JP2014047317A - 生分解性ブロック共重合体及びその製造方法、並びに成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラクチドと環状エステル化合物とのランダム共重合又は交互共重合により形成され、かつラクチド単位として主にL−ラクチド単位を有する第1セグメントと、ラクチドと環状エステル化合物とのランダム共重合又は交互共重合により形成され、かつラクチド単位として主にD−ラクチド単位を有する第2セグメントと、を有するブロック共重合体とする。
【選択図】なし
Description
[2]上記第1セグメント及び上記第2セグメントが、ラクチドと環状エステル化合物とのランダム共重合により形成されている、[1]の生分解性ブロック共重合体。
[3]上記第1セグメントと上記第2セグメントとからなるジブロック共重合体である、[1]又は[2]の生分解性ブロック共重合体。
[4]上記第1セグメント及び上記第2セグメントにおける環状エステル化合物が、δ−バレロラクトン及びε−カプロラクトンのうちの少なくとも一種である、[1]乃至[3]のいずれかの生分解性ブロック共重合体。
[5]ポリ乳酸系の生分解性ブロック共重合体の製造方法であって、反応容器中で、L体及びD体のいずれか一方を主として含むラクチドと、環状エステル化合物とのランダム共重合又は交互共重合により中間体を生成する第1重合工程と、当該第1重合工程により生成された中間体を単離することなく、上記反応容器中に、上記第1重合工程で主に用いたラクチドの鏡像異性体を主として含むラクチドと、環状エステル化合物とを添加してランダム共重合又は交互共重合を行う第2重合工程と、を含む生分解性ブロック共重合体の製造方法。
[6]上記[1]乃至[4]のいずれかの生分解性ブロック共重合体よりなる成形体。
本発明の生分解性ブロック共重合体は、モノマーとして、ラクチド及び環状エステル化合物を用い、これらの開環重合により形成された乳酸系ポリマーである。また、当該ブロック共重合体は、ラクチド成分として、主にL−ラクチドを用いて形成された第1セグメントと、主にD−ラクチドを用いて形成された第2セグメントと、を有する。以下に、本発明の生分解性ブロック共重合体について詳細に説明する。
一方、第2セグメントは、ラクチド単位として、D−ラクチドが開環してなる構成単位(D−ラクチド単位)を主として有する。ここで、本明細書において「主にD−ラクチド単位を有する」とは、第2セグメントに含まれるラクチド単位全体の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上がD−ラクチド単位であることを指す。
本発明における生分解性ブロック共重合体は、ラクチドと環状エステル化合物との開環重合によってワンポットで合成することができる。すなわち、本発明の生分解性ブロック共重合体は、(I)反応容器中で、L体及びD体のいずれか一方を主として含むラクチドと、環状エステル化合物とのランダム共重合又は交互共重合により中間体を生成する第1重合工程と、(II)この中間体を単離することなく、同じ反応容器中に、第1重合工程で主として用いたラクチドの鏡像異性体を主として含むラクチドと、環状エステル化合物とを添加してランダム共重合又は交互共重合を行う第2重合工程と、を含む方法により製造することができる。
金属触媒の使用量は、第1重合反応及び第2重合反応で使用するモノマーの全体量に対して、0.01〜1モル%とすることが好ましい。また、金属触媒を重合系に添加する方法は特に限定せず、例えば第1重合反応及び第2重合反応で必要な量を、一括して添加する方法、分割して添加する方法が挙げられる。これらのうち、第1重合反応の開始前に一括して添加することが好ましい。
また、上記重合反応に際しては重合開始剤を使用してもよい。かかる重合開始剤としてはアルコールが好ましく、その好ましい具体例としては、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、第1重合反応及び第2重合反応で使用するモノマーの全体量に対して、0.01〜2モル%とすることが好ましい。
上記重合反応において、反応条件は特に制限されるものではないが、例えば重合反応を有機溶媒中で行う場合、反応温度は、0〜180℃であることが好ましく、20〜150℃であることが好ましい。反応時間は、第1重合反応及び第2重合反応の各々について、0.5〜72時間であることが好ましく、2〜48時間であることがより好ましい。
第1重合反応の終了後、第2重合反応を行う。その際、第1重合反応の生成物を単離することなく、第1重合反応を行った反応容器中に、第2重合反応で使用するラクチド及び環状エステル化合物を添加することが好ましい。これにより、ワンポット合成を実現でき、反応プロセスを簡略化することができる。第2重合反応に供されるラクチドの添加時期は、第1重合反応によるラクチドと環状エステル化合物との重合開始から0.5〜72時間経過後とすることが好ましい。
以上のようにして、本発明の生分解性ブロック共重合体が得られる。なお、当該重合体の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
[重合体の組成]
重合体の組成(モル比)は、400MHzの核磁気共鳴装置(JEOL JMN-LA400)を用いて測定した1H−NMRスペクトルのピーク積分値比から決定した。
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製TSKgel(G2000HHR+G3000HHR+G4000HHR+G5000HHR)
溶離液:クロロホルム カラム温度:40℃ 流速:1mL/min
[融点(Tm)、融解熱(−ΔHm)及びガラス転移温度(Tg)]
重合体の融点(Tm)、融解熱(−ΔHm)及びガラス転移温度(Tg)は、セイコー電子工業(株)製の示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。測定は、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで行った。
[引張弾性係数、引張強度及び破断伸度]
引張弾性係数、引張強度及び破断伸度は、オリエンテック(株)製のユニバーサル型試験機(品番RTC-1210A)を用いて測定した。ポリマーサンプルのダンベル試験片(40mm×40mm×0.2mm)は、ポリマー材料を180〜200℃で約5分間加熱プレスして作成した(型式SDMP-1000-D、規格JISK-7162-5B)。
反応容器中に、モノマーとしてL−ラクチド(LLA)及びε−カプロラクトン(CL)をLLA:CL=90:10(モル比)の比率で仕込んだ。次いで、溶媒としてトルエン4mlを加えてモノマーを溶解した後、重合開始剤としてベンジルアルコールを全モノマー量(最終生成物を得るまでに使用したモノマーの全体量、以下同じ。)に対して0.2モル%、触媒としてオクチル酸スズ[Sn(Oct)2]を全モノマー量に対して0.05モル%それぞれ加え、アルゴン雰囲気下、油浴中100℃で24時間、反応を行った。
次いで、反応溶液から反応生成物を単離することなく、同じ反応容器中に、モノマーとしてD−ラクチド(DLA)及びε−カプロラクトン(CL)をDLA:CL=90:10(モル比)の仕込み比率で添加し、アルゴン雰囲気下、油浴中100℃で24時間、反応を行った。なお、使用したLLAとDLAは等モル量とした。
反応終了後、反応容器を油浴から取り出して冷却し、重合体を析出させた。析出した重合体をクロロホルムに溶解し、重合体末端の触媒を取り除くことを目的として、重合反応で使用したオクチル酸スズの2倍量(モル量)以上の塩酸を反応溶液に加えて3分以上撹拌し、生成した金属塩を蒸留水中に抽出した。脱水後、反応溶液を過剰量のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、乾燥させることにより重合体を得た(収率94.5重量%)。これをブロック共重合体SC-Copoly(1)とした。
得られた重合体の組成を1H−NMRにより測定したところ、ラクチド(LLAとDLAの合計量、LA)とε−カプロラクトン(CL)との比率はLA:CL=91:9(モル比)であった。また、数平均分子量Mnは5.5×104、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.47であった。
使用するモノマーの仕込み比率を下記表1の通り変更した以外は上記実施例1と同様の操作を行うことにより重合体(SC-Copoly(2)、SC-Copoly(3))を得た。得られた重合体の数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)及び収率を下記表1に併せて示す。
反応容器中に、モノマーとしてL−ラクチド(LLA)及びε−カプロラクトン(CL)をLLA:CL=60:40(モル比)の比率で仕込んだ。次いで、溶媒としてトルエン4mlを加えてモノマーを溶解した後、重合開始剤としてベンジルアルコールを全モノマー量に対して0.2モル%、触媒としてオクチル酸スズ[Sn(Oct)2]を全モノマー量に対して0.05モル%それぞれ加え、アルゴン雰囲気下、油浴中100℃で24時間、反応を行った。反応終了後、反応容器を油浴から取り出して冷却し、重合体を析出させた後は、上記実施例1と同様の操作(触媒の除去及び重合体の単離)を行い、共重合体P(LLA-r-CL)を得た。得られた重合体の数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)及び収率を下記表1に示す。
使用するモノマーとしてL−ラクチド(LLA)に代えてD−ラクチド(DLA)を用いた点、モノマーの仕込み比率をDLA:CL=70:30(モル比)に変更した点、及び反応時間を48時間に変更した点以外は上記比較例1と同様の操作を行うことにより重合体(P(DLA-r-CL))を得た。得られた重合体の数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)及び収率を下記表1に示す。
使用するモノマーをL−ラクチド(LLA)単独とした点以外は上記比較例1と同様の操作を行うことにより単独重合体PLLAを得た。得られた重合体の数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)及び収率を下記表1に示す。
(1)熱的特性の評価
実施例1〜3及び比較例1〜3の各重合体について、融点(Tm)、融解熱(−ΔHm)及びガラス転移温度(Tg)をそれぞれ測定して熱的特性を評価した。それらの結果を下記表2に示す。また、比較例4として、共重合体P(LLA-r-CL)と共重合体P(DLA-r-CL)とのポリマーブレンドP(LLA-r-CL)-blend-P(DLA-r-CL)を下記の通り作製し、得られたポリマーブレンドについて熱的特性を評価した。その結果を下記表2に併せて示す。
比較例1で得られた共重合体P(LLA-r-CL)、及び比較例2で得られた共重合体P(DLA-r-CL)を等重量ずつ、適量のクロロホルムに別々に溶解させた後、それら2種の重合体溶液を混合し、1〜3時間激しく撹拌した。次いで、重合体溶液をテフロン(登録商標)シャーレに流し入れ、キャスト法によりフィルム状のポリマーブレンドP(LLA-r-CL)-blend-P(DLA-r-CL)を得た。
実施例1〜3及び比較例3の各重合体、並びに比較例4のポリマーブレンドについて、引張弾性係数(Tensile modulus)、引張強度(Tensile strength)及び破断伸度(Elongation at break)をそれぞれ測定して機械的特性の評価を行った。その測定結果を下記表3に示す。
実施例1〜3のブロック共重合体SC-Copoly(1)〜(3)について、X線回折測定を行い、ステレオコンプレックス結晶の形成について確認した。測定は、Buruker社製のX線回折装置(D8 Advance 回折計)を用いて2θ=8〜30°の回折強度を測定した。その結果を図1に示す。なお、ポリ乳酸のステレオコンプレックス体は、2θ=12°、21°、24°付近に特有のピークが観察されることが知られている。また、比較例5として、L−ラクチドとε−カプロラクトンとD−ラクチドとのトリブロック共重合体PLLA-b-PCL-b-PDLAを下記の通り合成し、得られたトリブロック共重合体についてX線回折測定を行った。その結果を図1に併せて示す。
反応容器中に、モノマーとしてL−ラクチド(LLA)を、重合反応に使用するモノマー全体の35モル%を仕込んだ。次いで、溶媒としてトルエン4mlを反応容器中に加えてモノマーを溶解し、この溶液中に、重合開始剤としてベンジルアルコールを全モノマー量に対して0.2モル%、触媒としてオクチル酸スズ[Sn(Oct)2]を、使用する全モノマー量に対して0.05モル%それぞれ加え、アルゴン雰囲気下、油浴中100℃で24時間、反応を行った。次いで、反応溶液にモノマーとしてε−カプロラクトン(CL)を、使用するモノマー全体の30モル%追加し、アルゴン雰囲気下、油浴中100℃で24時間、反応を行った。この反応溶液に対し、モノマーとしてD−ラクチド(DLA)をLLAと等モル量加え、アルゴン雰囲気下、油浴中100℃で24時間、反応を行った。反応終了後、反応容器を油浴から取り出して冷却し、重合体を析出させた後は、上記実施例1と同様の操作(触媒の除去及び重合体の単離)を行い、共重合体PLLA-b-PCL-b-PDLAを得た。得られた重合体の組成比は、LA:CL=76:24(モル比)、数平均分子量Mnは4.9×104、分子量分布(Mw/Mn)は2.36、収率は92.9重量%であった。
実施例1〜3のブロック共重合体SC-Copoly(1)〜(3)の生分解性について、タンパク質加水分解酵素として知られているプロティナーゼK(Tritirachium album由来、活性20IU、和光純薬工業(株)製)を用いて評価した。評価は、各重合体のそれぞれにつき、上記比較例4と同様にしてキャスト法によりポリマーフィルムを作成し、これをサンプルとして用いて行った。
酵素をGood緩衝液(Tricine[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン]、pH8.0)にサンプル管瓶内で溶解し、サンプル管瓶を分解試験温度(37℃)に達するまで恒温槽中に置いた。酵素分解液の調製に際しては、蒸留後に更にイオン交換した純水を使用した。次いで、各重合体サンプル(フィルム状)をポリエチレンシートメッシュ(網目約1mm×1mm)内に入れ、これを酵素分解液に浸漬した。サンプル管瓶を往復振とう(100回/秒)させ、所定時間の経過後、サンプルを取り出してイオン交換水でよく洗浄し、乾燥させた後、浸漬前後におけるサンプルの重量減少率により酵素分解性を評価した。その結果を図2及び図3に示す。なお、図2には、実施例1〜3のブロック共重合体SC-Copoly(1)〜(3)、及び比較例1の共重合体P(LLA-r-CL)の結果を示し、図3には、ブロック共重合体SC-Copoly(2)、共重合体P(LLA-r-CL)、単独重合体PLLA、ポリマーブレンド、トリブロック共重合体PLLA-b-PCL-b-PLDAの測定結果を示す。
Claims (6)
- ポリ乳酸系の生分解性ブロック共重合体であって、
ラクチドと環状エステル化合物とのランダム共重合又は交互共重合により形成され、かつラクチド単位として主にL−ラクチド単位を有する第1セグメントと、
ラクチドと環状エステル化合物とのランダム共重合又は交互共重合により形成され、かつラクチド単位として主にD−ラクチド単位を有する第2セグメントと、を有する生分解性ブロック共重合体。 - 前記第1セグメント及び前記第2セグメントが、ラクチドと環状エステル化合物とのランダム共重合により形成されている、請求項1に記載の生分解性ブロック共重合体。
- 前記第1セグメントと前記第2セグメントとからなるジブロック共重合体である、請求項1又は2に記載の生分解性ブロック共重合体。
- 前記第1セグメント及び前記第2セグメントにおける環状エステル化合物が、δ−バレロラクトン及びε−カプロラクトンのうちの少なくとも一種である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の生分解性ブロック共重合体。
- ポリ乳酸系の生分解性ブロック共重合体の製造方法であって、
反応容器中で、L体及びD体のいずれか一方を主として含むラクチドと、環状エステル化合物とのランダム共重合又は交互共重合により中間体を生成する第1重合工程と、
前記第1重合工程により生成された中間体を単離することなく、前記反応容器中に、前記第1重合工程で主に用いたラクチドの鏡像異性体を主として含むラクチドと、環状エステル化合物とを添加してランダム共重合又は交互共重合を行う第2重合工程と、
を含む、生分解性ブロック共重合体の製造方法。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の生分解性ブロック共重合体よりなる成形体。
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