JP2013171682A - 燃料電池システム及び燃料電池の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】負電圧の発生を抑制し、燃料電池の性能劣化を抑制する。
【解決手段】一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池2と、一又は複数の単セル毎に電圧を検出するセル電圧検出器2cと、前記燃料電池の温度を検出する温度検出器2dと、前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池2の出力を制限する制御装置6と、を備える燃料電池システム1。
【選択図】図1
【解決手段】一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池2と、一又は複数の単セル毎に電圧を検出するセル電圧検出器2cと、前記燃料電池の温度を検出する温度検出器2dと、前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池2の出力を制限する制御装置6と、を備える燃料電池システム1。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池システム及び燃料電池の制御方法に関する。
燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池をエネルギ源とする燃料電池システムとして種々のものが開発されている。こうした燃料電池の多くは、最小発電単位である単セルを多数積層してなるスタック構造とされている。単セルは、イオン交換膜からなる高分子電解質膜の両側にそれぞれアノード電極及びカソード電極が配置されたMEA(膜・電極構造体)と、MEAの両側に配置された一対のセパレータとを備えてなる。
従来から、燃料電池の運転中に一部の単セルに負電圧(単セルの出力電圧が逆電位まで落ち込む状態)が発生してしまうことが知られている。負電圧が発生すると、燃料電池全体の性能が低下するばかりではなく、単セルの電極が劣化してしまう可能性がある。例えば、特許文献1では、反応ガスの供給不足に起因して負電圧が発生してしまうことに鑑み、一つ以上の発電体において負電圧を検出した場合に、反応ガスの増大処理等を実施して、負電圧を回復させることが提案されている。
しかしながら、負電圧が発生してからの対応では、発電性能の低下を抑制できない場合がある。例えば、燃料電池を高温・高出力で運転したような場合は、一部の単セルにおいて電解質膜の含水量が不十分となり(ドライアップ)、負電圧を生じてしまう。この場合、単セルが過熱状態となって、電解質膜が溶融し孔が空いてしまうおそれがある。こうした事態を回避するには、負電圧が発生してから出力制限等をするのでは遅く、負電圧の発生自体を抑制する必要がある。
そこで、本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、負電圧の発生を抑制し、燃料電池の性能劣化を抑制することのできる燃料電池システム及び燃料電池の制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムは、
一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池と、
一又は複数の前記単セル毎に電圧を検出するセル電圧検出器と、
前記燃料電池の温度を検出する温度検出器と、
前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池の出力を制限する制御装置と、
を備える
また、本発明に係る燃料電池の制御方法は、
一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池の制御方法であって、
一つ又は複数の前記単セル毎に電圧を検出するステップと、
前記燃料電池の温度を検出するステップと、
前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池の出力を制限するステップと、を備える。
一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池と、
一又は複数の前記単セル毎に電圧を検出するセル電圧検出器と、
前記燃料電池の温度を検出する温度検出器と、
前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池の出力を制限する制御装置と、
を備える
また、本発明に係る燃料電池の制御方法は、
一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池の制御方法であって、
一つ又は複数の前記単セル毎に電圧を検出するステップと、
前記燃料電池の温度を検出するステップと、
前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池の出力を制限するステップと、を備える。
本発明者は、燃料電池の温度、単セルにおける電圧の変動速度及びその継続時間の3つの要素を考慮することにより、単セルにおける負電圧の発生をより確実に予測できることを見出した。上記構成によれば、燃料電池の温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、燃料電池からの電力の出力が制限されるので、単セルにおいて負電圧が発生する前に、燃料電池の負荷が減少し、単セルの出力電圧が回復する。これにより、単セルにおける負電圧の発生を抑制し、また、これに起因する燃料電池の劣化(例えば、単セルが過熱状態となって高分子電解質膜が溶融し孔が空いてしまう等)を抑制することができる。なお、所定温度は、例えば、65℃〜105℃の範囲で適宜設定可能であるが、95℃を超えると特にドライアップの可能性が高まるので95℃が好ましい。
また、上記構成において、前記所定温度は、前記高分子電解質膜がドライアップする可能性のある温度に基づいて設定されるようにしてもよい。
高分子電解質膜がドライアップする可能性がある温度に燃料電池が達するとその後負電圧が発生するおそれがあるので、上記構成により、より確実に単セルにおける負電圧の発生を防止できる。なお高分子電解質膜がドライアップする可能性がある温度は、例えば80℃である。
また、上記構成において、前記所定の閾値は、前記単セルの電圧ハンチング速度よりも低い値に設定されるようにしてもよい。
正常運転時においても、燃料電池の単セルの電圧はハンチング(過渡的に振動)している(本明細書においては、ハンチングによる電圧の変動速度を「電圧ハンチング速度」という)。上記構成によれば、所定の閾値を電圧ハンチング速度よりも低い値に設定するので、単セルの電圧がハンチングにより一次的に低下したとしても、燃料電池の出力は制限されない。これにより、正常運転しているにかかわらず燃料電池の出力を制限してしまうような事態を防止できる。
また、上記構成において、前記制御装置は、前記燃料電池への出力増加要求があったときは、前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度から前記出力増加要求に起因する電圧の変動速度を減算した値が前記所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合に、前記燃料電池の出力を制限するようにしてもよい。
燃料電池への出力増加要求後は、当該出力増加要求に起因して単セルの電圧が一時的に低下する。上記構成によれば、出力増加要求による一時的な電圧の変動速度を差し引いた電圧変動速度を基準に出力制限を行う。そのため、出力増加要求に起因して単セルの電圧が一時的に下がっているだけで、負電圧が発生すると誤って予測して燃料電池の出力を制限してしまうようなことを防止できる。
前記制御装置は、前記制御装置は、前記電極へ供給する反応ガスの供給量を制限することで、前記電力の出力を制限するようにしてもよい。
上記構成によれば、電極へ供給する反応ガスの供給量が制限されるので、単セルの負荷が減少する。これにより、単セルの出力電圧を回復させ、負電圧の発生を抑制することができる。
本発明によれば、負電圧の発生を抑制し、燃料電池の性能劣化を抑制することのできる燃料電池システム及び燃料電池の制御方法を提供することができる。
添付の図面を参照しながら、以下、本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の構成について説明する。
本実施形態に係る燃料電池システム1は、図1に示すように、燃料電池2やバッテリ52で発生させた電力を、トラクションインバータ53を介してトラクションモータM3に供給することにより、トラクションモータM3を回転駆動するものである。燃料電池システム1は、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池2、酸化ガスとしての空気を燃料電池2に供給する酸化ガス配管系3、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池2に供給する燃料ガス配管系4、システムの電力を充放電する電力系5、システム全体を統括制御する制御装置6等を備えている。
燃料電池2は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単電池を積層したスタック構造を備えている。燃料電池2を構成する単電池は、高分子電解質膜をアノード電極及びカソード電極の二つの電極で挟み込んで構成した膜・電極接合体(MEA)を、燃料ガス及び酸化ガスを供給するためのセパレータで挟み込んだ構造を有しており、さらにカソード電極及びアノード電極を両側から挟みこむように一対のセパレータを有している。一方のセパレータの燃料ガス流路に燃料ガスが供給され、他方のセパレータの酸化ガス流路に酸化ガスが供給され、このガス供給により燃料電池2は電力を発生する。すなわち、燃料電池2においては、アノード電極において以下の(1)式の酸化反応が生じ、カソード電極において以下の(2)式の還元反応が生じ、燃料電池2全体としては以下の(3)式の起電反応が生じる。
H2→2H++2e− ・・・(1)
(1/2)O2+2H++2e−→H2O ・・・(2)
H2+(1/2)O2→H2O ・・・(3)
H2→2H++2e− ・・・(1)
(1/2)O2+2H++2e−→H2O ・・・(2)
H2+(1/2)O2→H2O ・・・(3)
燃料電池2には、燃料電池2からの出力電流及び出力電圧を検出する電流センサ2a及び電圧センサ2bが取り付けられている。また、セルモニタ(セル電圧検出器)2cが、燃料電池2の各単セルに接続されており、各単セルの出力電圧を検出する。尚、セルモニタ2cを複数の単セル毎に接続し、複数の単セル毎の群電圧及び平均セル電圧を検出するようにしても良い。また、燃料電池2には、燃料電池2のスタック温度を測定する温度センサ(温度検出器)2dが取り付けられている。
酸化ガス配管系3は、エアコンプレッサ31、酸化ガス供給路32、加湿モジュール33、カソードオフガス流路34、希釈器35、エアコンプレッサ31を駆動するモータM1等を有している。
エアコンプレッサ31は、制御装置6の制御指令で作動するモータM1の駆動力により駆動されて、図示していないエアフィルタを介して外気から取り込んだ空気(酸化ガス)を燃料電池2のカソード極に供給するものである。酸化ガス供給路32は、エアコンプレッサ31から供給される空気を燃料電池2のカソード極に導くためのガス流路である。燃料電池2のカソード極からはカソードオフガスが排出される。このカソードオフガスは、燃料電池2の電池反応により生成された水分を含むため高湿潤状態となっている。
加湿モジュール33は、酸化ガス供給路32を流れる低湿潤状態の酸化ガスと、カソードオフガス流路34を流れる高湿潤状態のカソードオフガスと、の間で水分交換を行い、燃料電池2に供給される酸化ガスを適度に加湿する。カソードオフガス流路34は、カソードオフガスをシステム外に排気するためのガス流路であり、そのガス流路のカソード極出口付近にはエア調圧弁A1が配設されている。燃料電池2に供給される酸化ガスの背圧は、エア調圧弁A1によって調圧される。希釈器35は、水素ガスの排出濃度を予め設定された濃度範囲(環境基準に基づいて定められた範囲等)に収まるように希釈する。希釈器35には、カソードオフガス流路34の下流及び後述するアノードオフガス流路44の下流が連通しており、水素オフガス及び酸素オフガスは混合希釈されてシステム外に排気されることとなる。
燃料ガス配管系4は、燃料ガス供給源41、燃料供給流路42、燃料循環流路43、アノードオフガス流路44、水素循環ポンプ45、逆止弁46、水素循環ポンプ45を駆動するためのモータM2等を有している。
燃料ガス供給源41は、燃料電池2へ水素ガス等の燃料ガスを供給する手段であり、例えば高圧水素タンクや水素貯蔵タンク等によって構成される。燃料供給流路42は、燃料ガス供給源41から放出される燃料ガスを燃料電池2のアノード極に導くためのガス流路であり、その流路には上流から下流にかけてタンクバルブH1、水素供給バルブH2、FC入口バルブH3等の弁が配設されている。タンクバルブH1、水素供給バルブH2及びFC入口バルブH3は、燃料電池2へと燃料ガスを供給(又は遮断)するためのシャットバルブであり、例えば電磁弁によって構成されている。水素供給バルブH2は、燃料供給流路42内を流通する燃料ガスの圧力を調整するものである。
燃料循環流路43は、燃料電池2から排出される未反応燃料ガスを燃料供給流路42に還流させるための帰還ガス流路であり、その流路には上流から下流にかけてFC出口バルブH4、水素循環ポンプ45、逆止弁46が各々配設されている。燃料電池2から排出された低圧の未反応燃料ガスは、制御装置6の制御指令で作動するモータM2の駆動力により駆動される水素循環ポンプ45によって適度に加圧され、燃料供給流路42へと送出される。燃料供給流路42から燃料循環流路43への燃料ガスの逆流は、逆止弁46によって抑制される。アノードオフガス流路44は、燃料電池2から排出された水素オフガスを含むアノードオフガスをシステム外に排気するためのガス流路であり、そのガス流路にはパージバルブH5が配設されている。パージバルブH5は、燃料循環流路43内のガスを外部に排出するものであり、本発明における排出弁として機能する。
電力系5は、高圧DC/DCコンバータ51、バッテリ52、トラクションインバータ53、補機インバータ54、トラクションモータM3、補機モータM4等を備えている。
高圧DC/DCコンバータ51は、直流の電圧変換器であり、バッテリ52から入力された直流電圧を調整してトラクションインバータ53側に出力する機能と、燃料電池2又はトラクションモータM3から入力された直流電圧を調整してバッテリ52に出力する機能と、を有する。高圧DC/DCコンバータ51のこれらの機能により、バッテリ52の充放電が実現される。また、高圧DC/DCコンバータ51により、燃料電池2の出力電圧が制御される。
バッテリ52は、トラクションモータM3に対して燃料電池2と並列に接続されており、余剰電力や回生制動時の回生エネルギを蓄える機能を有するとともに、燃料電池車両の加速又は減速に伴う負荷変動時のエネルギーバッファとして機能するものである。バッテリ52は、充放電可能な二次電池であり、種々のタイプの二次電池(例えばニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、リチウム二次電池等)により構成されている。バッテリ52は、図示していないバッテリコンピュータの制御によって余剰電力を充電したり補助的に電力を供給したりすることが可能になっている。燃料電池2で発電された直流電力の一部は、高圧DC/DCコンバータ51によって昇降圧され、バッテリ52に充電される。なお、バッテリ52に代えて二次電池以外の充放電可能な蓄電器(例えばキャパシタ)を採用することもできる。
トラクションインバータ53及び補機インバータ54は、パルス幅変調方式のPWMインバータであり、与えられる制御指令に応じて燃料電池2又はバッテリ52から出力される直流電力を三相交流電力に変換してトラクションモータM3及び補機モータM4へ供給する。トラクションモータM3は、車輪7L、7Rを駆動するためのモータである。トラクションモータM3には、その回転数を検知する回転数検知センサ5aが取付けられている。補機モータM4は、各種補機類を駆動するためのモータであり、エアコンプレッサ31を駆動するモータM1や水素循環ポンプ45を駆動するモータM2等を総称したものである。なお、本実施形態においては、燃料電池2から供給される電力を受けて作動する全ての機器を負荷装置と総称することとする。
制御装置6は、燃料電池システム1の各部を統合的に制御するためのコンピュータシステムであり、CPUや各種メモリ(ROM、RAM等)を有している。制御装置6は、各種センサから供給される信号(例えば、回転数検知センサ5aやアクセルペダル開度を検出するアクセルペダルセンサ6a等から送出される各センサ信号)の入力を受けて、負荷装置の負荷(要求出力)を算出する。そして、制御装置6は、この負荷に対応する出力電力を発生させるように、燃料電池2への反応ガスの供給等を制御することで、燃料電池2の出力電圧及び出力電流を制御する。また、制御装置6は、トラクションインバータ53及び補機インバータ54の出力パルス幅等を制御して、トラクションモータM3及び補機モータM4を制御する。
負荷装置の負荷は、例えば車両走行電力と補機電力との合計値である。補機電力には、各種補機(エアコンプレッサ31、水素循環ポンプ45等)で消費される電力、車両走行に必要な装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で消費される電力、乗員空間内に配置される装置(空調装置、照明器具、オーディオ等)で消費される電力等が含まれる。
制御装置6は、セルモニタ2c及び温度センサ2dからの出力を常時監視しており、各単セルに負電圧が発生する前に、燃料電池2の電力出力を制限し(以下、「出力制限」ともいう)、負電圧の発生を抑制する。この点を以下、図2及び図3を用いて詳述する。
まず、図2を用いて、他の出力制限方法の問題点について説明する。ここで、図2(A)は、スタック温度と出力制限量との関係を示す図、(B)は、時間と各セル電圧との関係を示す図である。
図2(A)に示すように、例えば、燃料電池の温度が95℃以上から出力制限を開始し、温度上昇と共にその比率を高め、98℃で出力制限を100%とする、といった制御が考えられる。しかしながら、燃料電池の運転履歴によっては、これよりも十分に低い温度(例えば80℃)であっても、単セルの高分子電解質膜がドライアップし、負電圧が発生してしまう場合がある。従って、この方法では負電圧の発生を確実に防止することはできない。
また、図2(B)に示すように、例えば、所定のサンプリング周期(ty)で各セルの電圧を検知し、最低セル電圧が0.1v以下であれば出力制限をする、といった制御が考えられる。しかしながら、ドライアップによるセル電圧の降下速度は非常に早く(例えば、−0.1v/s)、図2(B)に示すように、あるサンプリング周期(ty)において最低セル電圧が0.1v以下であったとしても、実際はより早い段階(tx)で最低セル電圧が0.1v以下になっている可能性がある。すなわち、通常の最低セル電圧のサンプリング周期(ty)では、負電圧の発生を事前に検知できない。従って、この方法では、負電圧の発生を確実に防止することはできない。
次に、図3に示すフローチャートを用いて、本発明の実施形態に係る出力制限方法について説明する。本実施形態においては、温度、電圧の変動速度(電圧の低下速度の大きさ)及びその持続時間の3つの要素を考慮し、負電圧の発生が予測される場合は、出力制限を行うことで、負電圧の発生を抑制する。
より具体的には、制御装置6は、燃料電池2の運転開始後、温度センサ2dから入力される温度が、所定の温度(T1)以上であるか否か(燃料電池温度≧T1)を判断する(ステップS1)。
ここで所定の温度(T1)は、各単セルの高分子電解質膜にドライアップが生じる可能性がある温度で設定される。この点、本発明者は、燃料電池2の運転履歴によっては、燃料電池の温度が80℃程度であってもドライアップが生じるという知見を得た。そこで、本実施形態においては、所定温度として80℃を設定している。すなわち、制御装置6は、燃料電池2の温度が80℃以上である場合は(ステップS1:YES)、ドライアップの可能性があると判断し、次の判断ステップに進む。
次に、制御装置6は、セルモニタ2cから入力される各セルの電圧(Vn)から、単セル毎の電圧の変動速度(dVn/dt)を算出し、各単セルにおいてこの変動速度が所定の閾値(v1)以下であるか否か(dVn/dt≦v1)を判断する(ステップS2)。
ここで、本発明者は、負電圧が発生する前には、電圧が急激に低下し、変動速度は少なくとも−20[mV/s]以下になるという知見を得た。そこで、本実施形態においては、所定の閾値として、−20[mV/s]を設定している。すなわち、制御装置6は、燃料電池2の単セルのうち、その電圧の変動速度が−20[mV/s]以下のものがある場合は(ステップS2:YES)、負電圧が発生する可能性があると判断し、次の判断ステップに進む。
なお、各単セルの電圧は、正常運転時においても電圧のハンチングによりおよそ−5[mV/s]から+5[mV/s]の速度で変動している。この点、本実施形態においては、所定の閾値(V1)を、−20[mV/s]とし、ハンチングに起因する電圧の変動速度よりも十分に低い値に設定している。そのため、一部の単セルの電圧がハンチングにより一次的に低下したとしても(電圧ハンチング速度が例えば−5[mV/s]になったとしても)、制御装置6は、次の判断ステップには進まないので、燃料電池2の出力は制限されない。これにより、正常運転しているにかかわらず燃料電池2の出力を制限してしまうような事態を防止できる。
次に、制御装置6は、電圧の変動速度が所定の閾値以下である状態が、一定時間(t1)以上継続するか否かを判断する(ステップS3)。所定時間継続した場合(ステップS3:YES)は、次のステップに進み、燃料電池2の出力を制限する(ステップS4)。所定時間継続していない場合(ステップS3:NO)は、燃料電池2の出力は制限されない。この判断フローは、ある単セルにおいて電圧が一時的に急減したとしてもその後(何もせずとも)当該単セルの電圧が復帰する場合があるという知見に基づく。本実施形態においては、所定時間(t1)は、3sに設定されている。
以上の判断ステップを経て、燃料電池2の温度が所定温度(T1)以上であり、かつ、少なくとも一つの単セルの電圧の変動速度(dVn/dt)が所定の閾値(v1)以下となる状態が一定時間(t1)継続する場合、制御装置6は、燃料電池2の出力を制限する(ステップS4)。具体的には、燃料電池2への反応ガスの供給を減少させる。すると、各単セルの負荷が減少し、単セルの出力電圧が回復する。これにより、負電圧の発生及びこれに起因する燃料電池の劣化(例えば、単セルが過熱状態となって電解質膜が溶融し孔が空いてしまう等)を抑制することができる。
以上本発明の実施形態を示したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な態様での実施が可能であることはいうまでもない。
例えば、制御装置6は、燃料電池2に出力増加要求があった場合は、出力増加要求に起因する単セルの一時的な電圧変動の影響を考慮して、燃料電池2の出力制限をするか否かを判断するようにしてもよい。例えば、燃料電池2が、アイドル状態からフル出力の発電までの要求があった場合におけるセル電圧の低下速度をdVFull/dtとした場合において、ステップS2以降の判断フローを次式のように変更しても良い。
すなわち、制御装置6は、単セルの電圧の変動速度から出力増加要求に起因する電圧の変動速度を減算した速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合に、燃料電池2の出力を制限する。出力増加要求による一時的な電圧の変動速度の影響を差し引いた速度を基準に出力制限を行うため、出力増加要求に起因して単セルの電圧が一時的に下がっているだけで、負電圧が発生すると誤って予測して燃料電池の出力を制限してしまうような事態を防止できる。
また、例えば、上記実施の形態においては、所定の温度(T1)としては、ドライアップが生じる可能性がある温度として、80℃を設定しているが、この温度に限られるものではなく、例えば、特にドライアップする可能性が高まる95℃に設定してもよい。
1……燃料電池システム、2……燃料電池、2a……電流センサ、2b……電圧センサ、2c……セルモニタ、2d……温度センサ、3……酸化ガス配管系、31……エアコンプレッサ、32……酸化ガス供給路、33……加湿モジュール、34……カソードオフガス流路、35……希釈器、4……燃料ガス配管系、41……燃料ガス供給源、42……燃料供給流路、43……燃料循環流路、44……アノードオフガス流路、45……水素循環ポンプ、46……逆止弁、5……電力系、5a……回転数検知センサ、51……高圧DC/DCコンバータ、52……バッテリ、53……トラクションインバータ、54……補機インバータ、6……制御装置、6a……アクセルペダルセンサ、7L、7R……車輪、A1……エア調圧弁、H1……タンクバルブ、H2……水素供給バルブ、H3……入口バルブ、H4……出口バルブ、H5……パージバルブ、M1……モータ、M2……モータ、M3……トラクションモータ、M4……補機モータ
Claims (6)
- 一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池と、
一又は複数の前記単セル毎に電圧を検出するセル電圧検出器と、
前記燃料電池の温度を検出する温度検出器と、
前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池の出力を制限する制御装置と、
を備える燃料電池システム。 - 前記所定温度は、前記高分子電解質膜がドライアップする可能性のある温度に基づいて設定される、請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記所定の閾値は、前記単セルの電圧ハンチング速度よりも低い値に設定される、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の燃料電池システム。
- 前記制御装置は、前記燃料電池への出力増加要求があったときは、前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度から前記出力増加要求に起因する電圧の変動速度を減算した値が前記所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合に、前記燃料電池の出力を制限する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
- 前記制御装置は、前記電極へ供給する反応ガスの供給量を制限することで、前記電力の出力を制限する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
- 一対の電極間に高分子電解質膜を挟持した単セルが複数積層されてなる燃料電池の制御方法であって、
一つ又は複数の前記単セル毎に電圧を検出するステップと、
前記燃料電池の温度を検出するステップと、
前記温度が所定温度以上であり、かつ、前記電圧の変動速度が所定の閾値以下となる状態が一定時間継続する場合、前記燃料電池の出力を制限するステップと、を備える燃料電池の制御方法。
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