JP2014030399A - N−アセチルスクロサミンの精製方法 - Google Patents

N−アセチルスクロサミンの精製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
スクロース及びN−アセチルグルコサミンを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成反応溶液に例示される糖質混合溶液から、簡便、効率的、低コストかつ安全にN−アセチルスクロサミンを精製することを課題とする。
【解決手段】
下記ステップAからCを少なくとも含む、糖質混合溶液からのN−アセチルスクロサミンの精製方法を提供すること等。
ステップA:N−アセチルスクロサミンを含む糖質混合溶液中で酵母を培養するステップ、
ステップB:前記培養後の溶液から酵母を分離するステップ、
ステップC:カラムクロマトグラフィーによりN−アセチルグルコサミン精製画分を得るステップ。
【選択図】図8

Description

本発明は、N−アセチルスクロサミンの精製方法に関する。
従来から、各種タイプの生理的に役に立つ機能を発揮する単糖及びオリゴ糖類が開発されてきた。これら糖類のほとんどは機能性甘味料として使用され、その多くはバイオマス多糖類の酵素分解または自然界に豊富に存在するオリゴ糖類の酵素的変換で調製されている。最近、バイオマス多糖類であるキチンの加水分解により得られる単糖であるN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)に関し、この糖類の摂取がヒアルロン酸及びコンドロイチンなどのムコ多糖の生産を増加させることが動物実験により確認された。このことから、本単糖の摂取による皮膚の老化防止や変形性関節症の改善が期待されている。
GlcNAcを構成糖として含むオリゴ糖としては、D−フルクトースとGlcNAcからなる二糖類であるN−アセチルスクロサミン[β−D−フルクトフラノシル−(2→1)−α−N−アセチル−D−グルコサミニド]が知られている。本発明者らは、β−フルクトフラノシダーゼを保持するコウジ菌固定化担体を用い、GlcNAc及びスクロースを基質として、N−アセチルスクロサミンを合成する方法を報告した(非特許文献1、2)。
しかしながら、この合成反応溶液からN−アセチルスクロサミンを精製するためには、活性炭カラムクロマトグラフィーや中圧カラムクロマトグラフィーなど複数のカラムクロマトグラフィーを組み合わせて行なわなければならず、コストや手間がかかるという問題があった。特に中圧カラムクロマトグラフィーは大量の高濃度有機溶媒(エタノールやイソプロパノールなど)を使わなければならいないことや樹脂が大変高価であることから、オリゴ糖の安価な大量精製には適していないという問題があった。
平野ら、「Aspergillus oryzae乾燥菌糸を全細胞触媒として用いたN−アセチルスクロサミンの合成」、日本応用糖質科学学会誌 応用糖質科学、第1巻、第3号、39−40頁(2011) 平野ら、‘Synthesis of β−D−fructofuranosyl−(2→1)−2−acetamido−2−deoxy−α−D−glucopyranoside(N−acetylsucrosamine) using β−fructofuranosidase−containing Aspergillus oryzae mycelia as a whole−cell catalyst’、Carbohydrate Research、353、27−32(2012)
本発明は、スクロース及びGlcNAcを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成反応溶液に例示される糖質混合溶液から、簡便、効率的、低コストかつ安全にN−アセチルスクロサミンを精製することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決するため、酵母を用いた糖質混合溶液の処理法を検討した。検討に当たり、まずは上記の単糖類やオリゴ糖類に対する酵母の資化性を調べた。これにより、N−アセチルスクロサミンは酵母(Saccharomyces cerevisiae)には資化されないが、糖質混合溶液に含まれる夾雑糖質の多くは資化されることが明らかになり、本発明を完成させるに至った。
本発明は下記のN−アセチルスクロサミンの精製方法を提供する。
(1)下記ステップAからCを少なくとも含む、糖質混合溶液からのN−アセチルスクロサミンの精製方法;
ステップA:N−アセチルスクロサミンを含む糖質混合溶液中で酵母を培養するステップ、
ステップB:前記培養後の溶液から酵母を分離するステップ、
ステップC:カラムクロマトグラフィーによりN−アセチルスクロサミン精製画分を得るステップ。
(2)糖質混合溶液が、スクロース及びGlcNAcを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成反応溶液である、上記(1)に記載のN−アセチルスクロサミンの精製方法。
(3)スクロース及びGlcNAcを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成が、少なくとも下記ステップa及びbを含む、上記(2)に記載のN−アセチルスクロサミンの精製方法;
ステップa:β−フルクトフラノシダーゼを保持するコウジ菌菌糸固定化担体に、スクロース及びGlcNAcを接触させるステップ、
ステップb:前記接触後のコウジ菌菌糸固定化担体において、菌糸に保持されたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応を行い、スクロース及びGlcNAcからN−アセチルスクロサミンを生成するステップ。
(4)ステップCにおけるカラムクロマトグラフィーが活性炭カラムクロマトグラフィーである、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載のN−アセチルスクロサミンの精製方法。
本発明によれば、糖質混合溶液から、簡便、効率的、低コストかつ安全にN−アセチルスクロサミンを精製することができる。特に、β−フルクトフラノシダーゼを保持するコウジ菌固定化担体を用い、GlcNAc及びスクロースを基質として、N−アセチルスクロサミンを合成する結果得られる合成反応溶液中には、多くの夾雑糖質が存在するが、夾雑糖質の多くを酵母によって資化させることで、活性炭カラムクロマトグラフィーのみによってN−アセチルスクロサミンを単一に精製できる。この操作は非常に簡便であり、大量処理が可能であると共に低コストで行える優れた精製法である。また、酵母は繰り返し使用することができ、さらに操作の過程で純粋なGlcNAcも回収できることから、それを再利用することもできる。
本方法を用いることにより、N−アセチルスクロサミンの製造コストは飛躍的に低減される。
A.oryzae NBRC100959株乾燥菌糸とセライト535からなる顆粒によるスクロースとGlcNAcの間の糖転移反応の概略。図中、化合物の量、濃度、収率は一例である。 カラムリアクターを用いたN−アセチルスクロサミンの連続生産。A:カラムリアクター装置の図を示す。B:反応液中のN−アセチルスクロサミン濃度のHPLCによる定量結果。 N−アセチルスクロサミン製造用リアクターカラム溶出液中に含まれている糖質のHPLC分析データ N−アセチルスクロサミンの結晶 酵母による各種糖質の資化試験の結果 N−アセチルスクロサミン製造用リアクターカラム溶出液の酵母処理後の溶液に含まれている糖質のHPLC分析データ 活性炭カラムクロマトグラフィーによって精製されたN−アセチルスクロサミンのHPLC分析データ N−アセチルスクロサミン製造・精製のスキーム
1.N−アセチルスクロサミンの精製方法
本発明のN−アセチルスクロサミンの精製方法は、下記ステップAからCを少なくとも含む、糖質混合溶液からのN−アセチルスクロサミンの精製方法である。
ステップA:N−アセチルスクロサミンを含む糖質混合溶液中で酵母を培養するステップ、
ステップB:前記培養後の溶液から酵母を分離するステップ、
ステップC:カラムクロマトグラフィーによりN−アセチルスクロサミン精製画分を得るステップ。
本発明のN−アセチルスクロサミンの精製方法は、酵母によって資化される1又は2以上の糖質及びN−アセチルスクロサミンが少なくとも含まれる糖質混合溶液からのN−アセチルスクロサミンの精製に利用できる。本発明者らは、後述する実施例に記載の通り、スクロース、グルコース、フルクトース及びフラクトオリゴ糖は酵母によって資化されるが、N−アセチルスクロサミンは全く資化されないことを初めて見出した。スクロース及びGlcNAcを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成反応は、例えば後述するコウジ菌菌糸固定化担体を用いたN−アセチルスクロサミンの合成方法により行なうことができる。コウジ菌菌糸固定化担体を用いたN−アセチルスクロサミンの合成方法によって得られる合成反応溶液には、N−アセチルスクロサミンと過剰に加えているGlcNAcのほか、基質であるスクロースとスクロース分解物であるグルコースとフルクトース、および糖転移反応副生物であるフラクトオリゴ糖が若干含まれている。したがって、この合成反応溶液は、本発明における糖質混合溶液として好適である。
用いる酵母の種類は特に限定されないが、食用酵母が安全性の観点から特に好ましい。酵母は出芽酵母であっても***酵母であってもよい。出芽酵母としては、例えばパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母等が例示される。***酵母としては例えばShizosaccharomyces pombe等が例示される。
酵母の培養条件は、夾雑する糖を所望の程度に除去できる程度に酵母が成育する条件である限り特に限定されないが、例えば緩衝液中で約30℃、12から24時間培養することが例示される。
酵母の培養処理により、上述したスクロース及びGlcNAcを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成反応溶液の場合、酵母処理溶液中に存在する糖を、GlcNAcとN−アセチルスクロサミンのみにすることができる。
次に、酵母処理溶液から酵母を分離する。分離の方法は特に限定されないが、例えばろ過、遠心分離の方法により行うことができる。なお、分離した酵母はステップAにおいて再利用することもできる。
ステップCでは、カラムクロマトグラフィーによりN−アセチルスクロサミンの精製画分を得る。糖質混合溶液が、スクロース及びGlcNAcを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成反応溶液の場合、酵母処理によってGlcNAcとN−アセチルスクロサミンの混合溶液が得られる。この混合溶液から、カラムクロマトグラフィーによりGlcNAcを除去し、N−アセチルスクロサミン精製画分を得ることができる。カラムクロマトグラフィーは、大量かつ安価にオリゴ糖を精製するために有効な、活性炭カラムクロマトグラフィーが好ましい。活性炭にはGlcNAc、グルコース、およびフルクトースなどの単糖類は吸着しないが、オリゴ糖であるスクロース、N−アセチルスクロサミン、およびフラクトオリゴ糖は吸着する。吸着したこれらのオリゴ糖は、例えば5%(v/v)イソプロパノール水溶液で脱着させることができる。つまり、単糖類とオリゴ糖類は活性炭カラムクロマトグラフィーを用いて容易に分離することができる。したがって、カラムリアクター溶出液中に含まれているN−アセチルスクロサミン以外のオリゴ糖類を、活性炭カラムクロマトグラフィー精製操作の前段階で取り除くことができれば、N−アセチルスクロサミンの単離は飛躍的に簡素化される。
2.コウジ菌菌糸固定化担体を用いたN−アセチルスクロサミンの合成方法
コウジ菌菌糸固定化担体を用いたN−アセチルスクロサミンの合成は、下記ステップa及びbを少なくとも含むことを特徴とする。
ステップa:β−フルクトフラノシダーゼを保持するコウジ菌菌糸固定化担体に、スクロース及びGlcNAcを接触させるステップ、
ステップb:前記接触後のコウジ菌菌糸固定化担体において、菌糸に保持されたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応を行い、スクロース及びGlcNAcからN−アセチルスクロサミンを生成するステップ。
ステップaにおいて、コウジ菌菌糸固定化担体とは、例えば珪藻土やパーライト粒等、表面に凹凸がある多孔性物質にコウジ菌菌糸を反応しやすい状態に保持した担体を意味し、例えば、担体を含む培地中でコウジ菌を培養するステップ、前記培養後の培地からコウジ菌菌糸固定化担体を分取するステップ、及びコウジ菌菌糸固定化担体を乾燥するステップにより製造することができる。
コウジ菌菌糸固定化担体は、例えば珪藻土を担体として用いる場合、コウジ菌胞子の懸濁液を珪藻土含有培養液に加え、菌糸を適温にて増殖させ、コウジ菌糸と珪藻土から成る顆粒(コウジ菌菌糸固定化珪藻土)を得、培養液をろ過してコウジ菌菌糸固定化珪藻土を分取し、アセトン処理等に例示される脱水処理、乾燥処理を行い、コウジ菌菌糸固定化担体を製造することができる。
コウジ菌菌糸固定化担体に糖基質を接触させる方法は特に限定されないが、例えばバッチ法、カラムリアクター法が例示される。連続生産によるN−アセチルスクロサミンの大量生産を行う観点ではカラムリアクター法が特に望ましく、この場合、担体としては例えばパーライト粒等、物理的に強固なものを用いることが望ましい。
ステップbにおいて、酵素反応は、例えばクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に例示される緩衝液を酵素反応溶液として適宜選択し、当該酵素反応溶液中に糖基質及びコウジ菌菌糸固定化担体を、適当な条件下で共存させることにより行うことができる。基質溶液中に添加するコウジ菌菌糸固定化担体の量は、反応時間の都合によって当業者が適宜調節することができる。酵素反応の条件は特に限定されないが、例えば25℃から30℃で穏やかな震とうさせる等、当業者が適宜選択することができる。
セライトを用いて製造したコウジ菌菌糸固定化担体を用いたN−アセチルスクロサミンの合成方法の一例を図1に示す。
本発明者らは、日本応用糖質科学学会誌 応用糖質科学、第1巻、第3号、39−40頁(2011)、Carbohydrate Research、353、27−32(2012)において上記方法によるGlcNAcの合成方法を報告した。これら報告により公表された合成方法によって得られる、N−アセチルスクロサミンを含む糖質混合溶液は、いずれも本発明のN−アセチルスクロサミンの精製方法の適用対象として好ましい。また、本発明者らは、糖転移型β−フルクトフラノシダーゼを含有するコウジ菌(Aspergillus oryzae)の固定化菌糸を充填したカラムリアクターに、高濃度のGlcNAcとスクロースを含む溶液を流すことによって、同酵素の糖転移反応によりN−アセチルスクロサミンを長期間にわたり効率良く生産させることに成功した。カラムリアクター法を用いたN−アセチルスクロサミンの連続生産については、後述する実施例1を参照されたい。
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明の範囲はこれにより限定されるものではない。
カラムリアクターを用いたN−アセチルスクロサミンの連続生産
(1)コウジ菌菌糸固定化担体の調製
A.oryzae NBRC4290の胞子懸濁液 0.1 mLを1 gのパーライト粒を含む9.9 mLの培地(重量/容量にして2%のスクロース、0.5%のペプトン、0.2%のNaNO3、0.1%のK2HPO4、0.05%のMgSO4・7H2O、0.05%のKCl及び0.001%のFeSO4・7H2Oを含む液体培地)に加え、80回転/分の震とう条件下、混合物を3日間28℃でインキュベーションした。インキュベーションの後、表面にA. oryzae菌糸が繁殖したパーライト粒は、No.5A濾紙(桐山製作所、東京、日本)を用いた吸引濾過で回収した。次に、これを30分間冷アセトン 50 mLに浸し、濾紙を用いて吸引濾過で回収した。この操作は二度繰り返した。得られた脱水A. oryzae菌糸が付着したビーズは、室温で吸引器を用いて減圧乾燥し、A.oryzae NBRC4290菌糸固定化パーライト粒を得た。乾燥菌糸固定化パーライト中の乾燥菌糸の含有量は、20%であった。
(2)N−アセチルスクロサミンの連続生産
A.oryzae NBRC4290菌糸固定化パーライト粒を詰めたカラム(直径2 cm×高さ20 cm)に10%(重量/容量)のスクロースと19.4%(重量/容量)のGlcNAcを含む20 mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 5.5)を約100 mL/日の流速で流し、カラムリアクターによるN−アセチルスクロサミンの連続生産を行なった。図2Aにカラムリアクター装置の図を示す。反応液中のN−アセチルスクロサミンは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量した。その結果、上記の小カラムでもN−アセチルスクロサミンの生産量は約2.5〜4.0 g/日となり、少なくとも30日以上の安定した連続生産が可能であった(図2B)。このことは、本システムを用いることによりN−アセチルスクロサミンの大量生産が可能であることを示す。
N−アセチルスクロサミンを含むリアクターカラム溶出液中には、原料として過剰に加えたGlcNAc、未反応のスクロース、スクロース分解物であるグルコースとフルクトース、および副生成物としてのフルクトオリゴ糖(1−ケストース及びニストース)などが含まれている。リアクターカラム溶出液に含まれる糖質のHPLC分析データを図3に示す。
なお、リアクターカラム溶出液中には、42.1mgのN−アセチルスクロサミンが溶解している事がHPLC定量分析によって確認された。HPLC分析条件は下記に示す。
(HPLC分析条件)
ポンプ;LC−10AS(島津製作所)
検出器;Shodex RI−71(昭和電工)
カラム;COSMOSIL Sugar−D(カラムサイズ;φ4.6x250mm、ナカライテスク社製)
移動相溶媒;77%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速;0.8mL/分
N−アセチルスクロサミンを熱メタノールから結晶化させると、図4Aに示すように非常に細長い針状の結晶が得られた。また、熱エタノールから結晶化させると、図4Bに示すようにやや太い針状結晶が得られた。これらの結晶について融点を測定したところ、いずれも156〜158℃であった。本二糖の水に対する溶解性は、スクロースと同様に極めて高かった。水を溶媒として用いたときの本二糖の比旋光度[α]D 23 (c 0.97)は80.7oであった。N−アセチルスクロサミンのpH 3〜pH 9における安定性と熱に対する安定性について、スクロースとの比較を行った。その結果、両二糖ともpH 5、7、9の緩衝液中100℃で1時間放置しても全く分解しなかったが、pH 3の緩衝液中では75、100℃で1時間放置した場合に単糖への分解が見られた。しかし、N−アセチルスクロサミンの分解の程度は、スクロースと比べるとかなり低かった。このことから、N−アセチルスクロサミンはスクロースよりも酸性溶液中で安定であることが分かった。次に、種々のスクロース加水分解酵素に対するN−アセチルスクロサミンの分解性を調べた。酵素としては、酵母のβ−フルクトフラノシダーゼ(三菱化学フーズ社製)、ラット小腸のスクラーゼ(シグマ社製)およびCarbohydrate Research、353、27−32(2012)に記載の方法により調製したコウジ菌の糖転移型β−フルクトフラノシダーゼおよび加水分解型β−フルクトフラノシダーゼを用いた。その結果、これらの二糖の希薄溶液中で、スクロースは用いた全ての酵素によって速やかに加水分解されたが、N−アセチルスクロサミンはコウジ菌の糖転移型β−フルクトフラノシダーゼによってのみ加水分解が確認された。このことは、N−アセチルスクロサミンは、スクラーゼや加水分解型β−フルクトフラノシダーゼの基質にならないことを示している。
Saccharomyces cerevisiae由来の乾燥酵母粉末(日清フーズ社製、商品名;スーパーカメリア・ドライイースト)10 mgを、146 mM濃度で各々の糖が溶解した20mMクエン酸ナトリウム緩衝液に添加し、100回転/分で震盪させながら30℃で培養を行なった。酵母による培養液中の各糖の資化の様子は、薄層クロマトグラフィー(TLC)とHPLCによって経時的に確認した。
TLC及びHPLCの条件を下記に示す。
(TLC分析条件)
TLCプレート;シリカゲル60、メルク社製
展開溶媒;n−ブタノール/ピリジン/水 8:3:1(v/v/v)
展開回数;2回
展開温度;30℃
試料発色;2.4%リンモリブデン酸、5%硫酸、1.5%リン酸を含む水溶液を噴霧した後、ヒートガンにて加熱して試料スポットを発色させた。
(HPLC分析条件)
ポンプ;LC−10AS(島津製作所)
検出器;Shodex RI−71(昭和電工)
カラム;COSMOSIL Sugar−D(カラムサイズ;φ4.6 x 250 mm、ナカライテスク社製)
移動相溶媒;77%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速;0.8 mL/分
以上の実験の結果、図5−Aに示されるように、グルコース、フルクトース、スクロース、1−ケストース、およびニストースは培養24時間目には全て酵母によって資化されたが、GlcNAcとN−アセチルスクロサミンについては培養24時間目においても残存していることが分かった。また、GlcNAcとN−アセチルスクロサミンについてHPLC定量分析を行なったところ、培養24時間目においてもこれらの糖質は全く減少していなかった(図5−B)。
以上の実験結果を受けて、リアクターカラム溶出液に乾燥酵母を添加し、GlcNAcとN−アセチルスクロサミン以外の糖質を全て酵母によって資化させることで取り除くことを検討した。
実施例1と同様の方法により得たリアクターカラム溶出液100 mLに2 gのSaccharomyces cerevisiae由来の乾燥酵母(日清フーズ社製、商品名;スーパーカメリア・ドライイースト)を添加し、100回転/分で震盪させながら30℃で培養を行なった。培養24時間後、酵母細胞はセライトを濾過助材として用いた濾過によって取り除き、得られた濾液中の糖質についてはHPLCによって確認した。
(HPLC分析条件)
ポンプ;LC−10AS(島津製作所)
検出器;Shodex RI−71(昭和電工)
カラム;COSMOSIL Sugar−D(カラムサイズ;φ4.6 x 250 mm、ナカライテスク社製)
移動相溶媒;77%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速;0.8 mL/分
以上の実験の結果、GlcNAcとN−アセチルスクロサミン以外のリアクターカラム溶出液中の糖質(グルコース、フルクトース、スクロース、1−ケストース、ニストース、および未確認オリゴ糖)は、培養24時間目には全て酵母によって資化されていることがHPLC分析データから分かった(図6)。
次に、得られた濾液からN−アセチルスクロサミンを活性炭カラムクロマトグラフィーによって精製した。
実施例4によって得られた濾液を活性炭カラム(φ5.5 x 18 cm、移動相溶媒;水)に負荷し、水を流すことによってGlcNAcを全て溶出させた後、活性炭に吸着しているN−アセチルスクロサミンを5%(v/v)イソプロパノール水溶液を流すことによって脱着・溶出させた。得られたN−アセチルスクロサミンの溶液は、エバポレーターによって濃縮・乾固させた。その後、少量の水を加えて再びN−アセチルスクロサミンを溶解し、凍結乾燥を行うことで白色粉末状のN−アセチルスクロサミンを得た。
得られたN−アセチルスクロサミン溶出液についてHPLC分析を行って純度を確認したところ、図7に示したように単一であることが確認された。
(HPLC分析条件)
ポンプ;LC−10AS(島津製作所)
検出器;Shodex RI−71(昭和電工)
カラム;COSMOSIL Sugar−D(カラムサイズ;φ4.6 x 250 mm、ナカライテスク社製)
移動相溶媒;77%(v/v)アセトニトリル水溶液
流速;0.8 mL/分
また、上記の実験により、3.08 gのN−アセチルスクロサミン粉末を得ることができた。用いたリアクターカラム溶出液100 mL中には、3.4 gのN−アセチルスクロサミンが溶解していることが先のHPLC定量分析によって確認されているので、リアクターカラム溶出液から実施例4および実施例5の操作により90.6%のモル収率でN−アセチルスクロサミンを単離することができたことになる。また、純粋なGlcNAcを回収することもできた。以上の操作について、図8にまとめて示した。
A.oryzae NBRC100537菌糸固定化担体のカラムリアクターの溶出液を用い、実施例4および5と同様の操作により4.08gのN−アセチルスクロサミンを単離した。
N−アセチルスクロサミン製造用リアクターカラムの溶出液中に含まれている夾雑糖質の多くを酵母によって資化させることで、活性炭カラムクロマトグラフィーのみによってN−アセチルスクロサミンを単一に精製できた。この操作は非常に簡便であり、大量処理が可能であると共に低コストで行える優れた精製法である。また、酵母は繰り返し使用することができ、さらに操作の過程で純粋なGlcNAcも回収できることから、それを再利用することもできる。
本方法を用いることにより、N−アセチルスクロサミンの製造コストは飛躍的に低減された。
本発明は、簡便、効率的、低コストかつ安全なN−アセチルスクロサミンの精製に利用できる。

Claims (4)

  1. 下記ステップAからCを少なくとも含む、糖質混合溶液からのN−アセチルスクロサミンの精製方法;
    ステップA:N−アセチルスクロサミンを含む糖質混合溶液中で酵母を培養するステップ、
    ステップB:前記培養後の溶液から酵母を分離するステップ、
    ステップC:カラムクロマトグラフィーによりN−アセチルスクロサミン精製画分を得るステップ。
  2. 糖質混合溶液が、スクロース及びN−アセチルグルコサミンを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成反応溶液である、請求項1に記載のN−アセチルスクロサミンの精製方法。
  3. スクロース及びN−アセチルグルコサミンを基質としたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応によるN−アセチルスクロサミンの合成が、少なくとも下記ステップa及びbを含む、請求項2に記載のN−アセチルスクロサミンの精製方法;
    ステップa:β−フルクトフラノシダーゼを保持するコウジ菌菌糸固定化担体に、スクロース及びN−アセチルグルコサミンを接触させるステップ、
    ステップb:前記接触後のコウジ菌菌糸固定化担体において、菌糸に保持されたβ−フルクトフラノシダーゼによる糖転移反応を行い、スクロース及びN−アセチルグルコサミンからN−アセチルスクロサミンを生成するステップ。
  4. ステップCにおけるカラムクロマトグラフィーが活性炭カラムクロマトグラフィーである、請求項1から3のいずれか1項に記載のN−アセチルスクロサミンの精製方法。
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