JP2013129584A - 亜鉛化合物被覆炭素材及びその製造方法、並びに該亜鉛化合物被覆炭素材を用いた複合材 - Google Patents

亜鉛化合物被覆炭素材及びその製造方法、並びに該亜鉛化合物被覆炭素材を用いた複合材 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁性及び熱伝導性に優れ、且つ、剥離しにくい被覆層を有する炭素材を低コストで提供することを目的とする。
【解決手段】
炭素材の少なくとも一部(特に全面)の上に、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を介して、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む被覆層が形成された、亜鉛化合物被覆炭素材。当該被覆層は、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を複数有していてもよい。このような亜鉛化合物被覆炭素材は、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物及び炭素材を、溶媒中で混合し、前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を炭素材表面に形成する工程、及び吸着層を有する炭素材を、酸化亜鉛前駆体を含む溶液と混合し、前記吸着層の上に酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する工程を含む方法により、得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、亜鉛化合物被覆炭素材及びその製造方法、並びに該亜鉛化合物被覆炭素材を用いた複合材に関する。
ナノスケールカーボンチューブ、グラフェン、黒鉛、炭素繊維等の炭素材は、電気伝導性、熱伝導性、機械的強度及び熱安定性に優れるため、その応用開発研究が盛んに行われている。
近年電子機器の高集積化に伴って発生する熱を効果的に除く熱対策の重要性が高まっている。熱対策の手段としては、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、グラファイト等の熱伝導率の高い無機フィラーを配合した樹脂複合材を熱源近傍に配置して熱を他所へ放熱すること等が行われている。無機フィラーの中でグラファイト、炭素繊維等のは熱伝導率が高いため、複合材の高熱伝導化を可能とするが、これらは複合材に導電性を付与してしまうために電子回路周辺に用いることが困難である。
そこで、炭素材表面をシリカ、炭化ケイ素等で被覆して絶縁化することが行われている。被覆方法としては、従来より熱化学的気相析出法等の方法が用いられているが、例えば特許文献1では、ゾルゲル法を用いて炭素繊維表面にシリカ被覆層を形成し、さらにこれを高温で焼結して炭化ケイ素層を形成する方法が提案されている。
特開2007−107151号公報 国際公開第00/40509号パンフレット 特許第3355442号 特開2002−338220号公報 特公平1−27968号公報 特開平1−242691号公報
上記のような被覆方法により形成されたシリカ層は炭素材表面との親和性が低いためにシリカ層が炭素材から剥離しやすいという問題がある。また、シリカ自体の熱伝導率が低いためにシリカ被覆炭素材の熱伝導性が低下するという問題がある。焼成して炭化ケイ素化すれば剥離、熱伝導性等の問題は解消されると考えられるが、高温プロセスはコストアップの要因となる。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、絶縁性及び熱伝導性に優れ、且つ、剥離しにくい被覆層を有する炭素材を低コストで提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を介することで、炭素材の上に容易に酸化亜鉛層を形成できること、この被覆層は、剥離しにくい上に、得られる材料は高抵抗で熱伝導性に優れることを見出した。なお、この酸化亜鉛層は、吸着層の上に、直接、又は水酸化亜鉛層を経由して形成させることができる。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、完成したものである。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.炭素材の少なくとも一部の上に、
9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を介して、
酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む被覆層が形成された、亜鉛化合物被覆炭素材。
項2.前記被覆層が、炭素材の全面に、前記吸着層を介して形成されている、項1に記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
項3.前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物が、一般式(1):
[式中、Z及びZは同じか又は異なり、それぞれ芳香族炭化水素環;R1a及びR1bは同じか又は異なり、それぞれアルキレン基;R2a及びR2bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;R3a及びR3bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;m及びnは同じか又は異なり、それぞれ0以上の整数;p及びqは同じか又は異なり、それぞれ1以上の整数;h1及びh2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数;j1及びj2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数である。]
で示されるフルオレン化合物、又はその塩酸塩、アルカリ金属塩、有機アンモニウム塩、若しくはエチレンオキシド付加物である、項1又は2に記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
項4.前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物が、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシナフチル)フルオレン;これらの塩酸塩、アルカリ金属塩若しくは有機アンモニウム塩;並びに9,9−ビス(4−ヒドロフェニル)フルオレン・エチレンオキシド付加物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1〜3のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
項5.前記炭素材が、単層若しくは多層のカーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛及び炭素繊維よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1〜4のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
項6.前記被覆層が、複数の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する、項1〜5のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
項7.前記被覆層が、炭素材の上に前記吸着層を介して形成される第一の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層の上に、ポリアニオンを有する有機層を介して第二の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層が形成された構造を有する、項6に記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
項8.200〜1000℃での熱処理物である、項1〜7のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
項9.項1〜8のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材の製造方法であって、
(1)9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物及び炭素材を、水性溶媒中で混合し、前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を炭素材表面に形成する工程、及び
(2−1)工程(1)で形成された吸着層を有する炭素材を、酸化亜鉛前駆体を含む溶液と混合し、前記吸着層の上に酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する工程
を備える、製造方法。
項10.さらに、
(2−2)酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する炭素材を、ポリアニオンを有する溶媒と混合し、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層の上にポリアニオンを有する有機層を形成する工程、及び
(2−3)工程(2−2)で形成された有機層を有する炭素材を、酸化亜鉛前駆体を含む溶液と混合し、前記有機層の上に、さらに酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する工程
を備える、項9に記載の製造方法。
項11.さらに、
(3)200〜1000℃で熱処理する工程
を備える、項9〜10のいずれかに記載の製造方法。
項12.項1〜8のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材、又は項9〜11のいずれかに記載の製造方法により得られる亜鉛化合物被覆炭素材と、樹脂とを含む複合材。
項13.前記樹脂がポリカーボネートである、項12に記載の複合材。
本発明によれば、剥離しにくい被覆層を有し、且つ、絶縁性及び熱伝導性に優れる亜鉛化合物被覆炭素材を低コストで提供することができる。
さらに、この亜鉛化合物被覆炭素材を用いて樹脂との複合材を製造すれば、耐久性に優れ、絶縁性及び熱伝導性に優れた複合材を得ることができる。つまり、この複合材を電子回路周辺に用いることが可能である。
実施例で使用した炭素材であるメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)の表面状態を示すSEM(走査型電子顕微鏡)像である。 実施例1の亜鉛化合物被覆炭素材の表面状態を示すSEM(走査型電子顕微鏡)像である。 実施例3の亜鉛化合物被覆炭素材の表面状態を示すSEM(走査型電子顕微鏡)像である。 実施例4の亜鉛化合物被覆炭素材の表面状態を示すSEM(走査型電子顕微鏡)像である。 実施例4の亜鉛化合物被覆炭素材のEDXの結果を示す図である。 粒子破壊後の実施例4の亜鉛化合物被覆炭素材の表面状態を示すSEM(走査型電子顕微鏡)像である。
1.亜鉛化合物被覆炭素材
本発明の亜鉛化合物被覆炭素材は、炭素材の少なくとも一部の上に、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を介して、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む被覆層が形成されている。
酸化亜鉛は、電気伝導度が低いために絶縁性に優れる一方、熱伝導性にも優れる。しかし、酸化亜鉛は、通常炭素材との親和性が低く、強固に吸着しにくいため、被覆層を形成しても剥離しやすい。
本発明では、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を介することで、炭素材上に強固に吸着し、剥離しにくい酸化亜鉛層を形成することができる。
このように、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材のなかでも、酸化亜鉛を含む被覆層を有する材料は、絶縁性及び熱伝導度に優れるため、電子回路周辺に配置して電子機器の放熱用途等に好適に用いることができる。
<炭素材>
本発明で使用する炭素材としては特に制限はなく、ナノスケールカーボンチューブ、グラフェン、黒鉛、炭素繊維等が使用できる。
(1)ナノスケールカーボンチューブ
ナノスケールカーボンチューブとしては、例えば、
(i)単層カーボンナノチューブ、
(ii)アモルファスナノスケールカーボンチューブ、
(iii)ナノフレークカーボンチューブ、又は入れ子構造の多層カーボンナノチューブ
(iv)上記(iii)のカーボンチューブと炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に炭化鉄又は鉄が充填されている鉄−炭素複合体
等が例示できる。
カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面又はグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質であり、その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じた形状のカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブと呼ばれている。一方、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているカーボンナノチューブは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。本発明では、これら単層又は多層カーボンナノチューブをいずれも使用できる。
単層カーボンナノチューブの形状としては、特に制限はない。具体的な形状としては、平均直径(外径)は、0.4〜10nm程度が好ましく、0.7〜5nm程度がより好ましく、0.7〜2nm程度が特に好ましい。また、平均長さは、1〜500μm程度が好ましく、1〜100μm程度がより好ましく、1〜20μm程度が特に好ましい。
多層カーボンナノチューブの形状としては、特に制限はない。具体的な形状としては、平均直径は、1〜100nm程度が好ましく、1〜50nm程度がより好ましく、1〜40nm程度が特に好ましい。また、平均長さは、1〜500μm程度が好ましく、1〜100μm程度がより好ましく、1〜20μm程度が特に好ましい。
アモルファスナノスケールカーボンチューブ
本発明で使用できるアモルファスナノスケールカーボンチューブは、特許文献2〜3に記載されており、カーボンからなる主骨格を有し、直径が0.1〜1000nmであり、アモルファス構造を有し、且つ、直線状の形態を有し、X線回折法(入射X線:CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される炭素網平面(002)の平面間隔(d002)が3.54Å以上、特に3.7Å以上であり、回折角度(2θ)が25.1度以下、特に24.1度以下であり、2θバンドの半値幅が3.2度以上、特に7.0度以上であるナノスケールカーボンチューブである。
アモルファスナノスケールカーボンチューブは、アモルファス構造(非晶質構造)を有するナノスケールのカーボンナノチューブで、中空直線状であり、細孔が高度に制御されている。その形状は、主に円柱、四角柱などであり、先端の少なくとも一方が、キャップを有していない(開口している)場合が多い。先端が閉口している場合には、形状がフラット状である場合が多い。
該アモルファスナノスケールカーボンチューブの外径は、特に制限されないが、通常1〜1000nm程度が好ましく、1〜200nm程度がより好ましく、1〜100nm程度が特に好ましい。そのアスペクト比(チューブの長さ/直径)は2倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。
ここで、「アモルファス構造」とは、規則的に配列した炭素原子の連続的な炭素層からなる黒鉛質構造ではなく、不規則な炭素網平面からなる炭素質構造を意味し、多数の微細なグラフェンシートが不規則に配列し、原子の配列が不規則になっている。代表的な分析手法である透過型電子顕微鏡による像からは、アモルファスナノスケールカーボンチューブは、炭素網平面の平面方向の広がりがアモルファスナノスケールカーボンチューブの直径の1倍より小さい。このように、アモルファスナノスケールカーボンチューブは、その壁部が黒鉛構造ではなく多数の微細なグラフェンシート(炭素網面)が不規則に分布したアモルファス構造を有しているため、最外層を構成する炭素網面は、チューブ長手方向の全長にわたって連続しておらず、不連続となっている。特に、最外層を構成する炭素網面の長さは20nm未満が好ましく、特に5nm未満が好ましい。
非晶質炭素は一般的にはX線回折を示さないが、アモルファスナノスケールカーボンチューブはブロードな反射を示す。黒鉛質構造では、炭素網平面が規則的に積み重なっているので、炭素網平面間隔(d002)が狭くなり、ブロードな反射は高角側(2θ)に移行して、次第に鋭くなり(2θバンドの半値幅が狭くなり)、d002回折線として観測できるようになる(黒鉛的位置関係で規則正しく積み重なっている場合はd002=3.354Åである)。
これに対し、非晶質構造は、上記のように一般的にはX線による回折を示さないが、アモルファスナノスケールカーボンチューブは、部分的に非常に弱い干渉性散乱を示す。X線回折法(入射X線=CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定されるアモルファスナノスケールカーボンチューブの理論的な結晶学的特性は、以下の様に規定される:炭素網平面間隔(d002)は、3.54Å以上が好ましく、3.7Å以上がより好ましい;回折角度(2θ)は、25.1度以下が好ましく、24.1度以下がより好ましい;前記2θバンドの半値幅は、3.2度以上が好ましく、7.0度以上がより好ましい。
典型的には、アモルファスナノスケールカーボンチューブは、X線回折による回折角度(2θ)が18.9〜22.6度の範囲内にあり、炭素網平面間隔(d002)は3.9〜4.7Åの範囲内にあり、2θバンドの半値幅は7.6〜8.2度の範囲内にあることがより好ましい。
アモルファスナノスケールカーボンチューブの形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。すなわち、透過型電子顕微鏡によるアモルファスナノスケールカーボンチューブ像の長さをLとし、そのアモルファスナノスケールカーボンチューブを伸ばした時の長さをLとした場合に、L/Lが0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
鉄−炭素複合体及びナノフレークカーボンチューブ
鉄−炭素複合体は、特許文献4に記載されており、
(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと、
(b)炭化鉄又は鉄と
からなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に(b)の炭化鉄又は鉄が充填されている。即ち、チューブ内空間部の100%の範囲に完全に充填されているものではなく、上記金属又は合金がそのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に充填されている(即ち、部分的に充填されている)。壁部は、パッチワーク状ないし張り子状(いわゆるpaper mache状)のナノフレークカーボンチューブ、又は上述の多層カーボンナノチューブである。
なお、「ナノフレークカーボンチューブ」とは、フレーク状の黒鉛シートが複数枚(通常は多数)パッチワーク状ないし張り子状(paper mache状)に集合して構成されている、黒鉛シートの集合体からなる炭素製チューブを指す。
(2)グラフェン
グラフェンとしては、特に制限はなく、公知又は市販品を使用することができる。なお、このグラフェンを多層積層させたものは後述の黒鉛を形成し、チューブ状に形成したものは前述のナノスケールカーボンチューブを形成する。
(3)黒鉛
黒鉛としては、特に制限はなく、天然黒鉛及び人造黒鉛のいずれも使用できる。
黒鉛の形状は特に制限されず、例えば、球状、楕円状、方形等の他、鱗片、薄片状等の板状、ロッド状、無定形状等であってもよい。これらの形状のうち、熱伝導の異方性がない観点から、球状又は楕円状がより好ましく、球状が特に好ましい。
球状の黒鉛(球状黒鉛粒子)には、メソカーボンマイクロビーズ(以下、「MCMB」と言うこともある)、球状化された天然及び人造黒鉛、フリュードコークス、ギルソナイトコークス等が含まれる。MCMBは、高度に結晶が配向し、黒鉛類似の構造を有する球状体(メソフェーズ小球体)である。MCMBの平均粒径は、通常、5〜50μm程度が好ましく、10〜40μm程度がより好ましく、10〜25μm程度がさらに好ましい。MCMBは、コールタール、コールタールピッチ、重質油等の歴青物を1000〜2800℃程度で加熱することにより生成することができる。このようなMCMBの製造方法は、例えば、特許文献5〜6等に記載されている。
(4)炭素繊維
炭素繊維としては、グラファイト層で覆われた構造を有するものが好ましく、気相成 長法による炭素繊維(VGCF)等が好ましい。
これらの炭素材のなかでも、後述する9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物をより吸着させやすい点から、黒鉛又は黒鉛と類似の表面を有する炭素材が好ましい。具体的には、単層若しくは多層のカーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛、炭素繊維等が好ましく、黒鉛がより好ましく、球状黒鉛が特に好ましい。
<吸着層>
本発明において、吸着層は、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含み、且つ、前述した炭素材上に形成される層である。
9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物は、溶媒中で、前述した炭素材の表面に吸着する。この9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を介することで、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を炭素材に吸着しやすくすることができる。
9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物としては、公知又は市販品を用いることができ、特に制限されないが、一般式(1):
[式中、Z及びZは同じか又は異なり、それぞれ芳香族炭化水素環;R1a及びR1bは同じか又は異なり、それぞれアルキレン基;R2a及びR2bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;R3a及びR3bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;m及びnは同じか又は異なり、それぞれ0以上の整数;p及びqは同じか又は異なり、それぞれ1以上の整数;h1及びh2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数;j1及びj2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数である。]
で示されるフルオレン化合物、又はその塩酸塩、アルカリ金属塩、有機アンモニウム塩、若しくはエチレンオキシド付加物が好ましい。
及びZは、炭素数が6〜14の芳香族炭化水素環が好ましく、炭素数が6〜14の単環又は縮合環の芳香族炭化水素環がより好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、インデン環等が挙げられ、ベンゼン環がより好ましい。Z及びZは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
1a及びR1bは、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。R1a及びR1bは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、R1a同士、R1b同士が同一であっても異なっていてもよい。また、アルキレン基R1a及びR1bの種類は係数m及びnの数によっても異なっていてもよい。好ましいアルキレン基は、炭素数が2〜3のアルキレン基(特にエチレン基及びプロピレン基)であり、通常、エチレン基が好ましい。
2a及びR2bは、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基等、アリール基、アラルキル基等)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基等が好ましい。
アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜8(特に1〜6)のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
シクロアルキル基としては、炭素数5〜10(好ましくは5〜8、特に5〜6)のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が好ましい。
アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、アルキルフェニル基(アルキル:前述したもの;トリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基等のメチルフェニル基等)、キシリル基等のジメチルフェニル基等)、ナフチル基等が好ましい。
アラルキル基としては、前述したアリール基と前述したアルキル基を有する炭素数7〜14のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基等が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜8(特に1〜6)のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が好ましい。
シクロアルコキシ基としては、炭素数5〜10のシクロアルコキシ基が好ましく、具体的には、シクロへキシルオキシ基等が好ましい。
アリールオキシ基としては、前述したアリール基を有する炭素数6〜10のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ基等が好ましい。
アラルキルオキシ基としては、前述したアリール基と前述したアルキルオキシ基を有する炭素数7〜14のアラルキルオキシ基が好ましく、具体的には、ベンジルオキシ基等が好ましい。
アシル基としては、炭素数1〜6のアシル基が好ましく、具体的には、アセチル基等が好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基等が好ましい。
ヒドロキシアリール基としては、前述したアリール基を有する炭素数6〜10のヒドロキシアリール基が好ましく、具体的には、ヒドロキシフェニル基、クレゾール基(メチルヒドロキシフェニル基)等が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が好ましい。
置換アミノ基としては、上述した官能基を置換基に有するものが好ましく、具体的には、ジアルキルアミノ基等が好ましい。
置換基R2a及びR2bの置換数であるh1及びh2は、通常0〜4(特に0〜2)程度の整数が好ましい。置換基R2a及びR2bの置換位置も特に制限されない。好ましい置換基R2a及びR2bは、炭素数が1〜6のアルキル基(特に、メチル基等の炭素数が1〜4のアルキル基)、炭素数が6〜10のアリール基(例えば、フェニル基等の炭素数が6〜8のアリール基)等であり、好ましい置換数h1及びh2は0〜2(特に0又は1)程度の整数である。
3a及びR3bとしては、前記例示の炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基等が挙げられる。
置換基R3a及びR3bの置換数であるj1及びj2は、通常0〜4(特に0〜2(dさらには0又は1))程度の整数が好ましい。置換基R3a及びR3bの置換位置も特に制限されない。好ましい置換基R3a及びR3bは、炭素数1〜6のアルキル基(特に、メチル基等の炭素数が1〜4のアルキル基)であり、好ましい置換数j1及びj2は、0又は1(特に0)である。
オキシアルキレン単位の繰り返し数であるm及びnは、0以上の整数であり、通常0〜10、好ましくは0〜7、さらに好ましくは0〜5、特に0〜3、さらには0又は1程度の整数である。また、p及びqは、1以上の整数であり、通常1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1程度の整数である。
代表的な一般式(1)で表される化合物には、m及びnが0である化合物、すなわち、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類が含まれる。
前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類には、前記一般式(1)において、Z1及びZ2がベンゼン環であり、p及びqが1である9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;Z1及びZ2がナフタレン環であり、p及びqが1である9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類;Z1及びZ2がベンゼン環であり、p及びqが2以上である9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類等が含まれる。
具体的には、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類は、R2a及びR2bが炭化水素基であり、h1及びh2が0又は1である化合物が好適に使用される。9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)フルオレン等の9,9−ビス(アルキルヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C1−6アルキルヒドロキシフェニル)フルオレン等);9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレン等の9,9−ビス(ジアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(ジC1−6アルキルヒドロキシフェニル)フルオレン等);9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン等の9,9−ビス(シクロアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C5−10シクロアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン等);9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン等の9,9−ビス(アリールヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C6−10アリールヒドロキシフェニル)フルオレン等)等が挙げられる。
また、前記9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類には、前記例示の9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のフェニル基がナフチル基である9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類、(例えば9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−ヒドロキシナフチル)]フルオレン等の9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン等)等が含まれる。
さらに、前記9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類には、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類(9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類)に対応するフルオレン類、例えば、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン(9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスカテコールフルオレン)等);9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレン等の9,9−ビス(アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C1−4アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレン等)等の9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類が含まれる。
なお、前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類には、例えば、前記フルオレン類(すなわち、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類等)において、m及びnが1以上である化合物、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン、BPEF)等の9,9−ビス[4−(ヒドロキシC2−3アルコキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(ビスクレゾールエタノールフルオレン、BCEF)等の9,9−ビス(アルキルヒドロキシC2−3アルコキシフェニル)フルオレン等も含まれる。
これらの前記一般式(1)で表される化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。前記式(1)で表される化合物のうち、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシナフチル)フルオレン等が好ましい。
本発明で使用するフルオレン類は、上記した化合物以外にも、上記の化合物の塩酸塩、アルカリ金属塩、有機アンモニウム塩、若しくはエチレンオキシド付加物等を含む。
アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
有機アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
これらのフルオレン類のなかでも、コスト、有毒性及び環境面の観点から、溶媒として水性溶媒を使用することが好ましいため、水性溶媒と親和性のある、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する水性化合物を使用することが好ましい。
また、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物は、正電荷を帯びていて、負電荷を有する表面に吸着しやすい。一方、本発明において、吸着層を構成する化合物を、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する塩とした場合には、当該化合物が有するフェノール性水酸基が他のカチオンと塩を形成することでアニオンを形成していることから、吸着層の表面はアニオンを有している。このことから、亜鉛化合物をより吸着させやすいという理由から、塩酸塩、アルカリ金属塩、有機アンモニウム塩等が好ましく、有機アンモニウム塩がより好ましい。
<被覆層>
本発明において、被覆層は、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含み、且つ、炭素材の少なくとも一部の上に、上述した吸着層を介して形成される。
酸化亜鉛は、絶縁性及び熱伝導性に優れるため、酸化亜鉛で被覆することで、炭素材の熱伝導性を維持したまま電気伝導度を低下させることができる。特に、本発明では、酸化亜鉛は上述の吸着層に強固に吸着しているため、剥離し難い。これにより、電子回路周辺に用いることが可能となる。
水酸化亜鉛は、加熱することで容易に酸化亜鉛に変換することができる。例えば、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材の被覆層が水酸化亜鉛を含んでいる場合、必要に応じて30〜400℃程度、特に50〜300℃程度で熱処理することで、水酸化亜鉛を酸化亜鉛に変換することができる。これにより、炭素材の熱伝導性を維持したまま電気伝導度を低下させることができる。
より確実に電気伝導度を低下させるためには、炭素材の上の被覆層が形成されている箇所を増大させることが好ましい。具体的には、炭素材の表面積の40%以上、さらには60%以上の上に被覆層が形成されることが好ましい。特に、炭素材の全面の上に、被覆層が形成されていることが最も好ましい。
本発明において、被覆層が、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を1つのみ有している場合、当該酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層は、帯状のシートとして析出するため、炭素材を完全に覆うことができない場合がある。そこで、炭素材を完全に被覆層で覆うため、被覆層は、複数の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有していてもよい。
被覆層中に複数の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を含ませる場合、より剥離し難くするため、第一の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層の上に、ポリアニオンを有する有機層を介して第二の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成すればよい。また、第三、第四の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する場合も同様に、ポリアニオンを有する有機層を介して形成すればよい。
このようなポリアニオンとしては、分子中に複数のアニオン性基を有するものであれば利用でき、例えば、シュウ酸、ポリアクリル酸又はその塩、アクリル酸ユニットを含むポリアクリレート、スチレン-無水マレイン酸共重合体またはその塩、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸塩等を挙げることができる。
本発明において、被覆層には、上記の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛、並びにポリアニオン以外にも、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等の親水性高分子等を含ませていてもよい。これらの成分の含有量ryは、ポリアニオンの100重量%以下、特に50重量%以下が好ましい。
また、被覆層の厚みは、電気絶縁性の点から10nm以上、さらに機械的強度を考慮すると30nm以上が好ましい。
2.亜鉛化合物被覆炭素材の製造方法
本発明の亜鉛化合物被覆炭素材は、特に制限されるわけではないが、例えば、
(1)9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物及び炭素材を、溶媒中で混合し、前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を炭素材表面に形成する工程、及び
(2−1)工程(1)で形成された吸着層を有する炭素材を、酸化亜鉛前駆体を含む溶液と混合し、前記吸着層の上に酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する工程
を備える方法により製造することができる。
<工程(1)>
9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物及び炭素材は、前記したものである。
また、溶媒としては、特に制限されるわけではないが、コスト、有毒性及び環境面の観点から、水性溶媒が好ましい。具体的には、水、エタノール、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、2−メトキシエタノール等が挙げられる。
まず、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物の溶液を用意し、これに炭素材を混合する。
混合する際、各成分の含有量は特に制限されない。具体的には、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を0.01〜50重量%(特に0.1〜20重量%)、炭素材を20重量%以下(特に0.01〜15重量%)が好ましい。また、炭素材100重量部に対して、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を1〜1000重量部(特に5〜200重量部)とすることが好ましい。
混合方法は特に制限されず、公知の方法を採用すればよい。混合の後、超音波ホモジナイザー、ボールミル、ホモジナイザー等の物理的分散処理を施してもよい。
次いで、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物が吸着した炭素材を濾過、遠心分離などを用いて固−液分離し、さらに水洗することで、9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を有する炭素材を得ることができる。
<工程(2−1)>
酸化亜鉛前駆体としては、容易に酸化亜鉛に変換できるものであれば特に制限はなく、具体的には、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等が挙げられる。水酸化亜鉛等を使用すれば、水酸化亜鉛を含む層を形成でき、その後必要に応じて熱処理することで、酸化亜鉛に変換することができる。また、酢酸亜鉛等を使用すれば、酸化亜鉛を含む層を形成できる。
また、使用する溶媒としては、特に制限されるわけではないが、水、メタノール、エタノール、これらの混合溶媒等が挙げられる。
まず、酸化亜鉛前駆体を含む液に吸着層が形成された炭素材を混合する、又は、吸着層が形成された炭素材を含む液に酸化亜鉛前駆体を含む液を混合する。
混合する際、各成分の含有量は特に制限されない。具体的には、酸化亜鉛前駆体を0.001〜20重量%(特に0.01〜10重量%)、吸着層が形成された炭素材を0.1〜30重量%(特に1〜20重量%)が好ましい。また、吸着層が形成された炭素材100重量部に対して、酸化亜鉛前駆体を0.05〜200重量部(特に0.1〜100重量部)とすることが好ましい。
混合方法は特に制限されず、公知の方法を採用すればよい。混合の後、超音波ホモジナイザー、ボールミル、ホモジナイザー等の物理的分散処理を施してもよい。
前駆体として水酸化亜鉛を用いた場合は、炭素材を濾過、遠心分離等を用いて固−液分離し、さらに水洗することで、水酸化亜鉛層を有する炭素材を得ることができる。
前駆体として酢酸亜鉛等の亜鉛塩を用いた場合は、30〜150℃、好ましくは50〜100℃で2〜48時間、好ましくは3〜24時間、緩やかに加熱攪拌した後、炭素材を濾過、遠心分離等を用いて固−液分離し、さらに水洗することで、酸化亜鉛層を有する炭素材を得ることができる。
洗浄後、公知の方法で乾燥し、その後、水酸化亜鉛は必要に応じて酸化亜鉛に変換する。
なお、酸化亜鉛前駆体として酢酸亜鉛等の亜鉛塩等を使用した場合は、直接酸化亜鉛を含む層を形成できるため、そのまま本発明の亜鉛化合物被覆炭素材とすることができる。また、水酸化亜鉛等を使用した場合は、水酸化亜鉛を含む層を形成できるため、そのまま本発明の亜鉛化合物被覆炭素材としてもよいし、酸化亜鉛に変換する場合には、後述の工程(3)のように、加熱処理を施せばよい。
上記の工程(1)及び(2−1)により、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材が得られるが、被覆層中に、複数の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する材料を得る場合には、この後、
(2−2)酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する炭素材を、ポリアニオンを有する溶媒と混合し、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層の上にポリアニオンを有する有機層を形成する工程、及び
(2−3)工程(2−2)で形成された有機層を有する炭素材を、酸化亜鉛前駆体を含む溶液と混合し、前記有機層の上に、さらに酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する工程
を、必要な回数(得ようとする層の数より1少ない回数)だけ繰り返せばよい。
ポリアニオンは、酸化亜鉛前駆体(特に水酸化亜鉛)に吸着する。そのため、この後に酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成することができる。
<工程(2−2)>
使用する溶媒としては、特に制限されるわけではないが、水、メタノール、エタノール及びこれらの混合液等が挙げられる。
まず、ポリアニオンを含む液に水酸化亜鉛及び/または酸化亜鉛層が形成された炭素材を混合する。
混合する際、各成分の含有量は特に制限されない。具体的には、ポリアニオンを0.001〜10重量%(特に0.01〜5重量%)、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する炭素材を0.1〜30重量%(特に1〜20重量%)が好ましい。また、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する炭素材100重量部に対して、ポリアニオンを0.1〜10重量部(特に0.5〜5重量部)とすることが好ましい。
混合方法は特に制限されず、公知の方法を採用すればよい。混合の後、超音波ホモジナイザー、ボールミル、ホモジナイザー等の物理的分散処理を施してもよい。
次いで、炭素材を濾過、遠心分離などを用いて固−液分離し、さらに水洗することで、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層の上に、ポリアニオンを含む有機層を形成させることができる。
<工程(2−3)>
この工程では、工程(2−2)で形成された有機層の上に、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する。この際、工程(2−1)と同様にすればよい。使用できる溶媒、各成分の含有量等は、工程(2−1)と同様にすることができる。
具体的には、水酸化亜鉛を含む層を形成する場合には、有機層を有する炭素材を、水酸化亜鉛等を含む溶液と混合すればよい。
使用できる溶媒、各成分の含有量等は、工程(2−1)と同様にすることができる。
一方、酸化亜鉛を含む層を形成する場合には、有機層を有する炭素材を、酢酸亜鉛等を含む溶液と混合すればよい。
使用できる溶媒、各成分の含有量等は、工程(2−1)と同様にすることができる。
前述したように、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材が得られるが、被覆層をより強固に吸着させるために、
(3)200〜1000℃で熱処理する工程
を施してもよい。
熱処理温度は、200〜1000℃が好ましく、200〜600℃がより好ましい。また、熱処理時間は、5〜180分が好ましく、10〜120分がより好ましい
この際、熱処理雰囲気を、酸素を含む雰囲気(空気等)とすれば、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材中に水酸化亜鉛が残存している場合は酸化亜鉛に変換することができる。
3.複合材
本発明の複合材は、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材と樹脂とを含む。
熱伝導性フィラーは、樹脂との親和性が悪い材料が多いため、複合材を製造する場合は、通常シランカップリング剤等で表面処理を施す必要があるが、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材は、表面処理をしなくても樹脂との親和性に優れるため、そのまま複合材を製造することができる。
樹脂としては、特に制限はなく、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の一般的なポリマー等が使用できるが、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材との親和性が高いため、ポリカーボネートが好ましい。
複合材を製造する際には、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材の含有量は、熱伝導性の点から、樹脂100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、5〜180重量部がより好ましい。
このようにして得られる複合材は、本発明の亜鉛化合物被覆炭素材の作用により、熱伝導度を維持したまま高い絶縁性を示すため、ICや半導体等の電子回路周辺の電子機器の放熱用途等をはじめ、熱伝導材料、放熱材、放熱繊維、ヒーター部材、熱伝導性フィラー、フィラー分散剤、光電変換材料、ガスセンサー部材、太陽電池電極部材、LED放熱部材、EL放熱部材、帯電防止材、導電部材、赤外・紫外線吸収材、電磁波シールド材、表示機器放熱部材、ディスプレイ放熱部材、空調機放熱部材、燃料電池放熱部材等に好適に用いることができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
本実施例において使用した成分のうち、炭素材及びポリカーボネートについては、
炭素材:大阪ガスケミカル製のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB;平均粒径:25μm)
ポリカーボネート:三菱ガス化学(株)製のPCZ−400
を使用した。
なお、炭素材として使用したMCMBの表面状態は、図1のとおりである。
[製造例1:炭素材の表面処理(吸着層付き炭素材の製造)]
水20mlに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF)0.3gと10%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を2.4g添加して攪拌し、BPFを溶解した。この溶液にMCMBを3g加えて5分攪拌後、MCMBを遠心分離機を用いて3回水洗した後、50mlの水に分散して、フルオレン化合物で表面処理を行ったMCMBの分散液を得た。
[実施例1:酸化亜鉛単層被覆]
製造例1で得たMCMBの分散液(MCMB3g含有)に水酸化亜鉛ゲル水分散液20g(固形分0.02g)を加えて5分攪拌した後、マイクロビーズを濾別して水洗し、60℃の熱風乾燥機で乾燥した。乾燥粒子をFE−SEMで観察したところ、粒子表面に薄い水酸化亜鉛シートが積層している様子が観察された。
次いで、この乾燥粒子を280℃で10分熱処理を行った。熱処理物をFE−SEMで観察したところ、厚さ20nm未満の薄いシート状の層が粒子全面に形成されている様子が観察された。結果を図2に示す。
また、XRDは酸化亜鉛とパターンが一致したことから、薄いシート状の層は酸化亜鉛層であることが確認された。
[実施例2:酸化亜鉛2層被覆(1)]
実施例1で製造した酸化亜鉛層が形成されたMCMB2.5gをメタノール50mlに分散してポリアクリル酸メタノール溶液(ポリアクリル酸30mg)10mlと混合後、遠心分離機を用いて、MCMBをメタノールで2度洗浄した。
このMCMBを再び、同じ水酸化亜鉛ゲル分散液20g(固形分0.02g)に加えて5分攪拌した後、MCMBを濾別して水洗し、60℃の熱風乾燥機で乾燥し、次いで280℃10分熱処理を行って酸化亜鉛層を積層した。熱処理物をFE−SEMで観察したところ酸化亜鉛層が厚くなっており(厚さ:50nm程度)、且つ、より確実に全面が被覆されている様子が観察された。
[実施例3:酸化亜鉛3層被覆]
実施例2で製造した酸化亜鉛層が2層形成されたMCMB2.5gをメタノール50mlに分散してポリアクリル酸メタノール溶液(ポリアクリル酸30mg)10mlと混合後、遠心分離機を用いて、MCMBをメタノールで2度洗浄した。
このMCMBを再び、同じ水酸化亜鉛ゲル分散液20g(固形分0.02g)に加えて5分攪拌した後、MCMBを濾別して水洗し、60℃の熱風乾燥機で乾燥し、次いで280℃10分熱処理を行って酸化亜鉛層を積層した。熱処理物をFE−SEMで観察したところ酸化亜鉛層がさらに厚くなっており、且つ、より確実に全面が被覆されている様子が観察された。結果を図3に示す。
[実施例4:酸化亜鉛2層被覆(2)]
実施例1で製造した酸化亜鉛層が形成されたMCMB1gをメタノール50mlに分散してポリアクリル酸メタノール溶液(ポリアクリル酸20mg)10mlと混合後、遠心分離機を用いて、MCMBをメタノールで2度洗浄した。
このMCMBを酢酸亜鉛・2水和物(3g)のメタノール溶液200mlに加えて、75℃・12時間攪拌した。次いでMCMBを濾別し、メタノールで洗浄して60℃で乾燥後、300℃・10分熱処理した。
熱処理物をFE−SEMで観察したところ、粒子表面は非常に細かい粒子が融合したような形状をしており(図4)、EDX分析からこれらは酸化亜鉛であることが分かった(図5)。
さらに、この粒子を乳鉢ですってFE−SEM観察をしてみたところ、粒子自体が割れるような構造破壊を起こした粒子は見られるが、酸化亜鉛層だけが剥離した粒子はみられなかった(図6)。このことから、酸化亜鉛層はMCMB粒子と強く接着していると考えられる。
[実施例5:亜鉛化合物被覆炭素材を含む複合材]
ポリカーボネート0.4gをテトラヒドロフラン2mlとトルエン0.2mlの混合液に溶解させた液を用意し、実施例4で製造した亜鉛化合物被覆炭素材を0.6g混合してよくかき混ぜた後、PET板にバーコードし、実施例4の複合材からなる塗膜(膜厚:103μm)を得た。
[比較例1]
実施例4で製造した亜鉛化合物被覆炭素材ではなく、未処理のMCMBを用いること以外は実施例5と同様に、比較例1の複合材からなる塗膜(膜厚:88μm)を得た。
[試験例1:表面抵抗]
実施例5及比較例1で得た試料を60℃・3時間乾燥後、表面抵抗を三菱化学(株)製のハイレスタで測定したところ、実施例5の塗膜は1010Ω/□以上、比較例1の塗膜は10Ω/□以下(3.54×10Ω/□)であった。このことから、酸化亜鉛層を形成したMCMBは表面抵抗が高くなっていることが分かる。
[試験例2:熱伝導率]
比較例1で作製したMCMB混合液と実施例4の粒子混合液からそれぞれ溶媒を除いて得られた固体をプレス成形することにより、直径2cm、厚さ1mmの円板を作製した。これらの円板の熱伝導率をレーザーフラッシュ法により測定したところ、比較例1では0.853W/mK、実施例4では0.595W/mKであった。酸化亜鉛被覆により若干熱伝導率は低下するものの維持されていることがわかった。この結果は、シリカを被覆した場合には、熱伝導率は大幅に低下することが推測されるため、酸化亜鉛被覆はシリカ被覆よりも優れていることが分かる。

Claims (13)

  1. 炭素材の少なくとも一部の上に、
    9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を介して、
    酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む被覆層が形成された、亜鉛化合物被覆炭素材。
  2. 前記被覆層が、炭素材の全面に、前記吸着層を介して形成されている、請求項1に記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
  3. 前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物が、一般式(1):
    [式中、Z及びZは同じか又は異なり、それぞれ芳香族炭化水素環;R1a及びR1bは同じか又は異なり、それぞれアルキレン基;R2a及びR2bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;R3a及びR3bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;m及びnは同じか又は異なり、それぞれ0以上の整数;p及びqは同じか又は異なり、それぞれ1以上の整数;h1及びh2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数;j1及びj2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数である。]
    で示されるフルオレン化合物、又はその塩酸塩、アルカリ金属塩、有機アンモニウム塩、若しくはエチレンオキシド付加物である、請求項1又は2に記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
  4. 前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物が、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシナフチル)フルオレン;これらの塩酸塩、アルカリ金属塩若しくは有機アンモニウム塩;並びに9,9−ビス(4−ヒドロフェニル)フルオレン・エチレンオキシド付加物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
  5. 前記炭素材が、単層若しくは多層のカーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛及び炭素繊維よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
  6. 前記被覆層が、複数の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
  7. 前記被覆層が、炭素材の上に前記吸着層を介して形成される第一の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層の上に、ポリアニオンを有する有機層を介して第二の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層が形成された構造を有する、請求項6に記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
  8. 200〜1000℃での熱処理物である、請求項1〜7のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材の製造方法であって、
    (1)9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物及び炭素材を、水性溶媒中で混合し、前記9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含む吸着層を炭素材表面に形成する工程、及び
    (2−1)工程(1)で形成された吸着層を有する炭素材を、酸化亜鉛前駆体を含む溶液と混合し、前記吸着層の上に酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する工程
    を備える、製造方法。
  10. さらに、
    (2−2)酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を有する炭素材を、ポリアニオンを有する溶媒と混合し、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層の上にポリアニオンを有する有機層を形成する工程、及び
    (2−3)工程(2−2)で形成された有機層を有する炭素材を、酸化亜鉛前駆体を含む溶液と混合し、前記有機層の上に、さらに酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を含む層を形成する工程
    を備える、請求項9に記載の製造方法。
  11. さらに、
    (3)200〜1000℃で熱処理する工程
    を備える、請求項9〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載の亜鉛化合物被覆炭素材、又は請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法により得られる亜鉛化合物被覆炭素材と、樹脂とを含む複合材。
  13. 前記樹脂がポリカーボネートである、請求項12に記載の複合材。
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