JP2013154821A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的安価に、操安性と乗り心地との両者を向上させるための車両用サスペンションシステムを提供する。
【解決手段】4つの車輪12に対応して設けられた4つのショックアブソーバ32のうちの2つの車輪12Rrに対応して設けられた2つのショックアブソーバ32Rrのみが、自身が発生させる減衰力の大きさの基準となる減衰係数を変更する減衰係数変更機構を有する構成のシステムにおいて、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下か否かを判定して(S6)、そのような状況下にある場合に、通常減衰制御(S7,8)に代え、2つのショックアブソーバ32Rrの各々の減衰係数C*が、通常減衰制御において決定される目標減衰力に応じた値より小さな値となるように、減衰係数変更機構を制御する(S11,12)。
【選択図】図11

Description

本発明は、4つの車輪に対応して設けられた4つのショックアブソーバのうちの前方側の2輪と後方側の2輪とのいずれか一方に対応するもののみが減衰係数を変更する機構を有するものとされた車両に関し、特に、その車両に搭載される車両用サスペンションシステムに関する。
車両用のサスペンションシステムとして、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力の基準となる減衰係数を変更する減衰係数変更機構を有するショックアブソーバを各車輪の各々に対応して備えたサスペンションシステムが存在する。例えば、特許文献1に記載のシステムは、ハウジング内におけるピストンの摺動に伴う作動液の流通に対して抵抗を付与するとともに、その付与する抵抗を変更することで減衰係数を変更可能な液圧式のショックアブソーバを、4つの車輪の各々に対応して設けたサスペンションシステムである。また、近年では、電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部とに対してそれらが接近・離間する方向の力を発生させる装置である電磁式のショックアブソーバを各車輪に対応して設けて、減衰力を制御可能とされることで減衰係数を変更可能なサスペンションシステムが検討されている。
特開2009−274644号公報
4つの車輪の全てに対応して減衰係数変更機構を有するショックアブソーバを備えさせた上記のようなサスペンションシステムを搭載した車両は、互いに背反する操安性と乗り心地との両者を向上させることが可能である。しかしながら、上記特許文献1に記載されたサスペンションシステム、つまり、4つの車輪の全てに対応して減衰係数変更機構を有する液圧式のショックアブソーバを設けたサスペンションシステムは、比較的高価なものであり、非常にコストが高くなってしまい、全ての車両に搭載するのは難しい。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、比較的安価に操安性と乗り心地との両者を向上させた車両を実現するための車両用サスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本車両用サスペンションシステムは、前方側と後方側との一方に配置された2つの車輪に対応して設けられた減衰係数変更機構を有する2つの減衰係数可変ショックアブソーバと、前方側と後方側との他方に配置された2つの車輪に対応して設けられた減衰係数を変更不可能な2つの減衰係数不変ショックアブソーバとを備え、(I)車体に生じている振動をそれぞれがその振動の一成分であるヒーブ振動成分とロール振動成分とピッチ振動成分とに分け、それらの振動成分の各々を4つショックアブソーバに協調して減衰させるような制御規則に従って、それら4つのショックアブソーバの各々が発生させるべき減衰力である目標減衰力を決定し、2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数がその決定される目標減衰力に応じた値となるように、減衰係数変更機構を制御する通常減衰制御が実行されるとともに、(II)設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下において、通常減衰制御に代えて、2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数が、通常減衰制御において決定される目標減衰力に応じた値より小さな値となるように、減衰係数変更機構を制御する減衰係数低減制御が実行されることを特徴とする。
本発明のサスペンションシステムは、2つの車輪に対応するショックアブソーバだけしか減衰係数を制御しないように構成されたシステムを前提とし、そのシステムにおいて、通常減衰制御が実行されているにも関わらず、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような場合には、その通常減衰制御によって車体にピッチ振動が生じていると考えられる。そして、そのような場合の通常減衰制御では、比較的大きな減衰力を発生させるように、比較的大きな減衰係数とされている。本発明の車両用サスペンションシステムによれば、その比較的大きくされた減衰係数を低減させることで、ピッチ振動を抑えること可能である。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、下記(1)項は、請求可能発明ではなく、請求可能発明の前提となる構成を示した項であり、(1)項を引用するそれ以降の各項が請求可能発明に相当する。種々の態様とされた請求可能発明のうち、(1)項,(5)項,(10)項を合わせたものが請求項1に相当し、その請求項1に(11)項の発明特定事項を付加したものが請求項2に、請求項2に(12)項の発明特定事項を付加したものが請求項3に、請求項1に(13)項の発明特定事項を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(6)項の発明特定事項を付加したものが請求項5に、請求項5に(7)項の発明特定事項を付加したものが請求項6に、請求項5または請求項6に(8)項の発明特定事項を付加したものが請求項7に、請求項5ないし請求項7のいずれか1つに(9)項の発明特定事項を付加したものが請求項8に、請求項1ないし請求項8のいずれか1つに(2)項の発明特定事項を付加したものが請求項9に、それぞれ相当する。
(1)前方側に配置された2つの前輪と後方側に配置された2つの後輪とを有する車両に搭載される車両用サスペンションシステムであって、
前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちの一方側に配置された2つの車輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応するばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、自身が発生させる減衰力の大きさの基準となる減衰係数を変更する減衰係数変更機構を有する2つの減衰係数可変ショックアブソーバと、
前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちの他方側に配置された2つの車輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応するばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、前記減衰係数を変更不可能な2つの減衰係数不変ショックアブソーバと、
前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が有する前記減衰係数変更機構を制御する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、先にも述べたように、請求可能発明の前提となる構成を示した態様である。本項に記載の「減衰係数可変ショックアブソーバ」は、その構造・構成が特に限定されない。つまり、本項に記載の「減衰係数変更機構」は、その構造・構成が特に限定されない。後に詳しく説明するが、その減衰係数可変ショックアブソーバには、例えば、作動液の流通に対して付与する抵抗の大きさを変更することで減衰係数を変更可能な液圧式ショックアブソーバや、電磁モータが発生させる力に依拠して任意の減衰力を発生可能とされることで減衰係数を変更可能な電磁式ショックアブソーバ等を採用することができる。なお、減衰係数可変ショックアブソーバは、減衰係数を連続的に変更可能なものであってもよく、減衰係数を段階的に設定された複数の値の間で変更可能なものであってもよい。なお、4つのショックアブソーバのうちの上記減衰係数不変ショックアブソーバは、当該車両を安価に構成するという観点からすれば、一般的な車両に広く採用されているコンベンショナルな液圧式ショックアブソーバとすることが望ましい。
(2)当該車両用サスペンションシステムが、
前記2つの前輪に対応するばね上共振周波数と前記2つの後輪に対応するばね上共振周波数とが互いに異なるように、それら2つの前輪および2つの後輪に対応して設けられた4つのサスペンションスプリングの各々のばね定数とそれら2つの前輪および2つの後輪の各々への分担荷重とが調整された車両に搭載され、
前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバが、前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちのばね上共振周波数が低くされた方の2つの車輪に対応して設けられ、
前記2つの減衰係数不変ショックアブソーバが、前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちのばね上共振周波数が高くされた方の2つの車輪に対応して設けられた(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ばね上共振周波数ωは、下記の式に示すように、サスペンションスプリングのばね定数Kとばね上部の質量m(対応する車輪が受け持つ車体の分担荷重を重力加速度で除したものである)とによって定まる。
ω=(K/m)1/2
そのため、本項に記載の車両用サスペンションシステムが搭載される車両は、2つの前輪に対応するばね上共振周波数(以下、「前輪側ばね上共振周波数」という場合がある)と、2つの後輪に対応するばね上共振周波数(以下、「後輪側ばね上共振周波数」という場合がある)とが互いに異なるように、2つの前輪への分担荷重および前輪に対応するサスペンションスプリングのばね定数,2つの後輪への分担荷重および後輪に対応するサスペンションスプリングのばね定数が、それぞれ調整されている。なお、ばね上共振周波数が低いほど、路面の凹凸を通過した後などの車体の動作は大きくなり易い。
本項に記載の車両用サスペンションシステムは、2つの前輪と2つの後輪とのうちの、ばね上共振周波数が低くされた方の2つの車輪に対応する2つのショックアブソーバのみが、減衰係数を変更可能なものとされている。つまり、本項の車両用サスペンションシステムは、車体の前方側と後方側とのうちの、車体の挙動が大きくなる方のばね上部とばね下部との間の減衰力しか制御可能とされていない。そして、上記減衰係数可変ショックアブソーバが発生させる減衰力は、ばね上部とばね下部との間の相対動作がなければ働かない。つまり、車体の動作が大きくなる方のばね上部とばね下部との間の動作に対する減衰力(減衰係数)を制御する場合の方が、車体の動作が小さい方のばね上部とばね下部との間の動作に対する減衰力(減衰係数)を制御する場合に比較して、車体全体の挙動を抑えること(コントロールすること)が可能である。そして、車体の動作が大きい場合の方が小さい場合に比較して、ショックアブソーバが発生させる減衰力が車体の動作を抑える効果は大きい。したがって、本項の車両は、減衰係数可変ショックアブソーバは2つしか設けられていないが、それら2つの減衰係数可変ショックアブソーバによって、大きくなり易い方のばね上部の動作を抑えて、車体全体の挙動を効率的に抑えることが可能である。本項に記載の車両用サスペンションシステムは、4つのショックアブソーバのうちの2つもののみしか減衰係数変更機構を有していないため、比較的安価に、互いに背反する操安性と乗り心地との両者を向上させることが可能である。
(3)前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が、
(A)ばね上部とばね下部との一方に連結されて作動液を収容するハウジングと、(B)そのハウジング内を2つの作動液室に区画するとともにそのハウジング内を摺動可能なピストンと、(C)一端部が前記ピストンに連結され、他端部が前記ハウジングから延び出してばね上部とばね下部との他方に連結されるピストンロッドと、(D)前記ピストンに設けられ、そのピストンの摺動に伴う前記2つの作動液室間の作動液の流通を、その流通に対して抵抗を付与する状態で許容する作動液流通許容機構と、(E)その作動液流通許容機構が作動液の流通に対して付与する抵抗の大きさを変更することで減衰係数を変更するように構成されて前記減衰係数変更機構として機能する流通抵抗変更機構とを有する液圧式のショックアブソーバである(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、減衰係数可変ショックアブソーバが、液圧式のショックアブソーバに限定されている。
(4)前記2つの減衰係数不変ショックアブソーバの各々が、前記減衰係数を変更不可能な液圧式のショックアブソーバである(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、2つの減衰係数不変ショックアブソーバが、いわゆるコンベンショナルな液圧式のショックアブソーバとされている。つまり、一般的な車両に採用されている種々の構造・構成のショックアブソーバを採用可能である。
(5)前記制御装置が、
車体に生じている振動をそれぞれがその振動の一成分であるヒーブ振動成分とロール振動成分とピッチ振動成分とに分け、それらの振動成分の各々を前記4つの車輪の各々に対応する4つショックアブソーバに協調して減衰させるような制御規則に従って、それら4つのショックアブソーバの各々が発生させるべき減衰力である目標減衰力を決定し、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数が、その決定される目標減衰力に応じた値となるように、それら2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が有する前記減衰係数変更機構を制御する通常減衰制御を実行する通常減衰制御実行部を有する(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、減衰係数変更機構の制御が具体化されている。本項の態様は、4つの車輪の各々に対応して4つの減衰係数可変ショックアブソーバを備えたサスペンションシステムに採用する制御を、当該システムの通常時の制御に適用した態様である。当該システムが搭載される車両は、減衰係数可変ショックアブソーバに対応するばね上部の動作が大きく、かつ、減衰係数不変ショックアブソーバに対応するばね上部の動作が小さくなるように構成されており、従来から構築されている上記のような制御をそのまま適用したとしても、車体の挙動を十分に抑えることが可能である。したがって、本項の態様によれば、4つのショックアブソーバのうちの2つのもののみが減衰係数を変更可能に構成された車両専用の制御を新たに構築する必要がないため、そのような車両を、比較的簡便に構成することが可能となる。
車体の振動は、例えば、車体の重心の上下方向の振動であるヒーブ振動成分と、車体の重心を通る前後方向の軸線回りの回転振動であるロール振動成分と、車体の重心を通る左右方向の軸線周りの回転振動であるピッチ振動成分とが合成したものと捉えることができる。本項に記載の「制御規則」は、例えば、それらヒーブ振動成分,ロール振動成分,ピッチ振動成分の各々を減衰させるために車体全体として必要な力の成分を決定し、それら力の成分の各々を4つのショックアブソーバに振り分け、それらをショックアブソーバごとに足し合わせて、4つショックアブソーバの各々の目標減衰力を決定する規則を採用すること、つまり、現在採用されている規則を適用することができる。また、例えば、後に詳しく説明するが、ヒーブ加速度,ロール加速度,ピッチ加速度の各々を制御出力としたフィードバック制御系を構築し、それら加速度を抑えるように目標減衰力を決定する制御規則を採用することができる。
(6)前記通常減衰制御実行部が、
前記制御規則として、上下方向の車体の加速度であるヒーブ加速度,前後方向の軸線回りの車体の角加速度であるロール加速度,左右方向の軸線回りの車体の角加速度であるピッチ加速度を制御出力とした状態フィードバック制御を行うための制御則を用い、それらヒーブ加速度,ロール加速度,ピッチ加速度を抑えるように前記目標減衰力を決定するように構成された(5)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、目標減衰力を決定するための制御規則が限定されている。本項に記載の制御規則として、例えば、制御入力としてショックアブソーバの減衰係数の非線形分を選定するとともに制御出力としてヒーブ加速度,ロール加速度,ピッチ加速度を選定したプラント(制御モデル)を想定し、そのプラントを対象に設計された制御系を用いることができる。その制御系は、例えば、制御対象の不確定な部分を外乱信号として扱ってプラントの不確かさの影響を抑制するH∞制御理論に従って構築することができる。ちなみに、そのH∞制御理論は、上記のプラントを対象に、制御出力から制御入力に適切なフィードバックを施すことで外乱入力から評価出力までの伝達関数のノルム(伝達関数を評価するためのもの)を小さくする設計手段である。
(7)前記制御規則が、非線形H∞制御理論に従うものである(6)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、推進力を発生できない液圧式ショックアブソーバにおいても、目標減衰力が、その液圧式ショックアブソーバが発生可能な力の範囲で決定されるため、その目標減衰力を連続的に制御でき、優れた減衰性能を発揮するサスペンションシステムとなる。つまり、本項の態様は、減衰係数可変ショックアブソーバが、先に述べた、作動液の流通に対して付与する抵抗の大きさを変更することで減衰係数を変更可能な液圧式ショックアブソーバとされた態様に好適である。
(8)前記状態フィードバック制御を行うための制御則が、
車体の上下方向の運動方程式,車体の前後方向の軸線回りの運動方程式,車体の左右方向の軸線回りの運動方程式に基づいて導出された状態方程式に基づいて構築された(6)項または(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ヒーブ加速度,ロール加速度,ピッチ加速度を制御出力としたプラントを定義する手法が具体化されている。
(9)前記通常減衰制御実行部が、
前記状態フィードバック制御において、前記4つの車輪の各々に対応する(a)ばね上部の上下方向の加速度であるばね上加速度と(b)ばね上部の上下方向の速度であるばね上速度と(c)ばね上部とばね下部との間の接近離間方向の相対変位量と(d)ばね上部とばね下部との間の接近離間方向の相対速度とを、状態量として用いるように構成された(6)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、減衰係数可変ショックアブソーバの制御に用いる入力値が限定されている。つまり、目標減衰力の決定に必要な指標が限定されてる。本項の態様においては、例えば、ばね上加速度は、ばね上部の上下方向の加速度である縦加速度を検出するセンサによって検出し、ばね上速度は、その検出結果を積分して取得するようにすることができる。また、相対変位量は、ばね上部とばね下部との接近・離間方向の距離を検出するセンサによって検出し、相対速度は、その検出結果を微分して取得するようにすることができる。
(10)前記制御装置が、
設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下において、前記通常減衰制御に代えて、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数が、前記通常減衰制御において決定される前記目標減衰力に応じた値より小さな値となるように、それら2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が有する前記減衰係数変更機構を制御する減衰係数低減制御を実行する減衰係数低減制御部を有する(5)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、先に述べた通常減衰制御を実行しているにも関わらず、ピッチ振動が生じている場合の対処方法が具体化されている。本項に記載の「設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下」とは、通常減衰制御が実行されていることによってピッチ振動が生じている、あるいは、ピッチ振動が助長されている場合と考えられる。例えば、路面形状等によって連続して車体にヒーブ振動が生じるような状況下において、前述の通常減衰制御が実行された場合を考える。その場合、ヒーブ振動を抑えるために、比較的大きな減衰力を発生させるべく、比較的大きな減衰係数となるように、2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が有する減衰係数変更機構が制御される。つまり、車体に生じたヒーブ振動は、前輪側と後輪側とのうちの減衰係数可変ショックアブソーバに対応する車輪側のみが効果的に減衰されるため、車体にはピッチ振動が生じてしまうことになるのである。したがって、本項に記載の態様によれば、減衰係数をその比較的大きな値から低減することによって、減衰力可変ショックアブソーバが発生させる減衰力と減衰力不変ショックアブソーバが発生させる減衰力との差が小さくされ、ピッチ振動の発生を抑えることが可能である。
本項に記載の「減衰係数低減制御」は、後に詳しく説明するが、2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数を、通常減衰制御において決定される目標減衰力に応じた値より小さくすればよく、その目標減衰力に応じた値より小さな固定値としてもよく、目標減衰力に応じた値より小さな範囲で変化させてもよい。
(11)前記減衰係数低減制御が、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数を、車両の走行速度に応じて変更する制御である(10)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(12)前記減衰係数低減制御が、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数を、車両の走行速度が高い場合に、低い場合に比較して大きな値に変更する制御である(11)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、減衰係数低減制御が、通常減衰制御において決定される目標減衰力に応じた値より小さな値で変化させる制御に限定されている。上記2つの項に記載の態様によれば、車速に応じた適切な減衰係数とすることができる。後者の態様は、車速が低い場合に減衰係数を小さくして乗り心地を高めるとともに、車速が高い場合には減衰係数を大きくして操安性を高めることが可能である。なお、上記2つの項に記載の態様は、減衰係数を、車速が閾値より高い場合と低い場合とで変更するようにして段階的に変化させてもよく、車速に応じて連続的に変化させてもよい。
(13)前記減衰係数低減制御が、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数を、前記通常減衰制御において決定される前記目標減衰力に応じた値より小さな固定値とする制御である(10)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、減衰係数可変ショックアブソーバをも、コンベンショナルなショックアブソーバとして機能させる態様である。
請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1に示す前輪に対応するサスペンション装置を示す正面断面図である。 図2に示すショックアブソーバを拡大して示す正面断面図である。 図1に示す後輪に対応するサスペンション装置を示す正面断面図である。 図4に示すショックアブソーバを拡大して示す正面断面図である。 図1に示す制御装置としてのサスペンション電子制御ユニットによって実行される非線形H∞制御理論に基づく通常減衰制御の制御ブロック図である。 ピッチ振動が生じる場合の一例として路面の凸所を前輪,後輪が順次通過する場合の概略図である。 路面の凸所を前輪,後輪が順次通過した際における前輪側のばね上部と後輪側のばね上部との変動を示した図である。 ばね上共振周波数と車体の挙動の大きさとの関係を示す図である。 車両の走行速度と減衰係数低減制御における目標減衰力との関係を示すグラフである。 請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステムの制御を司る制御装置であるサスペンション電子制御ユニットによって実行される減衰係数変更制御プログラムを表すフローチャートである。 請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。
以下、請求可能発明を実施するための形態としての実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
<サスペンションシステムの構成>
図1に、請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本車両用サスペンションシステム10は、本システム10が搭載される車両の四隅に配置された4つの車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置20を含んで構成される。それらサスペンション装置20の各々は、車輪12を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム22と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部24との間に、それらを連結するようにして配設されている。車輪12,サスペンション装置20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。また、前輪側と後輪側とを区別する必要がある場合には、Fr,Rrを付す場合がある。
上記のサスペンション装置20の各々は、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング30と、液圧式のショックアブソーバ32とを有しており、それらが互いに並列的に、ロアアーム22とマウント部24との間に配設されている。ただし、後に詳しく説明するが、前輪12FR,12FLに対応する2つのショックアブソーバ32Frが、コンベンショナルなショックアブソーバ、つまり、減衰係数を変更不能な減衰係数不変ショックアブソーバであるのに対して、後輪12RR,12RLに対応する2つのショックアブソーバ32Rrは、減衰係数を変更可能な構成の減衰係数可変ショックアブソーバである。以下に、それらショックアブソーバの構造を、前輪12Frに対応するショックアブソーバ32Fr(以下の説明において、「前輪側ショックアブソーバ32Fr」と呼ぶ場合がある。),後輪12Rrに対応するショックアブソーバ32Rr(以下の説明において、「後輪側ショックアブソーバ32Rr」と呼ぶ場合がある。)の順に、詳しく説明する。
前輪側ショックアブソーバ32Frの構造について、図2,3を参照しつつ、詳しく説明する。前輪側ショックアブソーバ32Frは、図2に示すように、作動液を収容するハウジング40と、そのハウジング40に液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン42と、そのピストン42に下端部が連結されて上端部がハウジング40の上方から延び出すピストンロッド44とを含んで構成されている。そして、ハウジング40が、それの下端部に設けられたブシュ46を介してロアアーム22に連結され、ピストンロッド44が、防振ゴムを有するアッパサポート48を介してマウント部24に連結される。ちなみに、ピストンロッド44は、ハウジング40の上部に設けられた蓋部50を貫通しており、シール52を介してその蓋部50と摺接している。
ハウジング40は、図3に示すように、外筒60と内筒62とを含んで構成され、それらの間にバッファ室64が形成されている。上記ピストン42は、その内筒62の内側に嵌合されており、内筒62の内部を、上室66と下室68とに区画している。そのピストン42には、上室66と下室68とを接続する接続通路70,72が、同心状に複数個ずつ設けられている(図3には、2つずつが図示されている)。ピストン42の下面には、弾性材製の円形をなす弁板74が配設されており、その弁板74によって、ピストン42の内周側の接続通路70が塞がれ、上室66と下室68との液圧差により弁板74が撓められると上室66から下室68への作動液の流れが許容されるようになっている。また、ピストン42の上面には、弾性材製の円形をなす2枚の弁板76,78が配設されており、その弁板76,78によって、それらに設けられた開口部によりピストン42の内周側の接続通路70が常時塞がれずに、ピストン42の外周側の接続通路72が塞がれ、上室66と下室68との液圧差により弁板76が撓められると下室68から上室66への作動液の流れが許容されるようになっている。さらに、下室68とバッファ室64との間には、ピストン42と同様の接続通路,弁板が設けられたベースバルブ体80が設けられている。
なお、ハウジング40には、その外周部に環状の下部リテーナ82が設けられ、マウント部24の下面側には、防振ゴムを介して、環状の上部リテーナ84が付設されている。コイルスプリング30は、それら下部リテーナ82と上部リテーナ84とによって、それらに挟まれる状態で支持されている。なお、ピストンロッド44の上室66に収容される部分の外周部には、環状部材86が固定的に設けられており、その環状部材86の上面に、環状の緩衝ゴム88が貼着されている。また、ピストンロッド44の上端部には、筒状の緩衝ゴム90が附着されている。車体と車輪とが離間する方向(以下、「リバウンド方向」という場合がある)にある程度相対移動した場合には、ハウジング40の蓋部50の下面が緩衝ゴム88に当接し、逆に、車体と車輪とが接近する方向(以下、「バウンド方向」という場合がある)にある程度相対移動した場合には、蓋部50の上面が緩衝ゴム90に当接するようになっている。つまり、前輪側ショックアブソーバ32Frは、車体と車輪との接近・離間に対するストッパ、いわゆるバウンドストッパ、および、リバウンドストッパを有しているのである。
上記のような構造により、例えば、ロアアーム22とマウント部24とが離間し、ピストン42がハウジング40に対して上方に移動させられる場合には、上室66の液圧が高くなる。そのため、上室66の作動液の一部が、接続通路70を通って下室68へ流れるとともに、バッファ室64の作動液の一部がベースバルブ体80の接続通路を通って下室68へ流入することになる。逆に、ロアアーム22とマウント部24とが接近し、ピストン42がハウジング40に対して下方に移動させられる場合には、下室68の液圧が高くなる。そのため、下室68の作動液の一部が、接続通路72を通って上室66へ流れるとともに、ベースバルブ体80の接続通路を通ってバッファ室64へ流出することになる。そして、それらの場合の作動液の流通に対して抵抗力が付与され、ピストン42とハウジング40との相対移動に対して抵抗力が付与されるのである。つまり、前輪側ショックアブソーバ32Frは、ばね上部とばね下部と接近離間動作に対して減衰力を発生させる構造とされている。なお、前輪側ショックアブソーバ32Frにおいては、ばね上部とばね下部との接近離間動作の速度がある速度より大きくなると、減衰係数が、作動液が通過する通路の断面積に応じた値、つまり、固定的な値となっている。
次いで、後輪12Rrに対応するショックアブソーバ32Rrの構造について、図4,5を参照しつつ、詳しく説明する。なお、その後輪側ショックアブソーバ32Rrは、前輪側ショックアブソーバ32Frと同様に、液圧式のショックアブソーバであり、その前輪側ショックアブソーバ32Frと同じ構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するあるいは簡略に行うものとする。
後輪側ショックアブソーバ32Rrは、前輪側ショックアブソーバ32Frと同様に、ハウジング100と、ピストン102と、ピストンロッド104とを含んで構成され、それらハウジング100とピストン102との相対移動に対して抵抗力が付与される構造、つまり、ばね上部とばね下部と接近離間動作に対して減衰力を発生させる構造とされている。
ただし、後輪側ショックアブソーバ32Rrは、先にも述べたように、減衰係数変更機構110を有してる。その減衰係数変更機構110は、回転型の電磁モータ120(以下、単に「モータ120」という場合がある)と、軸線方向に移動可能な調整ロッド122と、モータ120の回転動作を調整ロッド122の軸線方向の動作に変換する動作変換機構124とを含んで構成される。そのモータ120は、モータケース126に収容され、そのモータケース126が、それの外周部において、防振ゴムを含んで構成されるアッパサポート128を介してマウント部24に連結されている。前述のピストンロッド104は、それの上端部において、モータケース126に固定されることで、そのモータケース126を介してマウント部24に連結されている。ピストンロッド104には、軸線方向に延びる貫通穴130が形成されており、調整ロッド122が、その貫通穴120に挿入され、軸線方向に移動可能とされている。調整ロッド122は、それの上端部において、動作変換機構124を介してモータ120に連結され、モータ120の回転駆動に伴って、軸線方向に移動させられるようになっている。
図5に示すように、ピストンロッド104の貫通穴130は、段付き形状を成し、上部が大径部132、下部が小径部134とされる。その大径部132は、接続通路136によって上室66に開口し、小径部134は下室68に開口しており、上室66と下室68とが連通させられている。一方、調整ロッド122は、下端部138を除く部分の外径が、大径部132の内径より小さく、かつ、小径部134の内径より大きくされている。調整ロッド122の下端部138は、下方に向かうほど外径が小さくなる円錐形状とされており、小径部134に進入可能とされている。なお、貫通穴130の接続通路136が接続された部分より上方にシール140が設けられ、貫通穴130の内周面と調整ロッド122の外周面との間の液密が保たれている。
そして、調整ロッド122は、モータ120の作動によって軸線方向に移動可能とされており、貫通穴130のクリアランス150の大きさ(断面積)を変化させることが可能となっている。作動液がそのクリアランス150を通過する際には、上述のように、ピストン102の上下方向への動作に対する抵抗力が付与されるが、その抵抗力の大きさは、クリアランス150の大きさに応じて変化する。したがって、後輪側ショックアブソーバ32Rrは、モータ120の作動により調整ロッド122を軸線方向に移動させて、そのクリアランス150を変更することで、ばね上部とばね下部との接近・離間動作に対する減衰特性、つまり、減衰係数を変更することが可能な構造とされている。より詳しく言えば、モータ120が、それの回転角度が後輪側ショックアブソーバ32Rrの有すべき減衰係数に応じた回転角度となるように制御され、後輪側ショックアブソーバ32Rrの減衰係数が変更されるようになっている。
また、本車両10は、前輪Frに対応するばね上共振周波数ωFrと、後輪Rrに対応するばね上共振周波数数ωRrとが、互いに異なるように構成されている。詳しくは、対応するショックアブソーバ32が減衰係数変更機構110を有するものとされた後輪に対応するばね上共振周波数ωRrが、前輪側のばね上共振周波数ωFrより低くされている。ばね上共振周波数ωは、下記の式に示すように、サスペンションスプリング30のばね定数Kとばね上部の質量m(対応する車輪が受け持つ車体の分担荷重Wを重力加速度gで除したものである)とによって定まる。
ω=(K/m)1/2
そのため、本車両10は、後輪側ばね上共振周波数ωRrが、前輪側ばね上共振周波数ωFrより低くなるように、前輪Frへの分担荷重および前輪側のサスペンション装置20が有するコイルスプリング30Frのばね定数KFr、後輪Rrへの分担荷重および後輪側のサスペンション装置20が有するコイルスプリング30Rrのばね定数KRrが、それぞれ調整されている。具体的には、設計された車体から定まる前輪Frへの分担荷重に基づいて、前輪側ばね上共振周波数ωFrが1.2Hzとなるように前輪側スプリング30Frのばね定数KFrが定められるとともに、後輪Rrへの分担荷重に基づいて、後輪側ばね上共振周波数ωRrが1.0Hzとなるように後輪側スプリング30Rrのばね定数KRrが定められている。
本車両用サスペンションシステム10は、制御装置としてのサスペンション電子制御ユニット200(以下、「ECU200」という場合がある)によって、後輪側ショックアブソーバ32Rrの各々が有する減衰係数変更機構110の制御が行われる。ECU200は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたものである。そのECU200には、後輪側ショックアブソーバ32Rrの各々が有するモータ120に対応して設けられて、それぞれが、対応するモータ120の駆動回路として機能する2つのインバータ[INV]202が接続されている。それらインバータ202は、コンバータ[CONV]204を介してバッテリ[BAT]206に接続されており、各ショックアブソーバ32Rrのモータ120には、そのコンバータ204とバッテリ206とを含んで構成される電源から電力が供給される。
本サスペンションシステム10が搭載される車両には、車体に発生する前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]220、車体に発生する横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]222,右前輪12FRおよび左前輪12FLに対応する車体の各マウント部24と車体の2つの後輪12Rrの中央に位置する部分の縦加速度(上下加速度)を検出する3つの縦加速度センサ[Gz]224,各車輪12についてのばね上部とばね下部との距離(ショックアブソーバ32の伸縮した量であるため、以下、「ストローク」という場合がある)を検出するための4つのストロークセンサ[St]226,ステアリングホイールの操作角を検出する操作角センサ[δ]228,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出する車速センサ[v]230等が設けられており、それらセンサは、ECU200のコンピュータに接続されている。ECU200は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、後輪側ショックアブソーバ32Rrの作動の制御を行うものとされている。また、ECU200のコンピュータが備えるROMには、後輪側ショックアブソーバ32Rrの制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<サスペンションシステムの通常時の制御>
本サスペンションシステム10において、通常時に実行される制御である通常減衰制御は、非線形H∞制御理論(例えば、特許第3787038号公報に記載されているもの)に基づく制御則に従った制御であり、その非線形H∞制御理論については既に公知のものであるため、簡便に説明するものとする。その非線形H∞制御理論に基づく通常減衰制御のブロック図を、図6に示す。その図6に示すように、通常減衰制御においては、まず、4つのストロークセンサ226の各々から4つのショックアブソーバ32の各々のストローク量Stが取得され、その検出されたストロークStから4つのショックアブソーバ32の各々のストローク速度Vstが演算される。また、3つの縦加速度センサ224によって検出された3つのばね上縦加速度が、4つの車輪12の各々に対応するばね上部のばね上縦加速度Gzに換算され、その換算された4つの車輪12の各々に対応するばね上縦加速度Gzから、それら4つの車輪12の各々に対応するばね上部のばね上絶対速度Vbが演算される。
通常減衰制御に用いられる非線形H∞制御理論に基づく制御則は、ECU200のコンピュータに記憶されている。その制御則は、平たく言えば、車体に生じている振動を、それぞれが振動の一成分である車体の重心位置の上下方向の振動であるヒーブ振動,車体の重心を通る前後方向の軸線回りの回転振動であるロール振動,車体の重心を通る左右方向の軸線回りの回転振動であるピッチ振動とに分け、それらの振動成分の各々を4つのショックアブソーバ32に協調して減衰させるような制御則である。そして、上記の4つのショックアブソーバ32の各々に対応するストローク量Stおよびストローク速度Vst,4つの車輪12の各々に対応するばね上縦加速度Gzおよびばね上絶対速度Vbを入力として、その非線形H∞制御理論に基づく制御則に従って、4つのショックアブソーバ32の各々に発生させるべき減衰力である目標減衰力F*が演算される。
本サスペンションシステム10において、ストローク速度に対する減衰力を変更可能なショックアブソーバは、後輪側ショックアブソーバ32Rrのみであるが、その後輪側ショックアブソーバ32Rrの各々は、上述のように演算された目標減衰力F*のうちの自身に対応するものに基づいて制御される。詳しくは、ECU200が、後輪側ショックアブソーバ32Rrの各々が有する減衰係数変更機構110を制御すべく、その各々に対応する目標減衰力F*をその各々に対応するストローク速度Vstで除して目標減衰係数C*を決定し、その目標減衰係数C*となるように、減衰係数変更機構110のモータ120を制御するのである。つまり、本サスペンションシステム10は、4つの車輪に対応して設けられた4つのショックアブソーバに対して実行するべき制御を、減衰係数変更機構110を有する後輪側ショックアブソーバ32Rrにのみ行う構成とされている。
ちなみに、上記の非線形H∞制御理論に基づく制御則について説明する。まず、非線形H∞制御理論では、制御入力,外乱入力,制御入力,制御出力の4つの入出力を持つ制御モデルである一般化プラントを想定する。本サスペンションシステム10においては、その一般化プラントを想定する際に、車体の重心位置の上下方向の運動に関する運動方程式,車体の重心を通る前後方向の軸線回りの回転運動に関する運動方程式,車体の重心を通る左右方向の軸線回りの回転運動に関する運動方程式が用いられる。それら運動方程式は、それぞれ、車体の重心位置の上下方向の加速度(ヒーブ加速度),車体の重心を通る前後方向の軸線回りの角加速度(ロール角加速度),車体の重心を通る左右方向の軸線回りの角加速度(ピッチ角加速度)と、上述のように得られたストローク量St,ストローク速度Vst,ばね上縦加速度Gz,ばね上絶対速度Vbとの関係を示すものとなっている。そして、それら運動方程式が、状態空間表現され、状態方程式および出力方程式が導出される。そして、ストローク量St,ストローク速度Vst,ばね上縦加速度Gz,ばね上絶対速度Vbが状態量として用いられ、ヒーブ加速度,ロール角加速度,ピッチ角加速度が制御出力(測定出力)として選定されている。また、それらヒーブ加速度,ロール角加速度,ピッチ角加速度に周波数重みである重み関数(7.0Hzのローパスフィルタである)をかけたものが評価出力として選定されるとともに、制御入力(減衰係数の非線形分)にも重み関数がかけられ、一般化プラントが定義されている。次いで、リカッチ方程式を満たす解が演算され、その演算された解に基づいて、制御入力である減衰係数の非線形分が演算される。なお、その減衰係数の非線形分の演算の際には、ヒーブ振動,ロール振動,ピッチ振動のいずれの減衰を優先させるかを定めるために、それらヒーブ振動,ロール振動,ピッチ振動の各々に対してゲイン(重み)が設定されており、それらのゲインが用いられるようになっている。
簡単に言えば、状態量であるストローク量St,ストローク速度Vst,ばね上縦加速度Gz,ばね上絶対速度Vbに基づいて、制御出力であるヒーブ加速度,ロール角加速度,ピッチ角加速度が演算され、それらヒーブ加速度,ロール角加速度,ピッチ角加速度を0とするように、制御入力である減衰係数の非線形分が演算されるのである。その演算された減衰係数の非線形分に基づいて、目標減衰力F*が演算されるようになっている。
<本システムが搭載される車両の特徴>
図7に示すように、路面の凸所を前側二輪,後側二輪が順次通過する場合に、車体に生じる振動を考える。その場合、前輪側のばね上部および後輪側のばね上部は、それぞれが下記の式から求まる周波数(減衰振動周波数ωd)の減衰振動が生じる。
ωd=(1−ζ2)1/2・ω (減衰比ζ<1の場合)
ここで、減衰比ζ=C/CC,臨界減衰係数CC=2・(m・k)1/2,ショックアブソーバの減衰係数Cである。なお、一般的な車両においては、路面の凸所や凹所を車輪が通過する際の振動が、1周期強で収束するように設定される。そして、前輪側の減衰振動周波数および後輪側の減衰振動周波数が、ほぼ同程度であれば、図8に示すように、前輪側,後輪側の順でばね上部の変位が最大値に達し、その順で振動が収束することになる。それに対して、一般的な車両は、後輪側のばね上共振周波数ωRrが前輪側の共振周波数ωFrより高くされている。つまり、一般的な車両は、前輪側の振動と後輪側の振動とのリバウンド方向の変位が最大となるタイミングを合わせ、車体にピッチ振動が生じにくくされている。
一方、本サスペンションシステム10が搭載された車両は、先にも述べたように、後輪側のばね上共振周波数ωRrが前輪側の共振周波数ωFrより低くされている。つまり、本車両は、後輪側ショックアブソーバ32Rrを制御せずにそれらの各々の減衰係数を基準となる減衰係数に固定した状態で路面の凸所を通過する場合、前輪側の振動と後輪側の振動とのリバウンド方向の変位が最大となるタイミングがずれるため、車体にピッチが生じやすいものとなっている。図9に示すように、ばね上共振周波数が低いほど、車体の挙動は大きくなり易い。つまり、本車両は、前輪側のばね上部の挙動が比較的小さいのに対して、後輪側のばね上部の挙動が比較的大きくなる。そして、本サスペンションシステム10は、後輪側ショックアブソーバ32Rrのみが減衰係数変更機構110を有しており、その後輪側ショックアブソーバ32Rrのみを制御して、後輪側のばね上部の比較的大きな動作に対する減衰力を制御することで、車体全体の挙動を効率的に抑えることが可能である。また、本サスペンションシステム10においては、4つの車輪の各々に対応して4つの減衰係数を変更可能なショックアブソーバを設けた車両において実行するべき制御を用いており、本車両専用の制御系を新たに構築することなく、車体の挙動を抑制する効果が得られるのである。
なお、本サスペンションシステム10は、後輪側のばね上共振周波数ωRrが前輪側の共振周波数ωFrより低くされて、2つの前輪12Frと2つの後輪12Rrとのうちのばね上共振周波数が低くされた方の車輪である2つの後輪12Rrに対応するショックアブソーバ32Rrのみが減衰係数を変更可能とされているが、減衰係数を変更可能なショックアブソーバは、前輪12Frと後輪12Rrとのうちのばね上共振周波数が低くされた方の2つの車輪に対応して設ければよい。つまり、後輪側のばね上共振周波数ωRrが前輪側の共振周波数ωFrより高くされた一般的な車両には、前輪12Frの各々に対応して減衰係数を変更可能なショックアブソーバを設けることが可能である。しかしながら、車両には、エンジンが前方側に配置された車両が多く、そのような車両において、前輪側のばね上部の重量は、乗員や積載物の影響は小さく、あまり変動することはない。それに対して、後輪側のばね上部の重量は、乗員や積載物によって大きく変動する。本実施例のサスペンションシステム10が搭載された車両は、後輪側のばね上部の重量が変動しても、その後輪12Rrに対応して減衰係数を変更可能なショックアブソーバが設けられているため、前輪12Frに対応して減衰係数を変更可能なショックアブソーバを設けた上記のような構成の車両に比較して、車体挙動を効率的に抑えることが可能である。したがって、本サスペンションシステム10は、減衰係数を変更可能なショックアブソーバを全ての車輪に設けていないため、比較的安価に、互いに背反する操安性と乗り心地との両者を向上させることが可能である。
<ピッチ振動継続時の制御>
例えば、路面形状等によって車体にヒーブ振動が生じやすい状況下となる場合を考える。その場合に、上記の通常減衰制御が実行されると、そのヒーブ振動を抑えるために、減衰係数可変ショックアブソーバである後輪側ショックアブソーバ32Rrは、比較的大きな減衰力を発生させるべく、減衰係数が比較的大きくされる。つまり、本サスペンションシステム10は、前輪12Frと後輪12Rrとのうちの後輪12Rrに対応するショックアブソーバ32Rrにのみ減衰係数変更機構110が設けられているため、ヒーブ振動に対する減衰力が、前輪側が小さく、後輪側が大きくなり、車体には、ピッチ振動が生じることになる。したがって、路面形状等によって車体にヒーブ振動が生じやすい状況下となる場合に、通常減衰制御が実行されると、その通常減衰制御によってピッチ振動が生じてしまうことになるのである。
そこで、本サスペンションシステム10においては、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下において、通常減衰制御によってピッチ振動が生じていると判断され、その通常減衰制御に代えて、そのピッチ振動を抑えるための制御が実行されるようになっている。詳しく言えば、後輪側ショックアブソーバ32Rrの各々の減衰係数を、通常減衰制御において決定される値より小さくする減衰係数低減制御が実行される。
その減衰係数低減制御への切り換えの判定、つまり、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下にあるか否かの判定が行われる。本システム10においては、そのピッチ振動の強度として、先に述べた通常減衰制御において演算されるピッチ加速度が用いられ、現時点から遡った設定時間t1内のピッチ加速度が取得される。そして、ピッチ加速度の大きさが設定値を超えた回数が設定回数以上か否かによって、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下にあるか否かが判定される。つまり、ピッチ加速度の大きさが設定値を超えた回数が設定回数以上である場合に、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下にあると判定され、通常減衰制御から減衰係数低減制御に切り換えられる。
その減衰係数低減制御は、後輪側ショックアブソーバ32Rrの各々の減衰係数を、通常減衰制御において決定される値より小さな範囲で、車速vに応じて変化させる制御である。詳しく言えば、減衰係数低減制御では、車速センサ230の検出結果から車速vが取得され、その取得された車速vに基づいて、目標減衰係数C*が決定される。具体的には、ECU200が有するROMには、図10に示す車速vに対する目標減衰係数C*のマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して目標減衰係数C*が決定される。そして、後輪側ショックアブソーバ32Rrの減衰係数が、その決定された目標減衰係数C*となるように、減衰係数変更機構110のモータ120を制御するのである。図10に示すように、車速vが高くなる程、目標減衰係数C*が大きくなるようになっており、車速vが低い場合に乗り心地が重視され、車速vが高い場合に操安性が重視されるようになっている。なお、この減衰係数低減制御によって、ピッチ振動の強度が設定強度以下である状態が設定時間以上となった場合に、通常減衰制御に戻されるようになっている。
本サスペンションシステム10は、通常減衰制御によってピッチ振動が発生している場合に、その通常減衰制御から減衰係数低減制御に切り換えられて後輪側ショックアブソーバ32Rrの減衰係数が小さくされることで、ヒーブ振動に対する前輪側の減衰力と後輪側の減衰力との差が小さくされる。つまり、本システム10は、減衰係数低減制御によって、ピッチ振動の発生を抑えることが可能である。
<制御プログラム>
前述のような後輪側ショックアブソーバ32Rrの各々が有する減衰係数変更機構110の制御は、図11にフローチャートを示す減衰係数変更制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数μsec〜数十μsec)をおいてECU200により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
この減衰係数変更制御プログラムでは、まず、ステップ1(以下、ステップを「S」と略す)において、4つのストロークセンサ226の検出値および3つの縦加速度センサ224の検出値が取得される。次いで、S2において、4つのストロークセンサ226の検出値から、4つのショックアブソーバ32に対応するストローク量St,ストローク速度Vstが演算され、S3において、3つの縦加速度センサ224の検出値から、4つの車輪12に対応するばね上部の縦加速度Gz,ばね上速度Vbが演算される。続くS4において、それらストローク量St,ストローク速度Vst,縦加速度Gz,ばね上速度Vbに基づいて、先に述べた運動方程式を利用して、ヒーブ加速度GH,ロール加速度GR,ピッチ加速度GPが演算される。
この減衰係数変更制御プログラムでは、通常減衰制御と減衰係数低減制御とのいずれの制御が実行されているかを表す実行制御フラグFLが用いられ、その実行制御フラグFLのフラグ値が0である場合に、通常減衰制御が実行されていることを表し、フラグ値が1である場合に、減衰係数低減制御が実行されていることを表している。S5においては、その実行制御フラグFLのフラグ値が確認される。そのフラグ値が0である場合には、S6において、通常減衰制御から減衰係数低減制御に切り換える必要があるか否かの判定、つまり、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下にあるか否かの判定が行われる。詳しくは、先に述べたように、現時点から遡った設定時間内にピッチ加速度GPが設定値を超えた回数が設定回数を超えたか否かによって判定され、設定回数を超えていない場合には、S7以下が実行されて通常減衰制御が行われることになる。その通常減衰制御は、S7において、図6を参照して詳しく説明した非線形H∞制御理論に基づく制御規則に従うものであり、その図6に示すように、後輪側ショックアブソーバ32Rrの目標減衰力F*が決定され、S8において、その目標減衰力F*とストローク速度Vstとに基づいて、目標減衰係数C*が決定される。なお、この場合、S9において、実行制御フラグのフラグ値が0とされる。
一方、S6において、現時点から遡った設定時間内にピッチ加速度GPが設定値を超えた回数が設定回数を超えた場合には、S11以下が実行されて減衰係数低減制御が実行されることになる。その減衰係数低減制御は、具体的には、S11において、車速センサ230から車速vが取得され、S12において、その車速vに応じた目標減衰係数C*が、図10に示したマップデータを参照して決定される。なお。この場合、S13において、実行制御フラグのフラグ値が1とされる。
また、S5において、実行制御フラグのフラグ値が1である場合には、現時点で減衰係数低減制御が実行されており、S10において、その減衰係数低減制御から通常減衰制御に切り換える必要があるか否かの判定が行われる。詳しくは、ピッチ振動の強度であるピッチ加速度GPが設定強度以下である状態が設定時間以上か否かが判定される。設定時間に達していない場合には、継続して減衰係数低減制御を実行するため、S11以下が実行され、設定時間以上となった場合には、S7が実行され、減衰係数低減制御から通常減衰制御に切り換えられる。
上記のように、通常減衰制御あるいは減衰係数低減制御において目標減衰係数C*が決定されると、S14において、その決定された目標減衰係数C*に基づく、減衰係数変更機構110のモータ120を制御するための制御信号が送信される。以上で、減衰係数変更制御プログラムの1回の実行が終了する。
<制御装置の機能構成>
上述したような制御を実行して制御装置として機能するECU200は、前述した各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図12に示すように、ECU200は、減衰係数変更制御プログラムのS7を実行して、車体に生じている振動をヒーブ振動成分とロール振動成分とピッチ振動成分とに分け、それらの振動成分の各々を4つの車輪12の各々に対応する4つショックアブソーバに協調して減衰させるような制御規則に従って、それら4つのショックアブソーバの各々の目標減衰力F*を決定し、2つの減衰係数可変ショックアブソーバ32Rrの減衰係数が、その目標減衰力に応じた値となるように減衰係数変更機構110を制御する通常減衰制御を実行する通常減衰制御実行部250を有している。また、ECU200は、減衰係数変更制御プログラムのS11,S12を実行して、設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下において、通常減衰制御に代えて、2つの減衰係数可変ショックアブソーバ32Rrの減衰係数が、通常減衰制御において決定される目標減衰力に応じた値より小さな値となるように、それら2つの減衰係数可変ショックアブソーバ32Rrの各々が有する減衰係数変更機構110を制御する減衰係数低減制御を実行する減衰係数低減制御部252を有している。さらに、ECU200は、減衰係数変更制御プログラムのS6,S10を実行して、通常減衰制御と減衰係数低減制御とを切り換える制御切換部254を有している。
<変形例>
上記実施例のサスペンションシステム10においては、減衰係数変更制御が、2つの減衰係数可変ショックアブソーバ32Rrの減衰係数を、車両の走行速度vに応じて変更する制御とされていたが、通常減衰制御において決定される目標減衰力に応じた値より小さな固定値とする制御であってもよい。つまり、減衰係数変更制御は、減衰係数可変ショックアブソーバ32Rrを、コンベンショナルなショックアブソーバとして機能させるような制御であってもよい。
また、上記実施例のサスペンションシステム10においては、減衰係数可変ショックアブソーバ32Rrは、作動液の流通に対して付与する抵抗の大きさを変更することで減衰係数を変更可能な液圧式ショックアブソーバとされていたが、電磁モータが発生させる力に依拠して任意の減衰力を発生可能とされることで減衰係数を変更可能な電磁式ショックアブソーバを採用することができる。つまり、変形例のサスペンションシステムは、2つの車輪に対応して電磁式ショックアブソーバを設けるとともに、他の2つの車輪に対応してコンベンショナルなショックアブソーバを設けた構成とすることができる。
10:車両用サスペンションシステム 12FR:右前輪 12FL:左前輪 12RR:右後輪 12RL:左後輪 20:サスペンション装置 22:サスペンションロアアーム〔ばね下部〕 24:マウント部〔ばね上部〕 30:コイルスプリング〔サスペンションスプリング〕 32Fr:前輪側ショックアブソーバ 32Rr:後輪側ショックアブソーバ 40:ハウジング 42:ピストン 44:ピストンロッド 100:ハウジング 102:ピストン 104:ピストンロッド 110:減衰係数変更機構 120:電磁モータ 150:クリアランス 200:サスペンション電子制御ユニット[サスペンションECU]〔制御装置〕 224:縦加速度センサ[Gz] 226:ストロークセンサ[St] 230:車速センサ[v] 250:通常減衰制御実行部 252:減衰係数低減制御実行部 254:制御切換部
ωFr:前輪側ばね上共振周波数 ωRr:後輪側ばね上共振周波数 KFr:前輪側ばね定数 KRr:後輪側ばね定数 St:ストローク量 Vst:ストローク速度 Gzばね上縦加速度 Vb:ばね上絶対速度 F*:目標減衰力 C*:目標減衰係数 GP:ピッチ加速度〔ピッチ振動の強度〕 v:車速

Claims (9)

  1. 前方側に配置された2つの前輪と後方側に配置された2つの後輪とを有する車両に搭載される車両用サスペンションシステムであって、
    前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちの一方側に配置された2つの車輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応するばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、自身が発生させる減衰力の大きさの基準となる減衰係数を変更する減衰係数変更機構を有する2つの減衰係数可変ショックアブソーバと、
    前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちの他方側に配置された2つの車輪に対応して設けられ、それぞれが、自身に対応するばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、前記減衰係数を変更不可能な2つの減衰係数不変ショックアブソーバと、
    前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が有する前記減衰係数変更機構を制御する制御装置と
    を備え、
    前記制御装置が、
    車体に生じている振動をそれぞれがその振動の一成分であるヒーブ振動成分とロール振動成分とピッチ振動成分とに分け、それらの振動成分の各々を前記4つの車輪の各々に対応する4つショックアブソーバに協調して減衰させるような制御規則に従って、それら4つのショックアブソーバの各々が発生させるべき減衰力である目標減衰力を決定し、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数が、その決定される目標減衰力に応じた値となるように、それら2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が有する前記減衰係数変更機構を制御する通常減衰制御を実行する通常減衰制御実行部と、
    設定強度より高い強度のピッチ振動が連続して車体に生じるような状況下において、前記通常減衰制御に代えて、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数が、前記通常減衰制御において決定される前記目標減衰力に応じた値より小さな値となるように、それら2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々が有する前記減衰係数変更機構を制御する減衰係数低減制御を実行する減衰係数低減制御部と
    を有する車両用サスペンションシステム。
  2. 前記減衰係数低減制御が、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数を、車両の走行速度に応じて変更する制御である請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記減衰係数低減制御が、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数を、車両の走行速度が高い場合に、低い場合に比較して大きな値に変更する制御である請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記減衰係数低減制御が、前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバの各々の減衰係数を、前記通常減衰制御において決定される前記目標減衰力に応じた値より小さな固定値とする制御である請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記通常減衰制御実行部が、
    前記制御規則として、上下方向の車体の加速度であるヒーブ加速度,前後方向の軸線回りの車体の角加速度であるロール加速度,左右方向の軸線回りの車体の角加速度であるピッチ加速度を制御出力とした状態フィードバック制御を行うための制御則を用い、それらヒーブ加速度,ロール加速度,ピッチ加速度を抑えるように前記目標減衰力を決定するように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記制御規則が、非線形H∞制御理論に従うものである請求項5に記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記状態フィードバック制御を行うための制御則が、
    車体の上下方向の運動方程式,車体の前後方向の軸線回りの運動方程式,車体の左右方向の軸線回りの運動方程式に基づいて導出された状態方程式に基づいて構築された請求項5または請求項6に記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記通常減衰制御実行部が、
    前記状態フィードバック制御において、前記4つの車輪の各々に対応する(a)ばね上部の上下方向の加速度であるばね上加速度と(b)ばね上部の上下方向の速度であるばね上速度と(c)ばね上部とばね下部との間の接近離間方向の相対変位量と(d)ばね上部とばね下部との間の接近離間方向の相対速度とを、状態量として用いるように構成された請求項5ないし請求項7のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  9. 当該車両用サスペンションシステムが、
    前記2つの前輪に対応するばね上共振周波数と前記2つの後輪に対応するばね上共振周波数とが互いに異なるように、それら2つの前輪および2つの後輪に対応して設けられた4つのサスペンションスプリングの各々のばね定数とそれら2つの前輪および2つの後輪の各々への分担荷重とが調整された車両に搭載され、
    前記2つの減衰係数可変ショックアブソーバが、前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちのばね上共振周波数が低くされた方の2つの車輪に対応して設けられ、
    前記2つの減衰係数不変ショックアブソーバが、前記2つの前輪と前記2つの後輪とのうちのばね上共振周波数が高くされた方の2つの車輪に対応して設けられた請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
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