JP2013136815A - レーザーアブレーション用ターゲットとそれを用いた酸化物超電導線材の製造方法および酸化物超電導線材 - Google Patents

レーザーアブレーション用ターゲットとそれを用いた酸化物超電導線材の製造方法および酸化物超電導線材 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、レーザーアブレーション用ターゲットとそれを用いた酸化物超電導線材の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、希土類系酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物とBa化合物とCu化合物を混合し、粉砕し、仮焼きし、成型後に本焼成して得られるレーザーアブレーション用ターゲットであり、成膜対象とする基材がテープ状であって、複数の平行なレーンに沿って移動される間に前記各レーンの基材に対しレーザー蒸着を行うためのレーザーアブレーション用ターゲットであって、REとBaとCuとOの組成比が超電導特性を示す酸化物超電導体として必要な比率を有する母相と、この母相と異なる組成比か、この母相と異なる組成の異相とを有し、前記異相が前記母相に対して60%以下であり、前記異相が構成する粒子の粒径が0.5mm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導薄膜を形成する場合に用いるレーザーアブレーション用ターゲットとそのターゲットを用いた酸化物超電導線材の製造方法および酸化物超電導線材に関する。
RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度で超電導性を示し、電流損失が低いため、これを超電導線材に加工して電力供給用の超電導導体あるいは超電導コイルを製造することがなされている。この酸化物超電導体を線材に加工するための方法として、金属テープの基材上に中間層を介し酸化物超電導薄膜を形成し、この酸化物超電導薄膜の上に安定化層を形成する方法が実施されている。
酸化物超電導線材に形成する酸化物超電導薄膜は、結晶配向性に優れ、不純物の無い薄膜でなければ優れた超電導特性を得ることができないので、酸化物超電導薄膜は不純物混入のおそれの少ない減圧雰囲気において成膜法により形成されている。
酸化物超電導薄膜を形成する技術の1つとして知られているパルスレーザー蒸着法(PLD:Pulse Laser Deposition)は、ターゲットにパルスレーザーを照射し、レーザー照射によりターゲットからアブレーション(蒸発侵食)されて放出された原子、分子あるいは微粒子を基板上に堆積させる薄膜作製技術であり、半導体や酸化物超電導薄膜の作製に適用されている。また、ターゲットから薄膜を作製した場合、ターゲットと薄膜との間で組成ずれが少ないことから、PLD法は他の薄膜作製プロセスに比べ、複雑な化学組成を転写する場合に優れている特徴がある。
しかしながら、レーザーアブレーションの過程はターゲット表面付近でのターゲット材料の気化現象によって引き起こされるため、同時にターゲット表面に存在する異物や異相も基板側に吹き飛ばしてしまう。
従って、酸化物超電導薄膜生成用のターゲットは、不純物が少なく、異相の存在しないものを使用するのが常識とされてきた。
この種ターゲットの製造方法の一例として、希土類を含む原料粉末とバリウムを含む原料粉末と銅を含む原料粉末を目的の組成比になるように秤量混合して出発材料として用いる方法が知られている。この方法では、秤量混合した混合物を酸素雰囲気中において高温で仮焼きし、この仮焼物を粉砕し、この粉砕物を再度目的の粒径とアスペクト比に粉砕する2次粉砕工程を行い、この2次工程を経た粉砕物を圧縮成型して焼成することでターゲットを得ている(特許文献1参照)。
また、この種ターゲットを製造する方法の他の例として、前記と同様に原料粉末の混合物を得た後、この混合物を酸素雰囲気中において高温で仮焼きし、この仮焼物を酸素雰囲気中において再度高温に加熱して2次焼成粉を得た後、この2次焼成粉を圧縮成型して本焼成し、目的のターゲットを得る技術が知られている(特許文献2参照)。
特開2009−215629号公報 特開2007−063631号公報
上述の従来技術において、原料の秤量混合と酸素雰囲気中の仮焼き処理、焼成処理を繰り返し行うのは、原料として酸化物以外に炭酸塩などを用いるので、酸化物超電導薄膜生成のために不要な元素、例えば炭素などをガス化して除去し、不要元素の混入を抑制するためである。
例えば、YBaCu7−xの組成比の酸化物超電導薄膜を製造する場合、一般にはY粉末とBaCO粉末とCuO粉末を用いるので、これらを秤量混合し、仮焼きし、粉砕し、混合し、再度仮焼きして2次仮焼き粉末に粉砕し、混合するという、仮焼き処理を2回行なう製造方法を実施している。これは、最終的に得られるターゲットに含まれる異相を極限まで削減するために、酸化物超電導薄膜に必要な元素の単相状態に近い仮焼き粉を得た後、この仮焼き粉を成型し、本焼成することで組成比が均一であり、異相の少ない焼結体ターゲットを得ようとするためである。
前述のように異相の少ないターゲットを得ることが一般的にはなされているので、異相を含むターゲットは酸化物超電導薄膜の成膜には不向きであり、従来技術において異相を含むターゲットにより良質の酸化物超電導薄膜は生成できないとされてきた。
従って、従来のターゲットの製造方法は、異相を無くするために多くの工程を必要としていたので、超電導薄薄膜の元となる焼結ターゲットを作成するために多大の時間と手間、コストが必要であった。このため、酸化物超電導線材の製造にもコストがかかり、酸化物超電導線材を用いた製品の普及の1つの障害となっている。
本発明は、以上のような従来の背景に鑑みなされたもので、従来よりも簡略的な製造方法で製造した場合であっても特性の優れた酸化物超電導薄膜を製造することができるターゲットの提供を目的の1つとする。
また、本発明は、上述のターゲットを用いたレーザー蒸着方法と酸化物超電導線材の製造方法および酸化物超電導線材の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のレーザーアブレーション用ターゲットは、一般式REaBabCucOx(但し、REはYおよび/または希土類元素の内から選択される1つ以上の元素)で表記されるRE系酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物とBa化合物とCu化合物を混合し、粉砕し、仮焼きし、成型後に本焼成して得られるレーザーアブレーション用ターゲットであり、成膜対象とする基材がテープ状であって、複数の平行なレーンに沿って移動される間に前記各レーンの基材に対しレーザー蒸着を行うためのレーザーアブレーション用ターゲットであって、REとBaとCuとOの組成比が超電導特性を示す酸化物超電導体として必要な比率を有する母相と、この母相と異なる組成比か、この母相と異なる組成の異相とを有し、前記異相が前記母相に対して60%以下であり、前記異相が構成する粒子の粒径が1mm以下であることを特徴とする。
目的の酸化物超電導層の生成に必要な組成比率である母相に対し、その他の異相が母相に対し60%以下含まれているターゲットであるが、レーザー蒸着時に複数のレーンに沿って移動させているテープ状の基材に対し酸化物超電導薄膜を成膜するために用いるターゲットである。このため、各レーンに沿って基材上にターゲット構成粒子を堆積させることで異相により生じた目的と異なる組成比率の薄膜は各レーンに沿って部分的に生成されて分散される。従って、目的と異なる組成比率の薄膜は、最終的に得られた酸化物超電導薄膜中に分散されるので、母相により生成された目的組成比の酸化物超電導薄膜が酸化物超電導薄膜全体の特性を支配する結果、全てのレーン通過後に得られた酸化物超電導薄膜は臨界電流密度の高い優れた酸化物超電導薄膜となる。
異相を含むターゲットは、原料を混合し、粉砕し、仮焼きし、成型後に本焼成する製造過程において、混合と粉砕と仮焼き処理を従来方法より簡略化しても製造できる。即ち、従来よりも簡略化した製造過程で得られる安価なターゲットであっても、良好な超電導特性を示す酸化物超電導薄膜を製造できることになる。これにより、酸化物超電導薄膜の製造コストを削減でき、ひいては酸化物超電導線材の製造コストの削減に寄与する。
本発明において、前記母相と異なる組成の異相が、REの酸化物粒子、Baの酸化物粒子、Cuの酸化物粒子、あるいはREとBaとCuのうち、2つ以上からなる複合酸化物粒子であっても良い。
母相と異なる異相であって、REの酸化物粒子、Baの酸化物粒子、Cuの酸化物粒子、あるいはREとBaとCuのうち、2つ以上からなる複合酸化物粒子が含まれているターゲットであっても、複数のレーンに沿って移動させているテープ状の基材に対し酸化物超電導薄膜を成膜することで、超電導特性に優れた酸化物超電導薄膜を安価に製造できるようになる。
本発明において、前記一般式REaBabCucOxにおいてREの原子数の比を示すaが1であり、Baの原子数の比を示すbが2±0.3の範囲であり、Cuの原子数の比を示すcが3±0.6の範囲であることを特徴とするターゲットであっても良い。
Baの原子数の比を示す範囲と、Cuの原子数の比を示す範囲が前記の範囲内でばらついていても、複数のレーンに沿って移動させているテープ状の基材に対し酸化物超電導薄膜を成膜することができるので、超電導特性に優れた酸化物超電導薄膜を安価に製造できるようになる。
本発明において、人工ピン材料が10質量%以下含有されていても良い。
前述の異相粒子の存在の他に、人工ピン材料を10質量%以下含んでいても超電導特性に優れた酸化物超電導薄膜を得ることができる。人工ピン材料が酸化物超電導薄膜の内部に含まれていると、磁場中においても臨界電流密度が低下し難い酸化物超電導線材を提供できる。
本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法は、一般式REaBabCucOx(但し、REはYおよび/または希土類元素の内から選択される1つ以上の元素)で表記されるRE系酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物とBa化合物とCu化合物を混合し、粉砕し、仮焼きし、成型後に本焼成して得られ、REとBaとCuとOの組成比が超電導特性を示す酸化物超電導体として必要な比率を有する母相と、この母相と異なる組成比か、この母相と異なる組成の異相とを有し、前記異相が前記母相に対して60%以下であり、前記異相が構成する粒子の粒径が1mm以下であることを特徴とするレーザーアブレーション用ターゲットを用いて行う酸化物超電導線材の製造方法であり、
テープ状の基材上に中間層とキャップ層を形成した積層体に対し、該積層体を複数のレーンを構成するように移動させ、これら複数のレーンに対向するように前記ターゲットを配置し、該ターゲットにレーザー光を集光照射して発生させたターゲット構成粒子を前記複数のレーンにおいて各レーンのキャップ層上に蒸着することにより酸化物超電導薄膜を成膜することを特徴とする。
目的の酸化物超電導層の生成に必要な組成比率である母相に対し、その他の異相が母相に対し60%以下含まれているターゲットであるが、レーザー蒸着時に複数のレーンに沿って移動させているテープ状の基材に対し酸化物超電導薄膜を成膜するために用いるターゲットである。このため、各レーンに沿って基材上にターゲット構成粒子を堆積させることで異相により生じた目的と異なる組成比率の薄膜は各レーンに沿って部分的に生成されて分散される。このため、目的と異なる組成比率の薄膜は、最終的に得られた酸化物超電導薄膜中に分散されるので、母相により生成された目的組成比の酸化物超電導薄膜が酸化物超電導薄膜全体の特性を支配する結果、全てのレーン通過後に得られた酸化物超電導薄膜は臨界電流密度の高い優れた酸化物超電導薄膜となる。
異相を含むターゲットは、原料を混合し、粉砕し、仮焼きし、成型後に本焼成する製造過程において、混合と粉砕と仮焼き処理を従来方法より簡略化しても製造できる。即ち、従来よりも簡略化した製造過程で得られる安価なターゲットであっても、良好な超電導特性を示す酸化物超電導薄膜を製造できることになる。このことにより、酸化物超電導薄膜の製造コストを削減でき、ひいては酸化物超電導線材の製造コストの削減に寄与する。
本発明において、前記ターゲットにレーザー光を集光照射する場合、前記異相の粒径より2倍以上大きなレーザー光の集光スポット径としながら成膜することができる。
異相の粒径より2倍以上大きなレーザー光の集光スポット径でターゲット表面から蒸着粒子を発生させることで、異相の成分からなる蒸着粒子に加えて母相成分からなる蒸着粒子を発生させて基材上に粒子を堆積させることができる。これらの粒子が混合して複数のレーンに沿って堆積し、酸化物超電導薄膜を構成するので、全体として特性に優れた酸化物超電導薄膜を形成できる。
本発明において、前記ターゲットにレーザー光を集光照射する場合、前記ターゲットと前記レーザー光の少なくとも一方を移動させて前記ターゲットの表面に沿って前記レーザー光の集光照射位置を変更しながら成膜することができる。
ターゲットの表面に対しレーザー光の集光照射位置を変更しながら蒸着粒子を発生させることで、異相からの蒸着粒子と母相からの蒸着粒子を混合して平均化しつつ蒸着粒子を堆積できるので、異相を含んだターゲットからであっても、全体として特性に優れた酸化物超電導薄膜を形成できる。
本発明において、前記ターゲットにレーザー光を集光照射する場合、パルスレーザー光を用いることを特徴とする。
レーザー光の照射位置を変更しながらパルスレーザー光を照射することによって、ターゲットの表面から発生させる異相からの蒸着粒子と母相からの蒸着粒子をより平均化出来る結果として、異相を含んだターゲットからであっても、全体として特性に優れた酸化物超電導薄膜を形成できる。
本発明は、先のいずれか一項に記載された製造方法により得られたことを特徴とする酸化物超電導線材に関する。
本発明の上述のターゲットを用いて上述の製造方法により得られる酸化物超電導線材は優れた臨界電流密度を有しながら、低コストな特徴を有する。
本発明によれば、基材を走行させているレーンに沿ってターゲットからの蒸着粒子を堆積させることで異相により生じた目的と異なる組成比率の薄膜を酸化物超電導薄膜全体の一部に分散させ、母相により生成される目的組成比の酸化物超電導薄膜で酸化物超電導薄膜全体としての超電導特性を優れさせた酸化物超電導薄膜とすることができる。
よって、本発明に係るレーザーアブレーション用ターゲットを用い、本発明方法を実施することで、安価ながら臨界電流密度の高い、超電導特性の優れた酸化物超電導線材を提供できる。
本発明に係るターゲットを備え、本発明に係る製造方法を実施するための成膜装置の概略構成を示す正面図。 図1に示す成膜装置の概略構成を示す側面図。 図1に示す成膜装置の要部概略構成を示す斜視図。 図1に示す成膜装置で成膜する場合に対象とする酸化物超電導線材の一例構造を示す斜視図。 比較例を製造する場合に用いる成膜装置の概略構成を示す側面図。
以下、本発明に係るターゲットとそれを備えた成膜装置による酸化物超電導線材の製造方法について図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るターゲットを備えたレーザー蒸着装置の概略構成を示す正面図、図2は同蒸着装置の概略構成を示す側面図、図3は同蒸着装置の要部を示す斜視図である。図1〜図3に示す構成のレーザー蒸着装置Aを用いて製造しようとする酸化物超電導線材1の一構造例を図4に示す。なお、図1〜図3に示す酸化物超電導線材は、本発明に係るターゲットを用いて酸化物超電導層を成膜する対象としての一例であり、以下に説明する積層構造に限定されないのは勿論である。
この例の酸化物超電導線材1は、テープ状の基材2の上方に、配向層4とキャップ層5を含む中間層3と酸化物超電導薄膜6と第1の安定化層7と第2の安定化層8をこの順に積層してなる。この酸化物超電導線材1はその周面を図示略の絶縁被覆層などで覆って酸化物超電導導体として利用される。
前記基材2は、可撓性を有する酸化物超電導線材1とするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。各種耐熱性金属の中でも、ニッケル合金からなることが好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適である。基材2の厚さは、通常は、10〜500μmである。また、基材2として、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W合金テープ基材等を適用することもできる。
中間層3は、以下に説明する下地層と配向層4とキャップ層5からなる構造を一例として適用できる。
下地層を設ける場合は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができる。
下地層として拡散防止層を設ける場合、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(GdZr)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
下地層としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減し、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、例えば、イットリア(Y)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er、CeO、Dy3、Er、Eu、Ho、La等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。また、拡散防止層とベッド層の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
配向層4は、その上方に形成する酸化物超電導層5の結晶配向性を制御するバッファー層として機能し、酸化物超電導薄膜6と格子整合性の良い金属酸化物からなることが好ましい。配向層4の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示できる。配向層4は、単層でも良いし、複層構造でも良い。
配向層4は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する。)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);有機金属塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。これらの方法の中でも特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層やキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、結晶の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、GdZr、MgO又はZrO−Y(YSZ)からなる配向層は、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
前記キャップ層5は、前記配向層4の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層5は、前記配向層4よりも高い面内配向度が得られる可能性がある。
キャップ層5の材質は、前記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、LMO(LaMnO)、Y、Al、Gd、Zr等が例示できる。キャップ層5の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層5は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが好ましい。PLD法によるCeO層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。キャップ層5を成膜するために本実施形態では後に説明する構成の成膜装置Aを用いて後述するPLD法により形成することができる。勿論、キャップ層5をPLD法以外の成膜法で形成しても良い。
CeOのキャップ層5の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲、より好ましくは100〜5000nmの範囲とすることができる。
酸化物超電導薄膜6は通常知られている組成の酸化物超電導体を広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBa2Cu3Oy)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。
酸化物超電導薄膜6は、本実施形態では後に説明する構成の成膜装置Aを用い、後述するPLD法により形成できる。酸化物超電導薄膜6の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導薄膜6の上面を覆うように形成されている安定化層7は、AgあるいはAg合金からなり、スパッタ法などの気相法により成膜されており、その厚さを1〜30μm程度とされる。また、安定化層7の上に第2の安定化層8が設けられていることが好ましい。第2の安定化層8は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導薄膜6が超電導状態から常電導状態に転移した時に、安定化層7とともに、電流を転流するバイパスとして機能する。第2の安定化層8を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることがら銅からなることが好ましい。なお、酸化物超電導線材1を超電導限流器に使用する場合は、第2の安定化層8は高抵抗金属材料より構成され、例えば、Ni−Cr等のNi系合金などを使用できる。第2の安定化層8の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることが好ましい。
本実施形態において、前記酸化物超電導線材1の酸化物超電導薄膜6を以下に説明するレーザー蒸着装置Aを用いて製造することができる。
本実施形態のレーザー蒸着装置Aは、レーザー光によってターゲット11から叩き出され若しくは蒸発した構成粒子の噴流(プルーム)を基材上に向け、構成粒子の堆積による酸化物超電導薄膜6を基材の上方に形成するレーザー蒸着法(PLD法)を実施する装置である。本実施形態のレーザー蒸着装置Aは、基材2上に中間層3を上述の各種の方法により成膜した積層体の状態からその上に酸化物超電導薄膜6を成膜する場合に用いることができる。
レーザー蒸着装置Aは、図1〜図3に示すようにテープ状の基材2をその長手方向に走行するための走行装置10と、この走行装置10の下側に設置されたターゲット11と、このターゲット11にレーザー光を照射するために図1に示すように処理容器(真空チャンバ)18の外部に設けられたレーザー光源12を備えている。
前記走行装置10は、一例として、成膜領域15に沿って走行するテープ状の基材2を案内するための転向リールの集合体である転向部材群16、17を備え、これら転向部材群16、17に基材2を巻き掛けて成膜領域15に基材2の複数のレーンを構成するように基材2を案内できる装置として構成されている。
前記走行装置10とターゲット11は処理容器18の内部に収容されており、処理容器18は、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有する構成とされる。この処理容器18には、処理容器内のガスを排気する排気手段19が接続され、他に、処理容器内にキャリアガスおよび反応ガスを導入するガス供給手段が形成されているが、図面ではガス供給手段を略し、各装置の概要のみを示している。
基材2は処理容器18の内部に設けられている供給リール20に巻き付けられ、必要長さ繰り出すことができるように構成されている。供給リール20から繰り出された基材2は、複数の転向リール16aを同軸的に隣接配置した転向部材群16と、複数の転向リール17aを同軸的に隣接配置した転向部材群17に交互に巻き掛けられている。これらの転向部材群16、17は処理容器18の内部において離間して配置され、それらの間に複数の平行なレーン2Aを構成するように基材2が配置され、基材2は転向部材群17から引き出されて巻取リール21に巻き取られるように構成されている。
また、処理容器18の内部に、転向部材群16、17とその周囲を囲む矩形箱状のヒーターボックス23が設けられ、供給リール20から繰り出された基材2はヒーターボックス23の一側の入口部23aを通過して転向部材群16に至るように構成され、転向部材群17から引き出された基材2はヒーターボックス23の他側の出口部23bを介し巻取リール21側に巻き取られるようになっている。なお、図に示す装置においてヒーターボックス23は成膜領域15の温度制御を行うために設けられているが、ヒーターボックス23は略しても差し支えない。
転向部材群16、17の間の中間位置の下方に本発明に係る円板状のターゲット11が設けられている。このターゲット11は、円盤状のターゲットホルダ25に装着されて支持され、ターゲットホルダ25は、その下面中央部に取り付けられた支持ロッド26により回転自在(自転自在)に支持され、更に図示略の往復移動機構により図2に示すY、Y方向(転向部材群16、17の間に形成される基材2のレーン2Aに沿う前後方向)に水平に往復移動自在に支持されている。これらの機構によるターゲットホルダ25の回転移動と往復前後移動により、ターゲット11の表面に照射されるレーザー光の位置を適宜変更できるように構成されている。
ターゲット11の上方のヒーターボックス23の下面には、転向部材群16、17間において基材2が走行する複数のレーン2Aの全幅に該当するように開口部23cが形成されている。また、ヒーターボックス23において開口部23cの内側には熱板などの加熱装置27が配置され、転向部材群16、17の間を複数のレーン状に走行移動される基材2をそれらの裏面側から所望の温度に加熱できるように構成されている。加熱装置27は基材2をその裏面側から目的の加熱できる装置であればその構成は問わないが、通電式の電熱ヒータを内蔵した金属盤からなる一般的な加熱ヒータを用いることができる。
ターゲット11は、酸化物超電導薄膜6を成膜するために、形成しようとする酸化物超電導薄膜6と同等または近似した組成、あるいは、成膜中に逃避しやすい成分を多く含有させた複合酸化物の焼結体あるいは酸化物超電導体などの板材を用いることができる。
従って、酸化物超電導薄膜形成用のターゲットは、RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−x:REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd等の希土類元素)またはそれらに類似した組成の材料を用いることができる。RE−123系酸化物として好ましいのは、Y123(YBaCu7−x)又はGd123(GdBaCu7−x)等であるが、その他の希土類系酸化物超電導体と同一の組成か、近似した組成のものを用いることが好ましい。
なお、本発明で用いるターゲット11は、後述する製造方法においてより詳しく説明されるように、目的のREBaCu7−xなる組成式で示される焼結体が100%ではなく、このターゲッ11を製造する場合に用いた原料としての希土類元素の化合物、Baの化合物、Cuの化合物由来の異相が目的のREBaCu7−xなる組成式で示される焼結体である母相に対し、60%以下含有した焼結体であればよい。この、ターゲット11中の異相の割合は、X線回折(XRD)によるリートベルト解析にて特定することができる。
ここで異相とは、母相である目的のREBaCu7−xなる組成式で示される焼結体とは異なる組成比の相、REBaCu7−xの組成比ではないが、REとBaとCuが複合酸化物になっているもの、もしくは、RE、Ba、Cuの個別の酸化物粒子、または、これら元素のうち、2種以上の複合酸化物粒子を意味する。
前記母相と異相を合わせた焼結体全体(ターゲット11の全体)としての組成比が、RE:Ba:Cu=1:2±0.3:3±0.6の範囲を選択することができる。この範囲であるならば、超電導特性を示す酸化物超電導薄膜を形成できる。また、前記組成比の中でも、RE:Ba:Cu=1:2±0.3:3±0.6の範囲を選択することにより、優れた臨界電流密度を示す酸化物超電導薄膜を形成できる。これは、ターゲット全体の組成比が酸化物超電導体の化学量論組成に近い組成比である必要があり、この組成範囲を外れると超電導体の相にならないか、超電導特性が低下するおそれが高いためである。
前記ターゲット11に含まれている異相の粒径は0.5mm以下であることが好ましい。これは後述するようにレーザー光を集光照射してレーザー光のスポット径を2mm以上に大きく形成してスポット径に相当する領域のターゲット表面部分から叩き出すか蒸発させてターゲット構成粒子の蒸気噴流を発生させる場合、異相のみから蒸気噴流を発生させないようにするためである。なお、異相の粒径を0.5mm以下とするには、粒成長を抑えるために、焼成時の時間を短くするか、温度を低くすることで実現できる。
また、酸化物超電導薄膜6に対し、人工ピンを導入する場合、ターゲット11には、人工ピン材料が添加されていても良い。酸化物超電導薄膜に導入される人工ピン材料は、ペロブスカイト構造のABOなる一般式で示される物質が適用され、BaZrO(BZO)、BiFeO(BFO)を例示できるが、これらの他に、Y、SnO、BaSnOなどを適用することもできる。人工ピン材料は、酸化物超電導薄膜6に対し10質量%以下程度含有させることができる。
図1に示すように処理容器18において、ターゲット11を中心としてターゲット11の一側に位置する側壁18Aにターゲット11に対向するように照射窓30が形成されている。照射窓30の外方には集光レンズ32と反射ミラー33を介しアブレーション用のレーザー光源12が配置されている。
前記アブレーション用のレーザー光源12はエキシマレーザーあるいはYAGレーザー等のようにパルスレーザーとして良好なエネルギー出力を示すレーザー光源を用いることができる。レーザー光源12の出力として、例えば、エネルギー密度1〜5J/cm程度、パルス周波数200〜600Hzのレーザー光源を用いることができる。
なお、図1に示す成膜装置Aでは、処理容器18の内部であって、ターゲット11の斜め上方側にターゲット表面のレーザー光照射領域の温度を計測するための赤外放射温度計36が設置されている。
次に、前記ターゲット11の製造方法について説明する。
ターゲット11を製造するには、製造目的とする酸化物超電導薄膜6の組成に応じた原料を用意する。本実施形態で製造目的とする酸化物超電導薄膜は、REBaCu7−xなる組成比の酸化物超電導薄膜6であるので、REの化合物、Baの化合物、Cuの化合物を原料として用い、これらの原料を用いてターゲットを製造する。
REの化合物、Baの化合物、Cuの化合物として用いるのは、原料の入手しやすさ、コスト等を考慮すると、希土類元素の酸化物、Baの炭酸塩、Cuの酸化物が望ましい。中でも、YBaCu7−xなる組成比の酸化物超電導薄膜とする場合に用いることが望ましいのはY、BaCO、CuOである。また、GdBaCu7−xなる組成比の酸化物超電導薄膜とする場合に用いることが望ましいのはGd、BaCO、CuOである。
以下にY粉末と、BaCO粉末とCuO粉末を使用してターゲットを製造する場合を一例として説明する。
原料としてのY粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cuが1:2:3の割合となるように秤量して混合し、湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合する。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行なうことができる。
なお、前記の原料を秤量混合する場合、Y粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cuが1:2±0.1:3±0.2の範囲の割合となるように秤量して混合しても良い。
粉砕混合した粉末を酸素含有雰囲気において880〜960℃で数時間〜数10時間程度仮焼きする。酸素含有雰囲気とは10〜30%程度の酸素を含む雰囲気あるいは大気中で良い。
この後、仮焼物を再度湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合する。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行なうことができる。この粉砕混合物を乾燥し、目的のターゲット形状、例えば円盤状にプレス成型し、本焼成する。この本焼成は、900〜980℃で数時間〜数10時間程度、酸素含有雰囲気中で行なうことができ、この本焼成により目的のターゲットを得ることができる。
ここで、従来の一般的なターゲットの製造方法においては、前述の原料を秤量して混合した後、湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合を数時間〜数10時間程度行なった後、粉砕混合した粉末を酸素含有雰囲気において880〜960℃で数時間〜数10時間程度仮焼きする仮焼き工程を2回以上行なう。即ち、先の第1回目の仮焼き工程を行なった後、この仮焼き物を再度、湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合を数時間〜数10時間程度行なった後、粉砕混合した粉末を酸素含有雰囲気において880〜960℃で数時間〜数10時間程度仮焼きする第2の仮焼き工程を行う。この後、第2の仮焼き工程後の仮焼物を再度湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合する。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行なうことができる。この粉砕混合物を乾燥し、目的のターゲット形状、例えば円盤状にプレス成型し、本焼成する。この本焼成は、900〜980℃で数時間〜数10時間行なうことができ、従来は、2回の仮焼き後の本焼成により目的のターゲットを得ている。
従来の2回仮焼き工程を行う方法に比べ、1回のみの仮焼き工程とした場合、得られるターゲットには、先に説明した製造目的とするREBaCu7−xなる組成比の母相の他に、母相となっていない、原料が未反応となった結果としての異相が含まれる。例えば、Y粒子とBaCO粒子とCuO粒子、あるいは、これらが、2つ、あるいは2つ以上反応して前記母相と異なる組成比の相として生成する複合酸化物粒子が異相として存在する。
通常、1回のみの仮焼きを行って製造したターゲットを用い、基材上に拡散防止層と中間層とキャップ層を形成し、その上にレーザー蒸着法を用いて酸化物超電導薄膜を成膜しても、酸化物超電導薄膜中に異相が多数形成されるので、臨界電流密度の高い、優れた酸化物超電導薄膜を形成することはできない。
これに対し、前述の異相を含むターゲットであっても、図1〜図3に示す構成のレーザー蒸着装置Aを用いることで、臨界電流密度の高い、超電導特性の優れた酸化物超電導薄膜を製造できる。
例えば、レーザー蒸着装置Aにおいて、転向部材群16、17を利用してこれらの間に基材2の複数のレーンを構成し、ターゲット11を基材2の走行方向に前後させる並進運動か自転させるターゲット移動を行いつつレーザー蒸着し、パルスレーザー用のレーザー光源12から出射するレーザー光のパルス周波数を調整し、ターゲット11に対してレーザー光を走査する際のスキャン幅を調整するならば、臨界電流密度の優れた超電導特性の良好な酸化物超電導薄膜6を備えた酸化物超電導線材を製造できる。
以下に、図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aを用いて酸化物超電導薄膜6を製造する方法について更に詳しく説明する。
酸化物超電導薄膜6を成膜するには、基材2上に中間層3とキャップ層5を先に説明した種々の成膜法で形成したテープ状の基材を用いる。
このテープ状の基材を供給リール20から転向部材群16、17を介して巻取リール21に図2または図3に示すように巻き掛け、ターゲットホルダ25に上述の仮焼きを1回行うことで製造したターゲット11を装着した後、処理容器18の内部を減圧する。
目的の圧力に減圧後、レーザー光源12からパルス状のレーザー光をターゲット11の表面に集光照射する。
ターゲット11の表面にレーザー光源12からのパルス状のレーザー光を集光照射すると、ターゲット11の表面部分の構成粒子を叩き出し若しくは蒸発させて前記ターゲット11から構成粒子の噴流(プルーム)29を発生させることができ、レーン2Aを構成し走行しているテープ状の基材2のキャップ層5の上に目的の粒子堆積を行って、酸化物超電導薄膜6を成膜できる。
ここでレーザー光をターゲット11の表面に集光照射する場合、集光スポット径を2mm〜10mm程度の大きさとすることが好ましい。集光スポット径を2mm以上とすることにより、ターゲット11に仮に0.5mm以下の粒径の異相が含まれていても、異相の粒径より大きな範囲からまとめて蒸着粒子を飛ばすことができるので、異相のみから発生する蒸着粒子をキャップ層5上に堆積させるおそれを少なくできる。
前記異相を含むターゲット11を用いた場合、ターゲット11の表面の異相の部分にレーザー光が照射されると異相の成分がたたき出されるか蒸発されて粒子堆積がなされるが、基材2は転向部材群16、17の間の複数のレーン2Aを走行する間に成膜領域15を複数通過するので、酸化物超電導薄膜6は複数のレーン2Aを通過する度に少しずつ堆積された薄膜の総合堆積物として構成される。ここで、ターゲット11は往復前後移動されるか自転されながら、レーザー光が照射される部分が移動されているので、異相から発生された粒子が酸化物超電導薄膜6の中ではランダムに分散され、堆積される結果、異相から発生される堆積物の影響は少なくなり、酸化物超電導薄膜6は臨界電流密度の高い優れた酸化物超電導薄膜6となる。また、図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aによるレーザー光はパルスレーザー光であり、例えば300Hzの高い周波数で逐次発光されるので、1つのパルス光で仮に異相から、目的とずれた蒸着粒子を飛ばして堆積物を堆積させたとしても、次のパルス光では目的の組成比の堆積物を堆積できるので、平均化すると、全体として臨界電流密度の高い優れた酸化物超電導薄膜6となる。
以上のように異相を含むターゲット11を用いたとしても、図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aを用いて複数のレーン2Aにわたり、ターゲット11を移動させつつ酸化物超電導薄膜6を成膜するならば、臨界電流密度の高い優れた酸化物超電導薄膜6を備えた酸化物超電導線材1を製造できる。
よって、製造工程を簡略化して安価に製造したターゲット11を用い、図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aを用いて上述の方法で酸化物超電導線材Aを製造することで、臨界電流密度などの超電導特性に優れ、低コストの酸化物超電導線材Aを提供できる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
ハステロイC−276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ10mのテープ状の基材上に、アモルファスAlの拡散防止層(a−Alの厚さ80nm)と、アモルファスYのベッド層(a−Yの厚さ30nm)と、イオンビームアシスト蒸着法によるMgOの中間層(IBAD−MgOの厚さ10nm)と、PLD法によるCeOのキャップ層(厚さ300nm)を積層したテープ状の基材を用意した。この基材を用いて図1〜図3に示す構造のレーザー蒸着装置を用い、以下に説明する手順で作成したターゲットを用いてレーザー蒸着法により酸化物超電導薄膜を作製した。
本発明に係るターゲットを製造するには、まず、Y粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cu=1:2:3の割合になるように秤量し、φ100mmのアルミナポットにφ10mmのアルミナボールと溶媒としてヘキサンを用いて48時間粉砕混合した。この混合物を乾燥した後、920℃で酸素存在雰囲気中において仮焼きした。次にこの仮焼き物をφ100mmのアルミナポットにφ10mmのアルミナボールと溶媒としてヘキサンを用いて48時間粉砕混合し、乾燥させた後、φ100mmの金型を用いて一軸プレスにより円盤状に成型し、940℃で48時間、酸素存在下において本焼成して本発明に係るターゲットを得た。
また、対比のために、仮焼きを2回行う、従来の製造方法により、同様にターゲットを作製した。Y粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cu=1:2:3の割合になるように秤量し、φ100mmのアルミナポットにφ10mmのアルミナボールと溶媒としてヘキサンを用いて48時間粉砕混合した。この混合物を乾燥した後、920℃で酸素存在雰囲気中において仮焼きした。この仮焼き物を再度上述と同じアルミナポッドを用いて粉砕混合し、乾燥後、仮焼きする2次仮焼き処理を行い、2次仮焼き物を得た。
次にこの2次仮焼き物をφ100mmのアルミナポットにφ10mmのアルミナボールと溶媒としてヘキサンを用いて48時間粉砕混合し、乾燥させた後、φ100mmの金型を用いて一軸プレスにより円盤状に成型し、940℃で48時間、酸素存在下において本焼成して比較例のターゲットを得た。
なお、上述のターゲットを作製する場合、粉砕混合する時間を調節し、ターゲットに含まれる異相の量を調節した。異相の量については、2回仮焼きを繰り返す製造方法により異相量0%のターゲットを得ることができ、1回の仮焼きを行う製造方法において、48時間粉砕混合することで、異相割合〜20%のターゲットを作製し、24時間粉砕混合することで、異相割合〜40%のターゲットを作製し、8時間粉砕混合することで、異相割合〜60%のターゲットを作製し、1時間粉砕混合することで、異相割合〜80%のターゲットを作製し、0.5時間粉砕混合することで、異相割合〜100%のターゲットを作製した。なお、ターゲット中の異相の割合は、XRDによるリートベルト解析にて特定した。
図1〜図3に示す構造のレーザー蒸着装置を用いてYBaCu7−xなる組成比の酸化物超電導薄膜を成膜する条件は、レーザー光源として、エキシマレーザー(KrF:248nm)を用い、エネルギー密度3.0J/cm(300mJ)、T−S(ターゲット基材間距離):7cm、テープ基材の移動時の線速8m/h、パルスレーザーの繰り返し周波数300Hz、処理容器の酸素分圧PO=80mTorr、熱板によるテープ状基材の加熱温度970℃、ターゲット自転速度45rpm、ターゲット移動速度55mm/分、転向部材間に配置する基材のレーン数を5レーンとして、ターゲットの中央部において5レーンに対向する約6cm×6cmの正方形状の領域をレーザー光で走査する条件でキャップ層上に膜厚200nmになるように酸化物超電導薄膜の堆積を行った。
レーザー蒸着装置の比較例として、図5に示すように、ターゲット20を固定し、基材2の供給リール40から巻取リール41にレーンを1つ構成して巻き取るシングルレーン方式のレーザー蒸着装置を用い、前記各種ターゲットを用いて酸化物超電導薄膜を成膜する試験を行った。図5はレーザー蒸着装置の概要を示すが、このレーザー蒸着装置は、ターゲットが固定式であること、シングルレーンを構成して巻き取る構成であること、以外の基本構造は図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aと同等である。図5では処理容器とレーザー光源は記載を略し、レーザー光Bがターゲット20に照射されてプルームF1が生成され、キャップ層5上に酸化物超電導薄膜6が形成された状態を示している。
「試験例1」
2回仮焼きして異相を0%としたターゲットを図5に示す構成のレーザー蒸着装置にセットしてキャップ層5上に酸化物超電導薄膜6を成膜し、この上にAgの厚さ10μmの第1の安定化層と厚さ30μmの第2の安定化層を被覆した酸化物超電導線材を得た。
この酸化物超電導線材を液体窒素で冷却し、その臨界電流密度(Jc)を77Kにおいて測定したところ、Jc=3.1MA/cmの優れた値を示した。なお、得られた酸化物超電導薄膜の結晶をX線回折分析し、結晶軸分散の半値幅(FWHM:半値全幅)の値(Δφ)は、4.5゜であることを確認できた。
これに対し、異相割合20%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0.5MA/cm、Δφ=28.5゜を示し、異相割合40%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0.1MA/cm(Δφは測定不能)を示し、異相割合60%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0MA/cm(Δφは測定不能)を示し、異相割合70%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0MA/cm(Δφは測定不能)を示し、異相割合80%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0MA/cm(Δφは測定不能)を示し、異相割合100%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0MA/cm(Δφは測定不能)を示した。
以上の試験結果は、従来から、レーザー蒸着法により酸化物超電導薄膜を製造するためのターゲットは2回以上の仮焼きを行って製造するべきと認識されていた技術常識と合致する結果である。
「試験例2」
次に、前述の各ターゲットを用いて図1〜図3に示すレーザー蒸着装置Aを用いて上述の条件で酸化物超電導薄膜を成膜し、上述と同じAgの第1の安定化層とCuの第2の安定化層を積層して得た酸化物超電導線材の臨界電流密度を測定した。
この酸化物超電導線材の臨界電流密度を77Kにおいて測定したところ、Jc=4.2MA/cm、Δφ=3.4゜の優れた値を示した。
これに対し、異相割合20%以下のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=4.1MA/cm、Δφ=3.4゜を示し、異相割合40%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=4.2MA/cm、Δφ=3.5゜を示し、異相割合60%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=3.9MA/cm、Δφ=3.1゜を示し、異相割合70%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0.6MA/cm、Δφ=22.5゜を示し、異相割合80%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0.1MA/cm(Δφは測定不能)を示し、異相割合100%のターゲットを用いて製造した酸化物超電導線材はJc=0MA/cm(Δφは測定不能)を示した。
以上の試験結果から、異相が含まれているターゲットであっても、レーザー蒸着装置Aを用いてマルチレーンを構成するように移動させている間にパルスレーザーによりターゲットからプルームを発生させつつ成膜することで、シングルレーンの装置を用いてレーザー蒸着する場合よりも優れた臨界電流密度と優れた結晶配向性の酸化物超電導薄膜を形成できることが明らかとなった。
また、試験例1の結果と試験例2の結果を対比すると、ターゲットに異相が含まれているにも関わらず、臨界電流密度Jcの値とΔφの値が向上することがわかった。
即ち、図5に示すシングルレーンタイプのレーザー蒸着装置で酸化物超電導薄膜を製造した試料の試験結果と、図1〜図3に示すマルチレーンタイプのレーザー蒸着装置で酸化物超電導薄膜を製造した試料の試験結果を対比すると、ターゲットに異相が含まれているにも関わらず、異相割合0〜60%の試料で臨界電流密度Jcと結晶軸分散の半値幅Δφが向上していることがわかる。これらの試料の相違点は、原料を粉砕混合する工数の違いである。
原料を粉砕混合する工数が多い場合、粉砕混合するための装置で複数回処理することになるので、粉砕、混合の際に装置から不要な元素の混入がなされ、不純物が混入する割合が増加する。例えば、ボールミル装置のボールピポットを構成するAlの混入が想定される。これら不要元素の混入を防止できることは、少ない工数で作成したターゲットを用いた効果と考えられる。
なお、各試験例において得られた酸化物超電導薄膜は組成分析を行うといずれもY:Ba:Cuの組成比は1:2:3であり、試験例1の試料と試験例2の試料は、工数の違いによって、組成のずれは生じていないこともわかった。
従って、上述の製造方法によれば、酸化物超電導薄膜を製造するためのレーザーアブレーション用ターゲットの製造工数を削減でき、製造するべき酸化物超電導薄膜の超電導特性も向上できることがわかった。
「試験例3」
次に、実施例1で用いた異相割合20%のターゲットを製造する場合、本焼成時の焼成温度を960℃、930℃、900℃として、それぞれ異相の粒径を0.8〜1mmに調整したターゲットと、異相の粒径を0.5〜0.8mmに調整したターゲットと、異相の粒径を0.5mm未満に調整したターゲットを作製した。
各ターゲットを用いて実施例1と同等条件にてYBaCu7−xなる組成比の酸化物超電導薄膜をレーザーアブレーションにより成膜し、この酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導線材について、試験結果1と同等条件にて臨界電流密度Jcの測定を行った。なお、この試験においてレーザー光のスポット径は5mmに設定している。
異相の粒径 0.8〜1mmのターゲット:Jc=0.5MA
異相の粒径 0.5〜8mmのターゲット:Jc=2.5MA
異相の粒径 0.5mm以下のターゲット:Jc=4.0MA
異相無しのターゲット: Jc=4.1MA
以上の試験結果から、異相の粒径については、異相の粒径を0.5mm以下に設定することにより優れた臨界電流密度を示す酸化物超電導線材を得ることができた。
「試験例4」
また、異相の粒径を1mmに調整したターゲットを複数用意し、これらに対し、レーザー光のスポット径を10mm、5mm、2mm、1mmにそれぞれ調整してレーザーアブレーションにより成膜した場合に得られた酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導線材について、試験例1と同等条件にて臨界電流密度Jcの測定を行った。
レーザースポット径:10mm:Jc=4.0MA
レーザースポット径: 5mm:Jc=4.1MA
レーザースポット径: 2mm:Jc=4.0MA
レーザースポット径: 1mm:Jc=0.9MA
以上の試験結果から、レーザー光のスポット径については、異相の粒径を1mmに設定したターゲットを用いた場合、レーザースポット径2〜10mmの範囲において優れた臨界電流密度を示す酸化物超電導線材を得ることができた。
「試験例5」
試験例1で用いた異相割合20%のターゲットを製造する場合、Y粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cu=1:2:3の割合になるように秤量するのに代えて、Baの割合を1.7、1.8、1.9、2.1、2.2、2.3のいずれかの割合として複数のターゲットを作製した。
これらのターゲットに対し、試験例1の条件と同等条件にてレーザーアブレーションにより成膜した場合に得られた酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導線材について、試験結果1と同等条件にて臨界電流密度Jcの測定を行った。
Y:Ba:Cu=1:1.7:3のターゲットによる成膜:Jc=0.5MA
Y:Ba:Cu=1:1.8:3のターゲットによる成膜:Jc=3.2MA
Y:Ba:Cu=1:1.9:3のターゲットによる成膜:Jc=3.9MA
Y:Ba:Cu=1:2.1:3のターゲットによる成膜:Jc=3.9MA
Y:Ba:Cu=1:2.2:3のターゲットによる成膜:Jc=3.0MA
Y:Ba:Cu=1:2.3:3のターゲットによる成膜:Jc=0.8MA
以上の試験結果から、原料を混合する割合によるターゲット全体の組成比については、Y:Ba:Cu=1:1.8〜2.2:3の範囲であるならば、優れた臨界電流密度を示す酸化物超電導線材を製造できることが判明した。
「試験例6」
試験例1で用いた異相割合20%のターゲットを製造する場合、Y粉末と、BaCO粉末とCuO粉末をY:Ba:Cu=1:2:3の割合になるように秤量するのに代えて、Cuの割合を2.4、2.6、2.8、3.2、3.4、3.6のいずれかの割合として複数のターゲットを作製した。
これらのターゲットに対し、試験例1の条件と同等条件にてレーザーアブレーションにより成膜した場合に得られた酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導線材について、試験結果1と同等条件にて臨界電流密度Jcの測定を行った。
Y:Ba:Cu=1:2:2.4のターゲットによる成膜:Jc=0.4MA
Y:Ba:Cu=1:2:2.6のターゲットによる成膜:Jc=3.1MA
Y:Ba:Cu=1:2:2.8のターゲットによる成膜:Jc=3.8MA
Y:Ba:Cu=1:2:3.2のターゲットによる成膜:Jc=3.8MA
Y:Ba:Cu=1:2:3.4のターゲットによる成膜:Jc=3.1MA
Y:Ba:Cu=1:2:3.6のターゲットによる成膜:Jc=1.2MA
以上の試験結果から、原料を混合する割合によるターゲット全体の組成比については、Y:Ba:Cu=1:2:2.6〜3.4の範囲であるならば、優れた臨界電流密度を示す酸化物超電導線材を製造できることが判明した。
また、試験例5、6の試験結果を総合すると、本発明に係るターゲットの組成比についてY:Ba:Cuの比率において、YBa1.7〜2.3Cu2.4〜3.67−xなる組成比の範囲、換言すると、YBaCu7−xなる組成比で示した場合、Baの原子数の比を示すbが2±0.3の範囲であり、Cuの原子数の比を示すcが3±0.6の範囲であるならば、酸化物超電導薄膜を得ることができると判断できる。
なお、より好ましくは、本発明に係るターゲットの組成比についてY:Ba:Cuの比率において、YBa1.8〜2.2Cu2.6〜3.47−xなる組成比の範囲、換言すると、YBaCu7−xなる組成比で示した場合、Baの原子数の比を示すbが2±0.2の範囲であり、Cuの原子数の比を示すcが3±0.4の範囲であるならば、高い臨界電流密度を得る上で望ましいと判断できる。
A…レーザー蒸着装置、1…酸化物超電導線材、2…基材、2A…レーン、4…中間層、5…キャップ層、6…酸化物超電導薄膜、7…第1の安定化層、8…第2の安定化層、11…ターゲット、12…レーザー光源、15…成膜領域、16、17…転向部材群、16a、17a…転向リール、18…処理容器、19…排気手段、20…供給リール、21…巻取リール、23…ヒーターボックス、25…ターゲットホルダ、26…支持ロッド、27…加熱装置、29…噴流(プルーム)。

Claims (9)

  1. 一般式REaBabCucOx(但し、REはYおよび/または希土類元素の内から選択される1つ以上の元素)で表記されるRE系酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物とBa化合物とCu化合物を混合し、粉砕し、仮焼きし、成型後に本焼成して得られるレーザーアブレーション用ターゲットであり、
    成膜対象とする基材がテープ状であって、複数の平行なレーンに沿って移動される間に前記各レーンの基材に対しレーザー蒸着を行うためのレーザーアブレーション用ターゲットであって、
    REとBaとCuとOの組成比が超電導特性を示す酸化物超電導体として必要な比率を有する母相と、この母相と異なる組成比か、この母相と異なる組成の異相とを有し、前記異相が前記母相に対して60%以下であり、前記異相が構成する粒子の粒径が0.5mm以下であることを特徴とするレーザーアブレーション用ターゲット。
  2. 前記母相と異なる組成の異相が、REの酸化物粒子、Baの酸化物粒子、Cuの酸化物粒子、あるいはREとBaとCuのうち、2つ以上からなる複合酸化物粒子であることを特徴とする請求項1に記載のレーザーアブレーション用ターゲット。
  3. 前記一般式REaBabCucOxにおいてREの原子数の比を示すaが1であり、Baの原子数の比を示すbが2±0.3の範囲であり、Cuの原子数の比を示すcが3±0.6の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザーアブレーション用ターゲット。
  4. 人工ピン材料が10質量%以下含有されてなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザーアブレーション用ターゲット。
  5. 一般式REaBabCucOx(但し、REはYおよび/または希土類元素の内から選択される1つ以上の元素)で表記されるRE系酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物とBa化合物とCu化合物を混合し、粉砕し、仮焼きし、成型後に本焼成して得られ、
    REとBaとCuとOの組成比が超電導特性を示す酸化物超電導体として必要な比率を有する母相と、この母相と異なる組成比か、この母相と異なる組成の異相とを有し、前記異相が前記母相に対して60%以下であり、前記異相が構成する粒子の粒径が0.5mm以下であることを特徴とするレーザーアブレーション用ターゲットを用いて行う酸化物超電導線材の製造方法であり、
    テープ状の基材上に中間層とキャップ層を形成した積層体に対し、
    該積層体を複数のレーンを構成するように移動させ、これら複数のレーンに対向するように前記ターゲットを配置し、該ターゲットにレーザー光を集光照射して発生させたターゲット構成粒子を前記複数のレーンにおいて各レーンのキャップ層上に蒸着することにより酸化物超電導薄膜を成膜することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記ターゲットにレーザー光を集光照射する場合、前記異相の粒径より2倍以上大きなレーザー光の集光スポット径としながら成膜することを特徴とする請求項5に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 前記ターゲットにレーザー光を集光照射する場合、前記ターゲットと前記レーザー光の少なくとも一方を移動させて前記ターゲットの表面に沿って前記レーザー光の集光照射位置を変更しながら成膜することを特徴とする請求項5または6に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 前記ターゲットにレーザー光を集光照射する場合、パルスレーザー光を用いることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  9. 請求項5〜8のいずれか一項に記載された製造方法により得られたことを特徴とする酸化物超電導線材。
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