JP2013174668A - フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜製造装置および製造方法 - Google Patents

フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜製造装置および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高耐久性のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を連続的に成膜できる製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】チャンバーと、フッ素含有有機ケイ素化合物を加熱する加熱容器と、チャンバー内に設けられ、加熱容器と接続され、フッ素含有有機ケイ素化合物を供給する複数のノズルと、ノズルと基材の被成膜面とが対向するように基材を連続的に搬送可能な基材搬送機構を備え、前記フッ素含有有機ケイ素化合物は溶媒除去処理を行った又は非希釈であるフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置及び、溶媒除去処理を行った、又は、非希釈のフッ素含有有機ケイ素化合物を加熱容器内で加熱し、チャンバー内に設けられ加熱容器と接続された複数のノズルからフッ素含有有機ケイ素化合物を供給し、ノズルと基材の被成膜面とが対向するように基材を基材搬送機構により連続的に供給するフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜製造装置および製造方法に関する。
ディスプレイガラス、光学素子、衛生機器等は使用時に人間の指等に触れる機会があるため、指紋、皮脂、汗等による汚れが付着しやすい。そして、これらの汚れは付着すると落ちにくく、また、光の加減等によっては目立つため、視認性や美観を損ねるという問題があった。
係る問題を解消するために、これらの部品、機器の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物からなる防汚膜を形成する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、多孔質セラミック製のペレットに原料を含浸、乾燥させたものを蒸発源として真空蒸着により製膜する方法が記載されている。
しかしながら、このように蒸着装置に導入する前に乾燥させた原料を蒸着源として用いた場合、原料物質が不安定になるため、得られる防汚膜の性能が安定せず歩留まりが低下する問題があった。また、ペレット化の工程が必要な分コストが高くなっていた。
そして、特許文献2には、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物含有溶液を電子ビームで加熱して基材上に該化合物の薄膜を形成する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載された発明においては、原料を所定時間以上加熱した場合、得られる防汚膜の耐久性が低下する。このため、生産できる膜の厚さが制限されることや、安定して耐久性の高い膜を生産できないなどの問題があった。
さらに、特許文献1、2に記載されたいずれの方法においても、加熱後数十秒以内に蒸発する極少量の原料をセットしてバッチ式で運転する必要があり、生産性が低かった。また、所定時間内に昇温させるため使用できる装置が限定され、コスト高の原因となっていた。
このように、これら従来の製膜方法によれば、バッチ式により防汚膜を製造する方法しか知られておらず、耐久性を有する防汚膜を連続的に安定して製造することはできていなかった。
特開2009−175500号公報 特開2008−107836号公報
本発明は上記従来技術が有する問題に鑑み、高耐久性のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を連続的に成膜できる製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明は、基材表面にフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜するフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置であって、チャンバーと、フッ素含有有機ケイ素化合物を加熱する加熱容器と、前記チャンバー内に設けられ、前記加熱容器と配管により接続されており、基材に対してフッ素含有有機ケイ素化合物を供給する複数のノズルと、前記複数のノズルと基材の被成膜面とが対向するように基材を連続的に搬送することが可能な基材搬送機構と、を備えており、前記フッ素含有有機ケイ素化合物は、溶媒除去処理を行ったもの、または、溶媒で希釈されていないものであることを特徴とするフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置を提供する。
本発明は、フッ素含有有機ケイ素化合物に一般的に添加されている溶媒の除去処理を行った、または溶媒で希釈されていない(溶媒を含有していない)フッ素含有有機ケイ素化合物を加熱し、これを基材に供給し堆積させることによって耐久性のある膜を連続的に成膜することを可能とした。
そして、基材搬送機構は基材の被成膜面と複数のノズルとが対向するように基材を連続的に搬送することが可能であるため、複数の基材に連続的にフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜することが可能になる。このため、従来用いられていたバッチ式の成膜装置と比較して生産性を格段に向上させることが可能になる。
本発明に係る第1の実施形態の製造装置の説明図 本発明に係る第1の実施形態の製造装置の横断面図 本発明に係る第1の実施形態の製造装置の変形例の説明図 本発明に係る第1の実施形態の製造装置の変形例の説明図 本発明に係る実施例のガラス基材キャリアの説明図 本発明に係る実施例の成膜後のガラス基材キャリア内での膜厚分布
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[第1の実施形態]
本実施形態ではフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置について説明を行う。
本発明のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置は、基材表面にフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜するフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置である。
具体的な構成について図1〜図4を用いて説明する。なお、図1〜図4は本発明のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜製造装置の構成例を示したものであり、係る形態に限定されるものではない。
まず、図1は、本実施形態に係るフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜製造装置の上面図を模式的に記載したものであり、図2は、図1のA−A´線での断面図を示したものである。
フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置10は、チャンバー11と、フッ素含有有機ケイ素化合物12を加熱する加熱容器13とを備えている。そして、チャンバー11内に設けられ、加熱容器13と配管14により接続され、基材に対してフッ素含有有機ケイ素化合物を供給する複数のノズル(噴射口)15を備えている。前記複数のノズル15と基材17の被成膜面とが対向するように前記基材17を連続的に搬送することが可能な、図1中点線で表した基材搬送機構18をさらに備えている。
また、本製造装置において用いるフッ素含有有機ケイ素化合物は、溶媒除去処理を行ったもの、または、溶媒で希釈されていないもの(溶媒を含まないもの)である。
図中基材17は矢印方向に搬送され、複数のノズル15と対向する領域周辺(有効成膜領域16)において、真空蒸着法によりフッ素含有有機ケイ素化合物の薄膜が成膜されるように構成されている。
各部材について説明する。
チャンバー11は、その大きさ、形状、材質等については限定されるものではなく、用いる基材の大きさ、チャンバー内での成膜条件等に応じて選択することができる。
また、チャンバー11にはガス配管等の付帯設備を設けることもできる。例えば、成膜条件に応じてその内部を所望の真空度としたり、ガスを供給したりできるよう、図2に示すように真空ポンプと接続された配管21、ガス供給部と接続された配管22を設けることができる。
加熱容器13については、大きさ、材質については限定されるものではないが、フッ素含有有機ケイ素化合物を導入後、容器内の真空排気を行う場合等に負圧になる場合があるため、耐熱性に加えて、耐圧性を有するものが好ましい。
また、加熱容器には、加熱容器内の雰囲気制御を行うために、真空ポンプやガス供給部と接続された配管を設けることもできる。成膜する際の加熱容器の加熱温度については原料により異なるため限定されるものではなく、十分な成膜速度が得られるように加熱すればよい。
加熱容器と複数のノズルとを接続する配管14についても、形状、材質は特に限定されるものではない。例えばマニホールドにより構成することもできるし、各ノズルと加熱容器とを個別に接続する複数の配管から構成することもできる。
また、加熱容器から各ノズルに至るまでの間に、加熱容器内で気体状になったフッ素含有有機ケイ素化合物が凝縮しないように、配管14を加熱することが好ましい。
さらに、各ノズルからのフッ素含有有機ケイ素化合物の供給量が調整できるように、加熱容器と複数のノズルとを接続する配管には、フッ素含有有機ケイ素化合物の供給量を調整する可変バルブ19が設けられていることが好ましい。そして、チャンバー内に設けられた膜厚計20からの検出値に応じて可変バルブの開度を制御するように構成されていることが好ましい。
これは、係る構成を有することにより、膜厚計20からの検出値、すなわち成膜速度を可変バルブ19の開度により制御し、目的の成膜速度で成膜を行うことが可能になるためである。また、基材によって成膜速度を変えることも可能になり、異なる種類(膜厚)の商品も製造装置を停止することなく連続的に生産することができ、生産性を高めることができる。
さらに、成膜領域に基材が供給されていない時にはノズルからの供給を停止できるように、成膜領域よりも基材供給路の上流側に基材センサー(基材検出器)を設け、可変バルブまたは別途配管14上に設けたバルブと連動するように構成していることが好ましい。
基材センサーとは、基材が通過したかを検出するものであり、例えば赤外線センサー等により構成することができる。そして、基材センサーと配管上のバルブと連動させることにより一定時間基材が通過しない場合には、バルブを閉めてノズルへのフッ素含有有機ケイ素化合物の供給を中断し、再度基材が通過した場合には、バルブを開け、供給を開始するように構成される。
これは、原料であるフッ素含有有機ケイ素化合物は一般的に高価であり、基材に対して供給されない原料は少なくなることが好ましい。このため、係る構成を有することによってコストの低減を図ることが可能になる。
ノズル15については、その大きさ、配置については限定されるものではなく、要求される成膜速度や基材の大きさ等により選択することができる。均一なフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を真空蒸着により成膜できるように、各ノズルからの供給量が均一になるよう開口径等が調整されていることが好ましい。
そして、例えば基材を搬送しながら成膜する場合には、基材の搬送方向を横断するように、すなわち基材の搬送方向に対して垂直になるようにノズルをライン状に配置することが好ましい。また、基材を有効成膜領域で一旦停止させてから成膜を行う場合には、基材の被成膜面全面に対して均一にフッ素含有有機ケイ素化合物を供給できるようにノズルが配置されていることが好ましい。
また、ノズルは、ノズルと基材の被成膜面とが対向するように配置されている。図1、図2においては、基材(基板)を地面と鉛直方向に保持し、これに対向するようにノズルを設置しているためノズルから水平方向にフッ素含有有機ケイ素化合物を噴射することになっている。しかし、係る形態に限らず、例えば基材を地面と水平に保持し、その上面または下面側から噴射するように構成することもできる。また、基材両面に対向するようにノズルを設け、基材の表裏両面に同時に成膜を行うこともできる。
基材17とノズル15との間に、フッ素含有有機ケイ素化合物供給経路からの輻射熱が基材17に伝わるのを防ぐため、図2に示すように、冷却板23を設けることもできる。なお、冷却板の形状等は限定されるものではなく、ノズル15からの成膜原料の供給を妨げないように配置されていればよい。
基材17については、特に限定されることなく、防汚膜、撥水膜、撥油膜が必要とされるガラス、プラスチック、金属等の各種基材を採用できる。さらに、その形状についても平板状のものや、成型加工等されているものについても使用できる。
基材搬送機構18についても、チャンバー内で前記複数のノズル15と基材17の被成膜面とが対向するように前記基材17を搬送することができ、有効成膜領域に基材を連続的に供給することが可能であれば特に限定されるものではない。
基材搬送機構としては、例えば、一般的には、基板を斜めに傾けて保持したり、基板の周囲をばね性のある冶具で数点保持するなど、機械的な保持を行うのが一般的である。また、比較的小さな基板であれば、基材を吸着パッドや静電チャック等の基材保持部材により、保持、固定し、基材保持部材をラック・アンド・ピニオン機構等により搬送する方法なども挙げられる。
なお、ここでいう連続的に基材を搬送するとは、複数の基材を順次搬送、供給できれば良く、搬送する基材同士に間隔があってもよい。
このように基材搬送機構によって成膜領域に連続的に基材を供給、成膜することにより、従来のバッチ式に比べて単位時間当たりに成膜できる基材の量(枚数)が増加するため、生産性を高めることが可能になる。
また、成膜領域において基材を停止させることなく搬送しながら基材の被成膜面に成膜を行う場合には、基材搬送機構はフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の成膜速度に応じて、基材の搬送速度を変更することが可能であることが好ましい。基材搬送機構の基材搬送速度を変更可能に構成することによって、目的の膜厚のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜することが可能になり、無駄な原料の消費を抑え、歩留まりを向上することができる。
さらに、ここまで説明したフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置において、チャンバー内に連続的に基材を供給するため、基材導入室(前室)、基材取出し室を有することができる。
具体的な構成としては、基材をチャンバーに導入するための基材導入室と、チャンバーから基材を取出すための基材取出し室とがチャンバーに接続されている。そして、前記基材導入室、前記基材取出し室は、それぞれ独立して給排気可能に構成され、前記基材搬送機構は、前記基材導入室、前記チャンバー、前記基材取出し室の間で基材を搬送できるように構成されているものである。
具体的な製造装置について図3を用いて説明する。図1、図2と同じ部材については、同じ番号を付している。
図3に示すように、基材をチャンバーに導入するための基材導入室(前室)31と、チャンバーから基材を取出すための基材取出し室32がチャンバー11に接続されている。そして、基材導入室31、基材取出し室32はそれぞれ独立して給排気可能に構成されている。すなわち、真空ポンプと接続された真空配管や、ガスを供給するためのガス供給配管をそれぞれに設けることができる。また、基材を導入、取出すための開閉可能な導入口、取出し口を備えていることが好ましい。
そして、基材導入室、チャンバー、基材取出し室の間には開閉可能であり、閉じている時にはそれぞれの部屋の気密性を保つことが可能な壁(ゲート)33、34を設けることが好ましい。係るゲートは、少なくとも基材が通過可能な範囲が開閉可能であれば足り、例えばゲートバルブ等により構成することができる。
そして、基材導入室、チャンバー、基材取出し室の間で基材搬送機構18により基材を搬送できるように構成されていることが好ましい。これにより、基材導入室からチャンバー、基材取出し室まで基材を基材搬送装置により搬送することができる。
基材搬送機構は基材導入室からチャンバー基材取出し室まで一体の構成である必要はなく、例えば基材導入室、チャンバー、基材取出し室毎に個別の基材搬送機構とし、各部屋間で基材を受け渡しできるように構成されていてもよい。
また、基材導入室、チャンバー、基材取出し室の配置は特に限定されるものではなく、これら3つの部屋が連続して配置されていれば足り、設置場所等の条件に応じて各種配置にすることができる。例えば、図3に示すように3つの部屋を直線状に配置した場合、フットプリントが少なくすみ、搬送機構も簡便であるため好ましい。
このように構成することによって、チャンバー内で成膜処理を行っている間に、次に成膜処理を行うための基材を基材導入室に配置し、基材導入室をチャンバー内と同じ雰囲気とする工程を平行して行うことができる。また、成膜が終わった基材は基材取出し室に搬送し、チャンバーと基材取出し室の間を壁により雰囲気を切り離した後、基材を基材取出し室から取出すことができる。このため、チャンバー内と異なる雰囲気を有する環境との間で基材を導入、取出しを行う場合でも、チャンバー内の雰囲気を壊すことなく、基材の導入、取出しを連続的に行うことが可能になり、生産性を高めることができる。
なお、基材導入室、基材取出し室はそれぞれ1室ずつに限定されるものではなく、それぞれ複数室設け、真空度、雰囲気によって使い分けたり、チャンバーに対して複数の導入室または取出し室を並列に設けたりすることもできる。
さらに、フッ素含有有機ケイ素化合物を供給する複数のノズル(成膜手段)よりも基材搬送路の上流側に基材表面を処理するための前処理手段を有することもできる。
具体的な構成について、図4を用いて説明する。図中、図1〜3と同じ部材については同じ番号を付している。
図4に示すように、フッ素含有有機ケイ素化合物を供給する前記ノズルよりも基材搬送路の上流側に基材表面を処理するための前処理手段35が配置されている。
前処理手段の内容としては特に限定されるものではなく、必要に応じて選択することができるが、例えば基材表面への下地膜形成処理や、プラズマ処理、イオン銃照射等が挙げられる。
ここで、下地膜形成処理の方法、膜の種類については用途等により選択されるものであるが、例えばスパッタ法により酸化ケイ素膜を成膜してフッ素含有有機ケイ素化合物膜と基材との密着性(接合強度)を高める方法等が挙げられる。また、プラズマ処理としては、ArやO、HOなどのプラズマにより基材表面を処理し、表面の汚れの除去、表面改質を行うことができる。イオン銃照射の場合もプラズマと同様にArやO、HOガスを使用し、基材表面の汚れ除去、表面改質を行うことができる。
なお、前処理手段としては、1つに限定されるものではなく、2つ以上の処理を行ってもよい。例えば下地膜形成処理とプラズマ処理両方を行ってもよい。
前処理手段を配置する場所については有効成膜領域よりも基材供給路の上流側に配置されていればよく、特に限定されるものではない。例えば図4に示したように複数のノズル(成膜手段)を設けたチャンバー内に配置することもできる。この場合、例えば前処理手段で用いる雰囲気と成膜領域の雰囲気が異なる場合には、前処理手段を設けた領域と成膜領域との間に基材が通過できる程度の開口部(スリット)を有する隔壁36を設け、両領域の雰囲気を制御できるように構成することもできる。さらに、隔壁36に設けた開口部にはバルブや可動式の壁により開閉可能に構成することもできる。
また、複数のノズルを有するチャンバーとは別途前処理手段用のチャンバーを設け、基材搬送機構により両チャンバー間で基材を搬送可能に構成することもできる。
このように有効成膜領域よりも上流側に前処理手段を設けることによって、基材とフッ素含有有機ケイ素化合物との密着性(接合強度)を高めることが可能になる。また、このように基材供給路上に前処理手段を設けることによって、基材を製造装置に供給する前に基材の前処理を別途行う場合に比べて、作業性が向上し、生産性を高めることが可能になる。
次に、本発明で用いるフッ素含有有機ケイ素化合物について説明する。本発明で用いるフッ素含有有機ケイ素化合物としては、防汚性、撥水性、撥油性を付与するものであれば特に限定されず使用できる。
具体的には、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物が挙げられる。なお、パーフルオロポリエーテル基とは、パーフルオロアルキレン基とエーテル性酸素原子とが交互に結合した構造を有する2価の基のことである。
このパーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物の具体例としては、下記一般式(I)〜(V)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2013174668
式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状のパーフルオロアルキル基(アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等)、Xは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等)、R1は加水分解可能な基(例えば、アミノ基、アルコキシ基等)又はハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、mは1〜50、好ましくは1〜30の整数、nは0〜2、好ましくは1〜2の整数、pは1〜10、好ましくは1〜8の整数である。
2q+1CHCHSi(NH) (II)
ここで、qは1以上、好ましくは2〜20の整数である。
一般式(II)で表される化合物としては例えば、n−トリフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)プロピルシラザン(n−CFCHCHSi(NH)、n−ヘプタフロロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ペンチルシラザン(n−CCHCHSi(NH)等を例示することができる。
q'2q'+1CHCHSi(OCH (III)
ここで、q'は1以上、好ましくは1〜20の整数である。
一般式(III)で表される化合物としては、2−(パーフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン(n−C17CHCHSi(OCH)等を例示することができる。
Figure 2013174668
式(IV)中、Rf2は、−(OC−(OC−(OCF−(s、t、uはそれぞれ独立に0〜200の整数)で表わされる2価の直鎖状パーフルオロポリエーテル基であり、R、Rは、それぞれ独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等)である。X、Xは独立に加水分解可能な基(例えば、アミノ基、アルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、イソシアネート基等)またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、d、eは独立に1〜2の整数であり、c、fは独立に1〜5(好ましくは1〜2)の整数であり、aおよびbは独立に2または3である。
化合物(IV)が有するRf2においてs+t+uは、20〜300であることが好ましく、25〜100であることがより好ましい。また、R、Rとしてはメチル基、エチル基、ブチル基がより好ましい。X、Xで示される加水分解性基としては、炭素数1〜のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。また、aおよびbはそれぞれ3が好ましい。
Figure 2013174668
式(V)中、vは1〜3の整数であり、w、y、zはそれぞれ独立に0〜200の整数であり、hは1または2であり、iは2〜20の整数であり、Xは加水分解性基であり、Rは炭素数1〜22の直鎖または分岐の炭化水素基であり、kは0〜2の整数である。w+y+zは、20〜300であることが好ましく、25〜100であることがより好ましい。また、iは2〜10であることがより好ましい。Xは、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。Rとしては、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
また、市販されているパーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物として、KP−801(商品名、信越化学工業株式会社製)、KY178(商品名、信越化学工業株式会社製)、KY−130(商品名、信越化学工業株式会社製)、オプツ−ル(登録商標)DSXおよびオプツールAES(いずれも商品名、ダイキン工業株式会社製)などが好ましく使用できる。
なお、フッ素含有有機ケイ素化合物は、大気中の水分との反応による劣化抑制などのためにフッ素系溶媒等の溶媒と混合して保存されているのが一般的であるが、これらの溶媒を含んだまま成膜工程に供すると、得られた薄膜の耐久性等に悪影響を及ぼすことがある。
このため、本発明においては、加熱容器で加熱を行う前に予め溶媒除去処理を行ったフッ素含有有機ケイ素化合物または溶媒で希釈されていない(溶媒を添加していない)フッ素含有有機ケイ素化合物を用いる。例えば、フッ素含有有機ケイ素化合物溶液中に含まれる溶媒の濃度として1mol%以下のものが好ましく、0.2mol%以下のものがより好ましい。溶媒を含まないフッ素含有有機ケイ素化合物を用いることが特に好ましい。
なお、上記フッ素含有有機ケイ素化合物を保存する際に用いられている溶媒としては、例えば、パーフルオロヘキサン、メタキシレンヘキサフルオライド(C(CF)、ハイドロフロオロポリエーテル、HFE7200/7100(商品名、住友スリーエム株式会社製、HFE7200はC、HFE7100はCOCHで表わされる)等が挙げられる。
溶媒を含むフッ素含有有機ケイ素化合物溶液からの溶媒(溶剤)の除去処理は、例えばフッ素含有有機ケイ素化合物溶液を入れた容器を真空排気することにより行うことができる。
真空排気を行う時間については、排気ライン、真空ポンプ等の排気能力、溶液の量等により変化するため限定されるものではないが、例えば10時間程度以上真空排気することにより行うことができる。
係る操作は、加熱容器にフッ素含有有機ケイ素化合物溶液を導入後、昇温する前に室温で加熱容器内を真空排気することにより行うこともできる。また、加熱容器に導入する前に予めエバポレーター等により溶媒除去工程を行っておくこともできる。
ただし、前述の通り溶媒含有量が少ない、または含まないフッ素含有有機ケイ素化合物は溶媒を含んでいるものと比較して、大気、特にその中の水分と接触することにより劣化しやすい。
このため、溶媒含有量の少ない(または含まない)フッ素含有有機ケイ素化合物の保管容器は容器中を窒素等の不活性ガスで置換、密閉したものを使用し、取り扱う際には大気への暴露、接触時間が短くなるようにすることが好ましい。
具体的には、保管容器を開封後は直ちに本製造装置の加熱容器にフッ素含有有機ケイ素化合物を導入することが好ましい。そして、導入後は、加熱容器内を真空にするか、窒素、希ガス等の不活性ガスにより置換することにより、加熱容器内に含まれる大気(空気中の水分)を除去することが好ましい。大気と接触することなく保管容器(貯蔵容器)から本製造装置の加熱容器に導入できるように、例えば貯蔵容器と加熱容器とが、バルブ付きの配管により接続されていることがより好ましい。
そして、加熱容器にフッ素含有有機ケイ素化合物を導入後、容器内を真空または不活性ガスで置換した後には、直ちに真空蒸着のための加熱を開始することが好ましい。
[第2の実施形態]
本実施の形態では、フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法について説明する。
基材表面にフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜するフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法としては、予め溶媒除去処理を行ったフッ素含有有機ケイ素化合物、または、溶媒で希釈されていないフッ素含有有機ケイ素化合物を、加熱容器内で加熱する。そして、チャンバー内に設けられ、前記加熱容器と配管により接続された複数のノズルからフッ素含有有機ケイ素化合物を供給する。前記複数のノズルと基材の被成膜面とが対向するように、前記複数のノズルと対向する領域に基材を基材搬送機構により連続的に供給することを特徴とするフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、加熱容器内で加熱したフッ素含有有機ケイ素化合物を複数のノズルから継続して供給することが可能である。そして、基材搬送機構により基材を有効成膜領域に連続的に供給しているため、目的とする基材の被成膜面に連続的にフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜することが可能になる。このため、従来のバッチ式で行っていたフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法に比べて格段に生産性を高めることが可能になる。
チャンバーには、それぞれ独立して給排気可能な基材導入室と、基材取出し室とが接続されていることが好ましい。そして、基材導入室に導入した基材を、基材搬送機構により、チャンバーに搬送し、成膜処理後に、基材搬送機構によりチャンバーから基材取出し室へ基材を搬送できるように構成されていることが好ましい。
このように構成することによって、チャンバー内で成膜処理を行っている間に、次に成膜処理を行うための基材を基材導入室に配置し、基材導入室をチャンバー内と同じ雰囲気とする工程を平行して行うことができる。また、成膜が終わった基材は基材取出し室に搬送し、チャンバーと基材取出し室の間を壁により雰囲気を切り離した後、基材取出し室から取出すことができる。このように、チャンバー内の雰囲気を壊すことなく、基材の導入、取出しを連続的に行うことが可能になるため、チャンバー内と雰囲気の異なる環境から機材を導入、取出す場合でも連続的に基材に成膜することが可能なり生産性を高めることができる。
また、加熱容器と、複数のノズルとを接続する配管には、フッ素含有有機ケイ素化合物の供給量を変更できるように可変バルブが設けられており、チャンバー内に設けられた膜厚計からの検出値に応じて可変バルブの開度を制御することが好ましい。
これは、膜厚計からの検出値、すなわち成膜速度を可変バルブの開度により制御し、目的の成膜速度で成膜を行うことが可能になるからである。また、基材によって成膜速度を変えることも可能になり、異なる種類の商品も連続的に生産することができ、生産性を高めることができる。
そして、基材搬送機構は、フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の成膜速度に応じて基材の搬送速度を変更することが可能であることが好ましい。
これは、基材搬送機構の基材搬送速度を変更可能に構成することによって、目的の膜厚のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜することが可能になり、無駄な原料の消費を抑え、歩留まりを向上することができるためである。
フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜する前に、基材を前処理工程に供することが好ましい。これは、第1の実施形態でも説明したように、基材表面に前処理工程を行うことにより、基材とフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜との密着性を高めることができるためである。前処理工程の内容としては特に限定されるものではなく、必要に応じて選択することができるが、例えば基材表面への下地膜形成処理や、プラズマ処理、イオン銃照射等が挙げられる。
ここで、下地膜形成処理の方法、膜の種類については用途等により選択されるものであるが、例えばスパッタ法により酸化ケイ素膜を成膜してフッ素含有有機ケイ素化合物膜と基材との密着性(接合強度)を高める方法等が挙げられる。また、プラズマ処理としては、ArやO、HOなどのプラズマにより基材表面を処理し、表面の汚れの除去、表面改質を行うことができる。イオン銃照射の場合もプラズマと同様にArやO、HOガスを使用し、基材表面の汚れ除去、表面改質を行うことができる。
なお、前処理工程は、1つに限定されるものではなく、2つ以上の処理を行ってもよい。例えば下地膜形成処理とプラズマ処理両方を行ってもよい。
前処理工程はフッ素含有有機ケイ素化合物を供給する複数のノズル前の有効成膜領域に基材を搬送して成膜する成膜工程よりも前に行われる。例えばフッ素含有有機ケイ素化合物を供給するノズルが設置された領域よりも基材搬送路の上流側に前処理手段を設置して行うことが好ましい。
このように成膜工程を行う前に前処理工程を行うことによって、基材とフッ素含有有機ケイ素化合物との密着性(接合強度)を高めることが可能になる。また、成膜工程と同じ基材搬送路上で前処理工程を行う場合、基材を供給する前に基材の前処理を別途行う場合に比べて、作業性が向上し、生産性を高めることが可能になる。
本実施形態で説明してきたフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法においては、例えば、第1の実施形態で説明したフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置を好ましく使用することができる。このため、ここまで説明してきた以外の各部材、原料であるフッ素含有有機ケイ素化合物等については第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでは省略する。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、SDP−850VTインラインスパッタ装置(株式会社アルバック製)に面蒸着源(リニアソース蒸着源)(日立造船株式会社製)を設置した成膜装置を使用して実験を行った。面蒸着源は、基材の搬送方向を横切るように(基材の搬送方向に対して垂直方向に)ノズルが直線状に2列に配置され、各ノズルの開口径や配置は、成膜した際に得られる薄膜が、基材の高さ方向550mmの範囲内での膜厚分布が10%以内に収まるように設計されている。
基材搬送機構は、基材と面蒸着源のノズルとの間の距離が50mmに保つように配置した。
用いた装置の概略は図1、図2に示したものと同様であり、基材を鉛直方向に保持し基材搬送機構により面蒸着源を備えた有効成膜領域へと搬送、供給し成膜処理を行うものである。
(ガラス基板への防汚膜の成膜)
まず、蒸着材料であるフッ素含有有機ケイ素化合物として、溶媒で希釈されていない(溶媒を含まない)KY178(商品名、信越化学工業株式会社製)50gを成膜装置の加熱容器である、SUS304製のるつぼに導入した。
このとき、るつぼへのフッ素含有有機ケイ素化合物の供給は大気中で実施した。このため、フッ素含有有機ケイ素化合物が大気暴露されてから15分以内に、るつぼ内を真空ポンプで5×10−2Pa以下の圧力まで真空排気した。
次いで、るつぼを200℃まで加熱した。200℃に到達した後、各ノズルから、フッ素含有有機化合物を供給し、各ノズルと基材の被成膜面とが対向するように基材を基材搬送機構により搬送した。
基材としては100mm角、厚さ1.1mmのガラス基板(商品名:ドラゴントレイル基板 旭硝子株式会社製)を用いた。ガラス基板は図5に示すように、高さ方向(図5中Yで示す矢印方向)には850mm幅、搬送方向53と水平な方向(図5中Xで示す矢印方向)には1200mm幅のキャリア51内に100mm□のガラス基板52を複数枚配置したものを、鉛直方向に保持した状態で基材搬送機構により面蒸着源へ搬送、通過することによって成膜処理を行った。
そして、ガラス基板を有効成膜領域を900mm/minの速度で通過した際に、ガラス基板表面に成膜された膜厚がおよそ12nm程度になるように蒸着量を調整して成膜処理を行った。
蒸着量の調整は、面蒸着源が設置された真空チャンバー内に設けられたクリスタル振動子モニターにより蒸着量を測定し、加熱容器とノズルとを結ぶ配管上に設けられたバルブの開度を可変制御することで行った。また、バルブ開度を80%まで開いても所望の蒸着量が得られない場合には、るつぼ温度を10℃上昇させた。
蒸着量の調整は継続しながら、900mm/minの一定速度にて基板搬送を行い、連続的にガラス基板を供給して、防汚膜が成膜されたガラス基板を作製した。結果として、成膜開始から53時間後にはるつぼ温度が290℃まで上昇して、バルブ開度が80%になっても所望の蒸着量が得られなくなったので、成膜を終了した。
なお、ガラス基板は予め、表面の洗浄処理を行ったものを使用した。具体的な手順としては、[1]アルカリ洗剤サンウォッシュTL−75(2%)液での超音波洗浄[2]超純水での超音波洗浄、の順番で各基板の表面を洗浄処理した。
成膜処理を行ったガラス基板は、それぞれ真空チャンバーから取り出した後、高温槽PR−1SP(エスペック株式会社製)に膜面を地面に垂直に立てるようにして設置し、大気雰囲気で90℃、60分間熱処理を行った後に膜の耐久性試験に供した。
(膜の耐久性試験)
上記方法によって成膜処理を行ったガラス基板上に、純水1μLを滴下してその接触角を測定し、初期水接触角とした。
次いで、各基板の薄膜を形成した面を、金巾(染色堅ろう度試験用添付白布)を擦り材として大栄科学精器製作所製 平面摩耗試験機 PA300Aを用いて、1000g/cmの圧力を加えながら、107mm/secの速度で、5万往復つまり10万回擦った。その後、初期水接触角の場合と同様に接触角の測定を行った。そして、初期水接触角からの変化率を計算した。結果を表1に示す。なお、表中で、成膜開始温度に達してからの経過時間とは、るつぼ温度が初期の蒸着温度200℃に達して成膜を開始した時点から、各試料のガラス基板へ成膜を開始するまで時間を示す。
例えば表中、成膜開始温度に達してからの経過時間2時間とあるのは、るつぼ温度が200℃に達してから2時間後に成膜を開始したガラス基板であることを示している。
Figure 2013174668
これによれば、成膜開始から50時間程度経過しても、10万回擦った後の膜の接触角低下率が5%以下と、高い耐久性能を示している。また、蒸着時の温度に関しても、膜の耐久性に影響がないことがわかる。つまり、本発明の製造方法によれば、長時間の間、安定的に耐久性の高い膜が製造可能であることが分かる。
(膜厚分布の測定結果)
膜厚分布は、エリプソメーター(株式会社堀場製作所製)による分光エリプソメトリー法にて確認した。
膜厚分布測定は、るつぼ温度が200℃に達した後3時間経過した際に成膜した試料について測定を行った。
測定した結果を図6(A)、(B)に示す。
まず、図6(A)はキャリアに配置したガラス基板に成膜したフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の、キャリア内における高さ方向の膜厚分布をあらわしたものである。
図6(A)中の高さ方向の位置とは、図5中Yで示した矢印方向の長さを意味しており、キャリアの上下方向の中心部54を0とし、これよりも上側(Yで表わした矢印方向)をプラス、下側をマイナスとして示している。高さ方向の膜厚分布は、後述する搬送方向の位置が600mmでの高さ方向の膜厚分布を測定したものである。
図6(B)はキャリア内に配置したガラス基板に成膜したフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の、キャリア内における搬送方向(水平方向)の膜厚分布を測定したものである。
図6(B)中の搬送方向の位置とは、図5中Xで示した矢印方向の長さを意味しており、すなわち、キャリアの搬送方向53先端部54からの水平方向(Xで表わした矢印方向)の距離である。搬送方向の膜厚分布は、前記高さ方向の位置が0mm(キャリア中央部)での各搬送方向の位置での膜厚分布を測定したものである。
まず、図6(A)の結果によると、全ての測定点において120Å前後の値を取っており、±10.5%程度の膜厚分布であった。また、図6(B)によれば、搬送方向の全ての測定点においても120Å前後の値を取っており、±9.4%程度の膜厚分布であった。
以上の結果より、高さ方向、搬送方向ともに、今回使用したリニアソース蒸着源において、±10%程度の膜厚分布を得られることを確認した。
11 チャンバー
12 フッ素含有有機ケイ素化合物
13 加熱容器
14 配管
15 ノズル
17 基材
18 基材搬送機構
19 可変バルブ
20 膜厚計
31 基材導入室
32 基材取出し室
33 前処理手段

Claims (10)

  1. 基材表面にフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜するフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置であって、
    チャンバーと、
    フッ素含有有機ケイ素化合物を加熱する加熱容器と、
    前記チャンバー内に設けられ、前記加熱容器と配管により接続されており、基材に対してフッ素含有有機ケイ素化合物を供給する複数のノズルと、
    前記複数のノズルと基材の被成膜面とが対向するように基材を連続的に搬送することが可能な基材搬送機構と、を備えており、
    前記フッ素含有有機ケイ素化合物は、溶媒除去処理を行ったもの、または、溶媒で希釈されていないものであることを特徴とするフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置。
  2. 基材を前記チャンバーに導入するための基材導入室と、前記チャンバーから基材を取出すための基材取出し室とが前記チャンバーに接続されており、
    前記基材導入室、前記基材取出し室は、それぞれ独立して給排気可能に構成され、
    前記基材搬送機構は、前記基材導入室、前記チャンバー、前記基材取出し室の間で基材を搬送できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置。
  3. 前記基材搬送機構は、フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の成膜速度に応じて、基材の搬送速度を変更することが可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置。
  4. 前記加熱容器と前記複数のノズルとを接続する前記配管には、フッ素含有有機ケイ素化合物の供給量を調整する可変バルブが設けられており、
    前記チャンバー内に設けられた膜厚計からの検出値に応じて前記可変バルブの開度を制御することを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置。
  5. 前記複数のノズルよりも基材搬送路の上流側に基材表面を処理するための前処理手段を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造装置。
  6. 基材表面にフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜を成膜するフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法であって、
    溶媒除去処理を行ったフッ素含有有機ケイ素化合物、または、溶媒で希釈されていないフッ素含有有機ケイ素化合物を、加熱容器内で加熱し、
    チャンバー内に設けられ、前記加熱容器と配管により接続された複数のノズルからフッ素含有有機ケイ素化合物を供給し、
    前記複数のノズルと基材の被成膜面とが対向するように、前記複数のノズルと対向する領域に基材を基材搬送機構により連続的に供給することを特徴とするフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法。
  7. 前記チャンバーには、それぞれ独立して給排気可能な基材導入室と、基材取出し室とが接続されており、
    前記基材導入室に導入した基材を、前記基材搬送機構により、前記チャンバーに搬送し、
    成膜処理後に、前記基材搬送機構により前記チャンバーから前記基材取出し室へ基材を搬送することを特徴とする請求項6に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法。
  8. 前記基材搬送機構は、フッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の成膜速度に応じて基材の搬送速度を変更することを特徴とする請求項6または7に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法。
  9. 前記加熱容器と、前記複数のノズルとを接続する配管には、フッ素含有有機ケイ素化合物の供給量を変更できるように可変バルブが設けられており、
    前記チャンバー内に設けられた膜厚計からの検出値に基づいて、前記可変バルブの開度を制御することを特徴とする請求項6乃至8いずれか一項に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法。
  10. 前記フッ素含有有機ケイ素化合物を成膜する前に、前記基材を前処理工程に供することを特徴とする請求項6乃至9いずれか一項に記載のフッ素含有有機ケイ素化合物薄膜の製造方法。
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