JP2014005514A - 疲労特性と延性に優れ、且つ延性の面内異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

疲労特性と延性に優れ、且つ延性の面内異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】780MPa以上のTSを有し、更に疲労特性と延性に優れ、且つ延性の面内異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を具えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板を、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、N、Ti、Bを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率30%以上のフェライトと、面積率20%以上のマルテンサイトを有し、前記フェライトが平均結晶粒径10μm以下で、|( ARL+ARC−2×ARD)/2|< 0.2を満たす組織とを有する鋼板とすることで、|( ELL+ELC−2×ELD)/2|< 1.0および|( U.ELL+U.ELC−2×U.ELD)/2|< 0.6を満たす高強度溶融亜鉛めっき鋼板とする。但し、ARLはL断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、ARCはC断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、ARDはD断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、ELLはL方向の全伸び、ELCはC方向の全伸び、ELDはD方向の全伸び、U.ELLはL方向の均一伸び、U.ELCはC方向の均一伸び、U.ELDはD方向の均一伸びである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、主に自動車の構造部材に好適な成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板、特に780MPa以上の引張強さTSを有し、更に疲労特性と延性に優れ、且つ延性の面内異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法に関する。
近年、衝突時における乗員の安全性確保や車体軽量化による燃費改善を目的として、引張強さ(TS)が780MPa以上で、板厚の薄い高強度鋼板の自動車構造部材への適用が積極的に進められている。特に、最近では、980MPa級、1180MPa級のTSを有する極めて強度の高い高強度鋼板の適用も検討されている。また、自動車構造部材は、腐食環境下に晒されることが多い。そのため、耐食性の観点から、自動車構造部材には主に高強度溶融亜鉛めっき鋼板が適用されている。
一方、鋼板を素材とする自動車構造部材の多くは、プレス加工等によって成形されるため、自動車構造部材用鋼板には優れた成形性(延性)を有することが要求される。しかしながら、一般的には、鋼板の高強度化は成形性の低下を招く。それゆえ、高強度と優れた成形性(延性)を兼ね備え、更に耐食性にも優れる溶融亜鉛めっき鋼板が望まれているのが現状である。
このような要望に対し、例えば特許文献1には、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関し、鋼板組成を質量%でC:0.04〜0.1%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.5〜3.0%、B:0.0005〜0.005%、P≦0.1%、4N<Ti≦0.05%、Nb≦0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、鋼板組織をフェライトとマルテンサイトの混合組織とし、合金化溶融亜鉛めっき層中のFe%を5〜25%とする技術が提案されている。そして、特許文献1で提案された技術によると、引張強さTSが800MPa以上の成形性およびめっき密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られるとされている。
特許文献2には、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関し、鋼板組成を質量%でC:0.05〜0.15%、Si:0.3〜1.5%、Mn:1.5〜2.8%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.0060%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに(Mn%)/(C%)≧15かつ(Si%)/(C%)≧4を満たす組成とし、鋼板組織をフェライト中に体積率で3〜20%のマルテンサイトと残留オーステナイトを含む組織とする技術が提案されている。そして、特許文献2で提案された技術によると、引張強さ490〜880MPaのプレス加工性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られるとされている。
特許文献3には、高強度めっき鋼板に関し、鋼板組成を質量%でC:0.04〜0.14%、Si:0.4〜2.2%、Mn:1.2〜2.4%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.002〜0.5%、Ti:0.005〜0.1%、N:0.006%以下を含有し、さらに(Ti%)/(S%)≧5を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とし、鋼板組織をマルテンサイトと残留オーステナイトの体積率が合計で6%以上であり、かつマルテンサイト、残留オーステナイトおよびベイナイトの硬質相組織の体積率をα%としたとき、α≦50000×[(Ti%)/48+(Nb%)/93+(Mo%)/96+(V%)/51}である組織とする技術が提案されている。そして、特許文献3で提案された技術によると、引張強さ590〜880MPaの穴拡げ性に優れた低降伏比高強度めっき鋼板が得られるとされている。
特許文献4には、高強度溶融亜鉛めっき鋼板に関し、鋼板組成を質量%でC:0.001〜0.3%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.01〜3%、Al:0.001〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とし、鋼板組織を体積率で70〜97%のフェライトと、第2相として体積率で3〜30%のオーステナイトおよび/またはマルテンサイトからなり、フェライトの平均粒径が20μm以下、第2相の平均粒径が10μm以下である組織とし、鋼板表面のめっき層を質量%でAl:0.001〜0.5%、Mn:0.001〜2%を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなるめっき層とし、更に鋼のSi含有率:X質量%、鋼のMn含有率:Y質量%、鋼のAl含有率:Z質量%、めっき層のAl含有率:A質量%、めっき層のMn含有率:B質量%を0≦3−(X+Y/10+Z/3)−12.5×(A−B)とする技術が提案されている。そして、特許文献4で提案された技術によると、成形時のめっき密着性および延性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られるとされている。
特許文献5には、高強度溶融亜鉛めっき鋼板に関し、鋼板組成を質量%でC:0.05〜0.2%、Si:0.5〜2.5%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成とし、鋼板組織をフェライトと焼戻しマルテンサイトを含むマルテンサイトとを含有し、組織全体に占める前記フェライトの面積率が30%以上で、前記マルテンサイトの面積率が30〜50%であり、マルテンサイト全体に占める前記焼戻しマルテンサイトの面積率が70%以上である組織とする技術が提案されている。そして、特許文献5で提案された技術によると、780MPa以上の引張強さを有する成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られるとされている。
特許文献6には、高強度溶融亜鉛めっき鋼帯に関し、鋼帯組成を質量%でC:0.05〜0.2%、Si:0.5〜2.5%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、鋼帯組織をフェライトとマルテンサイトとを含有し、組織全体に占める前記フェライト相の面積率が50%以上で、前記マルテンサイトの面積率が30〜50%である組織とし、且つ、鋼帯内における最大引張強度と最小引張強度の差を60MPa以下とする技術が提案されている。そして、特許文献6で提案された技術によると、鋼帯内における材質のバラツキが小さい成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼帯が得られるとされている。
特開平9−13147号公報 特開平11−279691号公報 特開2002−69574号公報 特開2003−55751号公報 特開2010−209392号公報 特開2011−32549号公報
しかしながら、特許文献1〜6で提案された技術では、必ずしも疲労特性と延性に優れ、更に延性の面内異方性が小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られない。
自動車構造部材には耐久性も要求されることから、自動車構造部材の素材となる高強度溶融亜鉛めっき鋼板においては、所望の強度や成形性(延性)に加えて優れた疲労特性を兼ね備えていることも重要となる。疲労特性が不十分である場合、自動車構造部材の実使用時、繰り返し荷重による疲労破壊が生じ、安全上問題となる。また、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の延性の面内異方性が大きいと、該鋼板にプレス加工等を施して所定の自動車構造部材形状に成形する際、延性の面内異方性に起因した形状不良が生じ、問題となる。これらの問題に対し、特許文献1〜6で提案された技術では、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の疲労特性や、延性の面内異方性について検討されていない。
本発明は、かかる事情に鑑み、780MPa以上のTSを有し、さらに、疲労特性と延性に優れ、かつ延性の面内異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、高強度(780MPa以上の引張強さTS)を有し、更に、疲労特性と延性に優れ、かつ延性の面内異方性の小さい溶融亜鉛めっき鋼板を得るべく鋭意検討を重ねた。
その結果、延性を向上させるためには、所定量のSiを添加することで、適正なフェライトの面積率を確保するとともにフェライト自身の加工硬化能を高めることと、連続溶融亜鉛めっきでの昇温過程の熱履歴の適正な制御により、未再結晶組織の残存を極力低下させることが有効であることを見出した。また、強度に関しては、基板となる鋼板の組成を、所定量のSi、Mn、Ti、Bを含有する組成とし、これらの含有量を適正な範囲とすることで、780MPa以上の引張強さTSの確保が可能であることを見出した。
更に、疲労特性を向上させるためには、基板となる鋼板のミクロ組織を、フェライトと、分散したマルテンサイトとを含む組織とすること、および、基板となる鋼板の組成を、所定量のSiおよびBを含有する組成とすることが有効であることを見出した。
基板となる鋼板のミクロ組織を、フェライトと、分散したマルテンサイトとを含む組織にすると、分散したマルテンサイトが疲労クラックを迂回する効果を発揮する。また、基板となる鋼板に所定量のSiを添加すると、鋼板に繰り返し応力が負荷される際、フェライトの繰り返し硬化、すなわち、微細な転位セル組織の発達が促進される。更に、基板となる鋼板に所定量のBを添加すると、フェライトの粒界強化、およびフェライトの結晶粒微細化による疲労クラックの伝播抑制効果が得られる。以上のように、本発明者らは、基板となる鋼板の組織および組成を適正化することで、溶融亜鉛めっき鋼板の疲労特性が飛躍的に向上することを知見した。
一方、延性の面内異方性を小さくするためには、基板となる鋼板のミクロ組織について、フェライトの結晶粒のアスペクト比(フェライトの結晶粒の長軸長を短軸長で除した値)を適正な範囲に制御することで、EL(全伸び)やU.EL(均一伸び)のL方向(圧延方向)、D方向(圧延方向より45°傾斜した方向)、C方向(圧延方向に対して垂直な方向)の差を小さくすることが重要であることを見出した。また、フェライトの結晶粒のアスペクト比を適正範囲に制御するためには、連続溶融亜鉛めっきでの昇温過程の熱履歴を制御することが有効であることを見出した。更に、連続溶融亜鉛めっきでの昇温過程の熱履歴の適正な制御により、再結晶を十分に進行させ、未再結晶フェライトを抑制することも、延性の面内異方性を抑制するうえで有効であることを見出した。
そして、本発明者らは、以上の条件を同時に満たすことで、780MPa以上の引張強さTSを有し、更に、疲労特性と延性に優れ、且つ延性の面内異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造が可能となることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、以下の特徴を備えている。
[1] 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を具えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板が、質量%で、
C :0.05%以上0.20%以下、 Si:0.8%以上2.0%以下、
Mn:2.0%以上3.0%以下、 P :0.001%以上0.050%以下、
S :0.0001%以上0.0100%以下、 Al:0.001%以上0.300%以下、
N :0.0005%以上0.0100%以下、 Ti:0.005%以上0.050%以下、
B :0.0003%以上0.0050%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率30%以上のフェライトと、面積率20%以上のマルテンサイトを有し、前記フェライトが平均結晶粒径10μm以下で、下記(1)式を満たす組織とを有し、更に、下記(2)式および(3)式を満たすことを特徴とする疲労特性および延性に優れ、且つ延性の面内の異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板。

|(ARL+ARC−2×ARD)/2| < 0.2 ・・・ (1)
|(ELL+ELC−2×ELD)/2| < 1.0 ・・・ (2)
|(U.ELL+U.ELC−2×U.ELD)/2| < 0.6 ・・・ (3)
但し、ARLはL断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、
ARCはC断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、
ARDはD断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、
ELLはL方向の全伸び、ELCはC方向の全伸び、
ELDはD方向の全伸び、U.ELLはL方向の均一伸び、
U.ELCはC方向の均一伸び、U.ELDはD方向の均一伸び。
[2] 前記[1]において、前記組成に加えて更に、質量%でCr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[3] 前記[1]または[2]において、前記組成に加えて更に、質量%でV :0.005%以上0.100%以下、Nb:0.005%以上0.100%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[4] 前記[1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記組成に加えて更に、質量%でCa:0.0003%以上0.0050%以下、Mg:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[5] 前記[1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記溶融亜鉛めっき層が合金化亜鉛めっき層であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[6] 質量%で、
C :0.05%以上0.20%以下、 Si:0.8%以上2.0%以下、
Mn:2.0%以上3.0%以下、 P :0.001%以上0.050%以下、
S :0.0001%以上0.0100%以下、 Al:0.001%以上0.300%以下、
N :0.0005%以上0.0100%以下、 Ti:0.005%以上0.050%以下、
B :0.0003%以上0.0050%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブを、1050℃以上に加熱し、仕上げ圧延終了温度を800℃以上950℃以下の温度域とする熱間圧延を施し、熱間圧延終了後、2s以内に冷却を開始し、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却し、400℃以上550℃以下の温度域で巻取り熱延板とし、該熱延板を、酸洗後、30%以上の圧下率で冷間圧延を施して冷延板とし、該冷延板に、5℃/s以上の平均昇温速度で580℃以上720℃以下の温度域まで昇温する一次昇温と、該一次昇温に続く2℃/s以下の平均昇温速度で750℃以上900℃以下の温度域に昇温する二次昇温とを施し、750℃以上900℃以下の温度域で15s以上600s以下保持したのち、750℃以下550℃以上の温度域の平均冷却速度を5℃/s以上として450℃以上550℃以下の温度域まで冷却し、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする疲労特性および延性に優れ、且つ延性の面内の異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[7] 前記[6]において、前記組成に加えて更に、質量%でCr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[8] 前記[6]または[7]において、前記組成に加えて更に、質量%でV :0.005%以上0.100%以下、Nb:0.005%以上0.100%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[9] 前記[6]ないし[8]のいずれかにおいて、前記組成に加えて更に、質量%でCa:0.0003%以上0.0050%以下、Mg:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[10] 前記[6]ないし[9]のいずれかにおいて、前記溶融亜鉛めっき処理を施したのち、470℃以上600℃以下の温度域で溶融亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、高強度(780MPa以上の引張強さTS)を有し、かつ、疲労特性と延性に優れ、かつ延性の面内異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を、例えば、自動車構造部材に適用することにより車体軽量化による燃費改善を図ることができ、産業上の利用価値は非常に大きい。
以下に、本発明の詳細を説明する。
まず、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板において、基板となる鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C :0.05%以上0.20%以下、
Cは、鋼を強化するにあたり重要な元素であり、高い固溶強化能を有するとともに、後述するマルテンサイトによる組織強化を利用する際に、その面積率や硬度を調整するために不可欠な元素である。C含有量が0.05%未満では、必要な面積率のマルテンサイトを得るのが困難になるとともに、マルテンサイト相が硬質化しないため、十分な強度が得られない。一方、C含有量が0.20%を超えると、スポット溶接性が劣化するとともに、偏析層の形成により延性の低下を招く。したがって、C含有量は0.05%以上0.20%以下、好ましくは0.06%以上0.15%以下とする。
Si:0.8%以上2.0%以下
Siは、本発明において極めて重要な元素である。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき処理直前の焼鈍工程で所望の複合組織に調整される。ここで、Siは焼鈍時、フェライトからオーステナイトへ固溶Cを排出してフェライトを清浄化し、延性を向上させる効果を有する。また、フェライトからオーステナイトへ固溶Cを排出してオーステナイトを安定化するため、急冷が困難な連続溶融亜鉛めっき処理でもマルテンサイトを生成し、複合組織化を容易にする効果も有する。特に、その冷却過程におけるオーステナイトの安定化によりパーライトやベイナイトの生成を抑制し、マルテンサイトの生成を促進し、DP組織の形成および強度の確保に有効である。
また、フェライトに固溶したSiは、加工硬化能を向上させ、フェライト自身の延性を高める。更に、Siで固溶強化されたフェライトと硬質第二相であるマルテンサイトを含む組織では、繰り返し応力条件下でフェライトが繰り返し硬化すること、すなわち、微細な転位セル組織が発達すること、ならびに、分散したマルテンサイトが疲労クラックを迂回する効果を発揮することにより、疲労特性が向上する。
以上のような効果を得るには、Si含有量を0.8%以上にする必要がある。一方、Si含有量が2.0%を超えると、異常組織が発達し、延性が低下する。したがって、Si含有量は0.8%以上2.0%以下、好ましくは1.1%以上1.7%以下とする。
Mn:2.0%以上3.0%以下
Mnは、鋼の熱間脆化の防止ならびに強度確保のために有効な元素である。また、溶融亜鉛めっき処理に先立つ焼鈍工程において、焼入れ性を向上させて複合組織化を容易にすると同時に、冷却過程でのパーライトやベイナイトの生成を抑制する作用があり、オーステナイトからマルテンサイトへの変態を容易にする。こうした効果を得るには、Mn含有量を2.0%以上にする必要がある。一方、Mn含有量が3.0%を超えると、延性の低下を招く。したがって、Mn含有量は2.0%以上3.0%以下、好ましくは2.6%以上2.9%以下とする。
P :0.001%以上0.050%以下
Pは、固溶強化の作用を有し、所望の強度に応じて添加できる元素である。また、フェライト変態を促進するために複合組織化にも有効な元素である。こうした効果を得るためには、P含有量を0.001%以上にする必要がある。一方、P含有量が0.050%を超えると、溶接性の劣化を招くとともに、亜鉛めっきを合金化処理する場合には、合金化速度を低下させ、亜鉛めっきの品質を損なう。したがって、P含有量は0.001%以上0.050%以下、好ましくは0.005%以上0.030%以下とする。
S :0.0001%以上0.0100%以下
Sは、粒界に偏析して熱間加工時に鋼を脆化させるとともに、硫化物として存在して局部変形能を低下させる。そのため、本発明においてSは有害な元素であり、その含有量を0.0100%以下とする必要がある。好ましくは0.0030%以下、より好ましくは0.0020%以下である。しかし、生産技術上の制約から、S含有量は0.0001%以上にする必要がある。
Al:0.001%以上0.300%以下
Alは、フェライトを生成させ、強度と延性のバランスを向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Al含有量を0.001%以上にする必要がある。一方、Al含有量が0.300%を超えると、表面性状の劣化を招く。したがって、Al含有量は0.001%以上0.300%以下、好ましくは0.005%以上0.200%以下とする。
N :0.0005%以上0.0100%以下
Nは、鋼の耐時効性を劣化させる元素であり、特にN含有量が0.0100%を超えると、耐時効性の劣化が顕著となる。それゆえ、本発明においてNは有害な元素であり、その含有量を0.0100%以下とする必要がある。好ましくは0.0070%以下である。なお、本発明ではN含有量が少ないほど好ましいが、生産技術上の制約から、N含有量は0.0005%以上にする必要がある。
Ti:0.005%以上0.050%以下
Tiは、C、S、Nと析出物を形成して強度および靭性の向上に有効に寄与する。また、Bを添加した場合は、NをTiNとして析出させるため、BNの析出が抑制され、次に説明するBの効果が有効に発現される。こうした効果を得るには、Ti含有量を0.005%以上にする必要がある。一方、Ti含有量が0.050%を超えると、析出強化が過度に働き、延性の低下を招く。したがって、Ti含有量は0.005%以上0.050%以下、好ましくは0.010%以上0.030%以下とする。
B :0.0003%以上0.0050%以下
Bは、溶融亜鉛めっき処理に先立つ焼鈍工程の冷却過程において、オーステナイトを安定化させて、オーステナイトからのパーライトやベイナイトの生成を抑制し、溶融亜鉛めっき処理後の冷却過程において、マルテンサイトの生成量を増加させるため、強度の確保に有効な元素である。また、Bは、フェライトの結晶粒界を強化し、疲労特性の向上に有効に寄与する。こうした効果を得るには、B含有量を0.0003%以上にする必要がある。一方、B含有量が0.0050%を超えると、その効果が飽和するばかりでなく、熱間圧延時の製造性を低下させる。したがって、B含有量は0.0003%以上0.0050%以下、好ましくは0.0010%以上0.0030%以下とする。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の基板となる鋼板は、上記の成分組成に加えて、更に、Cr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下から選ばれる少なくとも1種の元素を、単独で、或いは組み合わせて含有してもよい。
Cr、Mo、Ni、Cuは、固溶強化元素としての役割のみならず、溶融亜鉛めっき処理に先立つ焼鈍工程の冷却過程において、オーステナイトを安定化し、複合組織化を容易にする。こうした効果を得るには、Cr含有量、Mo含有量、Ni含有量、Cu含有量を、それぞれ0.05%以上にすることが好ましい。一方、Cr含有量が1.00%、Mo含有量が0.50%、Ni含有量が1.00%、Cu含有量が1.00%を超えると、成形性やスポット溶接性が低下するおそれがある。したがって、Cr、Mo、Ni、Cuを添加する場合、Cr含有量は0.05%以上1.00%以下、Mo含有量は0.05%以上0.50%以下、Ni含有量は0.05%以上1.00%以下、Cu含有量は0.05%以上1.00%以下とすることが好ましい。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の基板となる鋼板は、上記の成分組成に加えて、更に、V :0.005%以上0.100%以下、Nb:0.005%以上0.100%以下から選ばれる少なくとも1種の元素を、単独で、或いは組み合わせて含有してもよい。
VおよびNbは、熱間圧延時あるいは溶融亜鉛めっきにおける焼鈍時に、微細な析出物を形成して強度を上昇させる。特に、Nbは、適当量を添加することで、溶融亜鉛めっきにおける焼鈍時に逆変態で生成するオーステナイト相を微細化するため、焼鈍後のミクロ組織も微細化して強度を上昇させる。こうした効果を得るには、V含有量、Nb含有量を、それぞれ0.005%以上とすることが好ましい。一方、V含有量、Nb含有量が、それぞれ0.100%を超えると、成形性が低下する。したがって、V、Nbを添加する場合は、含有量をそれぞれ0.005%以上0.100%以下とすることが好ましい。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の基板となる鋼板は、上記の成分組成に加えて、更に、Ca:0.0003%以上0.0050%以下、Mg:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下から選ばれる少なくとも1種の元素を、単独で、或いは組み合わせて含有してもよい。
Ca、MgおよびREMは、脱酸に用いる元素であるとともに、硫化物の形状を球状化し、局部延性への硫化物の悪影響を改善するために有効な元素である。この効果を得るためには、Ca含有量、Mg含有量およびREM含有量をそれぞれ0.0003%以上とすることが好ましい。しかしながら、Ca、MgおよびREMは、それぞれの含有量が0.0050%を超えて過剰になると、介在物等の増加を引き起こし表面および内部欠陥などを引き起こすおそれがある。したがって、Ca、MgおよびREMを添加する場合は、含有量をそれぞれ0.0003%以上0.0050%以下とすることが好ましい。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の基板となる鋼板において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、例えば、Sb、Sn、Ta、O、H、Na、Cl、Zn、Sc、Co、Y、Zr、Hf、W等が挙げられる。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板のミクロ組織、および伸び特性の限定理由について説明する。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板において、基板となる鋼板は、面積率30%以上のフェライトと、面積率20%以上のマルテンサイトを有し、前記フェライトが平均結晶粒径10μm以下で、且つ、以下の(1)式を満たすミクロ組織を有する。なお、以下の(1)式において、ARLはL断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、ARCはC断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、ARDはD断面のフェライト結晶粒のアスペクト比である。
|( ARL+ARC−2×ARD)/2| < 0.2 ・・・ (1)
フェライトの面積率:30%以上
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板において、基板となる鋼板のミクロ組織は、延性に富む軟質なフェライト中に、硬質相として主にマルテンサイト相を分散させた複合組織からなる。十分な延性を確保するため、フェライトの面積率を30%以上にする必要がある。好ましくは34%以上、より好ましくは38%以上である。但し、フェライトの面積率が過剰に高くなると、所望の強度の確保が困難となるため、80%以下とすることが好ましい。なお、フェライトの形態としては、ポリゴナルフェライトの他に、アシキュラーフェライト、回復した未再結晶フェライトを含むものとする。しかし、良好な延性を確保する観点からは、未再結晶フェライトの面積率を3%以下に抑制することが好ましい。
マルテンサイトの面積率:20%以上
780MPa以上のTSを達成するためには、焼戻しマルテンサイトを含むマルテンサイトの面積率を20%以上にする必要がある。好ましくは24%以上、より好ましくは33%以上である。但し、マルテンサイトの面積率が過剰に高くなると、所望の延性の確保が困難となるため、70%以下とすることが好ましい。
なお、フェライトとマルテンサイトの面積率は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を研磨後、3%ナイタールで腐食し、板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、得られた組織画像を用いて、各組織(フェライト、マルテンサイト)の面積率を10視野分算出し、それらの値を平均して求めることとする。また、上記の組織画像において、フェライトは灰色の組織(下地組織)、マルテンサイトは白色の組織を呈している。
フェライトの平均結晶粒径:10μm以下
フェライトの結晶粒の微細化は、疲労特性の向上に寄与する。そのため、本発明では、良好な疲労特性を確保する目的で、フェライトの平均結晶粒径を10μm以下にする。好ましくは8μm以下である。
なお、フェライトの平均結晶粒径は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を研磨後、3%ナイタールで腐食し、板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、得られた組織画像を用いて、各々のフェライト結晶粒の面積を求め、円相当直径を算出し、それらの値を平均して求めることとする。
なお、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板において、基板となる鋼板のミクロ組織には、フェライトとマルテンサイト(焼戻しマルテンサイトを含む)以外に、残留オーステナイト、ベイナイト、焼戻しベイナイト、パーライト、セメンタイト等の炭化物が、面積率で10%以下の範囲で含まれても、本発明の効果が損なわれることはない。また、780MPa以上のTSを安定的に確保するうえでは、パーライトの面積率を2%未満にすることが好ましい。
|(ARL+ARC−2×ARD)/2| < 0.2 ・・・ (1)
但し、ARLはL断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、ARCはC断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、ARDはD断面のフェライト結晶粒のアスペクト比。
延性の面内異方性を小さくするためには、L断面のフェライト結晶粒のアスペクト比(ARL)、C断面のフェライト結晶粒のアスペクト比(ARC)、D断面のフェライト結晶粒のアスペクト比(ARD)について互いに差を小さくする必要がある。ここで、上記(1)式左辺の値、すなわち(ARL+ARC−2×ARD)/2の絶対値が0.2以上になると、延性の面内異方性が大きくなり、鋼板をプレス加工して所定形状の部材を成形する際に形状不良が生じる等、様々な支障をきたす。したがって、本発明では、(ARL+ARC−2×ARD)/2の絶対値を0.2未満に規定する。好ましくは0.15以下である。
なお、上記において、フェライト結晶粒のアスペクト比とは、フェライト結晶粒の長軸長を短軸長で除した値である。また、L断面は圧延方向に平行な垂直断面、D断面は圧延方向と45°をなす方向と平行な垂直断面、C断面は圧延方向と90°をなす方向と平行な垂直断面である。また、各断面のフェライト結晶粒のアスペクト比(長軸長/短軸長)は、各断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、10視野分のアスペクト比を測定し、それらの値を平均して求めるものとする。
また、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、以下の(2)式および(3)式を満たす伸び特性を有するものとする。なお、以下の(2)式および(3)式において、ELLはL方向の全伸び、ELCはC方向の全伸び、ELDはD方向の全伸び、U.ELLはL方向の均一伸び、U.ELCはC方向の均一伸び、U.ELDはD方向の均一伸びである。
|(ELL+ELC−2×ELD)/2| < 1.0 ・・・ (2)
|(U.ELL+U.ELC−2×U.ELD)/2| < 0.6 ・・・ (3)
上記(2)式および(3)式はいずれも、延性の面内異方性の指標を表す式である。延性の面内異方性を小さくするためには、EL(全伸び)やU.EL(均一伸び)のL方向、D方向、C方向の差を小さくすることが重要である。したがって、(ELL+ELC−2×ELD)/2の絶対値((2)式左辺の値)や(U.ELL+U.ELC−2×U.ELD)/2の絶対値((3)式左辺の値)は小さいほうが好ましく、本発明では、(ELL+ELC−2×ELD)/2の絶対値を1.0未満とし、(U.ELL+U.ELC−2×U.ELD)/2の絶対値を0.6未満とする。
なお、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の溶融亜鉛めっき層の組成、組織、厚さ(付着量)は特に限定されない。また、本発明においては、溶融亜鉛めっき層を合金化亜鉛めっき層としてもよい。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記の成分組成を有する鋼スラブを1050℃以上に加熱し、仕上げ圧延終了温度を800℃以上950℃以下の温度域とする熱間圧延を施し、熱間圧延終了後、2s以内に冷却(強制冷却)を開始し、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却し、400℃以上550℃以下の温度域で巻取り熱延板とし、該熱延板を、酸洗後、30%以上の圧下率で冷間圧延を施して冷延板とし、該冷延板に、5℃/s以上の平均昇温速度で580℃以上720℃以下の温度域まで昇温する一次昇温と、該一次昇温に続く2℃/s以下の平均昇温速度で750℃以上900℃以下の温度域に昇温する二次昇温とを施し、750℃以上900℃以下の温度域で15s以上600s以下保持したのち、750℃以下550℃以上の温度域の平均冷却速度を5℃/s以上として450℃以上550℃以下の温度域まで冷却し、溶融亜鉛めっき処理を施すことによって製造できる。
鋼スラブの加熱温度:1050℃以上
鋼スラブ中には鋳造時に生じた析出物が存在し、これらの析出物は鋼スラブの加熱段階で再溶解させる必要がある。加熱後の鋼スラブに上記析出物が残存する場合、これらの析出物は最終的に得られる鋼板内で粗大な析出物となり、鋼板強度に寄与しないためである。本発明では、鋼スラブを加熱して鋳造時に析出したTi、Nb系析出物を再溶解させる必要があり、1050℃以上の加熱により、強度への寄与が確認される。また、スラブ表層の気泡、偏析などの欠陥をスケールオフし、鋼板表面の亀裂、凹凸を減少し、平滑な鋼板表面を達成する観点からも鋼スラブを1050℃以上に加熱することが有利である。したがって、スラブの加熱温度は1050℃以上、好ましくは1150℃以上とする。
但し、鋼スラブの加熱温度が過剰に高くなると、オーステナイトの結晶粒の粗大化を引き起こし、結果、最終組織が粗大化して疲労特性の低下を招くことが懸念されるため、鋼スラブの加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。
なお、鋼スラブは、マクロ偏析を防止する観点からは連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法などにより製造することも可能である。
熱間圧延の仕上げ圧延終了温度:800℃以上950℃以下
加熱後の鋼スラブは、粗圧延および仕上げ圧延により熱間圧延され熱延板となる。このとき、仕上げ圧延終了温度が950℃を超えると、酸化物(スケール)の生成量が急激に増大し、地鉄と酸化物の界面が荒れ、酸洗、冷間圧延後の表面品質が劣化する傾向にある。また、酸化物(スケール)生成量の増大に伴い熱延スケールの除去が困難となり、酸洗後に熱延スケールの取れ残りなどが一部に存在すると、疲労特性やスポット溶接性に悪影響を及ぼす。更に、仕上げ圧延終了温度が950℃を超えると、結晶粒径が過度に粗大となり、加工時にプレス品表面荒れを生じる場合がある。
一方、仕上げ圧延終了温度が800℃未満では圧延荷重が増大し、圧延負荷が大きくなる。また、仕上げ圧延終了温度が800℃未満では、オーステナイトが未再結晶状態での圧下率が高くなり、異常な集合組織が発達し、最終製品における面内異方性が顕著となり、材質の均一性が損なわれるだけでなく、延性そのものも低下する。したがって、仕上げ圧延終了温度は800℃以上950℃以下、好ましくは850℃以上930℃以下とする。
なお、鋼スラブは通常の条件で粗圧延によりシートバーとされるが、鋼スラブの加熱温度を低目にした場合は、熱間圧延時のトラブルを防止する観点から、仕上げ圧延前にバーヒーターなどを用いてシートバーを加熱することが好ましい。また、鋼スラブに粗圧延を施すに際し、鋳造後の鋼スラブが所望の温度範囲にある場合(1050℃以上)には、鋼スラブを加熱することなく、或いは短時間加熱後、直送圧延してもよい。
熱間圧延終了後の冷却条件:2s以内に冷却(強制冷却)を開始し、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却
本発明では、熱延板のミクロ組織をフェライトとベイナイトを主体とする組織とするのが好適である。ベイナイトは、転位を多く含むことから、溶融亜鉛めっき処理に先立つ焼鈍工程の昇温過程においてオーステナイト逆変態の起点となるため、焼鈍および溶融亜鉛めっき処理後にマルテンサイトを所定の割合で含む鋼板とするうえで有効となる。
熱間圧延終了後、冷却(強制冷却)を開始するまでに2秒を超える時間が経過すると、ランナウトテーブル上でフェライトが不均一に生成し易く、本発明で好適なフェライトとベイナイトを主体とした均一な熱延板のミクロ組織が得られず、延性の面内異方性の小さい溶融亜鉛めっき鋼板の製造が困難となる。また、平均冷却速度が50℃/sを下回る場合、或いは平均冷却速度が50℃/s以上であっても該平均冷却速度で600℃以下まで冷却しない場合も、上記と同様な問題が起こる。したがって、熱間圧延終了後、2s以内に冷却(強制冷却)を開始し、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却する。なお、操業を阻害する形状不良およびそれに起因する蛇行を回避する観点からは、上記平均冷却速度を500℃/s以下とすることが好ましい。
巻取り温度:400℃以上550℃以下
本発明では、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下まで強制冷却したのち、該強制冷却を停止し、400℃以上550℃以下の温度域で巻取り、熱延板とする。巻取り温度が550℃を超えると、巻取り保持中にパーライトが生成し、その後の冷間圧延時にコイル長手で板厚が変動する不具合が生じる。このような不具合が生じると、通板性が阻害され、更に、最終製品の延性の面内異方性が大きくなる。一方、巻取り温度が400℃未満では、熱延板強度が上昇し、冷間圧延における圧延負荷が増大し、生産性が低下する。したがって、巻取り温度は400℃以上550℃以下、好ましくは400℃以上500℃以下とする。
なお、熱間圧延時、粗圧延により得られた粗圧延板(シートバー)に仕上げ圧延を施すに際しては、粗圧延板同士を接合して連続的に仕上げ圧延を行ってもよい。また、粗圧延板を一旦巻き取っても構わない。
このようにして製造した熱延板に、酸洗を行う。酸洗は、熱延板表面の酸化物の除去が可能であることから、最終製品の溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の良好なめっき品質の確保のために重要である。なお、本発明では、一回の酸洗を行ってもよいし、複数回に分けて酸洗を行ってもよい。酸洗後の熱延板は、冷間圧延を施して冷延板とされる。
冷間圧延時の圧下率:30%以上
冷間圧延時の圧下率が30%に満たない場合には、引き続く焼鈍時においてオーステナイトへの逆変態の核となる粒界や転位の単位体積あたりの総数が減少し、基板となる鋼板の組織を上記したような所望のミクロ組織とすることが困難になる。また、ミクロ組織に不均一が生じ、延性が低下する。したがって、冷間圧延時の圧下率は30%以上、好ましくは40%以上とする。但し、冷間圧延時の圧下率が過剰に高くなると、得られる冷延板の面内の板厚精度の問題が懸念されるため、80%以下とすることが好ましい。
なお、冷間圧延時の圧延パスの回数、各パスの圧下率については特に規定することなく、冷間圧延時の合計圧下率が30%以上である限り本発明の効果は発揮される。冷間圧延により得られた冷延板は、以下の条件での焼鈍処理、溶融亜鉛めっき処理が施され、溶融亜鉛めっき鋼板となる。
一次昇温の平均昇温速度(580℃以上720℃以下の温度域までの平均昇温速度):5℃/s以上
焼鈍処理時の昇温条件は、本発明で重要な製造因子の一つである。焼鈍処理の昇温工程において、580℃以上720℃以下の温度域までの平均昇温速度が5℃/s未満では、圧延組織の回復が進行してしまい、アスペクト比の大きいフェライト結晶粒が生成され、延性の面内異方性が大きくなる。また、回復の進行により転位が減少し、続く二次昇温での再結晶の進行を阻害し、延性の面内異方性が大きくなる。
以上の理由により、本発明では、焼鈍処理時、580℃以上720℃以下の温度域までの平均昇温速度を5℃/s以上とする必要がある。好ましくは7℃/s以上である。
但し、580℃以上720℃以下の温度域までの平均昇温速度が80℃/sを超えると、鋼板の面内の温度ムラ起因による面内の組織ムラが生じることが懸念されるため、80℃/s以下とすることが好ましい。
二次昇温の平均昇温速度(750℃以上900℃以下の温度域まで昇温する際の平均昇温速度):2℃/s以下
焼鈍処理時の昇温条件は、本発明で重要な製造因子の一つである。本発明では、580℃以上720℃以下の温度域までを平均昇温速度:5℃/s以上で昇温(一次昇温)したのち、更に昇温して750℃以上900℃以下の焼鈍温度まで昇温(二次昇温)する。ここで、更に昇温(二次昇温)する際の平均昇温速度が2℃/sを超える場合には、再結晶の進行が十分でなく、延性が低下するだけでなく、延性の面内異方性も大きくなる。したがって、本発明では、更に昇温(二次昇温)する際の平均昇温速度を2℃/s以下とする。
本発明では、以上のように焼鈍処理時の昇温速度を制御することで、再結晶を十分に進行させ、未再結晶フェライトを抑制するとともにフェライト結晶粒のアスペクト比の適正化を図り、EL(全伸び)やU.EL(均一伸び)のL方向、D方向、C方向の差を小さくする。すなわち、本発明において、焼鈍処理時の昇温速度を上記の如く制御することは、先述の(1)〜(3)式を満たす高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造するうえで極めて重要である。
焼鈍温度:750℃以上900℃以下
焼鈍温度が750℃未満では、焼鈍時にオーステナイトが十分に生成しないため、続く冷却過程で所定のマルテンサイト量が得られず、強度の確保が困難となる。一方、焼鈍温度が900℃を超えると、フェライトの生成が充分でなく、延性が低下する。したがって、焼鈍温度は750℃以上900℃以下とする。好ましくは760℃以上870℃以下である。
焼鈍温度での保持時間:15s以上600s以下
焼鈍温度での保持時間(750℃以上900℃以下の温度域での滞留時間)が15sに満たない場合には、再結晶の進行が十分でなく、延性が低下するだけでなく、延性の面内異方性も大きくなる。一方、焼鈍温度での保持時間が600sを超える場合には、フェライトの結晶粒が粗大化し、所望の疲労特性の確保が困難となる。また、生産性も阻害する。したがって、焼鈍温度での保持時間は15s以上600s以下とする。好ましくは30s以上550s以下である。
焼鈍後、750℃以下550℃以上の温度域における平均冷却速度:5℃/s以上
焼鈍後、750℃以下550℃以上の温度域における平均冷却速度が5℃/s未満である場合、冷却過程中に生成するパーライトが増加し、所望のマルテンサイト面積率の確保が困難となり、強度の確保が困難となる。したがって、本発明では、750℃以上900℃以下の温度域に所定時間(15s以上600s以下)保持したのち、少なくとも750℃以下550℃以上の温度域における平均冷却速度が5℃/s以上となるように冷却する。好ましくは7℃/s以上である。但し、750℃以下550℃以上の温度域における平均冷却速度が過剰に大きくなると、鋼板の形状劣化が懸念されるため、80℃/s以下とすることが好ましい。
冷却停止温度:450℃以上550℃以下
冷却停止温度が550℃を超えると、フェライト変態の進行が十分でなく、所望のフェライト面積率の確保が困難となり、延性の低下を招く。一方、冷却停止温度が450℃未満では、ベイナイト変態が進行し、良好な均一延性の確保が困難となる。なお、冷却停止後、当該温度域で保持しても、本発明の効果を得ることができる。
溶融亜鉛めっき処理
本発明において、溶融亜鉛めっき処理条件は特に限定されない。また、溶融亜鉛めっき処理を施したのち、合金化処理を施してもよい。
合金化温度:470℃以上600℃以下
合金化処理を施す場合には、合金化温度を470℃以上600℃以下とすることが好ましい。合金化温度が470℃未満では、合金化が十分に進行せず、犠牲防食作用の低下や摺動性の低下を招くおそれがある。一方、合金化温度が600℃を超えると、合金化処理時の未変態オーステナイトの一部が分解され、炭化物を生成し、強度の確保が困難となる場合がある。また、合金化が進行し過ぎて耐パウダリング性の低下が懸念される。
なお、表面粗度の調整等を目的として、溶融亜鉛めっき処理後、或いは合金化処理後の溶融亜鉛めっき鋼板に、スキンパス圧延を施してもよい。スキンパス圧延の圧下率は、0.1%以上1.0%以下の範囲が好ましい。スキンパス圧延の圧下率が0.1%未満では圧延の効果が小さく、制御も困難である。一方、スキンパス圧延の圧下率が1.0%を超えると、生産性が著しく低下する。スキンパスは、インラインで行ってもよいし、オフラインで行ってもよい。また、一度に目的の圧下率のスキンパスを行ってもよいし、数回に分けて行っても構わない。
その他の製造方法の条件は特に限定しないが、生産性の観点から、上記の焼鈍、溶融亜鉛めっき、合金化処理などの一連の処理は、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)で行うのが好ましい。また、溶融亜鉛めっきには、Al含有量が0.10%以上0.20%以下である亜鉛めっき浴を用いることが好ましい。めっき後は、めっきの目付け量を調整するために、ワイピングが可能である。
表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にて鋼スラブとした。得られた鋼スラブを、表2に示す条件で熱間圧延を施して熱延板とし、次いで、得られた熱延板を酸洗し、表2に示す条件で冷間圧延を施して冷延板とした。得られた冷延板を、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)に通板して表3に示す条件で焼鈍し、溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)を得た。また、一部の溶融亜鉛めっき鋼板については、溶融亜鉛めっき処理後、表3に示す合金化温度で合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)とした。
GI鋼板を製造するに際しては、溶融亜鉛めっき浴としてAl:0.19質量%含有亜鉛浴を使用した。一方、GA鋼板を製造するに際しては、溶融亜鉛めっき浴としてAl:0.14質量%含有亜鉛浴を使用した。GI鋼板、GA鋼板のいずれの場合においても、溶融亜鉛めっき浴の浴温を465℃とし、めっき付着量を片面あたり45g/m2(両面めっき)とした。また、GA鋼板の合金化亜鉛めっき層中のFe濃度を9質量%以上12質量%以下とした。
なお、表2に記載された熱間圧延条件において、平均冷却速度は、仕上げ圧延終了温度から強制冷却停止温度までの平均冷却速度である。表3に記載された焼鈍条件において、一次昇温速度は室温から一次到達温度の温度域での平均昇温速度であり、二次昇温速度は一次到達温度から焼鈍温度の温度域での平均昇温速度である。また、表3に記載された焼鈍条件において、焼鈍時間は750℃以上900℃以下の温度域における滞留時間である。但し、鋼板No.17および18における焼鈍時間は、それぞれの焼鈍温度における保持時間である。更に、表3に記載された焼鈍条件において、平均冷却速度は750℃以下550℃以上の温度域での平均冷却速度である。但し、鋼板No.22における平均冷却速度は、750℃以下700℃以上の温度域での平均冷却速度である。
Figure 2014005514
Figure 2014005514
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得られた溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)について、以下の方法にしたがい組織観察、引張試験および疲労試験を行った。
<組織観察>
鋼板(GI鋼板またはGA鋼板)の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を研磨後、3%ナイタールで腐食し、板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、得られた組織画像について、Media Cybernetics社のImage−Proを用いて各組織(フェライト、マルテンサイト)の面積率を10視野分算出し、それらの値を平均してフェライト面積率とマルテンサイト面積率を求めた。また、上記と同様にして得られた組織画像について、Media Cybernetics社のImage−Proを用いて各々のフェライト結晶粒の面積を求め、円相当直径を算出し、それらの値を平均してフェライトの平均結晶粒径を求めた。
更に、鋼板(GI鋼板またはGA鋼板)のL断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察し、得られた組織画像について、Media Cybernetics社のImage−Proを用いて10視野分のアスペクト比を測定し、それらの値を平均してL断面のフェライト結晶粒のアスペクト比(長軸長/短軸長)を求めた。同様にして、C断面およびD断面のフェライト結晶粒のアスペクト比(長軸長/短軸長)も求めた。
<引張試験>
鋼板(GI鋼板またはGA鋼板)から、引張方向が鋼板の圧延方向に平行な方向(L方向)、引張方向が鋼板の圧延方向に対して45°方向(D方向)、引張方向が鋼板の圧延方向に対して90°方向(C方向)の3方向となるようにJIS5号試験片を採取した。これらの試験片を用いて、JIS Z 2241(1998年)に準拠して引張試験を行い、TS(引張強さ)、EL(全伸び)、U.EL(均一伸び)を測定した。なお、本発明では、TS780MPa級はEL≧24%およびU.EL≧13%、TS980MPa級はEL≧17%およびU.EL≧9%、TS1180MPa級はEL≧13%およびU.EL≧7%である場合を、機械的特性が良好と判断した。
<疲労試験>
JIS Z 2275(1978年)に準拠して、鋼板(GI鋼板またはGA鋼板)から、C方向に沿うように平面曲げ疲労試験片を採取し、両振り(応力比-1)、周波数20Hzの条件で、両振り平面曲げ疲労試験を行った。両振り平面曲げ疲労試験において107サイクルまで破断が認められなかった応力を測定し、この応力を疲労限強度とした。なお、本発明では、TS780MPa級は疲労限強度≧320MPa、TS980MPa級は疲労限強度≧400MPa、TS1180MPa級は疲労限強度≧480MPaの場合を、疲労特性が良好と判定した。また、TS780MPa級、980MPa級、1180MPa級のいずれにおいても、耐久比≧0.40の場合を耐久比が良好と判定した。
以上により得られた結果を表4〜6に示す。
Figure 2014005514
Figure 2014005514
Figure 2014005514
本発明例の鋼板(GI鋼板またはGA鋼板)はいずれも、TSが780MPa以上であり、疲労特性と延性に優れ、かつ延性の面内異方性が小さい。一方、比較例では、強度、疲労特性、延性のいずれか一つ以上が劣っており、延性の面内異方性が大きい。

Claims (10)

  1. 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を具えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板が、質量%で、
    C :0.05%以上0.20%以下、 Si:0.8%以上2.0%以下、
    Mn:2.0%以上3.0%以下、 P :0.001%以上0.050%以下、
    S :0.0001%以上0.0100%以下、 Al:0.001%以上0.300%以下、
    N :0.0005%以上0.0100%以下、 Ti:0.005%以上0.050%以下、
    B :0.0003%以上0.0050%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率30%以上のフェライトと、面積率20%以上のマルテンサイトを有し、前記フェライトが平均結晶粒径10μm以下で、下記(1)式を満たす組織とを有し、更に、下記(2)式および(3)式を満たすことを特徴とする疲労特性および延性に優れ、且つ延性の面内の異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板。

    |(ARL+ARC−2×ARD)/2| < 0.2 ・・・ (1)
    |(ELL+ELC−2×ELD)/2| < 1.0 ・・・ (2)
    |(U.ELL+U.ELC−2×U.ELD)/2| < 0.6 ・・・ (3)
    但し、ARLはL断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、
    ARCはC断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、
    ARDはD断面のフェライト結晶粒のアスペクト比、
    ELLはL方向の全伸び、ELCはC方向の全伸び、
    ELDはD方向の全伸び、U.ELLはL方向の均一伸び、
    U.ELCはC方向の均一伸び、U.ELDはD方向の均一伸び。
  2. 前記組成に加えて更に、質量%でCr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記組成に加えて更に、質量%でV :0.005%以上0.100%以下、Nb:0.005%以上0.100%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記組成に加えて更に、質量%でCa:0.0003%以上0.0050%以下、Mg:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 前記溶融亜鉛めっき層が合金化亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 質量%で、
    C :0.05%以上0.20%以下、 Si:0.8%以上2.0%以下、
    Mn:2.0%以上3.0%以下、 P :0.001%以上0.050%以下、
    S :0.0001%以上0.0100%以下、 Al:0.001%以上0.300%以下、
    N :0.0005%以上0.0100%以下、 Ti:0.005%以上0.050%以下、
    B :0.0003%以上0.0050%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブを、1050℃以上に加熱し、仕上げ圧延終了温度を800℃以上950℃以下の温度域とする熱間圧延を施し、熱間圧延終了後、2s以内に冷却を開始し、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却し、400℃以上550℃以下の温度域で巻取り熱延板とし、該熱延板を、酸洗後、30%以上の圧下率で冷間圧延を施して冷延板とし、該冷延板に、5℃/s以上の平均昇温速度で580℃以上720℃以下の温度域まで昇温する一次昇温と、該一次昇温に続く2℃/s以下の平均昇温速度で750℃以上900℃以下の温度域に昇温する二次昇温とを施し、750℃以上900℃以下の温度域で15s以上600s以下保持したのち、750℃以下550℃以上の温度域の平均冷却速度を5℃/s以上として450℃以上550℃以下の温度域まで冷却し、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする疲労特性および延性に優れ、且つ延性の面内の異方性の小さい高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  7. 前記組成に加えて更に、質量%でCr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項6に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  8. 前記組成に加えて更に、質量%でV :0.005%以上0.100%以下、Nb:0.005%以上0.100%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項6または7に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  9. 前記組成に加えて更に、質量%でCa:0.0003%以上0.0050%以下、Mg:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  10. 前記溶融亜鉛めっき処理を施したのち、470℃以上600℃以下の温度域で溶融亜鉛めっきの合金化処理を施すことを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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