.2〜5μmの範囲であり、平均繊維長が5〜50μmの範囲であり、該開放孔の平均直径が5〜100 nmの範囲であり、該有機繊維の総表面積に対する該開放孔の面積の百分率が1〜10%の範囲である前記有機繊維とを含有する摺動グリース組成物に関する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、基油と、表面に開放孔を有する多孔質の有機繊維であって、平均繊維径が0.2〜5μmの範囲であり、平均繊維長が5〜50μmの範囲であり、該開放孔の平均直径が5〜100 nmの範囲であり、該有機繊維の総表面積に対する該開放孔の面積の百分率が1〜10%の範囲である前記有機繊維とを含有する摺動グリース組成物に関する。
【選択図】なし
Description
本発明は、摺動グリース組成物に関する。
自動車等に用いられる摺動用グリースは、通常、基油及び増ちょう剤を含有する。摺動用グリースに含有される増ちょう剤としては、石鹸系材料及び非石鹸系材料を挙げることができる。石鹸系材料としては、例えば、リチウム石鹸等が使用される。また、非石鹸系材料としては、例えば、ジウレア化合物又はフッ素粉末のような有機系材料に加えて、シリカ粉末、チタニア、アルミナ又は炭素繊維のような無機系材料が使用される。これらの増ちょう剤は、通常は平滑な表面を有しており、多孔質ではない。
例えば、特許文献1は、増ちょう剤と、微小粒子とを含む潤滑剤組成物であって、増ちょう剤としてシリカと、それ以外の他の増ちょう剤とを併用したことを特徴とする潤滑剤組成物を記載する。当該文献は、シリカ以外の他の増ちょう剤として、ベントナイト及び亜硝酸ホウ素のような無機系の非石鹸系材料、並びにジウレア化合物、アリルウレア化合物、ポリウレア化合物、フタロシアニン化合物、テレフタラメート化合物、インダンスレン及びアメリンのような有機系の非石鹸系材料を記載する。
特許文献2は、基油、導電性付与添加剤、分散剤、及び平均粒子径が2μm以下の無機化合物微粒子を含有する導電性グリース組成物において、前記導電性付与添加剤の含有量を組成物全体の0.1〜10質量%、前記分散剤の含有量を組成物全体の0.1〜10質量%、前記無機化合物微粒子の含有量を組成物全体の0.05〜7質量%としたことを特徴とする導電性グリース組成物を記載する。当該文献は、増ちょう剤として、ウレア化合物又は金属石鹸等が好ましいことを記載する。
摺動用グリースは、基油及び増ちょう剤に加えて、摺動特性を維持又は向上させる手段として、極圧剤又は摩耗防止剤等の添加剤を含有する場合がある。前記添加剤としては、例えば、S系添加剤、P系添加剤及びMo系添加剤を挙げることができる。
摺動用グリースに含有される前記のような添加剤は、化学反応によって摺動特性を維持又は向上させる。このため、化学反応が急速に進行する高温領域(例えば40〜120℃)においてのみその効果を顕著に発現する。常温(例えば約30℃)環境下で摺動用グリースが使用される場合、前記化学反応が穏やかにしか進行しない。それ故、常温環境下では、添加剤による摺動特性の維持又は向上効果は限定的となる。
境界潤滑域〜混合潤滑域で摺動用グリースが使用される場合、摺動部において油膜層が全く形成されないか、又は該摺動部の一部しか油膜層が形成されない。このため、前記の潤滑域で摺動し続けると、摺動部の焼付、過大摩耗及び/又は摩擦力増加等が発生する可能性がある。例えば、シリカ、チタニア又はアルミナのような無機系材料の増ちょう剤は、硬度が高い。このため、境界潤滑域〜混合潤滑域で、これらの増ちょう剤を含有する摺動用グリースが使用される場合、該増ちょう剤が異物として作用(アブレシブ作用)し、摺動部の焼付、過大摩耗及び/又は摩擦力増加等が発生する可能性が更に高くなる。また、炭素繊維の増ちょう剤には多孔質の炭素繊維も存在するが、多孔質の炭素繊維は剛性が低い。このため、前記の潤滑域でこのような多孔質の炭素繊維を増ちょう剤として含有する摺動用グリースが使用される場合、摺動部の高面圧力下によって繊維構造が破壊されるおそれがある。
それ故、本発明は、境界潤滑域〜混合潤滑域、特に常温環境下であっても摺動部の焼付、過大摩耗及び/又は摩擦力増加等を実質的に防止又は軽減し得る手段を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、摺動用グリースに含有される増ちょう剤の形状及び材料を最適化することにより、該摺動用グリースの剪断安定性及び焼付特性を向上し得ることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 基油と、表面に開放孔を有する多孔質の有機繊維であって、平均繊維径が0.2〜5μmの範囲であり、平均繊維長が5〜50μmの範囲であり、該開放孔の平均直径が5〜100 nmの範囲であり、該有機繊維の総表面積に対する該開放孔の面積の百分率が1〜10%の範囲である前記有機繊維とを含有する摺動グリース組成物。
(2) 前記有機繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレートからなる群より選択されるポリエステル繊維である、前記(1)に記載の摺動グリース組成物。
本発明により、境界潤滑域〜混合潤滑域、特に常温環境下であっても摺動部の焼付、過大摩耗及び/又は摩擦力増加等を実質的に防止又は軽減し得る手段を提供することが可能となる。
<1. 摺動グリース組成物>
本発明は、基油と、有機繊維とを含有する摺動グリース組成物に関する。
本発明は、基油と、有機繊維とを含有する摺動グリース組成物に関する。
本発明の摺動グリース組成物に含有される有機繊維は、表面に開放孔を有する多孔質の有機繊維であることが必要である。本発明者は、摺動用グリースに含有される増ちょう剤として、表面に特定の直径の開放孔を有する特定の形状の多孔質の有機繊維を用いることにより、該摺動用グリースの焼付特性を向上し得ることを見出した。本発明の摺動グリース組成物が高い焼付特性を示す理由は、以下のように説明することができる。なお、本発明の作用効果は、以下の原理に限定されるものではない。本発明の摺動グリース組成物に含有される、表面に開放孔を有する多孔質の有機繊維は、その表面に存在する開放孔の内部に基油を保持し得る。境界潤滑域〜混合潤滑域において、開放孔の内部に基油を保持した有機繊維は、摺動部材と接触することによって弾性変形する。このとき、開放孔の内部に保持された基油が浸出し、摺動部材の表面に供給される。その後、摺動部材との接触が解除されると、弾性変形した有機繊維は元の形状を回復する。このとき、開放孔の内部の圧力が低下するため、開放孔の内部に基油が充填される。これにより、有機繊維は、開放孔の内部に再び基油を保持し得る。このようにして連続的に供給される基油によって摺動特性が維持されるため、結果として高い焼付特性を示すことが可能となる。
なお、摺動グリース組成物の焼付特性は、限定するものではないが、例えば、SRV摩擦摩耗試験機を用いるボールオンプレート試験により、評価することができる。
本発明の摺動グリース組成物に含有される有機繊維は、平均繊維径が0.2〜5μmの範囲であることが必要である。前記有機繊維の平均繊維径は、1〜5μmの範囲であることが好ましい。平均繊維径が0.2μm以上の場合、有機繊維の繊維強度が高くなる。このため、摺動による機械的剪断に対する安定性が向上する。有機繊維の剪断安定性が向上すると、機械的剪断による有機繊維の切断が実質的に防止又は抑制される。それ故、結果として摺動グリース組成物の急激なちょう度変化を防止又は抑制することができる。平均繊維径が5μm以下の場合、有機繊維間に基油を保持する増ちょう効果が高くなる。このため、例えば遠心力等の外力が作用した場合であっても、有機繊維と基油とが分離する現象を抑制することができる。
なお、有機繊維の平均繊維径は、限定するものではないが、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により該有機繊維を観察し、数点の繊維径の実測値を平均化することによって決定することができる。
また、摺動グリース組成物の剪断安定性は、限定するものではないが、例えば、4球式摩擦摩耗試験機を用いる摺動試験により、評価することができる。
本発明の摺動グリース組成物に含有される有機繊維は、平均繊維長が5〜50μmの範囲であることが必要である。前記有機繊維の平均繊維長は、20〜50μmの範囲であることが好ましい。平均繊維長が5μm以上の場合、有機繊維間に基油を保持する増ちょう効果が高くなる。このため、例えば遠心力等の外力が作用した場合であっても、有機繊維と基油とが分離する現象を抑制することができる。平均繊維長が50μm以下の場合、摺動グリース組成物中で有機繊維が偏在することなく、実質的に均質に分散することができる。このため、例えば遠心力等の外力が作用した場合であっても、有機繊維と基油とが分離する現象を抑制することができる。また、平均繊維長が50μm以下の場合、摺動による機械的剪断に対する安定性が向上する。
なお、有機繊維の平均繊維長は、限定するものではないが、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により該有機繊維を観察し、数点の繊維長の実測値を平均化することによって決定することができる。
本発明の摺動グリース組成物に含有される有機繊維は、開放孔の平均直径が5〜100 nmの範囲であることが必要である。前記有機繊維の開放孔の平均直径は、30〜100 nmの範囲であることが好ましい。開放孔の平均直径が5 nm以上の場合、該開放孔の内部に有効量の基油を保持し得る。このため、有機繊維の弾性変形によって基油が浸出し、摺動部材の表面に供給することができる。また、開放孔の平均直径が100 nm以下の場合、有機繊維の繊維強度が高くなる。このため、摺動による機械的剪断に対する安定性が向上する。
なお、開放孔の平均直径は、限定するものではないが、例えば、以下の方法によって決定することができる。有機繊維の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10000〜30000倍の倍率で撮影する。得られた有機繊維の表面のSEM画像を、画像処理ソフトウェアを用いて解析する。SEM画像中に存在する開放孔を疑似円として検出して、疑似円の直径を該開放孔の直径として記録する。また、前記開放孔のうち、前記ソフトウェアによって疑似円として検出されなかったものは、X方向及びY方向の寸法を測定し、両寸法を平均した値を該開放孔の直径として記録すればよい。このようにして記録された値を平均することにより、開放孔の平均直径を決定する。
本発明の摺動グリース組成物に含有される有機繊維は、開放孔の平均直径が平均繊維径に対して1/10以下であることが好ましく、1/40以下であることがより好ましく、1/50以下であることが特に好ましい。開放孔の平均直径が前記比を満たす場合、摺動による機械的剪断に対する安定性が向上する。
本発明の摺動グリース組成物に含有される有機繊維は、該有機繊維の総表面積に対する該開放孔の面積の百分率(以下、「孔面積比」とも記載する)が1〜10%の範囲であることが必要である。前記孔面積比は、5〜10%の範囲であることが好ましい。孔面積比が1%以上の場合、開放孔の内部に有効量の基油を保持し得る。このため、有機繊維の弾性変形によって基油が浸出し、摺動部材の表面に供給することができる。また、孔面積比が10%以下の場合、有機繊維の繊維強度が高くなる。このため、摺動による機械的剪断に対する安定性が向上する。
なお、有機繊維の総表面積は、限定するものではないが、例えば、前記で説明した手段によって決定された該有機繊維の平均繊維径及び平均繊維長に基づき、算出することができる。また、開放孔の面積は、限定するものではないが、例えば、前記で説明した手段によって決定された該開放孔の平均直径に基づき、算出することができる。
前記で説明したように、本発明の摺動用グリース組成物が高い剪断安定性及び焼付特性を示すのは、該開放孔の内部に保持された基油が、有機繊維の弾性変形によって浸出し、摺動部材の表面に供給されることに起因すると考えられる。それ故、本発明の摺動グリース組成物に含有される有機繊維は、前記の作用効果を発現し得る多孔質の有機繊維、例えば、当該技術分野で増ちょう剤として通常使用される各種材料の多孔質の有機繊維を使用することができる。前記有機繊維としては、限定するものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ナイロン繊維(特開平2-175965号公報)若しくはポリフェニレンサルファイド繊維、又はそれらの共重合体からなる多孔質の有機繊維を挙げることができる。前記有機繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリブチレンナフタレート(PBN)からなる群より選択されるポリエステル繊維であることが好ましく、PET繊維であることがより好ましい。
本発明の摺動グリース組成物に含有される基油は、特に限定されず、当該技術分野で通常使用される基油を使用することができる。
本発明の摺動グリース組成物は、その総体積に対して70〜90体積%の基油を含有することが好ましい。また、その総体積に対して5〜20体積%の有機繊維を含有することが好ましい。基油及び有機繊維を前記範囲で含有する場合、摺動用グリース組成物の剪断安定性及び焼付特性を向上させることができる。
本発明の摺動グリース組成物は、当該技術分野で通常使用される方法を用いて製造することができる。増ちょう剤として使用する多孔質の有機繊維の材料は、例えば、前記樹脂原料を熱水可溶性ポリマーのような開放孔形成剤とともに溶融紡糸した後、開放孔形成剤を除去して多孔質の連続紡糸品を調製するか、又は前記樹脂原料からなる多孔質の長繊維性製品を購入等して準備すればよい。次いで、前記多孔質の有機繊維の材料を凍結後、数段階の条件に設定された粉砕手段(例えば、質量及び/又は材質の異なる数種類の落下球)によって該凍結材料を粉砕することにより、前記の形状を有する多孔質の有機繊維を調製することができる。その後、前記多孔質の有機繊維と基油とを混合することにより、本発明の摺動グリース組成物を得ることができる。
以上のように、本発明の摺動グリース組成物は、境界潤滑域〜混合潤滑域、特に常温環境下であっても高い剪断安定性及び焼付特性を発現することができる。それ故、本発明の摺動グリース組成物を自動車等の潤滑剤として使用することにより、摺動部の焼付、過大摩耗及び/又は摩擦力増加等を実質的に防止又は軽減することが可能となる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<I:グリースの調製>
[実施例1-3及び比較例1-8]
PET粉末(三井ペット;三井化学製)及び熱水可溶性ポリマー(パオゲンPP-15;第一工業製薬製)を特定の比で混合し、二軸押出混練機(HK25D;パーカーコーポレーション)を用いて275℃で溶融混練することにより、ポリマーアロイを調製した。次に、溶融部温度(270〜275℃)、紡糸温度(250〜275℃)及び吐出量(引出量)(5〜10 m/分)を前記範囲で変化させながら、前記ポリマーアロイを溶融紡糸した。得られたポリマーアロイの繊維を、100℃の熱水に2時間浸漬させて該繊維に含まれる熱水可溶性ポリマーを除去した。これにより、表面に開放孔を有する多孔質のPET繊維を得た。得られたPET繊維を、液体窒素を用いて凍結した。冷凍粉砕機(JFC-300;日本分析工業製)を用いて、得られた凍結PET繊維を、質量の異なる数種類の落下球によって粉砕し、所定の形状を有するPET繊維を得た。得られたPET繊維を、総体積に対して10体積%の含有量となるように基油(PAO10;INEOS製)に添加して、実施例及び比較例のグリースを調製した。
[実施例1-3及び比較例1-8]
PET粉末(三井ペット;三井化学製)及び熱水可溶性ポリマー(パオゲンPP-15;第一工業製薬製)を特定の比で混合し、二軸押出混練機(HK25D;パーカーコーポレーション)を用いて275℃で溶融混練することにより、ポリマーアロイを調製した。次に、溶融部温度(270〜275℃)、紡糸温度(250〜275℃)及び吐出量(引出量)(5〜10 m/分)を前記範囲で変化させながら、前記ポリマーアロイを溶融紡糸した。得られたポリマーアロイの繊維を、100℃の熱水に2時間浸漬させて該繊維に含まれる熱水可溶性ポリマーを除去した。これにより、表面に開放孔を有する多孔質のPET繊維を得た。得られたPET繊維を、液体窒素を用いて凍結した。冷凍粉砕機(JFC-300;日本分析工業製)を用いて、得られた凍結PET繊維を、質量の異なる数種類の落下球によって粉砕し、所定の形状を有するPET繊維を得た。得られたPET繊維を、総体積に対して10体積%の含有量となるように基油(PAO10;INEOS製)に添加して、実施例及び比較例のグリースを調製した。
[実施例4]
表面に開放孔を有する市販のポリエステル繊維(ウエルキィ;帝人製)を用いて、本発明の摺動グリース組成物を調製した。前記ポリエステル繊維を実施例1-3と同様の手順で凍結粉砕し、所定の形状を有するポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を、総体積に対して10体積%の含有量となるように基油(PAO10;INEOS製)に添加して、実施例4のグリースを調製した。
表面に開放孔を有する市販のポリエステル繊維(ウエルキィ;帝人製)を用いて、本発明の摺動グリース組成物を調製した。前記ポリエステル繊維を実施例1-3と同様の手順で凍結粉砕し、所定の形状を有するポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を、総体積に対して10体積%の含有量となるように基油(PAO10;INEOS製)に添加して、実施例4のグリースを調製した。
[比較例9]
特許文献1に記載の潤滑剤組成物のように、ジウレア化合物を増ちょう剤として含有する従来技術の摺動グリースの比較例である。
特許文献1に記載の潤滑剤組成物のように、ジウレア化合物を増ちょう剤として含有する従来技術の摺動グリースの比較例である。
2 mol(129 g)のアミン(オクチルアミン;東京化成工業製)及び1 mol(125 g)のイソシアネート(ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート;日化トレーディング製)を反応させて、ジウレア化合物を調製した。得られたジウレア化合物を、総体積に対して10体積%の含有量となるように2000 gの基油(PAO10;INEOS製)に添加した。得られた混合物を、シェルロール試験機(870-02;株式会社離合社)を用いて剪断処理して、21μmの平均繊維長を有するジウレア化合物を増ちょう剤として含有する比較例9のグリースを調製した。
<II:有機繊維の形状分析>
実施例1〜4及び比較例1〜9のグリースに含有される有機繊維の形状を分析した。各グリースの調製に使用した有機繊維の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM-6610;日本電子製)を用いて10000〜30000倍の倍率で撮影した。得られた有機繊維の表面のSEM画像を、画像処理ソフトウェア(WINROOF;三谷商事)を用いて解析した。SEM画像中に存在する開放孔のうち、前記ソフトウェアによって疑似円として検出されたものは、疑似円の直径を該開放孔の直径として記録した。また、前記開放孔のうち、前記ソフトウェアによって疑似円として検出されなかったものは、X方向及びY方向の寸法を測定し、両寸法を平均した値を該開放孔の直径として記録した。前記処理は、SEM画像中に存在する開放孔のうち、1 nm以上の測定が可能な開放孔のみを対象とした。
実施例1〜4及び比較例1〜9のグリースに含有される有機繊維の形状を分析した。各グリースの調製に使用した有機繊維の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM-6610;日本電子製)を用いて10000〜30000倍の倍率で撮影した。得られた有機繊維の表面のSEM画像を、画像処理ソフトウェア(WINROOF;三谷商事)を用いて解析した。SEM画像中に存在する開放孔のうち、前記ソフトウェアによって疑似円として検出されたものは、疑似円の直径を該開放孔の直径として記録した。また、前記開放孔のうち、前記ソフトウェアによって疑似円として検出されなかったものは、X方向及びY方向の寸法を測定し、両寸法を平均した値を該開放孔の直径として記録した。前記処理は、SEM画像中に存在する開放孔のうち、1 nm以上の測定が可能な開放孔のみを対象とした。
前記の形状分析によって得られた実施例1〜4及び比較例1〜9のグリースに含有される有機繊維の形状を表1に示す。表中、孔面積比は、有機繊維の総表面積に対する該開放孔の面積の百分率を意味する。
<III:グリースの性能評価>
[剪断安定性の測定試験]
剪断安定性の測定試験は、以下の手順で行った。試験対象のグリースを、4球式摩擦摩耗試験機(神鋼造機株式会社)の試験ホルダー内に充填し、50 Nの荷重、室温、1時間の条件で摺動試験を行った。その後、試験ホルダーからグリースを回収し、ちょう度計(800M-01;株式会社離合社)を用いて摺動試験後のちょう度を測定した。予め測定した摺動試験前のちょう度と比較して、摺動試験後のちょう度が実質的に変化しなかった場合を「○」、摺動試験後のちょう度が上昇した場合を「△」、摺動試験後のちょう度が著しく上昇(粘度が低下)した場合を「×」と評価した。
[剪断安定性の測定試験]
剪断安定性の測定試験は、以下の手順で行った。試験対象のグリースを、4球式摩擦摩耗試験機(神鋼造機株式会社)の試験ホルダー内に充填し、50 Nの荷重、室温、1時間の条件で摺動試験を行った。その後、試験ホルダーからグリースを回収し、ちょう度計(800M-01;株式会社離合社)を用いて摺動試験後のちょう度を測定した。予め測定した摺動試験前のちょう度と比較して、摺動試験後のちょう度が実質的に変化しなかった場合を「○」、摺動試験後のちょう度が上昇した場合を「△」、摺動試験後のちょう度が著しく上昇(粘度が低下)した場合を「×」と評価した。
実施例1〜4及び比較例1〜9のグリースの剪断安定性の測定試験結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1〜4のグリースは、いずれも摺動試験の前後でちょう度が実質的に変化しなかった。それ故、実施例1〜4のグリースは、高い剪断安定性を有することが明らかとなった。これに対し、ポリエステル繊維の平均繊維径が細い場合(比較例1)、ポリエステル繊維の平均繊維長が長い場合(比較例4)、ポリエステル繊維の開放孔の平均直径が大きい場合(比較例6)、及びポリエステル繊維の開放孔面積比が大きい場合(比較例8)、剪断安定性は低下した。また、ポリエステル繊維の平均繊維径が太い場合(比較例2)、及びポリエステル繊維の平均繊維長が短い場合(比較例3)にも、剪断安定性はやや低下した。
[焼付特性試験]
焼付特性試験は、以下の手順で行った。試験対象のグリースを、SRV摩擦摩耗試験機(SRV4;オプティモール社製)の摺動部に塗布し、試験荷重を上昇させながら、50 Hzの試験周波数、5 mmの試験振幅、室温の条件でボールオンプレート試験を行った。焼付が発生した時点で試験を終了し、その時点の試験荷重を「焼付荷重」として記録した。比較例9のグリースを用いて測定した場合の焼付荷重を1として、その値に対する指数を「焼付荷重指数」として算出した。
焼付特性試験は、以下の手順で行った。試験対象のグリースを、SRV摩擦摩耗試験機(SRV4;オプティモール社製)の摺動部に塗布し、試験荷重を上昇させながら、50 Hzの試験周波数、5 mmの試験振幅、室温の条件でボールオンプレート試験を行った。焼付が発生した時点で試験を終了し、その時点の試験荷重を「焼付荷重」として記録した。比較例9のグリースを用いて測定した場合の焼付荷重を1として、その値に対する指数を「焼付荷重指数」として算出した。
実施例1〜4及び比較例1〜9のグリースの焼付特性の試験結果を図1に示す。
図1に示すように、実施例1〜4のグリースは、ジウレア化合物を増ちょう剤として含有する従来技術の摺動グリースである比較例9のグリースと比較して、焼付特性が40〜60%向上した。一方、ポリエステル繊維を増ちょう剤として含有するが該ポリエステル繊維の平均繊維径、平均繊維長、開放孔の平均直径及び/又は開放孔面積比が所定の範囲に含まれない比較例1〜8のグリースは、比較例9のグリースと略同程度又はそれを下回る焼付特性を示した。
前記のように、本発明の摺動グリース組成物が高い焼付特性を示すのは、増ちょう剤として含有する有機繊維の表面に存在する開放孔の内部に基油が保持されていることに起因すると考えられる。境界潤滑域〜混合潤滑域において、開放孔の内部に基油を保持した有機繊維は、摺動部材と接触することによって弾性変形する。このとき、開放孔の内部に保持された基油が浸出し、摺動部材の表面に供給される。このようにして供給された基油によって摺動特性が維持されるため、結果として高い焼付特性を示すと考えられる。
Claims (2)
- 基油と、表面に開放孔を有する多孔質の有機繊維であって、平均繊維径が0.2〜5μmの範囲であり、平均繊維長が5〜50μmの範囲であり、該開放孔の平均直径が5〜100 nmの範囲であり、該有機繊維の総表面積に対する該開放孔の面積の百分率が1〜10%の範囲である前記有機繊維とを含有する摺動グリース組成物。
- 前記有機繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレートからなる群より選択されるポリエステル繊維である、請求項1に記載の摺動グリース組成物。
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