以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供システム10について説明する。図1は、位置情報提供システム10の構成を表わす図である。位置情報提供システム10は、地上の上空約2万kmの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「測位信号」と表わす。)を発信するGPS衛星110,111,112,113と、位置情報を提供する装置として機能する位置情報提供装置100−1〜100−4とを備える。位置情報提供装置100−1〜100−4を総称するときは、位置情報提供装置100と表わす。位置情報提供装置100は、たとえば、携帯電話、カーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、ハードウェアの構成としては、従来の測位装置を有する端末と同様の構成を有するが、ファームウェアその他のソフトウェアを変更することにより、本発明の実施の形態に係る位置情報提供装置100が、屋内でも測位可能な端末装置として、実現される。
ここで、測位信号は、いわゆるスペクトラム拡散された信号であり、たとえば、いわゆるGPS信号である。しかしながら、その信号はGPS信号に限られない。なお、以下では説明を簡単にするために、測位のシステムをGPSを一例として説明するが、本発明は、他の衛星測位システム(たとえば、Galileo、準天頂衛星システムQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等)にも適用可能である。
測位信号の中心周波数は、たとえば、1575.42MHzである。測位信号の拡散周波数は、たとえば1.023MHzである。この場合、測位信号の周波数は、既存のGPSのL1帯におけるC/A(Coarse and Acquisition)信号またはL1C信号の周波数と同一となる。したがって、既存の測位信号受信回路(たとえばGPS信号受信回路)のフロントエンドが流用できるため、位置情報提供装置100は、新たなハードウェアの回路を追加することなく、フロントエンドからの信号処理を行うソフトウェアを変更するのみで、測位信号を受信することができる。
他の局面において、測位信号は、1.023MHzの矩形波によって変調されていてもよい。この場合、たとえば、L1帯において新たな送信が計画される測位信号のデータチャネルと同一であれば、利用者は、新しいGPSの信号を受信、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。なお、矩形波の周波数は、1.023MHzが好ましい。変調のための周波数は、既存のC/A信号、および/または、他の信号との干渉を回避するためのスペクトラム分離とのトレードオフによって定められ得る。なお、変調の態様はこれに限られない。
GPS衛星110には、測位信号を発信する送信機120が搭載されている。GPS衛星111,112,113にも、同様の送信機121,122,123がそれぞれ搭載されている。
位置情報提供装置100−1と同様の機能を有する位置情報提供装置100−2,100−3,100−4は、以下に説明するように、ビル130その他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。すなわち、ビル130の1階の天井には、屋内送信機200−1が取り付けられている。位置情報提供装置100−4は、屋内送信機200−1から発信される測位信号を受信する。同様に、ビル130の2階および3階の各フロアの天井にも、それぞれ屋内送信機200−2,200−3が取り付けられている。ここで、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星110,111,112,113の時刻(以下、「衛星時刻」という。)とは、互いに独立したものでよく、必ずしも同期している必要はない。ただし、各衛星時刻は、それぞれ同期している必要がある。したがって、各衛星時刻は、各衛星に搭載された原子時計により制御されている。また、必要に応じて、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻である地上時刻も、相互に同期していることが好ましい。
もっとも、本発明では、後に説明するように(図11)、屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻と、衛星時刻との同期を比較的簡単な装置構成でとることが可能なため、システムの構成として、衛星時刻と地上時刻とを同期させる必要がある場合には、このような同期に対応することが可能である。
GPS衛星の各送信機から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって航法メッセージを変調することにより生成される。航法メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データ等を含む。各送信機120〜123は、さらに、それぞれ、当該送信機120〜123自身、あるいは送信機120〜123が搭載される各GPS衛星を識別するためのデータ(たとえば、PRN−ID(Identification))を保持している。
位置情報提供装置100は、各擬似雑音符号を発生するためのデータおよびコード発生器を有している。位置情報提供装置100は、測位信号を受信すると、各衛星の送信機または各屋内送信機ごとに割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、後述する復調処理を実行し、受信された信号がどの衛星またはどの屋内送信機から発信されたものであるかを特定することができる。また、測位信号の1つであるL1C信号には、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉・追尾を防ぐことができる。
[GPS衛星に搭載される送信機]
GPS衛星に搭載される送信機の構成については、周知であるので、以下では、GPS衛星に搭載される送信機の構成の概略について説明する。送信機120,121,122,123は、それぞれ、原子時計と、データを格納する記憶装置と、発振回路と、測位信号を生成するための処理回路と、処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナ等を有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データ等を有する航法メッセージとを格納している。各送信機がL1C/A信号を送信する場合、処理回路は、PRN−IDとなり得る符号パターンによって測位信号を生成する。したがって、受信した測位信号の符号パターンが特定されれば、その測位信号を送信した送信機が識別される。
一方、各送信機がL1C信号を送信する場合、記憶装置は、PRN−IDを格納している。この場合、処理回路は、PRN−IDを含む測位信号を生成する。したがって、L1C信号として生成された測位信号が受信されると、その測位信号からPRN−IDが取得される。
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
ここで、各送信機120〜123毎に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機ごと(すなわちGPS衛星ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散する。送信機120〜123の各々は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して、宇宙空間に発信する。
上述のように、送信機120〜123は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで、「有害な干渉をおこさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、たとえばL1帯と称される搬送波によって送信されている。各送信機120,121,122,123は、たとえば、同一の周波数を有する測位信号を拡散スペクトル通信方式にしたがって発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が、同一の位置情報提供装置100−1に受信される場合にも、各々の測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。
なお、地上の屋内送信機からの測位信号についても、衛星から送信された信号と同様に、複数の屋内送信機からの信号は、互いに混信を受けることなく受信されることができる。
[屋内送信機200のハードウェア構成]
図2を参照して、屋内送信機200について説明する。図2は、屋内送信機200のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、屋内送信機200は、屋内送信機200−1,200−2,200−3の総称である。
屋内送信機200は、無線インタフェース(以下、「無線I/F」と称す)210と、デジタル処理ブロック240と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されて、各回路部分の動作のための基準クロックを供給するための基準クロック入出力ブロック(以下、「基準クロックI/Oブロック」と称す)230と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されているアナログ処理ブロック250と、アナログ処理ブロック250に電気的に接続されて、測位のための信号を送出するアンテナ(図示せず)と、屋内送信機200の各部への電源電位の供給を行うための電源(図示せず)とを備える。
なお、電源は、屋内送信機200に内蔵されてもよいし、外部からの電力の供給を受け付ける態様であってもよい。
[無線通信インタフェース]
無線I/F210は、無線通信のインタフェースであり、近距離無線通信、たとえば、ブルートゥース(Bluetooth)などや、PHS(Personal Handy-phone System)や携帯電話網のような無線通信により、外部からのコマンドを受信したり、外部との間で設定パラメータやプログラム(ファームウェア等)のデータを受信したり、あるいは、必要に応じて外部にデータを送信するためのものである。
このような無線I/F210を備えることにより、屋内送信機200については、屋内の天井等に設置した後であっても、設定パラメータ、たとえば、屋内送信機200が送信する位置データ(屋内送信機200が設置されている場所を表わすデータ)を変更したり、あるいは、ファームウェアの変更により、異なる通信方式への対応を可能としたりすることができる。
なお、無線I/F210を介した屋内送信機200へのアクセスは、IDおよびパスワードによって保護されていることが好ましい。このようにすると、屋内送信機200の管理者以外の第三者によるデータあるいはプログラムの改変を防止することができる。
なお、本実施例では、無線でのインタフェースを想定しているが、設置場所への配線の敷設や設置の手間等を考慮しても、有線インタフェースとすることができる場合には、有線とすることも可能である。
また、通信は、公衆回線、LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)シリアル配信等により実現されるが、特に限定されない。
[デジタル処理ブロック]
デジタル処理ブロック240は、無線I/F210からのコマンドに応じて、あるいは、プログラムに従って、屋内送信機200の動作を制御するプロセッサ241と、プロセッサ241に搭載され、プロセッサ241の実行するプログラムを記憶するRAM(Random Access Memory)242と、無線I/F210からのデータのうち、設定パラメータ等を記憶するためのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)243と、プロセッサ241の制御のもとに、屋内送信機200の送出するベースバンド信号を生成するフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:以下、「FPGA」と称す)245と、無線I/F210からのデータのうち、FPGA245のファームウェアを記憶するためのEEPROM244と、FPGA245から出力されるベースバンド信号をアナログ信号に変更してアナログブロック250に与えるデジタル/アナログコンバータ(以下、「D/Aコンバータ」と称す)247とを含む。
すなわち、デジタル処理ブロック240は、測位のための信号として屋内送信機200によって送信される信号の源泉となるデータを生成する。デジタル処理ブロック240は、アナログ処理ブロック250に対して、生成したデータをビットストリームとして送出する。
特に限定されないが、たとえば、EEPROM244に格納されているファームウェアプログラムは、FPGA245に電源が投入されると、FPGA245にロードされる。このファームウェアプログラム情報(ビットストリームデータ)は、FPGA245内のSRAM(Static Random Access Memory)246で構成されているコンフィグレーションメモリにロードされる。ロードされたビットストリームデータの個々のビットデータがFPGA245上で実現する回路の情報元となり、FPGA245に装備されているリソースをカスタマイズしてファームウェアプログラムで特定される回路を実現する。FPGA245では、このようにハードウェアに依存せず、コンフィグレーションデータを外部に持つことで、高い汎用性とフレキシビリティを実現できることになる。
また、プロセッサ241は、無線I/F210から受け取る外部コマンドに応じて、EEPROM243に格納されるデータに基づいて、FPGA245のSRAM246(レジスタ)に、当該屋内送信機200に設定されるパラメータとして、以下のものを格納させる。
1)擬似雑音符号(PRNコード)
2)送信機ID
3)送信機座標
4)メッセージ(これは、FPGA245内で衛星からの航法メッセージと同一のフォーマットに整形される)
5)デジタルフィルタの選択パラメータ
なお、後に説明するように、FPGA245内には、たとえば、1MHz、2MHz、4MHz(中心周波数:1575.42MHz)についてのバンドパスフィルタが予めプログラムされており、「デジタルフィルタの選択パラメータ」とは、このいずれのバンドパスフィルタを選択するかのパラメータである。
なお、プロセッサ241の動作のためのプログラムも、EEPROM243に予め格納されており、当該プログラムは、屋内送信機200が起動する時に、EEPROM243から読み出され、RAM242に転送される。
なお、プログラムあるいはデータを格納するための記憶装置は、EEPROM243または244に限られない。少なくとも、データを不揮発的に保存できる記憶装置であればよい。また、後述するように、外部からのデータが入力される場合には、データを書き込むことができる記憶装置であればよい。EEPROM243に格納されるデータのデータ構造については後述する。
(アナログ処理ブロック)
アナログ処理ブロック250は、デジタル処理ブロック240から出力されたビットストリームを用いて、1.57542GHzの搬送波に変調して送信信号を生成し、アンテナに送出する。その信号は、アンテナより発信される。
すなわち、デジタル処理ブロック240のD/Aコンバータ247から出力された信号は、アップコンバータ252でアップコンバートされ、バンドパスフィルタ(BPF)253をアンプ254を通過して所定の周波数帯域の信号のみが増幅された後、再度、アップコンバータ255でアップコンバートされて、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタにより所定の帯域の信号が取り出された後に、可変アッテネータ257およびRFスイッチ258により、設定された強度の信号に変換されて、アンテナから送出される。
なお、信号生成の態様は上述のものに限られない。たとえば、上記の例では、2段階の変調が行なわれる例が示されているが、1段階の変調が用いられてもよく、あるいは、信号変換が直接行なわれるものであってもよい。
なお、アップコンバータ252およびアップコンバータ255で使用されるクロックは、基準クロックI/Oブロック230からFPGA245に供給されるクロックが、さらに、てい倍器251において、てい倍されたものが使用される。
また、可変アッテネータ257とRFスイッチ258のレベルの設定は、FPGA245をスルーしたプロセッサ241からの制御信号により制御される。信号強度の変更は、可変アッテネータ257によって行なわれる。可変アッテネータ257もRFスイッチ258も、後に説明する「IQ変調振幅の個別可変機能」の一部として動作する。
このようにして、衛星からの測位のための信号と同様の構成を有する信号が、屋内送信機200から発信される。この場合、信号の内容は、衛星から発信された測位信号に含まれる内容とは、全く同一ではない。屋内送信機200から発信される信号の構成の一例は、後述する(図8)。
以上の説明においては、デジタル処理ブロック240におけるデジタル信号処理を実現するための演算処理装置としてFPGA245が用いられたが、ソフトウェアにより無線装置の変調機能を変更可能な装置であれば、その他の演算処理装置が使用されてもよい。
また、図2においては、クロック信号(Clk)がデジタル処理ブロック240からアナログ処理ブロック250に供給されているが、基準クロックI/Oブロック230からアナログ処理ブロック250に直接に供給されてもよい。
さらに、説明を明確にするために、本実施の形態においては、デジタル処理ブロック240とアナログ処理ブロック250とが別個に示されているが、物理的には、1つのチップに混載されてもよい。
(基準クロックI/Oブロック)
基準クロックI/Oブロック230は、デジタル処理ブロック240の動作を規定するクロック信号、あるいは搬送波を生成するためのクロック信号を、デジタル処理ブロック240に供給する。
基準クロックI/Oブロック230は、「外部同期モード」では、外部同期リンクポート220へ外部のクロック生成器から与えられる同期用信号に基づいて、ドライバ234がクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。この「外部同期モード」での動作については、後にさらに詳しく説明する。
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「外部クロックモード」では、外部クロックポート220へ与えられる外部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL(Phase Locked Loop)回路233から出力されるクロック信号と外部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「内部クロックモード」では、内部クロック生成器231が生成する内部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL回路233から出力されるクロック信号と内部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
なお、無線I/F210から、プロセッサ241により出力される信号により、送信機の内部状態(たとえば、「PLL制御」信号)を監視することができる。あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200から発信される信号を拡散変調するための擬似雑音符号の符号パターンの入力を、あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200から発信されるべき他のデータの入力も受け付けることができる。当該他のデータは、たとえば、屋内送信機200が設置されている場所を表わすテキストデータ(位置データ)である。あるいは、屋内送信機200がデパートその他の商業施設に設置されている場合には、宣伝広告用のデータが、当該他のデータとして屋内送信機200に入力可能である。
擬似雑音符号(PRNコード)の符号パターンは、屋内送信機200に入力されると、EEPROM243において予め規定された領域に書き込まれる。その後は、その書き込まれたPRN−IDが、測位のための信号に含められる。その他のデータも、EEPROM243において、そのデータの種類に応じて予め確保された領域に書き込まれる。
[EEPROM243に格納されるデータのデータ構造]
図3を参照して、屋内送信機200のEEPROM243に格納されるデータのデータ構造について説明する。
図3は、屋内送信機200が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。EEPROM243は、データを格納するための領域300〜350を含む。
領域300には、送信機を識別するための番号として、送信機IDが格納されている。送信機IDは、たとえば当該送信機の製造時にあるいは設置時にメモリに不揮発的に書き込まれる数字および/または英文字その他の組み合わせである。あるいは、他の局面において、送信機IDは、一意なIDとして、当該送信機が設置されている位置(地理的位置情報、住所その他の人為的に定められた位置情報など)に関連付けられてもよい。
当該送信機に割り当てられた擬似雑音符号のPRN-IDは、領域310に格納されている。送信機の名称は、テキストデータとして、領域320に格納されている。
当該送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域330に格納されている。擬似雑音符号の符号パターンは、衛星用の擬似雑音符号と同一の系列に属する符号パターンのうちから、本発明の実施の形態に係る位置情報提供システム用に予め割り当てられた有限個の複数の符号パターンのうちから選択されたものであり、衛星ごとに割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンとは異なる符号パターンである。
本位置情報提供システム用に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンは、有限個であるが、屋内送信機の数は、各送信機の設置場所の広さ、あるいは設置場所の構成(ビルの階数等)に応じて異なり、符号パターンの数よりも多い複数の屋内送信機が使用される場合もある。したがって、同一の擬似雑音符号の符号パターンを有する複数の送信機が存在し得る。この場合は、同一の符号パターンを有する送信機の設置場所を、信号の出力を考慮して決定すればよい。そうすることにより、同一の擬似雑音符号の符号パターンを用いる複数の測位信号が同一の位置情報提供装置によって同時期に受信されることは、防止し得る。
屋内送信機200が設置されている場所を特定するための位置データは、領域340に格納されている。位置データは、たとえば、緯度、経度、高度の組み合わせとして表わされる。領域340において、当該位置データに加えて、もしくは位置データに代えて、住所、建物の名称などが格納されてもよい。本発明では、「緯度、経度、高度の組み合わせ」、「住所、建物の名称」、「緯度、経度、高度の組み合わせと住所、建物の名称」のように、そのデータのみで送信機200−1の設置場所を特定可能なデータを総称して「位置特定データ」と呼ぶ。
さらに、領域350には、フィルタ選択のためのフィルタ選択パラメータが格納される。特に限定されないが、たとえば、フィルタ選択パラメータ「0」「1」「2」にそれぞれ対応して、バンドパスフィルタの帯域幅として、それぞれ「1MHz」「2MHz」「4MHz」が選択されるものとする。
ここで、前述のように、PRN−ID、通信機名称、擬似雑音符号の符号パターン、位置特定データ、フィルタ選択パラメータは、無線インタフェース210を介して入力される他のデータに変更可能である。
[FPGA245の構成]
以下では、図2に示したFPGA245により実現される回路について説明する。
まず、図4は、FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号の搬送波のL1帯(1575.42MHz)に乗せられる測位用の信号であるC/A(Coarse and Acquisition)コードのベースバンド信号、または、新しい測位衛星システム(たとえば、日本の準天頂衛星システム)のL1帯で使用される測位用の信号であるL1Cコードのベースバンド信号に対して、それぞれの信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245aの構成を説明するための機能ブロック図である。
ここで、たとえば、C/Aコードに対しては、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調が行われ、L1Cコードに対しては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調が行われるものとする。なお、以下の説明で明らかになるように、デジタル値をアナログ信号に変換する変調方式としては、BPSK変調やQPSK変調に限られず、FPGA245で実現できる他の方式でもよい。
ここで、図4に示した構成では、基本的には、QPSK変調器の構成となっているものの、I相に乗せる信号とQ相に乗せる信号とを同一の信号とすれば、結果として、BPSK変調と等価となることを利用して、BPSK変調とQPSK変調の双方を実現できる回路構成としている。ただし、変調器245aが実現する変調方式に従って、各方式で独立な回路をプログラムしてもよい。
図4を参照して、変調器245aは、EEPROM243内に格納されているPRNコードを受けて格納するPRNコードレジスタ2462および2464と、後に説明するようなメッセージデータ生成装置245bまたはメッセージデータ生成装置245cからのC/AコードまたはL1Cコードの信号フォーマットに従ったメッセージデータを受けて格納するメッセージコードレジスタ2466および2468とを備える。
ここで、PRNコードレジスタ2462および2464には、外部からEEPROM243内に設定されたPRNコードが入力されるとともに、上述したように、BPSK変調では、メッセージコードレジスタ2466および2468ならびにPRNコードレジスタ2462,2464のそれぞれに同一のデータが格納される。一方、QPSK変調の場合には、メッセージコードレジスタ2466および2468ならびにPRNコードレジスタ2462,2464には、それぞれ、I相用のデータとQ相用のデータの異なるデータが格納される。
変調器245aは、さらに、PRNコードレジスタ2462から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2466から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2452と、PRNコードレジスタ2464から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2468から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2454と、プロセッサ241からのレベルコントロール信号LVC1により制御され、乗算器2452から入力された信号の強度を変更するレベルコントロール回路2456と、プロセッサ241からのレベルコントロール信号LVC2により制御され、乗算器2454から入力された信号の強度を変更するレベルコントロール回路2458と、レベルコントロール回路2456からの出力に対してフィルタ選択パラメータにより選択される帯域幅のバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2460と、レベルコントロール回路2458からの出力に対してフィルタ選択パラメータにより選択される帯域幅のバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2462とを備える。
変調器245aは、さらに、基準クロックI/Oブロック230からのクロック信号に基づいて、信号フォーマットに従った変調基準クロックを生成するクロック回路2472と、クロック回路2472からの信号に同期して、予め設定されたサイン波およびコサイン波に対応するデータをそれぞれI相用変調信号とQ相用変調信号として出力するルックアップテーブル2474と、ルックアップテーブル2574から出力されたサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2460からの信号とを乗算する乗算器2464と、ルックアップテーブル2574から出力されたコサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2462からの信号とを乗算する乗算器2466と、乗算器2464および2466からの信号を加算する加算器2468と、加算器2368からの出力をバッファリングしてD/Aコンバータ247に出力するための出力バッファ2470とを備える。
以上のような変調器245aからD/Aコンバータ247へ出力される信号に含まれるデータについては、以下のようになる。
[現行GPS信号とコンパチブルな信号を出力する場合]
FPGA245のファームウェアにより、現行のGPS信号とコンパチブルな信号(L1 C/Aコードとコンパチブルな信号:L1 C/A互換信号)を出力する回路構成とした場合には、変調器245aは、Q相信号、I相信号とも、送信機の「緯度・経度・高さ」の情報をメッセージとして変調することで、BPSK変調された信号を生成する。ここで、「コンパチブルな信号」とは、共通の信号フォーマットを有するために受信機としてはフロントエンド部を共通にして受信可能な信号を意味する。
[L1C信号とコンパチブルな信号を出力する場合:L1C互換信号]
次に、FPGA245のファームウェアにより、L1C信号とコンパチブルな信号を出力する回路構成とする場合について、以下説明する。
まず、前提として、衛星からのL1C信号について簡単に説明する。
衛星からのL1C信号は、上述のとおり、QPSK変調されており、Q相の信号には、受信機の捕捉用のパイロット信号が変調されて乗っている。Q相の信号は、I相の信号よりも3dBレベルが高い。一方、I相の信号には、航法メッセージ等が乗っている。
なお、ここで、Q相の信号に捕捉用のパイロット信号がのっているのは、以下のような理由による。
すなわち、現行のGPS信号のC/Aコードは、1023チップの信号で1msec周期であり、20周期について、同じ信号が続くので、インテグレーションでS/Nを上げることができるのに対して、L1C信号は、10230チップで10msec周期であるため、同じ信号が1周期しかないので、インテグレーションでS/Nを上げるということができない。そのため、衛星からの信号のQ相信号を捕捉用として用いることが必要となる。
これに対して、屋内送信機200からのL1C信号にコンパチブルな信号については、Q相信号には、送信機IDを乗せることができる。屋内送信機200によって発信される信号の強度が、GPS衛星から送信される信号の強度よりも強いため、捕捉用の信号が必要ないからである。これは、GPS衛星からの信号は地上に伝播する時点では微弱になっているため捕捉用の信号が必要である一方、屋内送信機の場合は、マルチパスあるいは不安定な伝播を防ぐために信号強度を高める必要がある、という事情に基づく。一方、I相の信号には、位置特定データ、たとえば、緯度・経度・高さのデータが乗せられる。
図5は、L1 C/Aコードの信号と、L1Cコードの信号のスペクトル強度分布を示す図である。なお、図5においては、L1帯で、C/Aコードとともに衛星から送信される軍事用のコードであるPコードと、L1C信号とともに衛星から送信される主として軍事用途であるMコードの信号についても、スペクトル強度を合わせて示している。
図5に示すように、C/Aコードについては、中心周波数1575.42MHzにメインのピークとその周りにサイドローブの信号が存在する。一方、L1Cコードは、C/Aコードとの干渉を抑えるために、中心周波数1575.42MHzにはヌル点が存在し、その両側にメインピークが2つあり、さらにその外側にサイドローブの信号が存在する。
このため、C/Aコードについては、1MHz帯域幅のバンドパスフィルタにより、メインピークのみを取り出すことができ、L1Cコードは、2MHz帯域幅のバンドパスフィルタにより、メインピークのみを取り出すことができる。
上述のとおり、屋内送信機200から送信される信号が受信される地点での当該信号の強度は、GPS衛星から送信された信号が地上で受信される場合の信号強度に比べて大きいので、これにより目的の周波数成分のみを送信することとなり、他の信号との干渉を抑制することが可能となる。
[メッセージデータ生成装置245b]
図6は、FPGA245のファームウェアをL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245bの構成を示す機能ブロック図である。
以下に説明するとおり、メッセージデータ生成装置245bは、L1帯のC/Aコード内の航法メッセージに相当する部分に、外部から与えられた位置特定データ等を信号フォーマットに従って、乗せる処理を行うものである。
メッセージデータ生成装置245bは、プロセッサ241からのコマンド2480を受付けるコマンドインタフェース2482と、コマンドインタフェース2482から与えられるコマンドに基づいて、L1帯のC/Aコード内のTOW(Time Of Week)の情報を読み取るTOWコマンド解釈器2484と、TOWコマンド以外のコマンドの内容を読み取るコマンド解釈器2488と、TOWコマンド解釈器2484からの信号をもとに、TOW情報を生成するTOW生成器2486と、TOW生成器2486からのTOW情報とコマンド解釈器2488からのメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2490とを備える。
メッセージバンク2490は、TOW情報を格納するための各30ビットの容量のバンク01および02と、メッセージ情報を格納するための各30ビットの容量のバンク03〜10とを備える。各バンク01〜10は、それぞれ24ビット分の情報を格納する領域2490aを有するとともに、CRC生成器2492は、この24ビット分のデータからエラー検出用のCRCコード(6ビット)を生成して、各バンクの領域2490aに続く領域2490bに格納する。
シーケンスカウンタ2494は、基準クロックI/Oブロック230からのクロックに基づくMSGクロックMSGClockに同期して、順次、バンク01〜10に読み出し信号を与え、これに応じて、バンク01〜10からのデータが読み出されて、メッセージレジスタ2496に格納される。
メッセージレジスタ2496のデータが、メッセージコードレジスタ2466および2468の双方に書き込まれる。以後の処理は、図4の変調器245aの動作として説明したとおりである。
[メッセージデータ生成装置245c]
図7は、FPGA245のファームウェアをL1Cコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245cの構成を示す機能ブロック図である。
以下に説明するとおり、メッセージデータ生成装置245cは、L1Cコード内の航法メッセージとパイロット信号に相当する部分に、外部から与えられた位置特定データ等や送信機ID等を信号フォーマットに従って、乗せる処理を行うものである。
メッセージデータ生成装置245cは、プロセッサ241からのコマンド2500を受付けるコマンドインタフェース2502と、コマンドインタフェース2502から与えられるコマンドに基づいて、メッセージとして送信するデータの内容を解釈するためのメッセージコマンド解釈器2504と、メッセージコマンド解釈器2504からのI相用のメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2506と、メッセージコマンド解釈器2504からのQ相用のメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2508とを備える。
メッセージバンク2506は、I相用の情報を格納するための各150ビットの容量のバンクI00〜I10を含む。メッセージバンク2508は、Q相用の情報を格納するための各48ビットの容量のバンクQ00〜Q02と、Q相用の情報を格納するための各63ビットの容量のバンクQ03〜Q05と、Q相用の情報を格納するための各75ビットの容量のバンクQ06〜Q08とを含む。なお、Q相用の各バンクの容量は、これらの値に限定されるものではなく、たとえば、バンクQ00〜Q08の容量をすべてI相用のバンクと同じ容量である150ビットとすることもできる。
ここで、Q相用のメッセージバンク2508には、たとえば、送信機IDが格納される。一方、I相用のメッセージバンク2506には、上述した「位置特定データ」だけでなく、たとえば、無線I/F210を介して屋内送信機200の外部から与えられる「宣伝広告用のデータ」「交通情報」「気象情報」「災害情報」も格納され得る。災害情報は、たとえば、地震予知、地震発生情報等を含む。ここで、上記の「外部」には、上記の各情報を提供する事業者、官公庁などによって運営されるサーバ装置等を含む。これらの情報は、リアルタイムで当該外部のサーバ装置から送られる場合もあれば、定期的にアップデートされるものであってもよい。あるいは、当該屋内送信機200の運営管理者が随時データを更新するものであってもよい。たとえば、各屋内送信機200がデパートに設置されている場合には、デパートの営業活動の1つとして、宣伝広告用のデータが当該運営管理者によって屋内送信機200に与えられてもよい。
特に限定されないが、バンクQ00〜Q08に格納されるデータついては、BCHの誤り訂正符号が付加されており、バンクI00〜I10に格納されるデータについては、誤り検出符号が付加される構成とすることができる。これにより、データ長の短い送信機IDが繰り返し含まれているバンクQ00〜Q08のデータについては、この短い周期で受信するごとに正しいデータが得られることで、早期に受信データを確定できる。これにより、Q位相側ではI位相側よりも早期に受信データを確定して、後に説明するような位置情報の取得処理(サーバへの問い合わせ)に移ることができる。
メッセージデータ生成装置245cは、さらに、コマンドインタフェース2502からのコマンドに応じたシーケンスで、I相信号に含ませるデータについてバンクI00〜I10からデータを読み出すシーケンスマネージャ2510と、コマンドインタフェース2502からのコマンドに応じたシーケンスで、Q相信号に含ませるデータについてバンクQ00〜Q08からデータを読み出すシーケンスマネージャ2512とを備える。
メッセージデータ生成装置245cは、さらに、基準クロックI/Oブロック230からのクロックに基づくMSGクロックMSGClockに同期して、順次、シーケンスマネージャ2510およびシーケンスマネージャ2512からデータを読み出し、それぞれ別々に、メッセージコードレジスタ2466および2468に書き込むメッセージレジスタ2514を備える。
メッセージレジスタ2514のデータが、メッセージコードレジスタ2466および2468の双方に書き込まれる。以後の処理は、図4の変調器245aの動作として説明したとおりである。
なお、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号が屋内送信機200から送信される場合、受信機側(位置情報提供装置側)でも、I相用の送信機側の150ビットのメッセージバンクI00〜I10にそれぞれ対応して、I00〜I10で区別される記憶領域が設けられており、また、Q相用のメッセージバンクQ00〜Q08にそれぞれ対応して、Q00〜Q08で区別される記憶領域が設けられているものとする。このようにすることで、新しく、バンクI00〜I10またはバンクQ00〜Q08に格納されたデータのいずれかを受信するごとに、受信機側の記憶領域の内容が更新される。このために、バンクI00〜I10、Q00〜Q08に格納されるデータには、いずれのバンクのデータであるかを識別可能な識別子が含まれているものとする。
以上、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号を屋内送信機200から送信されるメッセージについて、まとめると以下のようである。なお、以下では、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号を「L1C互換メッセージ」と呼ぶ。
L1C互換メッセージは、I相信号とQ相信号とによって構成されている。I相信号とQ相信号には、独立の別個のメッセージがそれぞれ変調されている。詳しくは、Q相信号には、たとえば、送信機IDのような短い情報が変調されている。Q相信号のデータ長はI相信号のそれよりも短いため、受信機は、Q相信号を速やかに捕捉することができ、当該IDをすぐに取得することができる。しかしながら、当該IDは、それ自身で意味(たとえば位置情報)を有さないため、受信機は送信機IDのみで位置を知ることはできない。そこで、受信機は、たとえば携帯電話網を介して位置情報を提供するサーバ装置のサイトにアクセスし、当該送信機IDをサーバ装置に送信し、当該送信機IDに関連付けられている位置情報を当該サーバ装置から取得することになる。
一方、I相信号には、位置特定データが変調されている。さらに、ある局面において、I相信号に含まれるメッセージを可変とする構成が可能である。たとえば、I相信号には、位置情報のほかに、交通情報、気象情報、災害情報などの可変メッセージを変調することができる。これにより、屋内送信機200と外部ネットワークとが接続された場合に、当該可変メッセージをリアルタイムに更新し、受信機の使用者に、適切な情報を提供することができる。I相信号は位置情報自身を含むため、受信機の使用者は、当該受信機をネットワークに接続することなく、自己の位置を知ることができる。したがって、たとえば、災害が発生した場合であって通信回線が輻輳しているときにも、L1C互換メッセージを受信できれば当該受信機の位置を特定可能である。この場合、当該受信機が携帯電話機として当該位置を発信できれば、信号の受信者は、その信号の発信者(すなわち被災者)の位置を特定しやすくなる。
このように、I相信号とQ相信号とは、変調される情報自体の相違点と、信号の長さのような構成上の相違点とを有する。受信機が、位置情報を取得するためには、少なくともいずれかの信号を受信できればよい。したがって、受信機の使用者は、必要に応じて、I相信号およびQ相信号のいずれを受信するかを選択することができる。この選択は、いずれの信号を受信するかを規定する設定を使用者が受信機に入力することにより、実現される。あるいは、通信回線の輻輳により通信回線によるサーバへの接続がタイムアウトにより失敗した場合などに、受信機において、I相信号の受信モードからQ相信号の受信モードへと自動的に切り替える構成としてもよい。
なお、C/A信号は、PRN−IDとメッセージ(たとえば、位置情報)とを含む。そして、メッセージをリアルタイムで更新することも可能であるため、C/A信号に最新のメッセージを含めることができる。
[屋内送信機200から送信される信号のデータ構造]
まず、メッセージデータ生成装置245bで生成されるメッセージを乗せたL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
[L1 C/A互換信号]
図8を参照して、送信機から送信される測位信号について説明する。図8は、GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号500の構成を表わす図である。信号500は、300ビットの5つのサブフレーム、すなわち、サブフレーム510〜550から構成される。サブフレーム510〜550は、当該送信機によって、繰り返し送信される。サブフレーム510〜550は、たとえば、それぞれ300ビットであり、50bps(bit per second)のビット率で送信される。したがって、この場合、各サブフレームは、6秒で送信される。
第1番目のサブフレーム510は、30ビットのTOH511と、30ビットの時刻情報512と、240ビットのメッセージデータ513とを含む。時刻情報512は、詳細には、サブフレーム510が生成される際に取得された時刻情報と、サブフレームIDとを含む。ここで、サブフレームIDとは、他のサブフレームから第1のサブフレーム510を区別するための識別番号である。メッセージデータ513は、GPS週番号、クロック情報、当該GPS衛星のヘルス情報、軌道精度情報等を含む。
第2番目のサブフレーム520は、30ビットのTOH521と、30ビットの時刻情報522と、240ビットのメッセージデータ523とを含む。時刻情報522は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ523は、エフェメリス(ephemeris、放送暦)を含む。ここで、エフェメリスとは、測位信号を発信する衛星の軌道情報をいう。エフェメリスは、当該衛星の航行を管理する管制局によって逐次更新される、高精度な情報である。
第3番目のサブフレーム530は、第2番目のサブフレーム520と同様の構成を有する。すなわち、第3番目のサブフレーム530は、30ビットのTOH531と、30ビットの時刻情報532と、240ビットのメッセージデータ533とを含む。時刻情報532は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ533は、エフェメリスを含む。
第4番目のサブフレーム540は、30ビットのTOH541と、30ビットの時刻情報542と、240ビットのメッセージデータ543とを含む。メッセージデータ543は、他のメッセージデータ513,523,533と異なり、アルマナック情報、衛星ヘルス情報のサマリ、電離層遅延情報、UTC(Coordinated Universal Time )パラメータ等を含む。
第5番目のサブフレーム550は、30ビットのTOH551と、30ビットの時刻情報552と、240ビットのメッセージデータ553とを含む。メッセージデータ553は、アルマナック情報と、衛星ヘルス情報のサマリとを含む。メッセージデータ543,553は、各々25ページからの構成されており、ページ毎に、上記の異なる情報が定義されている。ここで、アルマナック情報とは、衛星の概略軌道を表わす情報であり、当該衛星だけでなく、全てのGPS衛星についての情報を含む。サブフレーム510〜550の送信が25回繰り返されると、1ページ目に戻って、同じ情報が発信される。
サブフレーム510〜550は、送信機120,121,122からそれぞれ送信される。サブフレーム510〜550が位置情報提供装置100によって受信されると、位置情報提供装置100の位置は、TOH511〜551に含まれる各保守・管理情報と、時刻情報512〜552と、メッセージデータ513〜553とに基づいて、計算される。
信号560は、サブフレーム510〜550に含まれる各メッセージデータ513〜553と同じデータ長を有する。信号560は、エフェメリス(メッセージデータ523,533)として表わされる軌道情報に代えて、信号560の発信源の位置を表わすデータを有する点で、サブフレーム510〜550と異なる。
すなわち、信号560は、6ビットのPRN−ID561と、15ビットの送信機ID562と、X座標値563と、Y座標値564と、Z座標値565と、高度補正係数(Zhf)566と、アドレス567と、リザーブ568とを含む。信号560は、サブフレーム510〜550に含まれるメッセージデータ513〜553に代わって、屋内送信機200−1,200−2,200−3から送信される。
PRN−ID561は、信号560の発信源である送信機(たとえば、屋内送信機200−1,200−2,200−3)に対して予め割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号である。PRN−ID561は、各GPS衛星に搭載されるそれぞれの送信機に対して割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号とは異なるが、同じ系列の符号列から生成される符号パターンに対して割り当てられた番号である。位置情報提供装置が、受信した信号560から、屋内送信機用に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンのいずれかを取得することで、その信号が、衛星から送信されたサブフレーム510〜550であるのか、あるいは、屋内送信機から送信された信号560であるのかが特定される。
X座標値563、Y座標値564およびZ座標値565は、屋内送信機200が取り付けられている位置を表わすデータである。X座標値563、Y座標値564、Z座標値565は、たとえば緯度、経度、高度として表わされる。高度補正係数566は、Z座標値565によって特定される高度を補正するために用いられる。なお、高度補正係数566は、必須のデータ項目ではない。したがって、Z座標値565によって特定される高度以上の精度が要求されない場合には、その係数は用いられなくてもよい。この場合、高度補正係数566のために割り当てられる領域には、たとえば「NULL」を表わすデータが格納される。
リザーブ領域568には、「住所、建物の名称」、「宣伝広告用のデータ」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」(たとえば地震情報)が割り当てられる。
[L1C互換信号]
次に、メッセージデータ生成装置245cで生成されるメッセージを乗せたL1Cコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
以下、I相信号のデータ構造について説明する。
[I相信号の構成1]
図9は、L1C互換信号の第1の構成を表わす図である。図9においては、6つのサブフレームが送信される。第1番目のサブフレームとして、信号810が送信機によって送信される。信号810は、30ビットのTOH811と、30ビットの時刻情報812と、6ビットのPRN−ID813と、15ビットの送信機ID814と、X座標値815と、Y座標値816と、Z座標値817とを含む。信号810の最初の60ビットは、GPS衛星が発信するサブフレーム510〜550の各々の最初の60ビットと同一である。
リザーブ領域818には、「住所、建物の名称」、「宣伝広告用のデータ」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」(たとえば地震情報)が割り当てられる。
第2番目のサブフレームとして、信号820が送信機によって送信される。信号820は、6ビットのサブフレームID821と、高度補正係数822と、送信機位置アドレス823とを含む。信号820のサブフレームIDから後方の144ビット(信号820では、高度補正係数822と、送信機位置アドレス823)に、別情報を予め定義することにより、第3番目〜第6番目のサブフレームも同様に送信される。各サブフレームに含まれる情報は、上記のものに限られない。たとえば,位置情報に関する広告、インターネットサイトのURL(Uniform Resource Locators)等が、各サブフレームにおいて予め定義された領域に格納されてもよい。
信号830〜870は、上記の信号810,820および信号820と同じ構造を有する第3〜第6番目のサブフレームの送信例を示す。すなわち、信号830は、第1のサブフレーム831と、第2のサブフレーム832とを含む。第1のサブフレーム831は、GPS衛星から送信されるサブフレーム510〜550と同じヘッダを持つ。第2のサブフレーム832は、信号820に対応するフレームである。
信号840は、第1のサブフレーム831と、第3のサブフレーム842とを含む。第1のサブフレーム831は、第1のサブフレーム831と同一である。第3のサブフレームは、信号820と同じ構造を有する。
このような構成は、第6番目のサブフレーム872を送信するための信号870まで繰り返される。信号870は、第1のサブフレーム831と、第6のサブフレーム872とを含む。
送信機が、信号830から信号870を繰り返し送信すると、第1のサブフレーム831は、各信号の送信毎に送信される。第1のサブフレーム831が送信された後に、他のいずれかのサブフレームが内挿される。すなわち、各サブフレームの送信の順序は、第1のサブフレーム831→第2のサブフレーム832→第1のサブフレーム831→第3のサブフレーム842→第1のサブフレーム→・・・→第6のサブフレーム872→第1のサブフレーム831→第2のサブフレーム832・・・となる。
[I相信号の第2の構成]
図10は、L1C互換信号の第2の構成を表わす図である。メッセージデータの構造は、サブフレーム510〜550とは独立に定義されてもよい。
図10は、L1C互換信号910の第2の構成を概念的に表わす図である。図10を参照して、信号910は、TOH911と、プリアンブル912と、PRN−ID913と、送信機ID914と、第1の変数915と、X座標値916と、Y座標値917と、Z座標値918と、パリティ/CRC919とを含む。信号920は、信号910と同様の構成を有する。ここで、信号910における第1の変数915に代えて、第2の変数925を含む。
各信号は、150ビット長を有する。同じ構造を有する信号が6つ発信される。このような構成を有する信号を、屋内送信機から発信される信号として構成してもよい。
図10に示される各信号も、PRN−IDをそれぞれ有するため、位置情報提供装置100は、そのPRN−IDに基づいて、受信した信号の送信源を特定することができる。送信源が屋内送信機であれば、その信号には、X座標値とY座標値とZ座標値とが含まれる。したがって、位置情報提供装置100は、屋内の位置を表示することができる。
[外部同期モードでのシステム構成]
以下では、上述した「外部同期モード」でのシステム構成と、その場合の屋内送信装置の動作について説明する。
図11は、このような「外部同期モード」でのシステム構成を説明するための概念図である。
複数の屋内送信機200−1〜200−4が、たとえば、1つのビル内に設置されているものとする。以下では、説明の簡単のために屋内送信機は4個であるものとして説明するが、個数については、より多くてもかまわない。
図11に示すように、ビルの屋上などに設けられたGPSアンテナから信号を受けて、GPS受信機2004が動作しているものとする。
GPS受信機2004は、衛星時刻に数10ns程度の精度で同期したクロック信号GPS−clockを得ることができる。このクロック信号GPS−clockを受けて、クロック生成器2010は、たとえば、有線または無線により、複数の屋内送信機200−1〜200−4の外部同期リンクポート220へそれぞれ同期用信号(タイミングパルス)を供給する。複数の屋内送信機200−1〜200−4からは、クロック生成器2010に対してリターンパルスが返される。このリターンパルスに基づいて、クロック生成器2010から屋内送信機200−1〜200−4へそれぞれ送信されるタイミングパルスの遅延量は、送信したタイミングパルスとリターンパルスとの間の遅延(位相差)が最小となるように、負帰還により調整される。屋内送信機200−1〜200−4の各々においては、ドライバ234がクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
GPS受信機2004とクロック生成器2010とは、数10ns(ナノ秒)のオーダーで同期している。クロック生成器2010と各屋内送信機200−1,200−2,200−3,200−4とは、負帰還により同期をとることで、数100ps(ピコ秒)で同期している。したがって、GPS受信機2004と各屋内送信機2001,200−2,200−3,200−4との間の同期の精度は、数10nsに制限されることになる。このような制限は、各屋内送信機200−1,200−2,200−3,200−4による時刻の提供機能に影響を及ぼす。
しかしながら、クロック生成器2010と各屋内送信機200−1,200−2,200−3,200−4との間は、数100psで同期しているため、レンジング(受信機に届くまでの時間)を用いた測位については、数100psの精度で実現することができる。
複数の屋内送信機200−1〜200−4において、各々のクロックが数100ps(ピコ秒)のオーダーで同期できることにより、以下のようなシステムを実現可能である。
1)各位置情報提供装置100−1(すなわち受信機)に対して、精密なクロック、タイミングを提供できる。複数の屋内送信機200−1〜200−4の信号を受信機が受信するためには、結果として、屋内送信機200−1〜200−4からの信号の拡散符号に同期する必要がある。言い換えると、受信が確立されるということは、複数の屋内送信機200−1〜200−4と受信機との間で同期が確立したことを意味する。したがって、受信機では、同期クロックを取り出せば、時刻同期が必要なアプリケーションに対して、このように高度に同期したクロックを提供できることになる。たとえば、ネットワークの精密な時刻同期や、決済、取引、その他の時間の精度を要求するアプリケーションに対して、このような同期クロックを提供できる。
2)また、複数の屋内送信機200−1〜200−4からの信号を用いることで、ADR(Accumulated Doppler Range)差分を用いた疑似距離測定が可能となる。上記のように、複数の屋内送信機200−1〜200−4において、クロックが高精度に(たとえば数100psのオーダーで)同期しているので、高精度に位置測定(屋内送信機からの距離)が可能となる。なお、上述の内容は、当業者にとって容易に理解できるため、詳細な説明は繰り返さない。
図12は、クロック生成器2010からのタイミングパルスにより、屋内送信機200−1〜200−4のクロックの同期をとる構成を説明するための概念図である。
図12では、複数の屋内送信機200−1〜200−4のうち、屋内送信機200−1についての構成部分のみを抜き出して示す。クロック・パルス生成部2100は、複数の屋内送信機200−1〜200−4について共通である。
図12を参照して、まず、クロック・パルス生成部2100からタイミングパルスを発生させる。タイミングパルスは、伝送遅延量測定部2102およびタイミング遅延回路2104に入力される。伝送遅延量測定部2102ではカウンターを動作させ、リターンパルスが来るまでカウントする。タイミング遅延回路2104に入力されたパルスは0遅延のまま差動ドライバ2108に入力され、屋内送信機200へ伝送される。
屋内送信機200では、このタイミングパルスによって、屋内送信機200のクロック生成ブロックであるドライバ234を同期させる。ドライバ234は、同期させたタイミングパルスを差動レシーバ2106へ伝送する。伝送遅延量測定部2102で動作させたカウンターを停止し、総合遅延量(ΔT)を計測する。測定した値を1クロック分の遅延量(1Clock‐Δt)に変換し、タイミング遅延回路2104へ入力し、遅延回路を構成する。これを繰り返し行い、Δtが最小になるように負帰還を構成する。
これによって、クロック・パルス生成部2100のクロックパルスにタイミング同期した信号を屋内送信機200に伝送することが可能である。また、伝送系遅延のみならず、屋内送信機200内部のクロック生成遅延およびジッターを含めた補正が可能である。
この遅延補正技術は屋内送信機200を同期運転する場合に、ケーブル遅延などの誤差要因を自動的に補正し、常に補正状態を監視することで、システムの信頼性を向上させることができる。
なお、他の屋内送信機200−2〜200−4についても、それぞれ独立に遅延量の調整が行われる。
[位置情報提供装置100−1(受信機)の構成]
図13を参照して、位置情報提供装置100について説明する。図13は、位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
位置情報提供装置100は、アンテナ402と、アンテナ402に電気的に接続されているRF(Radio Frequency)フロント回路404と、RFフロント回路404に電気的に接続されているダウンコンバータ406と、ダウンコンバータ406に電気的に接続されているA/D(Analog to Digital)コンバータ408と、A/Dコンバータ408に電気的に接続されているベースバンドプロセッサ410と、ベースバンドプロセッサ410に電気的に接続されているメモリ420と、ベースバンドプロセッサ410に電気的に接続されているナビゲーションプロセッサ430と、ナビゲーションプロセッサ430に電気的に接続されているディスプレイ440とを備える。
メモリ420は、測位信号の各発信源を識別するためのデータである、擬似雑音符号の符号パターンを格納する複数の領域を含む。一例として、ある局面において、48個の符号パターンが用いられる場合には、メモリ420は、図13に示されるように、領域421−1〜421−48を含む。また、他の局面において、それ以上の符号パターンが使用される場合には、さらに多くの領域がメモリ420に確保される。逆に、メモリ420に確保された領域の数よりも少ない符号パターンが使用される場合もあり得る。
一例として48個の符号パターンが用いられる場合において、たとえば、24個の衛星が衛星測位システムに用いられる場合、各衛星を識別する24個の識別データと、12個の予備のデータとが、領域421−1〜421−36に格納されている。たとえば、領域421−1〜421−32は、GPS衛星用のデータの格納のために用いられる領域であって、予備領域も含む。このとき、たとえば、領域421−1には、第1の衛星についての擬似雑音符号の符号パターンが格納されている。ここから、符号パターンを読み出して、受信信号との相互相関処理を行なうことにより、信号の追跡や、信号に含まれる航法メッセージの解読を行なうことができる。なお、ここでは、符号パターンを格納して読み出す方法を例示的に示したが、符号パターン生成器により符号パターンを生成する方法も可能である。符号パターン生成器は、たとえば、2つのフィードバックシフトレジスタを組み合わせることにより実現される。なお、符号パターン生成器の構成および動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは、それらの詳細な説明は、繰り返さない。
同様に、測位信号を発信する屋内送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域421−37〜421−46に格納される。たとえば、第1の屋内送信機についての割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域421−37に格納されている。この場合、本実施の形態においては、PRN−173〜PRN−182まで10個の符号パターン有する屋内送信機が使用可能となるが、同一の位置情報提供装置が受信可能な範囲に同一の符号パターンを使用する屋内送信機がないように、各屋内送信機をそれぞれ配置するのが好ましい。このようにすることによって、11台以上の屋内送信機を、たとえばビル130の同一のフロアに設置することも可能になる。なお、各屋内送信機が使用可能な符号パターンは、例示であって、これらに限られない。各符号パターンは、たとえば、IS−GPS−200に示される割り当てに基づいて特定される。
また、上述のとおり、L1C互換信号を受信する場合には、メモリ420には、バンクI00〜I10、Q00〜Q08にそれぞれ対応した記憶領域が設定される。
ベースバンドプロセッサ410は、A/Dコンバータ408から出力される信号の入力を受け付けるコリレータ部412と、コリレータ部412の動作を制御する制御部414と、制御部414から出力されるデータに基づいて測位信号の発信源を判断する判断部416とを含む。
なお、ユーザによる指定によって、動作モードが上述したADR差分による位置測定を行うモードに指定されている場合は、ベースバンドプロセッサにおいては、受信クロック部416から供給されるクロック信号に対して、ドップラー処理部418が、ドップラー効果にともなうADR差分値を算出することにより、当該ADR差分値を制御部414に与える。
ナビゲーションプロセッサ430は、判断部416から出力される信号に基づいて屋外における位置情報提供装置100の位置を測定するための屋外測位部432と、判断部416から出力されるデータに基づいて屋内における位置情報提供装置100の位置を表わす情報を導出するための屋内測位部434とを含む。このとき、屋内測位部434は、ADR差分による測位を行う場合には、制御部414および判断部416からのADR差分値にも基づいて、測位を行う。
アンテナ402は、GPS衛星110,111,112からそれぞれ発信された測位信号および屋内送信機200から発信された測位信号をそれぞれ受信することができる。また、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、アンテナ402は、前述の信号に加えて、無線電話のための信号あるいはデータ通信のための信号を送受信することもできる。
RFフロント回路404は、アンテナ402によって受信された信号を受けて、ノイズの除去あるいは予め規定された帯域幅の信号のみを出力するフィルタ処理などを行なう。RFフロント回路404から出力される信号は、ダウンコンバータ406に入力される。
ダウンコンバータ406は、RFフロント回路404から出力される信号を増幅し、中間周波数信号として出力する。この信号は、A/Dコンバータ408に入力される。A/Dコンバータ408は、入力された中間周波数信号をデジタル変換処理し、デジタルデータに変換する。デジタルデータは、ベースバンドプロセッサ410に入力される。
ベースバンドプロセッサ410において、コリレータ部412は、制御部414がメモリ420から読み出した符号パターンと、受信信号との相関処理を行なう。たとえば、コリレータ部412は、制御部414が提供する符号位相が1ビット異なる2種類の符号パターンと、A/Dコンバータ408から送出されるデジタルデータとのマッチングを行なう。コリレータ部412は、各コードパターンを用いて、位置情報提供装置100が受信した測位信号を追跡し、当該測位信号のビット配列に一致する配列を有するコードパターンを特定する。これにより、擬似雑音符号の符号パターンが特定されるため、位置情報提供装置100は、受信された測位信号がどの衛星から送信されたものか、あるいは、屋内送信機から送信されたかを判別できる。また、位置情報提供装置100は、特定された符号パターンを用いて、復調とメッセージの解読とをすることができる。
具体的には、判断部416は、上述のような判断を行ない、その判断の結果に応じたデータをナビゲーションプロセッサ430に送出する。判断部416は、受信された測位信号に含まれるPRN−IDがGPS衛星に搭載される送信機以外の送信機に割り当てられたPRN−IDであるか否かを判断する。
ここで、一例として、24個のGPS衛星が測位システムに使用される場合について説明する。この場合、予備のコードを含めると、たとえば、36個の擬似雑音符号が使用される。この時、PRN−01〜PRN−24が、各GPS衛星を識別する番号(PRN−ID)として使用され、PRN−25〜PRN−36が、予備の衛星を識別する番号として使用される。予備の衛星とは、当初打ち上げられた衛星以外に改めて打ち上げられる衛星である。すなわち、このような衛星は、GPS衛星あるいはGPS衛星に搭載された送信機等の故障に備えて打ち上げられる。
さらに、仮に、12個の擬似雑音符号の符号パターンがGPS衛星に搭載される送信機以外の送信機(たとえば、屋内送信機200等)に割り当てられる。この時、衛星に割り当てられたPRN−IDとは異なる番号、たとえばPRN−173〜PRN−182が、各送信機ごとに割り当てられる。したがって、この例では、48個のPRN−IDが存在することになる。ここで、PRN−173〜PRN−182は、たとえば各屋内送信機の配置に応じて当該屋内送信機に割り当てられる。したがって、仮に、各屋内送信機から発信される信号が干渉しない程度の送信出力が使用される場合には、同一のPRN−IDが異なる屋内送信機に用いられてもよい。このような配置により、地上用の送信機のために割り当てられたPRN−IDの数よりも多くの数の送信機が、使用可能となる。
そこで、判断部416は、メモリ420に格納されている擬似雑音符号の符号パターンを参照して、受信された測位信号から取得された符号パターンが、屋内送信機に割り当てられている符号パターンに一致するか否かを判断する。これらの符号パターンが一致する場合には、判断部416は、その測位信号が屋内送信機から発信されたものであると判断する。そうでない場合には、判断部416は、その信号がGPS衛星から発信されたものと判断し、その取得された符号パターンが、どの衛星に割り当てられた符号パターンであるかを、メモリ420に格納されている符号パターンを参照して決定する。なお、判断の態様として、符号パターンが使用される例が示されているが、その他のデータの比較によって、上記の判断が行なわれてもよい。たとえば、PRN−IDを用いた比較が、その判断に使用されてもよい。
そして、受信された信号が各GPS衛星から発信されたものである場合には、判断部416は、特定された信号から取得されるデータを屋外測位部432に送出する。信号から取得されるデータには、航法メッセージが含まれる。一方、受信された信号が屋内送信機200などから発信されたものである場合には、判断部416は、その信号から取得されるデータを屋内測位部434に送出する。このデータは、すなわち屋内送信機200の位置を特定するためのデータとして予め設定された座標値である。あるいは、別の局面において、当該送信機を識別する番号が用いられてもよい。
ナビゲーションプロセッサ430において、屋外測位部432は、判断部416から送出されたデータに基づいて位置情報提供装置100の位置を算出するための処理を実行する。具体的には、屋外測位部432は、3つ以上のGPS衛星(好ましくは、4つ以上)から発信された信号に含まれるデータを用いて、各信号の伝播時間を計算し、その計算結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を算出する。この処理は、公知の衛星測位の手法を用いて実行される。この処理は、当業者にとっては容易に理解できるものである。したがって、ここではその説明の詳細は繰り返さない。
一方、ナビゲーションプロセッサ430において、屋内測位部434は、判断部416から出力されたデータに基づいて位置情報提供装置100が屋内に存在する場合における測位処理を実行する。後述するように、屋内送信機200は、場所を特定するためのデータ(位置特定データ)が含まれる測位信号を発信する。そこで、位置情報提供装置100がそのような信号を受信した場合には、その信号に含まれるデータを取り出し、そのデータを用いて位置情報提供装置100の位置とすることができる。屋内測位部434は、この処理を行なう。さらに、上述した周知のADRデータを用いることで、屋内であっても高精度な測位を実現できる。
屋外測位部432によって算出されたデータ、あるいは、屋内測位部434によって読み取られたデータは、ディスプレイ440における表示のために用いられる。具体的には、これらのデータは、画面を表示するためのデータに組み込まれ、計測された位置を表わす画像あるいは屋内送信機200が設置されている場所を表示するための画像が生成され、ディスプレイ440によって表示される。
また、位置情報提供装置100は、制御部414の制御の下に、外部との間、たとえば、位置情報提供サーバ(図示せず)との間で、データを授受するための通信部450を備える。
図13に示した構成において、特に限定されないが、測位信号受信からディスプレイに表示される情報の生成までの信号処理において、アンテナ402、RFフロント回路404、ダウンコンバータ406、A/Dコンバータ408は、ハードウェア(フロントエンド部400)により構成され、ベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430の処理は、メモリ420に格納されたプログラムにより実行することができる。なお、コリレータ部412の処理については、ソフトウェアの代わりにハードウェアにより実現される構成とすることもできる。
図14は、ドップラー処理部418が行う処理を説明するための概念図である。なお、この処理は、当業者にとっての技術常識であるため、処理の概要を以下に説明する。
図14を参照して、フロントエンド部400から入力された受信コード信号は、メモリ420から制御部414がクロックに同期して読み出したレプリカコードとコリレータ部412において捕捉追跡される。しかし、受信コード信号にドップラー効果が含まれている場合、相関値を得るための同期がずれる。そこで、受信クロック部416からの信号をドップラー数値制御発振器(以下「ドップラーNCO」と表わす。)4182からの信号と乗算器4184により乗算して変調する。ここで、ドップラーNCO4182の発信周波数はコリレータ部412からの相関強度データに応じて変化させる。これにより、受信コードとレプリカコードの相関をとる処理がタイミングがとれていれば、相関値を得ることができる。したがって、一度、得られた相関については、その相関が得られる状態を維持するようにドップラーNCO4182を制御する。たとえば、位置情報提供装置100(たとえば測位機能付き携帯電話、いわゆるGPS端末等)を携帯したユーザが屋内送信機200の位置から屋内送信機200−2に近づいていく場合に、ドップラーNCO4182からの信号をドップラー積算器4186で積算することで、ADRデータが得られる。このADRデータを用いることで、周波数位相情報を得ることができ、レンジングを行うことが可能となる。
以下、ADRの値に基づいて、レンジングを行なう処理について説明する。
図15を参照して、位置情報提供装置100の制御処理について説明する。図15は、位置情報提供装置100のベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
ステップS610にて、位置情報提供装置100は、測位信号を取得(追尾、捕捉)する。具体的には、ベースバンドプロセッサ410は、A/Dコンバータ408から、受信された測位信号(デジタル変換処理後のデータ)の入力を受け付ける。ベースバンドプロセッサ410は、擬似雑音符号のレプリカとして、可能な遅延が反映された符号位相が異なる符号パターンを生成し、その符号パターンと受信された測位信号との相関の有無をそれぞれ検出する。生成される符号パターンの数は、たとえば、符号パターンのビット数の2倍である。一例として、たとえば、チップレートが1023ビットである場合、2分の1ビットずつの遅延、すなわち符号位相差を有する2046個の符号パターンが生成され得る。そして、各符号パターンを用いて、受信された信号との相関を取る処理が、実行される。ベースバンドプロセッサ410は、当該相関処理において、予め規定された強度以上の出力が検出された場合に、その符号パターンをロックし、当該符号パターンによって、その測位信号を発信した衛星を特定することができる。当該符号パターンのビット配列を有する擬似雑音符号は、1つしか存在しない。これにより、受信された測位信号をスペクトラム拡散符号化するために使用された擬似雑音符号が特定される。
なお、後述するように、受信によって取得された信号と、受信機である位置情報提供装置100の符号パターンとの相関を取るための処理は、並列処理としても実現可能である。
ステップS612にて、ベースバンドプロセッサ410は、その測位信号の発信源を特定する。具体的には、判断部416が、その信号を生成するために変調時に使用された擬似雑音符号の符号パターンを使用する送信機に対応付けられるPRN−IDに基づいて(たとえば、図13におけるメモリ420)、その信号の発信源を特定する。その測位信号が屋外から発信されたものである場合には、制御はステップS620に移される。その測位信号が屋内において発信されたものである場合には、制御はステップS630に移される。受信した複数の信号が屋外および屋内のそれぞれから発信されたものを含む場合には、制御はステップS640に移される。
ステップS620にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、ナビゲーションプロセッサ430の屋外測位部432は、その測位信号に対して、メモリ420に一時的に保存されていた符号パターン(前述の「ロック」が行なわれた符号パターン、以下「ロックした符号パターン」という。)を用いて重畳することにより、その信号を構成するサブフレームから、航法メッセージを取得する。ステップS622にて、屋外測位部432は、取得した4つ以上の航法メッセージを用いて位置を算出するための通常の航法メッセージ処理を実行する。
ステップS624にて、屋外測位部432は、その処理の結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を計算するための処理を実行する。たとえば、位置情報提供装置100が、4つ以上の衛星から発信された各測位信号を受信している場合には、距離の算出は、各信号から復調された航法メッセージに含まれる各衛星の軌道情報、時刻情報等を用いて行なわれる。
また、他の局面において、ステップS612において、位置情報提供装置100が、衛星によって発信された測位信号(屋外信号)と屋内発信機からの信号(屋内信号)とを受信している場合には、ステップS640にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋外測位部432は、ベースバンドプロセッサ410によって送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレーム中のデータを取得する。この場合、位置情報提供装置100は、衛星からの信号および屋内送信機からの信号を受信していることになるため、いわば「ハイブリッド」モードとして作動していることになる。したがって、各衛星からの信号については、測位のためのデータが取得され、あるいはレンジングのためのデータが取得される。屋内送信機からの信号については、上記座標値その他の位置情報を有するデータが取得される。すなわち、ステップS642にて、屋内測位部434は、屋内送信機200によって発信された測位信号から、X座標値563、Y座標値564、Z座標値565を取得する処理を行ない、また、GPS衛星によって発信された測位信号から航法メッセージを取得し、処理を行なう。その後、制御は、ステップS624に移される。この場合、ステップS624では、位置の算出に用いる信号を決定するための振り分けが、たとえば、屋内信号および屋外信号の強度に基づいて行なわれる。一例として、屋内信号の強度が屋外信号の強度よりも大きい場合には、屋内信号が選択され、当該屋内信号に含まれる座標値が、位置情報提供装置100の位置とされる。
一方、ステップS612にて、測位信号の発信源が屋内である場合、たとえば、屋内信号の強度が所定のレベル以上である場合に、続いて、ステップS630にて、判断部414は、その信号がL1C/A信号およびL1C信号のいずれであるかを判断する。その信号がL1C/A信号である場合、制御はステップS631に切り換わる。その信号がL1C信号である場合、制御はステップS632に切り換わる。
ステップS631にて、判断部414は、その測位信号のメッセージタイプを判断する。メッセージタイプが0(図30)又は1(図31)である場合には、制御はステップS633に切り換わる。メッセージタイプが3(図32)又は4(図33)である場合には、制御はステップS636に切り換わる。
ステップS632にて、判断部は、その測位信号がI相およびQ相のいずれであるかを判断する。その測位信号がI相である場合には、制御はステップS633に切り換わる。その測位信号がQ相である場合には、制御はステップS636に切り換わる。
ステップS633において、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋内測位部434は、ベースバンドプロセッサ410から送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレームから、メッセージデータを取得する。このメッセージデータは、衛星から送信される測位信号に含まれる航法メッセージに代えて、屋内送信機によって発信される測位信号に含まれるものである。したがって、メッセージデータのフォーマット長は、航法メッセージのフォーマット長と同じであることが好ましい。
ステップS634にて、屋内測位部434は、そのデータから座標値(すなわち、屋内送信機の設置場所を特定するためのデータ(たとえば、図8の信号560におけるX座標値563、Y座標値564、Z座標値565))を取得する。なお、このような座標値に加えて、設置場所あるいは設置場所の住所を表わすテキスト情報がフレームに含まれている場合には、当該テキスト情報が取得される。その後、処理はステップS650に移行する。ここで、ADR差分によるレンジングを行うことが指定されている場合には、得られた座標値とADRの値とにより、測位が行われる。
一方、ステップS630において、L1C/A信号またはL1C信号の受信モードである場合は、続いて、ステップS636において、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータ(送信機ID)を取得する。ステップS638において、位置情報提供装置100は、この送信機IDをネットワークを介して送信することで、サーバ(図示せず)から、当該送信機IDに対応する位置情報を受信する。
ステップS650にて、ナビゲーションプロセッサ430は、位置の算出結果に基づいてディスプレイ440に位置情報を表示させるための処理を実行する。具体的には、取得された座標を表示するための画像データあるいは屋内送信機200の設置場所を表示するためのデータを生成し、ディスプレイ440に送出する。ディスプレイ440は、そのようなデータに基づいて表示領域に位置情報提供装置100の位置情報を表示する。
[画面の表示]
図16を参照して、位置情報提供装置100の位置情報の表示態様について説明する。図16は、位置情報提供装置100のディスプレイ440における画面の表示を表わす図である。位置情報提供装置100が、屋外において、各GPS衛星から発信された測位信号を受信すると、ディスプレイ440は、位置情報が当該測位信号に基づいて取得されていることを表わすアイコン710を表示する。その後、位置情報提供装置100の使用者が屋内に移動した場合、位置情報提供装置100は、各GPS衛星から発信された測位信号を受信できなくなる。代わりに位置情報提供装置100は、たとえば屋内送信機200によって発信された信号を受信する。この信号は、上述のように、GPS衛星から発信される測位信号と同じ方式によって送信されている。したがって、位置情報提供装置100は、衛星から測位信号を受信した場合に実行する処理と同様の処理を当該信号に対して行なう。位置情報提供装置100が、当該信号から位置情報を取得すると、当該位置情報は屋内に設置された送信機から発信された信号に基づいて取得されたことを表わすアイコン720をディスプレイ440に表示する。
以上のようにして、本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供装置100は、屋内あるいは地下街のように、GPS衛星からの電波を受信できない場所においては、その場所に設置された送信機(たとえば、屋内送信機200−1,200−2,200−3)から発信された電波を受信する。位置情報提供装置100は、その電波から、当該送信機の位置を特定する情報(たとえば、座標値、住所)を取得し、ディスプレイ440に表示する。これにより、位置情報提供装置100の使用者は、現在の位置を知ることができる。このようにすると、測位信号を直接受信できないような場所においても、位置情報が提供されることになる。
これにより、屋内における信号の安定な受信が確保される。また、屋内においても、数m程度の安定した精度によって位置情報の提供が可能になる。
また、地上時刻(屋内送信機200等の送信機の時刻)と衛星時刻とは、互いに独立でよく、同期している必要は必ずしもない。したがって、屋内送信機を製造するためのコストの増加を抑制することができる。また、位置情報提供システムが運用された後も、屋内送信機の時刻を同期させる必要がないため運用も容易になる。また、逆に、仮に衛星時刻と地上時刻とを同期させることが必要なシステムに屋内送信機200が使用されるときには、屋内送信機200自身は簡単な回路構成で、このような同期を実現することもできる。
各屋内送信機から発信される各々の信号には、当該送信機が設置されている場所を特定するための情報そのものが含まれているため、複数の衛星から発信された各信号に基づいて位置情報を算出する必要がなく、したがって、単一の送信機から発信された信号に基づいて位置情報を導出することができる。
また、単一の屋内送信機から発信された信号を受信することにより、その信号の受信場所の位置が特定できるため、GPSその他の従来の測位システムよりも、位置を提供するためのシステムを容易に実現することができる。
この場合、位置情報提供装置100は、屋内送信機200によって発信される信号を受信するための専用のハードウェアを必要とせず、従来の測位システムを実現するハードウェアを用いて、信号処理についてはソフトウェアを変更することで実現可能である。したがって、本実施の形態に係る技術を適用するためのハードウェアをゼロから設計する必要がないため、位置情報提供装置100のコストの増加が抑制され、普及し易くなる。また、たとえば回路規模の増大化あるいは複雑化が防止される位置情報提供装置が提供される。
具体的には、位置情報提供装置100のメモリ420は、屋内送信機および/または衛星について予め規定されたPRN−IDを保持している。位置情報提供装置100は、受信した電波が衛星から発信されたものであるか、屋内送信機から発信されたものであるかをそのPRN−IDに基づいて判断するための処理をプログラムに基づいて動作する。このプログラムは、ベースバンドプロセッサのような演算処理装置によって実現される。あるいは、判断のための回路素子を、当該プログラムによって実現される機能を含む回路素子に変更することにより、位置情報提供装置100が構成され得る。
さらに、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、その取得した情報をフラッシュメモリのような不揮発性のメモリ420に保持しておいてもよい。そして、携帯電話の発信が行なわれた際に、メモリ420に保持されたデータを発信先に送信するようにしてもよい。このようにすると、発信元の位置情報、すなわち携帯電話としての位置情報提供装置100が屋内送信機から取得した位置情報が、通話を中継する基地局に送信される。基地局は、その位置情報を受信日時とともに通話記録として保存する。また、発信先が緊急連絡先(たとえば、日本における110番)である場合には、発信元の位置情報がそのまま通知されてもよい。これにより、従来の固定電話からの緊急連絡時における発信元の通知と同様に、移動体からの発信元の通知が実現される。
また、特定の場所に設置される送信機に関し、GPS衛星、ガリレオその他の測位衛星に搭載される送信機が発信する信号と同様の信号を発信できる送信機によって、位置情報提供システムが実現される。したがって、送信機をゼロから新たに再設計する必要がなくなる。
本実施の形態に係る位置情報提供システムは、測位のための信号としてスペクトラム拡散信号を用いる。この信号の送信によれば、周波数あたりの電力を下げることができるため、たとえば、従来のRFタグに比べて、電波の管理が容易になると考えられる。その結果、位置情報提供システムの構築が容易になる。
また、屋内送信機200は、設置後において、無線I/F210により、設定パラメータを変更できる。このため、設置場所を特定するための位置特定データを、設置後に一括して書き換えるなど設置手続きを簡略化できる。また、メッセージとして送信する情報のうち、「宣伝広告用のデータ」「交通情報」「気象情報」「災害情報」などをリアルタイムに書き換えて、受信機に提供できるので、さまざまなサービスを実現できる。それのみならず、屋内送信機200は、信号処理を行うためのFPGA245のファームウェア自体を書き換えることが可能である。このため、同一のハードウェアをさまざまな測位システムの通信方式(変調方式等)において使用することが可能である。
また、デジタル帯域制限フィルタにより、送信される信号の帯域を選択的に制限できるので、他のシステムとの干渉を抑制でき、周波数利用効率が高められる。
また、I相信号とQ相信号とで、異なる情報を提供できるので、状況に応じた柔軟な位置情報の提供が可能となる。I相信号とQ相信号との振幅を個別に調整できるので、直交だけでなく、異なった位相の変調が可能となる。また、送信レベルを可変としているので、設置場所に応じて、たとえば、日本の電波法のような電波使用を規制する法令等の規制以下の送信電力とできるので、設置のために特別の免許が不要となる。
<第1の変形例>
位置情報提供装置100が備えるコリレータ部412の構成に代えて、複数のコリレータが用いられてもよい。この場合、測位信号をレプリカにマッチングさせるための処理が同時並行して実行されるため、位置情報の算出時間が短くなる。
本変形例に係る位置情報提供装置1000は、アンテナ1010と、アンテナ1010に電気的に接続されるバンドパスフィルタ1020と、バンドパスフィルタ1020に電気的に接続されるローノイズアンプ1030と、ローノイズアンプ1030に電気的に接続されるダウンコンバータ1040と、ダウンコンバータ1040に電気的に接続されるバンドパスフィルタ1050と、バンドパスフィルタ1050に電気的に接続されるA/Dコンバータ1060と、A/Dコンバータ1060に電気的に接続される複数のコリレータからなる並列コリレータ1070と、並列コリレータ1070に電気的に接続されるプロセッサ1080と、プロセッサ1080に電気的に接続されるメモリ1090とを含む。
並列コリレータ1070は、n個のコリレータ1070−1〜1070−nを含む。各コリレータは、プロセッサ1080から出力される制御信号に基づいて、受信された測位信号と測位信号を復調するために生成されたコードパターンとのマッチングを同時に実行する。
具体的には、プロセッサ1080は、各並列コリレータ1070の各々に対して、擬似雑音符号において生じ得る遅延を反映させた(符号位相をずらした)符号パターンを生成する指令を与える。この指令は、たとえば、現行GPSでは、衛星の数×2×1023(用いられる擬似雑音符号の符号パターンの長さ)となる。各並列コリレータ1070は、各々に与えられた指令に基づいて、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンを用いて符号位相の異なる符号パターンを生成する。そうすると、生成された全ての符号パターンの中には、受信された測位信号の変調に使用された擬似雑音符号の符号パターンに一致するものが1つ存在する。そこで、各符号パターンを用いたマッチング処理を行なうために必要な数のコリレータを並列コリレータ1070として予め構成することにより、瞬時に、擬似雑音符号の符号パターンを特定することができる。この処理は、位置情報提供装置100が屋内送信機からの信号を受信する場合にも同様に適用できる。したがって、位置情報提供装置100の使用者が屋内にいる場合でも、その位置情報を瞬時に取得することができる。
つまり、並列コリレータ1070は、最大で、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンと各屋内送信機について規定された擬似雑音符号の符号パターンとのすべてについて、並列して、マッチングをとることが可能である。また、コリレータの個数と、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンの個数との関係により、各衛星と各屋内送信機とについて規定された擬似雑音符号の符号パターンのすべてについて、一括して、マッチングを採らない場合でも、複数のコリレータによる並列処理により、大幅に、位置情報の取得に要する時間を短縮できる。
ここで、衛星および屋内送信機は、同一の通信方式であるスペクトラム拡散方式で信号を送信しており、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンが同一系列のものを使用できるので、並列コリレータについては、衛星からの信号および屋内送信機からの送信の双方について共用することができ、受信処理は、両者について特段に区別することなく、並行して行うことができる。
なお、図17の位置情報提供装置1000においても、特に限定されないが、測位信号受信からディスプレイ(図17では図示せず)に表示される情報の生成までの信号処理において、アンテナ1010、バンドパスフィルタ1020、低雑音アンプ(LNA)1030、ダウンコンバータ1040、バンドパスフィルタ1050、A/Dコンバータ1060、コリレータ1070は、ハードウェアにより構成され、測位のための演算処理(図15で説明される制御処理)は、メモリ1090に格納されたプログラムによりプロセッサ1080が実行することができる。
また、図17の構成においても、プロセッサ1080がメモリ1090からレプリカコードを読み出してコリレータ1070に与えるタイミングについて、図13および図14で説明したようなドップラー効果に対する補正をドップラー処理部418により行うこととして、ADRデータを取得し、ADRによるレンジングを行う構成とすることが可能である。
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態に係る位置情報提供システムは、複数の屋内送信機が取り付けられている点で、第1の実施の形態と異なる。
図18は、本発明の第2の実施の形態に係る位置情報提供装置の使用態様を表わす図である。図18を参照して、屋内送信機1110,1120,1130がそれぞれ同一フロアの天井に取り付けられている。各屋内送信機は、前述の屋内送信機200と同様の処理を実行する。すなわち、各屋内送信機は、各々が取り付けられている場所を表わすデータが含まれる測位信号を発信する。
この場合、屋内送信機の取り付け位置によっては隣接する各屋内送信機からそれぞれ発信された信号をいずれも受信できる領域(すなわち空間)が存在する。たとえば、領域1140は、屋内送信機1110および1120の各々から発信された信号を受信できる領域である。同様に、領域1150は、屋内送信機1120および1130によってそれぞれ発信された測位信号を受信可能な領域である。
そこで、たとえば、本発明に係る位置情報提供装置1160が、図18に示される位置に存在する場合、位置情報提供装置1160は、屋内送信機1110から発信された信号に含まれる、屋内送信機1110の取り付け位置を表わすためのデータを、位置情報提供装置1160の位置として取得できる。その後、位置情報提供装置1160の使用者が、たとえば領域1140に該当する位置に移動すると、位置情報提供装置1160は、屋内送信機1110に加えて屋内送信機1120によって発信された信号も受信できる。この場合、いずれの信号に含まれる位置特定データを位置情報提供装置1160の位置として決定するかは、たとえば受信された信号の強度に基づいて2つの屋内送信機の重み付けを再計算することにより、決定できる。たとえば,各屋内送信機の出力レベルが2ビットで設定される構成である場合には、当該屋内送信機は、4段階の出力レベルを有することになる。このような場合、複数の屋内送信機から発信された信号が受信された場合には、その中で最も受信強度が大きな値を有するデータを、その位置情報の表示のために用いればよい。仮に、各信号の強度が同一である場合には、それらの信号に含まれるデータの算術和を導くことにより、位置情報提供装置1160の位置としてもよい。
以上のようにして、本実施の形態に係る位置情報提供装置1160によれば、測位のための複数の信号を屋内で受信した場合であっても、いずれかの信号の発信源を特定できるため、その発信源、すなわち屋内に設置された送信機の取り付け位置も特定できる。
なお、ここで「屋内」とは、ビルその他の建築物の内部に限られず、GPS衛星から発信された電波が受信できない場所であればよい。そのような場所は、たとえば、地下街、鉄道の車両等も含む。
この場合は、1つの屋内送信機のカバーする領域の大きさを制限できるので、屋内送信機からの送信信号強度を大きくする必要がなく、日本の電波法のような電波使用を規制する法令等の規制以下の送信電力とするのが容易で、屋内送信機の設置のために特別の免許が不要となる。
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る位置情報提供装置は、屋内送信機に含まれるデータに基づいて位置を特定する代わりに、その送信機を識別するためのデータを、その送信機に関する情報を提供する装置に送信する場合に、位置情報を取得できる処理を携帯電話網を用いた通信とする。したがって、第1の実施の形態または第2の実施の形態の位置情報提供装置を携帯電話機を用いて実現できる。
なお、衛星からの測位信号に基づいて、位置の測位をする構成については共通であるので、以下では、主として、送信機IDを屋内送信機から受信した場合の動作について説明する。
図19は、本実施の形態に係る位置情報提供装置の使用態様を表わす図である。当該位置情報提供装置は、携帯電話1200として実現される。携帯電話1200は、屋内送信機1210によって発信された測位信号を受信できる。屋内送信機1210は、インターネット1220に接続されている。インターネット1220には、屋内送信機1210の情報を提供可能な情報提供サーバ1230が接続されている。情報提供サーバ1230には、複数の送信機IDとこれらにそれぞれ対応する位置情報とがデータベースに登録されているものとする。インターネット1220には、携帯電話1200との通信を行なう基地局1240も接続されている。
携帯電話1200が、屋内送信機1210によって発信された信号を受信すると、その信号の中から、屋内送信機1210を識別するための送信機IDを取得する。送信機IDは、たとえば、屋内送信機1210によって発信された信号中のメッセージに含まれている。携帯電話1200は、その送信機IDを(あるいはPRN−IDとともに)情報提供サーバ1230に対して送信する。具体的には、携帯電話1200は基地局1240との間で通信を開始し、取得した送信機IDが含まれるパケットデータを、情報提供サーバ1230に送出する。
情報提供サーバ1230は、その送信機IDを認識すると、送信機IDに関連付けられているデータベースを参照して、そのIDに関連する位置特定データを読み出す。情報提供サーバ1230が、そのデータを基地局1240に対して送信すると、基地局1240は、そのデータを発信する。携帯電話1200は、そのデータの着信を検知すると、携帯電話1200の使用者による閲覧操作に従って、そのデータから、送信機1210の位置およびその他の情報を取得することができる。
ここで、図20を参照して、携帯電話1200の構成について説明する。図20は、携帯電話1200のハードウェア構成を表わすブロック図である。携帯電話1200は、各々が電気的に接続された、アンテナ1308と、通信装置1302と、CPU1310と、操作ボタン1320と、カメラ1340と、フラッシュメモリ1344と、RAM1346と、データ用ROM1348と、メモリカード駆動装置1380と、音声信号処理回路1370と、マイク1372と、スピーカ1374と、ディスプレイ1350と、LED(Light Emitting Diode)1376と、データ通信IF1378と、バイブレータ1384とを含む。
アンテナ1308によって受信された信号は、通信装置1302によってCPU1310に転送される。CPU1310は、その信号を音声信号処理回路1370に転送する。音声信号処理回路1370は、その信号に対して予め規定された信号処理を実行し、スピーカ1374に処理後の信号を送出する。スピーカ1374は、その信号に基づいて音声を出力する。
マイク1372は、携帯電話1200に対する発話を受け付けて、発話された音声に対応する信号を音声信号処理回路1370に対して出力する。音声信号処理回路1370は、その信号に基づいて通話のために予め規定された信号処理を実行し、処理後の信号をCPU1310に対して送出する。CPU1310は、その信号を送信用のデータに変換し、通信装置1302に対して送出する。通信装置1302がアンテナ1308を介してその信号を発信すると、基地局1240は、その信号を受信する。
フラッシュメモリ1344は、CPU1310から送られるデータを格納する。逆に、CPU1310は、フラッシュメモリ1344に格納されているデータを読み出し、そのデータを用いて予め規定された処理を実行する。
RAM1346は、操作ボタン1320に対して行なわれた操作に基づいてCPU1310によって生成されるデータを一時的に保持する。データ用ROM1348は、携帯電話1200に予め定められた動作を実行させるためのデータあるいはプログラムを格納している。CPU1310は、データ用ROM1348から当該データあるいはプログラムを読み出し、携帯電話1200に予め定められた処理を実行させる。
メモリカード駆動装置1380は、メモリカード1382の装着を受け付ける。メモリカード駆動装置1380は、メモリカード1382に格納されているデータを読み出し、CPU1310に送出する。逆に、メモリカード駆動装置1380は、CPU1310によって出力されるデータを、メモリカード1382において確保されたデータ格納領域にデータを書き込む。
音声信号処理回路1370は、前述のような通話に用いられる信号に対する処理を実行する。なお、CPU1310と音声信号処理回路1370とフラッシュメモリ1344とRAM1346とデータ用ROM1348とメモリカード駆動装置1380とが一体として構成されていてもよい。
ディスプレイ1350は、CPU1310から出力されるデータに基づいてそのデータによって規定される画像を表示する。たとえば、フラッシュメモリ1344が情報提供サーバ1230にアクセスするためのデータ(たとえばURL)を格納している場合、ディスプレイ1350は、そのURLを表示する。
LED1376は、CPU1310からの信号に基づいて予め定められた発光動作を実現する。たとえば、LED1376が複数の色を表示可能な場合には、LED1376は、CPU1310から出力される信号に含まれるデータに基づいて、そのデータに関連付けられている色で発光する。
データ通信IF1378は、データ通信用のケーブルの装着を受け付ける。データ通信IF1378は、CPU1310から出力される信号を当該ケーブルに対して送出する。あるいは、データ通信IF1378は、当該ケーブルを介して受信されるデータをCPU1310に対して送出する。
バイブレータ1384は、CPU1310から出力される信号に基づいて予め定められた周波数で発振動作を実行する。携帯電話1200の基本的な動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
携帯電話1200は、さらに、測位信号受信用のアンテナ1316と、測位信号受信フロントエンド部1314とを備える。
ここで、測位信号受信フロントエンド部1314は、図13で説明した位置情報提供装置100の構成のうち、ハードウェアで実現されるとしたアンテナ402、RFフロント回路404、ダウンコンバータ406、A/Dコンバータ408を含む。一方、位置情報提供装置100の構成のうちソフトウェアで実現されるとしたベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430の処理は、フラッシュメモリ1344からRAM1346にロードされたプログラムによりCPU1310上の測位処理部1312が実行することができる。なお、ここでも、コリレータ部412の処理については、ソフトウェアの代わりにハードウェアにより実現される構成とすることもできる。なお、ハードウェアの構成およびソフトウェアの構成については、図17で説明した位置情報提供装置1000と同様の構成とすることもできる。
また、図20の構成においても、CPU1310がメモリ1344(またはRAM1346、ROM1348)からレプリカコードを読み出してコリレータに与えるタイミングについて、図13および図14で説明したようなドップラー効果に対する補正をドップラー処理部418により行うこととして、ADRデータを取得し、ADRによるレンジングを行う構成とすることが可能である。
図21を参照して、情報提供サーバ1230の具体的な構成について説明する。図21は、情報提供サーバ1230のハードウェア構成を表わすブロック図である。情報提供サーバ1230は、たとえば、周知のコンピュータシステムによって実現される。
情報提供サーバ1230は、主たるハードウェアとして、CPU1410と、情報提供サーバ1230の使用者による指示の入力を受け付けるマウス1420,キーボード1430と、CPU1410によるプログラムの実行により生成されたデータ、あるいはマウス1420もしくはキーボード1430を介して入力されたデータを一時的に格納するRAM1440と,大容量のデータを不揮発的に格納するハードディスク1450と,CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)駆動装置1460と、モニタ1480と、通信IF1470とを含む。当該ハードウェアは、相互にデータバスによって接続されている。CD−ROM駆動装置1460には、CD−ROM1462が装着される。
情報提供サーバ1230を実現するコンピュータシステムにおける処理は、当該ハードウェアおよびCPU1410によって実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスク1450に予め格納されている場合がある。また、ソフトウェアは、CD−ROM1462その他のデータ記録媒体に格納されて、プログラム製品として流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている他の情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラム製品として提供される場合もある。このようなソフトウェアは、CD−ROM駆動装置1460その他のデータ読取装置によってそのデータ記録媒体から読み取られて、あるいは通信IF1470を介してダウンロードされた後、ハードディスク1450に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU1410によってハードディスク1450から読み出され、RAM1440に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU1410は、そのプログラムを実行する。
図21に示される情報提供サーバ1230を実現するコンピュータシステムのハードウェアは、一般的なものである。したがって、本発明に係る情報提供サーバ1230の本質的な部分は、RAM1440、ハードディスク1450、CD−ROM1462その他のデータ記録媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるとも言える。なお、上記コンピュータシステムのハードウェアの動作は周知である。したがって、詳細な説明は繰り返さない。
なお、記録媒体としては、前述のCD−ROM1462、ハードディスク1450などに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持可能な媒体でもよい。
また、ここでいうプログラムとは、CPU1410によって直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラムなどを含む。
図22を参照して、情報提供サーバ1230に保持されるデータ構造について説明する。図22は、ハードディスク1450におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。ハードディスク1450は、データを格納するための領域1510〜1550を含む。
ハードディスク1450に格納されているデータレコードを識別するためのレコードNo.は、領域1510に格納されている。測位信号を発信する送信機を識別するための送信機IDは、領域1520に格納されている。その送信機が設置されている場所を表わすためのデータ(座標値)は、領域1530に格納されている。このデータは、たとえば各送信機が設置されるごとにハードディスク1450に格納されている。当該送信機が設置されている場所の具体的な名称は、領域、1540に格納されている。このデータは、たとえばハードディスク1450に格納されているデータを管理する管理者(あるいは情報提供サーバ1230を用いて位置情報を提供するサービスの提供者)が認識できるように用いられる。当該送信機が設置されている住所を表わすデータは、領域1550に格納されている。このデータも、領域1540に格納されているデータと同様に、管理者によって使用される。
情報提供サーバ1230による送信機の位置情報の提供は、以下のとおりである。携帯電話1200は、受信した信号から取得したメッセージに含まれる送信機IDと、情報提供サーバ1230にアクセスするためのデータ(URL等)とを用いて、位置情報を要求するパケットデータ(以下、「リクエスト」という。)を生成する。携帯電話1200は、そのリクエストを基地局1240に対して送信する。この送信は、公知の通信処理によって実現される。基地局1240は、そのリクエストを受信すると、情報提供サーバ1230に転送する。
情報提供サーバ1230は、そのリクエストの受信を検知する。CPU1410は、そのリクエストの中から送信機IDを取得し、ハードディスク1450を検索する。具体的には、CPU1410は、取得した送信機IDと、領域1520に格納されている送信機IDとが一致するか否かのマッチング処理を行なう。マッチング処理の結果、携帯電話1200から送信されたデータに含まれる送信機IDに一致する送信機IDが存在する場合には、CPU1410は、その送信機IDに関連付けられている座標値(領域1530)を読み出し、位置情報を携帯電話1200に返信するためのパケットデータを生成する。具体的には、CPU1410は、座標値を有するデータに加えて携帯電話1200のアドレスをヘッダに付加してパケットデータを生成する。CPU1410は、通信IF1470を介して、基地局1240に対してそのパケットデータを送信する。
基地局1240は、情報提供サーバ1230によって送信されたパケットデータを受信すると、そのデータに含まれるアドレスに基づいてパケットデータを発信する。なお、基地局1240は、受信したパケットデータと受信時刻とを不揮発性の記憶装置(たとえば、ハードディスク装置)に格納してもよい。これにより、携帯電話1200の使用者による位置情報の取得の履歴が残されるため、使用者が移動した経路も把握可能になる。
携帯電話1200が、基地局1240からの電波が届く範囲に存在する場合、基地局1240によって発信されたパケットデータを受信する。携帯電話1200の使用者が受信したデータを閲覧するために予め規定された操作(たとえば、電子メールを閲覧するための操作)を実行すると、ディスプレイ1350は、当該送信機の座標値を表示する。これにより、当該使用者は、大体の位置を知ることができる。このようにすると、屋内に設置される送信機の各々に対して座標値を予め登録する必要がないため、送信機の設置場所の変更をより柔軟に行なうことができる。
以上のようにして、本実施の形態に係る位置情報提供システムでも、地上に設置された送信機から発信される信号は、状況によって、当該送信機を識別するためのデータ(送信機ID)を含んでいる。このデータは、当該送信機の位置情報を提供するサーバ装置において、当該位置情報に関連付けられて格納されている。位置情報提供装置として機能する携帯電話1200は、送信機IDを当該サーバ装置に送信することにより、上記位置情報を取得する。このような情報の提供方法を利用した場合、送信機の位置情報を当該送信機自身に保持させる必要がないため、送信機の設置場所を容易に変更することができる。
<位置情報提供システムの構築>
次に、図23から図29を参照して、本発明の実施の形態に係る位置情報提供システムの構築を支援するための仕組みについて説明する。図23は、位置情報提供システムを構成する屋内送信機の設置場所の決定を支援する設定システム2300の使用態様を表わす図である。ある局面において、設定システム2300は、建物の設計情報と、地理的情報とをリンクすることにより、GIS(Geographic Information System:地理情報システム)として機能することができる。
設定システム2300は、ネットワーク2340に接続されている。ネットワーク2340には、クライアントPC(Personal Computer)2310,2320,2330と、IMES(Indoor Messaging System)設置検討システムデータベース2350とが接続されている。IMES設置検討システムデータベース2350には、遠隔監視システム2360が接続されている。遠隔監視システム2360は、VPN(Virtual Private Network)2370を介してローカル監視システム2380に接続されている。
設定システム2300とIMES設置検討システムデータベース2350とは、それぞれ周知の構成を有するコンピュータシステムによって実現される。たとえば、当該コンピュータシステムは、図21に示される構成を備える。他の局面において、設定システム2300とIMES設置検討システムデータベース2350とは、同一のコンピュータシステムによって実現されてもよい。IMES設置検討システムデータベース2350は、たとえば、フロアCAD(Computer-Aided Design)データと、フロア属性情報と、屋内NW(Network)データと、IMESパラメータ情報と、配置情報とを格納している。
フロアCADデータは、たとえば周知のCADシステムによって作成される。フロア属性情報は、屋内送信機が設置される特定の空間における属性を表わす。たとえば、フロア属性情報は、その空間の面積、高さ、空間を構成する壁・天井の材質、壁のレイアウトなどを含む。屋内NWデータは、屋内送信機が設置される場所に配置されるデータ通信のためのネットワークの配置情報を含む。フロアCADデータのフォーマットは、たとえば、DXF(Data eXchange Format)であるが、その他のフォーマットのデータが用いられてもよい。
IMESパラメータ情報は、当該フロアに配置される各屋内送信機に固有な情報を含む。当該固有な情報は、屋内送信機のそれぞれを識別するためのデータ、各屋内送信機に割り当てられたPRNコード、IMESとして使用するために当該屋内送信機に割り当てられた位置情報(たとえば、住所、緯度,経度,高度など)を含む。配置情報は、当該フロアにおける屋内送信機の位置を含む。たとえば、配置情報は、屋内送信機を識別するためのデータとフロアの位置情報とが関連付けられた態様で構成される。
IMES設置検討システムデータベース2350に格納されるデータは、設定システム2300によって作成される。ある局面において、設定システム2300は、設定システム2300に対する入力を受け付けるための入力装置と、画像を表示する表示装置と、屋内送信機が設置可能な場所を三次元で表示する設計情報を格納するための記憶装置と、設定システム2300の動作を制御するためのプロセッサとを備える。当該プロセッサは、設計情報に基づいて表示される画面に、屋内送信機が設置される場所を特定するための1つ以上の場所候補を表示する。プロセッサは、その画面に、屋内送信機の出力範囲も表示する。さらに、プロセッサは、屋内送信機を識別するためのデータと、当該1つ以上の場所候補から選択された1つの場所候補と、設計情報とを関連付けて記憶装置に格納するように構成されている。
他の局面において、プロセッサは、複数の屋内送信機の各々の出力範囲に基づいて各々の送信機の場所候補を表示してもよい。たとえば、各出力範囲が重複する部分を有するように、各々の屋内送信機の場所候補を配置する。
さらに他の局面において、設定システム2300は、設計情報と、設計情報に関連付けられた1つの場所候補とを出力するための出力装置をさらに備えてもよい。出力装置は、たとえばIMES設置検討システムデータベース2350と通信するためのインターフェイスを含む。出力装置は、ディスプレイ装置を含む。たとえば、送信器の場所候補の表示の際には、場所候補の位置あるいは名称等に基づくソートが行なわれてもよい。また、同一のPRN−IDが各屋内送信機に割り当てられないように、プロセッサは、各PRN−IDを割り当てるように構成されてもよい。この場合の割り当てのロジックは、一例として、たとえば、以下のとおりである。屋内送信機用に割り当てられているPRN−IDの数は有限個であって、たとえば、N個とする。この場合、第1の送信機を中心とする円の周囲に、他の送信機を中心とする円を外接するように配置することを考える。第1の送信機に割り当てられたPRN−ID以外のPRN−IDが使用可能である。そうすると、(N−1)個のPRN−IDが当該他の送信機に使用可能である。そこで、設定システム2300の使用者は、第1の屋内送信機に対して割り当てられるPRN−IDを初期値として設定すると、設定システム2300は、その初期値以外のPRN−IDに基づいて、たとえば、各送信器に対して使用可能なPRN−IDを順次列挙することにより、各送信機とPRN−IDとの割り当てを行なう。
また、より簡易的には、送信機による電波範囲を6角形と仮定すると、6角形に外接する6角形の数は、6である。そこで、合計7個のPRN−IDを各送信機に割り当てることにより、同一のPRN−IDが隣接する各屋内送信機に割り当てられることを防止することができる。なお、信号の届く範囲が重なる領域については、たとえば、位置情報提供装置としての携帯電話1200が受信した信号の強度が強い信号を採用することにより、位置を特定することができる。
クライアントPC2310,2320,2330は、位置情報提供システムが構築される建築物の画面データを編集するエディタを含む。また、クライアントPC2310,2320,2330は、当該建築物の各階の環境情報その他の属性情報の編集を行なうこともできる。属性情報は、当該階の広さ、レイアウト、壁の材質などを含む。属性情報は、建築物の設計情報から入手可能なデータであるが、クライアントPC2310,2320,2330のユーザが当該属性情報を直接入力することもできる。
遠隔監視システム2360は、屋内送信機が使用するパラメータを、当該屋内送信機に入力することができる。たとえば、遠隔監視システム2360は、当該パラメータをネットワークを介して屋内送信機に送信することができる。送信の態様は、有線および無線のいずれであってもよい。
遠隔監視システム2360は、さらに、ネットワークを経由して、他の情報管理システムと通信することができる。たとえば、遠隔監視システム2360は、測位のための信号を発信または伝送する情報管理システムと通信することができる。遠隔監視システム2360は、当該情報管理システムから最新の情報を受けることができる。あるいは、遠隔監視システム2360は、診断機能を有していてもよい。たとえば、遠隔監視システム2360は、屋内送信機の状態あるいは当該屋内送信機を使用する位置情報提供システムの作動状態を、当該情報管理システムに対して、定期的にあるいは要求に応じて報告することもできる。
[制御構造]
図24を参照して、本実施の形態に係る設定システム2300の制御構造について説明する。図24は、設定システム2300を実現するコンピュータシステムのCPUが実行する処理を表わすフローチャートである。設定システムを実現するコンピュータシステムは、たとえば、図21に示される周知の構成を有する。そこで、このような構成を援用して、設定システム2300の制御構造を説明する。
ステップS2450にて、CPUは、設定システム2300に与えられた、ラスター形式の図面をベクトルデータ化する。ベクトルデータへの変換は、周知の技術により行なわれる。図面は、平面図、立面図、断面図、求積図などであるが、これらに限られない。
ステップS2420にて、CPUは、データベース登録用のフロアCADデータを作成する。フロアCADデータは、たとえば、建物の各階ごとに、当該階のレイアウトデータを含む。当該階の高さは、別個の属性情報として与えられる。フロアCADデータを作成することにより、データ仕様が統一されるため、データベースによる一元管理が可能となる。また、属性情報も、データベースによる一元管理が可能となる。
ステップS2430にて、CPUは、データベース登録用の屋内ネットワーク(NW)を作成する。屋内ネットワークは、各屋内送信機をネットワーク接続するために使用される。このネットワークを用いて、管理装置から各屋内送信機に対して、登録用データを送信し、登録済みのデータを更新することが可能になる。あるいは、当該階において構築される汎用のネットワークと、各屋内送信機とをリンクすることができる。あるいは、当該階を歩く使用者が携帯電話機その他の携帯通信端末を使用する局面において、当該携帯通信端末が有する通信機能を用いた情報通信も可能となる。
ステップS2440にて、CPUは、作成したフロアCADデータと屋内ネットワークのデータとをデータベースとして登録する。
ステップS2450にて、CPUは、当該データベースに対して、屋内送信機の設置場所を特定するためのデータの入力を受け付ける。たとえば、使用者は、マウスを操作して、1つまたは複数の屋内送信機の各々を設置する場所を、モニタの画面に表示された平面図(フロアCADデータ)に入力する。あるいは、CPUは、使用者によって入力された1つの配置場所に基づいて、屋内送信機の送信出力および電波範囲を考慮して、他の配置場所を候補として表示してもよい。この場合、たとえば、CPUは、最初の1つの配置場所を起点として、その場所に設置される屋内送信機の電波範囲と、他の場所に配置される屋内送信機の電波範囲とを加算した距離だけ離れた場所を、他の屋内送信機の配置場所の候補としてモニタに表示する。この場合、CPUは、複数の候補から特定の候補に絞るために、たとえば、最初の屋内送信機が配置される場所の緯度および経度と同じ緯度または経度上に、他の屋内送信機の配置場所の候補を表示してもよい。なお、位置情報提供システムが設置される建築物(商業ビル、マンション等)が同一のレイアウトを有する複数階からなる場合には、CPUは、1つの階について最初に確定されたデータを流用することもできる。
ステップS2460にて、CPUは、屋内送信機から出力される電波の範囲に基づいて、屋内送信機の設置場所をシミュレーションする。たとえば、CPUは、メモリから、各屋内送信機の属性情報を読み出し、その属性情報に基づいて、当該屋内送信機がカバーし得る範囲を表示装置に表示する。属性情報は、屋内送信機から発信される電波が届く範囲、送信出力等を含む。さらに、CPUは、その範囲が互いに隣接するか否かを判断する。隣接する範囲がない場合には、CPUは、いずれかの屋内送信機の場所を予め設定された値だけ変更することにより、各屋内送信機によってカバーされる範囲が重複するように場所の候補を変更する。あるは、CPUは、使用者の入力に従って、場所の候補を変更してもよい。この場合、使用者は、画面を参照しながら、各屋内送信機の場所を決定することができる。
ステップS2470にて、CPUは、屋内送信機の設置場所が確定したか否かを判断する。この判断は、たとえば、設定システム2300に対して与えられる管理者の入力に基づいて行なわれる。他の局面において、この判断は、屋内送信機が設置される場所においていずれかの屋内送信機によってカバーされない範囲が存在しなくなった場合の有無を検知することにより行なわれてもよい。CPUは、屋内送信機の設置場所が確定したと判断すると(ステップS2470にてYES)、制御をステップS2480に切り換える。そうでない場合には(ステップS2470にてNO)、CPUは、制御をステップS2450に戻す。
ステップS2480にて、CPUは、屋内送信機の設置場所と、フロアCADデータとを関連付けて記憶装置に保存し、ステップS2440において登録したデータベースを更新する。
ステップS2490にて、CPUは、設定システム2300に対して与えられる命令に基づいて、更新後のデータベースの内容をIMES設置検討システムデータベース2350に出力し、さらに、遠隔監視システム2360にも出力する。
[表示態様]
図25を参照して、設定システム2300における画面の表示態様について説明する。図25は、設定システム2300が備える表示装置によって表示される画面の一例を表わす図である。図25(A)を参照して、当該表示装置は、屋内送信機の設置場所となる特定のフロアを三次元で表示する。図25(B)を参照して、設定システム2300は、当該フロアCADデータに対して、屋内送信機2510,2520,2530を表わす各画像を表示する。これらの画像の表示は、たとえば、最初の屋内送信機を表示するために与えられた入力に基づいて、予め設定された間隔に従って行なわれる。あるいは、設定システム2300のオペレータによる入力に基づいていずれかの画像が変更されてもよい。この場合、変更後のデータが設定システム2300の揮発メモリに一時的に書き込まれ、その後の設置場所のシミュレーションに用いられ得る。
なお、図25(A)に示される画面は、特定のフロアを特定の方向から表わしたものであるが、他の方向から表わした画面も使用可能である。また、設定システム2300が表示するフロアは、特定のフロアに限られず、設定システム2300に対して与えられた設計情報に基づいて作成されるデータから導かれるいずれのフロアであってもよい。
[データ構成]
図26を参照して、設定システム2300のデータ構造について説明する。図26は、屋内送信機を設置するために生成されたデータであって設定システム2300が格納しているデータを概念的に表わす図である。図26(A)を参照して、記憶装置は、屋内送信機を設置するための場所として二次元で表わされたデータを格納している。図26(B)を参照して、記憶装置は、データ2610に加えて、当該フロアに構築されるネットワーク配線2620をさらに格納している。
図26(C)を参照して、記憶装置は、当該フロアの属性情報2630を格納している。属性情報2630は、たとえば、建物の名称(XXXビル)と、所有者(YYY株式会社)と、建物の階数/店舗の階数(8階/3階)と、部屋または店舗の名称(ZZZショップ)と、当該フロアの天井の高さ(2800mm)その他の情報を含む。
[IMES設置検討システムデータベース2350のデータ構造]
図27を参照して、本実施の形態に係るIMES設置検討システムデータベース2350におけるデータ構造について説明する。図27は、当該データベースが有する記憶装置におけるデータの格納の一態様を表わす図である。
IMES設置検討システムデータベース2350は、設定システム2300によって生成されたデータを記憶装置に格納する。当該記憶装置は、登録用フロアCADデータ・屋内NWデータ2710と、登録用フロア属性情報2720と、IMESパラメータ基本情報2730とを格納している。これらのデータは、相互に関連付けられている。
フロアCADデータ・屋内NWデータ2710は、図26(B)に示されるデータと同じである。登録用フロア属性データ2720は、図26(C)に示されるフロア属性情報2630と同じである。
IMESパラメータ基本情報2730は、機種ID(製造番号)と、位置情報(緯度、経度、高さ)と、PRNと、屋内送信機の送信出力と、送信範囲などの情報を含む。機種IDは、当該屋内送信機に固有な番号であってたとえば製造番号、製品番号などが用いられる。位置情報は、当該屋内送信機が設置される場所を表わす情報であって、たとえばGPSシステムその他の衛星測位システムによって取得される。あるいは、当該屋内送信機が用いられる建築物の場所に対してその建築物の設計情報を加味することにより得られる。たとえば、建築物の基礎の座標値に、当該設計情報を反映することもできる。
PRNは、当該屋内送信機に割り当てられるコードであって、測位衛星に割り当てられるPRNとは異なるものである。送信出力は、屋内送信機の信号出力であって、当該屋内送信機の設計仕様として予め規定されている。送信範囲も同様に、屋内送信機に固有なデータとして予め規定されている。
[出力範囲のシミュレーション]
図28を参照して、屋内送信機による出力範囲のシミュレーションについて説明する。図28は、設定システム2300によって実現される屋内送信機のシミュレーションを表わす図である。設定システム2300は、表示装置(たとえば、モニタ1480)に屋内送信機2510,2520,2530を表示する。さらに、設定システム2300は、各屋内送信機の場所を中心に、IMESパラメータ基本情報2730に基づいて、各屋内送信機の出力範囲を表示する。表示装置は、その出力範囲を電波範囲2810,2820,2830としてそれぞれ表示する。
図28に示される例では、電波範囲2810,2820,2830はそれぞれ離れているため、各屋内送信機から出力される電波が受信されない領域が存在する。したがって、設定システム2300のオペレータは、マウスその他の入力装置を操作して、屋内送信機2510,2520,2530の画面上における場所をそれぞれ変更することができる。あるいは、設定システム2300のCPUが、その電波範囲2810,2820,2830のデータを用いて重複する範囲が存在するように各屋内送信機2510,2520,2530の位置を変更してもよい。この場合、変更する移動量は、設定システム2300に対して予め設定されている。
本実施の形態に係る設定システム2300は、ある局面において、セキュリティ機能を備えていてもよい。たとえば、アクセス権限が付与された特定の管理者のみが、各送信機に対するPRN−IDの割り当て又は変更を行なうことができる。
[遠隔監視システム]
図29を参照して、本実施の形態に係る遠隔監視システム2360について説明する。図29は、遠隔監視システム2360を含む監視システム全体の構築の一態様を表わす図である。遠隔監視システム2360は、VPN2370に接続されている。VPN2370には、さらに、別のネットワークシステム2910が接続されている。ネットワークシステム2910は、ローカルエリアネットワーク2920を介して、ローカル監視システム2380にさらに接続されている。
遠隔監視システム2360は、周知の構成を有するコンピュータシステムによって実現される。遠隔監視システム2360は、IMES設置検討システムデータベース2350から送られたデータ(図23参照)を格納している。遠隔監視システム2360は、ローカル監視システム2380から送られるデータに基づいて、屋内送信機の設定、動作状態の監視、異常の検知などを行なうことができる。
ネットワークシステム2910は、遠隔監視システム2360と、ローカル監視システム2380との通信を管理するゲートウェイ装置として機能する。ネットワークシステム2910は、他の局面において、ローカル監視システム2380を包含する構成であってもよい。
ローカル監視システム2380は、周知の構成を有するコンピュータシステムと、前述の各実施の形態に係る屋内送信機とを含む。当該コンピュータシステムは、屋内送信機にそれ接続される。この場合、当該コンピュータシステムは直接屋内送信機に接続されてもよく、あるいは、他の局面において、マスタ装置を介して接続されてもよい。この場合、当該マスタ装置は、複数の屋内送信機の各々との通信を実現する。たとえば、マスタ装置は、ビルの各フロア毎に1台ずつ設けられ、当該フロアに設置される複数の屋内送信機のすべてを監視することができる。マスタ装置も、周知の構成を有するコンピュータシステムによって実現される。
他の局面において、ローカル監視システム2380は、携帯電話機その他の携帯通信端末から発信された信号に基づいて、屋内送信機の内部のデータを読み出し、また、書き込みすることができる。この場合の通信方式は特に限られないが、監督官庁による規制を受けない程度の出力を使用する通信方式が好ましい。なお、携帯通信端末の通信規格は、たとえば、IrDA(Infrared Data Association)、Bluetooth(登録商標:ブルートゥース)等であるが、その他の通信規格であってもよい。
また、当該携帯通信端末は、IMES設置検討システムデータベース2350に対して、屋内送信機に関連する情報を送信し、保存させてもよい。これにより、携帯通信端末の使用者は、屋内送信機の作動状態を確認しながら、当該屋内送信機の動作を規定するパラメータ(たとえば、送信出力)を調整することが可能となる。
以上のようにして、本実施の形態に係る設定システム2300は、1つ以上の屋内送信機の配置場所を、各階の図面データ上にプロットすることができる。これにより、複数の屋内送信機の各々の配置場所の決定を容易に行なうことができる。
<信号フォーマット>
本実施の形態に係る屋内送信機200あるいはGPS衛星が送信する信号のフォーマットは、上述の態様に限られない。そこで、図30〜図35を参照して、他のフォーマットについて説明する。
[メッセージタイプ=0]
図30は、3ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号は、第1ワード3010と、第2ワード3020と、第3ワード3030とを含む。各ワードの長さは30ビットである。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「0」である。
第1ワード3010は、8ビットのプリアンブル3011と、3ビットのメッセージタイプID3012と、8ビットの階データ3013と、2ビットの緯度(LSB)3014と、3ビットの経度(LSB)3015と、6ビットのパリティ3016とを含む。メッセージタイプID3012のビットパターンは、たとえば、000(=タイプ「0」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
第2ワード3020は、3ビットのCNT3021と、21ビットの緯度(MSB)3022と、6ビットのパリティ3023とを含む。第3ワード3030は、3ビットのCNT3031と、21ビットの緯度(MSB)3032と、6ビットのパリティ3033とを含む。
[メッセージタイプ=1]
図31は、4ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号は、第1ワード3110と、第2ワード3120と、第3ワード3130と、第4ワード3140とを含む。各ワードの長さは30ビットである。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「1」である。
第1ワード3110は、8ビットのプリアンブル3111と、3ビットのメッセージタイプID3112と、9ビットの階データ3113と、4ビットのリザーブ3114と、6ビットのパリティ3115とを含む。メッセージタイプID3112のビットパターンは、たとえば、001(=タイプ「1」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
第2ワード3120は、3ビットのCNT3121と、21ビットの緯度(MSB)3122と、6ビットのパリティ3123とを含む。第3ワード3130は、3ビットのCNT3131と、21ビットの緯度(MSB)3132と、6ビットのパリティ3133とを含む。第4ワード3140は、3ビットのCNT3141と、12ビットの高度3142と、2ビットのリザーブ3143と、3ビットの緯度(LSB)3144と、3ビットの経度(LSB)3145と、6ビットのパリティ3146とを含む。
[メッセージタイプ=3]
図32は、ショートIDを含むL1C/A信号3200のフォーマットを概念的に表わす図である。信号3200のメッセージタイプは、たとえば、「3」である。
信号3200は、8ビットのプリアンブル3220と、3ビットのメッセージタイプID3220と、12ビットのショートID(IDs)3230と、1ビットのBD3240と、6ビットのパリティ3250を含む。メッセージタイプID3220のビットパターンは、たとえば、011(=タイプ「3」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
[メッセージタイプ=4]
図33は、ミディアムIDを含むL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「4」である。
この信号は、第1ワード3310と、第2ワード3320とを含む。第1ワード3310は、8ビットのプリアンブル3311と、3ビットのメッセージタイプID3312と、12ビットのショートID(IDM)(MSB)3313と、1ビットのBD3314と、6ビットのパリティ3315とを含む。メッセージタイプID3312のビットパターンは、たとえば、100(=タイプ「4」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。第2ワード3320は、3ビットのCNT3321と、21ビットのミディアムID(IDM)(LSB)3322と、6ビットのパリティ3323とを含む。
図34を参照して、フレーム構成の一例について説明する。図34は、ワード数に応じて構成されるフレーム構成を表わす図である。各ワードの長さは、30ビットである。
フレーム3410は、1ワードからなる。フレーム3410は、8ビットのプリアンブル3411と、3ビットのメッセージタイプID3412と、13ビットのデータビット3413と、6ビットのパリティ3414とを含む。
フレーム3420は、2ワードからなる。フレーム3420の第1ワードは、8ビットのプリアンブル3421と、3ビットのメッセージタイプID3422と、13ビットのデータビット3423と、6ビットのパリティ3424とを含む。フレーム3420の第2ワードは、3ビットのCNT3425と、21ビットのデータビット3426と、6ビットのパリティ3427とを含む。
フレーム3430は、3ワードからなる。フレーム3430の第1ワードは、8ビットのプリアンブル3431と、3ビットのメッセージタイプID3432と、13ビットのデータビット3433と、6ビットのパリティとを含む。フレーム3430の第2ワードは、3ビットのCNT3435と、21ビットの3436と、6ビットのパリティ3437とを含む。フレーム3430の第3ワードは、3ビットのCNT3438と、21ビットのデータビット3439と、6ビットのパリティ3440とを含む。
図35を参照して、フレーム構成の他の例について説明する。図35は、ショートIDと、位置情報とを含むフレーム3500を概念的に表わす図である。
フレーム3500の第1ワードは、プリアンブル3510と、メッセージタイプID3512と、データビット3512と、パリティ3513とを含む。第2ワードは、プリアンブル3514と、メッセージタイプID3515と、階データ3516と、パリティ3517とを含む。第3ワードは、CNT3518と、緯度データ3519と、パリティ3520とを含む。第4ワードは、CNT3521と、経度データ3522と、パリティ3523とを含む。位置情報は、第2〜第4ワードによって構成される。
上述の信号フォーマットは例示的なものであって、本実施の形態に係る屋内送信機200の適用は、このようなフォーマットに限定されない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。