JP2013194037A - 銅錯体、これを含有する紫外線吸収部材用組成物およびこれを用いた紫外線吸収部材 - Google Patents

銅錯体、これを含有する紫外線吸収部材用組成物およびこれを用いた紫外線吸収部材 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐光性を有し、可視光透明性を高度に保ったまま従来遮蔽困難であったUV−Aを効率的に遮蔽することができる紫外線吸収剤、紫外線吸収部材用組成物および紫外線吸収部材を提供する。
【解決手段】紫外線吸収剤として有用な、式(1):
Figure 2013194037

で示される特定構造の銅錯体、この銅錯体と少なくとも1種類のマトリックス材料とを含有する紫外線吸収部材用組成物、およびこれを用いた紫外線吸収部材を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線吸収剤として有用な銅錯体、この銅錯体と少なくとも1種類のマトリックス材料とを含有する紫外線吸収部材用組成物、およびこれを用いた紫外線吸収部材に関する。
近年、可視光線を十分に透過すると同時に、紫外線のみを選択的に遮蔽する機能を有する部材が様々な分野で使用されている。例えば、自動車のウインドウガラスや建築物の窓ガラス等においては、日焼けや内装材の劣化を引き起こす紫外線を遮蔽するために紫外線遮蔽ガラスが広く使用されている。
また、カーポート、ショーウインドウ、ショーケース、照明用透明シェード等に使用される透明樹脂板や、各種透明容器等の用途においても、紫外線遮蔽機能を付与したアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等の透明な熱可塑性樹脂の成形体が用いられている。
このように、ガラスや樹脂等に紫外線を遮蔽する機能を付与するために、紫外線吸収剤として無機系金属酸化物微粒子や有機系紫外線吸収剤を用いる方法が一般的に利用されている(特許文献1〜4)。
無機系金属酸化物微粒子は耐光性に優れている反面、その吸収波長は材料固有のバンドギャップによって支配されるため吸収波長の最適化が困難で、さらにその吸収スペクトルは多くの場合ブロードであるため、所望の波長域のみを選択的に遮蔽するには限界がある。また、無機系金属酸化物微粒子は溶媒等に溶解させることができないため、通常、微粒子分散状態で使用するが、可視光域の透明性を確保するためには粒子径をナノオーダーまで小さくする必要があり、多大な労力とコストを要する。
一方、有機系紫外線吸収剤は、分子構造の変更による吸収波長の変更がある程度可能であり、また溶媒に溶解させて使用することができるため、比較的容易に可視光域の透明性を確保できることが知られている。しかしながらその反面、耐光性が不十分であり、紫外線吸収能の持続力という面で信頼性に欠ける。また、吸光係数が小さいことからコーティングにより十分な吸収能を得ることは困難であり、適用可能な用途に制限がある。
ここで、380〜400nmの紫外線は、UV−Aと呼ばれる比較的波長の長い紫外線に分類され、地表に到達する太陽光の紫外線としては最も多く含まれるが、人体にとっては皮膚への浸透程度が深いため、長時間の曝露が色素沈着(シミ)やシワを引き起こすことが知られている。様々な分野における紫外線遮蔽技術の高機能化に伴い、可視光域との境界付近の380〜400nmの紫外線を十分に遮蔽でき、且つ400〜780nmの可視光線を十分に透過する材料が望まれている。
しかしながら、無機系金属酸化物微粒子および有機系紫外線吸収剤のいずれについても、可視光透明性が優れており、且つ380〜400nm波長域における吸光係数が高く、且つ高度な耐光性を有する材料はほとんど知られていない。
特開2006−052116号公報 特開2010−111729号公報 特開2010−189215号公報 特開2008−274246号公報
本発明は、前記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであり、優れた耐光性を有し、可視光透明性を高度に保ったまま従来遮蔽困難であったUV−Aを効率的に遮蔽することができる紫外線吸収剤、これを含有する紫外線吸収部材用組成物、およびこれを用いた紫外線吸収部材を提供することを目的としている。
本発明者らは、以下に示す銅錯体が、優れた耐光性および可視光透明性を有し、かつ、従来遮蔽困難であったUV−Aを効率的に遮蔽することができる紫外線吸収剤として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、
項1.式(1):
Figure 2013194037
(式中、XおよびYはそれぞれ互いに独立して酸素原子または硫黄原子であり、Zはハロゲノ基、アセタト基、アセチルアセトナト基、ニトラト基であり、
はモルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基であり、
は、存在しないか、または存在する場合は、1つのベンゼン環の6個の炭素原子のうち5員環と共有された2個の炭素原子とRが結合した炭素原子を除いた最大3個の炭素原子に結合する水素原子のうち1ないし3個を置換することができ、ベンゼン環の水素原子を置換したRはそれぞれ互いに独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、モルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基であり、
は、存在しないか、または存在する場合は、1つのベンゼン環の6個の炭素原子のうち5員環と共有された2個の炭素原子を除いた4個の炭素原子に結合する4個の水素原子のうち1ないし4個を置換することができ、ベンゼン環の水素原子を置換したRはそれぞれ互いに独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、モルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基を示す。)で表される銅錯体;
項2.項1に記載の少なくとも1種類の銅錯体と、少なくとも1種類のマトリックス材料を含む紫外線吸収部材用組成物;および
項3.項2に記載の紫外線吸収部材用組成物を用いて作製される紫外線吸収部材を提供する。
本発明によれば、優れた耐光性を有し、可視光透明性を高度に保ったまま従来遮蔽困難であったUV−Aを十分に遮蔽することができる紫外線吸収剤、これを含有する紫外線吸収部材用組成物、およびこれを用いた紫外線吸収部材を提供することができる。
<<A.本発明の銅錯体>>
本発明の銅錯体は、優れた耐光性および可視光透明性を有し、かつ、従来遮蔽困難であったUV−Aを効率的に遮蔽することができる紫外線吸収剤として有用であり、式(1):
Figure 2013194037
(式中、XおよびYはそれぞれ互いに独立して酸素原子または硫黄原子であり、Zはハロゲノ基、アセタト基、アセチルアセトナト基、ニトラト基であり、
はモルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基であり、
は、存在しないか、または存在する場合は、1つのベンゼン環の6個の炭素原子のうち5員環と共有された2個の炭素原子とRが結合した炭素原子を除いた最大3個の炭素原子に結合する水素原子のうち1ないし3個を置換することができ、ベンゼン環の水素原子を置換したRはそれぞれ互いに独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、モルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基であり、
は、存在しないか、または存在する場合は、1つのベンゼン環の6個の炭素原子のうち5員環と共有された2個の炭素原子を除いた4個の炭素原子に結合する4個の水素原子のうち1ないし4個を置換することができ、ベンゼン環の水素原子を置換したRはそれぞれ互いに独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、モルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基を示す。)で表される。
式(1)におけるZ、R、RおよびRについて以下に例示する。
式中、Zに帰属されるハロゲノ基としては、例えば、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。原料の入手性の観点からクロロ基が好ましい。
式中、R、R、Rに帰属されるN−置換ピペラジノスルホニル基としては、例えば、N−メチルピペラジノスルホニル基、N−エチルピペラジノスルホニル基、N−プロピルピペラジノスルホニル基、N−フェニルピペラジノスルホニル基等が挙げられる。原料の入手性の観点から、N−メチルピペラジノスルホニル基、N−エチルピペラジノスルホニル基が好ましい。
式中、R、Rに帰属される、前記の炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。原料の入手性の観点から、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基が好ましく、メチル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
式中、R、Rに帰属される、前記の炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。原料の入手性の観点から、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
式中、R、Rに帰属される、前記のハロゲノ基としては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。原料の入手性の観点からフルオロ基、クロロ基が好ましく、クロロ基がより好ましい。
得られる銅錯体の光吸収性能と合成の簡便さの両立の観点から、前記のRおよびRはともにモルホリノスルホニル基またはチオモルホリノスルホニル基であることが好ましく、Rは存在しないか、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、モルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基であることが好ましい。
式(1)で表される銅錯体は、下記式(2):
Figure 2013194037
で表される配位子と、銅(II)ハロゲン化物、銅(II)酢酸塩、銅(II)アセチルアセトン塩、銅(II)硝酸塩等の銅塩とを反応させることで合成することができる。
式(2)で表される配位子は、例えば、WO2011/089794やWO2012/012476において開示されている方法で合成することができる。
例えば、前記の公知の方法によって得られた式(2)で表される配位子を溶媒に溶解させ攪拌しながら、ここに銅塩を溶媒に溶解させた溶液を滴下し、その後、析出物を濾別し、必要に応じて任意の洗浄溶媒で洗浄した後、乾燥することで銅錯体を得ることができる。
なお、銅塩を溶媒に溶解させ攪拌しながら、ここに式(2)で表される配位子を溶媒に溶解させた溶液を滴下してもよい。また、式(2)で表される配位子と銅塩と溶媒を一括で仕込み、攪拌し、以後、前記と同様の手順で銅錯体を得ることも可能である。
ここで用いることができる銅(II)塩としては、銅(II)ハロゲン化物、銅(II)酢酸塩、銅(II)アセチルアセトン塩、銅硝酸塩等が挙げられる。具体的には、塩化銅(II)、臭化銅(II)、酢酸銅(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、硝酸銅(II)、およびこれらの水和物が挙げられる。
銅塩の使用量は、式(2)で表される配位子1モルに対して、0.8〜1.2モルであることが好ましい。0.8モル未満の場合、取得物中に不純物として式(2)で表される配位子が混入するおそれがあり、1.2モルを超えて使用しても、過剰分の銅塩が消費されることなく廃棄されることになるため経済的でない。
また、ここで用いることができる溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、2−プロパノール(IPA)等のアルコール類や、アセトン、2−ブタノン(MEK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類や、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等のエーテル類や、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族類や、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類や、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド類や、酢酸エチル等のエステル類や、ジメチルスルホキシド(DMSO)やアセトニトリル等が挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール、IPA、DMF、NMP、DMSOであり、DMFであることがさらに好ましい。
なお、これらの例示したもののうち2種類以上を混合して用いてもよい。また、式(2)で表される配位子を溶解させておく溶媒と、銅塩を溶解させておく溶媒とは必ずしも同一である必要はなく、各溶質の溶解度が許容する範囲内で前記例示したものの中からそれぞれ異なる1種以上の溶媒を選定して用いてもよい。
これら溶媒の使用量としては、特に制限されるものではないが、通常、式(2)で表される配位子1モルに対して1000〜40000g、好ましくは2000〜25000g、より好ましくは2500〜15000gである。1000g未満では、錯体化反応が十分に進行せず、得られる銅錯体の純度が低下するおそれがあり、40000gを超えて使用すると収率低下を招くおそれがある。
反応温度としては、通常0〜100℃、好ましくは5〜80℃である。0℃未満では、原料の溶解度が低下するため多量の溶媒が必要となり、結果的に容積効率が低下するため経済的でない。また100℃を超えて反応温度を設定しても、それ以上反応速度の向上は見込めず、経済的でない。
反応時間は、通常10分〜10時間、好ましくは1〜5時間である。10分より短いと、反応の進行が不十分で収率が低下するおそれがあり、10時間を超えて反応させても、それに見合う収率の向上は見込めないため経済的でない。
反応終了後、析出している該銅錯体をそのまま濾別してもよいし、該銅錯体の貧溶媒を添加してから濾別してもよい。
析出物濾別後の洗浄溶媒としては、特に限定されるものではないが、続く乾燥工程を考慮した場合、低沸点の溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。また、本洗浄により不純物を除去する目的においては、不純物の溶解性が良好な溶媒を選定し用いればよい。
洗浄溶媒の使用量は、特に制限されるものではなく、必要とする洗浄効果が得られる範囲内で任意に設定することができるが、通常、式(2)で表される配位子1モルに対して100〜10000gである。
式(1)で表される銅錯体は、従来遮蔽困難であったUV−Aを効率よく遮蔽し、また一般的な有機系紫外線吸収剤に比べてはるかに良好な耐光性を示す。また、従来公知の金属酸化物微粒子に比べて単位質量あたりの紫外線遮蔽能が優れているため、少量の添加で十分な紫外線遮蔽能を付与することができ、さらに、可視光域における透明性が非常に優れていることも特筆すべき特徴である。
<<B.本発明の紫外線吸収部材用組成物>>
本発明の紫外線吸収部材用組成物は、式(1)で表される少なくとも1種類の銅錯体と、少なくとも1種類のマトリックス材料とを含む。
本発明の紫外線吸収部材用組成物において、式(1)で表される銅錯体が溶解状態にあるものであってもよいし、式(1)で表される銅錯体の微粒子が分散状態にあるものであってもよい。
溶解状態の式(1)で表される銅錯体を含有する紫外線吸収部材用組成物の場合、最終的に得られる紫外線吸収部材の可視光透明性を確保する上で特に有利であり、一方、分散状態の式(1)で表される銅錯体微粒子を含有する紫外線吸収部材用組成物の場合には、耐光性に優れた紫外線吸収部材を得る上で特に有利となる。
本発明の紫外線吸収部材用組成物は、該紫外線吸収部材用組成物中において「式(1)で表される銅錯体が分子レベルで溶解状態にある」場合と、「式(1)で表される銅錯体が微粒子分散状態にある」場合を示す。それぞれについて以下説明する。
(B1)銅錯体が分子レベルで溶解状態にある場合の紫外線吸収部材用組成物
具体的には、マトリックス材料および本発明の銅錯体の溶解性がともに良好な溶媒を用いることで、該溶媒中にマトリックス材料および該銅錯体が溶解した、均一な紫外線吸収部材用組成物を得ることができる。
なお、マトリックス材料として重合性モノマーを使用する場合、前記溶媒は必ずしも必要ではなく、該重合性モノマーをマトリックス材料の前駆体、兼溶媒として使用することも可能である。
マトリックス材料としては、有機系バインダー、無機系バインダー、重合性モノマーのいずれであってもよい。ここで、無機系バインダーとはポリマー主鎖に炭素原子を含まないものを示し、本発明における前記無機系バインダーには例えばシリコンアルコキシドのゾル体のようなオリゴマーも含むこととする。
有機系バインダーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂や、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体や、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のポリスチレン系樹脂や、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体等のスチレン系共重合体や、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル系樹脂や、ポリスルホン系樹脂や、ポリアミド系樹脂や、ポリイミド系樹脂や、ポリウレタン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂や、エポキシ系樹脂や、フェノール系樹脂や、メラミン樹脂や、ユリア樹脂や、ポリビニル系樹脂等の熱可塑性もしくは熱硬化性合成樹脂や、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴムもしくは天然ゴム等が挙げられる。
基材への密着性や透明性の観点から、好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン系共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリビニル系樹脂等の熱可塑性もしくは熱硬化性合成樹脂であり、より好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン系共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリビニル系樹脂である。
なお、(メタ)アクリルは、メタクリルおよびアクリルを示す。
無機系バインダーとしては、ポリシロキサン系バインダーを好適に用いることができる。例えば、シリコーン系樹脂や、ポリシロキサン系バインダー前駆体としてシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合反応により得られるゾル溶液(シロキサンオリゴマー溶液)を好適に用いることができる。
シリコンアルコキシドのゾル溶液は、公知の方法によって調製することができる。通常、有機溶媒中で酸触媒存在下、シリコンアルコキシドに水を添加し、加水分解・重縮合させることにより、調製することができるが、市販のゾル溶液を使用しても良い。以下、シリコンアルコキシドのゾル溶液の調製方法を具体的に説明する。
(シリコンアルコキシド)
シリコンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシランや、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、エチルジエトキシ(メトキシ)シラン、トリメトキシシリルプロパンチオール、トリエトキシシリルプロパンチオール、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−(2−アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチレンジアミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等や、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等や、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等や、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の3官能アルコキシシランや、
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(2−メトキシエトキシ)ジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(ジメトキシメチルシリル)−1−プロパンチオール等や、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等の2官能アルコキシシランが挙げられる。
これらの中でも、得られる膜の状態や強度の観点から、4官能アルコキシシランと3官能アルコキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチレンジアミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンや、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランであることがより好ましい。
これらのシリコンアルコキシドは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上を組み合わせて使用する場合の混合比率は所望に応じて適宜選択することができる。
また、最終的に得られるコーティング膜に所望の物性を付与するために、必要に応じて、チタンアルコキシド、セリウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、スズアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ニッケルアルコキシド、亜鉛アルコキシド等の金属アルコキシド等を添加・併用してもよい。
(酸触媒)
酸触媒としては、特に限定されないが、例えば硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸や、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸が挙げられる。加水分解・重縮合反応終了後に酸が残存すると、縮合安定性が悪化するため、低沸点で揮発性が高い、硝酸、塩酸、蟻酸、酢酸を用いることが好ましい。
酸触媒の添加量としては、十分な触媒作用を発揮する限り、特に限定されるものではないが、通常シリコンアルコキシド100モルに対して0.01モル以上を配合することが好ましい。0.01モル未満では十分な触媒作用が得られないおそれがあり、また過剰に添加した場合には、最終的に得られるシリコンアルコキシドのゾル溶液の安定性が悪化するおそれがある。よってシリコンアルコキシド1モルに対して1モル以下の割合で配合することが好ましい。
(水)
上記シリコンアルコキシドの加水分解を引き起こし得る限り、特に限定されないが、シリコンアルコキシド1モルに対し、2〜30モルの割合で水を添加することが好ましく、2〜20モルであることがより好ましい。2モル未満では十分に加水分解が進行しないおそれがあり、30モルを超えると加水分解反応が速くなりゾル溶液の安定性が悪化するおそれがあることに加え、反応後に除去する水の量が多くなり効率的でない。
(反応溶媒)
シリコンアルコキシド、水、酸触媒に加えて反応溶媒を使用することにより、加水分解速度を適度に低め、確実に加水分解・重縮合を進行させることができる。さらに、最終的に得られるシリコンアルコキシドのゾル溶液(シロキサンオリゴマー溶液)の粘度をハンドリングしやすいレベルにまで調整するための希釈剤としての役割も兼ねる。
反応溶媒としては、前記シリコンアルコキシドが溶解するものであれば特に限定されることなく、適宜選択し使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、IPA、テトラフルオロプロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類や、アセトン、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類や、THF、ジエチルエーテル等のエーテル類や、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族類や、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類や、DMF、NMP等のアミド類や、酢酸エチル等のエステル類や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類や、アセトニトリルや、スルホランや、DMSO等が挙げられる。
反応性や経済性の観点から、メタノール、エタノール、IPA、テトラフルオロプロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類や、アセトン、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類や、THF、ジエチルエーテル等のエーテル類や、DMF、NMP等のアミド類や、酢酸エチル等のエステル類や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類や、DMSO等が好ましい。
前記反応溶媒の使用量は、シリコンアルコキシド100重量部に対し、10〜3000重量部、好ましくは10〜1000重量部の範囲とすることが望ましい。10重量部未満では、加水分解・重縮合反応を適度な反応速度で進行させることが困難になるおそれがあり、3000重量部を超えると、加水分解・重縮合反応の速度が低下するため効率的でないことに加えて、後述の減圧・留去工程に長時間を必要とするおそれがある。
まず、1種類以上のシリコンアルコキシドを、酸触媒、水及び溶媒と混合する。この溶液を0〜150℃、好ましくは10〜80℃の温度に維持することにより、加水分解・重縮合反応を進行させる。0℃未満では、加水分解・重縮合反応が進行しにくくなるおそれがある。また150℃を超えると加水分解・重縮合反応が急速に進行するため、未反応のアルコキシ基が残存したり、ゲル化や着色を招くおそれがある。加水分解・重縮合反応の時間は、温度条件にもよるが、通常0.5〜48時間、より好ましくは1〜24時間である。0.5時間未満では、十分に加水分解・重縮合反応が進行しないおそれがあり、48時間を超えてもそれ以上反応が進まないことから経済的でない。
加水分解・重縮合反応により副生するアルコールと水を系外に除去するために、反応終了後、あるいは反応中に、反応液を減圧留去する工程を設けてもよい。減圧留去しながら反応を進行させれば、重縮合反応の反応速度を向上させる効果が見込める。この工程において、前記酸触媒として低沸点で揮発性の高い触媒を用いれば、溶媒とともに酸触媒も系外に除去でき、反応終了後のゾル溶液の安定性を確保することができる。
このようにして加水分解・重縮合反応の進行により、無機系バインダーとしてのシリコンアルコキシドのゾル溶液を得ることができる。
重合性モノマーは、有機系重合性モノマー、無機系重合性モノマーのいずれであってもよい。なお、無機系重合性モノマーとは、重合反応により形成されるポリマー主鎖に炭素原子を含まないものを示す。
有機系重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレン、4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、4−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーや、(メタ)アクリル酸や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシブチル(メタ)アクリレート、3−エトキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、メチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルや、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシドおよびビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル等の脂環式エポキシ化合物や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ブロモ化ビスフェノールA、ビフェノール、レゾルシン等をグリシジルエーテル化した化合物や、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロルメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−[{(3−エチルオキセタニル)メトキシ}メチル]オキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス[{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン、トリ[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルフェニル]エーテル、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)オリゴジメチルシロキサン等のオキセタン化合物等が挙げられる。
また、無機系重合性モノマーとしては、前記無機系バインダーとしてのシリコンアルコキシドのゾル溶液の項で例示したものと同じものが挙げられる。
これらマトリックス材料は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記の、マトリックス材料および該銅錯体の溶解性が良好な溶媒としては、用いるマトリックス材料および該銅錯体の種類に応じて適宜選択し使用することができる。具体的には、前記シリコンアルコキシドのゾル溶液の調製方法の説明において、反応溶媒として例示したものが挙げられる。
これらの中で、該銅錯体の溶解性の観点からより好ましいものを挙げると、アルコール類としてはテトラフルオロプロパノール、ケトン類としてはMEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エーテル類としてはテトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素類としてはクロロホルム、ジクロロメタン、アミド類としてはDMF、NMP、その他ジメチルスルホキシドである。
また、マトリックス材料として例示した前記の重合性モノマーを、溶媒として使用してもよい。
これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上を組み合わせた混合溶媒を使用する場合の混合比率は、マトリックス材料と該銅錯体がともに溶解する範囲内で適宜設定することができる。
前記溶媒の使用量は、所望する紫外線吸収部材用組成物中の該銅錯体の濃度や、使用する溶媒の種類、使用するマトリックス材料の溶解度等を考慮した上で適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、該銅錯体の溶解性の観点からいえば、通常該銅錯体1重量部に対して5〜10000重量部、好ましくは10〜5000重量部、より好ましくは50〜1000重量部である。5重量部より少ないと、該銅錯体が完全に溶解しないおそれがあり、最終的に得られる紫外線吸収部材の可視光透明性を損なうおそれがある。また10000重量部よりも多いと、紫外線吸収部材に十分な紫外線吸収能を付与するための所望の膜厚を得ることが困難となるおそれがある。
また、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、硬化剤、硬化触媒、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、フィラー、着色剤、光触媒材料、防錆剤、撥水剤、導電性材料、アンチブロッキング材、軟化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等を適宜添加してもよい。
また、重合性モノマーを用いる場合において、後述の紫外線吸収部材を作製する際に重合工程を設ける場合には、別途重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤としては特に限定されるものではなく、使用する重合性モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。また、その使用量は、重合性モノマーおよび重合開始剤の活性に応じて適宜選択することができる。
熱硬化の場合に使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサノン−1−カルボニトリル)等のアゾ系化合物や、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類や、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド等を挙げることができる。
光硬化の場合に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4’−メチルチオ−2,2−ジメチル−2−モルホリノアセトフェノン、ベンゾインイソブチルエーテル、2−クロロチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
熱硬化の場合に使用されるカチオン重合開始剤としては、例えば、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素・アミン錯体、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化鉄(III)、塩化亜鉛等のルイス酸類や、アンモニウム塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、ホスホニウム塩等を挙げることができる。
光硬化の場合に使用されるカチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩等を挙げることができる。
硬化剤としては、上記重合性モノマーとしてエポキシ系モノマーを使用する際に使用されるものとして、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物や、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン等の脂肪族アミンや、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミンや、ポリメルカプタン、ポリサルファイド等を挙げることができる。
中でも、酸無水物類が重合後のエポキシ樹脂の機械特性を向上する点で好ましく、操作性において常温で液状のものが好ましい。具体的には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。
常温で固体の酸無水物、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物を使用する場合には、常温で液状の酸無水物に溶解させ、常温で液状の混合物として使用することが操作上好ましい。
エポキシ系モノマーの上記硬化反応を促進するために、さらに硬化促進剤を使用することもできる。硬化促進剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7とそのオクチル酸塩等の第三級アミン類やイミダゾール類および/またはそれらの有機カルボン酸塩や、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、ベンジルトリフェニルホスホニウム臭素塩、ベンジルトリブチルホスホニウム臭素塩等のホスフィン類および/またはそれらの第四級塩や、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の有機カルボン酸金属塩や、亜鉛とβ−ジケトンよりなるアセチルアセトン亜鉛キレート、ベンゾイルアセトン亜鉛キレート、ジベンゾイルメタン亜鉛キレート、アセト酢酸エチル亜鉛キレート等の金属−有機キレート化合物や、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。
(B2)銅錯体の微粒子が分散状態にある場合の紫外線吸収部材用組成物
例えば、あらかじめ該銅錯体の分散液を調製しこれと、マトリックス材料(あるいは別途調製したマトリックス材料の溶液)を混合することによって、該銅錯体の微粒子が分散状態にある紫外線吸収部材用組成物を得ることができる。
前記のマトリックス材料としては、有機系または無機系バインダーのいずれであっても使用することができ、前記の「(B1)銅錯体が分子レベルで溶解状態にある場合の紫外線吸収部材用組成物」の項で述べたものと同範囲内から適宜選択し、使用することができる。
あらかじめ該銅錯体の分散液を調製する場合、用いることができる分散媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、IPA、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類や、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等のグリコール類や、アセトン、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類や、酢酸エチル等のエステル類や、THF、ジエチルエーテル等のエーテル類や、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族類や、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン等の炭化水素類や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類やアセトニトリル等や、前で例示した重合性モノマーが挙げられる。
該銅錯体の分散性、および得られる分散液の安定性の観点から、水、メタノール、エタノール、IPA、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類や、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等のグリコール類や、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族類や、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン等の炭化水素類や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類が好ましく、水であることが特に好ましい。
これらの分散媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上を組み合わせた混合分散媒を使用する場合の混合比率は適宜選択することができる。
分散媒の使用量は、紫外線吸収部材用組成物中の該銅錯体の所望の濃度や、使用するマトリックス材料の溶解性、マトリックス材料の溶液との相溶性等を考慮した上で適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、該銅錯体の分散性および得られる分散液の安定性の観点から言えば、通常該銅錯体100重量部に対して150〜9900重量部、好ましくは250〜4900重量部である。150重量部より少ないと、分散性が悪化し微粒化できないおそれがある。また9900重量部よりも多いと、固形分濃度が低下するため十分な剪断力を与えることができず、該銅錯体を微粒化するためにかかる時間が長くなり効率低下を招くおそれがある。
前記銅錯体微粒子の紫外線吸収部材用組成物中の平均粒子径は、10nm以上400nm以下、好ましくは10nm以上300nm以下、より好ましくは10nm以上200nm以下、さらに好ましくは10nm以上150nm以下である。平均粒子径が400nmよりも大きいと、可視光透明性が損なわれ、また最終的に得られるコーティング膜の機械的強度が低下するおそれがある。さらに粒子径が400nmよりも大きい場合、粒子の表面積の低下により、添加量に見合う紫外線吸収能が得られず、コスト面で不利である。また、平均粒子径が10nm以下の場合には、溶解状態に近くなり可視光透明性は向上するが、耐光性が低下し、分散系で使用するメリットが損なわれるおそれがある。
(分散機)
前記銅錯体を微粒化するにあたって使用できる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、ナノミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等のメディア型分散機や、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等のメディアレス型分散機が挙げられる。
中でも、コスト、処理能力の面から、メディア型分散機を使用するのが好ましい。また、これらのうちの一つを単独で用いても良く、2種類以上の装置を組み合わせて使用しても良い。
(分散メディア)
分散メディアとしては、用いる分散機の分散室内部の材質に応じて、ステンレス鋼、スチール等の鋼球ビーズや、アルミナ、ステアタイト、ジルコニア、ジルコン、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックスビーズや、ソーダガラス、ハイビー等のガラスビーズや、WC等の超硬ビーズ等の中から適宜選択し使用することができ、そのビーズ径は0.03〜1.5mmφの範囲が好ましい。
該銅錯体を微粒化し、分散させるための本分散工程においては、該銅錯体と分散メディアの衝突により、該銅錯体に十分な剪断力を負荷し、粉砕・分散させることで微粒化する。ここで、該銅錯体と分散メディアの衝突エネルギーにより、分散液の液温が上昇するため、公知の冷却装置により、分散液を冷却しながら分散を実施するのが好ましい。冷却温度は特に限定されるものではないが、通常−50〜120℃、好ましくは−30〜80℃、さらに好ましくは−20〜60℃である。
(分散剤)
分散剤は、該銅錯体を分散媒中に安定に分散させるために、必要に応じて配合される。分散剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等のカチオン性分散剤や、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン性分散剤や、アルキルベタインやアミドベタイン等の両性分散剤や、ノニオン性分散剤や、フッ素系分散剤や、シリコン系分散剤や、高分子系分散剤等を使用することができる。中でも、次に例示するようなノニオン性分散剤や高分子系分散剤が特に好ましい。
ノニオン性分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類や、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類や、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類や、ソルビタン脂肪酸エステル類が好ましく用いられる。分散性や経済性の観点から、より好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類である。
高分子系分散剤としては、例えば、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシド付加物等が好ましく用いられる。
これらの分散剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記分散剤の使用量は、通常該銅錯体100重量部に対して0〜100重量部、好ましくは0〜60重量部である。100重量部を超えて添加した場合には添加量に見合う分散効果が得られず、経済的でない。
以上の方法で該銅錯体の微粒子が分散された紫外線吸収部材用組成物を得た後に、所望の濃度に希釈してもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の光吸収剤を該銅錯体と混合し、併用することも可能である。
併用することのできる光吸収剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機系光吸収剤としては、フタロシアニン系、キナクリドン系、キナクリドンキノン系、ベンズイミダゾロン系、キノン系、アントアントロン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、アゾ系、シアニン系、アザシアニン系、スクアリリウム系、トリアリールメタン系等の有機色素や、ベンゼンジチオール金属錯体系、ジチオレン金属錯体系、アゾ金属系、金属フタロシアニン系、金属ナフタロシアニン系、ポルフィリン金属錯体系等の金属錯体系色素や、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サルチレート系、サリチル酸フェニルエステル系、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ベンゾエート系、リン系、アミド系、アミン系、硫黄系等の有機系紫外線吸収剤等が挙げられる。経済性や光吸収性能の観点から、好ましくは、フタロシアニン系、キノン系、ペリレン系、アゾ系、シアニン系、アザシアニン系、スクアリリウム系、トリアリールメタン系等の有機色素や、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ベンゾエート系、リン系、アミン系、硫黄系等の有機系紫外線吸収剤である。
また、無機系光吸収剤としては、六ホウ化物、酸化タングステン、複合酸化タングステン、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化リチウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タリウム、酸化ニッケル、酸化ネオジム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ランタン、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化プラセオジウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビニウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミニウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等の金属酸化物や、ITO(インジウム−錫複合酸化物)、ATO(アンチモン−錫複合酸化物)等の複合金属酸化物や、窒化チタン、窒化クロム酸等の金属窒化物等が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、硬化剤、硬化触媒、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、フィラー、着色剤、光触媒材料、防錆剤、撥水剤、導電性材料、アンチブロッキング材、軟化剤、離型剤、蛍光増白剤等を適宜添加してもよい。
また、重合性モノマーを用いる場合において、後述の紫外線吸収部材を作製する際に重合工程を設ける場合には、別途重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤としては特に限定されるものではなく、使用する重合性モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。また、その使用量は、重合性モノマーおよび重合開始剤の活性に応じて適宜選択することができる。重合開始剤の例示は前記の通りである。
<<C.本発明の紫外線吸収部材>>
本発明の紫外線吸収部材は、かくして得られた紫外線吸収部材用組成物を用いて作製することができる。本発明の紫外線吸収部材は主に以下の2種類の形態を示す。
(C1)基材上に銅錯体を含有するマトリックス材料の膜を有する積層体としての紫外線吸収部材
前記で得られた紫外線吸収部材用組成物を基材上にコーティングし、乾燥および/または硬化することにより、基材上に、該銅錯体を含有するマトリックス材料の膜(以下、マトリックス膜という)を有する積層体としての紫外線吸収部材を作製することができる。
コーティングの方法としては、特に限定されないが、例えばディップコート法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、バーコート法、スプレー法、リバースコート法等の公知の方法が挙げられる。
基材は、所望によりフィルムでもボードでもよく、形状は限定されない。材質についても特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択し、使用することができる。例えば、ガラス等の無機系基材や、ポリ(シクロ)オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等の有機系基材が挙げられる。中でも、透明性の観点から、ガラス、ポリ(シクロ)オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が好ましい。
また、層間剥離、コートムラを防ぐ目的で、塗布前に基材表面を洗浄してもよい。洗浄方法としては特に限定されず、基材の種類に応じて適宜選択し、実施することができる。通常、超音波洗浄、UV洗浄、セリ粉洗浄、酸洗浄、アルカリ洗浄、界面活性剤洗浄、有機溶剤洗浄等を単独で、または組み合わせて実施することができる。洗浄終了後は、洗浄剤が残留しないように濯ぎ及び乾燥を行う。
コーティングにより形成されるマトリックス膜の膜厚は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜調整することができるが、通常0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは1〜30μmである。0.01μm未満では、十分な紫外線吸収能が得られないおそれがあり、100μmを超えると、乾燥時に溶媒や分散媒等が膜内部から蒸発し、膜表面に凹凸が生じたり、クラックを生じる可能性がある。
乾燥温度、乾燥時間は、用いる溶媒や分散媒の種類によって適宜設定することができる。
乾燥後、マトリックス膜の機械的強度等の物性を目的に見合うようにコントロールするため、養生工程や焼成工程を設けてもよい。
例えば、マトリックス材料としてシリコンアルコキシドのゾル体を用いた場合、前記乾燥工程の後に80〜500℃、好ましくは90〜400℃、より好ましくは100〜300℃での焼成工程を設けることによって膜自体の機械的強度を向上させることができる。80℃より低温では、機械的強度が十分向上しないおそれがあり、500℃より高温では、マトリックス膜中に含有される該銅錯体が熱分解してしまうおそれがある。
すなわち、前記乾燥工程において、ゾル(シロキサンオリゴマー)同士が重縮合反応を起こすことでシロキサンネットワークを拡大し、ゲル体の骨格構造を形成する。このゲル体を焼成することでさらにシロキサンネットワークが拡大する。このシロキサンネットワーク(ポリシロキサンの分子量)の大きさにより、得られるマトリックス膜の機械的強度をコントロールすることができる。
焼成時間は、所望のマトリックス膜の物性に応じて適宜調整可能であるが、通常、10分間〜5時間、好ましくは30分間〜3時間である。10分間より短いと機械的強度が十分向上しないおそれがあり、5時間より長いと、時間に見合う効果が得られず経済的でない。
また、重合処理を設ける場合、加熱処理やUV照射等の処理を設けることができる。加熱条件やUV照射条件は、使用する重合開始剤や重合性モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。
なお、後述の剥離性基材を用い、この上にコーティングを施した後、所望の別基材に該コーティング層を転写して得られた積層体も(C1)の形態に含まれる。別基材としては前記の基材が例示される。
具体的な方法としては、例えば、紫外線吸収部材用組成物を剥離性基材(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布し乾燥させた後、ラミネーター等を用いて別基材(例えばガラス基材)と貼り合わせ、その後剥離性基材を剥離することで、別基材上に該銅錯体を含有するマトリックス膜を有する積層体としての紫外線吸収部材を作製することができる。この場合にも、必要に応じて前記重合処理を設けてもよい。
例えば、所望の基材上に異なる成分からなるマトリックス膜を多層化させた積層体を作製する場合に、このような転写法を用いることができる。すなわち、前記のように基材上に直接紫外線吸収部材用組成物を塗布し、コーティング層を形成する方法で多層膜を形成しようとする場合、例えば、n+1層目(nは自然数を表す)を形成する際に使用する紫外線吸収部材用組成物は、n層目の構成成分が溶解したり膨潤したりしないものでなければならず、n+1層目を構成する紫外線吸収部材用組成物の構成成分が制限されてしまうが、かかる転写法を用いることにより、これらの制限を回避することができる。
(C2)銅錯体がマトリックス膜中に含有された薄膜形態の紫外線吸収部材
前記で得られた紫外線吸収部材用組成物を、剥離性基材上にコーティングし、乾燥および/または硬化した後に、剥離性基材から該マトリックス膜を剥離することによって得られる、該銅錯体がマトリックス膜中に含有された薄膜形態の紫外線吸収部材を作製することができる。
コーティング方法は、前記(C1)で例示したものと同様である。
剥離性基材は、所望によりフィルムでもボードでも良く、形状は限定されない。剥離性基材は、基材を構成する素材が剥離性を有するものであれば基材単独でもよいし、基材を構成する素材が剥離性を有しない場合、または剥離性が乏しい場合には基材に剥離性層を積層したものであってもよい。前者の基材を構成する素材が剥離性を有するものである場合には、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等を用いることができる。
後者の、基材に剥離性層を積層したものである場合、基材としては前記(C1)で例示した基材を用いることができる。これら基材の表面に基材とは接着性を有し、紫外線吸収部材用組成物から作製される該銅錯体を含有する薄膜層に対しては剥離性を有する剥離性層を積層したものを使用することができる。
剥離性層は、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、剥離性物質をバインダー樹脂中に溶解または分散させたもの等で構成される。
剥離性物質としては、特に制限されるものではなく、例えば長鎖アルキル化合物、カルナバワックスやモンタンワックスや酸化ポリエチレンや非酸化ポリエチレン等の合成ワックス等が挙げられる。
これらから選択される少なくとも1種以上を溶媒(分散媒)中に溶解、分散、希釈し、得られた組成物を基材上に公知の方法で塗布または印刷した後、乾燥または硬化することによって基材上に剥離性層を形成することができる。剥離性層の膜厚は、0.5μm〜10μm程度であることが好ましい。
紫外線吸収部材用組成物を剥離性基材上にコーティングすることによって形成される該銅錯体がマトリックス膜中に含有された薄膜の膜厚は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜調整することができるが、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μmである。0.1μm未満では、紫外線吸収部材の機械強度が実用上不十分となるおそれがあり、100μmを超えると、乾燥時に溶媒や分散媒等が膜内部から蒸発し、膜表面に凹凸が生じたり、クラックを生じる可能性がある。
乾燥温度、乾燥時間は、用いる溶媒や分散媒等の種類によって適宜設定することができる。
乾燥後、該銅錯体を含有する薄膜の機械的強度等の物性を目的に見合うようにコントロールするため、養生工程や焼成工程を設けてもよい。
例えば、マトリックス材料としてシリコンアルコキシドのゾル体を用いた場合、前記乾燥工程の後に80〜500℃、好ましくは90〜400℃、より好ましくは100〜300℃での焼成工程を設けることによって膜自体の機械的強度を向上させることができる。80℃より低温では、機械的強度が十分向上しないおそれがあり、500℃より高温では、マトリックス膜中に含有された該銅錯体が熱分解してしまうおそれがある。
すなわち、前記乾燥工程において、ゾル(シロキサンオリゴマー)同士が重縮合反応を起こすことでシロキサンネットワークを拡大し、ゲル体の骨格構造を形成する。このゲル体を焼成することでさらにシロキサンネットワークが拡大する。このシロキサンネットワーク(ポリシロキサンの分子量)の大きさにより、得られるマトリックス膜の機械的強度をコントロールすることができる。
焼成時間は、所望の薄膜の物性に応じて適宜調整可能であるが、通常、10分間〜5時間、好ましくは30分間〜3時間である。10分間より短いと機械的強度が十分向上しないおそれがあり、5時間より長いと、時間に見合う効果が得られず経済的でない。
また、重合処理を設ける場合、加熱処理やUV照射等の処理を設けることができる。加熱条件やUV照射条件は、使用する重合開始剤や重合性モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。
以下に製造例、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、以下の製造例および実施例で得られた各配位子および各銅錯体の同定は、下記の方法(1)、(2)および(3)に記載する方法で実施した。
(1)H−核磁気共鳴スペクトル測定
NMR装置:BRUKER製AV400型
測定溶媒:ジメチルスルホキシド-d(DMSO-d
共鳴周波数:400MHz
(2)元素分析
CHN:酸素循環燃焼・TCD検出方式 NCH定量装置
S:フラスコ燃焼/イオンクロマト法
Cu:マイクロウェーブ分解/ICP−AES法
(3)赤外スペクトル測定
装置:日本電子製JIR−6500型FT−IR
測定方法:KBr法
また、以下の実施例および比較例で得られた各紫外線吸収部材用組成物および各紫外線吸収部材の評価は、下記の方法(4)〜(7)に記載する方法で実施した。
(4)平均粒子径の測定
平均粒子径は、シスメックス社製「ゼータサイザーナノZS」を用いて、光源:He−Neレーザー(633nm)、セル:ガラス角セル、測定温度:25℃、Measure position:0.85(mm)の条件下で測定した。また、それぞれの試料について3回ずつ測定し、得られた値の平均値を示した。
(5)紫外線吸収部材の紫外線(UV−A)吸収能
実施例および比較例で得られた紫外線吸収部材について、分光光度計(株式会社日立製作所製、型番:U−4100)を用いてλ=380nm、λ=400nmにおける透過率を測定し、紫外線吸収能(UV−A吸収能)について評価した。
なお、測定は各紫外線吸収部材において使用した基材を用いてベースライン補正を行い測定した。
(6)紫外線吸収部材の可視光透明性
濁度計(日本電色工業株式会社製NDH2000)を用いて全光線透過率を測定し、可視光透明性について評価した。なお、各紫外線吸収部材において使用した基材を用いて標準合わせを行った。
(7)紫外線吸収部材の耐光性
(5)の手順により実施例および比較例で得られた紫外線吸収部材について透過率を測定した後、キセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型番:X25)を用いて、これら紫外線吸収部材に放射強度60W/m(300〜400nm域における積算)の光を1000時間照射した。光照射後の紫外線吸収部材について、それぞれ(5)と同様に透過率を測定し、光照射による紫外線吸収能の変化から耐光性を評価した。
製造例1
フェノール18.8g(0.2モル)50℃まで加熱し融解させ、ここに2−アミノベンゾチアゾール45.1g(0.3モル)を加えた後、さらに180℃まで加熱し、20時間保温した。その後、反応液を80℃まで冷却し、エタノール60gを滴下し、さらに1時間保温した。その後、20℃まで冷却し、析出物を濾別し、エタノールで洗浄後、乾燥することにより、白色の2,2’−イミノビスベンゾチアゾール32.1gを得た。収率は2−アミノベンゾチアゾールに対して75.5%であった。
製造例2(配位子の合成1)
製造例1において得られた2,2’−イミノビスベンゾチアゾール10g(0.035モル)をクロロスルホン酸70.1g(0.602モル)に添加し、18時間反応攪拌した。さらに塩化チオニル10g(0.084モル)を添加し、50℃で1時間攪拌した後、20℃まで冷却した。この反応液を400gの氷の上に注ぎ、吸引濾過し、残った氷と一緒にモルホリン8.8g(0.101モル)と即座に攪拌した。20℃まで昇温した後、約1mlの50重量%の水酸化ナトリウム水溶液によって反応液をアルカリ性にした。析出物を濾別し、水洗浄後、メタノールで洗浄し、乾燥することによって薄黄色の2,2’−イミノビス(6−モルホリノスルホニルベンゾチアゾール)15.4gを得た。収率は2,2’−イミノビスベンゾチアゾールに対して75.5%であった。純度は、高速液体クロマトグラフィーにより測定し、98.5%であった。
H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz、DMSO-d)δ(ppm):2.90(m、8H)、3.64(m、8H)、7.76(m、2H)、7.86(br、2H)、8.47(s、2H)、13.46(br、1H)
FT−IR(cm−1):1446、1462、1533、1566、1608
製造例3(配位子の合成2)
モルホリン8.8g(0.101モル)に代えてチオモルホリン10.4g(0.101モル)を用いた以外は製造例2と同様にして、薄黄色の2,2’−イミノビス(6−チオモルホリノスルホニルベンゾチアゾール)15.5gを得た。収率は2,2’−イミノビスベンゾチアゾールに対して72.1%であった。純度は、高速液体クロマトグラフィーにより測定し、98.2%であった。
H−核磁気共鳴スペクトル(400MHz、DMSO-d)δ(ppm):2.68(m、8H)、3.23(m、8H)、7.77(m、4H)、8.46(s、2H)、13.44(br、1H)
FT−IR(cm−1):1442、1469、1543、1603
実施例1(銅錯体の製造1)
製造例2で得られた2,2’−イミノビス(6−モルホリノスルホニルベンゾチアゾール)14.5g(0.025モル)とDMF135gを混合し溶解させた。ここに、あらかじめ酢酸銅・一水和物5.24g(0.026モル)をDMF170gに溶解させておいた溶液を、20℃において1時間かけて滴下し、滴下後さらに20℃で1時間攪拌した。その後析出物を濾別し、DMF、メタノールで洗浄後、乾燥し、ベージュ色粉末のアセタト{6−(モルホリノスルホニル)−N−[6−(モルホリノスルホニル)−2−ベンゾチアゾリル−κ3N]−2−ベンゾチアゾールアミナト−κ3N}銅16.3gを得た。収率は2,2’−イミノビス(6−モルホリノスルホニルベンゾチアゾール)に対して93.0%であった。
元素分析:C;40.2%、H;3.4%、Cu;8.6%、N;9.7%、S;16.8%(理論値:C;40.99%、H;3.58%、Cu;9.04%、N;9.96%、S;18.24%)
FT−IR(cm−1):1406、1477(br)
実施例2(銅錯体の製造2)
2,2’−イミノビス(6−モルホリノスルホニルベンゾチアゾール)14.5g(0.025モル)に代えて2,2’−イミノビス(6−チオモルホリノスルホニルベンゾチアゾール)15.3g(0.025モル)を用いた以外は実施例1と同様にして、ベージュ色粉末のアセタト{6−(チオモルホリノスルホニル)−N−[6−(チオモルホリノスルホニル)−2−ベンゾチアゾリル−κ3N]−2−ベンゾチアゾールアミナト−κ3N}銅17.4gを得た。収率は2,2’−イミノビス(6−チオモルホリノスルホニルベンゾチアゾール)に対して94.5%であった。
元素分析:C;39.5%、H;3.4%、Cu;8.5%、N;9.7%、S;27.3%(理論値:C;39.20%、H;3.43%、Cu;8.64%、N;9.52%、S;26.16%)
FT−IR(cm−1):1404、1473(br)
製造例4(無機系バインダー:シリコンアルコキシドのゾル溶液の調製)
テトラエトキシシラン97.3g(0.28モル)と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン47.1g(0.10モル)と、2−プロパノール15.2g、2−エトキシエタノール15.2g、水47.3gとを混合した。ここに1重量%硝酸水溶液2.2g(硝酸として0.00035モル)を添加し、20℃で1時間攪拌し、無機系バインダー:ポリシロキサン系バインダー前駆体としての、シリコンアルコキシドのゾル溶液を得た(固形分濃度17.8重量%:SiO換算)。
製造例5(銅錯体の微粒子分散液の調製1)
分散メディアとして0.1mmφのジルコニアボール(ニッカトー製の商品名YTZボール)50gを粉砕容器(フリッチュ社製の商品名:premium line用粉砕容器(内装ジルコニア製))に入れた。ここに実施例1で得られた銅錯体2.0g、分散媒として水17.1g、分散剤としてDISPERBYK−2015(ビックケミー・ジャパン製)0.8gおよびポリオキシエチレンラウリルエーテル0.1gを入れ、遊星型ボールミル(フリッチュ社製の商品名:premium line P−7)を用いて600rpmで5分間分散した後、10分間冷却し、さらに1100rpmで5分間分散処理を行い、銅錯体の分散液を得た。平均粒子径は107nmであった。
製造例6(銅錯体の微粒子分散液の調製2)
実施例1で得られた銅錯体2.0gに代えて、実施例2で得られた銅錯体2.0gを用いた以外は製造例5と同様にして、銅錯体の分散液を得た。平均粒子径は123nmであった。
実施例3(銅錯体を含む紫外線吸収部材用組成物および紫外線吸収部材A)
製造例5で得られた銅錯体の分散液0.35gを攪拌しながら、ここに製造例4で得られたシリコンアルコキシドのゾル溶液2.0gを加え、混合することにより、分散液形態の紫外線吸収部材用組成物Aを得た。平均粒子径は111nmであった。
得られた紫外線吸収部材用組成物Aを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いて、事前にアセトンで表面洗浄した30×30mmのカバーガラス(MATSUNAMI製MICRO COVER GLASS No.3)上に塗布し、その後、20℃、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に180℃で1時間焼成し、紫外線吸収部材Aを得た。コーティング膜の膜厚は3μmであった。
得られた紫外線吸収部材Aについて、紫外線(UV−A)吸収能、可視光透明性および耐光性を評価した。評価結果を表1に示す。
実施例4(銅錯体を含む紫外線吸収部材用組成物および紫外線吸収部材B)
有機系バインダーとしてアクリル樹脂溶液(綜研化学株式会社製の商品名;フォレットGS−1000、固形分30重量%MEK溶液)1.34gを100mlナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを減圧留去し、アクリル樹脂0.40gを得た。ここにDMF0.93gを加えて攪拌し、アクリル樹脂溶液(固形分30重量%DMF溶液)を得た。これに実施例1で得られた銅錯体9.5mgを加え、70℃湯浴中で超音波処理を行った後、メンブレンフィルター(ADVANTEC製のDISMIC25HP045AN)で濾過することにより、溶液形態の紫外線吸収部材用組成物Bを得た。
得られた紫外線吸収部材用組成物Bを、バーコーター(日本シーダース株式会社製、100μm)を用いてPETフィルム(フィルム厚100μm)上に塗布し、その後、20℃、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に160℃で5分間乾燥し、紫外線吸収部材Bを得た。コーティング膜の膜厚は10μmであった。
得られた紫外線吸収部材Bについて、紫外線(UV−A)吸収能、可視光透明性および耐光性を評価した。評価結果を表1に示す。
実施例5(銅錯体を含む紫外線吸収部材用組成物および紫外線吸収部材C)
製造例6で得られた銅錯体の分散液0.35gを攪拌しながら、ここに製造例4で得られたシリコンアルコキシドのゾル溶液2.0gを加え、混合することにより、分散液形態の紫外線吸収部材用組成物Cを得た。平均粒子径は125nmであった。
得られた紫外線吸収部材用組成物Cを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いて、事前にアセトンで表面洗浄した30×30mmのカバーガラス(MATSUNAMI製MICRO COVER GLASS No.3)上に塗布し、その後、20℃、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に180℃で1時間焼成し、紫外線吸収部材Cを得た。コーティング膜の膜厚は3μmであった。
得られた紫外線吸収部材Cについて、紫外線(UV−A)吸収能、可視光透明性および耐光性を評価した。評価結果を表1に示す。
比較例1(無機系紫外線吸収剤を含む紫外線吸収部材用組成物および紫外線吸収部材D)
酸化亜鉛微粒子分散液(ハクスイテック株式会社製、製品名:パゼットGK−水分散体、粉体一次粒子径:20〜40nm、酸化亜鉛濃度:20重量%)0.35gを攪拌しながら、ここに製造例4で得られたシリコンアルコキシドのゾル溶液2.0gを加え、混合することにより、分散液形態の紫外線吸収部材用組成物Dを得た。
得られた紫外線吸収部材用組成物Dを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いて、事前にアセトンで表面洗浄した30×30mmのカバーガラス(MATSUNAMI製MICRO COVER GLASS No.3)上に塗布し、その後、20℃、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に180℃で1時間焼成し、紫外線吸収部材Dを得た。コーティング膜の膜厚は4μmであった。
得られた紫外線吸収部材Dについて、紫外線(UV−A)吸収能、可視光透明性および耐光性を評価した。評価結果を表1に示す。
比較例2(有機系紫外線吸収剤を含む紫外線吸収部材用組成物および紫外線吸収部材E)
有機系バインダーとしてアクリル樹脂溶液(綜研化学株式会社製の商品名;フォレットGS−1000、固形分30重量%MEK溶液)1.34gを100mlナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いてMEKを減圧留去し、アクリル樹脂0.40gを得た。ここにDMF0.93gを加えて攪拌し、アクリル樹脂溶液(固形分30重量%DMF溶液)を得た。DMF2.5gに溶解させ、ここにTinuvin326(BASF製)12mgを加えた。60℃湯浴中で超音波処理を行った後、メンブレンフィルター(ADVANTEC製のDISMIC25HP045AN)で濾過することにより、溶液形態の紫外線吸収部材用組成物Eを得た。
得られた紫外線吸収部材用組成物Eを、バーコーター(日本シーダース株式会社製、100μm)を用いてPETフィルム(フィルム厚100μm)上に塗布し、その後、20℃、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に160℃で5分間乾燥し、紫外線吸収部材Eを得た。コーティング膜の膜厚は11μmであった。
得られた紫外線吸収部材Eについて、紫外線(UV−A)吸収能、可視光透明性および耐光性を評価した。評価結果を表1に示す。
評価結果
紫外線吸収部材AおよびCは式(1)で表される銅錯体を分散系で使用した系であり、紫外線吸収部材Dは無機系紫外線吸収剤として従来公知の酸化亜鉛微粒子(ハクスイテック株式会社製、製品名:パゼットGK−水分散体)を使用した系である。紫外線吸収部材Dは、耐光性は非常に優れているものの紫外線吸収能が明らかに不足しており、また全光線透過率も低く、可視光透明性が損なわれている。一方、紫外線吸収部材AおよびCはDに比べるとやや耐光性は劣るものの、λ=380nmおよびλ=400nmにおける透過率は十分低く、優れた紫外線吸収能を有していることに加え、可視光透明性も十分確保されている。
また、紫外線吸収部材Bは式(1)で表される銅錯体を溶解系で使用した系であり、紫外線吸収部材Eは有機系紫外線吸収剤として従来公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、製品名:Tinuvin326)を溶解系で用いた系である。紫外線吸収部材Eは、全光線透過率は高いものの、耐光性および紫外線吸収能についてはともに不十分である。一方、紫外線吸収部材Bは、λ=380nmにおける透過率が十分低く、全光線透過率も高く保持されており、優れた可視光透明性を有することが確認された。
Figure 2013194037
すなわち、本発明によれば、式(1)で表される銅錯体を用いることで、従来遮蔽困難であった380〜400nmにおけるUV−Aを効果的に遮蔽することができる。
特に、λ=400nmのUV−Aを遮蔽したい場合および/または優れた耐光性を必要とする場合には、式(1)で表される銅錯体を分散系で使用することにより、これらの目的を達成することができる。
また、λ=380nm以下のUV−Aを遮蔽したい場合および/または高度な可視光透明性を要する場合には、式(1)で表される銅錯体を溶解系で使用することにより、これらの目的を達成することができる。
本発明の銅錯体は、紫外線吸収剤として、優れた耐光性を有し、可視光透明性を高度に保ったまま従来遮蔽困難であったUV−Aを効率的に遮蔽することができるので、様々な分野において、紫外線遮蔽用高機能材料を製造することが可能である。

Claims (3)

  1. 式(1):
    Figure 2013194037
    (式中、XおよびYはそれぞれ互いに独立して酸素原子または硫黄原子であり、Zはハロゲノ基、アセタト基、アセチルアセトナト基、ニトラト基であり、
    はモルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基であり、
    は、存在しないか、または存在する場合は、1つのベンゼン環の6個の炭素原子のうち5員環と共有された2個の炭素原子とRが結合した炭素原子を除いた最大3個の炭素原子に結合する水素原子のうち1ないし3個を置換することができ、ベンゼン環の水素原子を置換したRはそれぞれ互いに独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、モルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基であり、
    は、存在しないか、または存在する場合は、1つのベンゼン環の6個の炭素原子のうち5員環と共有された2個の炭素原子を除いた4個の炭素原子に結合する4個の水素原子のうち1ないし4個を置換することができ、ベンゼン環の水素原子を置換したRはそれぞれ互いに独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、モルホリノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基またはN−置換ピペラジノスルホニル基を示す。)で表される銅錯体。
  2. 請求項1に記載の少なくとも1種類の銅錯体と、少なくとも1種類のマトリックス材料を含む紫外線吸収部材用組成物。
  3. 請求項2に記載の紫外線吸収部材用組成物を用いて作製される紫外線吸収部材。
JP2012066059A 2012-03-22 2012-03-22 銅錯体、これを含有する紫外線吸収部材用組成物およびこれを用いた紫外線吸収部材 Pending JP2013194037A (ja)

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