JP2013087367A - C/c複合材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素繊維と、疎水性バインダ粉末と、水とを含むスラリーを調整する工程と、前記スラリーに凝集材を添加して、前記スラリーを凝集させる凝集工程と、前記凝集工程得られたスラリーを、開口を有する型に供給して、前記スラリーから抄造体を得る抄造工程と、前記抄造体を加圧しつつ樹脂を熱硬化させ、成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成する焼成工程と、を含むC/C複合材の製造方法。
【選択図】図1
Description
この特許文献1に記載されている方法では、短炭素繊維を含む混合液をるつぼ形状からなる金型に析出させ、液体成分を除去することにより、るつぼ形状の成形体を得、この成形体を熱圧処理し、こののち炭化及び緻密化することが開示されている。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、強度ばらつきが小さく、気孔の少ない高強度のC/C複合材を得ることを目的とする。
[1]
炭素繊維と、疎水性バインダ粉末と、水とを含むスラリーを調整する工程と、
前記スラリーに凝集材を添加して、前記スラリーを凝集させる凝集工程と、
前記凝集工程で得られたスラリーを、開口を有する型に供給して、前記スラリーから抄造体を得る抄造工程と、
前記抄造体を加圧しつつ樹脂を熱硬化させ、成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成する焼成工程と、を含むC/C複合材の製造方法。
[2]
[1]に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記炭素繊維は、平均繊維長が1〜50mmであるC/C複合材の製造方法。
[3]
[2]に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記炭素繊維は、平均繊維長が3〜10mmであるC/C複合材の製造方法。
[4]
[1]乃至[3]のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記スラリーの炭素繊維含有量は2質量%以下であるC/C複合材の製造方法。
[5]
[1]乃至[4]のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記スラリーの炭素繊維含有量は0.05質量%以上であるC/C複合材の製造方法。
[6]
[1]乃至[5]のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記凝集材は、イオン系凝集剤であるC/C複合材の製造方法。
[7]
[6]に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記イオン系凝集材は、カチオン系凝集剤であるC/C複合材の製造方法。
[8]
[1]乃至[7]のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記凝集工程は第1の凝集材を用いて前記スラリーを凝集する第1の凝集工程と、
前記第1の凝集工程で凝集された前記スラリーに対し、前記第1の凝集材よりも高分子量である第2の凝集材を添加する第2の凝集工程とを含むC/C複合材の製造方法。
本発明のC/C複合材成形体は、炭素繊維と炭素質マトリックスとを含む炭素繊維強化炭素複合材で構成された構造体である。このC/C複合材の製造方法は、スラリーに疎水性バインダ粉末を添加することで、得られた抄造体から水分が容易に除去できるようにし、発泡を抑制し、高強度のC/C複合材を提供するものである。
なお、凝集工程においては、凝集材としては、カチオン系凝集剤を用いるのが望ましい。
本発明において、調整とは、所定の濃度、含有比率となるように整えることを意味する。
また、疎水性とは、水と相互作用しにくく、水に溶解しにくいことを意味する。
また、凝集とは、細かな粒子あるいは繊維が集まってより大きな粒子あるいは塊を形成することを意味する。
また、抄造とは、調整された原料を、濾過することにより脱水し、シート状あるいは、マット状の抄造体を得ることを意味し、抄造体の厚さは特に限定されない。
さらに、平均繊維長とは、ランダムにサンプリングされた炭素繊維の繊維長を合計し、繊維本数で割った平均長さを意味する。
図1は、本発明の実施の形態1のC/C複合材の製造プロセスを示す。図1に示すように本発明の実施の形態1は、スラリー調整工程P1と、凝集工程P2と、抄造工程P3と、成形工程P4と、焼成工程P5と含む。スラリー調整工程P1は、炭素繊維と、疎水性バインダ粉末と、水とを含むスラリーを調整する工程である。凝集工程P2はスラリーに凝集材を添加して、前記スラリーを凝集させる工程である。抄造工程P3は、凝集工程で得られたスラリーを、開口を有する型に供給して、前記スラリーから抄造体を得る工程である。成形工程P4は、抄造体を加圧しつつ樹脂を熱硬化させ、成形体を得る工程である。焼成工程P5は、成形工程で得られた成型体を焼成する工程である。
尚、焼成工程の前に、成形体から揮発分を除去するための脱脂工程P5−1を別途行っても良い。さらに、焼成工程の前に高密度化工程P6を有していても良い。
(スラリー調整工程)P1
スラリー調整工程では、図2は、本発明の実施形態1のC/C複合材の製造プロセスのスラリー調整工程の詳細を示す説明図である。図2に説明図を示すように、炭素繊維11と、疎水性バインダ粉末12とを水13に投入し、スラリー10を調整する。
炭素繊維11の平均繊維長は、特に限定されないが、1〜50mmであることが好ましい。炭素繊維11の平均繊維長が1mm以上であると、炭素繊維1本あたりの表面積が大きく炭素質マトリックスとの接合面積が大きくとれる。このため炭素繊維11が炭素質マトリックスから引き抜かれにくくなるため、高強度のC/C複合材が得やすくなる。また、炭素繊維11の平均繊維長が50mm以下であると、スラリー中で絡まりあるいは結び目を出来にくくすることができる。炭素繊維の絡まりあるいは結び目ができやすいと、C/C複合材に炭素繊維の粗密ができやすくなり、C/C複合材にボイドが形成され強度低下の原因となる。しかし、炭素繊維11の平均繊維長が50mm以下となるようにすることにより、絡まりが出来にくく、できたとしても絡まりは解け易くすることができる。炭素繊維の平均繊維長は、3〜10mmであることがさらに望ましい。炭素繊維の平均繊維長を3〜10mmとすることにより、より高強度で、さらに絡まりが出来にくくすることができる。
バインダ粉末が疎水性であることによって、抄造時にバインダ粉末が水に溶解しにくく、炭素繊維とともに開口を有する型表面に残り易くなる。また水に溶け難いので水と分離しやすい。
)などが使用できる。
また、第1の比率は1/100以上1/3以下が好ましく、1/100以上1/10以下がより好ましい。
0.05%未満であると、希釈するために大量の水を必要とするため、次の凝集工程で長時間を要し、炭素繊維と疎水性バインダ粉末とが凝集してできたフロックが時間の経過とともに壊れ抄造しにくくなる。
スラリー中の疎水性バインダ粉末は炭素繊維に対し50〜200質量%の範囲にあることが好ましい。本実施の形態において、疎水性バインダ粉末は炭素繊維と共に凝集し、抄造される。このため投入した疎水性バインダ粉末と炭素繊維の比率は抄造体の疎水性バインダ粉末と炭素繊維の比率とほぼ等しくなる。従って、疎水性バインダ粉末を過剰に投入しなくても良い。
図3は、本発明の実施の形態1のC/C複合材の製造プロセスの凝集工程の詳細を示す説明図である。図3に説明図を示すように、前記工程で得られたスラリー10に凝集剤21を添加し凝集しフロック20を形成する。使用する凝集剤21は特に限定されるものではない。イオン系(カチオン系あるいはアニオン系)、高分子系などどのようなものでも利用できる。中でもイオン系の凝集剤を用いることが望ましい。イオン系の凝集剤は、ゼータ電位が作用するので凝集力が強くフロックを形成しやすいからである。疎水性バインダ粉末にレゾール系フェノール樹脂を使用した場合には、カチオン系の凝集剤が好ましい。カチオン系凝集剤を使用することにより特にレゾール系フェノール樹脂からなる疎水性バインダ粉末のゼータ−電位を低下させるので凝集させやすいと考えられる。
本実施の形態の凝集工程は、第1の凝集剤を使用してスラリーを凝集する第1凝集工程と、前記第1の凝集剤よりも高分子量の第2の凝集剤を用いてスラリーを凝集する第2凝集工程とを含むことが好ましい。さらに第1の凝集剤と、凝集剤とは、同一の性質のイオン性凝集剤であることが好ましい。同一の極性であるとは、第1の凝集剤と第2の凝集剤が共にアニオン系であるか、又は共にカチオン系であることを指す。
第1凝集工程では、細かな疎水性バインダ粉末を凝集させ第1のフロックを形成し、第2凝集工程では、さらに高分子の粘着力を利用し、第1のフロックおよび炭素繊維を粘着させることにより、巨大化した第2のフロックを形成することができると考えられる。
このため、本実施の形態のフロックは前記第1のフロックが集まり巨大化した第2のフロックである。
本実施の形態の凝集工程は、更に高分子凝集剤を使用してスラリーを凝集する第3の凝集工程を含んでも良い。第3の凝集工程は高分子凝集剤の粘着力により、形成されたフロックを壊れにくくすると考えられる。尚、第3の凝集工程は第2の凝集工程の後が望ましい。第2の凝集工程までに形成されたフロックを壊れにくくすると考えられる。
アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドの部分加水分解塩、マレイン酸共重合物等が利用できる。高分子系の場合にはポリアクリルアミド、ポリオキシエチレン、カセイ化デンプン等が利用できる。イオン系の凝集剤を投入する順序は、低分子量の凝集剤から高分子量の凝集剤の順に投入することが好ましい。イオンの作用によるフロックの形成がおこり、次に高分子の作用によるフロックの粗大化が起こることによりフロックの形成が促進されるからである。非イオン系の高分子系凝集剤の投入順序は、イオンの作用とは無関係であるので、投入順序はどこでもかまわない。
図4は、本発明の実施の形態1のC/C複合材の製造プロセスの抄造工程の詳細を示す説明図である。図4に説明図を示すように、こうして得られたフロック20を、開口31を有する型32に供給して前記スラリーから抄造体30を得る。本実施の形態では、開口31を有する型32とは、どのような物でも良く特に限定されない。例えば、平坦な型であっても、立体形状の型であっても良い。型面は、開口があればどのような物でも良く、織布、不織布、網などどのようなものでもよいが、型面は、濾過の圧力に耐える必要があるため、より開口の大きな支持体で支えられていることが好ましい。支持体としては例えば、金網、パンチングメタル等が利用できる。
このため、後の成形および焼成工程でスラリーに含まれる水分が元となる水蒸気の発生によってボイドが発生しにくく、高強度のC/C複合材が得られ易い。
成形はどのような方法で行っても良く、立体形状であればオートクレーブ、1軸プレスが利用でき、平板形状であれば、1軸プレスで成形することができる。図5は、本発明の実施の形態1のC/C複合材の製造プロセスの成形工程の詳細を示す説明図である。図5に説明図を示すように、成形工程では、矢印で示すように抄造体30の両面から圧力をかけると同時に加熱し樹脂を硬化させる。このため、加熱装置を備えた成形機であることが好ましい。加熱装置を備えた成形機であれば、加圧時に樹脂を軟化させ、さらに硬化させることができる。成形圧力は特に限定されないが1〜20MPaが好ましい。成形時の温度は樹脂を軟化させ、さらに硬化させることができる範囲であれば特に限定されないが、100〜200℃が好ましい。また、一定温度で加熱するのではなく、徐々に温度を上げても良い。オートクレーブ等加圧に時間がかかる装置を用いる場合には、最大の成形圧力に到達する前に樹脂の硬化を防ぐために、最大圧力に達してから樹脂を硬化させる温度まで加熱するようにすることが好ましい。
図1に示すように、焼成工程の低温部分の熱処理を、別途「脱脂工程」として行っても良い。図6は、本発明の実施の形態1のC/C複合材の製造プロセスの脱脂工程の詳細を示す説明図である。図6に示すように、成形工程で得られた成形体40を、不活性雰囲気中でヒータ41を用いて加熱し、バインダーを脱脂する。不活性雰囲気を形成するガスとしては、アルゴン、ヘリウムなどの稀ガス、メタン、エタンなどの炭化水素ガス、水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガスなどが利用できる。
脱脂工程の概ね600℃に達するまでは多量の炭化水素ガスなどの排ガスが発生し、樹脂の寸法収縮が大きいので、10℃/H以下で加熱することが望ましい。概ね600℃以上では炭化水素ガスの発生が少なくなってくるので、10℃/H以上で加熱することができるようになる。脱脂の処理温度は特に限定されないが、600〜1000℃で行うことが望ましい。600℃以上で処理すれば、成形体に含まれる有機成分が十分に揮散するからである。
図7は、本発明の実施の形態1のC/C複合材の製造プロセスの高密度化工程を示す説明図である。図7に説明図を示すように、本実施の形態で得られた脱脂された成形体40を、さらに高密度化工程を経て高密度化しても良い。高密度化工程は、樹脂、あるいはピッチを脱脂された成形体40に含浸する含浸と引き続きヒータ42を用いて行われる熱処理とからなる。
樹脂あるいはピッチが含浸された成形体をさらに熱処理しピッチあるいは樹脂を脱脂する。
図1に示すように、成形体を熱処理することにより、C/C複合材を得る。成形体は、脱脂工程あるいは更に高密度化工程を経た物でも、脱脂工程を経ていない成形工程のあとの成形体であっても良い。図8は、本発明の実施の形態1のC/C複合材の製造プロセスの焼成工程を示す説明図である。図8に説明図を示すように、成形体は焼成工程により炭素化され、C/C複合体50となる。焼成工程は前記脱脂工程と同様に、不活性雰囲気中で加熱し、C/C複合材を得る。焼成工程の最高処理温度は1000〜3200℃であることが好ましい。
焼成温度の最高処理温度が1000℃以上で処理すれば、C/C複合材に含まれる有機物あるいは不純物が十分に揮散し、C/C複合材の使用時にガスの発生を抑えることができる。また、焼成工程の最高処理温度が3200℃以下であれば、C/C複合材表面の昇華がほとんど起こらないので強度低下が小さいと考えられる。
焼成の方法はどのような方法を用いても良いが、誘導コイル51を用いた誘導加熱、ヒーター加熱などが挙げられる。図8の両矢印は、誘導コイルから発生する磁束である。
(スラリー調整試験)
1000mlビーカ−に水400ml炭素繊維(三菱樹脂製K223SE)0.4g、を加え、マグネチックスターラ−を用いて1分間、撹拌しながら炭素繊維を洗浄した。洗浄後、炭素繊維を網にとり水切りを行った。使用した炭素繊維の平均繊維長は6mmである。
フェノール樹脂を分散後、マグネチックスターラ−の回転数を減速し水切りを行った炭素繊維を少しずつ投入し3分間撹拌し開繊させた。
凝集剤A:MTアクアポリマー社製アコフロックC−11(登録商標)
凝集剤B:ハイモ社製ハイモロックDR−1500(登録商標)
凝集剤C:住友精化社製PEO−PFZ(登録商標)
表1は各凝集剤の主成分、イオン性、平均分子量、希釈率及び投入量を示す。凝集剤A及びBは、カチオン系凝集剤であり、凝集剤Bは、凝集剤Aよりも平均分子量が大きい。凝集剤Cは、非イオン性の高分子凝集剤である。これらの凝集剤を希釈し、希釈した凝集剤を凝集剤A,Cは各2ml、凝集剤Bは10mlずつビーカーに投入した。
なお、炭素繊維及び樹脂の凝集剤は
○凝集性良好、△凝集するが、一部水に分散する、×凝集しない(懸濁)で示す。
一方、実施例101〜115において疎水性バインダ粉末は、凝集剤を加えても、水に溶解することなく粉末状を維持していた。
炭素繊維が凝集し、疎水性バインダ粉末が凝集しない(懸濁)実施例101、104、109、110、111では、次の抄造工程において炭素繊維は開口を有する型に抄かれ、疎水性バインダ粉末は抄かれた炭素繊維により濾過され炭素繊維に捕捉され、炭素繊維と疎水性バインダ粉末とからなる抄造体が形成されると考えられる。また、疎水性バインダ粉末は、水に溶解していないので、抄造体を脱水あるいは乾燥する際に水分とともに流出しにくく、疎水性バインダ粉末の大部分を抄造体の中に取り込んだまま水分の除去を容易に行うことができると考えられる。
[実製品試験]
次に、第1の凝集工程(凝集剤A)、第2の凝集工程(業集剤B)、第3の凝集工程(凝集剤C)の順に凝集工程を経て、C/C複合材を実際に製造した(実施例103のA→B→Cの順と同じ)。
ここで、第1の凝集工程で使用する凝集剤Aは、カチオン系凝集剤であり、第2の凝集工程で使用する凝集剤Bは、凝集剤Aよりも平均分子量が大きいカチオン系凝集剤程であり、第1の凝集工程で使用する凝集剤Cは、非イオン性の高分子凝集剤である。
実施例201は、炭素繊維濃度0.1質量%、実施例202は、炭素繊維濃度1.0質量%のスラリーを調整して抄造を行った。
炭素繊維は、三菱樹脂製K223SE(登録商標)を使用した。炭素繊維の平均繊維長は6mmであった。炭素繊維をタンクに投入し200倍の水を用いて2分間撹拌することにより炭素繊維表面を洗浄しタンクから水を抜いて炭素繊維をとりだした。
次に炭素繊維をパルパーに投入し、さらに水を加え撹拌し濃度調整を行ってスラリーを調整した。
こうして得られた実施例201及び202のスラリーに第1の凝集剤、第2の凝集剤、第3の凝集剤を順に投入し、スラリ−中に炭素繊維と疎水性バインダ粉末とを凝集させフロックを形成させた。尚、実施例201のスラリーは1回で十分な量の炭素繊維及び疎水性バインダ粉末を含有させられないので、5回同じ操作を繰り返し、20KLのスラリーを作製した。
1000mm×1500mmの大きさの開口を有する型に実施例201及び202のフロックの形成されたスラリーを供給して、それぞれ抄造体を得た。尚、型は、表面に開口1mmの金網を有している。型の上面に残った抄造体にさらに上から平板でおさえ、通風することにより脱水した。このとき、型の金網より余剰な水分が浸出し、抄造体が脱水された。
実施例201、実施例202ともに最大荷重1200tの油圧プレス機を使用し、圧縮成形を行った。抄造体の厚み方向にかかる圧力は5MPaであった。圧力をかけたまま昇温し、疎水性バインダ粉末を溶融し硬化させた。油圧プレス機の熱板を5℃/minで昇温し、165℃に到達後90分間保持した後、室温(25℃)まで自然冷却した。
実施例201、実施例202ともに同様の方法で圧縮成形された成形体を脱脂した。圧縮成形された成形体を黒鉛板に挟み、ステンレス製の缶に詰め、2重の蓋をして加熱した。二重の蓋の間には、コークスと硬ピッチの混合粉が詰められ、外気の缶内への侵入を防止する役目を果たしている。このステンレス製の缶を炉内に詰め、LNGガスの燃焼で室温から850℃までを11日間かけてほぼ均等な速度で昇温し、冷却した。
実施例201及び実施例202の脱脂された成形体をともに同様の方法で高密度化した。高密度化の方法は、脱脂された成形体にピッチを含浸した後、ステンレス製の缶に詰め、850℃で熱処理することにより、高密度化した。実施例201、実施例202ともにピッチ含浸、熱処理を3回繰り返して行った。
前記高密度化された成形体を焼成することにより、1000×1050×50mmのC/C複合材を得た。実施例201及び202では、高密度化された成形体から、100×100mm程度の板材を切り出し黒鉛ルツボに詰め2000℃まで小型誘導炉で熱処理した。熱処理の方法は以下の通りに行った。
高密度化された成形体の熱処理の速度は、室温から1000℃までが約60分、1000〜2000℃までが約1.5時間となるようそれぞれの区間でほぼ一定出力で昇温した。
こうして得られた板から実施例201では24本、実施例202では10本のテストピースを加工し、曲げ強度を測定した。影強度の測定は島津製作所製オートグラフを使用し三点曲げ試験によって行った。
実施例201では、ワイブル係数が11.9、実施例202ではワイブル係数が7.6であった。また累積破壊確率99.90%(信頼度99.8の強度)の強度は実施例201では112MPa、実施例202では108MPaであり、ほとんど同じであった。
ここでワイブル係数は、体の脆性破壊に対する強度を統計的に記述する場合などに広く利用されており、物体を構成する材料の種類によって決まる。一般にワイブル係数mが大きい材料は強度のばらつきが小さく、設計において安全性を確保することが容易になる。
11 炭素繊維
12 疎水性バインダ粉末
13 水
20 フロック
21 凝集剤
30 抄造体
31 開口
32 型
40 成形体
41、42 ヒータ
50 C/C複合材
51 誘導コイル
Claims (8)
- 炭素繊維と、疎水性バインダ粉末と、水とを含むスラリーを調整する工程と、
前記スラリーに凝集材を添加して、前記スラリーを凝集させる凝集工程と、
前記凝集工程で得られたスラリーを、開口を有する型に供給して、前記スラリーから抄造体を得る抄造工程と、
前記抄造体を加圧しつつ樹脂を熱硬化させ、成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成する焼成工程と、を含むC/C複合材の製造方法。 - 請求項1に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記炭素繊維は、平均繊維長が1〜50mmであるC/C複合材の製造方法。 - 請求項2に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記炭素繊維は、平均繊維長が3〜10mmであるC/C複合材の製造方法。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記スラリーの炭素繊維含有量は2質量%以下であるC/C複合材の製造方法。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記スラリーの炭素繊維含有量は0.05質量%以上であるC/C複合材の製造方法。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記凝集材は、イオン系凝集剤であるC/C複合材の製造方法。 - 請求項6に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記イオン系凝集剤は、カチオン系凝集剤であるC/C複合材の製造方法。 - 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のC/C複合材の製造方法であって、
前記凝集工程は第1の凝集材を用いて前記スラリーを凝集する第1の凝集工程と、
前記第1の凝集工程で凝集された前記スラリーに対し、前記第1の凝集材よりも高分子量である第2の凝集材を添加する第2の凝集工程とを含むC/C複合材の製造方法。
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