JP2014040630A - 被覆銀微粒子の製造方法及び当該製造方法で製造した被覆銀微粒子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)加熱により分解して金属銀を生成しうる銀化合物と、(2)アルキルアミンと、(3)分子内に炭素原子とヘテロ原子との多重結合、又はヘテロ原子同士の多重結合の少なくとも一方を含む化合物と、を混合して、当該銀化合物とアルキルアミンを含む錯化合物を生成する第1工程と、当該錯化合物を加熱分解して、アルキルアミンを含む保護膜で被覆された銀微粒子を生成する第2工程と、を含む。
【選択図】なし
Description
また、銀イオンはバクテリアなどに対して極めて強い殺菌性を示すところ、比表面積の大きな銀微粒子を用いることにより微量の銀により高い殺菌力を得られることが期待される。また、特異な光学的性質を生かして、色素や反射鏡の材料として銀微粒子を使用することが検討されている。
上記特許文献3においては、アルキルアミンと共により極性の強いアルキルジアミンを用いることで、アルキルアミンの種類によらず速やかに銀を含む化合物とアルキルアミンを含む錯化合物を生成し、良好な被覆銀微粒子が得られることが記載されている。
しかしながら、主に錯化合物の形成のために用いられるアルキルジアミン等も製造される被覆銀微粒子の被膜に含まれるため、被覆銀微粒子の各種特性に影響を与えることになり、被覆銀微粒子の用途によっては他の成分により置換することが望ましい場合が存在すると予想される。
このような化合物により当該錯化合物の生成が促進される理由は必ずしも明らかでないが、炭素と多重結合により結合する酸素や窒素等のヘテロ原子においては、非共有電子対が露出して一重結合による場合と比較して強い極性を示すことが知られており、このことが銀化合物中の銀原子に対して配位結合を形成する傾向を強めているものと考えられる。また、同種又は異種のヘテロ原子間の多重結合が存在する場合にも、各原子の非共有電子対が活性化される結果、銀化合物中の銀原子に対して配位結合を形成する傾向が強い結果として、固体である銀化合物が解砕されてアルキルアミンとの錯化合物の形成が促進されるものと推察される。
以下、本発明により被覆銀微粒子を製造する方法、及び、当該製造方法により製造された被覆銀微粒子について具体的に説明する。
被覆銀微粒子を製造するために用いる銀の原料としては、銀を含む化合物の中で、加熱により容易に分解して原子状の銀を生成する銀化合物が好ましく使用される。このような銀化合物として、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀原子が化合したカルボン酸銀の他、塩化銀、硝酸銀、炭酸銀等がある。これらの中で、分解により容易に金属銀を生成し、かつ銀以外の不純物を生じにくい等の観点からシュウ酸銀が好ましく用いられる。シュウ酸銀は、銀含量が高く、また通常200℃以下の低温で分解しやすく、分解の際にシュウ酸イオンが二酸化炭素として除去され金属銀が得られるため、不純物が残留しにくい点で有利である。本発明の方法に用いられるシュウ酸銀は、例えば、市販のシュウ酸銀を用いることができる。また、シュウ酸銀のシュウ酸イオンを、20モル%以下の炭酸イオン、硝酸イオン、酸化物イオンの1種以上で置換した銀化合物を使用してもよい。特に、シュウ酸イオンの20モル%以下が炭酸イオンで置換されたシュウ酸銀は熱安定性が高まるが、置換量が20モル%を超えると、これを用いて生成した錯化合物が熱分解しにくくなる場合がある。
アミン錯体分解法により被覆銀微粒子を製造しようとする場合、使用するアミンとしては、アルキル基の一部にアミノ基が結合したアルキルモノアミン、アルキルジアミン等が望ましく使用される。本明細書において、アルキルアミンとは、アルキル基に対して一つのアミノ基が結合したアルキルモノアミン、及び、アルキル基に対して二つのアミノ基が結合したアルキルジアミンを意味するものとする。また、両者を区別する場合には、それぞれアルキルモノアミン、アルキルジアミンと記載する。
本発明に係る製造方法においては、アルキルアミンとして主にアルキルモノアミンを使用するが、製造される被覆銀微粒子に求められる特性等に応じて、適宜アルキルジアミンを混合して使用することができる。
さらに、このようなアルキルジアミンや炭素数が5以下の短鎖のアルキルモノアミンを長鎖・中鎖のアルキルモノアミンに対して所定の割合で混合して用いることにより、両者の長所を生かした被覆銀微粒子を製造することが可能となる。つまり、両者を適宜の割合で混合したアルキルアミンを含む混合物を用いることで、銀化合物との錯化合物を良好に形成し、且つ、保存性に優れ、無極性の有機溶媒中に分散可能な被覆銀微粒子を製造することが可能となる。
本発明においては、銀化合物とアルキルアミンの錯化合物を生成する際に、分子内に炭素原子とヘテロ原子との多重結合や、ヘテロ原子同士の多重結合を含む化合物を介在させることにより、銀化合物とアルキルアミンの錯化合物の生成が円滑に進展することが明らかになった。つまり当該所定の多重結合を含む化合物が介在することにより、固体状態の銀化合物においては当該銀化合物である銀を含む分子やイオン等が結晶等を形成して凝集し、特に長鎖・中鎖のアルキルアミン等による銀原子への配位が良好に進まないのに対して、当該化合物がアルキルアミンと混合されて存在する場合には、アルキルアミン等による銀化合物への配位結合が進展し効率的に錯化合物が生成することが本発明により明らかとなった。このような効果は、当該化合物が銀化合物の結晶等を効率的に解砕し、アルキルアミン等が銀化合物に接触する頻度が高まるためと考えられる。また、このような効果を更に高めるために、当該所定の多重結合を含む化合物は、アルキルアミンとの相溶性に優れた溶媒であることが好ましい。
また、本発明で用いられる所定の多重結合を含む化合物は、生成する錯化合物や、それを熱分解することで得られる被覆銀微粒子の被覆部分にも含まれため、本発明において各種の化合物を適宜に選択して用いることにより、製造される被覆銀微粒子に各種の機能を付加することも可能である。このため、短鎖のアルキルアミンやアルキルジアミンが存在する場合においても、錯化合物の生成補助と共に、製造される被覆銀微粒子に所定の特徴を付与する手段として当該化合物を介在させることができる。
ケトン類化合物は、式(I):
で表すことができ、ここでR1及びR2は、それぞれアルキル基の他、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシルアミノ基又は置換基を有していてもよいアリール基(芳香族一価モノ−又はポリ炭素環式基、好ましくはフェニル基又はナフチル基)であってもよい。R1とR2とは、一緒になって環を形成してもよい。特に、本発明におけるアルキル基は、1〜10個の炭素原子(C1−10)、好ましくは1〜6個の炭素原子(C1−6)の分岐鎖又は直鎖からなる、飽和脂肪族炭化水素基であり、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、2−エチルブチルなどの基が好ましく選択される。またアルキル基は、場合により一部がハロゲンで置換されているものでもよい。
式(II):
ここで、R1は、上記で定義した他、水素原子であってもよい。本発明の方法に使用するのに適したアルデヒド類化合物の非限定的な例として、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−メチルペンタナール、n−ヘプチルアルデヒド、2−ヘキセナール、n−オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クミンアルデヒド、アニスアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロトンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ピルビンアルデヒド、テレフタルアルデヒド、トルアルデヒド、エチニルフェニルケトン、フルフラール又はこれらの任意の2種以上の混合物などが挙げられるが、特に好ましいアルデヒド類化合物は、炭素原子数が3〜14の脂肪族又は芳香族アルデヒドであり、さらに好ましくは、炭素原子数が3〜7の脂肪族アルデヒドである。
更に、ケトン類化合物、アルデヒド類化合物の介在下で形成された錯化合物を熱分解して生成する被覆銀微粒子は、一般に高い割合で有機溶媒中に分散する傾向を示し、特に被覆銀微粒子を有機溶媒に分散させてインク状とする場合に有効である。
で示されるエステル類化合物を挙げることができる。本明細書におけるエステル類化合物は式(III)で表されるカルボン酸エステルを意味し、ここでR1及びR2は上記で定義したとおりである。本発明の方法に使用するのに適したエステル類化合物の非限定的な例として、酢酸エチル、炭酸プロピレン、エチルおよびメチルベンゾエート、エチルp−メトキシベンゾエート、メチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアセテート、エチルp−クロロベンゾエート、ヘキシルp−アミノベンゾエート、イソプロピルナフタレート、n−アミルトルエート、エチルシクロヘキサノエート、およびプロピルピバレートが挙げられる。
で示されるカルボン酸アミド類化合物が挙げられる。式(IV)において、R1、R2及びR3は、それぞれ上記でR1及びR2で定義した他、水素原子及びアミノ基であってもよい。また、R1とR2、R1とR3、及びR2とR3とは、一緒になって環を形成してもよく、アンモニア、第1級アミン及び第2級アミンの少なくとも1種とカルボン酸とが脱水縮合して得られる環状のラクタム類化合物及び直鎖状のカルボン酸アミド類化合物が挙げられる。前記直鎖状のカルボン酸アミド化合物としては、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)ホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、また、環状のラクタム類化合物としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−プロピルピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、5−エチル−2−ピロリドン、5−プロピル−2−ピロリドン、γ−ブチロカプロラクタム、が挙げられる。
オキシム化合物は(>C=N−OH)の一般式で示される構造を有する有機化合物であり、窒素と二重結合を形成する炭素原子に対して2個の有機基が結合したケトオキシムと、その一方の有機基が水素で置換されたアルドオキシムが典型的に挙げられる。
本発明の方法に使用するのに適したオキシム類化合物は、イソブチルメチルケトキシム、ジメチルグリオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルエチルケトキシム、アセトキシム、アセトアルデヒドオキシムなどが挙げられる。さらに、>C=N−OHの水酸基(OH)が有機基で置換されているシッフ塩基を使用することができる。
ヘテロ原子間に多重結合を有する化合物の例として、酸素原子と窒素原子間の多重結合を含むニトロ化合物やニトロソ化合物が挙げられる。ニトロ化合物は、ニトロ基(−NO2)にアルキル基等が結合した化合物であり、ニトロソ化合物は、ニトロソ基(−NO)にアルキル基等が結合した有機化合物である。このような、酸素原子と窒素原子間の多重結合を含む化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン及びニトロベンゼン、ニトロソベンゼン等を好ましく用いることができる。
錯化合物の熱分解による被覆銀微粒子の生成は、通常70〜150℃程度の範囲で行われるため、本発明において錯化合物の生成の際に添加される化合物としては、当該温度範囲において蒸気圧が低いものが好ましく使用される。このため、使用する化合物として、沸点が70℃以上のものであること、更に好ましくは沸点が80℃以上のものを使用することが好ましい。
更に、被覆銀微粒子の収率を高めたり、均一性を向上する等の目的で、銀化合物とアルキルアミンを混合して錯化合物が生成した混合物中に当該化合物を加えることで、錯化合物の生成反応の完了していない銀化合物についての処理等を行ってもよい。
以上のように製造される被覆銀微粒子は、使用するアルキルアミン等の選択により、ブタノール等のアルコール溶剤や、オクタン等の非極性溶剤、又はそれらの混合溶剤等の適宜の有機溶媒に高濃度で安定して分散可能であり、使用目的に応じた有機溶媒に分散させることでインクとして用いることができる。使用する有機溶媒は、被覆銀微粒子の保護膜に含まれるアルキルアミン等の脱離を生じさせず、且つ、分散液が塗布された際に比較的速やかに蒸発するものが好ましく用いられる。生成する被覆銀微粒子の分散媒への分散性を向上させるための分散剤として、例えばオレイン酸などの脂肪酸をアミン混合物に混合して用いてもよい。特に、短鎖のアルキルアミンを大きな割合で含有するなどにより、アルキルアミンの平均の分子量が小さいアミン混合物を用いる場合に適宜の脂肪酸を加えることは効果的である。ただし、過剰な量の脂肪酸を使用した場合には、被覆金属微粒子からの保護被膜の脱離温度が上昇する傾向が見られるため、その添加量は反応系に含まれる金属銀原子に対して5モル%以下とすることが望ましい。
銀化合物とアルキルアミンとの錯化合物の生成は、一般的には粉末状の銀化合物に対して所定量のアルキルアミンとを混合することで行う。本発明においては、この際に所定の多重結合を含む化合物を反応系に介在させることにより、錯化合物の生成を促進させることを特徴とする。当該化合物を反応系に介在させる手法としては、予め作成したアルキルアミンと当該化合物の混合物に銀化合物を加えてもよく、また、主に当該化合物を銀化合物と混合して銀化合物を解砕等した後にアルキルアミンを加えて銀化合物とアルキルアミンの錯化合物とするなど、適宜の手法を用いることができる。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、錯化合物を生成させる反応系に、水や各種アルコール、有機溶媒等を更に混合して使用することも可能である。
錯化合物の生成は、銀化合物の分解反応の発生やアルキルアミン等の蒸発を抑制可能な温度範囲で行うことが好ましい。典型的には、室温付近での撹拌により錯化合物の生成が可能であるが、錯化合物の生成促進の点で、銀化合物の分解反応の発生等を生じない範囲で加熱することも可能である。また、銀化合物に対するアルキルアミンの配位反応は発熱を伴うため、銀化合物の分解反応等を抑制するために必要に応じて室温以下に冷却して撹拌を行うことも好ましい。
上記により生成した銀化合物とアルキルアミン等との錯化合物を加熱して銀化合物中の金属銀原子を遊離させ、これらが凝集することにより銀微粒子が形成される。このような銀アミン錯体分解法による被覆銀微粒子の製造過程においては、予め生成した単一成分(錯化合物)の熱分解反応により原子状銀が供給されるため、複数成分間の化学反応による場合に比べて、各成分の濃度の揺らぎ等に起因した反応のムラを生じ難く、粒子径のそろった銀微粒子が安定して製造できるものと推察される。このため、アミン錯体分解法による銀微粒子の製造は、特に反応に関与する複数の成分を均一に混合することが困難な大規模な工業的生産過程においても有利であると考えられる。
一方、本発明の方法によれば、所定の多重結合を有する化合物の種類を選択することで、生成する銀微粒子の大きさや粒径分布を制御することも可能である。このメカニズムは必ずしも明らかではないが、当該化合物が保護分子であるアルキルアミンと相互作用等することによって銀原子との配位結合の強さが影響を受ける等の可能性が考えられる。
上記のようにして生成される被覆銀微粒子は、その用途に応じて、反応媒であるアルキルアミン等と分離した後に、適宜の分散媒等に混合されて保存・使用される。
本発明の方法により製造された被覆銀微粒子の一例を図1に示す。図1は、以下の実施例に記載した方法で製造されたアルキルアミンを含む保護膜により被覆された銀微粒子である。当該被覆銀微粒子においては、銀微粒子の粒径が約5〜500nm程度であり、用いる所定の多重結合を含む化合物の種類を選択することによってその粒子径を調節することも可能である。その粒子表面が厚さ数nm程度のアルキルアミンを含む保護膜で覆われることで、写真に示すように、各銀微粒子が独立して安定に存在することができる。
また、以下の実施例において示されるように、本発明の方法により所定の多重結合を含む化合物を介在させて形成した錯化合物を熱分解して得られる被覆銀微粒子においては、使用する化合物の種類などに応じて、有機溶媒等に対する分散性や焼成後の残留抵抗などの被覆銀微粒子としての特性が変化する。これは、使用された化合物やその誘導体がアルキルアミンと共に被覆銀微粒子の被覆部分に含まれることを示唆するものと推察される。
一方、本発明により製造された被覆銀微粒子を適宜の温度に加熱することで、保護膜を形成するアルキルアミンが脱離して銀微粒子同士が直接接触することにより導体化を生じ、例えば、100℃程度以下の温度においても導体化が可能である。これは、保護膜を形成するアルキルアミン等が、そのアミノ基を介した配位結合により銀微粒子の表面に対して弱く結合しており、加熱によって比較的容易に脱離可能であるためと考えられる。
本発明の方法により製造されたアルキルアミン被覆銀微粒子を含むインクやペーストを用いて、導体膜を形成するために塗布する基体の材質や形状は特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス、紙、金属、シリコン及びセラミックス等からなる材料を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリアリレート、アロマティックポリエステル、アロマティックポリアミド、フッ素樹脂、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、酢酸セルロース等が挙げられる。
その他、本発明に係る被覆銀微粒子が非常に大きな比表面積を有することを利用して、適宜の量を水中に分散させることで、微量の銀微粒子により強い殺菌作用を示す殺菌剤として使用することも有効である。
また、本発明に係る方法で製造された被覆銀微粒子の銀表面が非常に清浄であり、特有のプラズモンを示すことから、これを利用した色材や、太陽電池等では、光電変換効率増強剤として用いることも有効である。
実施例1〜25に係る被覆銀微粒子を、以下の方法で製造した。銀化合物として、硝酸銀(関東化学、一級)とシュウ酸二水和物(関東化学、特級)から合成したシュウ酸銀を使用した。各実施例では、それぞれシュウ酸銀5.00mmol(1.519g)に対し、表1に記載した各化合物と、アキルアミンとしてのn−ヘキシルアミン(東京化成、特級)を20.0mmol[実施例1,2,4〜25]、又は、n−オクチルアミン(東京化成、特級)を20.0mmol[実施例3]、及び、製造される被覆銀微粒子の有機溶媒への分散性を高める目的で、脂肪酸であるオレイン酸(東京化成、>85.0%)0.065g(0.23mmol)と、を混合し、それぞれ室温で攪拌した。また、比較例として、上記と同量のシュウ酸銀、n−ヘキシルアミン、オレイン酸のみを混合し、室温で攪拌した。なお、実施例1〜21については、各化合物の10mmol相当を混合した。実施例22〜25については、2種の化合物についてそれぞれ5mmol相当を混合して用いた。
上記で得られる白色粘性物をダイヤモンドATR法(Nicolet 6700 FT−IR スペクトロメーター)で、赤外線吸収スペクトルを測定した際に、いずれの化合物を添加した場合にも、シュウ酸イオン内のC=O伸縮振動に由来する吸収のピーク波数が高波数側にシフトし、また、当該吸収帯の線幅(半値幅)が、原料のシュウ酸銀の場合に比べて半分程度となることが観察される。このことは、上記のように、シュウ酸銀とアルキルアミン等を混合して攪拌することにより、シュウ酸銀の骨格を維持したままでアルキルアミン等が配位結合を生じることで、シュウ酸銀の電子状態等が変化したことを示している。
次に、この懸濁液にメタノール(関東化学、一級)10mLを加えて攪拌後、遠心分離(2600G)により銀微粒子を沈殿させて分離し、分離した銀微粒子に対し、再度メタノール10mLを加え、撹拌、遠心分離を行うことで、銀微粒子を沈殿させて分離し、ペースト状の被覆銀微粒子を得た。
得られた各ペースト状の被覆銀微粒子を熱重量分析装置(島津 TGA−50)内で加熱して、被覆銀微粒子の被覆部分を完全に除去することで、各被覆銀微粒子に含まれる金属銀の重量を測定した。その結果、いずれの条件で製造した被覆銀微粒子についても、原料として用いたシュウ酸銀に含まれる銀原子の95%以上が被覆銀微粒子として回収されることが示された。
上記実施例1〜25及び比較例1で製造された被覆銀微粒子をオクタンに分散させ、その分散液をコロジオン膜(銅メッシュグリッド、透過電子顕微鏡用)に滴下し、メタノールで洗浄後、透過走査(STEM)、又は、走査電子顕微鏡(SEM)観察(日本電子 JSM−7600F サーマル電界放出形走査電子顕微鏡)を行った結果を図1に示す。観察されたSTEM像、または、SEM像から概算した粒子径を表2に示す。
上記で得られた各被覆銀微粒子の溶媒に対する分散性を以下のようにして評価した。つまり、上記で得られた各ペースト状の被覆銀微粒子の全量に、ブタノール(関東化学、特級)とオクタン(ゴードー)の混合溶媒(体積比1:4)3mLを加えて撹拌して、さらに遠心分離を行って分散性に乏しい粒子成分を沈殿除去することにより飽和分散液とし、その中での銀微粒子の量を評価することで溶媒に対する分散性を評価した。なお、上記混合溶媒の量は、最も分散性に優れる被覆銀微粒子において概ね全量が分散可能な量に相当する量である。
上記で得られた分散液の内で、比較的良好な分散性が見られたものについて 、沈殿物を除去した後に熱重量分析装置(島津 TGA−50)内で加熱して、混合溶媒と被覆銀微粒子の被覆部分を完全に除去することで、分散液に含まれる金属銀の重量を測定し、各分散液中における銀微粒子の重量割合(飽和分散量、重量%で示す)を求めた。その結果を表1に示す。表1に示すように、被覆銀微粒子のほぼ全量が分散した分散液では、分散液中に銀微粒子が30重量%以上の高い割合で分散していることが示された。
上記で得られた各被覆銀微粒子の焼結性を以下のようにして評価した。つまり、上記の分散性評価により、銀微粒子が概ね15重量%以上の割合で混合溶媒中に分散可能な被覆銀微粒子については、当該混合溶媒中への飽和分散液をインクとして用いて焼結性の評価を行った。また、高濃度の分散液が得られない被覆銀微粒子については、上記混合溶媒の代わりに、銀微粒子の重量割合が65重量%程度となるようにテルピン系分散剤テルソルブTHA−70(日本テルピン化学株式会社)0.5mLを加えて攪拌して銀微粒子含有ペーストとしたものを用いて焼結性の評価を行った。
上記実施例1〜25及び比較例で製造された被覆銀微粒子について、上記で測定された各シート抵抗、体積抵抗、平均膜厚を表2に示す。
また、アミド部分を有する化合物の一種である尿素(実施例12)や2−ピロリドン(実施例15)を用いた場合は、製造される被覆銀微粒子の粒径分布として、平均粒子径が比較的小さい粒子と(10〜20nm程度)、比較的大きい粒子(30〜100nm程度)が混合したものが得られた(図1の(e),(g))。これらの被覆銀微粒子を含むペーストを基板に塗布した場合、電気抵抗が迅速に低下すると共に、長時間の焼成後の残留抵抗も低いことが明らかとなった。図2には、実施例12で得られた被覆銀微粒子を焼結させた後の、銀被膜の表面を示す電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
また、カルボニル化合物の内のエステル類化合物(実施例16,17)では、他のカルボニル化合物と比べて錯化合物の生成等に時間を要する傾向が見られるが、生成される被覆銀微粒子を焼結させた銀被膜における残留抵抗が低いなど、良好な被覆銀微粒子を得ることが可能である。
更に、炭素原子と窒素原子間の多重結合を有する化合物群(実施例19,20)、ヘテロ原子間の多重結合を有する化合物群(実施例21)、一分子内に炭素原子と酸素原子間の二重結合と共に炭素原子と窒素原子間の二重結合を有する化合物(実施例18)によっても、シュウ酸銀とアルキルアミンの錯化合物の生成時間等が短縮され、良好な被覆銀微粒子を高い収率で製造することができる。
さらに、錯化合物の生成促進効果を示す複数の添加化合物を混合して使用した場合についても(実施例22〜25)、錯化合物の生成時間の短縮効果が見られると共に、良好な被覆銀微粒子が製造することができる。
Claims (9)
- (1)加熱により分解して金属銀を生成しうる銀化合物と、
(2)アルキルアミンと、
(3)分子内に炭素原子とヘテロ原子との多重結合、又はヘテロ原子同士の多重結合の少なくとも一方を含む化合物と、
を混合して、当該銀化合物とアルキルアミンを含む錯化合物を生成する第1工程と、
当該錯化合物を加熱分解して、アルキルアミンを含む保護膜で被覆された銀微粒子を生成する第2工程と、を含むことを特徴とする被覆銀微粒子の製造方法。 - 前記ヘテロ原子は、酸素原子、又は窒素原子の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記分子内に炭素原子とヘテロ原子との多重結合、又はヘテロ原子同士の多重結合の少なくとも一方を含む化合物に含まれる炭素原子の数が14以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記第1工程が、カルボニル化合物、オキシム化合物、ニトリル化合物、イソニトリル化合物、イソシアネート及びシアナート化合物からなる群より選択される、分子内に炭素原子とヘテロ原子との多重結合を含む少なくとも1つの化合物を用いて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第1工程が、アゾ化合物、ニトロ化合物、ニトロソ化合物及びアジ化物からなる群より選択される、分子内にヘテロ原子同士の多重結合を含む少なくとも1つの化合物を用いて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記銀化合物がシュウ酸銀を主成分とする請求項1〜5いずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法により製造されることを特徴とする被覆銀微粒子。
- 請求項7に記載の被覆銀微粒子を有機溶媒に分散させてなることを特徴とする被覆銀微粒子分散液。
- 請求項7に記載の被覆銀微粒子を含有することを特徴とする被覆銀微粒子含有ペースト。
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