JP2013147519A - 軟質塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な電気絶縁性と良好な耐寒性とを兼ね備えた塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線を提供する。
【解決手段】軟質塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加させてなる軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、前記可塑剤は、フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステルからなる第1可塑剤と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤との混合物であり、前記第1可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基と前記第2可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基とは、全て同じ炭素数のアルキル基であり、前記複数のアルキル基は、直鎖構造の第1アルキル基および/または側鎖を有する構造の第2アルキル基からなり、また、絶縁電線10は、上記の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁被覆2を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、塩化ビニル樹脂組成物に関し、特に電気絶縁性と耐寒性とを兼ね備えた軟質塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線に関するものである。
塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)は、優れた耐水性・耐薬品性を示し、更に電気絶縁性と難燃性とを示すことから電線被覆材として利用される代表的なハロゲン含有樹脂である。塩化ビニル樹脂を利用する場合、一般的に可塑剤としてフタル酸エステルやトリメリット酸エステルなどが添加される。
また、塩化ビニル樹脂の耐寒性を向上させようとした場合、炭素数の多いアルキル基を有する構造の可塑剤を添加することが有効である。しかしながら、そのような可塑剤を添加すると、塩化ビニル樹脂の電気絶縁性が低下する問題があった。
これに対し、塩化ビニル樹脂の電気絶縁性と耐寒性とを両立させる方法が種々提案されている。例えば、特許文献1(特開平2-252749号公報)には、所定の化学式で表されるフタル酸エステルと所定の化学式で表される脂肪族二塩基酸エステルとの2種類の可塑剤を添加した塩化ビニル樹脂が開示されている。
特開平2−252749号公報
最近では絶縁電線に要求される性能(特性)がますます高度になってきており、従来の塩化ビニル樹脂を絶縁被覆に用いた絶縁電線では、要求される電気絶縁性と耐寒性との両方を満たすことが困難になる問題が生じていた。従って、本発明の目的は、要求を満たすために、良好な電気絶縁性と良好な耐寒性とを兼ね備えた塩化ビニル樹脂組成物を提供することにある。また、該塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁被覆を有する絶縁電線を提供することにある。
(I)本発明の一態様によると、塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加させてなる軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、前記可塑剤は、フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステルからなる第1可塑剤と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤との混合物であり、前記第1可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基と前記第2可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基とは、全て同じ炭素数のアルキル基であり、前記複数のアルキル基は、直鎖構造の第1アルキル基および/または側鎖を有する構造の第2アルキル基からなり、前記第1可塑剤における前記第1アルキル基と前記第2アルキル基との存在比率が、前記第2可塑剤におけるそれと同じであることを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂組成物を提供する。なお、本発明において、「直鎖構造」とは炭素原子同士が枝分かれせずに連なっている化学構造と定義する。また、「側鎖」とは炭素原子同士の最も長い連鎖から枝分かれしている部分(水素原子を除く)と定義する。
さらに、本発明は、上記の本発明に係る軟質塩化ビニル樹脂組成物において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記第1可塑剤(A)と前記第2可塑剤(B)との質量比(A/B)が、10/90以上90/10以下(10/90≦A/B≦90/10)である。
(ii)前記第1アルキル基および前記第2アルキル基の炭素数は、8以上10以下(C8以上C10以下)である。なお、第2アルキル基の炭素数は側鎖中の炭素も含むものとする。
(II)また、本発明の他の態様によると、金属導体線の外周に絶縁被覆を有する絶縁電線であって、前記絶縁被覆が、上記の本発明に係る軟質塩化ビニル樹脂組成物からなることを特徴とする絶縁電線を提供する。
本発明によれば、良好な電気絶縁性と良好な耐寒性とを兼ね備えた塩化ビニル樹脂組成物を提供することができる。また、該軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁被覆を有する絶縁電線を提供することができる。
本発明に係る絶縁電線の1例を示す断面模式図である。
以下、本発明に係る実施形態を説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施の形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
[軟質塩化ビニル樹脂組成物]
前述したように、本発明に係る軟質塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂に添加する可塑剤に特徴がある。該可塑剤は、フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステルからなる第1可塑剤と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤との混合物であり、前記第1可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基と前記第2可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基とは、全て同じ炭素数のアルキル基である。前記複数のアルキル基は、直鎖構造の第1アルキル基および/または側鎖を有する構造の第2アルキル基からなる。前記第1可塑剤における前記第1アルキル基と前記第2アルキル基との存在比率は、前記第2可塑剤における前記第1アルキル基と前記第2アルキル基との存在比率と同じである。
本発明で利用するフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、およびシクロヘキサンジカルボン酸エステルは、それぞれ下記の一般化学式(1)〜(3)で表される。なお、本発明において化学式中のRは、炭素数8以上10以下のアルキル基を示す。
Figure 2013147519
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Figure 2013147519
化学式(1)のフタル酸エステル、または化学式(2)のトリメリット酸エステルの添加(すなわち、第1可塑剤の添加)は、電気絶縁性の向上効果は高いが耐寒性を低下させる傾向がある。これは、フタル酸エステルおよびトリメリット酸エステルがベンゼン環を有し分極性が高いため、極性ポリマである塩化ビニル樹脂との相互作用が強く結合力が強いことに起因する。言い換えると、分子間の結合性が高いほど柔軟性が低下するため耐寒性が低下するが、可塑剤中での電子の移動が制限されるため電気絶縁性が向上する。
一方、化学式(3)のシクロヘキサンジカルボン酸エステルの添加(すなわち、第2可塑剤の添加)は、耐寒性の向上効果は高いが電気絶縁性を低下させる傾向がある。これは、シクロヘキサンジカルボン酸エステルがその分子構造において極性部分が少ないため、塩化ビニル樹脂との相互作用が弱く結合力も弱いことに起因する。
塩化ビニル樹脂と可塑剤との結合性に起因する基本的効果に加えて、塩化ビニル樹脂の電気絶縁性および耐寒性の特性は、可塑剤分子中のアルキル基の炭素数(アルキル基の大きさ)に強く影響を受ける。具体的には、アルキル基の炭素数が大きい可塑剤を添加した塩化ビニル樹脂は、良好な耐寒性を示すが、電気絶縁性が低下する。それとは反対に、アルキル基の炭素数が小さい可塑剤を添加した塩化ビニル樹脂は、耐寒性が低下するが、良好な電気絶縁性を示す。
さらに、複数の可塑剤を混合する場合、各可塑剤のアルキル基の炭素数が同じであり、かつ該アルキル基における化学構造の類似性が高いことが重要である。本発明において、各可塑剤は、それぞれ複数のアルキル基を有し、該複数のアルキル基は、直鎖構造の第1アルキル基および/または側鎖を有する構造の第2アルキル基からなる。本発明者等は、第1可塑剤における第1アルキル基と第2アルキル基との存在比率が、第2可塑剤におけるそれと同じである場合に、特に良好な特性が得られることを見出した。
これは、可塑剤中の第1アルキル基と第2アルキル基との存在比率が混合する可塑剤同士で同じであると、それら可塑剤同士の親和性(相溶性)が高まり、互いに極性の異なる可塑剤同士であっても塩化ビニル樹脂中で均等に分散するためと考えられた。その結果、各可塑剤の利点をそれぞれ発現させることができた。言い換えると、軟質塩化ビニル樹脂において、良好な電気絶縁性と良好な耐寒性との双方の特性を発現させるためには、分極性が互いに異なる複数の可塑剤であって、各可塑剤中の全てのアルキル基の炭素数が同じであり、かつ各可塑剤中の第1アルキル基と第2アルキル基との存在比率が同じである可塑剤同士を混合・添加することが好ましい。
フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステルからなる第1可塑剤(A)と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤(B)との質量比(A/B)は、10/90以上90/10以下であることが好ましく、20/80以上80/20以下であることがより好ましい。該質量比(A/B)を「10/90≦A/B≦90/10」とすることで、軟質塩化ビニル樹脂組成物の電気絶縁性と耐寒性とをバランス良く向上させることができる。
第1可塑剤と第2可塑剤との合計添加量は、100質量部の塩化ビニル樹脂に対して、30質量部以上100質量部以下であることが好ましい。合計添加量が30質量部未満では、十分な柔軟性が得られず、耐寒性の向上が不十分となる。一方、合計添加量が100質量部超では、電気絶縁性の向上が不十分となる。
各可塑剤のアルキル基の炭素数は、8以上10以下(C8以上C10以下)であることが好ましい。アルキル基の炭素数がC7以下では、絶縁被覆に要求される耐熱性が十分確保できない。これは、アルキル基が短いほど(すなわち、炭素数が少なく分子量が小さいほど)加熱によって可塑剤が揮発しやすくなることに起因する。可塑剤が揮発すると塩化ビニル樹脂組成物が硬化してしまう。一方、アルキル基の炭素数がC11以上では、可塑剤のエステル合成に必要なアルコールに制約が生じ、結果としてコスト高の要因となることから好ましくない。
[絶縁電線]
図1は、本発明に係る絶縁電線の1例を示す断面模式図である。図1に示したように、本発明に係る絶縁電線10は、金属導体線1の外周に前述の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁被覆2が形成されているものである。図1では、金属導体線1を単芯線として描いたが、多芯撚線であっても勿論よい。また、絶縁電線10の製造方法に特段の限定は無く、従前の方法を利用することができる。
金属導体線1に特段の限定はなく、通常の絶縁電線で用いられる銅線、アルミニウム線の他に、金線や銀線などを利用することができる。また、銅線の外周にニッケルなどの金属めっきを施した導体でもよい。さらに、本発明に係る絶縁被覆2が被覆される導体形状にも特段の限定はなく、丸形状や四辺形状であってもよい。なお、本発明における四辺形状とは、角部が丸みを有する四角形状や角丸長方形状を含むものとする。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(供試材の作製)
平均重合度1300の塩化ビニル樹脂(PVC)100質量部に対して、50質量部の可塑剤(後述する表1、表2参照)と、安定剤として3質量部のカルシウム−亜鉛系非鉛安定剤と、充填剤として20質量部の炭酸カルシウムおよび3.5質量部のケイ酸アルミニウムとを添加し混合した。その後、該混合物に対して、混練処理(ロール温度:160℃、5分間)とプレス処理(プレス温度:180℃、3分間余熱、10 MPaで2分間加圧)とを施して、厚さ1 mmと2 mmのシート状に成形し、軟質塩化ビニル樹脂組成物の供試材(比較例1〜6および実施例1〜6)を作製した。
(試験・評価)
上記のようにして用意した軟質塩化ビニル樹脂組成物の供試材(比較例1〜6および実施例1〜6)に対し、JIS K 6723に準拠して耐寒性試験(低温脆化温度測定)と電気絶縁性試験(体積抵抗率測定)とを行った。
(1)耐寒性評価
JIS K 6723に示される1種1号の一般絶縁用被覆材に対して裕度をもって適用できるように、低温脆化温度が-26℃より高い場合を×(不合格)とし、-26℃以下の場合を○(合格)とし、-28℃以下の場合を◎(優秀)と評価した。
(2)電気絶縁性評価
JIS K 6723に示される1種1号の一般絶縁用被覆材に対して裕度をもって適用できるように、30℃雰囲気下における体積抵抗率が1014Ω・cmより低い場合を×(不合格)とし、1014Ω・cm以上の場合を○(合格)とし、5×1014Ω・cm以上の場合を◎(優秀)と評価した。また、60℃雰囲気下における体積抵抗率が1013Ω・cmより低い場合を×(不合格)とし、1013Ω・cm以上の場合を○(合格)とし、5×1013Ω・cm以上の場合を◎(優秀)と評価した。
(試験・評価結果)
比較例1〜6における添加した可塑剤と試験評価結果とを表1に示し、実施例1〜6における添加した可塑剤と試験評価結果とを表2に示す。
Figure 2013147519
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(比較例1)
まず、比較例について表1を参照しながら説明する。比較例1は、100質量部のPVCに対して、可塑剤としてフタル酸エステルの1種であるフタル酸ジオクチル(DOP)を50質量部(per hundred resin: phr)添加したものである。フタル酸エステルのみを添加した比較例1は、耐寒性の評価が不合格であった。これは、DOPはベンゼン環を有し分極性が高いためにPVCとの親和性が高いことに加えて、DOPのアルキル基における「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」が「0/100」と第1アルキル基の比率が小さいことから、PVC分子間の強い結合力に起因する低温脆化を抑制できなかったためと考えられた。
(比較例2)
比較例2は、可塑剤としてトリメリット酸エステルの1種であるトリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)を50 phr添加したものである。トリメリット酸エステルのみを添加した比較例2は、耐寒性の評価が不合格であった。これも比較例1と同様の理由と考えられた。
(比較例3)
比較例3は、可塑剤としてシクロヘキサンジカルボン酸エステルの1種である1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOCH)を50 phr添加したものである。シクロヘキサンジカルボン酸エステルのみを添加した比較例3は、高温域(60℃)での電気絶縁性の評価が不合格であった。これは、DOCHはベンゼン環を有さず非極性基の割合も大きいことからPVCとの親和性が低く、そのためPVC中で立体障害が生じにくいことに加えて、温度が高くなると可塑剤自体の分子活動が活発となり良好な電気絶縁性を保てなかったためと考えられた。
比較例1〜3に示したように、フタル酸エステル、トリメリット酸エステルおよびシクロヘキサンジカルボン酸エステルのうちの1種のみを添加した供試材では、耐寒性および電気絶縁性の双方の特性を十分に満たせないことが確認された。
(比較例4)
比較例4は、可塑剤としてフタル酸エステルの1種であるDOPとフタル酸ジイソノニル(DINP)とをそれぞれ25 phrずつ添加したものである。2種類のフタル酸エステルを混合添加した比較例4は、耐寒性の評価が不合格であった。これも比較例1と同様の理由と考えられた。言い換えると、フタル酸エステル同士の混和物を添加した場合でも、フタル酸エステル1種を添加した場合と同様の結果となることが確認された。
(比較例5)
比較例5は、可塑剤としてフタル酸エステルの1種であるフタル酸ジノルマルオクチル(nDOP)とシクロヘキサンジカルボン酸エステルの1種であるDOCHとをそれぞれ25 phrずつ添加したものである。nDOPとDOCHとを混合添加した比較例5は、常温域(30℃)および高温域(60℃)の両方で電気絶縁性の評価が不合格であった。
比較例5に添加した両可塑剤のアルキル基の炭素数は共にC8と同じであるが、アルキル基における「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」はnDOPが「100/0」でDOCHが「0/100」と大きく異なっている。nDOPはアルキル基における第1アルキル基の比率が大きく、DOCHは非極性基の割合が大きい。すなわち、これらの可塑剤はPVCとの相互作用が小さく結合力が弱いことに加えて、可塑剤同士の相溶性も低いと考えられる。その結果、十分な電気絶縁性が得られなかったと考えられた。比較例5の結果から、フタル酸エステルとシクロヘキサンジカルボン酸エステルとの混和物を添加した供試材は、アルキル基の炭素数が同じであっても「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」が異なる場合、耐寒性および電気絶縁性の双方の特性を十分に満たせないことが確認された。
(比較例6)
比較例6は、可塑剤としてフタル酸エステルの1種であるDOPとシクロヘキサンジカルボン酸エステルの1種である1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)とをそれぞれ25 phrずつ添加したものである。DOPとDINCHとを混合添加した比較例6は、耐寒性の評価が不合格であった。
比較例6に添加した両可塑剤のアルキル基の炭素数はDOPが「C8」でDINCHが「C9」と異なっており、アルキル基における「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」もDOPが「0/100」でDINCHが「5/95」と異なっている。どちらの可塑剤も第1アルキル基の比率が小さい(第2アルキル基の比率が大きい)ことから、PVCの電気絶縁性の向上に寄与したと考えられた。一方、両可塑剤はアルキル基の炭素数や「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」が異なることから、可塑剤同士の相溶性が低下し、PVC中で各可塑剤の均等な分散が困難になったと考えられる。その結果、PVCとの結合力が弱い方のDINCHの効果が十分に発現されず、十分な耐寒性が得られなかったと考えられた。比較例6の結果から、フタル酸エステルとシクロヘキサンジカルボン酸エステルとの混和物を添加した供試材は、アルキル基の炭素数および「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」が異なる場合、耐寒性および電気絶縁性の双方の特性を十分に満たせないことが確認された。
(実施例1)
次に、本発明に係る実施例について表2を参照しながら説明する。実施例1は、可塑剤としてフタル酸エステルの1種であるDINPとシクロヘキサンジカルボン酸エステルの1種であるDINCHとをそれぞれ25 phrずつ添加したものである。DINPとDINCHとを混合添加した実施例1は、耐寒性および電気絶縁性の評価がいずれも優秀であった。
実施例1に添加した両可塑剤のアルキル基の炭素数は共にC9と同じであり、アルキル基における「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」も「5/95」で同じである。言い換えると、これらの可塑剤は、アルキル基の炭素数と「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」とが共に同じであることにより、可塑剤同士の相溶性が高まりPVC中で各可塑剤の均等な分散が可能になったと考えられる。その結果、DINPとDINCHとの双方の効果が十分に発現されたものと考えられた。
(実施例2)
実施例2は、可塑剤としてトリメリット酸エステルの1種であるTOTMとシクロヘキサンジカルボン酸エステルの1種であるDOCHとをそれぞれ25 phrずつ添加したものである。TOTMとDOCHとを混合添加した実施例2も、実施例1と同様に、耐寒性および電気絶縁性の評価がいずれも優秀であった。実施例2に添加した両可塑剤のアルキル基の炭素数は共にC8と同じであり、「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」も「0/100」で同じである。すなわち、実施例1と同様の理由により、可塑剤の効果が十分に発現されたものと考えられた。
実施例1〜2で示したように、PVCに添加する可塑剤が、フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステルからなる第1可塑剤と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤との混和物であり、各可塑剤のアルキル基の炭素数と「第1アルキル基/第2アルキル基の存在比率」とが互いに同じである可塑剤を添加した供試材は、良好な耐寒性と良好な電気絶縁性とを示すことが実証された。
(実施例3〜4)
実施例3は、可塑剤としてフタル酸エステルの1種であるDINPとシクロヘキサンジカルボン酸エステルの1種であるDINCHとをそれぞれ45 phrと5 phr添加したものである。また、実施例4は、可塑剤としてDINPとDINCHとをそれぞれ5 phrと45 phr添加したものである。DINPとDINCHとを混合添加した実施例3〜4も、耐寒性および電気絶縁性の評価がいずれも合格であった。実施例3〜4の結果から、第1可塑剤(A)と第2可塑剤(B)との混合比は、少なくとも「10/90≦A/B≦90/10」の範囲が好ましいことが実証された。
(実施例5〜6)
実施例5は、可塑剤としてDINPとDINCHとをそれぞれ40 phrと10 phr添加したものである。また、実施例6は、可塑剤としてDINPとDINCHとをそれぞれ10 phrと40 phr添加したものである。表2に示したように、実施例5〜6は、耐寒性および電気絶縁性の評価がいずれも優秀であった。実施例5〜6および実施例1〜2の結果から、第1可塑剤(A)と第2可塑剤(B)との混合比は、「20/80≦A/B≦80/20」の範囲がより好ましいことが実証された。
1…導体、2…絶縁被覆、10…絶縁電線。

Claims (4)

  1. 塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加させてなる軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、
    前記可塑剤は、フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステルからなる第1可塑剤と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤との混合物であり、
    前記第1可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基と前記第2可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基とは、全て同じ炭素数のアルキル基であり、
    前記複数のアルキル基は、直鎖構造の第1アルキル基および/または側鎖を有する構造の第2アルキル基からなり、
    前記第1可塑剤における前記第1アルキル基と前記第2アルキル基との存在比率が、前記第2可塑剤におけるそれと同じであることを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の軟質塩化ビニル樹脂組成物において、
    前記第1可塑剤(A)と前記第2可塑剤(B)との質量比(A/B)が、10/90以上90/10以下であることを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の軟質塩化ビニル樹脂組成物において、
    前記第1アルキル基および前記第2アルキル基の炭素数が、8以上10以下であることを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂組成物。
  4. 金属導体線の外周に絶縁被覆を有する絶縁電線であって、
    前記絶縁被覆が、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなることを特徴とする絶縁電線。
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