JP2013173641A - 窒化ガリウム結晶積層基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】側壁を有する複数本の溝部を形成したサファイア下地基板上に、該溝部の側壁より選択的に窒化ガリウム結晶を横方向成長させる窒化ガリウム結晶積層基板の製造方法であって、前記側壁の少なくとも一部がサファイア結晶のc面であって、該c面側壁を起点として、c軸方向の成長速度を、c軸に対して垂直な方向のうち基板表面に向かう方向の成長速度より早くして非対称横方向成長を行い、隣接する成長結晶を会合させてc軸に対して垂直な方向のうち基板表面に向かう方向への結晶転位の伝播を阻止する。
【選択図】図6
Description
ところで、表面がc面であるGaN層では、Ga原子のみを含むGa原子面
が僅かにプラスに帯電する一方、N原子のみを含むN原子面が僅かにマイナスに帯電し、結果としてc軸方向(層厚さ方向)に自発分極が発生する。
また、GaN層上に異種半導体層をヘテロエピタキシャル成長させた場合、両者の格子定数の違いによって、GaN結晶に圧縮歪や引っ張り歪が生じ、GaN結晶内でc軸方向に圧電分極(ピエゾ分極)が発生する(特許文献1、特許文献2)。
この結果、前記構成の半導体発光素子では、多重量子井戸層において、InGaN量子井戸層に固定電荷に起因する自発分極に加えて、InGaN量子井戸層に加わる圧縮歪により生じたピエゾ分極が重畳され、そのためc軸方向に大きな内部分極電場が発生することとなる。この内部分極電場の影響を受けて、量子閉じ込めシュタルク効果(Quantum−Confined Stark Effect:QCSE)により、発光効率の低下や必要な注入電流の増大に伴う発光のピーク波長シフトなどの問題が生じると考えられている。
更に、c面が、a軸あるいはm軸方向に約60度傾斜した半極性面といわれている面、例えば、半極性の<11−22>面上にInGaN量子井戸層を形成し、それによって内部電極の影響を回避することも検討されている(非特許文献1、非特許文献2)。
しかしながら、現在入手可能な上記GaN結晶のa面やm面といった無極性面を主面とする基板、或いは<11−22>面や<10−11>面等の半極性面を主面とする基板は、貫通転位密度が2〜3×108個/cm2程度と言われており、より貫通転位密度が低い高い結晶品質の結晶基板が望まれている。
貫通転位密度を低減する方法として、一旦m面サファイア基板上に<11−22>面からなるGaN結晶の薄層を積層し、次いで、薄層の一部をSiO2等でマスキングした後、更に非マスキング表面からGaN結晶を非対称横方向成長(asymmtric epitaxial lateral overgrowth;非対称ELO)させる方法が提案されている。しかしながらこの方法では、最初の薄層(<11−22>面GaN結晶)の成長過程における結晶転位が非常に多いこと、且つ、非マスキング表面からの更なる結晶成長時において、隣接する成長結晶で阻止される方向へ伝播する結晶転位はその伝播が阻止されるものの、阻止されない成長結晶方向へ伝播する結晶転位はそのまま結晶層表面まで伝播するので、決して効果的な転位低減方法とは言えないものである(非特許文献3)。
上記窒化ガリウム結晶積層基板の発明において、窒化ガリウム結晶層が、無極性または半極性の面方位を有する表面からなる窒化ガリウム結晶層であることが好適である。
また、サファイア下地基板上に形成した溝部のc面側壁より選択的にGaN結晶を成長させることにより、面方位が無極性面または半極性面である高品質のGaN結晶層を有する積層基板が得られるため、従来のc面を主面とするGaN結晶層基板に比べて、量子閉じ込めシュタルク効果による発光効率の低下の影響が小さい。
暗転密度とは、結晶の転位欠陥である貫通転位の密度を示すための指標となる物性値であり、走査型電子顕微鏡/カソードルミネッセンス(SEM・CL)装置を用いて測定される。測定試料はアンドープGaN結晶層の上にn型GaN結晶層を積層した試料を用い、n型GaN層表面において測定を行う。測定時の加速電圧は5kVとし、観察範囲は20μm×20μmとする。このとき、観察範囲内に観察された暗点の総数より暗点密度を算出する。
GaN結晶を成長させる下地基板としては、サファイアからなる下地基板上に、該下地基板の主面に対して傾斜した側壁を有する溝部を複数本有し、且つ、側壁の一部はc面である下地基板を用いることが重要である。
しかも、GaN結晶の成長方法として、隣接する溝部から成長させた成長結晶が互いに会合するまでは、非対称ELO法を採用することが必須である。図2(b)に模式的に示すように、非対称ELO法で成長させた場合、成長するにつれて、成長が速いc軸方向に結晶端が突出し隣接する結晶のa軸方向の結晶端を阻止してしまう。この結果、集中的に起こるa軸方向への転位の伝播が阻止され、最終的な暗点密度が低下するものと推測している。図2(a)には、対称ELO法で成長させた場合の結晶の成長の様子を示す。この場合、a軸方向への転位の伝播は阻止されず、結晶表面へ貫通する。
この主面は、所望のGaN結晶を得るために、結晶軸に対して所定の角度傾斜したミスカット面であってもよい。該下地基板は、通常、厚みが0.3〜3.0mm、直径が50〜300mmの円盤状のものが使用される。
主面が上記何れの面方位であっても、成長起点となる側壁がc面であり、且つ、後述する非対称ELOを採用して成長結晶を会合させる限り、c軸以外の方向への転位を阻止でき、本発明のGaN結晶積層基板を得ることができる。図1に、代表的な下地基板を示す。
図3に示すように、その断面形状は、溝開口部から溝底部に向かって溝幅を狭めるように傾斜したテ―パー状になっている。該傾斜角度とは、図3に示すように、下地基板主面と溝部側壁の延長面とがなす角度(Θ)を意味する。該角度は、下地基板主面の面方位に対応して形成される側壁のc面の面方位を勘案して決定される。
しかし、用いるサファイア下地基板の主面である<10−12>面と、溝部の側壁に現れるサファイアc面とがなす角度は57.6度であるため、下地基板主面と溝部側壁とがなす角度(Θ)は57.6度となり、その上に成長したGaN結晶層の表面は、サファイア下地基板の主面に対し、約0.8度傾斜する。そこで、この角度を相殺するように、基板主面部分がサファイア<10−12>面にオフ角をつけた面であるミスカット基板を用いることにより、GaN結晶の<11−22>面がサファイア下地基板主面に対して平行となるように成長したGaN結晶層を得ることができる。
しかし、下地基板主面と溝部側壁とがなす角度(Θ)が90度となる溝部を形成することはエッチング技術上困難であるが、下地基板主面と溝部側壁とがなす角度(Θ)が90度に近い溝部を有するサファイア下地基板を用いることにより、<11−20>面を主面とするサファイア下地基板上にGaN結晶の<10−10>面が下地基板主面に対して平行となるように成長した、或いは、<10−10>面を主面とするサファイア下地基板上にGaN結晶の<11−20>面が下地基板主面に対して平行となるように成長したGaN結晶層を得ることができる。
結晶成長領域の幅(d)とは、図3に示す如く、側壁全てが結晶成長領域である場合は、下地基板主面と側壁が交わる辺と、側壁と溝部底面が交わる辺との間の、側壁上の最短距離(間隔)を云う。図4に示す如く、側壁の一部がマスキングされ結晶成長領域が制限されている場合は、上記最短距離(間隔)から、マスキング部の幅を除いた距離(d)を云う。
更に、側壁の幅、溝部開口部幅、溝部間隔、底面幅などの制御手段としては、フォトレジストのパターニングを形成する段階において、フォトレジストの塗布量、ベーク温度、ベーク時間、UV照射量、UV照射する際のフォトマスクの形状などが挙げられる。また、エッチングの段階において、エッチングガス種、エッチングガス濃度、エッチングガス混合比、アンテナパワー、バイアスパワー、エッチング時間などによっても制御できる。
これら種々の条件を組み合わせることにより、所定の形状である溝部を有したサファイア下地基板を得ることができる。前記側壁の幅は、単位時間あたりにサファイアがエッチングされる速度であるエッチングレートを求め、エッチング時間を変更することで制御が可能である。
側壁の一部をマスキングする場合、その手段としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の方法により、結晶成長領域以外の領域に、SiO2膜、Si3N4膜、SiOxNy膜、TiO2膜、ZrO2膜等を形成してマスキングする方法が挙げられる。該マスキング層の厚さは、通常0.01〜3μm程度である。
非対称ELOとは、各結晶軸方向への結晶成長速度を異にして成長させる方法である。図2(b)に示すように、サファイアの主面がr面であり、溝部の左側壁がc面であり、左側壁の延長方向がGaN結晶のa軸である場合、c軸方向への結晶成長がa軸方向への結晶成長より速くなるように制御する。この結果、成長結晶は、c軸方向へ突出した形状の結晶となり、右隣の成長結晶のa軸方向結晶端部を阻止する。
キャリアガスとしては、例えば、H2、N2が挙げられる。窒素元素供給源としては、例えば、NH3が挙げられる。Ga元素供給源としては、例えば、トリメチルガリウム(TMG)が挙げられる。
次いで、サファイア下地基板の温度を1050〜1150℃とすると共に反応容器内の圧力を10〜100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスH2を10L/minの流量で流通させながら、そこにNH3、及びTMGを、それぞれの供給量が0.1〜5L/min、及び10〜150μmol/minとなるように流す。このとき、図2(b)に示すように、サファイア下地基板の溝部の側壁からその上にアンドープのGaNが非対称成長する。
とした場合、反応温度(サファイア下地基板の温度)を、1050〜1150℃に維持して成長させれば、非対称ELOが起こる。この場合、1040℃以下では非対称ELOは起こらず、通常の対称横方向成長(symmetric epitaxial lateral overgrowth;対称ELO)となる。このように同じ成長条件においては反応温度によってGaN結晶の各軸方向における成長速度を制御することができ、非対称成長または対称成長を自由に制御することができる。しかし、前記のとおり、装置条件、原料条件、結晶成長条件などの様々な条件の組み合わせによって結晶の成長様式は決定されるため、採用する条件によっては、上記の反応温度とは異なる温度にて非対称成長または対称成長が制御されることもある。
下地基板のc面を起点としてGaN結晶が成長し、最終的には下地基板を覆って下地基板主面に平行な表面を有する、種々の面方位のGaN結晶層が形成される。
形成されるGaN結晶層の厚み(サファイ下地基板主面からの高さ)は、特に限定されないが、通常、2〜20μmである。
上記方法によって得られたGaN結晶積層基板は、このまま各種半導体発光素子の基板として使用することができる。
〔サファイア下地基板の作製〕
<10−12>面サファイア基板上にストライプ状にレジストをパターニングし、次いで反応性イオンエッチング(RIE)によりドライエッチングすることで、サファイア基板上に複数本の溝部を形成した。溝部は、溝開口幅が3μm、溝の深さが1μm、及び隣接する溝部までの基板主面上での幅が3μmとなるように形成した。側壁の傾斜角度は約60度であり、溝深さ及び側壁の傾斜角度より算出した側壁の幅(d)は1.15μmである。
ドライエッチングの後、レジストを洗浄除去することでサファイア下地基板を得た。このサファイア下地基板は、基板主面、約8500本の溝部、溝部の側壁から構成される結晶成長領域、及び溝部底面を有する。
作製したサファイア下地基板を、MOVPE装置内に、基板表面が上向きになるように石英トレイ上にセットした後、基板を1150℃に加熱すると共に反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスとしてH2を10L/minで流通させ、その状態を10分間保持することにより基板をサーマルクリーニングした。
次いで、基板の温度を460℃とすると共に反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH25L/minの流量で流しながら、そこにV族元素供給源(NH3)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給量が5L/min及び5.5μmol/minで基板上にアモルファス状のGaNを約25nm堆積させた。続いて基板の温度を1075℃とすると共に反応容器内の圧力を20kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH2として、それを5L/minの流量で流通させることで、基板上に堆積したGaNを再結晶化し、溝部側壁の結晶成長領域に選択的にGaN結晶核を形成した。
続いて、基板の温度を1025℃とすると共に反応容器内の圧力を20kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH2として、それを5L/minの流量で流通させながら、そこにV族元素供給源(NH3)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給量が2L/min及び30μmol/minとなるように180分間流し、GaNを成長させることにより、基板の主面に形成された各溝部の側壁から成長したGaN結晶同士を会合し、GaN結晶の<11−22>面からなる表面が下地基板主面に対して平行に形成されたGaN結晶層を形成した。
次いで、基板の温度を1025℃とすると共に反応容器内の圧力を20kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH2として、それを5L/minの流量で流通させながら、そこにV族元素供給源(NH3)、III族元素供給源(TMG)、及びn型ドーピング元素供給源(SiH4)を、それぞれの供給量が2L/min、30μmol/min、及び5.8×10−3μmol/minとなるように60分間流し、アンドープGaN層の上部に、アンドープGaN層と同一面方位にエピタキシャル成長したn型GaN結晶層を形成した。
〔暗点密度評価〕
得られたGaN結晶層について、走査型電子顕微鏡/カソードルミネッセンス装置を用いて、n型GaN層表面の観察を行った。このときの加速電圧は5kV、観察範囲は20μm×20μmとし、観察範囲内に観察された暗点の総数から暗点密度を算出したところ、表1に示す結果が得られた。
1075℃での非対称横方向成長工程を除き1025℃でのアンドープGaN結晶層の成長時間を300minとしたことを除いては実施例1と同様にして、サファイア下地基板上にGaN結晶層を形成した。
実施例1と同様にして、暗点密度評価を行い、結果を表1に示した。
11 下地基板主面
20 下地基板溝部
21 溝部側壁
22 溝部底面
23 側壁結晶成長領域
30 GaN結晶層
31 GaN結晶層表面
40 マスキング部
Claims (3)
- サファイア下地基板上に、該下地基板の主面に対して傾斜した側壁を有する複数本の溝部を形成し、該溝部の側壁より選択的に窒化ガリウム結晶を横方向成長(epitaxial lateral overgrowth)させる窒化ガリウム結晶積層基板の製造方法において、
前記側壁の少なくとも一部がサファイア結晶のc面であって、該c面側壁を起点として、c軸方向の成長速度を、c軸に対して垂直な方向のうち基板表面に向かう方向の成長速度より早くした窒化ガリウム結晶の非対称横方向成長(asymmetric epitaxial lateral overgrowth)を行い、隣接する成長結晶を会合させてc軸に対して垂直な方向のうち基板表面に向かう方向への結晶転位の伝播を阻止することを特徴とする前記窒化ガリウム結晶積層基板の製造方法。 - サファイア下地基板と、該基板上に結晶成長せしめて形成された窒化ガリウム結晶層とを含み、該窒化ガリウム結晶層は、サファイア下地基板の主面に複数本形成された溝部のc面からなる側壁から横方向結晶成長して該主面と平行に表面が形成されたものであり、且つ、該窒化ガリウム結晶の暗点密度が1.0×108個/cm2以下であることを特徴とする窒化ガリウム結晶積層基板。
- 窒化ガリウム結晶層が、無極性または半極性の面方位を有する表面からなる窒化ガリウム結晶層であることを特徴とする請求項2に記載の窒化ガリウム結晶積層基板。
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