JP2013171906A - レーザダイシング方法およびレーザ加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブレーク工程を行わずにシリコンカーバイド基板を分割することができるレーザダイシング方法を提供すること。
【解決手段】本発明のレーザダイシング方法は、分割予定ラインに沿ってシリコンカーバイド基板に波長500nm以上のレーザ光を照射して、前記分割予定ラインに沿って前記シリコンカーバイド基板に前記シリコンカーバイド基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成する損傷形成工程と、前記レーザ光を照射された前記シリコンカーバイド基板に引張力を加えるエキスパンド工程とを含む。前記レーザ光は、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように前記シリコンカーバイド基板に照射される。前記シリコンカーバイド基板は、前記損傷形成工程または前記エキスパンド工程において分割される。
【選択図】図2

Description

本発明は、シリコンカーバイド基板をチップ化するレーザダイシング方法、および前記レーザダイシング方法に用いられるレーザ加工装置に関する。
シリコンカーバイド(炭化ケイ素;以下「SiC」と略記する)は、シリコン(以下「Si」と略記する)に比べて耐電圧性および耐熱性に優れている。SiCは、Siに比べてデバイスの電力損失を約1/10に低減することができるため、パワーエレクトロニクスを支える半導体デバイス向けの材料として注目されている。しかしながら、SiCはSiに比べて非常に硬いため、従来から用いられているダイヤモンドブレードなどではSiC基板を効率的に分割(ダイシング)することはできなかった。
一方、近年、半導体基板を分割する新たな技術として、レーザダイシング方法が提案されている。レーザダイシング方法では、レーザ光を基板の表面または内部に照射することで、基板の表面または内部に分割の起点となる損傷を形成する。たとえば、特許文献1には、1)Si基板にレーザ光を照射して、Si基板の表面に損傷(ダイシング溝)を形成する損傷形成工程と、2)Si基板に折曲力を加えて、損傷を起点としてSi基板を分割するブレーク工程と、3)Si基板に引張力を加えて、分割されたチップ間の間隔を拡げるエキスパンド工程と、を含むレーザダイシング方法が開示されている。
特許文献1ではSi基板に損傷を形成しているが、SiC基板に損傷を形成する技術も報告されている。たとえば、非特許文献1には、UVパルスレーザ光(波長193nm、パルス幅25ナノ秒、繰り返し周波数100Hz)を照射して、SiC基板に損傷(穴)を形成する方法が開示されている。この方法では、パルスレーザ光の1パルスあたりの光強度密度が10J/cmであっても、1パルス照射あたりの損傷の深さはわずか100nm程度である。したがって、深さ10μmの損傷を1つ形成するためには、同一箇所にパルスレーザ光を1秒程度照射することが必要である。
特開2010−109015号公報
L. Liu, C.Y. Chang, Wenhsing Wu, S.J. Pearton and F. Ren, "Circular and rectangular via holes formed in SiC via using ArF based UV excimer laser", Applied Surface Science, Vol.257, pp.2303-2307.
従来のレーザダイシング方法をSiC基板の分割に適用する場合、図1に示されるように、1)レーザ光10をSiC基板11に照射して、SiC基板11の表面に分割予定ライン12に沿って損傷13を形成し(損傷形成工程;図1Aおよび図1B参照)、2)深さ方向の力(折曲力)をSiC基板11に加えて、損傷13を起点としてSiC基板11を分割し(ブレーク工程;図1C参照)、3)面方向の力(引張力)をSiC基板11に加えて、分割されたチップ間の間隔を拡げる(エキスパンド工程;図1D参照)ことになる。
このように、従来のレーザダイシング方法によりSiC基板11を分割する場合、ある程度の時間をかけてレーザ光10を照射しても浅い損傷13しか形成することができない(図1B参照)。このため、深さ方向の力(折曲力)をSiC基板11に加える「ブレーク工程」が必須である(図1C参照)。一方で、SiC基板11を分割する際にブレーク工程を行うことは、半導体素子の製造工程の簡略化や、半導体素子の製造コストの低減などの観点から好ましくなく、ブレーク工程を行わずにSiC基板11を分割することができる技術の確立が要求されている。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ブレーク工程を行わずにSiC基板を分割することができるレーザダイシング方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記レーザダイシング方法に用いられるレーザ加工装置を提供することも目的とする。
本発明者は、波長500nm以上のレーザ光を、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うようにSiC基板に照射して、SiC基板に基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成することで上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のレーザダイシング方法に関する。
[1]分割予定ラインに沿ってシリコンカーバイド基板に波長500nm以上のレーザ光を照射して、前記分割予定ラインに沿って前記シリコンカーバイド基板に前記シリコンカーバイド基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成する損傷形成工程と、前記レーザ光を照射された前記シリコンカーバイド基板に引張力を加えるエキスパンド工程と、を含み、前記レーザ光は、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように前記シリコンカーバイド基板に照射され、前記シリコンカーバイド基板は、前記損傷形成工程または前記エキスパンド工程において分割される、レーザダイシング方法。
[2]前記シリコンカーバイド基板の厚みは、200μm以下であり、前記レーザ光は、パルスレーザ光であり、前記シリコンカーバイド基板の表面における前記レーザ光の照射スポットの中心間距離をSP(μm)とし、前記レーザ光の繰り返し周波数をF(kHz)としたとき、(SP/F)<0.007である、[1]に記載のレーザダイシング方法。
[3]前記シリコンカーバイド基板は、前記損傷形成工程において分割される、[1]または[2]に記載のレーザダイシング方法。
[4]前記シリコンカーバイド基板は、前記エキスパンド工程において分割される、[1]または[2]に記載のレーザダイシング方法。
[5]前記損傷形成工程と前記エキスパンド工程との間に、前記シリコンカーバイド基板に折曲力を加えて、前記損傷を起点として前記シリコンカーバイド基板を分割するブレーク工程を含まない、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のレーザダイシング方法。
[6]前記レーザ光は、パルス幅が20ナノ秒以上のパルスレーザ光または連続発振レーザ光である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のレーザダイシング方法。
[7]前記レーザ光の波長は、10μm以下である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のレーザダイシング方法。
[8]前記レーザ光は、前記シリコンカーバイド基板の表面側から前記シリコンカーバイド基板に照射され、前記レーザ光の集光点は、前記シリコンカーバイド基板の表面から上方100μm〜表面から内部120μmの範囲内に位置する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のレーザダイシング方法。
また、本発明は、以下のレーザ加工装置に関する。
[9]波長500nm以上のレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光をシリコンカーバイド基板に照射する光学系と、前記光学系および前記シリコンカーバイド基板の少なくとも一方を移動させて、前記光学系と前記シリコンカーバイド基板とを相対的に移動させる駆動部と、を有し、前記レーザ光を、分割予定ラインに沿って、かつ照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように、シリコンカーバイド基板に照射して、前記分割予定ラインに沿って前記シリコンカーバイド基板に前記シリコンカーバイド基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成する、レーザ加工装置。
[10]前記シリコンカーバイド基板の厚みは、200μm以下であり、前記レーザ光は、パルスレーザ光であり、前記シリコンカーバイド基板の表面における前記レーザ光の照射スポットの中心間距離をSP(μm)とし、前記レーザ光の繰り返し周波数をF(kHz)としたとき、(SP/F)<0.007である、[9]に記載のレーザ加工装置。
[11]前記レーザ光は、パルス幅が20ナノ秒以上のパルスレーザ光または連続発振レーザ光である、[9]または[10]に記載のレーザ加工装置。
[12]前記レーザ光の波長は、10μm以下である、[9]〜[11]のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
本発明のレーザダイシング方法およびレーザ加工装置によれば、ブレーク工程を行わずにSiC基板を分割することができる。たとえば、本発明のレーザダイシング方法およびレーザ加工装置を利用すれば、半導体素子の製造工程の簡略化や、半導体素子の製造コストの低減などを実現することができる。
図1A〜Dは、従来のレーザダイシング方法を用いたSiC基板の分割工程を示す模式図である。 図2A〜Cは、本発明のレーザダイシング方法を用いたSiC基板の分割工程を示す模式図である。 レーザ加工装置の構成の一例を示す模式図である。 ショットピッチを説明するための模式図である。 図5A,Bは、10×10mmの正方形状のSiC基板を分割した結果を示す写真である。 図6A,Bは、25×25mmの扇形のSiC基板を分割した結果を示す写真である。 図7A,Bは、38×38mmの扇形のSiC基板を分割した結果を示す写真である。 図8A,Bは、No.4の条件でSiC基板に損傷を形成した結果を示す写真である。 実施例1の実験結果における「SP/F」の値とダイシング特性の関係を示すグラフである。 実施例2の実験結果における「SP/F」の値とダイシング特性の関係を示すグラフである。 図11A,Bは、UVパルスレーザ光を照射してSiC基板に損傷を形成した結果を示す写真である。 比較例の実験結果におけるパルスエネルギと損傷の深さとの関係を示すグラフである。
1.本発明のレーザダイシング方法
本発明のレーザダイシング方法は、SiC基板にレーザ光を照射してSiC基板に損傷を形成する損傷形成工程と、レーザ光を照射されたSiC基板に引張力を加えるエキスパンド工程とを含む。SiC基板は、損傷形成工程またはエキスパンド工程のいずれかにおいて分割される。後述するように、本発明のレーザダイシング方法は、SiC基板に照射するレーザ光の波長が500nm以上であること、および照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うようにレーザ光を照射すること、を特徴とする。
図2は、本発明のレーザダイシング方法を用いてSiC基板を分割する例を示す模式図である。図2Aに示されるように、波長が500nm以上のレーザ光100をSiC基板110に照射しながら、レーザ光100とSiC基板110との相対的な位置を変える。このとき、レーザ光100の集光点は、SiC基板110の外部、表面または内部に位置し、SiC基板110の分割予定ライン120に沿って移動する。また、レーザ光100は、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように走査される。ここで「照射スポット」とは、SiC基板表面におけるレーザ光の照射領域を意味する(図4参照)。このように波長が500nm以上のレーザ光100を走査することで、図2Bに示されるように、分割予定ライン120に沿ってSiC基板110の厚みの50%以上の深さの損傷130を形成することができる(損傷形成工程)。この後、図2Cに示されるように、損傷130を形成されたSiC基板110に引張力を加える(エキスパンド工程)。以上の手順により、SiC基板110を分割予定ライン120に沿って容易に割断することができる。
本発明のレーザダイシング方法では、損傷形成工程(図2Aおよび図2B参照)の後、すぐにエキスパンド工程(図2C参照)に移ることができる。すなわち、本発明のレーザダイシング方法では、損傷形成工程とエキスパンド工程との間に、ブレーク工程(図1C参照)を行う必要はない。ここで、「ブレーク工程」とは、基板面に対して略垂直方向の力(折曲力)を基板に加え、基板の表面に形成された損傷を基板の裏面まで到達させることで、基板を分割する工程を意味する(図1C参照)。一方、「エキスパンド工程」とは、基板面に対して略平行方向の力(引張力)を基板に加えることで、基板に形成された損傷を起点として基板を分割する工程を意味する(図2C参照)。
1)損傷形成工程
損傷形成工程では、SiC基板に波長が500nm以上のレーザ光を照射して、SiC基板の厚みの50%以上(好ましくは75%以上)の深さの損傷をSiC基板に形成する(図2Aおよび図2B参照)。以下、損傷形成工程におけるレーザ光の照射条件について説明する。
[波長]
本発明のレーザダイシング方法は、SiC基板に照射するレーザ光の波長が500nm以上であることを一つの特徴とする。
本発明のレーザダイシング方法では、多光子吸収を利用して損傷を形成する。これにより、SiC基板の内部まで損傷を形成して、SiC基板の厚みの50%以上の深さの損傷をSiC基板に形成することができる。本発明のレーザダイシング方法の加工メカニズムは、これに限定されるわけではないが、「熱効果による加工」であると推察される。すなわち、波長500nm以上のレーザ光をSiC基板に照射すると、多光子吸収(実質的には2光子吸収または3光子吸収)によりSiC基板の電子のバンド間遷移が生じる。この励起電子が緩和する際に放出される熱により、照射部位の温度が局所的に上昇する。その結果、照射部位においてSiCの分解や溶融、体積爆発などが生じ、損傷が形成されると考えられる。
本発明のレーザダイシング方法において、所望の加工を実現するためには、1光子1吸収が生じることを回避しなければならない。SiCのバンドギャップ(Eg)は約3eVであり、これを波長に換算すると413nmである。よって、1光子1吸収が生じることを回避するためには、413nmを越える波長のレーザ光を照射すればよい。吸収裾や不純物準位などを考慮すると、1光子1吸収が生じることを確実に回避するためには、500nm以上の波長のレーザ光を照射することが好ましい。
波長500nm以上のレーザ光をSiC基板に照射することで、電子遷移による吸収を回避することができる。一方、波長10μm以上のレーザ光をSiC基板に照射すると、振動遷移による吸収が生じてしまい、所望の加工を行うことができなくなるおそれがある。したがって、SiC基板に照射するレーザ光の波長は、10μm以下であることが好ましい。
[発振方式]
SiC基板に照射するレーザ光は、パルスレーザ光であってもよいし、連続発振(CW)レーザ光であってもよい。アスペクト比の大きい損傷(SiC基板の厚みの50%以上の深さの損傷)を形成する観点からは、パルス幅が20ナノ秒以上(より好ましくは100ナノ秒以上)のパルスレーザ光または連続発振レーザ光(パルス幅:無限大)を照射することが好ましい。このようにパルス幅が20ナノ秒以上のパルスレーザ光または連続発振レーザ光を照射することで、形成される損傷のアスペクト比を大きくすることができる。これは、パルス幅を長くすることで、尖頭出力が小さくなり、その結果として多光子吸収が生じる確率も小さくなるためだと考えられる。したがって、パルス幅が20ナノ秒のパルスレーザ光よりも、パルス幅が100ナノ秒のパルスレーザ光を照射した場合の方が、より効率的にアスペクト比の大きい損傷を形成することができる。一方、パルス幅が20ナノ秒未満のパルスレーザ光を照射すると、形成される損傷のアスペクト比が小さくなるおそれがある。
[照射スポットの空間的および時間的間隔]
本発明のレーザダイシング方法は、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うようにレーザ光を照射することも一つの特徴とする。
SiC基板に照射するレーザ光がパルスレーザ光である場合、SiC基板表面におけるパルスレーザ光の照射スポットの中心間距離(以下「ショットピッチ」という;図4参照)は、照射スポットが空間的に密に重なり合えば特に限定されず、例えば0〜10μm程度であればよい。また、パルスレーザ光の繰り返し周波数は、照射スポットが時間的に密に重なり合えば特に限定されず、例えば1kHz〜10MHzであればよい。このように照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うようにレーザ光を照射することで、ダイシングに適した損傷を形成することができる。以下、その理由を説明する。
レーザ光の照射により形成される損傷としては、以下の3つが考えられる。
i)結合切断
SiC分子内およびSiC分子間において化学結合が部分的に切断されている。
ii)アモルファス領域
被照射領域では結晶構造となっているのに対し、アモルファス構造である。
iii)格子欠陥
Si原子またはC原子が、結晶格子から欠落されているもしくは互いに置換されている、または他の原子(O原子またはH原子)に置換されている。
i)結合切断、ii)アモルファス領域およびiii)格子欠陥が生成する際には、以下のような複合過程が関与している。
まず、SiCの多光子吸収により、レーザ光の照射部位に局所的に熱が発生する。その熱によって、SiC分子内およびSiC分子間の化学結合が切断するとともに(結合切断)、切断された結合の一部が再結合することによって原子配列が変化する(アモルファス領域および格子欠陥)。この場合、i番目のパルスレーザ光で化学結合を切断できるまで温度が上昇した後、化学過程の進行と放冷による温度低下とが競争的に起こる。ダイシングに適した損傷を形成する観点からは、化学過程(損傷形成過程)が完了するまで照射部位の温度が低下しないことが好ましい。したがって、i番目のパルスレーザ光の照射スポットとi+1番目のパルスレーザ光の照射スポットとの位置間隔、およびi番目のパルスレーザ光とi+1番目のパルスレーザ光との時間間隔が重要である。これらを規定するのは、パルスレーザ光のショットピッチSPおよび繰り返し周波数Fである。
また、レーザ光の照射部位に局所的に熱が発生した場合、レーザ光の照射部位が冷却する過程において応力歪が発生する。この応力歪によっても、上記3種類の損傷(特にアモルファス領域)が形成される。この場合も、これらの損傷の形成効率を規定するのは、パルスレーザ光のショットピッチSPおよび繰り返し周波数Fである。
また、熱を介さずに化学的な効果によっても、損傷は形成されうる。たとえば、i番目のパルスレーザ光により、励起電子やイオン化電子、カチオン、光吸収点(カラーセンター)などの一定の寿命を有する反応中間体が生成される。i+1番目のパルスレーザ光により、これらの反応中間体がさらに励起された場合、これらの反応中間体は、大きな電子エネルギを獲得し、損傷の形成を促進させる。このように反応中間体を励起するためには、i番目のパルスレーザ光の照射スポットとi+1番目のパルスレーザ光の照射スポットとが位置的に重複しており、かつi番目のパルスレーザ光とi+1番目のパルスレーザ光との時間間隔がこれら反応中間体の寿命より短くなくてはならない。よって、この場合も、反応中間体の励起効率を規定するのは、パルスレーザ光のショットピッチSPおよび繰り返し周波数Fである。
以上のように、ダイシングに適した損傷を形成する観点からは、パルスレーザ光のショットピッチはある程度短い方が好ましく、パルスレーザ光の繰り返し周波数はある程度大きい方が好ましい。具体的には、SiC基板の厚みが200μm以下である場合、SiC基板表面におけるパルスレーザ光のショットピッチをSP(μm)とし、パルスレーザ光の繰り返し周波数をF(kHz)としたとき、0<(SP/F)<0.007を満たすようにショットピッチおよび繰り返し周波数を調整することが好ましい。パルスレーザ光のショットピッチおよび繰り返し周波数をこのように調整することで、後述する実施例に示すように、損傷形成工程およびエキスパンド工程のみで確実に各チップを分割することができる。なお、SiC基板に連続発振レーザ光を照射する場合も、SP=0,F=∞であることから、(SP/F)<0.007を満たしているといえる。
[その他]
本発明のレーザダイシング方法において、レーザ光源として用いるレーザの種類は、波長500nm以上のレーザ光を出射することができれば特に限定されない。そのようなレーザの例には、HoレーザやErレーザ、各種半導体レーザなどが含まれる。
レーザ光の集光点の位置は、特に限定されず、SiC基板の外部、表面または内部のいずれであってもよい。加工効率の向上および損傷幅の低減の観点からは、レーザ光の集光点の位置は、SiC基板の表面から上方100μm〜表面から内部120μmの範囲内に位置することが好ましい。ここで「レーザ光の集光点の位置」とは、SiC基板の屈折率が空気と同じであると仮定した場合の集光点の位置(レンズオフセット)を意味する。
レーザ光がパルスレーザ光の場合、パルスレーザ光の集光位置における1パルスあたりの光強度密度は1〜5000J/cmの範囲内であることが好ましい。1パルスあたりの光強度密度が1J/cm未満の場合、損傷を十分に誘起できないおそれがある。一方、1パルスあたりの光強度密度が5000J/cm超の場合、デブリが大量に発生して加工品質が低下するおそれがある。一方、レーザ光が連続発振レーザ光の場合、レーザ光の集光位置における光強度密度は1×10〜5×10W/cmの範囲内であることが好ましい。光強度密度が1×10W/cm未満の場合、損傷を十分に誘起できないおそれがある。一方、光強度密度が5×10W/cm超の場合、デブリが大量に発生して加工品質が低下するおそれがある。
前述の通り、本発明のレーザダイシング方法では、SiC基板は、損傷形成工程またはエキスパンド工程のいずれかにおいて分割される。前者の場合、レーザ光照射により損傷が形成されることをきっかけとして、SiC基板の表面から裏面に到達する分割面が自然に形成されることで、SiC基板が分割される。SiC基板が損傷形成工程で分割されているかどうかは、SiC基板の裏面側から光を当てた状態で、表面側から顕微鏡を用いて分割予定ラインの近傍を観察することで確認することができる。すなわち、SiC基板が分割されている場合は、分割予定ラインに沿って光が抜けてくるので、SiC基板が分割されていることを確認することができる。
2)エキスパンド工程
エキスパンド工程では、損傷形成工程において損傷を形成されたSiC基板に引張力を加える(図2C参照)。前述の通り、「引張力を加える」とは、基板面に対して略平行方向の力を加えることを意味する。SiC基板が損傷形成工程で分割されている場合は、エキスパンド工程により、分割されたチップ間の間隔が拡げられる。一方、SiC基板が損傷形成工程で分割されていない場合は、エキスパンド工程により、損傷を起点としてSiC基板が分割され、同時に分割されたチップ間の間隔が拡げられる。
SiC基板に引張力を加える方法は、特に限定されない。たとえば、SiC基板の裏面にダイシングテープを貼付して、このダイシングテープを引き伸ばせばよい。この場合、損傷形成工程の前にダイシングテープを貼付してもよいし、損傷形成工程の後にダイシングテープを貼付してもよい。
本発明のレーザダイシング方法を実施する手段は、特に限定されない。たとえば、本発明のレーザダイシング方法は、次に説明する本発明のレーザ加工装置を用いて実施されうる。
2.本発明のレーザ加工装置
本発明のレーザ加工装置は、本発明のレーザダイシング方法のレーザ照射工程に用いられる装置である。すなわち、本発明のレーザ加工装置は、波長500nm以上のレーザ光を、分割予定ラインに沿って、かつ照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うようにSiC基板に照射して、分割予定ラインに沿ってSiC基板にSiC基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成する装置である。本発明のレーザ加工装置は、SiC基板に照射するレーザ光の波長が500nm以上であること、および照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うようにレーザ光を照射すること、を特徴とする。
本発明のレーザ加工装置は、少なくとも、SiC基板に照射するレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光をSiC基板に照射する光学系と、光学系(レーザ光)とSiC基板とを相対的に移動させる駆動部とを有する。以下、各構成要素について説明する。
レーザ光源は、波長500nm以上のレーザ光を出射する。前述の通り、レーザ光源として用いるレーザの種類は、波長500nm以上のレーザ光を出射することができれば特に限定されない。そのようなレーザの例には、HoレーザやErレーザ、各種半導体レーザなどが含まれる。
光学系は、所望の位置に集光点が位置するように、レーザ光源から出射されたレーザ光をSiC基板に照射する。通常、光学系は、レーザ光のビーム径を最適化するテレスコープ光学系や、レーザ光を所望の位置に集光させる集光レンズなどを含む。
駆動部は、光学系(レーザ光)およびSiC基板の少なくとも一方を移動させて、光学系とSiC基板とを相対的に移動させる。これにより、レーザ光をSiC基板の分割予定ラインに沿って、かつ照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように照射することができる。その結果、SiCの分割予定ラインに沿ってアスペクト比の高い損傷を形成することができる。駆動部は、SiC基板を載置するステージを移動させてもよいし、光学系を移動させてもよいし、ステージおよび光学系の両方を移動させてもよい。
その他、後述する実施の形態で説明するように、レーザ加工装置は、加工対象のSiC基板を載置するステージや、所望の位置に集光点を位置させるための自動照準システムなどを有していてもよい。
以上の通り、本発明のレーザダイシング方法およびレーザ加工装置は、波長500nm以上のレーザ光を、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように照射することで、SiC基板の表面に高アスペクト比(SiC基板の厚みの50%以上の深さ)の損傷を高精度かつ高速に形成することができる。したがって、本発明のレーザダイシング方法およびレーザ加工装置は、ブレーク工程を行うことなくエキスパンド工程のみでSiC基板を高精度かつ高速に分割することができる。
3.本発明の特徴について
(1)波長
前述の通り、本発明のレーザダイシング方法は、波長500nm以上のレーザ光をSiC基板に照射することを一つの特徴とする。一方、波長500nm以上のレーザ光をSiC以外の物質に照射しても、SiCに照射したときのように高アスペクト比の損傷を高精度かつ高速に形成することはできない。
一例として、典型的な難加工性材料である石英やサファイアなどに波長500nm以上のレーザ光を照射した場合について説明する。この場合、これらの透明誘電体材料のバンドギャップは5〜9eVと大きいため、波長500nm以上の光では3光子吸収または4光子吸収が生じてようやく電子のバンド間遷移を誘起できる。パルス幅の長い(ナノ秒〜マイクロ秒)レーザ光で3光子吸収または4光子吸収を誘起しようとすれば、尖頭出力が非常に大きい(GW/cm以上)パルスレーザ光を照射する必要がある。しかしながら、このような強い光を集光照射すると、3光子吸収または4光子吸収が生じる前に他の非線形過程(絶縁破壊)が必ず誘起されてしまうため、損傷の形状が大きく乱れてしまう。したがって、石英やサファイアなどに波長500nm以上のレーザ光を照射しても、非常に乱れた形状の損傷しか形成することができない。
また、金属加工では、炭酸ガスレーザ(無偏光でかつ波長10μm)を照射することがあった。しかしながら、この方法でも高アスペクト比の損傷を高精度かつ高速に形成することはできない。すなわち、この方法は、金属の格子振動を直接励起して行う熱溶融加工であるため、高アスペクト比の損傷を形成したり、高精度の加工(空間分解能がμmレベル)をしたりすることはできない。
(2)ショットピッチおよび繰り返し周波数
また、本発明のレーザダイシング方法は、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うようにレーザ光を照射することも一つの特徴とする。
表1は、SiC、サファイア、石英および単結晶Siの各種特性を示す表である。
多光子吸収を利用してSi、ガラス、サファイアなどを加工する従来のレーザ加工方法では、より硬い物、より融点が高い物を加工するためにはレーザ光の強度を高めるというのが、当業者にとっての常識であった。また、加工速度を向上させる観点から、ショットピッチをある程度大きくする(例えば、1〜数μm)というのが、当業者にとっての常識であった。
表1に示されるように、SiCは非常に硬く、かつ融点が高いため、SiCに対して従来と同じようにレーザ光を照射しても、SiCを適切に加工することはできない。特に、SiCは熱伝導率が非常に高いため、従来と同じ熱量を局所的に加えても、当該地点から逃げる熱量も多いため、SiCを適切に加工することはできない。このような場合、当業者であれば、レーザ光の出力を高めるのが一般的である。しかしながら、レーザ光の出力を極端に高めてしまうと、所望の加工形状を明確に逸脱した範囲にまで及ぶSiCの化学的変質(炭化物またはこげ状物質への変化)や、所望の加工形状を明確に逸脱した範囲にまで及ぶSiCの破壊などが発生して、加工品質が顕著に低下してしまう。このため、従来のレーザ加工方法では、SiCに対して半導体分野で要求されるような精密加工を行うことはできない。
これに対し、本発明者は、熱伝導率が非常に高いことを考慮して、レーザ光の出力を過剰に高めることなく、逃げる熱量よりも供給熱量を大きくする手段を検討した。そして、本発明者は、ショットピッチおよび繰り返し周波数という独自のパラメータに着目し、加工が困難なSiCを精緻に加工する方法を発明した。
4.実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されない。
図3は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
図3に示されるように、レーザ加工装置200は、レーザ光源210、テレスコープ光学系220、集光レンズ230、ステージ240、AFカメラ250、XYステージコントローラ260、Zコントローラ270およびコンピュータ280を有する。
レーザ光源210は、波長500nm以上のレーザ光を出射する。レーザ光源は、例えば、波長500nm〜10μm、パルス幅20ナノ秒以上、繰り返し周波数1kHz〜10MHz、1パルスあたりの光強度密度1〜5000J/cmのパルスレーザ光、または波長500nm〜10μm、光強度密度1×10〜5×10W/cmの連続発振レーザ光を出射する。
テレスコープ光学系220は、好ましい加工形状を得るために、レーザ光源210から出射されたレーザ光のビーム径を最適化する。
集光レンズ230は、テレスコープ光学系220を透過したレーザ光を集光する。たとえば、集光レンズ230は、顕微鏡用の対物レンズである。
ステージ240は、加工対象のSiC基板110が載置される載置台と、この載置台を移動させることができる駆動機構とを有する。駆動機構は、載置台をX軸またはY軸方向に移動させたり、X軸またはY軸を中心として回転させたりすることができる。ステージ240上のSiC基板110は、この駆動機構によって分割予定ラインに沿ってXY軸方向に移動される。
AFカメラ250は、SiC基板110の加工部位の表面プロファイルを取得するためのカメラである。取得されたプロファイルは、コンピュータ280に出力される。
XYステージコントローラ260は、コンピュータ280の指示に基づいて、レーザ光の集光位置がSiC110の分割予定ラインに沿うように、ステージ240をXY軸方向に移動させる。
Zコントローラ270は、コンピュータ280の指示に基づいて、レーザ光の集光位置が所望の位置に合うように、集光レンズ230をZ軸方向に移動させる。
コンピュータ280は、レーザ光源210、AFカメラ250、XYステージコントローラ260およびZコントローラ270に接続されており、これら各部を総合的に制御する。たとえば、コンピュータ280は、AFカメラ250およびXYステージコントローラ260を制御して、SiC基板110の表面プロファイルを取得する。また、コンピュータ280は、XYステージコントローラ260およびZコントローラ270を制御して、SiC基板110の分割予定ラインに沿ってレーザ光を走査する。
次に、レーザ加工装置200を用いてSiC基板110を分割する手順を説明する。
まず、図3に示されるレーザ加工装置200により、SiC基板110に表面から内部に向かう損傷を形成する(損傷形成工程)。具体的には、まず、裏面にダイシングテープ140が貼付されたSiC基板110をステージ240の載置台に載置して、AFカメラ250およびXYステージコントローラ260によりSiC基板110の表面プロファイルを取得する。次いで、レーザ光源210からレーザ光を出射して、レーザ光をSiC基板110に照射する。このとき、予め取得した表面プロファイルに基づき、ステージ240をXY軸方向(水平方向)に移動することで、レーザ光で分割予定ラインを走査する(図2A参照)。また、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように、レーザ光を走査する。これにより、SiC基板110の分割予定ラインに沿って、SiC基板110の厚みの50%以上の深さの損傷を形成することができる(図2B参照)。
次いで、図示しないエキスパンド装置により、ダイシングテープ140を引き伸ばして、損傷を形成されたSiC基板110に引張力を加える(エキスパンド工程)。SiC基板110が損傷形成工程で分割されている場合は、エキスパンド工程により、分割されたチップ間の間隔が拡げられる。一方、SiC基板110が損傷形成工程で分割されていない場合は、エキスパンド工程により、損傷を起点としてSiC基板110が分割され、同時に分割されたチップ間の間隔が拡げられる(図2C参照)。
以上の手順により、ブレーク工程を挟むことなく、損傷形成工程およびエキスパンド工程のみでSiC基板を分割(ダイシング)することができる。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
加工対象物として、直径3インチのSiC単結晶基板(厚さ150μm)から所定の形状に切り出したSiC基板を準備した。SiC基板としては、10×10mmの正方形状に切り出したもの、基板を碁盤目状に9分割したもの(扇形の部分のみ使用;25×25mm)および基板を4等分したもの(扇形;38×38mm)を準備した。
裏面にダイシングテープを貼付したSiC基板をステージに載せ、SiC基板の表面側からSiC基板にパルスレーザ光(波長1064nm、パルス幅190ナノ秒)を照射して、SiC基板に表面から内部に向かう損傷を形成した(損傷形成工程)。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面から内部100μmの位置に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、5.8μmであった。パルスレーザ光のパルスエネルギは、133〜500μJの範囲内で変化させた。ステージの移動速度は、20〜70mm/秒の範囲内で変化させた。パルスレーザ光の繰り返し周波数は、40〜150kHzの範囲内で変化させた(表2参照)。
次に、SiC基板の裏面に貼付されたダイシングテープを均等に引き伸ばして、SiC基板を分割予定ラインに沿って分割(チップ化)した(エキスパンド工程)。この後、各SiC基板について、分割予定ラインの総数(各チップの1辺の長さを単位とする)に対する、実際に分割された分割予定ラインの数の割合(以下「ダイシング特性」という)を算出した。なお、各SiC基板において、実際に分割された分割予定ラインのうち、80〜90%は、損傷形成工程において分割されており(エキスパンド工程の前に光を照射して確認)、残りの10〜20%はエキスパンド工程で分割されていた。
図5は、10×10mmの正方形状のSiC基板を分割した結果を示す写真である。図5Aは、No.1の結果を示す写真であり、図5Bは、No.2の結果を示す写真である(表2参照)。図5Aに示される例では、40本の分割予定ラインのうち24本の分割予定ラインが分割されていることから、ダイシング特性は60%である。図5Bに示される例では、40本の分割予定ラインのうち40本の分割予定ラインが分割されていることから、ダイシング特性は100%である。
図6は、25×25mmの扇形のSiC基板を分割した結果を示す写真である。図6Aは、No.10の結果を示す写真であり(ダイシング特性0%)、図6Bは、No.11の結果を示す写真である(ダイシング特性99%)。
図7は、38×38mmの扇形のSiC基板をダイシングした結果を示す写真である。図7Aは、No.14の結果を示す写真であり(ダイシング特性0%)、図7Bは、No.17の結果を示す写真である(ダイシング特性98%)。
また、各SiC基板について、分割後に分割面を観察して、損傷形成工程で形成された損傷の深さを測定した。図8Aは、実験No.4の条件でレーザ光を照射したSiC基板の断面の写真である。この実験では、分割前の損傷の断面形状を示すために、厚さ350μmのSiC基板を使用した。図8Bは、エキスパンド後のNo.4の基板(厚さ150μm)の分割面の写真である。
レーザ加工の条件、損傷の深さ、ダイシング特性の算出値を表2に示す。
図9は、「SP/F」の値とダイシング特性の関係を示すグラフである。このグラフから、「SP/F」の値が0.007(7×10−3)未満となると、ダイシング特性が急激に上昇することがわかる。
以上の結果から、本発明のレーザダイシング方法により、ブレーク工程を挟むことなく、損傷形成工程およびエキスパンド工程のみでSiC基板を分割できることがわかる。また、本発明のレーザダイシング方法では、SiC基板の大きさに関係なく、SiC基板をダイシングできることもわかる。
[実施例2]
加工対象物として、直径3インチのSiC単結晶基板(厚さ130μm)から所定の形状に切り出したSiC基板を準備した。SiC基板としては、10×10mmの正方形状に切り出したものおよび基板を碁盤目状に9分割したもの(扇形の部分のみ使用;25×25mm)を準備した。
裏面にダイシングテープを貼付したSiC基板をステージに載せ、SiC基板の表面側からSiC基板にパルスレーザ光(波長1064nm、パルス幅190ナノ秒)を照射して、SiC基板に表面から内部に向かう損傷を形成した(損傷形成工程)。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面から内部80μmの位置に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、5.8μmであった。パルスレーザ光のパルスエネルギは、180μJとした。ステージの移動速度は、30〜55mm/秒の範囲内で変化させた。パルスレーザ光の繰り返し周波数は、60〜110kHzの範囲内で変化させた(表3参照)。
次に、SiC基板の裏面に貼付されたダイシングテープを均等に引き伸ばして、SiC基板を分割予定ラインに沿って分割(チップ化)した(エキスパンド工程)。この後、各SiC基板について、実施例1と同様の手順でダイシング特性を算出した。また、各SiC基板について、分割後に分割面を観察して、損傷形成工程で形成された損傷の深さを測定した。なお、各SiC基板において、実際に分割された分割予定ラインのうち、80〜90%は、損傷形成工程において分割されており、残りの10〜20%はエキスパンド工程で分割されていた。
レーザ加工の条件、損傷の深さ、ダイシング特性の算出値を表3に示す。
図10は、「SP/F」の値とダイシング特性の関係を示すグラフである。このグラフから、「SP/F」の値が0.007(7×10−3)未満となると、ダイシング特性が急激に上昇することがわかる。特に、No.4の実験結果に着目すると、ショットピッチが小さいだけでは適切なダイシングを行うことはできず、ショットピッチが小さく、かつ繰り返し周波数が大きい場合に適切なダイシングを行いうることがわかる。
以上の結果から、本発明のレーザダイシング方法により、ブレーク工程を挟むことなく、損傷形成工程およびエキスパンド工程のみでSiC基板を分割できることがわかる。
実施例1および実施例2では、それぞれ厚さ150μmおよび130μmのSiC基板を分割した。また、これらのSiC基板の厚さは、±10%程度の誤差がある。これらことから、本発明のレーザダイシング方法では、SiC基板の厚さが200μm以下であれば、損傷形成工程およびエキスパンド工程のみでSiC基板を分割できることが示唆される。
[参考例]
参考例として、異なるパルス幅のパルスレーザ光を照射して、SiC基板に深い損傷を形成できるかどうかを調べた結果を示す。
加工対象物として、直径3インチのSiC単結晶基板(厚さ150μm)から10×10mmの正方形状に切り出したSiC基板を準備した。
SiC基板をステージに載せ、SiC基板の表面側からSiC基板にパルスレーザ光(波長1064nm、パルス幅30ナノ秒または200ナノ秒)を照射して、SiC基板に表面から内部に向かう損傷を形成した。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面から内部20μm(パルス幅30ナノ秒の場合)または内部100μm(パルス幅200ナノ秒の場合)の位置に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、5.4μm(パルス幅30ナノ秒の場合)または5.8μm(パルス幅200ナノ秒の場合)であった。
この後、分割予定ラインに直交する別の分割予定ラインに沿って各SiC基板を分割し、各SiC基板についてレーザ光の照射により形成された損傷の深さを測定した。レーザ加工の条件および損傷の深さを表4に示す。
以上の結果から、SiC基板に照射するレーザ光のパルス幅が一般的なナノ秒レベルのパルス幅(20ナノ秒以上)であれば、SiC基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成して、本発明の課題を解決できることが示唆される。
[比較例]
比較例では、UVパルスレーザ光をSiC基板に照射した例を示す。
加工対象物として、直径3インチのSiC単結晶基板(厚さ150μm)から所定の形状に切り出したSiC基板を準備した。SiC基板としては、10×10mmの正方形状に切り出したものを準備した。
裏面にダイシングテープを貼付したSiC基板をステージに載せ、SiC基板の表面側からSiC基板にUVパルスレーザ光(波長355nm、パルス幅25ナノ秒)を照射して、SiC基板に表面から内部に向かう損傷を形成した。このとき、ステージをXY軸方向(水平方向)に移動させて、SiC基板の分割予定ラインに沿って損傷を形成した。集光点は、SiC基板の表面に合わせた。基板表面における照射スポット径(1/e幅)は、6.28μmであった。パルスレーザ光のパルスエネルギは、5〜17μJの範囲内で変化させた。ステージの移動速度は、18mm/秒とした。パルスレーザ光の繰り返し周波数は、60kHzとした。
この後、分割予定ラインに直交する別の分割予定ラインに沿って各SiC基板を分割し、各SiC基板についてレーザ光の照射により形成された損傷の深さを測定した。
図11Aは、パルスエネルギが5μJの条件でレーザ光を照射したSiC基板の断面の写真である。図11Bは、パルスエネルギが17μJの条件でレーザ光を照射したSiC基板の断面の写真である。図12は、パルスエネルギと損傷の深さとの関係を示すグラフである。このグラフから、パルスエネルギを高めても損傷の深さは60μm程度までしか増大しない(飽和する)ことがわかる。
以上の結果から、波長が500nm未満のレーザ光を照射しても、アスペクト比の高い損傷を形成することができず、SiC基板を分割できないことがわかる。
本発明のレーザダイシング方法およびレーザ加工装置は、ブレーク工程を行わずにSiC基板を分割することができる。たとえば、本発明のレーザダイシング方法およびレーザ加工装置を利用すれば、半導体素子の製造工程の簡略化や、半導体素子の製造コストの低減などを実現することができる。
10,100 レーザ光
11,110 SiC基板
12,120 分割予定ライン
13,130 損傷
140 ダイシングテープ
200 レーザ加工装置
210 レーザ光源
220 テレスコープ光学系
230 集光レンズ
240 ステージ
250 AFカメラ
260 XYステージコントローラ
270 Zコントローラ
280 コンピュータ

Claims (12)

  1. 分割予定ラインに沿ってシリコンカーバイド基板に波長500nm以上のレーザ光を照射して、前記分割予定ラインに沿って前記シリコンカーバイド基板に前記シリコンカーバイド基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成する損傷形成工程と、
    前記レーザ光を照射された前記シリコンカーバイド基板に引張力を加えるエキスパンド工程と、を含み、
    前記レーザ光は、照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように前記シリコンカーバイド基板に照射され、
    前記シリコンカーバイド基板は、前記損傷形成工程または前記エキスパンド工程において分割される、
    レーザダイシング方法。
  2. 前記シリコンカーバイド基板の厚みは、200μm以下であり、
    前記レーザ光は、パルスレーザ光であり、
    前記シリコンカーバイド基板の表面における前記レーザ光の照射スポットの中心間距離をSP(μm)とし、前記レーザ光の繰り返し周波数をF(kHz)としたとき、(SP/F)<0.007である、
    請求項1に記載のレーザダイシング方法。
  3. 前記シリコンカーバイド基板は、前記損傷形成工程において分割される、請求項1に記載のレーザダイシング方法。
  4. 前記シリコンカーバイド基板は、前記エキスパンド工程において分割される、請求項1に記載のレーザダイシング方法。
  5. 前記損傷形成工程と前記エキスパンド工程との間に、前記シリコンカーバイド基板に折曲力を加えて、前記損傷を起点として前記シリコンカーバイド基板を分割するブレーク工程を含まない、請求項1に記載のレーザダイシング方法。
  6. 前記レーザ光は、パルス幅が20ナノ秒以上のパルスレーザ光または連続発振レーザ光である、請求項1に記載のレーザダイシング方法。
  7. 前記レーザ光の波長は、10μm以下である、請求項1に記載のレーザダイシング方法。
  8. 前記レーザ光は、前記シリコンカーバイド基板の表面側から前記シリコンカーバイド基板に照射され、
    前記レーザ光の集光点は、前記シリコンカーバイド基板の表面から上方100μm〜表面から内部120μmの範囲内に位置する、請求項1に記載のレーザダイシング方法。
  9. 波長500nm以上のレーザ光を出射するレーザ光源と、
    前記レーザ光をシリコンカーバイド基板に照射する光学系と、
    前記光学系および前記シリコンカーバイド基板の少なくとも一方を移動させて、前記光学系と前記シリコンカーバイド基板とを相対的に移動させる駆動部と、を有し、
    前記レーザ光を、分割予定ラインに沿って、かつ照射スポットが空間的および時間的に密に重なり合うように、シリコンカーバイド基板に照射して、前記分割予定ラインに沿って前記シリコンカーバイド基板に前記シリコンカーバイド基板の厚みの50%以上の深さの損傷を形成する、
    レーザ加工装置。
  10. 前記シリコンカーバイド基板の厚みは、200μm以下であり、
    前記レーザ光は、パルスレーザ光であり、
    前記シリコンカーバイド基板の表面における前記レーザ光の照射スポットの中心間距離をSP(μm)とし、前記レーザ光の繰り返し周波数をF(kHz)としたとき、(SP/F)<0.007である、
    請求項9に記載のレーザ加工装置。
  11. 前記レーザ光は、パルス幅が20ナノ秒以上のパルスレーザ光または連続発振レーザ光である、請求項9に記載のレーザ加工装置。
  12. 前記レーザ光の波長は、10μm以下である、請求項9に記載のレーザ加工装置。
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