JP2013114144A - エレクトロクロミック素子 - Google Patents
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Abstract
【目的】 新たな電解質層を用いたエレクトロクロミック素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 高さ方向に間隔を空けて対向する一対の電極層2,3と、各電極層2,3間に挟持されたエレクトロクロミック層5,7及び前記エレクトロクロミック層5,7に接する電解質層8と、を有するエレクトロクロミック素子1において、前記電解質層8は、多孔質層9に電解液10を含浸させてなり、前記多孔質層9には、高さ方向にて対向する上面9aから下面9bに通ずる連続気孔11が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】 高さ方向に間隔を空けて対向する一対の電極層2,3と、各電極層2,3間に挟持されたエレクトロクロミック層5,7及び前記エレクトロクロミック層5,7に接する電解質層8と、を有するエレクトロクロミック素子1において、前記電解質層8は、多孔質層9に電解液10を含浸させてなり、前記多孔質層9には、高さ方向にて対向する上面9aから下面9bに通ずる連続気孔11が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、高さ方向に間隔を空けた一対の電極層間にエレクトロクロミック層及び電解質層が挟持されたエレクトロクロミック素子に関する。
エレクトロクロミック素子は、特許文献にも示すように、高さ方向に間隔を空けた一対の電極層間にエレクトロクロミック層及び電解質層が挟持された構造である。電解質層には、液体状電解質やゲル電解質を用いることができる。
しかしながら従来では、電解質層が高価であり、また、基材をガラスからフィルムに変更すると、電解質層の膜厚がばらつきやすい問題があった。
そこで本発明は、従来の問題点を改善可能な新たな電解質層を用いたエレクトロクロミック素子を提供することを目的とする。
本発明は、高さ方向に間隔を空けて対向する一対の電極層と、各電極層間に挟持されたエレクトロクロミック層及び前記エレクトロクロミック層に接する電解質層と、を有するエレクトロクロミック素子において、
前記電解質層は、多孔質層に電解液を含浸させてなり、前記多孔質層には、高さ方向にて対向する第1の面から第2の面に通ずる連続気孔が形成されていることを特徴とするものである。本発明によれば、電解質層は多孔質層に電解液を含浸させた構造であり、従来に比べて電解液の使用量を減らすことができコスト削減を図ることができる。また電解質層の膜厚は多孔質層の膜厚で決めることができ、膜厚の安定化を図ることが可能である。そして本発明では、多孔質層には高さ方向にて対向する第1の面から第2の面に通じる連続気孔が設けられている。このため、電解液を連続気孔内に保持でき、良好な応答性を得ることが可能になる。
前記電解質層は、多孔質層に電解液を含浸させてなり、前記多孔質層には、高さ方向にて対向する第1の面から第2の面に通ずる連続気孔が形成されていることを特徴とするものである。本発明によれば、電解質層は多孔質層に電解液を含浸させた構造であり、従来に比べて電解液の使用量を減らすことができコスト削減を図ることができる。また電解質層の膜厚は多孔質層の膜厚で決めることができ、膜厚の安定化を図ることが可能である。そして本発明では、多孔質層には高さ方向にて対向する第1の面から第2の面に通じる連続気孔が設けられている。このため、電解液を連続気孔内に保持でき、良好な応答性を得ることが可能になる。
本発明では、前記多孔質層が、前記電解液によって膨潤する材質からなることが好ましい。本発明では、前記多孔質層は、シリコーンゴムシートであることが好ましいが、他のゴムシートでも代用可能である。
また本発明では、前記多孔質層が白色化あるいは有色化されている構成に適している。このように多孔質層を白色化あるいは有色化することで、従来のゲル電解質に有色粒子や白色粒子を分散させた場合に起こりうる設置状態の変化に伴う白色粒子や有色粒子の崩落は生じず、したがって、設置状態が変化しても、安定した白色面や有色面を得ることができる。
また本発明では、白色粒子あるいは有色粒子が前記連続気孔内に取り込まれている構成にすることも出来る。これにより白色粒子や白色粒子は連続気孔内に保持されるので、従来のゲル電解質に有色粒子や白色粒子を分散させた場合に起こりうる設置状態の変化に伴う白色粒子や有色粒子の崩落は生じず、したがって、設置状態が変化しても、安定した白色面や有色面を得ることができる。
また本発明では、前記電解質層の周囲に、前記電解質層とほぼ同じ高さ寸法の封止層が設けられていることが好ましい。これにより電解質の液漏れを防止できる。
また本発明では、前記封止層が前記連続気孔の無い層として前記多孔質層と一体形成されていることが好ましい。これにより封止層を電解質層の周囲に隙間無く且つ同じ高さで適切に形成できて液漏れを効果的に防止でき、また多孔質層及び封止層を同じ材質で形成でき、製造コストの低減を図ることが出来る。
また本発明では、間隔を空けて相対向する各電極層の内面に形成されたエレクトロクロミック層同士が前記電解質層を介して前記高さ方向に対向配置されていることが好ましい。これにより、応答性を効果的に向上させることができる。
本発明によれば、電解質層は多孔質層に電解液を含浸させた構造であり、従来に比べて電解質の使用量を減らすことができコスト削減を図ることができる。また、基材にガラスを使用した場合はもちろん、ガラスをフィルムに変更した場合でも電解質層の膜厚の安定化を図ることが可能である。また本発明では、電解質を連続気孔内に保持でき、良好な応答性を得ることが可能になる。
図1は、エレクトロクロミック素子の部分縦断面図である。
図1に示すエレクトロクロミック素子1は、高さ方向(Z)に間隔を開けた一対の透明電極層2,3と、各透明電極層2,3間に挟持されたエレクトロクロミック層5,7及び前記エレクトロクロミック層5,7に接して形成された電解質層8とを有して構成される。
図1に示すエレクトロクロミック素子1は、高さ方向(Z)に間隔を開けた一対の透明電極層2,3と、各透明電極層2,3間に挟持されたエレクトロクロミック層5,7及び前記エレクトロクロミック層5,7に接して形成された電解質層8とを有して構成される。
各透明電極層2,3は、ガラス等の透明基材4の内面に酸化インジウムスズ(ITO)で形成された透明導電層6を備えた構成である。なお透明基材4はフィルムであってもよい。
図1に示すように、第1のエレクトロクロミック層5が第1の透明電極層2の導電面に形成されている。第1のエレクトロクロミック層5と透明導電層6とは電気的に接続されている。図1では第1のエレクトロクロミック層5と透明導電層6とが接して形成されている。
また第2のエレクトロクロミック層7が第2の透明電極層3の導電面に形成されている。第2のエレクトロクロミック層7と透明導電層6とは電気的に接続されている。図1では第2のエレクトロクロミック層7と透明導電層6とが接して形成されている。
各エレクトロクロミック層5,7はスパッタ、電界析出、あるいは印刷等で形成可能である。
図1に示す実施形態では、第1のエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7とは電解質層8を介して対向している。第1のエレクトロクロミック層5及び第2のエレクトロクロミック層7と電解質層8とは接して形成されている。
例えば第1のエレクトロクロミック層5は、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)6]3)を含むインクをスピンコーターで塗布したものであり、第2のエレクトロクロミック層7は、ニッケル置換プルシアンブルー類似体(Ni3[Fe(CN)6]2)を含むインクをスピンコーターで塗布したものである。なお、本実施形態では、各エレクトロクロミック層5,7として使用されるエレクトロクロミック材料を限定するものでない。
図1に示すように電解質層8の周囲には封止層13が設けられている。図1に示すように封止層13は電解質層8と略同一の高さ寸法(膜厚寸法)で形成されている。
本実施形態では図2の拡大図で示すように、電解質層8が多孔質層9と電解液10とを有して構成される。
ここで図2(模式図)に示すように多孔質層9には、高さ方向(Z)にて対向する上面(第1の面)9aから下面(第2の面)に通じる多数の連続気孔11が形成される。図2では一つの連続気孔11にのみ符号を付した。図2に示すように連続気孔11は膜厚方向(Z)と略平行に延びていてもよいし、三次元的に電解質層内部に延びて、上面9aから下面9bに通じる形態であってもよい。例えば図2に示す断面では気孔11aと気孔11bとが途中で切れた状態になっているが、実際には紙面奥方向あるいは手前方向に夫々延びて、気孔11a,11b同士が繋がっており連続気孔を構成している。
連続気孔11の径は、数10μm〜数100μm程度であることが好ましい。なお気孔は不均一な径で存在する。また、連続気孔11は、電解質層8に対して、空隙率50%〜60%程度、形成されることが好適である。これにより、良好な応答性及び強度を適切に保ち、また液漏れを防止することが出来る。また、応答性を向上させるにはゴムシートの空隙率増加が望ましく、空隙率を55%以上にするとゲル電解質を用いた素子とほぼ同等の応答性を示す。
本実施形態では、多孔質層9の材質を限定するものでないが、シリコーンゴムシートが好ましく適用される。図3に連続気孔を有するシリコーンラバーシートのSEM写真を示す。図3(a)はシート表面のSEM写真、図3(b)は縦断面のSEM写真である。図3に示すシリコーンゴムシートの空隙率(気孔率)は50%であった。シリコーンゴムシートには、株式会社朝日ラバー製のサポラス(商品名)を用いた。シリコーンラバーシートには上面から下面に通じる多数の連続気孔が形成されていることがわかった。またシリコーンゴムシートを、0.1mm〜1.0mm程度の膜厚で形成することができる。
本実施形態における電解質層8は、多孔質層9に電解液10を含浸させてなる。なお含浸は真空引きで数十分から数時間程度、場合にはよっては数日行うとよい。
ここで電解液10としては、過塩素酸塩、鉄錯体、金属ハロゲン化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を溶媒であるエーテル類、カーボネート類、アルコール類、エステル類等で溶解した電解液であることが好適である。本実施形態では、電解液10を多孔質層9に形成された連続気孔11内に取り込む(保持する)ことが出来る。電解液として、炭酸プロピレンにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウムを溶解した電解液であることが好適である。または、カリウム塩として、テトラフルオロほう酸カリウム、過塩素酸カリウム、ヘキサフルオロりん酸カリウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドカリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム等も使用することが可能で、特に問題なく駆動できる。
図1,図2に示すエレクトロクロミック素子1は、電解質層8を介して第1のエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7との間で酸化還元反応が起こり、第1のエレクトロクロミック層5が発色すれば、第2のエレクトロクロミック層7は消色し、一方、第1のエレクトロクロミック層5が消色すれば、第2のエレクトロクロミック層7が発色する。
例えば第1のエレクトロクロミック層5がエレクトロクロミック材料であるプルシアンブルー(PB)を有して形成され、第2のエレクトロクロミック層7が、エレクトロクロミック材料であるニッケル置換プルシアンブルー類似体(NiPB)を有して形成されており、第1のエレクトロクロミック層5が酸化状態になると、紺青の色を呈し、一方、第2のエレクトロクロミック層7は還元状態になり消色する(透明になる)。逆に、第2のエレクトロクロミック層7が酸化状態になると黄色を呈し、一方、第1のエレクトロクロミック層5は還元状態になり消色する(透明になる)。
例えば、図1に示す第1の透明電極層2の表面が表示面2aとして、電極層及び電解質が透明あるいは透明に近い状態であれば、表示面2aから第1のエレクトロクロミック層5における紺青の表示とともに、第2のエレクトロクロミック層7における黄色の表示とを交互に見ることができる。
あるいは、電解質層8を白色化や有色化することもできる。例えば、多孔質層9に白色粒子(フィラー)である酸化チタン(TiO2)等を混練して、多孔質層9を白色化することが可能である。あるいは、酸化チタン等の白色粒子を、電解液10に入れることも可能である。これにより白色粒子を多孔質層9の連続気孔11内に取り込むことが出来る。白色粒子以外に有色粒子を多孔質層9に混練しあるいは、電解液10内に入れることで有色化できる。
このように電解質層8を白色化や有色化することで、表示面2aでは、第1のエレクトロクロミック層5の発色のみが表示され、第2のエレクトロクロミック層7の発色状態を見えなくすることができる。
図1に示す電解質層8の周囲に設けられた封止層13は、図2では、多孔質層9と一体化して形成されている。本実施形態では、例えば、多孔質層9及び封止層13を同じシリコーンゴムで形成でき、このとき封止層13を連続気孔11の無い層として形成する。例えば、連続気孔11が全体的に形成されたシリコーンゴムシートを形成し、封止層13となる周囲部分の連続気孔11に樹脂を埋め込むなどして連続気孔11を塞ぐことで、多孔質層9と一体化し、連続気孔11の無い封止層13を簡単且つ適切に形成することができる。
あるいは多孔質層9と封止層13とを二色成形することも可能である。
あるいは多孔質層9と封止層13とを二色成形することも可能である。
本実施形態では、電解質層8は多孔質層9に電解液10を含浸させた構造であるため、従来に比べて電解液10の使用量を減らすことができコスト削減を図ることができる。すなわち本実施形態では、電解質層8全体が電解質でなく、多孔質層9に形成された連続気孔11に取り込まれる(保持される)電解液10の量で足りるため、電解液10の使用量を効果的に減らすことが可能になる。多孔質層9は電解液10により膨潤する材質であることが好ましく、本実施形態では例えば電解質層8をシリコーンゴムシートで形成できる。ただしシリコーンゴムシートに限定するものでない。また本実施形態では、電解質層8の膜厚を多孔質層9の膜厚で決めることができ、膜厚の安定化を図ることが可能である。ゴムシートを成形加工することで、膜厚のばらつきを小さくできる。また透明基材4にガラスを使用した場合はもちろん、ガラスをフィルムに変更した場合でも電解質層8の膜厚の安定化を図ることが出来る。
本実施形態では、多孔質層9に上面9aから下面9bに通じる連続気孔11が設けられている。このため、電解液10を連続気孔11内に保持できる。よって連続気孔11に保持された電解液10を介してエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7との間で酸化還元反応を生じさせることができ、良好な応答性を得ることが可能になる。
従来のゲル電解質を用いた電解質層の内部に酸化チタンを混入して白色化した構成では、エレクトロクロミック素子を寝せた状態から立てた状態に設置状態を変化させると、酸化チタンとゲル状の電解質とが分離して、酸化チタンが、立てた状態での電解質層の下端方向(寝せた状態での側部方向)へ崩落を起こし、立てた状態での電解質層の上方部分に酸化チタンの無い領域ができてしまうことがあった。このため、表示面には酸化チタンの崩落した領域が透明となって現れてしまうなど、設置状態の変化により安定した白色面を得ることができない問題があった。
これに対し本実施形態では、多孔質層9を白色化あるいは有色化でき、これにより、従来のように設置状態の変化(寝せた状態から立てた状態に変化させる等)に伴う白色粒子や有色粒子の崩落は生じず、したがって、設置状態が変化しても、安定した白色面や有色面を得ることができる。あるいは、多孔質層9の白色化や有色化とともに、あるいは、多孔質層9を白色化や有色化せずに、白色粒子や有色粒子を連続気孔11内に取り込んだ構成とすることもできる。これにより白色粒子や有色粒子は連続気孔11内に保持されるので、従来のように設置状態の変化に伴う白色粒子や有色粒子の崩落は生じず、したがって、設置状態が変化しても、安定した白色面や有色面を得ることができる。なお、白色粒子や有色粒子を電解液10内に入れた場合、連続気孔11の径は粒子径よりも大きい必要がある。例えば酸化チタンはナノサイズから数μm程度の径であり、数10μm〜数100μm程度の径を有する連続気孔11内に取り込むことが可能である。
また本実施形態では、粒子の比重に係らず良好な白色化や有色化を実現できる。従来では、電解液と粒子との比重差から粒子が沈降し、それがエレクトロクロミック素子の設置状態の変更に伴って、粒子の崩落へと繋がったが、本実施形態では、粒子の比重が大きい例えば酸化チタンを用いても、粒子を連続気孔11内に取り込むことで、崩落現象は生じず、良好な白色化を実現できる。また従来では、例えば崩落を防止すべく沈降しにくい粒子や粘度の調整等が必要とされたが、本実施形態ではそのような調整も特に必要なく製造コストの低減を図ることが可能である。
また図1に示すように、電解質層8の周囲に、前記電解質層8とほぼ同じ高さ寸法の封止層13を設けることで、電解液10の液漏れを防止できる。
また図2に示すように、封止層13が連続気孔11の無い層として多孔質層9と一体形成されていることが好ましい。これにより封止層13を電解質層9の周囲に隙間無く且つ同じ高さで適切に形成できて液漏れを効果的に防止でき、また多孔質層9及び封止層13を同じ材質で形成でき、製造コストの低減を図ることが出来る。
図1,図2に示すエレクトロクロミック素子1では、第1のエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7とが膜厚方向(Z)で対向している。一方、図4に示す第2の実施形態では、第1のエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7とが膜厚方向(Z)にて重ならないように平面視(矢視α)にてずれて配置されている。
図4の形態よりも図1のように各エレクトロクロミック層5,7を対向させたほうが良好な応答性を得ることができ好適である。すなわち図2で説明したように、多孔質層9には上面9aから下面9bに向けて延びる連続気孔11が形成されており、図4のように、各エレクトロクロミック層5,7がずれて配置されると、第1のエレクトロクロミック層5から第2のエレクトロクロミック層7へ通じる連続気孔11の数が減少する。このため、図4の形態であると各エレクトロクロミック層5,7の間で電解液10の供給が不十分になり、応答性が低下しやすい。よって、図1のように、第1のエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7とを膜厚方向にて対向させることで、各エレクトロクロミック層5,7間に通じる連続気孔11が増え、電解液10の供給を十分にでき、良好な応答性を得ることが可能になる。
(3種類の電解質層を用いた実験)
実験では、図5(a)の平面図で示すように、第1のエレクトロクロミック層5,5と第2のエレクトロクロミック層7,7とを膜厚方向で対向させず平面視にてずらして配置した。なお各試料におけるエレクトロクロミック素子は電解質層の構成を除いて統一した。なお各試料において、プルシアンブルー(PB)を有するインクをスピンコートで塗布して各エレクトロクロミック層5,7を形成した。
実験では、図5(a)の平面図で示すように、第1のエレクトロクロミック層5,5と第2のエレクトロクロミック層7,7とを膜厚方向で対向させず平面視にてずらして配置した。なお各試料におけるエレクトロクロミック素子は電解質層の構成を除いて統一した。なお各試料において、プルシアンブルー(PB)を有するインクをスピンコートで塗布して各エレクトロクロミック層5,7を形成した。
電解質層として、炭酸プロピレンにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウムを溶解したイミド電解液(濃度5M)にポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を溶解し更に酸化チタン(TiO2)を分散したゲル電解質(比較例)、連続気孔を有する厚さ0.3mmのシリコーンゴムシート(橙色)(株式会社朝日ラバー製のサポラス(商品名)を使用。空隙率(気孔率)は50%。気孔径は数10μm〜数100μm程度)に、前記電解液を浸漬した実施例1、連続気孔を有する厚さ1.0mmのシリコーンゴムシート(透明)(株式会社朝日ラバー製のサポラス(商品名)を使用。空隙率(気孔率)は50%。気孔径は数10μm〜数100μm程度。実施例1と比較してゴムシートの色と厚みが異なる)に、前記電解液を浸漬した実施例2を用いた。なお実施例1,2では、真空下で連続気孔から空気除去を行いながら電解液に浸漬させた。
各試料に対して、−1.5V→1.5V(第1のエレクトロクロミック層の発色→消色)、1.5V→−1.5V(第1のエレクトロクロミック層の消色→発色)の条件にてクロノアンペロメトリーを測定した。なお測定には北斗電工製のポテンショスタット(型番HZ−5000)を使用した。
その実験結果を図6及び図7に示す。電流が流れなくなった時点で応答性を評価した。その結果、比較例及び実施例1,2での応答時間は、約10秒〜15秒程度であった。ただし、実施例2では発色→消色に要する時間が約7秒であったのに対し、比較例では10秒程度かかっており、実施例2での応答性のほうが優れた結果となった。また、実施例2及び比較例では消色→発色に要する時間がともに約12秒であり、同等の結果となった。以上の実験結果から、連続気孔を有するシリコーンゴムシートを用いた実施例では、ゲル電解質の比較例と同等以上の応答性を得ることができるとわかった。
(空隙率の実験)
実験では、実施例1で使用したシリコーンゴムシートの空隙率が50%、55%、60%と異なるエレクトロクロミック素子を用意した、なお実験では空隙率が50%のシリコーンゴムシートを2種類、空隙率が55%のシリコーンゴムシートを2種類、空隙率が60%のシリコーンゴムシートを3種類、用意した。なお実験に使用した第1のエレクトロクロミック層5をプルシアンブルー(PB)を有するインクをスピンコートで塗布して形成し、第2のエレクトロクロミック層7を、ニッケル置換プルシアンブルー類似体(Ni3[Fe(CN)6]2)を有するインクをスピンコートで塗布して形成した。それ以外の構成は、上記実験のものと同じとした。
実験では、実施例1で使用したシリコーンゴムシートの空隙率が50%、55%、60%と異なるエレクトロクロミック素子を用意した、なお実験では空隙率が50%のシリコーンゴムシートを2種類、空隙率が55%のシリコーンゴムシートを2種類、空隙率が60%のシリコーンゴムシートを3種類、用意した。なお実験に使用した第1のエレクトロクロミック層5をプルシアンブルー(PB)を有するインクをスピンコートで塗布して形成し、第2のエレクトロクロミック層7を、ニッケル置換プルシアンブルー類似体(Ni3[Fe(CN)6]2)を有するインクをスピンコートで塗布して形成した。それ以外の構成は、上記実験のものと同じとした。
各試料に対して、−0.8V→0V(第1のエレクトロクロミック層の発色→消色)、0V→−0.8V(第1のエレクトロクロミック層の消色→発色)の条件にてクロノアンペロメトリーを測定した。なお測定には北斗電工製のポテンショスタット(型番HZ−5000)を使用した。
その実験結果を図8及び図9に示す。図8、図9に示すように空隙率が増加すると応答性が向上することがわかった。またゴムシートの空隙率を60%に近づけるほどゲル電解質と同等の応答性を得ることができるとわかった。
この実験により、50%〜60%程度の空隙率を備えるゴムシートを用いることが好ましく、55%〜60%程度の空隙率を備えるゴムシートを用いることで、ゲル電解質を用いたエレクトロクロミック素子とほぼ同等の応答性を示すことができより好ましいと設定した。
(エレクトロクロミック層を対向させたパターンと、ずらしたパターンとの比較の実験)
図5(b)の平面図は、第1のエレクトロクロミック層5,5と第2のエレクトロクロミック層7,7とを膜厚方向で対向させて配置したものである。
図5(b)の平面図は、第1のエレクトロクロミック層5,5と第2のエレクトロクロミック層7,7とを膜厚方向で対向させて配置したものである。
実験では、実施例1の連続気孔を有する0.3mm厚のシリコーンゴムシートを用いたエレクトロクロミック素子を用いた。なお電解液の浸漬方法やエレクトロクロミック層の材質などについては上記実験と同様である。
実験は図5(a)と図5(b)の各パターンを用いて行った。すなわち図5(a)のように第1のエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7との各パターンを膜厚方向で重ならないようにずらしたものと、図5(b)のように第1のエレクトロクロミック層5と第2のエレクトロクロミック層7の各パターンを膜厚方向で対向させたものの二種類を用意した。
各試料に対して、−1.5V→1.5V(第1のエレクトロクロミック層の発色→消色)、1.5V→−1.5V(第1のエレクトロクロミック層の消色→発色)の条件にてクロノアンペロメトリー及びクロノクーロメトリーを測定した。なお測定には北斗電工製のポテンショスタット(型番HZ−5000)を使用した。その実験結果を図10〜図13に示す。図10,図11は、クロノアンペロメトリー測定結果、図12,図13は、クロノクーロメトリー測定結果を示す。
図10,図11に示すように、各エレクトロクロミック層のパターンを対向配置したほうが、パターンをずらして配置するよりも早く電流がゼロになり、明らかに発色→消色、消色→発色の各応答時間が短くなり応答性に優れることがわかった。また図12,図13の電荷は発色→消色、消色→発色に起因するものであり、電荷量(絶対値)は、各エレクトロクロミック層のパターンを対向配置したほうが、パターンをずらして配置するよりも明らかに多くなり、発色→消色、消色→発色への切替が速いことがわかった。
また、実施例とともに、ゲル電解質を用いた比較例においても図5(b)に示すパターン対向型のエレクトロクロミック素子を形成して応答時間を測定してみたところ、発色→消色、及び消色→発色にかかる応答時間は約1秒〜約3秒であり、ほぼ同等の応答性であることがわかった。
1 エレクトロクロミック素子
2、3 透明電極層
5、7 エレクトロクロミック層
8 電解質層
9 多孔質層
10 電解液
11 連続気孔
13 封止層
2、3 透明電極層
5、7 エレクトロクロミック層
8 電解質層
9 多孔質層
10 電解液
11 連続気孔
13 封止層
Claims (8)
- 高さ方向に間隔を空けて対向する一対の電極層と、各電極層間に挟持されたエレクトロクロミック層及び前記エレクトロクロミック層に接する電解質層と、を有するエレクトロクロミック素子において、
前記電解質層は、多孔質層に電解液を含浸させてなり、前記多孔質層には、高さ方向にて対向する第1の面から第2の面に通ずる連続気孔が形成されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子。 - 前記多孔質層が、前記電解液によって膨潤する材質からなる請求項1記載のエレクトロクロミック素子。
- 前記多孔質層は、シリコーンゴムシートである請求項2記載のエレクトロクロミック素子。
- 前記多孔質層は、白色化あるいは有色化されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック素子。
- 白色粒子あるいは有色粒子が前記連続気孔内に取り込まれている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック素子。
- 前記電解質層の周囲に、前記電解質層とほぼ同じ高さ寸法の封止層が設けられている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック素子。
- 前記封止層が前記連続気孔の無い層として前記多孔質層と一体形成されている請求項6記載のエレクトロクロミック素子。
- 間隔を空けて相対向する各電極層の内面に形成されたエレクトロクロミック層同士が前記電解質層を介して前記高さ方向に対向配置されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載のエレクトロクロミック素子。
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2011
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