JP2013245336A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリ乳酸樹脂を含有する樹脂組成物でありながら、耐衝撃性、耐熱性、成形性、湿熱耐久性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)、ゴム強化スチレン系樹脂(B)、アクリル系相溶化剤(C)、モノカルボジイミド化合物(D)及び多価カルボジイミド化合物(E)を含有する樹脂組成物であって、それぞれの含有量が(1)〜(4)に示す特定の条件を同時に満足することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。(1)(A)と(B)の質量比が20/80〜80/20である。(2)(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)を0.5〜20質量部含有する。(3)(A)と(B)と(C)との合計100質量部に対して、(D)と(E)を合計で0.1〜5質量部含有する。(4)(D)と(E)の質量比が20/80〜80/20である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂とゴム強化スチレン系樹脂を主成分とし、耐熱性、成形性、耐衝撃性、湿熱耐久性に優れ、石油系樹脂への依存が低い熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂やゴム強化ポリスチレン(HIPS)などのゴム強化スチレン系樹脂は、外観・耐衝撃性・耐熱性・成形加工性に優れ、電気・電子機器分野、自動車分野等において幅広く使用されている。しかしながら、このような樹脂は石油を原料としており、近年ではABS樹脂に、環境負荷を低減する目的から、ポリ乳酸樹脂のような植物原料のバイオマス樹脂を配合した樹脂組成物が求められている。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は一般にABS樹脂に比較し、耐衝撃性や耐熱性が低く、またABS樹脂との相溶性に劣るので、配合量が多すぎると、ABS樹脂のもつ優れた外観・耐衝撃性・耐熱性・成形加工性などの性能を損なうという問題がある。さらに、ポリ乳酸は加水分解しやすい欠点を持ち合わせているため、ABS樹脂とポリマーアロイしたとしても樹脂組成物の湿熱耐久性を低下させてしまう問題も抱えている。
そこで、特許文献1や特許文献2においては、ポリ乳酸樹脂とABS樹脂にアクリル系樹脂を配合することで外観や耐衝撃性を良好にした樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらの樹脂組成物を電気・電子機器分野、自動車分野等において幅広く使用できるようにするためには、樹脂組成物に湿熱耐久性を付与させる必要があるが、未だ不十分な性能であった。
特開2006−45485号公報 特開2006−137908号公報
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、ポリ乳酸樹脂を含有する樹脂組成物でありながら、耐衝撃性、耐熱性、成形性、湿熱耐久性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリ乳酸樹脂(A)、ゴム強化スチレン系樹脂(B)、アクリル系相溶化剤(C)、モノカルボジイミド化合物(D)及び多価カルボジイミド化合物(E)を含有する樹脂組成物であって、それぞれの含有量が下記(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を要旨するものである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の質量比〔ポリ乳酸樹脂(A)/ゴム強化スチレン系樹脂(B)〕が20/80〜80/20である。
(2)ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、アクリル系相溶化剤(C)を0.5〜20質量部含有する。
(3)ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)とアクリル系相溶化剤(C)との合計100質量部に対して、モノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)を合計で0.1〜5質量部含有する。
(4)モノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)の質量比〔(モノカルボジイミド化合物)/(多価カルボジイミド化合物)〕が20/80〜80/20である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂とゴム強化スチレン系樹脂を特定量含有するものであるため、ポリ乳酸樹脂を含有する樹脂組成物でありながら、耐衝撃性、耐熱性、成形性、湿熱耐久性に優れたものである。中でも、カルボジイミド化合物2種類を適量含有していることにより、優れた湿熱耐久性を有している。さらに、ポリ乳酸樹脂(A)として、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるものを用いたり、アセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であるものを用いることにより、結晶性能が向上した樹脂組成物となり、成形性、耐熱性をより向上させることができ、さらには湿熱耐久性も向上させることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記のような優れた性能を有するため、機械機構部品、電気・電子部品、建築部材、自動車部品および日用品など各種用途に有効に利用することができる。そして、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、天然物由来の樹脂を利用しているので、石油等の枯渇資源の節約・二酸化炭素排出量の削減に貢献できるなど、産業上の利用価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、ポリ乳酸樹脂(A)について説明する。本発明に用いるポリ乳酸樹脂(A)としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体などを挙げることができる。
ポリ乳酸樹脂(A)には、主たる構成成分である乳酸成分以外のモノマーが共重合されていてもよい。共重合可能なモノマーとしては、例えば、酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、2,2´−ビフェニルジカルボン酸、4,4´−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸およびこれらの無水物;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。
共重合可能なモノマーとしては、例えば、ジオール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールAやビスフェノールSなどのビスフェノール類またはそれらのエチレンオキサイド付加体;ハイドロキノン、レゾルシノールなどの芳香族ジオールなどが挙げられる。
さらには、共重合可能なモノマーとして、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、6−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸などのヒドロキシカルボン酸;δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物などが挙げられる。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であることが好ましい。中でも、D体含有量が0.1〜0.6モル%であるか、または99.4〜99.9モル%であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)をいうものである。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂の場合、このポリ乳酸樹脂においては、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、以下の方法により算出されるものである。つまり、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出される。
D体含有量が上記の範囲を満足するポリ乳酸樹脂(A)は、結晶性能に優れる。つまり、結晶化速度が向上するため、本発明の樹脂組成物を成形加工する際には、成形サイクルが短くなり成形性に優れるものとなる。そして、得られた成形体は耐熱性に優れたものとなる。さらには、後述するようなカルボジイミド化合物を用いる本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、このようなD体含有量が特定範囲のポリ乳酸樹脂を用いることにより、湿熱耐久性もより向上する。
さらには、本発明におけるポリ乳酸樹脂(A)は、アセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であることが好ましい。
アセトン処理とは、ポリ乳酸樹脂をアセトンで洗浄することであり、アセトンでの洗浄方法としては、以下のような方法が好ましい。ポリ乳酸樹脂とアセトンとの質量比を1:1〜1:3とし、攪拌翼などによって30分以上の攪拌を行う。なお、攪拌時の温度は、0℃〜60℃の範囲が好ましく、中でも10℃〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃である。温度が60℃を超える場合、アセトンの沸点を超えているため、アセトンの揮発が大きくなる。0℃未満の場合、アセトンの冷却を行わなければならないため、コスト的に不利となる。攪拌翼の攪拌速度は、50〜1000rpmが好ましく、中でも100〜500rpmが好ましく、より好ましくは150〜300rpmである。1000rpmを超える場合、攪拌速度が速すぎ、樹脂同士が激しくぶつかることによってダストの発生が多くなる。50rpm未満の場合、アセトン中に抽出されるラクチド量が少なくなり、処理時間が長時間となる。
一般には、ポリ乳酸中の未反応ラクチドを抽出するためには、メタノール等の他の溶媒も使用できるが、本発明においては、アセトンを溶媒として使用することにより、未反応ラクチドを抽出すると同時に、ポリ乳酸樹脂の結晶性能を向上させることも可能となる。つまり、結晶性能が向上することにより、短時間の成形サイクルで成形が可能となり、耐熱性に優れた成形体を得ることができる。さらには、湿熱耐久性も向上したものとなる。
アセトンは比較的安価な溶媒でありコスト的に有利であり、また、ラクチドだけでなく、ポリ乳酸中の低分子オリゴマーの抽出も可能である。また、処理後の残渣から、乳酸が検出されないため、抽出物が分解して乳酸になることがなく安定であるため、ラクチドの再利用などを考えた場合にはコスト的に有利となる。これらのことにより、上記したようなポリ乳酸樹脂の結晶性能の向上効果が生じるものと推定される。
アセトンに代えて、メタノールなどの他の溶媒を用いた場合、残渣から乳酸が多く検出される。このため、樹脂中に乳酸が残存した場合などは、加工や保存中に分子量低下などの問題が生じることがあり、そして、このようなポリ乳酸樹脂では結晶性能は向上していない。
また、ポリ乳酸中の未反応ラクチドを除去する方法として、一軸押出し機、二軸押出し機などでラクチド除去を行う方法も一般的である。しかしながら、これらの方法でラクチド除去を行った場合も低分子オリゴマーがポリ乳酸中に残存しており、得られるポリ乳酸は結晶性能がより向上したものとはならない。
本発明におけるポリ乳酸樹脂(A)は、上記のようなアセトン処理が施されており、樹脂中の残存ラクチド量が700ppm以下であることが好ましく、中でも500ppm以下であることが好ましい。残存ラクチド量が700ppmを超える場合、結晶性能の向上効果が小さく、また、溶融加工時に分子量低下や着色が生じることもある。
ポリ乳酸樹脂(A)の残存ラクチド量は以下のようにして測定、算出する。まず、試料0.1gに、塩化メチレン9ml、内部標準液1ml(2,6−ジメチル−γ−ピロンの5000ppm溶液)を加え、ポリマーを溶解させる。ポリマー溶解液にシクロヘキサン40mlを添加し、ポリマーを析出させる。HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過後、Agilent Technologies社製7890A GCSystemでGC測定し、ラクチド含有量を算出する。
なお、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)とアクリル系相溶化剤(C)とを含有する熱可塑性樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)の残存ラクチド量を測定する際にも上記と同様に測定、算出できる。このときは、樹脂組成物を試料として用いる。
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。また、上記のような特定のD体含有量を満足するポリ乳酸樹脂(A)としては、市販のものを用いてもよいし、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL−ラクチド、または、L体含有量が十分に低いD−ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いてもよい。
次に、ゴム強化スチレン系樹脂(B)について説明する。スチレン系樹脂(B1)がゴム系樹脂(B2)にグラフト共重合またはランダム共重合されたゴム共重合スチレン系樹脂(B3)、スチレン系樹脂(B1)がゴム系樹脂(B2)または前記ゴム共重合スチレン系樹脂(B3)に混合された樹脂(B4)をいう。
スチレン系樹脂(B1)とは、スチレン系モノマーを主体とする樹脂であり、必要に応じて、これらと共重合可能な他のモノマーまたは/およびゴム質樹脂を共重合したものをいう。
スチレン系樹脂(B1)を構成するスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。中でも、スチレン、α―メチルスチレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等の(メタ)アクリル酸のアリールエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系樹脂(B1)中のスチレンの含有量は、特に限定されないが、40質量部以上が好ましい。
ゴム系樹脂(B2)とは、合成ゴムを主体とする伸縮性に優れた樹脂をいう。ゴム系樹脂(B2)としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエンの共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・イソプレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル・イソプレン共重合体、ブタジエン・イソプレン共重合体等のジエン系共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン・(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレンと脂肪族カルボン酸ビニルとの共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体等のエチレンとプロピレンと非共役ジエンとの共重合体、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム(以下IPN型ゴムと略称する。)等が挙げられる。これらの共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
本発明におけるゴム強化スチレン系樹脂(B)は、上記のようなスチレン系樹脂(B1)がゴム系樹脂(B2)にグラフト共重合またはランダム共重合されたゴム共重合スチレン系樹脂(B3)や、スチレン系樹脂(B1)がゴム系樹脂(B2)または前記ゴム共重合スチレン系樹脂(B3)に混合された樹脂(B4)であるが、具体的には、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(以下、ABSと略称する。)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(以下、MBSと略称する。)、スチレン・ブタジエン・スチレン樹脂、水添スチレン・ブタジエン・スチレン樹脂、水添スチレン・イソプレン・スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(以下、MABSと略称する。)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン樹脂、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン樹脂、スチレン・IPN型ゴム共重合体のゴム強化スチレン樹脂等が挙げられる。中でも、ゴム強化スチレン系樹脂(B)としては、成形加工性、耐衝撃性の点から、ABS樹脂が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の質量比〔ポリ乳酸樹脂(A)/ゴム強化スチレン系樹脂(B)〕は、20/80〜80/20であり、中でも30/70〜60/40であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の割合が上記範囲より少ないと、環境負荷を十分に低減することができない。ポリ乳酸樹脂(A)の割合が上記範囲を超えると、ゴム強化スチレン系樹脂(B)の含有量が少なくなるため、耐衝撃性や耐熱性に劣る樹脂組成物となる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アクリル系相溶化剤(C)を含有しており、アクリル系相溶化剤(C)は、ポリ乳酸(A)とアクリル系相溶化剤(B)の相溶性を向上させ、その結果、耐衝撃性や機械的強度を高めることができるものである。
アクリル系相溶化剤(C)としては、(メタ)アクリル系共重合体、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーの共重合体、ゴム強化アクリル系化合物、コアシェル型アクリル系化合物、アクリル系オレフィン化合物、およびエポキシ基を有するアクリル系化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル系共重合体とは、(メタ)アクリル系モノマーを単独で重合したもの、または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを共重合したものである。(メタ)アクリル系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル等のアルキル基(シクロアルキル基を含む)の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー、メタクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル系モノマー、メタクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル系モノマー等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系モノマーと(メタ)アクリルモノマーの共重合体とは、スチレン系モノマーと前記(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーを共重合したものである。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンのスチレン誘導体が挙げられる。中でも、スチレン、α―メチルスチレン等が好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム強化アクリル系化合物とは、ゴム状重合体の存在下に、(メタ)アクリル系モノマーを共重合したもの、または、2種以上のモノマーを共重合したものである。ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレン共重合体、イソプレン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ブタジエン・イソプレン・スチレン共重合体、ポリクロロプレン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン・非共役ジエン共重合体等のエチレン−プロピレン系ゴム、ポリブチルアクリレート等のアクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム等のシリコン系ゴム、これら2種以上のゴムからなる複合ゴム等が挙げられる。中でも、ジエン系ゴムまたはアクリル系ゴムが好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
コアシェル型アクリル系化合物とは、内層にゴム層を有し、外層に(メタ)アクリル系樹脂を有する層からなるものである。コアシェル構造の一例として、コア(内層)は、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分等を重合させたゴム等から構成され、シェル(外層)はメタクリル酸メチル重合体等から構成されるものが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱レイヨン製メタブレン、鐘淵化学工業製カネエース、呉羽化学工業製パラロイド、ロームアンドハース製アクリロイド、武田薬品工業製スタフィロイドまたはクラレ製パラペットSAが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル系オレフィン化合物とは、(メタ)アクリル酸エステル重合体がグラフト共重合された変性オレフィン化合物である。市販品としては、例えば、日油社製モディパー等が挙げられる。
エポキシ基を有するアクリル系化合物とは、エポキシ基とアクリル基を分子内にそれぞれ1つ以上有する化合物である。例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー同士の共重合体、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとスチレンモノマーの共重合体、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体がスチレン系共重合体にグラフト共重合された化合物、(メタ)アクリル酸エステル重合体がエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体にグラフト共重合された化合物、または、コア(内層)がアクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分等を重合させたゴム等から構成され、シェル(外層)がエポキシ基を有するメタクリル酸メチル共重合体等から構成されるコアシェル構造のもの等が挙げられる。
上記したアクリル系相溶化剤(C)のうち、中でも 耐衝撃性の向上の点から(メタ)アクリル系共重合体、コアシェル型アクリル系化合物や等が好ましく、市販品として、三菱レイヨン社製、メタブレンS−2200、アクリペットVH−001が最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系相溶化剤(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部であり、中でも3〜12質量部であることが好ましい。アクリル系相溶化剤(C)の含有量が0.5質量部未満では、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の相溶性を向上させることができず、耐衝撃性や機械的強度を向上させることができない。一方、アクリル系相溶化剤(C)の含有量が20質量部を超えると、耐衝撃性や成形性が悪くなる。
本発明に使用するモノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)について説明する。本発明においては、二種のカルボジイミド化合物を併用し、適量配合することによって、得られる熱可塑性樹脂組成物の湿熱耐久性を格段に向上させることができる。
カルボジイミド化合物とは、(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を分子内に有する化合物をいう。なお、カルボジイミド基を分子内に1個有する化合物をモノカルボジイミド化合物と表し、カルボジイミド基を分子内に2個以上有する化合物を多価カルボジイミド化合物と表す。
また、モノカルボジイミド化合物(D)の含有量と多価カルボジイミド化合物(E)の含有量の質量比(モノカルボジイミド化合物/多価カルボジイミド化合物)は、20/80〜80/20の範囲を満足するものであり、中でも30/70〜70/30の範囲を満足するものであることが好ましい。質量比がこの範囲にあると湿熱耐久性が格段に向上する。
上記のようにモノカルボジイミド化合物と多価カルボジイミド化合物を適切な質量比率で併用することで、それぞれを単独で用いる場合より、湿熱耐久性が格段に向上する理由は明らかでないが、以下のように推測できる。
ポリ乳酸分子の加水分解は、ポリ乳酸のカルボン酸末端基により促進されることが知られている。モノカルボジイミド化合物は、分子量が小さく動きやすいため分散性に優れ、すばやくポリ乳酸分子のカルボン酸末端と反応するため、ポリ乳酸分子の末端を封鎖し加水分解を抑制する。一方、多価カルボジイミド化合物は、ポリ乳酸が加水分解して新たに発生したカルボン酸末端と反応し、鎖延長させることによって分子量を増大させ、分子量の低下を抑制する。この2つの効果が相まって、湿熱耐久性が飛躍的に向上すると推察される。
モノカルボジイミド化合物(D)としては、N,N´−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。中でも、湿熱耐久性の点から、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましい。
本発明に使用される多価カルボジイミド化合物(E)としては、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどが挙げられる。
多価カルボジイミド化合物(E)としては、中でも末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物が好ましい。このような多価カルボジイミド化合物(E)を用いることにより、得られる樹脂組成物の湿熱耐久性がより向上する。イソシアネート基の濃度は特に限定されないが、0.1〜10%であることが好ましい。このような多価カルボジイミド化合物(E)としては、日清紡社製LA−1(イソシアネート基を1〜3%含む脂肪族カルボジイミド化合物)等を用いることが好ましい。
カルボジイミド化合物は、従来から知られている方法で製造でき、例えばジイソシアネート化合物を原料とする脱二酸化炭素反応を伴うカルボジイミド反応により製造することができる。
末端にイソシアネート基を有した多価カルボジイミド化合物も、従来から知られている方法で製造できる。ジイソシアネート化合物を原料とする脱二酸化炭素反応を伴うカルボジイミド反応により製造することができる。このとき、モノイソシアネート等で末端封鎖処理を行わなければ、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を得ることができる。
2種のカルボジイミド化合物を合計した配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)とアクリル系相溶化剤(C)との合計100質量部に対して、0.1〜5質量部とすることが好ましく、中でも0.5〜3質量部とすることが好ましい。カルボジイミド化合物の含有量がこの範囲にあると、湿熱耐久性が向上し、かつ耐熱性や耐衝撃性を損なうこともない。0.1質量部未満であると、湿熱耐久性の向上効果が乏しい。一方、5質量部を超えると耐熱性が低下する場合があるだけでなく、湿熱耐久性の効果が飽和して経済的にも好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、さらにグリセリン脂肪酸エステル化合物(F)を配合することが好ましく、グリセリン脂肪酸エステル化合物(F)を含有することによって、成形性、耐熱性、耐衝撃性を向上させることができる。グリセリン脂肪酸エステル(F)としては、モノグリセライド、トリグリセライド、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステル化合物(F)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)とアクリル系相溶化剤(C)の合計100質量部あたり、0.1〜5質量部であることが好ましく、中でも0.3〜3質量部であることが好ましい。含有量が0.1質量部未満であると、成形性、耐熱性、耐衝撃性を向上させる効果に乏しくなる。 一方、含有量が5質量部を超えると、効果が飽和してコスト的に不利になると同時に、耐熱性が低下し、ブリードアウトの問題が発生する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、耐候剤、耐光剤、顔料、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核剤等を添加することができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、ビタミンE等が挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が好ましく、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)等が挙げられる。
充填材としては、機械的強度や耐熱性の向上を目的に、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等の繊維状強化材を用いることが好ましく、中でも、ガラス繊維等を用いることが好ましい。
繊維状強化材以外の充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト等の無機充填材、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマー等の有機充填材が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、およびシート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。特に、射出成形法に適しており、一般的な射出成形のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等に用いることができる。射出成形条件は、熱可塑性樹脂の種類や含有比率によって適宜選択されるが、シリンダ温度は180〜260℃が好ましく、190〜250℃がより好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
〈評価項目〉
〔ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量〕
ポリ乳酸樹脂を1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させた。このサンプル5mL、純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemでGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(%)とした。
〔耐熱性〕
得られた試験片を用い、ISO 75−1、2に従って、荷重0.45MPaで熱変形温度(DTUL)を測定した。
〔シャルピー衝撃強度〕
得られた試験片(V字型切込み付き試験片)を用い、ISO 179に従って、シャルピー衝撃強度を測定した。
〔曲げ強度〕
得られた試験片を用い、ISO 178に従って曲げ強度を測定した。
〔湿熱耐久性〕
・曲げ強度保持率:得られた試験片を温度60℃、湿度95%RHの環境下で500時間処理した後、曲げ強度を測定して、未処理品の値に対する物性保持率を下記の式で計算した。また、得られた試験片を同条件で800時間処理した後の曲げ強度保持率を算出した。
曲げ強度保持率(%)=〔(処理後の曲げ強度/未処理品の曲げ強度)〕×100
・シャルピー衝撃強度保持率:得られた試験片を温度60℃、湿度95%RHの環境下で500時間処理した後、シャルピー衝撃強度を測定して、未処理品の値に対する物性保持率を下記の式で計算した。また、得られた試験片を同条件で800時間処理した後の曲げ強度保持率を算出した。
シャルピー衝撃強度保持率(%)=〔(処理後のシャルピー衝撃強度/未処理品のシャルピー衝撃強度)〕×100
〈原料〉
〔ポリ乳酸樹脂(A)〕
・PLA−1 ユニチカ社製 TE−4000 D体含有量=1.3モル% 残存ラクチド量=2000ppm。
・PLA−2 トヨタ自動車社製 S−12 D体含有量=0.1モル% 残存ラクチド量=1100ppm。
・PLA−3 トヨタ自動車社製 A−1 D体含有量=0.6モル% 残存ラクチド量=1020ppm。
・PLA−4 PLA−2に以下のようにアセトン処理を施し、PLA−4を得た。
PLA−2とアセトンの質量比が1:2になるよう計測し、PLA−2にアセトンを加え、室温条件下で1時間、150rpmで攪拌した。その後、ろ過して70℃×24時間真空乾燥(Yamato Vacuum dry DP61を使用)することでアセトンの除去を行い、ポリ乳酸(PLA−4)を得た。得られたPLA−4の残存ラクチド量は400ppmであった。
・PLA−5 PLA−3にPLA−4を得たときと同様のアセトン処理を施し、PLA−5を得た。得られたPLA−5の残存ラクチド量は280ppmであった。
〔ゴム強化スチレン系樹脂(B)〕
・B−1 テクノポリマー社製 テクノABS 170(ABS樹脂)
・B−2 テクノポリマー社製 テクノABS 150(ABS樹脂)
〔アクリル系溶化剤(C)〕
・C−1 三菱レイヨン社製 アクリペットVH−001(ポリメタクリル酸メチル樹脂)
・C−2 三菱レイヨン社製 メタブレンS−2200(エポキシ基を有するアクリル系化合物)
〔モノカルボジイミド化合物(D)〕
・D−1 松本油脂社製、EN−160(N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)
〔多価カルボジイミド化合物(E)〕
・E−1 日清紡社製 LA−1(イソシアネート基含有率1〜3%)
・E−2 日清紡社製 HMV−8CA(イソシアネート基を封鎖したもの)
〔グリセリン脂肪酸エステル(F)〕
・F−1 太陽化学社製 チラバゾールVR−01(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
実施例1〜43、比較例1〜18
各原料を表1と2に示す割合で、二軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)に供給し、押出温度220℃で溶融混練押出しをおこない、吐出された樹脂をペレット状にカッティングして、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械製EC−100)を用いて成形し、各種試験片(各種測定に適したサイズのもの、切込みを有するもの等)を得た。このとき、射出温度210℃で溶融し、射出圧力100MPa、射出速度30mm/sで射出し、射出と保圧の合計時間14秒、保圧60MPaで45℃の金型に充填し、20秒間冷却した後、成形体(試験片)を得た。
実施例1〜43、比較例1〜18で得られた熱可塑性樹脂組成物(成形体)の特性値を表1〜2に示す。
表1〜2から明らかなように、実施例1〜43で得られた熱可塑性樹脂組成物は、石油系製品への依存度が低く、耐熱性、耐衝撃性、曲げ強度、湿熱耐久性の全てに優れたものであった。
比較例1〜7で得られた熱可塑性樹脂組成物は、2種類のカルボジイミド化合物を含有しないものであったため、湿熱耐久性に劣る結果となった。比較例8で得られた熱可塑性樹脂組成物は、ゴム強化スチレン系樹脂(B)を含有していないため、耐熱性、耐衝撃性ともに劣るものであった。比較例9で得られた熱可塑性樹脂組成物は、モノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)の合計含有量が少なかったため、湿熱耐久性に劣る結果となった。比較例10で得られた熱可塑性樹脂組成物は、モノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)の合計含有量が多すぎたため、耐熱性に劣る結果となった。比較例11、12で得られた熱可塑性樹脂組成物は、モノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)の質量比〔(モノカルボジイミド化合物)/(多価カルボジイミド化合物)〕が規定の範囲外であったため、湿熱耐久性に劣る結果となった。
比較例13で得られた熱可塑性樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂の含有量が多すぎたため、耐熱性、耐衝撃性、湿熱耐久性に劣るものであった。比較例14で得られた熱可塑性樹脂組成物は、ゴム強化スチレン系樹脂(B)の含有量が多すぎたため、石油系樹脂への依存が高く、環境に配慮したものとは言えないものであった。比較例15、16で得られた熱可塑性樹脂組成物は、アクリル系相溶化剤(C)の含有量が多すぎたため、耐衝撃性に劣る結果となった。比較例17、18で得られた熱可塑性樹脂組成物は、アクリル系相溶化剤(C)の含有量が少なすぎたため、耐衝撃性や曲げ強度に劣る結果となった。

Claims (3)

  1. ポリ乳酸樹脂(A)、ゴム強化スチレン系樹脂(B)、アクリル系相溶化剤(C)、モノカルボジイミド化合物(D)及び多価カルボジイミド化合物(E)を含有する樹脂組成物であって、それぞれの含有量が下記(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
    (1)ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の質量比〔ポリ乳酸樹脂(A)/ゴム強化スチレン系樹脂(B)〕が20/80〜80/20である。
    (2)ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、アクリル系相溶化剤(C)を0.5〜20質量部含有する。
    (3)ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)とアクリル系相溶化剤(C)との合計100質量部に対して、モノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)を合計で0.1〜5質量部含有する。
    (4)モノカルボジイミド化合物(D)と多価カルボジイミド化合物(E)の質量比〔(モノカルボジイミド化合物)/(多価カルボジイミド化合物)〕が20/80〜80/20である。
  2. ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ポリ乳酸樹脂(A)はアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
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