JP2014019886A - 取鍋脱ガス方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の取鍋脱ガス方法は、取鍋2に設けられた2つの底吹き用プラグ3、3から不活性ガスを吹き込みながら取鍋2内の溶鋼の脱ガスを行うに際し、一方の底吹き用プラグ3のガス流量と他方の底吹き用プラグ3のガス流量とに差を付けて前記不活性ガスを吹き込むこととし、0.2≦R≦0.45を満たすように、2つの底吹き用プラグ3、3の各ガス流量を設定すると共に、2つの底吹き用プラグ3、3のガス流量の合計が0.9〜1.8NL/min/tonとする。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献3には、取鍋に設けられた2つの底吹き用プラグから不活性ガスを吹き込みながら取鍋内の溶鋼の精錬を行う取鍋精錬方法であって、一方の底吹き用プラグのガス流量と、他方の底吹き用プラグのガス流量との流量比を所望の範囲に設定するとともに、両プラグのガス流量の合計流量を所望の範囲に設定することで、取鍋内の溶鋼から介在物を効率よく除去して高清浄な溶鋼を精錬する技術が開示されている。
また、特許文献1の取鍋脱ガス方法では、ポーラスプラグから溶鋼中に吹き込まれる不活性ガスの流量が多く、溶鋼が激しく攪拌されるので、脱ガス面では優れている。しかし
、溶鋼の湯面に浮上したスラグを再び溶鋼中に巻き込んでしまう可能性も高くなるため、溶鋼中の介在物濃度を低位に維持し続けることが困難になる。つまり、特許文献1の取鍋脱ガス方法は、脱ガスと介在物の除去とを両立させることは困難となっている。
即ち、本発明の取鍋脱ガス方法は、取鍋に設けられた2つの底吹き用プラグから不活性ガスを吹き込みながら取鍋内の溶鋼の脱ガスを行うに際し、一方の底吹き用プラグのガス流量と他方の底吹き用プラグのガス流量とに差を付けて前記不活性ガスを吹き込むこととし、式(1)を満たすように、2つの底吹き用プラグの各ガス流量を設定すると共に、2つの底吹き用プラグのガス流量の合計が0.9〜1.8NL/min/tonとすることを特徴とするものである。
一般的に製鋼工場では、転炉や電気炉などで一次精錬が終了した溶鋼は、取鍋2に出鋼されて二次精錬工程へと搬送され、この二次精錬工程にて溶鋼の介在物除去や成分調整、脱ガス処理などが行われる。
なお、本発明の取鍋脱ガス方法は、特に鍛鋼品向けの鋼を製造するに際して好適に採用できる。鍛鋼品として優れた鋼を製造するためには、溶鋼に残留する水素ガスを極力低減する必要があるが、溶鋼中の水素が鋼塊になってまで残存し続けると、水素割れといった遅れ破壊を誘発し、製品欠陥となるからである。しかし、本発明の取鍋脱ガス方法は、鍛鋼品向けの鋼に限定されない。また、本発明の取鍋脱ガス方法は、さまざまな脱ガス方式の中でもVD(Vacuum Degasser)方式の精錬装置1に好適である。
本発明の取鍋脱ガス方法は、取鍋2内に2つの底吹き用プラグ3、3を設けると共にこれらのプラグから吹き込まれる不活性ガスの流量比や両プラグから吹き込まれる不活性ガスの総流量を所望の範囲に保持することで、溶鋼中の介在物濃度を低位に維持しつつ、溶鋼から効率良く水素を除去するものである。
図1に示すように、取鍋2は、上方に向かって開口した有底筒状の取鍋本体4と、この
取鍋本体4の開口を閉鎖可能な蓋5とを有している。取鍋本体4の内面には耐火物が内張りされており、取鍋本体4の内部に溶湯を収容できるようになっている。また、取鍋2の蓋5には、取鍋2内を脱気するための脱気口6が形成されている。取鍋本体4の底部7には、不活性ガスを吹き込むための2つの底吹き用プラグ3、3が設けられている。これら2つの底吹き用プラグ3、3は、いずれも不活性ガスの通気を可能とするような多孔状(ポーラス状)の部材から形成されており、取鍋2外から送られてきた不活性ガスを気泡状にして取鍋2内の溶鋼中に供給できるようになっている。
図2は取鍋2の底部7を上方から見た図である。
図2に示すように、上述した2つの底吹き用プラグ3のうち、第1ポーラスプラグ8(図2の紙面において取鍋中心Oより下側にある白丸)は、当該ポーラスプラグ8の中心と取鍋中心Oとの距離(d1)が900mmとなる位置に配置されている。また、第2ポーラスプラグ9(図2の紙面において取鍋中心Oより上側にある白丸)は、当該ポーラスプラグ9の中心と取鍋中心Oとの距離(d2)が680mmに配置されている。
というのも、距離d1または距離d2のいずれかが1/4未満となる、すなわち、いずれかのプラグが取鍋2の中心部に近づきすぎると、取鍋2内に収容された溶鋼全体を対流させて、攪拌、混合するために必要な不活性ガスの流量が非常に大きくなるからである。
また、取鍋中心Oから第1ポーラスプラグ8の中心に向かう線P1と、取鍋中心Oから第2ポーラスプラグ9の中心に向かう線P2とのなす角度θは、90°〜180°が望ましい。これは、角度θが(90°未満まで)小さくなると両プラグ8、9が接近することとなり、両プラグ8、9が接近しすぎると、両プラグから吹き込まれた不活性ガスにより生じる溶鋼の対流同士が干渉し合い、スラグと溶鋼の界面近傍で下降流が生じることで、溶鋼中へのスラグの撒き込み量が増大する可能性があるためである。なお、両プラグ8、9は同一円周上にあっても、異なる円周上にあっても特に作用効果が影響されるものではない。
図4に示すように、本発明の取鍋脱ガス方法は、1次精錬された溶鋼に対して、取鍋2内で成分調整、介在物除去、脱ガスを行う2次精錬に関するものである。この2次精錬は、LF法などを用いて溶鋼の成分調整や介在物除去などを主に行う溶鋼処理(工程)と、この溶鋼処理に引き続いて行われる脱ガス処理(工程)とで構成されている。そして、本発明の取鍋脱ガス方法は、これらの処理の中でも後工程の脱ガス処理に関するものとなっている。脱ガス処理における操業条件は、図3に表の形でまとめている。
式(1)を満たすように、2つの底吹き用プラグ3の各ガス流量を設定すると共に、2つの底吹き用プラグのガス流量の合計を0.9〜1.8NL/min/tonとするものである。
次に、図5を用いて、本発明の取鍋脱ガス方法において、上述したような関係が規定された理由について説明する。
図5(a)に示す従来例の取鍋精錬方法のように、1つのポーラスプラグだけを用いて不活性ガスを吹き込んだ場合、取鍋の中心を挟んでポーラスプラグの対角上に溶鋼を攪拌できない死水域が生じてしまい、取鍋内の溶鋼を均等に攪拌することができなくなる可能性がある。死水域の溶鋼は脱ガスされることがないため、溶鋼全体の水素濃度を高めるので、脱ガス効率に劣る。
また、本発明では、2つの底吹き用プラグ3、3から吹き込まれる不活性ガスの流量に単に差を付けるだけでなく、介在物濃度の低減と溶鋼からの効率的な水素除去とが両立できるように、両プラグ3、3から吹き込まれる不活性ガスの流量比や総流量(両プラグの流量の総和)を所望の範囲に設定している。
1)を満たすように、第1ポーラスプラグ8及び第2ポーラスプラグ9のガス流量を設定している。なお、第1ポーラスプラグ8と第2ポーラスプラグ9に本質的な区別はなく、ガス流量の大きい方が第1ポーラスプラグ8となる。
ここで、ガス流量の単位NL/min/tonは、1分間当たり、溶鋼1ton当たりの流量を示すものであり、NL・min−1・ton−1若しくはNL/(min・ton)と同義である。
つまり、ガスの流量比Rが0.2よりも小さい場合、例えば、Q大=1.0NL/min/tonの時は、Q小は0.2NL/min/tonより小さい流量となる。この場合、取鍋2に装入された溶鋼の表面に、界面流速の小さい停滞域が生じやすくなる。一般に、物質移動は界面流速が大きいほど進みやすく、このような停滞域が発生すると、溶鋼中でのガス成分(水素ガス)の物質移動が促進されにくくなり、脱水素速度が低下してしまう。その結果、従来条件(例えば、図5(a)に示すように底吹き用プラグ3を1つしか用いない場合(R=0の場合)と同等の脱水素速度しか発揮することができなくなる。
特に、ガスの流量比Rが0.3以上、且つ、0.4以下であれば、溶鋼中でのガス成分の物質移動だけでなく、脱ガス処理工程前の溶鋼処理で介在物除去された溶鋼中の介在物濃度を低位に維持しつつ、溶鋼から効率良く水素を除去するという作用効果をより良好なものとすることができる。
ガス流量の合計が0.9NL/min/ton未満では、流量が少なすぎるため、溶鋼に対する攪拌が不十分となり、脱ガスが十分に進行せず、溶鋼中の水素を低下させることができない。また、ガス流量の合計が1.8NL/min/tonより大きい場合、流量が多すぎるために溶鋼が攪拌されすぎ、溶鋼表面のスラグ(トップスラグ)が溶鋼中に巻き込まれやすくなり、溶鋼の清浄度が悪化するため望ましくない。
なお、不活性ガスとして、Arガスを用いているが、脱水素を生じさせるためには、水素分圧を下げればよいので、特にArガスに制限されるものではなく、窒素ガス等の不活性ガスでも良い。また、Arガスとしては、スラグや溶鋼からの脱水素を促進するために、実質的に水素を含まないものを用いる。
うなものである。
「実施例1」
実施例1では、Ar流量の「プラグ1」の欄に示すように、第1ポーラスプラグ8のガス流量と第2ポーラスプラグ9のガス流量との流量比Rが0.33となっている。つまり、実施例1の流量比Rは0.25よりも大きく0.45よりも小さくなっていて、上述した式(1)の関係を満足している。
この実施例1の条件で脱ガスを行った場合、「脱水素速度定数」の欄に示すように、脱水素速度定数は4.1m/sとなっており、後述する比較例1〜比較例3の3.1m/s〜3.4m/sという速度定数に比べて大きくなっている。このことから、上述した流量比Rと総ガス流量とを有する実施例1では、脱水素速度定数が大きくなり、溶鋼からの脱水素が効率的に行われたものと判断される。
「比較例1」
上述した実施例1に対して、比較例1では、Ar流量の「プラグ1」の欄に示すように、第1ポーラスプラグ8のガス流量がゼロとなっており、第2ポーラスプラグ9のガス流量との流量比Rも0.00となっている。つまり、比較例1の流量比Rは0.25未満であり、上述した式(1)の関係を満足していない。
このことから、上述した流量比Rの関係を満足しない比較例1では、溶鋼からの脱水素速度が低く、巻込みに起因した溶鋼中の介在物個数も多くなるものと判断される。
「比較例2」
また、比較例2では、第1ポーラスプラグ8のガス流量が100NL/min/tonであるのに対して、第2ポーラスプラグ9のガス流量が20NL/min/tonとなっており、流量比Rが0.17となっている。つまり、比較例2の流量比Rも0.25未満であり、上述した式(1)の関係を満足していない。
このことから、上述した流量比Rの関係を満足しない比較例2でも、溶鋼からの脱水素速度が低く、巻込みに起因した溶鋼中の介在物個数が多くなったものと判断される。
「比較例3」
さらに、比較例3では、第1ポーラスプラグ8のガス流量が60NL/min/tonであるのに対して、第2ポーラスプラグ9のガス流量が60NL/min/tonとなっており、流量比Rが0.50となっている。つまり、比較例3の流量比Rも0.45より大きく、上述した式(1)の関係を満足していない。
このことから、上述した流量比Rの関係を満足しない比較例3でも、溶鋼からの脱水素速度が低く、巻込みに起因した溶鋼中の介在物の個数も多くなるものと判断される。
図6から明らかなように、流量比Rが0.25未満である比較例1、比較例2、及び流量比Rが0.45超である比較例3に比べ、流量比Rが0.33である実施例1は、脱水素速度定数kが大きくなっている。このことから、流量比Rを0.25〜0.45とすれば、脱水素速度定数kを従来条件のレベル(図中に点線で示すk=3.4m/s)より大きくすることができると判断される。
すなわち、実施例1の条件で溶鋼中にアルゴンガスを吹き込んだ際に、溶鋼表面から5
0mmの深さにおいて、水平方向に沿って流れる溶鋼の流速を求め、求められた流速を、等値線によりマッピングする(コンター処理する)と、図8のようになる。
図9は、界面流速が大きな高速領域と、界面流速が小さな低速領域との面積比を、流量比Rに対してまとめたものである。この面積比は、界面流速が0.2m/s以上になる高速領域の面積(SH)と、0.06m/s未満になる低速領域の面積(SL)との面積比(SH/SL)を示したものである。
また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 取鍋
3 底吹き用プラグ
4 取鍋本体
5 蓋
6 脱気口
7 取鍋の底部
8 第1ポーラスプラグ
9 第2ポーラスプラグ
O 取鍋中心
C1 第1中心線
C2 第2中心線
Claims (2)
- 取鍋に設けられた2つの底吹き用プラグから不活性ガスを吹き込みながら取鍋内の溶鋼の脱ガスを行うに際し、
一方の底吹き用プラグのガス流量と他方の底吹き用プラグのガス流量とに差を付けて前記不活性ガスを吹き込むこととし、式(1)を満たすように、2つの底吹き用プラグの各ガス流量を設定すると共に、2つの底吹き用プラグのガス流量の合計が0.9〜1.8NL/min/tonとすることを特徴とする取鍋脱ガス方法。
- 式(1)に代えて式(2)を満たすように、前記2つの底吹き用プラグの各ガス流量を設定することを特徴とする請求項1に記載の取鍋脱ガス方法。
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