JP2013113543A - 熱交換器用フィン材及び熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の熱交換器用フィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、該基板上に10〜30mg/m2の被着量で設けられたリン酸クロメート皮膜と、該リン酸クロメート皮膜上に設けられた耐食性皮膜と、該耐食性皮膜上に設けられた潤滑性皮膜を有し、耐食性皮膜は、エーテルエステル系ウレタン樹脂を主体とし、その被着量が0.8〜2.0g/m2であり、潤滑性皮膜は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを主体として構成される。
【選択図】図2
Description
一方、アクリル樹脂からなる耐食性皮膜は塗膜の延性が低いため、アクリル樹脂塗膜を設けたアルミニウム板をプレス加工してフィンに成形する際、塗膜にクラックが生じやすく、このクラックを起点としてカラー飛び(カラー割れ)が発生する問題がある。
しかしながら、これらのウレタン重合物からなる皮膜は、耐食性が不十分であり、また、その上に水溶性潤滑剤を塗布した場合に水溶性潤滑材をはじき易く、その表面に潤滑性を付与するのが困難であった。
しかし、PEG系潤滑剤は耐食性皮膜中に浸透し易く、耐食性皮膜の表面に塗布しても、潤滑剤としての機能が低下するおそれがあった。
本発明の熱交換器用フィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、該基板上に10〜30mg/m2の被着量で設けられたリン酸クロメート皮膜と、該リン酸クロメート皮膜上に設けられた耐食性皮膜と、該耐食性皮膜上に設けられた潤滑性皮膜を有し、前記耐食性皮膜は、エーテルエステル系ウレタン樹脂を主体とし、その被着量が0.8〜2.0g/m2であり、前記潤滑性皮膜は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを主体とし、前記潤滑性皮膜の被着量は、0.05〜0.2g/m2であることを特徴とする。
また、耐食性皮膜の上に潤滑剤皮膜を設け、該潤滑性皮膜としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主体としたので、潤滑性皮膜が耐食性皮膜中に浸透し難く、耐食性皮膜の表面に潤滑性を確実に付与できる。このため、アルミニウム基板をプレス加工する際、アルミニウム基材と金型との摩擦を低減でき、基板を金型に沿って確実に変形でき、高品質のフィン材を得ることができる。
図1は、本発明に係る熱交換器用フィン材の一構成例を示す斜視図、図2は、図1に示す熱交換器用フィン材を一部拡大して示す断面図である。
この例の熱交換器用フィン材(以下、単に「フィン材」と言う。)は細長い短冊形状を有しており、銅製の伝熱管を通すラッパ状のフレア11が、長さ方向に単列、或いは複数列で等間隔に配されている。また、アルミニウムフィン材10の表面には、伝熱性能の向上を目的にスリット12などを必要箇所に設けることがある。
図1に示すフィン材10は、図2に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン用の基板13の表面に、リン酸クロメート皮膜14と、耐食性皮膜15と、潤滑性皮膜16が順次形成されている。
リン酸クロメート皮膜14は、本発明では10〜30mg/m2の被着量で基板13の表面に設けられている。リン酸クロメート皮膜14の被着量が10mg/m2未満であると、フィン材10の耐食性が不足し、その上に設けられる各皮膜15、16の密着性が不十分となって各皮膜15、16の機能が十分得られなくなる。また、熱交換器使用時の腐食生成物の発生や、プレス加工時の潤滑不足、カラー割れ等の問題が生じ易くなる。一方、リン酸クロメート皮膜14の被着量を30mg/m2より大きくしても、それ以上の効果は得られず、材料コストが高くなる。
また、エーテルエステル系ウレタン樹脂は、直射日光に晒されても変質し難く、耐候性に優れている。このため、エーテルエステル系ウレタン樹脂によって耐食性皮膜15を構成することにより、熱交換器の設置環境を問わず、その耐食性能を確実に維持することができる。
さらに、エーテルエステル系ウレタン樹脂は延性が高く、プレス加工時に基板13の変形に容易に追従するため、クラックが生じ難い。従って、耐食性皮膜15の形成材料としてエーテルエステル系ウレタン樹脂を用いることにより、従来問題となっている耐食性皮膜15を起点としたカラー割れを回避可能となる。
また、前述のように潤滑性皮膜16を設けることにより、張り出しやしごき率の高い強加工も可能となり、所望の形状のフィン材10を確実に得ることが可能となる。
また、耐食性皮膜15の上に潤滑剤皮膜16が設けられ、該潤滑剤皮膜16がポリオキシエチレンアルキルエーテルの場合は、潤滑剤が耐食性皮膜15中に浸透し難く、潤滑性を効果的に付与できる。このため、プレス加工する際、金型との動摩擦係数を低減でき、高品質のフィン材10を得ることができる。
また、エーテルエステル系ウレタン樹脂からなる耐食性皮膜15であるならば、延性が高いため、基板13の変形に容易に追従し、クラックを生じ難い。このため、耐食性皮膜15のクラックを起点とするカラー割れを回避でき、良好なプレス加工性と高い生産性を得ることができる。
図3に示す熱交換器20は、図1、2に示すフィン材10と、複数の伝熱管30とを備えたものである。アルミニウムフィン材10は、一定の等間隔で平行に並べられており、アルミニウムフィン材10の相互間に空気が流動するようになっている。伝熱管30は、アルミニウムフィン材10のフレア11を貫通しており、その内部を冷媒が流動するようになっている。
このような構成の熱交換器20は、先に説明したフィン材10を備えているので、フィン材表面における腐食生成物の発生を効果的に抑え、設置環境に腐食生成物を噴き出す問題を回避できる。
また、フィン材10の生産性が高いので、熱交換器20としての生産性向上とコストの低減を図ることができる。
1.フィン材の作成
(実施例1〜7)
JIS規定A1050のアルミニウムからなる基板を用意した。この基板に、リン酸クロメート処理を行なってリン酸クロメート皮膜を形成した。
次に、エーテルエステル系ウレタン樹脂を含有する樹脂塗料を用意し、この樹脂塗料を、リン酸クロメート皮膜が形成された基板の表面にバーコーターを用いて塗装し、加熱乾燥することで耐食性皮膜を形成した。
次に、耐食性皮膜上に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを、バーコーターを用いて塗装することで潤滑性皮膜を形成し、実施例1〜7の試料を得た。
リン酸クロメート皮膜の膜厚、耐食性皮膜及び潤滑性皮膜の被着量は、以下の表1に示す通りである。以上の工程により、フィン材を得た。
耐食性皮膜に用いる樹脂を以下の表1に示すように変更した以外は、実施例1の製造方法と同等の方法でフィン材を作成した。
(比較例8)
リン酸クロメート皮膜を形成しないフィン材を作成した。
(比較例9)
リン酸クロメート皮膜の被着量を5mg/m2に変更した以外は、実施例1の製造方法と同等の方法でフィン材を作成した。
(比較例10)
耐食性皮膜の被着量を、0.5g/m2に変更した以外は、実施例1の製造方法と同等の方法でフィン材を作成した。
(比較例11)
潤滑剤皮膜を形成しないこと以外は、実施例1の製造方法と同等の方法でフィン材を作成した。
(比較例12)
耐食性皮膜の付着量を多くしたこと以外は、実施例の範囲内でフィン材を作成した。
(比較例13)
潤滑性皮膜の付着量を多くしたこと以外は、実施例の範囲内でフィン材を作成した。
各実施例及び各比較例で作成したフィン材について、以下のようにして評価を行った。
(1)塗装性
耐食性皮膜を形成するためのバーコーターによる塗装工程に際して、樹脂塗料のはじきの状態を目視観察し、以下の基準に従って評価した。なお、ややはじきがあるとは、少しでもはじきがある状態であり、塗装自体は可能であるが、塗装の無い部分から腐食が発生するので、製品としては不可である。
○:はじきがない、△:ややはじきがある、×:はじきがある(塗装不可)
各フィン材について、JIS Z2371に従い、塩水噴霧試験を1000時間行った後の腐食面積率、及び、酢酸塩水噴霧試験を1000時間行った後の腐食面積率をそれぞれ求め、各腐食面積率をレイティングナンバ(R.N)で評価した。なお、ここでは、塩水噴霧試験でのR.Nが9.8以上、酢酸塩水噴霧試験でのR.Nが9.5以上を、耐食性の許容範囲とした。
各フィン材について、サンシャインウェザーメータにて紫外線を500時間照射した後、皮膜の劣化状態を目視観察した。この観察結果を、以下の基準に従い評価した。
◎:皮膜劣化がない、○:皮膜劣化がほとんどない、×:皮膜劣化がある
評価は、試験前後の試料をストランドゲージで膜厚測定し、塗膜残存率を算出した。
◎:皮膜劣化がない=塗膜残存率90%以上、○:皮膜劣化がほとんどない=塗膜残存率60%〜90%未満、×:皮膜劣化がある=60%未満(60%未満では見た目上、明らかに皮膜に劣化が見られる)の評価基準とした。
(4)潤滑性
バウデン式摩擦試験機を用い、各フィン材表面の動摩擦係数を測定した。なお、動摩擦係数の測定は、試験機の摺動面にプレス油を塗布した状態で1サイクル行った。
プレス成形を行う前の各板材(各皮膜が形成された状態)について、ドロー加工及びドローレス加工をそれぞれ5000ショットまで行い、カラー飛びやフレア割れの発生状況を目視観察した。この観察結果を、以下の基準に従い評価した。
○:カラー飛びがなく、フレア割れの発生率が10%以下、×:カラー飛びがある、または、フレア割れが多い。以上の評価結果をまとめて表1に示す。
これに対し比較例のフィン材は、樹脂塗料や潤滑剤の塗装が困難であったり、耐食性皮膜の耐食性や耐候性が不足していたりし、フィン材として不十分なものであった。
比較例2のフィン材は、耐食性樹脂としてアクリル樹脂を用いたが、潤滑性において塗装不可となった。なお、表1の塗装性とは耐食性皮膜の塗装性を示しており、ここでは耐食性皮膜上に潤滑性皮膜の塗装を行った際にはじきが生じたことを示す。
比較例3のフィン材は潤滑性皮膜としてエステルアクリル系樹脂を用いたが、塗装不可であった。比較例4のフィン材は潤滑性皮膜としてエーテルアクリル系樹脂を用いたが、塗装不可であった。
比較例5のフィン材はエステル系ウレタン樹脂を用いたが若干はじきが生じ、潤滑性に劣る結果、ドロー加工とドローレス加工において割れが発生した。
比較例6のフィン材はエーテル系ウレタン樹脂を用いたが塗装不可となり、レイティングナンバ(R.N)が低下した。比較例6のフィン材は耐食性皮膜の塗装性が△であり、更に上記同様に耐食性皮膜上に潤滑性皮膜の塗装を行った際にはじきが生じたことを示す。
比較例7のフィン材は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いたが耐候性に劣り、酢酸塩水噴霧試験のレイティングナンバが低下した。
比較例8のフィン材は、リン酸クロメート皮膜を形成することなくエーテルエステル系ウレタン樹脂の耐食性皮膜を形成した例であるが、塗装不可となった。
比較例9のフィン材は、リン酸クロメート皮膜の被着量を5mg/m2にしてエーテルエステル系ウレタン樹脂の潤滑性皮膜を形成したが、リン酸クロメート皮膜の被着量が少ないため、潤滑性皮膜の塗装性に劣り、酢酸塩水噴霧試験のレイティングナンバが低下した。
比較例10のフィン材は、エーテルエステル系ウレタン樹脂の付着量が少ないため、塩水噴霧試験、酢酸塩水噴霧試験のレイティングナンバが低下した。
比較例11のフィン材は、潤滑性皮膜を設けていないため、ドロー加工、ドローレス加工ともにカラー飛びあるいはフレア割れが発生した。
比較例12のフィン材は、特性的には問題がないが、耐食性皮膜の付着量が多いのでコストアップの原因となる。
比較例13のフィン材は、潤滑剤が金型にビルドアップすることによって、金型ポンチ径が大きくなり、カラー飛びやカラー割れが発生した。
Claims (2)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、該基板上に10〜30mg/m2の被着量で設けられたリン酸クロメート皮膜と、該リン酸クロメート皮膜上に設けられた耐食性皮膜と、該耐食性皮膜上に設けられた潤滑性皮膜を有し、
前記耐食性皮膜は、エーテルエステル系ウレタン樹脂を主体とし、その被着量が0.8〜2.0g/m2であり、前記潤滑性皮膜は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを主体とし、
前記潤滑性皮膜の被着量は、0.05〜0.2g/m2であることを特徴とする熱交換器用フィン材。 - 請求項1に記載の熱交換器用フィン材を複数備えてなることを特徴とする熱交換器。
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