JP2013243112A - 全固体蓄電素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウムイオンを吸蔵脱離可能なリチウム−遷移金属系複合酸化物からなる第一電極及び第二電極と、第一電極及び前記第二電極の間に介在され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質とを備えた、全固体蓄電素子。
【選択図】図1
Description
リチウムイオンを吸蔵脱離可能なリチウム−遷移金属系複合酸化物からなる第一電極及び第二電極と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に介在され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質と、
を備えた、全固体蓄電素子が提供される。
図1に、本発明による全固体蓄電素子の構成を模式的に示す。図1に示される全固体蓄電素子10は、第一電極12、第二電極14及び固体電解質16を備えてなる。第一電極12及び第二電極14は共に、リチウムイオンを吸蔵脱離可能なリチウム−遷移金属系複合酸化物からなる(comprise)。固体電解質16は、第一電極12及び第二電極14の間に介在され、リチウムイオン伝導性を有する。このように、第一電極12及び第二電極14は構成に相違は無く、荷電状態ないし印加電圧に応じて正負極いずれにも機能しうる無極性電極である。すなわち、リチウムイオンを吸蔵脱離可能な電極12,14を無極性電極として用い、リチウムイオン伝導性の固体電解質16と組み合わせることで、電極間電位差に応じてリチウムイオンが電極12,14間で双方向に移動可能となる。これは、第一電極12及び第二電極14を構成するリチウム−遷移金属系複合酸化物は、リチウムイオンの吸蔵により酸化還元電位が低下し、かつ、リチウムイオンの脱離により酸化還元電位が上昇する性質を一般的に有するからである。このようにリチウムイオンの吸蔵や脱離に応じて酸化還元電位が変化することで、充放電が可能となる。したがって、このような性質を有する両電極12,14間にリチウムイオン伝導性を有する固体電解質16を介在させることで正負極を問わずに双方向の充放電が可能となり、無極性蓄電素子としての機能が確保される。すなわち、充電においては、リチウムイオン量が等しくなるように初期設定された第一電極12及び第二電極14間に電圧が印加されると、高電位側の電極から固体電解質を経て低電位の電極にリチウムイオンが移動する結果、電荷が蓄積される。一方、放電においては、低電位側の電極から固体電解質を経て高電位の電極にリチウムイオンが移動する結果、両電極は等電位となり電位差はゼロとなる。そして、第一電極12及び第二電極14は構成に相違は無いので、逆方向に充電させた場合であっても同様の原理により電荷が蓄積されて放電される。
第一電極12及び第二電極14は、リチウムイオンを吸蔵脱離可能なリチウム−遷移金属系複合酸化物からなり(comprise)、典型的にはセラミックス焼結体である。リチウムイオンを確実に吸蔵脱離可能とするためには、リチウム−遷移金属系複合酸化物は所望量のリチウムが電気化学的処理等により脱離されたものであるのが好ましい。リチウム−遷移金属系複合酸化物は、層状岩塩構造又はスピネル構造を有するのが好ましく、より好ましくは層状岩塩構造を有する。層状岩塩構造は、リチウムイオンの吸蔵により酸化還元電位が低下し、リチウムイオンの脱離により酸化還元電位が上昇する性質があり、好ましく、中でもニッケルを多く含む組成は、同一結晶相でリチウムイオンを多く脱挿入できるため、結晶相転移にともなう体積変化によるサイクル劣化が抑えられる点で、特に好ましい。ここで、層状岩塩構造とは、リチウム以外の遷移金属系層とリチウム層とが酸素原子の層を挟んで交互に積層された結晶構造、すなわち、リチウム以外の遷移金属等のイオン層とリチウムイオン層とが酸化物イオンを挟んで交互に積層された結晶構造(典型的にはα−NaFeO2型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)をいう。層状岩塩構造を有するリチウム−遷移金属系複合酸化物の典型例としては、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル・マンガン酸リチウム、ニッケル・コバルト酸リチウム、コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム、コバルト・マンガン酸リチウム等が挙げられ、これらの材料に、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi等の元素が1種以上更に含まれていてもよい。
固体電解質16は、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質である。リチウムイオン伝導性無機固体電解質の好ましい例としては、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、Li7La3Zr2O12など)、Li−La−Ta−O系材料(具体的には、Li7La3Ta2O12など)が挙げられ、特開2011−051800号公報、特開2011−073962号公報及び特開2011−073963号公報に記載されているものも用いることができる。窒化物系セラミックス材料の例としては、Li3N、LiPONなどが挙げられる。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLa1−xTixO3(0.04≦x≦0.14)など)が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、Li−Al−Ti−P−O,Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(具体的には、Li1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)など)が挙げられる。
図1に示される全固体蓄電素子10は一対の第一電極12及び第二電極14を有する単位セル型の全固体蓄電素子の例であるが、図4に示されるように、複数個の全固体蓄電素子が集電体を介して複数個積層されてなる、スタック型の全固体蓄電素子として構成されてもよい。図4に示されるスタック型全固体蓄電素子20は、図1に示される全固体蓄電素子10と同様の構成を有する、複数個の単位セル型全固体蓄電素子10a,10b,10c,10dが集電体22a,22b,22cを介して積層されてなる。このような積層構造とすることで、複数の単位セルが直列又は並列に接続された積層セルを構築することができる。直列で接続される場合、互いに隣り合う第一電極12a,12b,12cと第二電極14b,14c,14dは集電体22a,22b,22cによってイオン的に絶縁、すなわちリチウムイオンの通過が遮断されるように隔離されて構成されるのが好ましく、この構成は、例えばピンホール等の欠陥が無くなる程度に厚くする集電体を形成することにより実現可能である。このように複数ないし多数の単位セルを直列に配線することで高い電圧を取り出せる蓄電素子が得られる。なお、スタック型全固体蓄電素子20において、上端の第一電極12dの外側と下端の第二電極14aの外側には外部集電体が更に設けられてよいのは勿論である。
本発明による蓄電素子はいかなる方法により製造されたものであってもよい。本発明の好ましい態様によれば、蓄電素子の製造は、(a)いずれもセラミックス焼結体からなる、第一電極、固体電解質及び第二電極を積層して積層体を得る工程と、(b)この積層体に加熱及び加圧を同時に施して固相反応により一体化させる工程と、(c)所望により第一電極及び第二電極から所望量のリチウムを脱離する工程とを含む方法により行うことができる。このように、本態様に用いられる電極及び固体電解質はいずれもセラミックス焼結体で構成されるため、圧粉体、グリーンシート及び気相合成薄膜ではない。本態様の方法では、このセラミックス焼結体からなる電極/固体電解質/電極の積層体に加熱及び加圧を同時に施すことで、第一電極、固体電解質及び第二電極を固相反応により一体化させることができる。このセラミックス焼結体同士の接合は、グリーンシートの積層で必要とされるような粉末同士の焼結を要しないので、加圧下にて比較的低温で行うことが可能であり、その結果、焼結温度等の極めて高い温度域において高活性の異種粉末間で起こりうる高抵抗な反応層の生成を抑制することができる。その上、同時加熱及び加圧により得られる複合体の接合界面の密着性は驚くほど高い。このように、本態様の方法によれば、比較的低温での接合を可能にして界面における高抵抗な反応層の生成を抑制するとともに、界面における電極及び固体電解質の密着性を高めて接合面積を最大化することができる。このような特徴を有する電極/固体電解質/電極複合体を用いることで、薄型でありながら極めて高い容量の全固体蓄電素子の提供が可能となる。
本発明において第一電極及び第二電極として用いられるNCAセラミックス板を以下の手順で作製した。
Ni(OH)2粉末(株式会社高純度化学研究所製)81.6重量部、Co(OH)2粉末(和光純薬工業株式会社製)15.0重量部、及びAl2O3・H2O粉末(SASOL社製)3.4重量部を秤量して、原料粉末を用意した。次に、純水97.3重量部、分散剤(日油株式会社製:品番AKM−0521)0.4重量部、消泡剤としての1−オクタノール(片山化学株式会社製)0.2重量部、及びバインダー(日本酢ビ・ポバール株式会社製:品番PV3)2.0重量部からなるビヒクルを作製した。こうして得られたビヒクルと原料粉末を湿式で混合及び粉砕することで、スラリーを調製した。この混合及び粉砕は、直径2mmのジルコニアボールを用いたボールミルで24時間処理した後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルで40分間処理することによって行った。
得られたスラリーを二流体ノズル方式のスプレードライヤーに投入することにより、造粒体を形成した。スプレードライヤーの噴出圧力、ノズル径、循環風量等のパラメータを適宜調整することで、種々の大きさの造粒体を形成することが可能である。
得られた造粒体を1100℃で3時間(大気雰囲気)熱処理して、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの複合酸化物((Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O)の粒子である、電極活物質前駆体粒子を得た。得られた電極活物質前駆体粒子を以下に示される分析したところ、平均粒径D50(体積基準)は2.3μmであり、比表面積は12m2/gであり、相対タップ密度は0.3であった。
<平均粒径D50>
水を分散媒として電極活物質前駆体粒子の粉末試料を分散させたものを、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製 型番「LA−700」)に投入することで、平均粒径D50(体積基準)を測定した。
<相対タップ密度>
電極活物質前駆体粒子の粉末試料を入れたメスシリンダを市販のタップ密度測定装置を用いて200回タッピングした後、(粉末重量)/(粉末のかさ体積)を算出することによって、タップ密度を求めた。その後、得られたタップ密度を理論密度で除することで、相対タップ密度[無次元値]を算出した。
得られた電極活物質前駆体粒子粉末100重量部、分散媒(キシレン:ブタノール=1:1)50重量部、バインダーとしてのポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製:品番BM−2、)10重量部、可塑剤としてのDOP(Di(2-ethylhexyl)phthalate:黒金化成株式会社製)4.5重量部、及び分散剤(花王株式会社製 製品名「レオドールSPO−30」)3重量部を秤量し、乳鉢で予備混練した後、トリロールを用いて混練することで、(ブルックフィールド社製LVT型粘度計を用いて測定して)2000〜3000cPの粘度を有する成形用スラリーを調製した。こうして得られた成形用スラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚さ50μmのシートを形成した。乾燥後のシートに対して打ち抜き加工を施すことによって、1mm四方のグリーンシート成形体を得た。
上述のようにして得られた1mm四方のグリーンシート成形体を、大気雰囲気中で900℃にて熱処理することで、成形体の脱脂及び仮焼成を行った。かかる成形体仮焼成の温度は、上述の熱処理(造粒体仮焼成)温度よりも低い。これは、成形体の仮焼成時に内部の粒子間の焼結の進行を抑制することで、後続する本焼成時にリチウムが均一に拡散及び反応するようにするためである。
<空隙率>
空隙率は、相対密度から計算される値(空隙率=1−相対密度)である。相対密度は、アルキメデス法で求めた嵩密度を、ピクノメータを用いて求めた真密度で除して求めた値である。嵩密度の測定では、空隙中に存在する空気を十分に追い出すために、試料を水中で煮沸処理をした。
<開気孔比率>
開気孔比率は、閉気孔率と全気孔率から計算によって求められる値(開気孔比率=開気孔/全気孔=開気孔/(開気孔+閉気孔))である。閉気孔率は、アルキメデス法で測定した見かけ密度より求められる。また、全気孔率は、同じくアルキメデス法で測定した嵩密度より求められる。
<回折強度(ピーク強度)比率>
回折強度(ピーク強度)比率の測定は、φ5〜10mm程度の大きさに加工した電極活物質層用セラミックス板を、XRD測定用の試料フォルダに載せ、XRD装置(株式会社リガク製製品名「RINT-TTRIII」)を用いて、電極の表面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定し、(104)面による回折強度(ピーク高さ)に対する(003)面による回折強度(ピーク高さ)の比率を求めることにより行った。この測定方法によれば、板面の結晶面に平行に存在する結晶面、すなわち板面方向に配向する結晶面による回折プロファイルが得られる。
本発明において固体電解質として用いられるLLZセラミックス板を以下の手順で作製した。
1.5mm平方に加工した厚さ1mmのLLZセラミックス板を、1mm平方のNCAセラミックス板2枚で挟んだ。この積層体の上下面を焼成冶具との癒着防止用Pt箔で挟み、焼成条件700℃で5時間、2000kgf/cm2の圧力でホットプレスにより焼成して、NCA/LLZ/NCA複合体を得た。
Claims (21)
- リチウムイオンを吸蔵脱離可能なリチウム−遷移金属系複合酸化物からなる第一電極及び第二電極と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に介在され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質と、
を備えた、全固体蓄電素子。 - 前記リチウム−遷移金属系複合酸化物が、リチウムイオンの吸蔵により酸化還元電位が低下し、かつ、リチウムイオンの脱離により酸化還元電位が上昇する性質を有する、請求項1に記載の全固体蓄電素子。
- 前記第一電極の組成がLix−αMOy(式中、MはLi及びO以外の構成元素、x及びyは任意の数であり、0<α<xである)で表されるとき、前記第二電極の組成がLix+αMOyと表され、前記第一電極の組成がLix+αMOyで表されるとき、前記第二電極の組成がLix−αMOyと表される、請求項1又は2に記載の全固体蓄電素子。
- 前記リチウム−遷移金属系複合酸化物が、層状岩塩構造又はスピネル構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 前記リチウム−遷移金属系複合酸化物が、層状岩塩構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 前記リチウム−遷移金属系複合酸化物が、無電荷状態において、LizM1O2又はLiz(M1,M2)O2(式中、0<z<1、M1はNi,Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属元素、M2はMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)で表される組成を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 無電荷状態においてzが0.4〜0.7の範囲であり、電荷蓄積時においてzが0.2〜1.0の範囲で変動可能である、請求項6に記載の全固体蓄電素子。
- 前記リチウム−遷移金属系複合酸化物の組成がLiz(M1,M2)O2で表され、M1がNi及びCoであり、M2はMg,Al,Zrからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項6又は7に記載の全固体蓄電素子。
- 前記リチウム−遷移金属系複合酸化物の組成がLiz(M1,M2)O2で表され、M1がNi及びCoであり、M2がAlである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- M1及びM2の合計量に占めるNiの割合が原子比で0.6以上である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 前記リチウム−遷移金属系複合酸化物が複数の結晶粒子からなる多結晶体であり、該複数の結晶粒子が配向されてなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 前記第一電極及び前記第二電極が気孔を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 前記第一電極及び前記第二電極が3〜30%の空隙率を有する、請求項12に記載の全固体蓄電素子。
- 全気孔に占める開気孔の容積比率が70%以上である、請求項12又は13に記載の全固体蓄電素子。
- 前記固体電解質がガーネット系セラミックス材料である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 前記ガーネット系セラミックス材料が、少なくともLi、La、Zr及びOを含んで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体である、請求項15に記載の全固体蓄電素子。
- 前記ガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造がNb及び/又はTaをさらに含んで構成される、請求項16に記載の全固体蓄電素子。
- 前記酸化物焼結体がAl及び/又はMgをさらに含む、請求項16又は17に記載の全固体蓄電素子。
- 前記第一電極及び前記第二電極が複数用意され、該複数の第一電極が前記板状固体電解質の一方の面上にタイル状に配列され、かつ、前記複数の第二電極が前記板状固体電解質の他方の面上にタイル状に配列されてなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子。
- 複数個の請求項1〜19のいずれか一項に記載の全固体蓄電素子が集電体を介して複数個積層されてなる、スタック型全固体蓄電素子。
- 前記集電体が、リチウム−遷移金属系複合酸化物からなる活物質板の内部に埋め込まれた内部集電体として構成され、前記活物質板の一面側が前記第一電極を構成し、前記活物質板の他面側が前記第二電極を構成する、請求項20に記載のスタック型全固体蓄電素子。
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