JP2013185184A - 熱間プレス成形体およびその製造方法 - Google Patents

熱間プレス成形体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塗装後耐食性および耐チッピング性に優れた、高強度部と低強度部が共存する熱間プレス成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】成形体の鋼板表面に、Zn付着量とNi付着量の合計が5〜90g/m2であり、かつZn付着量とNi付着量の合計に対するNi付着量の比率が10〜25質量%であるZnおよびNiを含むめっき層を有し、引張強度が1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部とが共存することを特徴とする熱間プレス成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車の足廻り部材や車体構造部材などに適した熱間プレス成形体およびその製造方法に関する。
従来から、自動車の足廻り部材や車体構造部材などの多くは、所定の強度を有する鋼板をプレス成形して製造されている。近年、地球環境の保全という観点から、自動車車体の軽量化が熱望され、使用する鋼板を高強度化して、その板厚を低減する努力が続けられている。しかし、鋼板の高強度化に伴ってそのプレス成形性が低下するため、鋼板を所望の形状に成形することが困難になる場合が多くなっている。
そのため、特許文献1には、ダイとパンチからなる金型を用いて加熱された鋼板を成形すると同時に急冷することにより成形の容易化と高強度化の両立を可能にした熱間プレス成形と呼ばれる成形技術が提案されている。しかし、この熱間プレス成形では、熱間プレス成形前に鋼板を950℃前後の高い温度に加熱するため、鋼板表面にはスケール(鉄酸化物)が生成し、そのスケールが熱間プレス成形時に剥離して、金型を損傷させる、または熱間プレス成形後の成形体表面を損傷させるという問題がある。また、成形体表面に残ったスケールは、外観不良や塗装密着性の低下の原因にもなる。このため、通常は酸洗やショットブラストなどの処理を行って成形体表面のスケールは除去されるが、これは製造工程を複雑にし、生産性の低下を招く。さらに、自動車の足廻り部材や車体構造部材などには優れた耐食性も必要とされるが、上述のような工程により製造された熱間プレス成形体ではめっき層などの防錆皮膜が設けられていないため、耐食性が甚だ不十分である。
このようなことから、熱間プレス成形前の加熱時にスケールの生成を抑制するとともに、熱間プレス成形後の成形体の耐食性を向上させることが可能な熱間プレス成形技術が要望され、表面にめっき層などの皮膜を設けた鋼板やそれを用いた熱間プレス成形方法が提案されている。
例えば、特許文献2には、ZnまたはZnベース合金で被覆された鋼板を熱間プレス成形し、Zn-Feベース化合物またはZn-Fe-Alベース化合物を表面に設けた耐食性に優れる熱間プレス成形体の製造方法が開示されている。
一方、自動車の足廻り部材や車体構造部材などにおいては、衝突時に変形しにくい高強度鋼板と意図的に変形させる軟質鋼板とを組み合わせて構成される場合が多いため、一枚の鋼板から製造した成形体内に高強度部と低強度部を共存させることができれば、部品数を削減して車体の軽量化に大きく寄与できることになる。そこで、特許文献3には、高周波焼入れ用の溶融亜鉛めっき鋼板を所定の形状に成形後、強度を向上させたい部位に短時間の高周波焼入れを施す高周波焼入れ強化成形体の製造方法が提案されている。また、特許文献4には、所定量のFe、Al、Siを含有させた亜鉛めっき層を有し、引張強度で1000MPa以上の高強度部と800MPa以下の低強度部とを合わせ持つ高強度焼入れ成形体(熱間プレス成形体)が提案されている。
近年、熱間プレス成形体を自動車の車体下部の部材に適用する動きも出始めているが、車体下部では自動車の走行時に飛石が高頻度で衝突するため、塗膜が剥離して外観を劣化させたり、この塗膜剥離部が腐食の起点となって錆発生を招くなどの、いわゆる耐チッピング性が問題となる場合があり、その対策も急がれている。
英国特許第1490535号公報 特許第3663145号公報 特開2000-248338号公報 特開2010-180428号公報
しかしながら、特許文献2に記載の方法で製造された熱間プレス成形体、特許文献3に記載の方法で製造され高周波焼入れ強化成形体の高強度部、特許文献4に記載の熱間プレス成形体の高強度部(熱間プレス成形を受けた部分)において、耐食性に効果のあるZnの多くが、蒸発したり、ZnOやFeとの固溶体の形成で失われ、十分な塗装後耐食性が得られない。また、特許文献2〜4に記載の方法で製造された熱間プレス成形体は、十分な耐チッピング性が得られない。
本発明は、塗装後耐食性および耐チッピング性に優れた、高強度部と低強度部が共存する熱間プレス成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的とする熱間プレス成形体について鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。
i) 成形体の鋼板表面に、所定の付着量と比率からなるZnとNiを含有するめっき層を有し、引張強度が1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部が共存する熱間プレス成形体とすることが有効である。
ii) この熱間プレス成形体は、質量%で、C:0.15〜0.5%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.5〜3%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面に、所定の付着量とNi含有率からなるZn-Ni合金めっき層を有する鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下である高温部と0℃以上Ac3変態点未満である低温部とが共存するように加熱し、Ac3変態点以上1000℃以下である高温部が600〜800℃になったときに熱間プレス成形を開始することによって製造できる。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、成形体の鋼板表面に、Zn付着量とNi付着量の合計が5〜90g/m2であり、かつZn付着量とNi付着量の合計に対するNi付着量の比率が10〜25質量%であるZnおよびNiを含むめっき層を有し、引張強度が1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部とが共存することを特徴とする熱間プレス成形体を提供する。
本発明は、また、質量%で、C:0.15〜0.5%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.5〜3%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面に、付着量が5〜90g/m2であり、かつ10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn-Ni合金めっき層を有する鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下である高温部と0℃以上Ac3変態点未満である低温部とが共存するように加熱し、前記Ac3変態点以上1000℃以下である高温部が600℃以上800℃以下になったときに熱間プレス成形を開始することを特徴とする熱間プレス成形体の製造方法を提供する。
本発明の熱間プレス成形体の製造方法では、鋼板とZn-Ni合金めっき層との間に、付着量が0.01〜5g/m2であり、かつ60質量%以上のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる下層めっき層を有する鋼板を用いたり、さらに、質量%で、Cr:0.01〜1%、Ti:0.2%以下、B:0.0005〜0.08%のうちから選ばれた少なくとも一種やSb:0.003〜0.03%を、個別にあるいは同時に含有する成分組成を有する鋼板を用いることが好ましい。
本発明により、塗装後耐食性および耐チッピング性に優れた、高強度部と低強度部が共存する熱間プレス成形体を製造できるようになった。本発明の熱間プレス成形体は、自動車の足廻り部材や車体構造部材に好適である。
1) 熱間プレス成形体
1-1) めっき層
本発明の熱間プレス成形体は、成形体の鋼板表面に、Zn付着量とNi付着量の合計が5〜90g/m2であり、かつZn付着量とNi付着量の合計に対するNi付着量の比率が10〜25質量%であるZnおよびNiを含むめっき層を有する。
Zn付着量とNi付着量の合計を5〜90g/m2とする理由は、5g/m2未満では塗装後耐食性が不十分であり、90g/m2を超えるとその効果が飽和し、コストアップを招くためである。
Zn付着量とNi付着量の合計に対するNi付着量の比率を10〜25質量%とする理由は、めっき層の組成を、塗装後耐食性および耐チッピング性に優れ、かつ融点が881℃のZn-Ni金属間化合物であるγ相とするためである。γ相は、Ni2Zn11、NiZn3、Ni5Zn21のいずれかの結晶構造を有し、X線回折法やTEM(Transmission Electron Microscopy)を用いた電子線回折法により確認できる。
なお、Zn付着量およびNi付着量は、めっき層を例えば塩酸などにより溶解し、その溶解液を原子吸光分析法やICP発光分光分析法にて分析することによりそれぞれ定量することができる。
本発明の熱間プレス成形体の鋼板表面に有するめっき層としては、上述のとおり、所定の付着量と比率からなるZnおよびNiを含有するめっき層であれば、他の構成要件に関しては何ら限定されるものでなく、例えば、めっき層の上層にZnO皮膜を有していたり、めっき層の下地鋼板にZnやNiが拡散した領域を有していてもよい。
1-2) 熱間プレス成形体の強度
本発明の熱間プレス成形体では、引張強度が1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部が共存する。高強度部と低強度部を共存させる理由は、自動車が衝突した際に、潰れずに強度を維持する部分と意図的に潰す部分とを一枚の鋼板から製造した成形体内に共存させることにより、部品数を削減して車体の軽量化を可能にするためである。高強度部の強度は、目的により異なるが、衝突時の安全性を確保すると同時に、板厚を薄くして軽量化を図る観点から、引張強度で1000MPa以上とする。一方、低強度部の強度も、目的により異なるが、衝突時に潰れやすくするため、引張強度で1000MPa未満とする。
2) 熱間プレス成形体の製造方法
本発明の熱間プレス成形体は、以下に示す素材の鋼板を用い、以下に示す熱間プレス成形条件によって製造できる。
2-1) 素材の鋼板
2-1-1) 成分組成
素材の鋼板としては、熱間プレス成形体に、引張強度で1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部とを形成できる成分系の鋼板であれば、特に限定されることはないが、例えば、質量%で、C:0.15〜0.5%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.5〜3%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する熱延鋼板や冷延鋼板を用いることができる。各成分元素の限定理由を、以下に説明する。ここで、成分の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.15〜0.5%
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス成形体の高強度部の強度を1000MPa以上にするには、その量を0.15%以上とする必要がある。一方、C量が0.5%を超えると鋼板のブランキング加工性が著しく低下する。したがって、C量は0.15〜0.5%とする。
Si:0.05〜2.0%
Siは、Cと同様、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス成形体の高強度部の強度を1000MPa以上にするには、その量を0.05%以上とする必要がある。一方、Si量が2.0%を超えると熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥の発生が著しく増大するとともに、圧延荷重が増大したり、熱延鋼板の延性の劣化を招く。したがって、Si量は0.05〜2.0%とする。
Mn:0.5〜3%
Mnは、フェライト変態を抑制して焼入れ性を向上させるのに効果的な元素であり、また、Ac3変態点を低下させるので、熱間プレス成形前の加熱温度を低下するにも有効な元素である。このような効果の発現のためには、その量を0.5%以上とする必要がある。一方、Mn量が3%を超えると偏析して鋼板および熱間プレス成形体の特性の均一性が低下する。したがって、Mn量は0.5〜3%とする。
P:0.1%以下
P量が0.1%を超えると偏析して鋼板および熱間プレス成形体の特性の均一性が低下するとともに、靭性も著しく低下する。したがって、P量は0.1%以下とする。
S:0.05%以下
S量が0.05%を超えると熱間プレス成形体の靭性が低下する。したがって、S量は0.05%以下とする。
Al:0.1%以下
Al量が0.1%を超えると鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.1%以下とする。
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると熱間圧延時や熱間プレス成形前の加熱時にAlNの窒化物を形成し、鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.01%以下とする。
残部はFeおよび不可避的不純物であるが、以下の理由により、Cr:0.01〜1%、Ti:0.2%以下、B:0.0005〜0.08%のうちから選ばれた少なくとも一種やSb:0.003〜0.03%を、個別にあるいは同時に含有させることが好ましい。
Cr:0.01〜1%
Crは、鋼を強化するとともに、焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果の発現のためには、Cr量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cr量が1%を超えると著しいコスト高を招くため、その上限は1%とすることが好ましい。
Ti:0.2%以下
Tiは、鋼を強化するとともに、細粒化により靭性を向上させるのに有効な元素である。また、次に述べるBよりも優先して窒化物を形成して、固溶Bによる焼入れ性の向上効果を発揮させるのに有効な元素でもある。しかし、Ti量が0.2%を超えると熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間プレス成形体の靭性が低下するので、その上限は0.2%とすることが好ましい。
B:0.0005〜0.08%
Bは、熱間プレス成形時の焼入れ性や熱間プレス成形後の靭性向上に有効な元素である。こうした効果の発現のためには、B量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、B量が0.08%を超えると熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間圧延後にマルテンサイト相やベイナイト相が生じて鋼板の割れなどが生じるので、その上限は0.08%とすることが好ましい。
Sb:0.003〜0.03%
Sbは、熱間プレス成形前に鋼板を加熱してから熱間プレス成形の一連の処理によって鋼板を冷却するまでの間に鋼板表層部に生じる脱炭層を抑制する効果を有する。このような効果の発現のためには、その量を0.003%以上とする必要がある。一方、Sb量が0.03%を超えると圧延荷重の増大を招き、生産性を低下させる。したがって、Sb量は0.003〜0.03%とすることが好ましい。
2-1-2) めっき層
素材の鋼板は、その表面に、上述した成形体の鋼板表面に有するめっき層と同一のめっき層、すなわちZn付着量とNi付着量の合計が5〜90g/m2であり、かつZn付着量とNi付着量の合計に対するNi付着量の比率が10〜25質量%であるZnおよびNiを含むめっき層を、上述と同じ理由で有する。また、鋼板とZnおよびNiを含むめっき層との間に、付着量が0.01〜5g/m2であり、かつ60質量%以上のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる下層めっき層を設けることが、耐チッピング性をより一層向上させる上で好ましい。
2-2) 熱間プレス成形条件
上述の素材の鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下である高温部と0℃以上Ac3変態点未満である低温部とが共存するように加熱し、Ac3変態点以上1000℃以下である高温部が600℃以上800℃以下になったときに熱間プレス成形を開始することよって熱間プレス成形体を製造する。
Ac3変態点以上1000℃以下である高温部と0℃以上Ac3変態点未満である低温部とが共存するように加熱する理由は、熱間プレス成形体に、引張強度が1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部を共存させるためである。このとき、Ac3変態点以上1000℃以下であった高温部には、熱間プレス成形時の急冷でマルテンサイト相などの硬質相が形成されて、高強度部が形成されるが、そのためにはAc3変態点以上に加熱してオーステナイト単相にする必要がある。なお、上限温度を1000℃としたのは、1000℃を超えて加熱しても強度に大きな変化がなく、コストアップを招くためである。一方、0℃以上Ac3変態点未満であった低温部には、上述のようなオーステナイト化と急冷による硬質相の形成が生じないため、1000MPa未満の低強度部が形成される。
加熱後は放冷し、Ac3変態点以上1000℃以下である高温部が600℃以上800℃以下になったときに熱間プレス成形を開始する。その理由は、上述のような成分系の鋼板では、600℃未満になると熱間プレス成形前にフェライト相の析出が起き、引張強度が1000MPa以上の高強度部が得られなくなり、800℃を超えると加熱時に溶融しためっき層の一部が完全に凝固せず、これが金型に付着するなどして塗装後耐食性が劣化する場合があるためである。
なお、本発明における素材の鋼板では、融点が881℃のZn-Ni金属間化合物のめっき層を設けているため、上述のように、800℃以下で熱間プレス成形を開始すれば、めっき層が固体の状態でプレス成形を行うことができるが、融点が420℃の溶融亜鉛めっき層(η相)、融点が665℃、782℃の合金化溶融亜鉛めっき層(δ相、Γ相)、融点が660℃のAl-Siめっき層を有する鋼板の場合は、熱間プレス成形の開始温度によってめっき層が固体の場合と液体の場合が存在し、めっき層の一部が金型に付着して塗装後耐食性が劣化するなど、安定した品質を得ることが困難である。
加熱の方法としては、電気炉やガス炉などによる加熱、火炎加熱、通電加熱、誘導加熱、遠赤外線加熱などの公知の方法が適用可能であるが、本発明のように高温に加熱する部分と、加熱しない部分または低温に保持する部分とが共存するような加熱には、通電加熱、誘導加熱、遠赤外線加熱などが好適である。加熱の昇温速度は何ら限定されないが、生産性の観点から、好ましくは30℃/s以上、より好ましくは60℃/s以上である。また、加熱の保持時間も何ら限定されないが、生産性の観点から、好ましくは60s以下、より好ましくは30s以下である。
素材の鋼板として、質量%で、C:0.23%、Si:0.25%、Mn:1.2%、P:0.01%、S:0.01%、Al:0.03%、N:0.005%、Cr:0.2%、Ti:0.02%、B:0.0022%、Sb:0.008%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、Ac3変態点が820℃で、板厚1.6mmの冷延鋼板の表面に、200g/Lの硫酸ニッケル六水和物および10〜100g/Lの硫酸亜鉛七水和物を含有するpH1.5、温度50℃のめっき浴中で電流密度を5〜100A/dm2と変化させて電気めっき処理を施して、表1に示すZnとNiを含有するめっき層を形成した鋼板No.1〜25を作製した。このとき、通電時間を変化させることによりめっきの付着量を変化させた。また、硫酸亜鉛七水和物の添加量と電流密度を変化させることによりめっき層中のNi含有率を変化させた。なお、鋼板No.11〜15には、ZnとNiを含有するめっき層の形成に先立って、下層めっき層を形成した。下層めっき層の形成は、200g/Lの硫酸ニッケル六水和物および0〜50g/Lの硫酸亜鉛七水和物を含有するpH3.0、温度50℃のめっき浴中で電流密度を5〜100A/dm2と変化させて電気めっき処理を行い、付着量およびNi含有率を変化させた。比較として、上記冷延鋼板の表面に、溶融めっき処理を施した溶融Znめっき鋼板(GI)、合金化溶融Znめっき鋼板(GA)、Al-10%Siめっき鋼板である鋼板No.26〜28を作製した。
鋼板No.1〜28から、100mm×400mmの試験片を採取し、100mm×200mmの部分が高温部に、残りの100mm×200mmの部分が低温部になるように、表1に示す加熱条件により加熱した。引き続き、高温部の温度が表1に示す急冷開始温度となったときに、鋼板をAl製金型で挟むことによって急冷処理を行った。このときの高温部における冷却速度は50℃/sであった。
このようにして作製した鋼板の高温部を高強度部、低温部を低強度部として、以下のようにして強度測定、塗装後耐食性評価、耐チッピング性評価を行った。
強度測定:高強度部と低強度部のビッカース硬度(試験荷重49N)を測定し、その値を3.3倍して引張強度(MPa)とした。
塗装後耐食性評価:まず、高強度部と低強度部の100mm×200mmの試験片から70mm×150mmの試験片を採取し、化成処理、電着塗装を施した。化成処理は、日本パーカライジング株式会社製PB-L3020を使用して標準条件で行った。電着塗装は、関西ペイント株式会社製GT-10を使用し、電圧200Vで塗装後、170℃で20分間の焼付けを行う条件で行い、膜厚を20μmとした。次に、このようにして得られた電着塗装試験片にカッターナイフによりクロスカット傷を入れ、傷を入れてない面および端部をシールした後、JIS Z2371-2000に準拠して480時間の塩水噴霧試験を行った。そして、試験後の試験片を水洗・乾燥し、セロハン粘着テープにより傷部の剥離試験を行い、片側最大剥離幅を測定した。得られた片側最大剥離幅から、塗装後耐食性を以下の基準で評価し、◎または○であれば本発明の目的を満足しているものとした。
◎:片側最大剥離幅≦2mm
○:2mm<片側最大剥離幅≦3mm
△:3mm<片側最大剥離幅≦5mm
×:5mm<片側最大剥離幅
耐チッピング性評価:まず、高強度部と低強度部の残りの100mm×200mmの試験片から70mm×150mmの試験片を採取し、化成処理、電着塗装および中塗り、上塗り塗装を施した。化成処理および電着塗装は、上記の塗装後耐食性評価の場合と同様な方法により行った。中塗りは、関西ペイント株式会社製TP65-2をスプレー塗装して膜厚を35μmとし、上塗りは、関西ペイント株式会社製ネオアミラック6000をスプレー塗装して膜厚を35μmとした。その後、6号砕石100gを用い、試験温度-20℃、エアー圧力4kgf/cm2、ショット角度40°の条件でチッピング処理を行い、ガムテープにより鋼板表面の塗膜剥離を実施した後、剥離の大きい10点を選んでその長径を測定し、10点の平均を平均剥離径とした。得られた平均剥離径から、耐チッピング性を以下の基準で評価し、◎または○であれば本発明の目的を満足しているものとした。
◎:平均剥離径≦3mm
○:3mm<平均剥離径≦4mm
△:4mm<平均剥離径≦5mm
×:5mm<平均剥離径
結果を表1に示す。本発明例は、引張強度が1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部とを有しており、高強度部、低強度部のいずれにおいても塗装後耐食性および耐チッピング性に優れていることがわかる。
Figure 2013185184

Claims (5)

  1. 成形体の鋼板表面に、Zn付着量とNi付着量の合計が5〜90g/m2であり、かつZn付着量とNi付着量の合計に対するNi付着量の比率が10〜25質量%であるZnおよびNiを含むめっき層を有し、引張強度が1000MPa以上の高強度部と1000MPa未満の低強度部とが共存することを特徴とする熱間プレス成形体。
  2. 質量%で、C:0.15〜0.5%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.5〜3%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面に、付着量が5〜90g/m2であり、かつ10〜25質量%のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなるZn-Ni合金めっき層を有する鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下である高温部と0℃以上Ac3変態点未満である低温部とが共存するように加熱し、前記Ac3変態点以上1000℃以下である高温部が600℃以上800℃以下になったときに熱間プレス成形を開始することを特徴とする熱間プレス成形体の製造方法。
  3. 鋼板とZn-Ni合金めっき層との間に、付着量が0.01〜5g/m2であり、かつ60質量%以上のNiを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる下層めっき層を有する鋼板を用いることを特徴とする請求項2に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
  4. さらに、質量%で、Cr:0.01〜1%、Ti:0.2%以下、B:0.0005〜0.08%のうちから選ばれた少なくとも一種を含有する成分組成を有する鋼板を用いることを特徴とする請求項2または3に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
  5. さらに、質量%で、Sb:0.003〜0.03%を含有する成分組成を有する鋼板を用いることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の熱間プレス成形体の製造方法。
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