JP2014049458A - 炭化珪素半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきを抑制する。
【解決手段】炭化珪素基板101の各々の高さ位置が互いに異なるようにチャンバ300内に炭化珪素基板300が収められる。チャンバ300内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも小さくなるように、チャンバ300内の雰囲気が調整される。炭化珪素基板101に対して熱エッチングが行われる。熱エッチングが行われる際に、加熱されたチャンバ300内へ炭化珪素基板101の上方からプロセスガスが導入される。プロセスガスは塩素ガスを含む。
【選択図】図15
【解決手段】炭化珪素基板101の各々の高さ位置が互いに異なるようにチャンバ300内に炭化珪素基板300が収められる。チャンバ300内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも小さくなるように、チャンバ300内の雰囲気が調整される。炭化珪素基板101に対して熱エッチングが行われる。熱エッチングが行われる際に、加熱されたチャンバ300内へ炭化珪素基板101の上方からプロセスガスが導入される。プロセスガスは塩素ガスを含む。
【選択図】図15
Description
この発明は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関するものであり、特に、熱エッチングを用いたものに関するものである。
国際公開第2012/017796号によれば、トレンチが形成された炭化珪素基板を有するMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の製造方法が開示されている。トレンチは、塩素ガスを用いた熱エッチングにより形成される。
上記文献に記載されているような炭化珪素半導体装置の製造を効率よく行うためには、複数の炭化珪素基板に対する熱エッチングを一括して行うことが好ましい。しかしその場合、複数の炭化珪素基板の間で熱エッチングのばらつきが生じやすかった。
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきを抑制することができる、炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することである。
本発明の炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の工程を有する。複数の炭化珪素基板の各々の高さ位置が互いに異なるようにチャンバ内に複数の炭化珪素基板が収められる。複数の炭化珪素基板が収められたチャンバ内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも小さくなるように、チャンバ内の雰囲気が調整される。チャンバ内の雰囲気を調整する工程の後に、複数の炭化珪素基板に対して熱エッチングが行われる。熱エッチングが行われる際に、加熱されたチャンバ内へ複数の炭化珪素基板の上方からプロセスガスが導入される。プロセスガスは塩素ガスを含む。
この製造方法によれば、塩素の原子量よりも小さい平均分子量を有する雰囲気中へ複数の炭化珪素基板の上方から塩素ガスが導入される。これにより塩素ガスが上方から下方へと速やかに拡散する。よって複数の炭化珪素基板のうち上方に位置するものと下方に位置するものとの間での、熱エッチングの開始時期のずれを抑制することができる。よって複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきを抑制することができる。
チャンバ内の雰囲気が調整される際に、チャンバ内へ窒素ガスおよびヘリウムガスの少なくともいずれかが導入されてもよい。これにより塩素の原子量よりも小さい平均分子量を有する雰囲気を得ることができる。
熱エッチングが行われる際に、複数の炭化珪素基板が700℃以上1050℃以下に加熱されてもよい。700℃以上の温度が用いられることで、熱エッチングにおいて実用的なエッチングレートが得られる。1050℃以下の温度が用いられることで、エッチングレートが過大になることが避けられる。よってチャンバ内に塩素ガスが導入され始めた時点、すなわちチャンバ内における塩素ガス濃度のばらつきが未だ大きい時点で、エッチングが急速に進行してしまうことを避けることができる。よって複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
プロセスガスは、チャンバ内の塩素の分圧が大気圧よりも低くなるように導入されてもよい。これにより、エッチングレートが過大となることが避けられる。よってチャンバ内に塩素ガスが導入され始めた時点、すなわちチャンバ内における塩素ガス濃度のばらつきが大きい時点で、エッチングが急速に進行してしまうことを避けることができる。よって複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
プロセスガスはキャリアガスを含んでもよい。これによりチャンバ中で塩素ガスがより速やかに拡散される。よって複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
プロセスガスは酸素原子を含んでもよい。これにより熱エッチング中に生成されたカーボンを酸化反応によって除去することができる。よって熱エッチング中にカーボン被膜が形成されてしまうことに起因したエッチングレートの低下を抑制することができる。
熱エッチングが行われた後に、熱エッチングが停止するようにチャンバ内の雰囲気が変化させられてもよい。チャンバ内の雰囲気は、複数の炭化珪素基板が収められたチャンバ内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも大きくなるように変化させられてもよい。これによりチャンバ内の塩素ガスが速やかに追い出される。よって複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
上記のように本発明によれば、複数の炭化珪素基板の間での熱エッチングのばらつきを抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
図1および図2に示すように、本実施の形態のMOSFET201(炭化珪素半導体装置)は、エピタキシャル基板101(炭化珪素基板)と、ゲート酸化膜91(ゲート絶縁膜)と、ゲート電極92と、層間絶縁膜93と、ソース電極94と、ソース配線層95と、ドレイン電極98とを有する。エピタキシャル基板101は、炭化珪素からなり、好ましくはポリタイプ4Hを有する。エピタキシャル基板101は具体的には、単結晶基板80と、その上に設けられることで主面MSを構成しているエピタキシャル層とを有する。このエピタキシャル層は、nドリフト層81と、pベース層82と、n領域83と、pコンタクト領域84とを有する。
単結晶基板80は、n型(第1の導電型)を有する。nドリフト層81は単結晶基板80上に形成されたエピタキシャル層である。nドリフト層81はn型を有する。nドリフト層81の不純物濃度は、単結晶基板80の不純物濃度よりも低いことが好ましい。nドリフト層81のドナー濃度は、好ましくは1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下であり、たとえば8×1015cm-3である。
pベース層82はp型を有する。pベース層82はnドリフト層81上に設けられている。pベース層82の不純物濃度は、たとえば1×1018cm-3である。n領域83はn型を有する。n領域83は、pベース層82によってnドリフト層81から隔てられるようにpベース層82上に設けられている。pコンタクト領域84はp型を有する。pコンタクト領域84はpベース層82につながっている。
エピタキシャル基板101の単結晶基板80と反対の面(図1における上面)、すなわち主面MSには、トレンチTRが設けられている。トレンチTRは側壁面SWおよび底面BTを有する。側壁面SWはn領域83およびpベース層82を貫通してnドリフト層81に至っている。側壁面SWはpベース層82上において、MOSFET201のチャネル面を含む。
側壁面SWはエピタキシャル基板101の主面MS(図1における上面)に対して傾斜しており、これによりトレンチTRは開口に向かってテーパ状に拡がっている。側壁面SWの面方位は、(000−1)面に対して50°以上65°以下傾斜していることが好ましい。好ましくは側壁面SWは、特にpベース層82上の部分において、所定の結晶面(特殊面とも称する)を有する。特殊面の詳細については後述する。底面BTはnドリフト層81上に位置している。本実施の形態においてはエピタキシャル基板101の主面MSとほぼ平行な平坦な形状を有する。
ゲート酸化膜91は、トレンチTRの側壁面SWおよび底面BTの各々を覆っている。ゲート電極92はゲート酸化膜91上に設けられている。ソース電極94は、n領域83およびpコンタクト領域84の各々に接している。ソース配線層95はソース電極94に接している。ソース配線層95は、たとえばアルミニウム層である。層間絶縁膜93はゲート電極92とソース配線層95との間を絶縁している。
図3に示すように、単結晶基板80上における炭化珪素のエピタキシャル成長によってnドリフト層81が形成される。単結晶基板80の、エピタキシャル成長が行われる面は、{000−1}面から8度以内のオフ角を有することが好ましく、(000−1)面から8度以内のオフ角を有することがより好ましい。エピタキシャル成長はCVD(Chemical Vapor Deposition)法により行われ得る。原料ガスとしては、たとえば、シラン(SiH4)とプロパン(C3H8)との混合ガスを用い得る。この際、不純物として、たとえば窒素(N)やリン(P)を導入することが好ましい。
図4に示すように、nドリフト層81上にpベース層82およびn領域83が形成されることでエピタキシャル基板101が得られる。これらの形成は、たとえばnドリフト層81の全面上へのイオン注入により行い得る。pベース層82を形成するためのイオン注入においては、たとえばアルミニウム(Al)などの、p型を付与するための不純物がイオン注入される。またn領域83を形成するためのイオン注入においては、たとえばリン(P)などの、n型を付与するための不純物がイオン注入される。なおイオン注入の代わり、不純物の添加をともなうにエピタキシャル成長が用いられてもよい。
図5に示すように、エピタキシャル基板101のn領域83上にレジスト層60が形成される。次にレジスト層60に対する露光および現像が行われる。これにより、pコンタクト領域84が形成されることになる位置に対応した開口を有するレジスト層61(図6)が形成される。次にレジスト層61を用いたイオン注入により、pコンタクト領域84が形成される。次にレジスト層61が除去される(図7)。次に、不純物を活性化するための熱処理が行われる。この熱処理の温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。熱処理の時間は、たとえば30分程度である。熱処理の雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばアルゴン(Ar)雰囲気である。
図8を参照して、まず、n領域83およびpコンタクト領域84からなる主面MS上にマスク層40が形成される。言い換えれば、マスク層40によって被覆された主面MSを有するエピタキシャル基板101が準備される。好ましくはマスク層40は主面MSの熱酸化により形成される。次にマスク層40上に、パターンを有するフォトレジスト層30が、フォトレジストの塗布、乾燥、露光および現像により形成される。パターンの開口部はトレンチTR(図1)の位置に対応して形成される。
図9に示すように、フォトレジスト層30をマスクとして用いたエッチングによって、マスク層40に、主面MSの一部を露出する開口部OPが形成される。次にフォトレジスト層30が除去される(図10)。
図11に示すように、マスク層40の開口部において、n領域83と、pベース層82と、nドリフト層81の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング(RIE)、特に誘導結合プラズマ(ICP)RIEを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとしてSF6またはSF6とO2との混合ガスを用いたICP−RIEを用いることができる。このようなエッチングにより、トレンチTR(図1)が形成されるべき領域に、エピタキシャル基板101の厚さ方向(図中の縦方向)にほぼ沿った側壁を有する凹部TQが形成される。
図12に示すように、開口部OPが形成されたマスク層40によって被覆された主面MSを有するエピタキシャル基板101に対して、加熱下で反応性ガスの供給が行われる。これにより熱エッチングが行われる。その結果、エピタキシャル基板101の主面MSにトレンチTRが形成される。好ましくは、トレンチTRの形成時に、側壁面SW上、特にpベース層82上において、特殊面が自己形成される。
上述した、トレンチTRの熱エッチングによる形成方法について、図13〜図17を参照して、より詳しく説明する。なお図13は、トレンチTRを形成するためのステップP1〜P5における、時間tと温度Tとの関係を示す温度プロファイルである。
図14を参照して、各々が図11までの工程によって形成されたエピタキシャル基板101が準備される。なお図14〜図17においては、エピタキシャル基板101が有する微細構造と、マスク層40とは図示されていない。また複数のエピタキシャル基板101を互いに区別するために、複数のエピタキシャル基板101がエピタキシャル基板101a〜101dとして示されている。
また熱エッチング装置が準備される。熱エッチング装置は、チャンバ300と、ガス導入部301と、ガス排出部302とを有する。チャンバ300は、その内部に複数の基板を重力方向Gに沿って並べることができるように構成されている。ガス導入部301は複数の基板の上方からプロセスガスを導入するためのものである。ガス排出部302は、チャンバ300からガスを排出するためのものである。ガス排出部302は複数の基板よりも下方に設けられていることが好ましい。
次に、エピタキシャル基板101a〜101dの各々の高さ位置が互いに異なるようにチャンバ300内にエピタキシャル基板101a〜101dが収められる。具体的には、エピタキシャル基板101a〜101dがこの順に上方から配置される。言い換えれば、エピタキシャル基板101a〜101dがこの順に重力方向Gに向かって並ぶように配置される。
図15を参照して、ステップP1(図13)として、複数のエピタキシャル基板101が収められたチャンバ300内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも小さくなるように、チャンバ300内の雰囲気が調整される。具体的には、チャンバ300内のガスをガス排出部302から追い出すように、ガス導入部301からチャンバ300内へ窒素ガスまたはヘリウムガスが導入される(矢印PL)。これによりチャンバ300内の雰囲気が、塩素の原子量よりも小さい平均分子量を有する雰囲気に置換される。またチャンバ300内の温度が温度TE(図13)へと上げられる。温度TEは、好ましくは600℃以上1250℃以下であり、より好ましくは700℃以上1050℃以下である。
図16を参照して、ステップP2(図13)として、加熱されたチャンバ300内へガス導入部301からプロセスガスが導入される(矢印PC)。プロセスガスは塩素ガスを含む。これにより、温度TEに加熱されたエピタキシャル基板101a〜101dに対して熱エッチングが行われる。その結果、トレンチTRが形成される(図12)。なおチャンバ300内へ導入された塩素分子(Cl2)の原子間結合は、チャンバ300内での加熱により切断される。プロセスガスは、チャンバ300内の塩素の分圧が大気圧(標準的には101325Pa程度)よりも低くなるように導入されてもよい。プロセスガスはキャリアガスを含んでもよい。プロセスガスは酸素原子を含んでもよい。たとえば、プロセスガスは、塩素ガス100〜80%および酸素ガス0〜20%からなる混合ガスを含む。
図17を参照して、ステップP3(図13)として、熱エッチングが停止するようにチャンバ300内の雰囲気が変化させられる。具体的には、チャンバ300内へガス導入部301から、熱エッチングの作用を実質的に有しないようなガスが導入される(矢印PH)。これにより、熱エッチングのプロセスガスが追い出されるようなガス置換がなされる。好ましくはこの置換によって、チャンバ300内の雰囲気が、チャンバ300内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも大きくなるように変化させられる。このような置換のためのガスとしては、たとえばアルゴンガスを用い得る。
ステップP4(図13)として、チャンバ300内の雰囲気が酸素を含むものとされる。これによりチャンバ300中のカーボンが酸化によって除去される。ステップP5(図13)として、チャンバ300中の雰囲気が不活性ガス雰囲気とされる。またチャンバ300の温度が下げられる。十分に温度が低くなった後、エピタキシャル基板101(図12)がチャンバ300から取り出される。
次にマスク層40(図12)がエッチングなど任意の方法により除去される。次に、図18に示すように、トレンチTRの側壁面SWおよび底面BTの上にゲート酸化膜91が形成される。ゲート酸化膜91は、たとえば熱酸化により形成され得る。
ゲート酸化膜91の形成後に、雰囲気ガスとして一酸化窒素(NO)ガスを用いるNOアニールが行われてもよい。温度プロファイルは、たとえば、温度1100℃以上1300℃以下、保持時間1時間程度の条件を有する。これにより、ゲート酸化膜91とpベース層82との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。なお、このような窒素原子の導入が可能であれば、NOガス以外のガスが雰囲気ガスとして用いられてもよい。
このNOアニールの後にさらに、雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用いるArアニールが行われてもよい。Arアニールの加熱温度は、上記NOアニールの加熱温度よりも高く、ゲート酸化膜91の融点よりも低いことが好ましい。この加熱温度が保持される時間は、たとえば1時間程度である。これにより、ゲート酸化膜91とpベース層82との界面領域における界面準位の形成がさらに抑制される。なお、雰囲気ガスとして、Arガスに代えて窒素ガスなどの他の不活性ガスが用いられてもよい。
図19に示すように、ゲート酸化膜91上にゲート電極92が形成される。具体的には、トレンチTRの内部の領域をゲート酸化膜91を介して埋めるように、ゲート酸化膜91上にゲート電極92が形成される。ゲート電極92の形成方法は、たとえば、導体またはドープトポリシリコンの成膜とCMPとによって行い得る。
図20を参照して、ゲート電極92の露出面を覆うように、ゲート電極92およびゲート酸化膜91上に層間絶縁膜93が形成される。層間絶縁膜93およびゲート酸化膜91に開口部が形成されるようにエッチングが行われる。この開口部により主面MS上においてn領域83およびpコンタクト領域84の各々が露出される。次に主面MS上においてn領域83およびnコンタクト領域84の各々に接するソース電極94が形成される。nドリフト層81上に、単結晶基板80を介して、ドレイン電極98が形成される。
再び図1を参照して、ソース配線層95が形成される。これにより、MOSFET201が得られる。
本実施の形態によれば、塩素の原子量よりも小さい平均分子量を有する雰囲気中へエピタキシャル基板101a〜101dの上方から塩素ガスが導入される(図16)。これにより塩素ガスが上方から下方へと速やかに拡散する。よってエピタキシャル基板101a〜101dのうち上方に位置するもの(エピタキシャル基板101a)と下方に位置するもの(エピタキシャル基板101d)との間での、熱エッチングの開始時期のずれを抑制することができる。よってエピタキシャル基板101a〜101dの間での熱エッチングのばらつきを抑制することができる。
チャンバ300内の雰囲気が調整される際に、チャンバ300内へ窒素ガスおよびヘリウムガスの少なくともいずれかが導入されてもよい(図15)。これにより塩素の原子量よりも小さい平均分子量を有する雰囲気を得ることができる。
熱エッチングが行われる際に、エピタキシャル基板101a〜101dが700℃以上1050℃以下に加熱されてもよい。700℃以上の温度が用いられることで、熱エッチングにおいて実用的なエッチングレートが得られる。1050℃以下の温度が用いられることで、エッチングレートが過大になることが避けられる。よってチャンバ300内に塩素ガスが導入され始めた時点、すなわちチャンバ300内における塩素ガス濃度のばらつきが未だ大きい時点で、エッチングが急速に進行してしまうことを避けることができる。よってエピタキシャル基板101a〜101dの間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
プロセスガスは、チャンバ300内の塩素の分圧が大気圧よりも低くなるように導入されてもよい。これにより、エッチングレートが過大になることが避けられる。よってチャンバ300内に塩素ガスが導入され始めた時点、すなわちチャンバ300内における塩素ガス濃度のばらつきが未だ大きい時点で、エッチングが急速に進行してしまうことを避けることができる。よってエピタキシャル基板101a〜101dの間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
プロセスガスはキャリアガスを含んでもよい。これによりチャンバ300中で塩素ガスがより速やかに拡散される。よってエピタキシャル基板101a〜101dの間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
プロセスガスは酸素原子を含んでもよい。これにより熱エッチング中に生成されたカーボンを酸化反応によって除去することができる。よって熱エッチング中にカーボン被膜が形成されてしまうことに起因したエッチングレートの低下を抑制することができる。
熱エッチングが停止するようにチャンバ300内の雰囲気が変化させられてもよい。チャンバ300内の雰囲気は、チャンバ300内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも大きくなるように変化させられてもよい。これによりチャンバ300内の塩素ガスが速やかに追い出される。よってエピタキシャル基板101a〜101dの間での熱エッチングのばらつきをより抑制することができる。
次に上述した「特殊面」について詳しく説明する。上述したように、側壁面SWは特殊面を有することが好ましく、以下、この場合について説明する。
図21に示すように、特殊面を有する側壁面SWは、面S1(第1の面)を含む。面S1は面方位{0−33−8}を有し、好ましくは面方位(0−33−8)を有する。好ましくは側壁面SWは面S1を微視的に含む。好ましくは側壁面SWはさらに面S2(第2の面)を微視的に含む。面S2は面方位{0−11−1}を有し、好ましくは面方位(0−11−1)を有する。ここで「微視的」とは、原子間隔の2倍程度の寸法を少なくとも考慮する程度に詳細に、ということを意味する。このように微視的な構造の観察方法としては、たとえばTEM(Transmission Electron Microscope)を用いることができる。
好ましくは側壁面SWは複合面SRを有する。複合面SRは、面S1およびS2が周期的に繰り返されることによって構成されている。このような周期的構造は、たとえば、TEMまたはAFM(Atomic Force Microscopy)により観察し得る。複合面SRは面方位{0−11−2}を有し、好ましくは面方位(0−11−2)を有する。この場合、複合面SRは{000−1}面に対して巨視的に62°のオフ角を有する。ここで「巨視的」とは、原子間隔程度の寸法を有する微細構造を無視することを意味する。このように巨視的なオフ角の測定としては、たとえば、一般的なX線回折を用いた方法を用い得る。好ましくは、チャネル面上においてキャリアが流れる方向であるチャネル方向CDは、上述した周期的繰り返しが行われる方向に沿っている。
次に、複合面SRの詳細な構造について説明する。
一般に、ポリタイプ4Hの炭化珪素単結晶を(000−1)面から見ると、図22に示すように、Si原子(またはC原子)は、A層の原子(図中の実線)と、この下に位置するB層の原子(図中の破線)と、この下に位置するC層の原子(図中の一点鎖線)と、この下に位置するB層の原子(図示せず)とが繰り返し設けられている。つまり4つの層ABCBを1周期としてABCBABCBABCB・・・のような周期的な積層構造が設けられている。
一般に、ポリタイプ4Hの炭化珪素単結晶を(000−1)面から見ると、図22に示すように、Si原子(またはC原子)は、A層の原子(図中の実線)と、この下に位置するB層の原子(図中の破線)と、この下に位置するC層の原子(図中の一点鎖線)と、この下に位置するB層の原子(図示せず)とが繰り返し設けられている。つまり4つの層ABCBを1周期としてABCBABCBABCB・・・のような周期的な積層構造が設けられている。
図23に示すように、(11−20)面(図22の線XXIII−XXIIIの断面)において、上述した1周期を構成する4つの層ABCBの各層の原子は、(0−11−2)面に完全に沿うようには配列されていない。図23においてはB層の原子の位置を通るように(0−11−2)面が示されており、この場合、A層およびC層の各々の原子は(0−11−2)面からずれていることがわかる。このため、炭化珪素単結晶の表面の巨視的な面方位、すなわち原子レベルの構造を無視した場合の面方位が(0−11−2)に限定されたとしても、この表面は、微視的には様々な構造をとり得る。
図24に示すように、複合面SRは、面方位(0−33−8)を有する面S1と、面S1につながりかつ面S1の面方位と異なる面方位を有する面S2とが交互に設けられることによって構成されている。面S1および面S2の各々の長さは、Si原子(またはC原子)の原子間隔の2倍である。なお面S1および面S2が平均化された面は、(0−11−2)面(図23)に対応する。
図25に示すように、複合面SRを(01−10)面から見て単結晶構造は、部分的に見て立方晶と等価な構造(面S1の部分)を周期的に含んでいる。具体的には複合面SRは、上述した立方晶と等価な構造における面方位(001)を有する面S1と、面S1につながりかつ面S1の面方位と異なる面方位を有する面S2とが交互に設けられることによって構成されている。このように、立方晶と等価な構造における面方位(001)を有する面(図25においては面S1)と、この面につながりかつこの面方位と異なる面方位を有する面(図25においては面S2)とによって表面を構成することは4H以外のポリタイプにおいても可能である。ポリタイプは、たとえば6Hまたは15Rであってもよい。
次に図26を参照して、側壁面SWの結晶面と、チャネル面の移動度MBとの関係について説明する。図26のグラフにおいて、横軸は、チャネル面を有する側壁面SWの巨視的な面方位と(000−1)面とのなす角度D1を示し、縦軸は移動度MBを示す。プロット群CMは側壁面SWが熱エッチングによる特殊面として仕上げられた場合に対応し、プロット群MCはそのような熱エッチングがなされない場合に対応する。
プロット群MCにおける移動度MBは、チャネル面の表面の巨視的な面方位が(0−33−8)のときに最大となった。この理由は、熱エッチングが行われない場合、すなわち、チャネル表面の微視的な構造が特に制御されない場合においては、巨視的な面方位が(0−33−8)とされることによって、微視的な面方位(0−33−8)、つまり原子レベルまで考慮した場合の面方位(0−33−8)が形成される割合が確率的に高くなったためと考えられる。
一方、プロット群CMにおける移動度MBは、チャネル面の表面の巨視的な面方位が(0−11−2)のとき(矢印EX)に最大となった。この理由は、図24および図25に示すように、面方位(0−33−8)を有する多数の面S1が面S2を介して規則正しく稠密に配置されることで、チャネル面の表面において微視的な面方位(0−33−8)が占める割合が高くなったためと考えられる。
なお移動度MBは複合面SR上において方位依存性を有する。図27に示すグラフにおいて、横軸はチャネル方向と<0−11−2>方向との間の角度D2を示し、縦軸はチャネル面の移動度MB(任意単位)を示す。破線はグラフを見やすくするために補助的に付してある。このグラフから、チャネル移動度MBを大きくするには、チャネル方向CD(図21)が有する角度D2は、0°以上60°以下であることが好ましく、ほぼ0°であることがより好ましいことがわかった。
図28に示すように、側壁面SWは複合面SR(図28においては直線で単純化されて示されている。)に加えてさらに面S3(第3の面)を含んでもよい。この場合、側壁面SWの{000−1}面に対するオフ角は、理想的な複合面SRのオフ角である62°からずれる。このずれは小さいことが好ましく、±10°の範囲内であることが好ましい。このような角度範囲に含まれる表面としては、たとえば、巨視的な面方位が{0−33−8}面となる表面がある。より好ましくは、側壁面SWの(000−1)面に対するオフ角は、理想的な複合面SRのオフ角である62°からずれる。このずれは小さいことが好ましく、±10°の範囲内であることが好ましい。このような角度範囲に含まれる表面としては、たとえば、巨視的な面方位が(0−33−8)面となる表面がある。
より具体的には側壁面SWは、面S3および複合面SRが周期的に繰り返されることによって構成された複合面SQを含んでもよい。このような周期的構造は、たとえば、TEMまたはAFM(Atomic Force Microscopy)により観察し得る。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
40 マスク層、80 単結晶基板、81 nドリフト層、82 pベース層、83 n領域、84 pコンタクト領域、91 ゲート酸化膜(ゲート絶縁膜)、92 ゲート電極、93 層間絶縁膜、94 ソース電極、95 ソース配線層、98 ドレイン電極、101 エピタキシャル基板(炭化珪素基板)、201 MOSFET(炭化珪素半導体装置)、300 チャンバ、BT 底面、MS 主面、OP 開口部、SW 側壁面、TR トレンチ。
Claims (7)
- 複数の炭化珪素基板の各々の高さ位置が互いに異なるようにチャンバ内に複数の炭化珪素基板を収める工程と、
前記複数の炭化珪素基板が収められた前記チャンバ内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも小さくなるように、前記チャンバ内の雰囲気を調整する工程と、
前記チャンバ内の雰囲気を調整する工程の後に、前記複数の炭化珪素基板に対して熱エッチングを行う工程とを備え、前記熱エッチングを行う工程は、加熱された前記チャンバ内へ前記複数の炭化珪素基板の上方からプロセスガスを導入する工程を含み、前記プロセスガスは塩素ガスを含む、炭化珪素半導体装置の製造方法。 - 前記チャンバ内の雰囲気を調整する工程は、前記チャンバ内へ窒素ガスおよびヘリウムガスの少なくともいずれかを導入する工程を含む、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
- 前記熱エッチングを行う工程は、前記複数の炭化珪素基板を700℃以上1050℃以下に加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
- 前記プロセスガスを導入する工程は、前記チャンバ内の塩素の分圧が大気圧よりも低くなるように行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
- 前記プロセスガスはキャリアガスを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
- 前記プロセスガスは酸素原子を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
- 前記熱エッチングが停止するように前記チャンバ内の雰囲気を変化させる工程をさらに備え、前記チャンバ内の雰囲気を変化させる工程は、前記複数の炭化珪素基板が収められた前記チャンバ内の雰囲気の平均分子量が塩素の原子量よりも大きくなるように行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
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