JP2007177063A - グリース組成物およびグリース封入転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリース組成物中のモリブデン酸塩が微粒子で分散状態を維持でき、高面圧下での耐摩耗特性に優れたグリース組成物、および、該グリース組成物を封入したグリース封入転がり軸受を提供する。
【解決手段】基油に増ちょう剤を配合してなるベースグリースに、潤滑油とモリブデン酸塩とを含有するモリブデン酸塩分散油を添加してなるグリース組成物であって、上記モリブデン酸塩分散油は、界面活性剤を添加した前記潤滑油中で、前記モリブデン酸塩を湿式粉砕して得られる。グリース封入転がり軸受は、上記グリース組成物7が少なくとも転動体4の周囲に封入されてなる。
【選択図】図1
【解決手段】基油に増ちょう剤を配合してなるベースグリースに、潤滑油とモリブデン酸塩とを含有するモリブデン酸塩分散油を添加してなるグリース組成物であって、上記モリブデン酸塩分散油は、界面活性剤を添加した前記潤滑油中で、前記モリブデン酸塩を湿式粉砕して得られる。グリース封入転がり軸受は、上記グリース組成物7が少なくとも転動体4の周囲に封入されてなる。
【選択図】図1
Description
本発明は、一般機械部品、特に転がり軸受に用いられるグリース組成物であって、高面圧下の過酷な条件において、優れた耐摩耗特性を発揮するグリース組成物および該グリースを封入した転がり軸受に関する。
近年、各種産業機械におけるモータ、自動車用電装補機等は、年々軽量化、小型化、高性能化等が求められており、使用条件が厳しくなってきている。これらには、転がり軸受が使用されており、その潤滑には主としてグリースが用いられている。使用条件が過酷になることで、転がり軸受の各種潤滑部が高面圧となる傾向が見られ、転がり軸受に封入されるグリースにも高面圧に対する対応が求められる。特に、高面圧下で潤滑される部位ではすべりが発生すると摩耗が発生し、その摩耗を原因として振動や焼付き等の不具合が発生することが多く、その対策が求められている。
従来から、性能を向上させるために、グリースには様々な目的で各種添加剤が添加されている。耐焼付き性を向上させるためには硫黄系添加剤が配合されていたり、摩擦特性を向上させるために、有機モリブデン等が配合されていることもある。
一方、過酷な条件下において潤滑性と耐熱性とを合わせ持つグリースとして、モリブデン酸塩や酸化モリブデンと、摩擦調整剤や極圧剤とを併用することにより過酷な条件下での耐摩耗性と低摩擦性とを両立させることを目的とした、酸化モリブデン、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸と摩擦調整剤や極圧剤の組合せが知られている(特許文献1参照)。しかし開示された内容では、耐摩耗性の点で十分であるとはいえない。
また本発明者は耐摩耗性を向上させる効果の高い添加剤としてモリブデン酸のアルカリ金属塩を確認している(特願2005―136827)。モリブデン酸塩は鉱油等の非水系潤滑油に不溶で、一般的に平均粒子径 200μm 程度の粉体で市販されている。各種性能向上の目的でグリースにモリブデン酸塩を添加した場合、モリブデン酸塩はグリース中に分散されるが、粒子径が大きいと、摺動部に入り込みにくく、その効果が発揮されにくいという欠点があり、所望の効果を得るには、モリブデン酸塩を微粒子状態でグリース中に分散させる必要がある。
一方、過酷な条件下において潤滑性と耐熱性とを合わせ持つグリースとして、モリブデン酸塩や酸化モリブデンと、摩擦調整剤や極圧剤とを併用することにより過酷な条件下での耐摩耗性と低摩擦性とを両立させることを目的とした、酸化モリブデン、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸と摩擦調整剤や極圧剤の組合せが知られている(特許文献1参照)。しかし開示された内容では、耐摩耗性の点で十分であるとはいえない。
また本発明者は耐摩耗性を向上させる効果の高い添加剤としてモリブデン酸のアルカリ金属塩を確認している(特願2005―136827)。モリブデン酸塩は鉱油等の非水系潤滑油に不溶で、一般的に平均粒子径 200μm 程度の粉体で市販されている。各種性能向上の目的でグリースにモリブデン酸塩を添加した場合、モリブデン酸塩はグリース中に分散されるが、粒子径が大きいと、摺動部に入り込みにくく、その効果が発揮されにくいという欠点があり、所望の効果を得るには、モリブデン酸塩を微粒子状態でグリース中に分散させる必要がある。
また潤滑油と、平均粒径が 0.1μm 以下の超微粒子と、からなり、前記超微粒子が前記潤滑油に対して 0.05 重量%〜15 重量%の割合で添加されてなる潤滑剤が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、微粒子を潤滑剤に添加しただけでは微粒子同士が潤滑剤中で凝集しやすくなり、一次粒子径が小さくても二次粒子径が大きくなる。よって、潤滑剤内での微粒子の分散状態が悪くなるという欠点がある。また、モリブデン酸は潮解性があるので、気相で微粒子化させても、保存・運搬中に空気中の水分により粒子同士が結合してしまい、結果として粒子径が大きくなってしまい満足できる結果が得られない。
特開2000−53989号公報
特開平7−118683号公報
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、グリース組成物中のモリブデン酸塩が微粒子で分散状態を維持でき、高面圧下での耐摩耗特性に優れたグリース組成物、および、該グリース組成物を封入したグリース封入転がり軸受の提供を目的とする。
本発明のグリース組成物は基油に増ちょう剤を配合してなるベースグリースに、潤滑油とモリブデン酸塩とを含有するモリブデン酸塩分散油を添加してなるグリース組成物であって、上記モリブデン酸塩分散油は、界面活性剤を添加した上記潤滑油中で、上記モリブデン酸塩を湿式粉砕して得られることを特微とする。
また、上記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも一つの界面活性剤であることを特徴とする。
また、上記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも一つの界面活性剤であることを特徴とする。
上記モリブデン酸塩分散油中のモリブデン酸塩の最大粒子径が 0.1μm 〜40μm であることを特徴とする。
なお最大粒子径は、得られたモリブデン酸塩分散潤滑油を脱脂して、粉砕されたモリブデン酸塩粒子の長辺を電子顕微鏡で倍率 1000 倍にて、5 視野観察し最も大きいものを最大粒子径とした。
なお最大粒子径は、得られたモリブデン酸塩分散潤滑油を脱脂して、粉砕されたモリブデン酸塩粒子の長辺を電子顕微鏡で倍率 1000 倍にて、5 視野観察し最も大きいものを最大粒子径とした。
本発明のグリース封入転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する転動体とを備えてなり、この転動体の周囲に上記グリース組成物を封入されてなることを特徴とする。
本発明のグリース組成物は、ベースグリースに、モリブデン酸塩を界面活性剤の存在下で潤滑油中で湿式粉砕して得られるモリブデン酸塩分散油を添加して得られるので、グリース組成物中においてモリブデン酸塩が凝集することがなく微粒子で分散した状態であり、モリブデン酸塩の特性が有効に利用されることで高面圧下での耐摩耗特性に優れる。
また、本発明のグリース封入転がり軸受は、上記グリース組成物を封入してなるので、耐摩耗特性に優れ、高面圧下においても摺動部の摩耗が抑えられる。
高面圧下での摩耗を低減するグリース組成物を提供すべく、種々の試料を作成しSRV試験を行なって、耐摩耗特性について評価した。種々のグリース組成物を鋭意検討した結果、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに、モリブデン酸塩を界面活性剤を用いて潤滑油中で分散させたモリブデン酸塩分散油を添加したグリース組成物は優れた耐摩耗性を示すことを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明において界面活性剤を用いる効果については、潤滑油中で粉砕されたモリブデン酸塩の微粒子を界面活性剤で包み込み、潤滑油中で分散させることができることである。その結果、本来潤滑油に対して親和性のないモリブデン酸塩の微粒子が界面活性剤で包み込まれて潤滑油に対する親和性が向上するため、潤滑油中で分散状態をより維持しやすくなり、沈澱によりモリブデン酸塩添加の効果が減少することを防止できる。そのためモリブデン酸塩分散油をグリースに添加した場合でも、グリース中においてモリブデン酸塩が微粒子での分散状態を保つことができる。
界面活性剤は一つの分子内に親水基と親油基という性質の異なる官能基を持つ。界面活性剤はその構造から、親水基が電離してイオンになるイオン性界面活性剤とイオン化しない非イオン性界面活性剤とに分けることができる。イオン性界面活性剤はさらに電離したイオンの性質によってマイナスイオンに電離する陰イオン性界面活性剤、プラスイオンに電離する陽イオン性界面活性剤、系のpHによってマイナスにもプラスにも電離する両性界面活性剤に細かく分類される。
本発明において使用する界面活性剤としては、モリブデン酸塩と親和性のよい陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも一つの界面活性剤であることが好ましい。
本発明において使用する界面活性剤としては、モリブデン酸塩と親和性のよい陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも一つの界面活性剤であることが好ましい。
陰イオン性界面活性剤の例としては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、アシルグルタミン酸塩、イミダゾリン塩系化合物、ポリカルボン酸塩型高分子、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物塩等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレングリセリド等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
界面活性剤の併用には微粉化されたモリブデン酸塩が潤滑剤中で凝集することを防ぐことによって、モリブデン酸塩の分散状態を良好にし、かつモリブデン酸塩が二次粒子として大きくなることを防ぐ効果がある。
界面活性剤の併用には微粉化されたモリブデン酸塩が潤滑剤中で凝集することを防ぐことによって、モリブデン酸塩の分散状態を良好にし、かつモリブデン酸塩が二次粒子として大きくなることを防ぐ効果がある。
モリブデン酸塩分散油中に占める界面活性剤の配合割合は 0.05 重量%〜5 重量%であることが好ましい。0.05 重量%未満では微粉化されたモリブデン酸塩を潤滑剤中に分散させる界面活性剤の量が不足し、モリブデン酸塩微粒子の凝集や二次粒子径の増大が生じる。5 重量%をこえると微粉化されたモリブデン酸塩を潤滑剤中分散させる効果が頭打ちになりコスト的に不利になる。
本発明ではモリブデン酸塩分散油の調整に湿式粉砕法を採用している。固体/粉体の一般的な粉砕方法としては、乾式と湿式とがある。乾式粉砕法とは、ドライな粉・粒体を気相や真空中で粉砕する方法である。湿式粉砕法とは、液相中で粉体(粒子)を粉砕する方法である。乾式粉砕法では、粒子径分布がシャープになり分級機能を持つという利点があるが、潤滑油などの液相に粒子が分散しにくいという欠点がある。
湿式粉砕では液相(ここでは潤滑油)中で、液相に対して親和性のない粉体(ここではモリブデン酸塩)を界面活性剤の存在下で粉砕するため、粉砕された粉体は界面活性剤に包み込まれて液相に対する親和性が向上し、結果としてモリブデン酸塩の分散性が向上し凝集や沈澱が生じにくくなる。
湿式粉砕では液相(ここでは潤滑油)中で、液相に対して親和性のない粉体(ここではモリブデン酸塩)を界面活性剤の存在下で粉砕するため、粉砕された粉体は界面活性剤に包み込まれて液相に対する親和性が向上し、結果としてモリブデン酸塩の分散性が向上し凝集や沈澱が生じにくくなる。
本発明でモリブデン酸塩分散油の調整に用いるモリブデン酸塩の粉砕機は、湿式粉砕が可能であれば一般的な粉砕機を使用することができる。例えばボールミル、ロッドミル、遊星ミル、アトマイザーミル、ビーズミル、乳鉢、三段ロールミル、コロイドミル、コーンミル、オートフォーミル、アルティマイザー、ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、これらを組み合わせた粉砕機でもよい。
本発明に用いるモリブデン酸塩は、潤滑界面で反応して耐摩耗性等の特性を示す。モリブデン酸塩をグリース組成物に添加すると、摺動面においてモリブデン酸塩が反応し酸化モリブデンを生成することがXPS分析によりわかった。この酸化モリブデンが摩耗を抑制する効果を持つと考えられる。
モリブデン酸塩の最大粒子径が大きいと潤滑部に入っていきにくく、小さ過ぎると摺動部の粗さの中にモリブデン酸塩が埋没してしまい、反応が起きないため、その効果が発揮されない。よってグリース中に添加されるモリブデン酸塩のモリブデン酸塩分散油中における最大粒子径は 0.1μm 〜40μm であることが望ましい。下限の 0.1μm は軸受の転走面粗さを考慮した値である。上限の 40μm は種々の実験から確認された値であり、40μmをこえると耐摩耗性等に劣る。
モリブデン酸塩の最大粒子径が大きいと潤滑部に入っていきにくく、小さ過ぎると摺動部の粗さの中にモリブデン酸塩が埋没してしまい、反応が起きないため、その効果が発揮されない。よってグリース中に添加されるモリブデン酸塩のモリブデン酸塩分散油中における最大粒子径は 0.1μm 〜40μm であることが望ましい。下限の 0.1μm は軸受の転走面粗さを考慮した値である。上限の 40μm は種々の実験から確認された値であり、40μmをこえると耐摩耗性等に劣る。
本発明に用いるモリブデン酸塩は金属塩であることが望ましく、該金属塩はアルカリ金属塩であることがさらに望ましい。
本発明に使用できるモリブデン酸のアルカリ金属塩は、代表的なものとしてモリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸リチウムなどが挙げられる。モリブデン酸のアルカリ金属塩は油に不溶の固体であるので、グリース中においては、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤と同様に分散した状態で存在する。モリブデン酸のアルカリ金属塩は転がり軸受内の各摺動部の潤滑界面において反応し、金属表面上に酸化モリブデンを形成する。モリブデン酸のアルカリ金属塩により耐摩耗性が発揮される機構は明らかにはなっていないが、上述したように生成される酸化モリブデンに耐摩耗性があると考えられる。
本発明に使用できるモリブデン酸のアルカリ金属塩は、代表的なものとしてモリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸リチウムなどが挙げられる。モリブデン酸のアルカリ金属塩は油に不溶の固体であるので、グリース中においては、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤と同様に分散した状態で存在する。モリブデン酸のアルカリ金属塩は転がり軸受内の各摺動部の潤滑界面において反応し、金属表面上に酸化モリブデンを形成する。モリブデン酸のアルカリ金属塩により耐摩耗性が発揮される機構は明らかにはなっていないが、上述したように生成される酸化モリブデンに耐摩耗性があると考えられる。
本発明においてモリブデン酸塩分散油中に占めるモリブデン酸塩の配合量は、1 重量%〜60 重量%であることが好ましく、5 重量%〜50 重量%であることがさらに好ましい。1 重量%未満であると粉砕物(モリブデン酸塩)の量が少なくなるため、粉砕しにくくなるだけでなく粉砕時間が長くなり実用的でない。また、60 重量%をこえるとモリブデン酸塩を微分散させた油が流動性を失い、粉砕や分散が困難になる。
本発明においてベースグリースへのモリブデン酸塩分散油の添加は、グリース組成物全体に占めるモリブデン酸塩の配合量が、0.1 重量%〜10 重量%になるように添加する。0.1 重量%未満の場合には充分な効果が得られない。また、10 重量%をこえる場合には効果が頭打ちになりコスト的に不利になる。
本発明においてベースグリースに用いる基油およびモリブデン酸塩分散油に用いる潤滑油としては、一般的に使用されている基油であれば制限なく使用できる。例えば、ナフテン系、パラフィン系、流動パラフィン、水素化脱ろう油などの鉱油、ポリアルキレングリコールなどのポリグリコール油、アルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテルなどのエーテル系合成油、ジエステル油、ポリオールエステル油などのエステル系合成油、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなどのシリコーン油、GTL基油、ポリ−α−オレフィン油等の炭化水素系合成油、フッ素油等、また、これらの混合油が挙げられる。
本発明においてベースグリースに用いる増ちょう剤は、一般的に使用されている増ちょう剤であれば特に制限なく使用することができる。例えば、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア化合物が挙げられる。
本発明のグリース組成物は、その優れた性能を高めるため、必要に応じて公知の添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステル等の錆止め剤、硫化油脂、硫化オレフィンに代表される硫黄系化合物、チオフォスフェート、チオフォスファイトに代表される硫黄−リン系化合物、トリクレジルフォスフェートに代表されるリン系化合物等の極圧剤、金属スルフォネート、金属フォスフェート等の清浄分散剤、有機モリブデン等の摩擦低減剤、ワックス系化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸、アミン、油脂類等の油性剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤等が挙げられる。これらを単独または 2 種類以上組合せて添加できる。
本発明のグリース封入転がり軸受の一例を図1に示す。図1は深溝玉軸受の断面図である。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲に本発明のグリース組成物7が封入される。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲に本発明のグリース組成物7が封入される。
本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
[モリブデン酸塩分散油の作製]
表1に示す配合および粉砕方法で、7 種類のモリブデン酸塩分散油を作製し、後で説明するベースグリースに添加し、評価した。なお、モリブデン酸塩分散油Gのみは、予めジェットミルによる乾式法にて微粉砕したモリブデン酸塩を界面活性剤とともに潤滑油に添加・混合して作成した。得られたモリブデン酸塩分散油を脱脂して、粉砕されたモリブデン酸塩のみを電子顕微鏡にて観察した。最大粒子径を直接測定し、表1に併記した。
[モリブデン酸塩分散油の作製]
表1に示す配合および粉砕方法で、7 種類のモリブデン酸塩分散油を作製し、後で説明するベースグリースに添加し、評価した。なお、モリブデン酸塩分散油Gのみは、予めジェットミルによる乾式法にて微粉砕したモリブデン酸塩を界面活性剤とともに潤滑油に添加・混合して作成した。得られたモリブデン酸塩分散油を脱脂して、粉砕されたモリブデン酸塩のみを電子顕微鏡にて観察した。最大粒子径を直接測定し、表1に併記した。
実施例1〜実施例3および比較例1、比較例4、比較例6
鉱油( 100℃での動粘度が 13.5 mm2/sec )1800 g 中で、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム 200 g を溶解させ、均一に分散させてベースグリース1を得た。このベースグリース1を三段ロールミルでJISちょう度No.1グレード(ちょう度:310〜340 )に調整した。表2に示す配合で、先に調整したモリブデン酸塩分散油またはモリブデン酸塩(試薬)を添加・混合し、得られたグリース組成物について摩耗特性を評価した。
鉱油( 100℃での動粘度が 13.5 mm2/sec )1800 g 中で、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム 200 g を溶解させ、均一に分散させてベースグリース1を得た。このベースグリース1を三段ロールミルでJISちょう度No.1グレード(ちょう度:310〜340 )に調整した。表2に示す配合で、先に調整したモリブデン酸塩分散油またはモリブデン酸塩(試薬)を添加・混合し、得られたグリース組成物について摩耗特性を評価した。
実施例4〜実施例6および比較例2、比較例3、比較例5
鉱油( 100℃での動粘度が 13.5 mm2/sec )1800 g 中で、ジフェニルメタン−4、4'−ジイソシアネー卜 98.4 g と、オクチルアミン 102.6 g とを反応させ、生成したウレア化合物を均一に分散させてベースグリース2を得た。このベースグリース2を三段ロールミルでJISちょう度No.1グレード(ちょう度:310〜340 )に調整した。表2に示す配合で、先に調整したモリブデン酸塩分散油またはモリブデン酸塩(試薬)を添加・混合し、得られたグリースについて摩耗特性を評価した。
鉱油( 100℃での動粘度が 13.5 mm2/sec )1800 g 中で、ジフェニルメタン−4、4'−ジイソシアネー卜 98.4 g と、オクチルアミン 102.6 g とを反応させ、生成したウレア化合物を均一に分散させてベースグリース2を得た。このベースグリース2を三段ロールミルでJISちょう度No.1グレード(ちょう度:310〜340 )に調整した。表2に示す配合で、先に調整したモリブデン酸塩分散油またはモリブデン酸塩(試薬)を添加・混合し、得られたグリースについて摩耗特性を評価した。
これらのグリースにつき、SRV往復動摩擦摩耗試験を用いて、以下の条件にて摩耗試験を行ない、上記グリース組成物の耐摩耗性能を比較した。
<SRV往復動摩擦摩耗試験>
測定条件: 荷重 800 N
振幅 1 mm
周波数 20 Hz
試験時間 5 時間
ボール SUJ2製φ10 mm 鋼球
ディスク SCM材
評価方法: 試験終了後のボールの摩耗体積を測定し、摩耗体積が 80×10-5mm3 以下であるグリース組成物を耐摩耗特性に優れていると判定して「○」を、それ以外を不可と判定して「×」を表2に併記した。
<SRV往復動摩擦摩耗試験>
測定条件: 荷重 800 N
振幅 1 mm
周波数 20 Hz
試験時間 5 時間
ボール SUJ2製φ10 mm 鋼球
ディスク SCM材
評価方法: 試験終了後のボールの摩耗体積を測定し、摩耗体積が 80×10-5mm3 以下であるグリース組成物を耐摩耗特性に優れていると判定して「○」を、それ以外を不可と判定して「×」を表2に併記した。
表2に示すように、各実施例は耐摩耗性能に優れ、比較例は耐摩耗性能に劣っていた。また、界面活性剤の存在下で湿式粉砕しなかったモリブデン酸塩分散液Gを使用した比較例6では耐摩耗性能に劣っていた。
本発明のグリース組成物は、高面圧下で潤滑される部位ですべりが発生した場合にも転がり軸受の摺動部の摩耗を抑えることができる。このため、各種産業機械用および自動車用等に用いられる各種転がり軸受に好適に利用できる。
1 深溝玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8a、8b 開口部
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8a、8b 開口部
Claims (4)
- 基油に増ちょう剤を配合してなるベースグリースに、潤滑油とモリブデン酸塩とを含有するモリブデン酸塩分散油を添加してなるグリース組成物であって、
前記モリブデン酸塩分散油は、界面活性剤を添加した前記潤滑油中で、前記モリブデン酸塩を湿式粉砕して得られることを特微とするグリース組成物。 - 前記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも一つの界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
- 前記モリブデン酸塩分散油中のモリブデン酸塩の最大粒子径が 0.1μm 〜40μm であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のグリース組成物。
- 内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封入してなるグリース封入転がり軸受であって、
前記グリース組成物が、請求項1、請求項2または請求項3記載のグリース組成物であることを特徴とするグリース封入転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005376458A JP2007177063A (ja) | 2005-12-27 | 2005-12-27 | グリース組成物およびグリース封入転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005376458A JP2007177063A (ja) | 2005-12-27 | 2005-12-27 | グリース組成物およびグリース封入転がり軸受 |
Publications (1)
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---|---|
JP2007177063A true JP2007177063A (ja) | 2007-07-12 |
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Family Applications (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP2017088749A (ja) * | 2015-11-11 | 2017-05-25 | 株式会社Adeka | 潤滑油組成物及びその製造方法 |
WO2023048119A1 (ja) * | 2021-09-23 | 2023-03-30 | Ntn株式会社 | グリース組成物およびグリース封入軸受 |
-
2005
- 2005-12-27 JP JP2005376458A patent/JP2007177063A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010026926A1 (ja) * | 2008-09-05 | 2010-03-11 | Ntn株式会社 | 転がり軸受 |
CN102144106A (zh) * | 2008-09-05 | 2011-08-03 | Ntn株式会社 | 滚动轴承 |
JP2017088749A (ja) * | 2015-11-11 | 2017-05-25 | 株式会社Adeka | 潤滑油組成物及びその製造方法 |
WO2023048119A1 (ja) * | 2021-09-23 | 2023-03-30 | Ntn株式会社 | グリース組成物およびグリース封入軸受 |
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