JP2014002015A - 微小金属電極およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】径が30〜100μmである金属線3を、金属線3の径より内径が大きいガラス管1の内側に挿入する工程と、ガラス管1の一部を挿入された金属線3と共に加熱軟化させ、軸方向に引き伸ばす工程と、引き伸ばす工程で引き伸ばされた箇所Aにおいて、ガラス管1と挿入された金属線3を共に切断する工程を備える製造方法により、先端側がテーパー状とされているガラス管1と、基端側の径が30〜100μmで先端側がテーパー状とされている金属線3とを備え、金属線3はガラス管1内に存し、先端がガラス管1の先端によって被覆されており、先端面全体の面積が8×10−7〜2×10−4mm2である微小金属電極を得る。
【選択図】図2
Description
微小電極としては、あらかじめ先端をテーパー状としたガラス製キャピラリーチューブに、炭素繊維(8μm)を挿し通した炭素微小電極が提案されている(非特許文献1)。
また、石英ガラス棒の断面に穴をあけ、その穴に金(Au)を溶かし込み、次いで石英ガラス棒を加熱融解しながら引き伸ばして得られるガラス被覆された微小金属電極が提案されている(特許文献1)。
また、非特許文献2には、白金(7.5μm以下Pt線)を、白金の径よりも大きい内径を有する軟質ガラス(ソーダ石灰ガラス)製のキャピラリーに挿入し、次いで、真空中320℃で加熱してキャピラリーを白金に融着させることによって得られる先端径が50μm以下である微小金属電極が記載されている。
また、電極材料は、測定対象物質の種類により適切な材料を選ぶ必要があり、感度、選択性等に大きく影響を及ぼす。そのため、電極材料として、炭素ではなく、金、白金等の金属を使用することも求められている。そこで、炭素繊維に代えて金属繊維を用い、非特許文献1の方法で微小金属電極を製造することが考えられる。しかし、金属の細線は、炭素繊維のような強度がないため、テーパー状ガラス製キャピラリーチューブの狭小径部に挿し通すことは難しく、非特許文献1に記載の方法で微小金属電極を得ることは困難であった。
また、特許文献1では、微小金属電極ができるとされている。しかし、金属の溶融温度で穴の形状を保てるような石英ガラス棒は存在せず、現実に、石英ガラス棒の断面にあけた穴に金(Au)を溶かし込むことは不可能である。したがって、特許文献1に記載された方法で微小金属電極を得ることは現実的ではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、微小な評価対象物を電気化学的に正確に評価可能な微小金属電極とその製造方法を提供することを課題とする。
[1]径が30〜100μmである金属線を、該金属線の径より内径が大きいガラス管の内側に挿入する工程と、
前記ガラス管の一部を挿入された金属線と共に加熱軟化させ、軸方向に引き伸ばす工程と、
該引き伸ばす工程で引き伸ばされた箇所において、前記ガラス管と挿入された金属線を共に切断する工程とを備えることを特徴とする微小金属電極の製造方法。
[2]前記引き伸ばす工程を、前記ガラス管の軸方向を鉛直方向として行う[1]に記載の微小金属電極の製造方法。
[3]前記ガラス管の内径と前記金属線の径の差が400〜900μmである[1]または[2]に記載の微小金属電極の製造方法。
[4]前記金属線が金または白金からなる[1]〜[3]のいずれか一項に記載の微小金属電極の製造方法。
[5]前記切断する工程後に、さらに、切断された先端面近傍のガラス管にフッ素樹脂を被覆する工程を備える[1]〜[4]のいずれか一項に記載の微小金属電極の製造方法。
[6]先端側がテーパー状であるガラス管と該ガラス管内に存する金属線とを有する微小金属電極であって、前記金属線の基端側の径が30〜100μmであり、前記金属線の先端側がテーパー状であり、前記金属線の先端が前記ガラス管の先端によって金属線の先端面が露出した状態で被覆されており、前記微小金属電極の先端面全体の面積が8×10−7〜2×10−4mm2であることを特徴とする微小金属電極。
[7]前記先端面全体の面積に占める前記金属線の面積の割合が、30〜90%である[6]に記載の微小金属電極。
[8]前記先端面近傍のガラス管がフッ素樹脂で被覆されている[6]または[7]に記載の微小金属電極。
[9]前記金属線が金または白金からなる[6]〜[8]のいずれか一項に記載の微小金属電極。
[10][6]〜[9]のいずれか一項に記載の微小金属電極と、対極と、評価対象物を収容するセル容器とを備えることを特徴とする評価装置。
本発明の微小金属電極の一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の微小金属電極10は一端が先端面Xとされ、ガラス管1と、リード線2と、一端側がリード線2に固定され、リード線2の一端側と共にガラス管1の内部に存する金属線3と、ガラス管1を被覆するコーティング層4を備えている。
ガラス管1は、外内径が略一定した支持部1aと、支持部1aの一端側に連続する被覆部1bとを有している。被覆部1bは、支持部1aから離れて微小金属電極10の先端面Xに行くほど縮径するテーパー状である。
金属線3の基端部3aの他端側(先端部3bと反対側)は、リード線2の一端側の側面2aに熱融着によって固定されている。また、金属線3の先端部3b先端は、金属線3の先端面が露出し、周面が被覆部1bの先端によって被覆された状態となっている。
また、コーティング層4は、ガラス管1における被覆部1b全体と支持部1aの被覆部1b近傍を被覆するように設けられている。
先端面X全体の面積(先端面Xが円の場合は直径)が上記範囲内であれば、微小な評価対象物を正確に評価することができる。
先端面X全体の面積(先端面Xが円の場合は直径)を上限値以下とすることにより、評価対象物以外(例えば、正極活物質を評価する場合の電解液)に対して、微小金属電極10からの電気化学的作用が及ぶことを防止できるものと考えられる。
また、先端面X全体の面積(先端面Xが円の場合は直径)を下限値以上とすることにより、評価対象物に対する電気的導通を確実にすることができるものと考えられる。
先端面Xは、評価対象物に対する電気的導通を確実にしやすいことから、円形または円に近い形状であることが好ましい。
上記割合を下限値以上とすることにより、評価対象物に対する電気的導通を確実にすることができるため、評価対象物をより正確に評価することができる。
また、上記割合を上限値以下とすることにより、ガラス管1の被覆部1bの強度が確保され、金属線3の先端部3bを充分に保護できる。
先端面Xにおける金属線3(先端部3b)の面積は、2×10−7〜1.5×10−4mm2が好ましく、3×10−6〜6×10−5mm2がより好ましく、7×10−6〜4×10−5mm2がさらに好ましい。先端面Xにおける金属線3の形状が円である場合には、先端面Xにおける金属線3の直径は、0.5〜14μmが好ましく、2〜9μmがより好ましく、3〜7μmがさらに好ましい。
先端面Xにおける金属線3は、評価対象物に対する電気的導通を確実にしやすいことから、円形または円に近い形状であることが好ましい。
また、基端部3aの径が上限値以下であることにより、先端面Xにおける金属線3の径(面積)を充分に小さくすることができる。
金属線3の材質は、評価対象物質の種類、所望の感度、選択性等を考慮して選択される。金属線3の材質の選択にあたっては、使用する反応場が水溶媒系か非水溶媒系かも考慮すべきである。金と白金は水溶媒系では水素過電圧が小さく酸素過電圧が大きいため、有機物や無機物の電解酸化のための電極としてもよく用いられる。ただし、一般的に電位窓は小さい。一方、非水溶媒系での測定では、水素過電圧や酸素過電圧の因子の影響を受けなくなるが、電位窓が広くなる。ただし、溶媒の分解電位や支持塩の分解電位に注意を要する。
被覆部1bの外表面をコーティング層4によって被覆することで、金属線3以外の絶縁性を高めることができ、電気化学測定を行う際のバックグランド電流が抑制されるため好ましい。また、コーティング層4によってガラス管1の耐薬品性を向上させることができる。
コーティング層4に用いるフッ素樹脂は、金属線3の先端部3bとガラス管1の被覆部1bの間隙にも存在してもよい。その場合、先端部3bと被覆部1bとの間隙が埋められると共に、先端部3bもフッ素樹脂で被覆されるので好ましい。
ガラス管の断面の形状は、角状、丸状(新円、楕円等)、その他の形状であってもよいが、取り扱いが容易であること、後述の本発明の製造方法において均一に加熱がしやすいことから、丸状であることが好ましい。
リード線2は、酸化還元電流測定、加電圧等の機能を有する評価装置本体と金属線3とを電気的に導通させるためのもので、その材質に特に限定はないが、銅、ニッケル、ステンレス鋼が挙げられ、中でも銅が好ましい。
また、本実施形態の10はコーティング層4を有しているため、耐薬品性、絶縁性に優れる。また、金属線3がガラス管1の内側でリード線2に接続されているため、金属線3の使用量を最小限として、コストを抑制することができる。
ただし、コーティング層4を有しない場合、または先端面X近傍の極わずかな面積のみにコーティング層4を設ける場合、被覆部1bは、絶縁性を確保の観点で、やや厚めとすることが好ましい。
また、金属線3は、ガラス管1の外側でリード線2に接続されていてもよい。さらに、金属線3をそのまま装置本体に接続することとすれば、リード線2は省略してもよい。
本発明の微小金属電極の製造方法の一実施形態について図2を用いて説明する。まず、ガラス管1を、その上部側において図示を省略する把持部材により把持し、軸方向が鉛直方向になるようにして定位置に固定する。
そして、図2(a)に示すように、定位置に固定されたガラス管1の上端から、あらかじめ金属線3の一端を溶接固定したリード線2の先端を挿入する。また、ガラス管1の下端に引伸し用治具5を固定する(金属線をガラス管に挿入する工程)。
引き伸ばしが進み、最も細くなった箇所Aの強度が引伸し用治具5の荷重に耐えられなくなると、図2(c)に示すように、ガラス管1および金属線3は箇所Aで切断され、箇所Aから下の部分が落下して除去される。なお、荷重により切断される前に、切断具を用いて切断してもよい(切断する工程)。
次いで、箇所Aから上に残された部分の先端面近傍にフッ素樹脂をコーティングし、コーティング層4を形成して、図2(d)に示すように、図1の微小金属電極10が得られる(フッ素樹脂を被覆する工程)。
ガラス管1の内径と金属線3の径との差は、400〜900μmであることが好ましく、500〜800μmがより好ましく、600〜700μmがさらに好ましい。両者の差が下限値以上であることにより、金属線3のガラス管1への挿入が容易になると共に、コイルヒーター6で加熱した際の割れを防止しやすい。また、両者の差が上限値以下であることにより、ガラス管1が太くなりすぎたり、金属線3が細くなりすぎたりすることを回避しやすい。
なお、微小金属電極10における基端部3aの径は、金属線3の引き伸ばし前の径とほぼ等しい。
ガラス管1の引き伸ばし前の内形が下限値以上であれば、金属線3および金属線3を固定したリード線2の挿入が容易となる。ガラス管1の引き伸ばし前の内径が上限値以下であれば、引き伸ばし後の箇所Aにおける微小金属電極10の径(面積)、すなわち、先端面Xの径(面積)を充分に小さくし、かつ先端面Xにおいて金属線3にガラス管1を密着させやすい。
なお、微小金属電極10における支持部1aの外径と内径は、ガラス管1の引き伸ばし前の外径と内径にほぼ等しい。
リード線2の径は、溶接固定した金属線3と共にガラス管1に挿入可能な径であれば特に限定はないが、300〜800μmであることが好ましく、400〜700μmであることがより好ましい。
コイルヒーター6による加熱温度が下限値以上であれば、ガラスのTg(例えば、ホウケイ酸ガラスのTg:約800℃)以上またはTgに近い温度であるため、ガラス管1を充分に軟化させることができる。また、金属の溶融温度(約1100℃)以下であるため、金属線3の溶け落ちを防ぎつつ引き伸ばすことができる。
引き伸ばし後、ガラス管1の引き伸ばされた先端と反対側(支持部1aとされる部分)の先端を硬化性樹脂により固め、リード線2を固定することが好ましい。硬化性樹脂としては、ガラス管とリード線を接着させるだけでなく、その間の隙間も埋められる点でエポキシ樹脂が好ましい。また、市販の強力接着剤を用いてもよい。
塗布方法としては、ディップコート法、スピンコート法、ポッティングコート法が挙げられるが、箇所Aから上に残された部分の先端を分散液に浸すディップコート法が好ましい。引き伸ばし後に金属線3とガラス管1の間に微小な間隙が残っていた場合、ディップコート法によれば、その間隙をフッ素樹脂が埋めると共に、金属線3の側面もフッ素樹脂で被覆することができる。
分散液がフッ素樹脂を2〜10質量%含む場合、1〜10回ディップコーティングを行うことにより、コーティング層4を適切な膜厚とすることができる。
また、コーティング層4をディップコート法により形成した場合、先端面Xにおける金属線3の表面も絶縁性のフッ素樹脂で被覆されるが、研磨によりフッ素樹脂を除き、金属線3を露出させることができる。
研磨材としては、砥石やAl2O3粉末を用いることができ、砥石を用いることが好ましい。
また、本発明の製造方法では、径が30〜100μmである金属線を出発材料として使用できる。径が30〜100μmである金属線は、さらに細い金属線と比較して安価であるため、本発明の製造方法によれば、製造コストを抑えて微小金属電極を製造できる。
また、本実施形態では、あらかじめリード線2に接続した金属線3を用い、リード線2と共にガラス管1に金属線3を挿入している。そのため、金属線3の長さを短くすることができ、この点からも、製造コストが抑制できる。
また、径が30〜100μmである金属線を出発材料として使用すると、微小金属電極10における金属線3の基端部3aの径も30〜100μmとなるため、充分な強度を有する微小金属電極10が得られる。
また、加熱をコイルヒーターで行うため、ガラス管1と金属線3を等方的に加熱することができる。そのため、被覆部1bの厚みを均質化しやすい。また、断面円形のガラス管1を用いれば、微小金属電極10の先端面Xの形状を円形とすることも容易である。
また、引き伸ばしのための加熱は、コイルヒーターに代えて、バーナーで行うこともできる。
また、引き伸ばし方向は、鉛直方向に限られず、例えば水平方向であってもよい。
本発明の評価装置の一実施形態について、サイクリックボルタンメトリー測定を行う装置を例にとって説明する。図3に示すように、本実施形態の評価装置は、微小金属電極10と、対極20と、セル容器30とを備え、セル容器30内に収容する電解液Eに、微小金属電極10と対極20の各々の先端を浸漬できるようになっている。
また、図示を省略する装置本体に、微小金属電極10と対極20とが接続されるようになっている。装置本体は、微小金属電極10と対極20との間に、可変電圧を印可する機能、および微小金属電極10と対極20との間に流れる電流を測定する機能を有している。
また、セル容器30の電解液E内にはガラスフィルター60が配置され、このガラスフィルター60上に、評価対象物Sを配置できるようになっている。
対極20としては、特に制限はないが、電気伝導性があり、使用条件下で安定な材料であれば良く、例えば、炭素材料、Li、Pt、Al、Ni、Cu等が挙げられる。
その他、各種二次電池の電極活物質や電解液、空気電池や燃料電池部材等を評価対象物Sとすることができる。
この状態で、微小金属電極10と対極20との間の印可電圧をスキャンし、その間の電流を測定することにより、サイクリックボルタモグラムが得られる。
なお、セル容器30内の温度を変化させることにより、温度変化に依存する電気化学的特性の評価を行うこともできる。
[微小金属電極の製造]
(実施例1)
金属線の材料として50μmφ、長さ50mmの金線(ニラコ社製、純度99.95%)を用い、ガラス管として内径0.75mm、外径1.2mm、長さ90mmのパイレックスガラス(登録商標)製の毛細管(ナリシゲ社製G−1.2)を用いた。また、リード線として銅線(0.5mmφ)を用いた。
まず、金属線の一端をスポット溶接(抵抗溶接)でリード線に接合し導通を取った後、ガラス管内に挿入した。
そして、コイルヒーターの出力設定を加熱温度が820℃となる出力に設定し、ガラス管を約820℃に加熱した。ガラス管と金属線が充分に加熱された状態で、プーラーの牽引端子とその下部に取り付けた重りの荷重により、ガラス管を金属線と共に引き延ばした。
引き伸ばされ、最も細くなったところが荷重により切断された。
最後に研磨機(ナリシゲ社製EG−400)を用いて先端面を研磨し、先端面に付着したCytopを除去して金属線を露出させ、微小金属電極(1)を得た。
図4、図5に、微小金属電極(1)のSEM像を示す。
金属線の材料として、金線に代えて80μmφ、長さ50mmの白金線(ニラコ社製、純度99.98%)を用いた他は、実施例1と同様にして微小金属電極(2)を得た。
金線を引き延ばした後のフッ素樹脂コーティングを省略した他は、実施例1と同様にして微小金属電極(3)を得た。なお、研磨機による研磨は、実施例1と同様にして行った。
白金線を引き延ばした後のフッ素樹脂コーティングを省略した他は、実施例2と同様にして微小金属電極(4)を得た。なお、研磨機による研磨は、実施例2と同様にして行った。
金属線の材料として80μmφ、長さ50mmの白金線(ニラコ社製、純度99.98%)に代えて、25μmφ、長さ50mmの白金線(ニラコ社製、純度99.98%)を使用した他は、実施例4と同様にして微小金属電極(5)を得た。
しかし、製造の過程で金属線が折れてしまう場合があり、歩留まりが非常に悪かった。また、先端の腰がかなり弱い。そのため、評価対象物として正極材の単粒子に接触させ、安定な測定を行うために必要な押し圧をかけると簡単に折れてしまうため、使用に耐えないものであった。
コイルヒーターの出力を下げて引き延ばし時の加熱温度を低くした他は、実施例1と同様にして微小金属電極(6)を得た。
実施例1および比較例2で得られた微小金属電極(1)と微小金属電極(6)について、バックグラウンド電流(ブランク電流)を測定した。
まず、微小金属電極を光学顕微鏡に接続したマニピュレータに固定した。
次に、Arグローブボックス雰囲気内で、光学顕微鏡のステージ上に加熱ステージを設置し25℃になるようにセットした。その後、加熱ステージの上にポリスチレン容器を固定して乗せ、この容器に電解液を入れた。電解液としては、LiPF6をプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(1:1vol%)中に1M含む電解液を用いた。
電解液の温度が25℃になった後に、マニピュレータを操作することで微小金属電極の先端部(5mm)を電解液に浸漬した。また、対極兼参照極としてLi箔を電解液に浸漬した。
そして、ポテンショスタット(Biologic製SP−150)で、微小金属電極とLi箔との間に5mV/sのスキャンスピードで2.5V〜4.5Vの電位を印可するサイクリックボルタンメトリー測定を2周行った。2周目のスキャンで得られた微小金属電極(1)および微小金属電極(6)のバックグラウンド電流(ブランクのサイクリックボルタモグラム)を図6に示す。
図6に示すように、微小金属電極(1)では、ほとんどバックグラウンド電流が発生していないのに対して、微小金属電極(6)ではバックグラウンド電流が発生していた。微小金属電極(6)では、電解液の分解が生じているものと考えられる。
実施例2で得られた微小金属電極(2)を用いたこと、微小金属電極とLi箔との間に1mV/sのスキャンスピードで3.2V〜4.3Vの電位を印可したことの他は、上記微小金属電極(1)および微小金属電極(6)のバックグラウンド電流測定と同様にして、バックグラウンド電流測定を行った。2周目のスキャンで得られた微小金属電極(2)のバックグラウンド電流(ブランクのサイクリックボルタモグラム)を図7に、「電解液のみ」として示す。
まず、微小金属電極を光学顕微鏡に接続したマニピュレータに固定した。
次に、Arグローブボックス雰囲気内で、光学顕微鏡のステージ上に加熱ステージを設置し25℃になるようにセットした。その後、加熱ステージの上にポリスチレン容器を固定して乗せ、この容器に電解液を入れた。電解液としては、LiClO4をプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(1:1vol%)中に1M含む電解液を用いた。
また、LiCoO2正極活物質をガラスフィルター(Advantec製GA−55)上にまぶして、その二次粒子(サイズ的に約十数μm)を分散させた。このLiCoO2正極活物質の二次粒子が分散したガラスフィルターを、ポリスチレン容器内の電解液中に静かに沈めた。
電解液の温度が25℃になった後に、マニピュレータを操作することで微小金属電極の先端部(5mm)を、ガラスフィルター上のLiCoO2正極活物質の二次粒子に押し当てた。また、対極兼参照極としてLi箔を電解液に浸漬した。
そして、ポテンショスタット(Biologic製SP−150)で、微小金属電極とLi箔との間に1mV/sのスキャンスピードで3.2V〜4.3Vの電位を印可するサイクリックボルタンメトリー測定を2周行った。2周目のスキャンで得られたサイクリックボルタモグラムを図7にLiCoO2単粒子として示す。
図7に示すように、微小金属電極(2)ではLiCoO2正極活物質に特有のピークが観察された。また、バックグラウンド電流はほとんど発生しなかった。
上記正極活物質の評価で用いたものと同じLiCoO2正極活物質の3.2gと、N−メチルピロリドン(NMP)溶媒に溶かしたポリフッ化ビニリデン(PVDF)の3.3gと、N−メチルピロリドン(NMP)溶媒に溶かしたアセチレンブラックの0.8gとを湿式法で混合し、アルミシートの集電体上に塗布して正極電極シートを作成した。この正極電極シートを40μmギャップを有するロールプレスに2回かけてプレスした後、18mmφのサイズに打ち抜いて180℃で真空乾燥させて正極を得た。
次にArグローブボックス雰囲気内において、宝泉製、HSセル型の電池評価セルに、真空乾燥させた正極と、セパレーター(Celgard社製、#2500)と、Li箔とを、この順に積層し、次いで、LiPF6をジエチレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒(1:1vol%)中に1M含む電解液を入れ、セルを締め付けて電池を組み立てた。
そして、ポテンショスタット(Biologic製SP−150)で、LiCoO2正極とLi箔負極との間に1mV/sのスキャンスピードで3.2V〜4.3Vの電位を印可するサイクリックボルタンメトリー測定を5周行った。5周目のスキャンで得られたサイクリックボルタモグラムを図8にLiCoO2バルクとして示す。
図8のサイクリックボルタモグラムでは、LiCoO2正極活物質に特有のピークが観察されなかった。これは、バルク測定では、バインダー、電解質等、系中の種々の成分の影響を受けるため、評価対象であるLiCoO2正極活物質だけの特性を反映させることが困難なためである。
5…引伸し用治具、6…コイルヒーター、10…微小金属電極、
20…対極、30…セル容器、40…光学顕微鏡、50…マニピュレータ、
60…ガラスフィルター、S…評価対象物、E…電解液
Claims (10)
- 径が30〜100μmである金属線を、該金属線の径より内径が大きいガラス管の内側に挿入する工程と、
前記ガラス管の一部を挿入された金属線と共に加熱軟化させ、軸方向に引き伸ばす工程と、
該引き伸ばす工程で引き伸ばされた箇所において、前記ガラス管と挿入された金属線を共に切断する工程とを備えることを特徴とする微小金属電極の製造方法。 - 前記引き伸ばす工程を、前記ガラス管の軸方向を鉛直方向として行う請求項1に記載の微小金属電極の製造方法。
- 前記ガラス管の内径と前記金属線の径の差が400〜900μmである請求項1または2に記載の微小金属電極の製造方法。
- 前記金属線が金または白金からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小金属電極の製造方法。
- 前記切断する工程後に、さらに、切断された先端面近傍のガラス管にフッ素樹脂を被覆する工程を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の微小金属電極の製造方法。
- 先端側がテーパー状であるガラス管と該ガラス管内に存する金属線とを有する微小金属電極であって、前記金属線の基端側の径が30〜100μmであり、前記金属線の先端側がテーパー状であり、前記金属線の先端が前記ガラス管の先端によって金属線の先端面が露出した状態で被覆されており、前記微小金属電極の先端面全体の面積が8×10−7〜2×10−4mm2であることを特徴とする微小金属電極。
- 前記先端面全体の面積に占める前記金属線の面積の割合が、30〜90%である請求項6に記載の微小金属電極。
- 前記先端面近傍のガラス管がフッ素樹脂で被覆されている請求項6または7に記載の微小金属電極。
- 前記金属線が金または白金からなる請求項6〜8のいずれか一項に記載の微小金属電極。
- 請求項6〜9のいずれか一項に記載の微小金属電極と、対極と、評価対象物を収容するセル容器とを備えることを特徴とする評価装置。
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