本発明は、軸箱支持装置に設けられた弾性部材による前後剛性を低くしながらも走行安定性を良くした鉄道車両に関するものである。
鉄道車両は、安定した状態で高速走行するため、台車の台車枠を輪軸に対して弾性支持する軸箱支持装置が設けられている。その軸箱支持装置は、例えばコイルバネや円筒積層ゴムなどの弾性部材を有し、軸箱が上下方向及び水平方向に弾性支持されている。こうした軸箱支持装置の構造としては、例えば特開2002−331930号公報に開示されたものを挙げることができる。図11は、当該公報に開示されている鉄道車両の鉄道車両用軸箱支持装置を示した一部断面図である。
軸箱体101には、その軸受部102の支持腕103が張り出し、鉛直方向に貫通する取付孔104に下部軸バネ受105が上方から挿入され、棒状のバネ軸106が差し込まれている。支持腕103を貫通した固定ボルト108はバネ軸106に螺設され、下部軸バネ受105及びバネ軸106が支持腕103に固定されている。上方の上部軸バネ受111は、下部軸バネ受105との間に逆円錐状のコイルバネ112が装着され、そのコイルバネ112によって軸箱体101に弾性的にフローティング支持されている。一方、バネ軸106には複数のゴムが積層された積層ゴム113が設けられ、水平方向(前後方向及び左右方向)の変位に対して荷重を受けている。
ところで、例えば、軸箱支持装置の積層ゴム113に硬いものが使用され、前後方向の剛性が高く設定されていると、曲線部を通過する際にはアタック角が大きくなってしまい曲線走行時の安定性がよくない。更に、積層ゴム113による剛性が高いと車輪とレールとの摩擦によって両者の摩耗の進み具合が早くなる。そのため、摩耗によって荒れた車輪やレールの頻繁な交換が余儀なくされ、鉄道事業者はこうしたメンテナンスに大幅な予算を当てなければならなかった。車輪やレールに対する摩耗は、曲線通過時のレールに対する外軌輪の横圧力が大きくなる場合に顕著である。
こうした問題に対しては、前後方向の剛性を下げれば輪軸の持つ自己操舵性によってアタック角が減少して横圧が下がり、走行安定性が高まる。しかし、その一方で積層ゴム113を柔らかく、前後方向の剛性が低く設定されていると、輪軸蛇行動などが発生し易くなり、直線を高速走行する際の安定性を低下させることにつながる。また、曲線通過時のレールに対する外軌輪の横圧力を低減するために様々な技術が開発されてきたが、強制操舵台車方式の鉄道車両は重く大掛かりな追加装置が必要であったため、有効なものとはなり得なかった。
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、軸箱支持装置に対して設けられた弾性部材による前後剛性を低くしながらも直線の高速走行安定性を良くした鉄道車両を提供することを目的とする。
本発明に係る鉄道車両は、車輪の踏面に対してブレーキシリンダの動作によって制輪子を押し当てて制動する左右の踏面ブレーキユニットと、各ブレーキシリンダへの圧縮エアの給排気を制御するブレーキコントローラとを有するものであり、前記ブレーキシリンダ或いは他に設けられたエアシリンダが、輪軸を回転支持する軸箱に対して車体後方側から支持荷重を作用させるための軸箱支持シリンダであって、前記ブレーキコントローラが、直線走行時には、輪軸と台車枠との間で車体前後方向に弾性力が作用する弾性部材に関し、その弾性変形内で前記軸箱を後方から前記支持荷重で支えるように前記軸箱支持シリンダに圧縮エアを供給し、曲線走行時には、前記弾性部材の弾性変形に伴う前記軸箱の移動を自由にするように前記軸箱支持シリンダから圧縮エアを排気するようにしたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記軸箱支持シリンダが前記踏面ブレーキユニットを構成するブレーキシリンダであり、前記踏面ブレーキユニットの制輪子頭と前記軸箱との間には、所定の条件によって一定の長さを保って前記支持荷重を受けることができる伸縮可能な剛性ロッドが連結されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記剛性ロッドが、シリンダ部材内に棒状のピストン部材が挿入され、そのピストン部材の摺動によって可変するシリンダ部材内のシリンダ油室が、リザーブタンクとの間でリリーフ弁の流路とチェック弁の流路とによってそれぞれ接続されたものであって、作動油は、前記シリンダ油室内の圧力がリリーフ圧を超えた場合に前記リザーブタンクへと流れ、前記チェック弁は前記リザーブタンクから前記シリンダ油室への流れを許容するものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記剛性ロッドが、シリンダ部材内に棒状のピストン部材が摺動可能に挿入され、そのシリンダ部材内には、前記ピストン部材を把持することによって軸方向の移動を拘束するピエゾ素子からなる把持手段が設けられたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記剛性ロッドの一端が前記踏面ブレーキユニットの制輪子頭に固定されている脱シュー止ピンに連結され、他端が前記軸箱側に固定された支持ピンに連結されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記軸箱支持シリンダが、前記踏面ブレーキユニットを構成するブレーキシリンダとは別に設けられたエアシリンダであり、前記踏面ブレーキユニットは、車輪の後方に配置された前記エアシリンダとは反対の車輪前方に配置されたことが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記エアシリンダが、前記踏面ブレーキユニットと同様に制輪子頭を動作させる構造のシリンダユニットを構成するものであり、前記軸箱は、車体後方側に突設した先端の軸受け部が側梁に対して支持ピンによって連結された軸梁を備えるものであり、前記軸梁には水平方向に張り出して形成された連結アームが前記制輪子頭に固定された固定ピンに連結されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記支持ピンと固定ピンとが同軸上に配置されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記制輪子頭には踏面清掃部材が取り付けられたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記軸箱支持シリンダとブレーキコントローラとを連結する配管には電磁切替弁が接続され、その電磁切替弁は、前記ブレーキコントローラから前記左右の軸箱支持シリンダに対する圧縮エアの供給と排気とを左右同時に行う場合と、一方に供給を行い他方から排気を行う場合とで切り替えられるものであることが好ましい。
よって、本発明の鉄道車両によれば、ブレーキコントローラから軸箱支持シリンダに対して圧縮エアを供給或いは排気することにより、直線走行時には軸箱に対して後方から支持荷重を作用させ、曲線走行時には荷重をかけずに軸箱の移動を自由にするので、軸箱支持装置に対して設けられた弾性部材による前後剛性を低いものにした場合に、曲線走行時には車輪のアタック角の減少により押圧を下げてスムーズに曲線を走行する一方、直線走行時には輪軸蛇行動を防止し高速での直線走行を安定させることができる。
軸箱支持システムの第1実施形態を示した簡略図である。
第1実施形態の軸箱支持システムについてその一部の取り付け構造を示した平面図である。
第1実施形態の軸箱支持システムについてその一部の取り付け構造を示した側面図である。
油圧回路を利用した剛性ロッドを示した図である。
ピエゾ素子を利用した剛性ロッドを示した図である。
軸箱支持システムの第2実施形態を示した簡略図である。
軸箱支持システムの第3実施形態を示した簡略図である。
第4実施形態の軸箱支持システムについてその一部の取り付け構造を示した平面図である。
第4実施形態の軸箱支持システムについてその一部の取り付け構造を示した側面図である。
軸箱支持システムの第5実施形態を示した簡略図である。
鉄道車両の鉄道車両用軸箱支持装置を示した一部断面図である。
次に、本発明に係る鉄道車両の一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
最近、環境問題に関する意識の高まりから、鉄道輸送では車両の制動エネルギを積極的に架線もしくは蓄電装置に戻す開発が進んでいる。そのため、多くの鉄道車両には消費電力を削減するための電力回生ブレーキが採用され、車両停止時にはモータを発電機として作動させ、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換して再利用することが行われている。そして、回収された電気エネルギは、架線を媒体として他の列車に電力が融通される。
しかし、電力回生ブレーキだけでは電気システムがダウンした場合に鉄道車両が制動不能となってしまうため、鉄道車両には依然として従来からの機械式ブレーキがバックアップ装置として搭載されている。しかし、その機械式ブレーキは、緊急停止などの非常時にしか使用されないにもかかわらず重量物として鉄道車両に搭載されており、イニシャルコストの割に不経済であった。よって、機械式ブレーキは、高価なものであるにも関わらず非常制動時以外にその機能を持て余しているのが現状であった。そこで本実施形態では、そうした機械式ブレーキを利用した軸箱支持システムを備えた鉄道車両を提案する。
図1は、軸箱支持システムの第1実施形態を示した簡略図である。機械式ブレーキを構成する踏面ブレーキユニット20は、エアシリンダによるブレーキシリンダ21が制輪子22を車輪5の踏面に押し付けることによって制動トルクを発生させるように構成されている。そのブレーキシリンダ21には、圧縮エアを供給するためのブレーキコントローラ1が接続されている。ブレーキコントローラ1は、ブレーキシリンダ21から車体前方に出力される支持荷重Fなどをコントロールできるようにしたものである。
本実施形態の軸箱支持システムには、ブレーキシリンダ21と軸箱6とが剛性ロッド30を介して連結され、輪軸7を車体後方から支える構造がとられている。軸箱支持装置は、積層ゴムなどの弾性部材によって台車枠を水平方向に支持しているが、本実施形態では曲線走行時のアタック角を小さくして横圧を低くするため、前後方向の剛性が低く設定されている。しかし、それでは前述したように直線走行時の輪軸蛇行動などが発生し易くなってしまう。そこで本実施形態では、弾性部材そのものの剛性を低くしながらも、前後方向の剛性を補うための構造が採用されている。すなわち、曲線走行時には弾性部材そのものの柔らかい剛性のまま走行し、直線走行時には後方から軸箱6に対して支持荷重Fを作用させることで剛性を補うようにしている。
ここで図2及び図3は、軸箱支持システムの一部を示した取り付け構造図であり、図2は平面を示し、図3は側面を示している。
台車枠は、左右の側梁2が横梁3によって連結され、側梁2の中間位置には車体を支持する空気バネ4が配置されている。台車は側梁2の前後位置に車輪5が配置され、車輪5は、その輪軸7が軸箱6によって回転可能に支持されている。
軸箱6は、軸箱支持装置を介して側梁2の端部に設けられたものであり、その側梁2に沿って延びる支持腕8が一体になって形成されている。軸箱支持装置は、側梁2の端部位置に筒状に形成されたバネ帽9が溶接接合され、その中には例えば図11に示すようなコイルバネと積層ゴムの組合せのように、輪軸7に対して台車枠を弾性支持する弾性部材が収納されている。また、軸箱6と一体の支持腕8には支軸11が上下方向に貫通し、その支軸11が側梁2の下面に溶接接合された座板12に締結されている。
踏面ブレーキユニット20は横梁3に取り付けられ、ブレーキシリンダ21(適宜図1参照)の出力を受けて作動する押棒の先端に、車輪5の踏面5aに対して圧接・離間する制輪子22が取り付けられている。なお、ブレーキ装置の詳しい内部構造図は省略する。 踏面ブレーキユニット20は、梃子の原理によってブレーキシリンダ21の出力を伝え、車輪5の踏面5aに制輪子22を押し当てるように構成されている。すなわち、制輪子22の駆動手段としてブレーキシリンダ21が使用され、圧縮エアが供給ポート23から供給されると、ブレーキシリンダ21は、圧縮エアによって戻しバネ21aに付勢された内部のピストンが作動し、ボックス24内に設けられたリンク部材を介して梃子レバーの回転運動に変換され、それが更に押棒の直線運動になって制輪子22を動作させる。
制輪子22を装着した制輪子頭25は、ボックス24に形成されたブラケット24aとの間に制輪子頭吊り26が連結されている。制輪子頭吊り26が下端側で連結されたピン27は、脱シュー止ピンとしても機能している。すなわち、車輪5の踏面5aはテーパになっているため、大きな荷重で押し当てられた制輪子22が滑って脱落してしまうことがある。そこで、制輪子22がずれる方向には不図示の剛体部(台車枠に固定された当て板)が設けられ、制輪子22が滑った場合にでも脱シュー止ピン27の先端が剛体部に当たってずれを防止するようになっている。
剛性ロッド30は、こうした脱シュー止ピン27を利用して一端が連結され、他端は、図2に示すように支持腕8に支持ピン28が固定されているので、その支持ピン28に連結されている。本実施形態では、こうして支持腕8と制輪子頭25との間に剛性ロッド30が連結され、ブレーキシリンダ21による制輪子22を動作させるための駆動力が、剛性ロッド30を介して支持腕8から軸箱6へと伝えられるよう構成されている。従って、台車枠を前後方向に支える弾性部材の剛性を低く設定しているが、剛性ロッド30を介して軸箱6に後方から支持荷重Fを作用させることによって、柔らかい弾性部材の剛性を補っている。
ところで、この軸箱支持システムでは踏面ブレーキユニット20を利用しているため、踏面ブレーキユニット20が制動手段として機能する場合には、その制動動作を妨げないようにする必要がある。そこで、剛性ロッド30は、次に示すような構造によって剛性支持状態の切り換えが可能なものとして構成されている。図4及び図5は図1乃至図3に示す剛性ロッド30を示した図であり、図4は油圧回路を利用した剛性ロッド30Aであり、図5はピエゾ素子を利用した剛性ロッド30Bである。
先ず、図4に示す剛性ロッド30Aは、一端を開口した筒状のシリンダ31と、そのシリンダ31に挿入された棒状のピストン32によって構成され、シリンダ31とピストン32の摺動による伸縮を可能にしたものである。シリンダ31とピストン32にはピン孔31a,32aが形成され、取り付けに際して図2に示すように脱シュー止ピン27や支持ピン28が挿入される。シリンダ31の筒内には、開口部分と内部奥の2箇所に低摩擦樹脂33が装着され、そこにOリング34がそれぞれ嵌め込まれている。軸方向に配置されたOリング34の間には、円筒状の低摩擦樹脂による摺動支持ガイド35が設けられ、ピストン32が摺動可能に挿入されている。
こうした剛性ロッド30Aは、シリンダ31とピストン32が軸方向に摺動して伸縮が可能である一方、所定の長さを保って収縮方向にかかる支持荷重Fを受けることができるよう構成されている。つまり、剛性ロッド30Aには支持荷重Fに対して剛性を発揮するための構造として油圧回路が形成されている。具体的には、シリンダ31とピストン32との間には閉じられた可変のシリンダ油室36が形成され、その油室36内に作動油が注入されている。一方、シリンダ31には、図4に記載するようにリザーブタンク37が設けられ、シリンダ油室36との間でリリーフ弁38とチェック弁39が接続されている。
チェック弁39は、シリンダ油室36からリザーブタンク37への流れを遮断し、逆にリザーブタンク37からシリンダ油室36への流れを許容するように設けられている。また、リリーフ弁38は、支持荷重Fを受けることができるようにリリーフ圧が設定され、そのリリーフ圧以上でシリンダ油室36内の作動油がリザーブタンク37へと流れるように構成されている。なお、ここでは油圧回路の構成を概念的に示しており、具体的な構造は、リザーブタンク37、リリーフ弁38及びチェック弁39がシリンダ31内に組み込まれる他、外部に設けるようにしたものであってもよい。
こうした剛性ロッド30Aは、その収縮方向に荷重が作用するとシリンダ油室36内に満たされた作動油が加圧されるが、リリーフ圧以下であれば作動油が流れないため収縮せずに長さが維持される。しかし、シリンダ油室36内の圧力がリリーフ圧を超えてしまった場合には、作動油がリリーフ弁38を通ってリザーブタンク37へと流れて剛性ロッド30Aが収縮する。剛性ロッド30Aが収縮することによって、制輪子22と車輪5の踏面5aとの隙間が無くなって制動が可能になる。よって、リリーフ弁38は、軸箱6を支持する支持荷重Fが作用していても作動油を流さないが、それ以上に大きい荷重が作用した場合には作動油を流し、制輪子22を車輪5に押圧させる制動を可能にする。
剛性ロッド30Aが収縮すると、シリンダ油室36内の作動油がリリーフ弁38を通ってリザーブタンク37へと流れる。一方、剛性ロッド30Aが伸びる際にはシリンダ31に対して相対的にピストン32が引っ張られ、シリンダ油室36が拡張して内部が負圧になる。そのため、リザーブタンク37内の作動油がチェック弁39を通って流れ、シリンダ油室36を満たすように注入される。
軸箱支持システムを備えた本実施形態の鉄道車両では、機械式ブレーキが使用される非常制動時の他、直線走行時と曲線走行時とで踏面ブレーキユニット20の操作がそれぞれ切り換えられる。つまり非常制動時にはリリーフ圧を超える荷重を出力する他、曲線走行時には、図1に示す支持荷重Fを解除し、弾性部材そのままの低い剛性によって台車枠に対する輪軸7の傾きを許容する一方、直線走行時には、軸箱6を介して走行前方に支持荷重Fを作用させることで弾性部材の剛性を補って輪軸7を支持する。
鉄道車両の走行位置は不図示の位置検出装置によって検出され、その検出信号を受けたブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21が操作される。そこで先ず、曲線走行が検出された場合には、ブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21内のエアが大気解放される。これによりブレーキシリンダ21は、戻しバネ21aによる付勢力が作用するのみであって、より大きな外力によって自由に伸縮するので軸箱6の移動を制限しない。そのため、剛性の低い弾性部材の変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾き、車輪5のアタック角を減少させることにより、押圧を下げてスムーズに曲線を走行することが可能になる。
一方、直線走行時には、ブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21内に圧縮エアが供給され、そうしたブレーキシリンダ21からの出力が制輪子22を車輪5の踏面5a側へ近づけるように作用する。しかし、このとき制輪子22が踏面5aに当てられる前に剛性ロッド30Aが移動を制限するので、ブレーキシリンダ21の出力が軸箱6を支える支持荷重Fとなって作用する。そして、軸箱6を介して輪軸7が支持されるため、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動が防止され、高速での直線走行を安定させることができる。
剛性ロッド30Aは、支持荷重Fによってシリンダ油室36内の作動油が加圧されるが、リリーフ圧以下であるため作動油の流れが制限されて長さが維持される。よって、このような状態ではブレーキは作用しないが、緊急停止などの非常制動時には電力回生ブレーキではなく、この制輪子22を使用した停止が必要になる。そこで、非常制動時にはブレーキコントローラ1から供給される圧縮エアによって高圧でブレーキシリンダ21が操作され、リリーフ圧を超える荷重が出力される。すると、シリンダ油室36内の作動油がリザーブタンク37へと流れて剛性ロッド30Aが収縮し、これによって制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が停止する。
次に、図1乃至図3の剛性ロッド30が図5に示す剛性ロッド30Bの場合について説明する。剛性ロッド30Bは、一端を開口した筒状のシリンダ41と、そのシリンダ41に挿入された棒状のピストン42とによって構成され、シリンダ41とピストン42の摺動による伸縮が可能なものである。シリンダ41とピストン42にはピン孔41a,42aが形成され、取り付けに際して図2に示すように脱シュー止ピン27や支持ピン28が挿入される。シリンダ41の内周面には、軸方向に長いピエゾ素子43が円周状に等間隔で複数配置されている。ピエゾ素子43の軸方向両端にはピストン42を摺動支持する低摩擦樹脂44が固定されており、開口側の低摩擦樹脂44内にはOリング45がはめ込まれている。また、他方の低摩擦樹脂44内にはピエゾ素子43に接続された電源線46が入れられている。そして、剛性ロッド30Bがスムーズに伸縮するようにシリンダ41にはエア抜孔47が形成されている。
剛性ロッド30Bは、通常時はシリンダ41とピストン42とがフリーであるため伸縮が自在である。しかし、ピエゾ素子43に電圧が印加されると、そのピエゾ素子43が径方向に膨張することによってピストン42が把持され、その摩擦力によってピストン42の移動が制限されるようになっている。従って、剛性ロッド30Bは、ピエゾ素子43に対する電圧の印加によって、その長さを維持する剛性支持状態の切り替えが可能になっている。
そこで、軸箱支持システムを備えた本実施形態の鉄道車両が走行すると、その走行位置が検出され、検出信号を受けたブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21が操作され、また剛性ロッド30Bのピエゾ素子43に対する電圧が制御される。
先ず、曲線走行時には、ブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21内のエアが大気解放される。そのため、ブレーキシリンダ21の戻しバネ21aによって制輪子22は車輪5から離されている。また、剛性ロッド30Bは、ピエゾ素子43への通電が遮断された縮小した状態であるため、ピストン42がフリーになっている。従って、軸箱6の移動が前後方向に拘束されることはなく、剛性の低い弾性部材の変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾き、車輪5のアタック角が減少することによって押圧を下げたスムーズな曲線走行が可能になっている。
一方、直線走行時には、ピエゾ素子43に電圧が印加されることによってピストン42が把持され、剛性ロッド30Bの長さが一定に保たれる。そして、ブレーキコントローラ1からブレーキシリンダ21に圧縮エアが供給されると、その出力が剛性ロッド30Bを介して軸箱6に伝えられる。従って、このとき軸箱6を介して輪軸7が支持されるため、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。
更に、緊急停止などの非常制動時には、ピエゾ素子43への通電が遮断されてシリンダ41とピストン42とがフリーになって剛性ロッド30Bの伸縮が自由になる。そこで、ブレーキコントローラ1からブレーキシリンダ21の圧縮エアが供給されると、ブレーキシリンダ21の出力によって制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が停止する。
ところで、図1に示す軸箱支持システムでは、踏面ブレーキユニット20を機械式ブレーキとして機能させる他、軸箱6を支持荷重Fで支持するための荷重発生手段としても機能させている。従って、非常制動時には踏面ブレーキユニット20がブレーキとしての機能を損なわないようにするため、軸箱6と踏面ブレーキユニット20とが剛性ロッド30(30A,30B)によって連結されていた。そこで、次に説明する軸箱支持システムでは、踏面ブレーキユニット20とは別の駆動源を持って軸箱6を支持するようにしたものを提案する。図6及び図7は、そうした第2または第3実施形態の軸箱支持システムを示した簡略図である。
図6に示す軸箱支持システムは、踏面ブレーキユニット20の他に荷重発生手段としてエアシリンダ51が設けられている。エアシリンダ51は、ブレーキシリンダ21と同様にブレーキコントローラ1に接続され、供給される圧縮エアによって支持荷重Fを出力するものである。エアシリンダ51には軸箱6との間で剛性ロッド52が連結され、エアシリンダ51からの支持荷重Fが剛性ロッド52を介して軸箱6に伝達されるよう構成されている。この剛性ロッド52は、図4及び図5に示す伸縮可能なものではなく、エアシリンダ51の支持荷重Fをそのまま軸箱6へ伝達するものである。
次に、図7に示す軸箱支持システムは、同じく踏面ブレーキユニット20の他に、荷重発生手段としてエアシリンダ51が設けられ、ブレーキコントローラ1から供給される圧縮エアによって支持荷重Fを出力するものである。そして、軸箱6との間に剛性ロッド52が連結され、エアシリンダ51からの支持荷重Fが剛性ロッド52を介して軸箱6に伝達されるよう構成されている。しかし、本実施形態では踏面ブレーキユニット20が車輪5の前方に配置され、エアシリンダ51との設置箇所を分散させて狭い設置スペースにおける取り扱いが容易になるように構成されている。
そこで、こうした軸箱支持システムを備えた鉄道車両は、その走行位置が不図示の検出装置によって検出され、ブレーキコントローラ1によってエアシリンダ51がコントロールされる。曲線走行時には、ブレーキコントローラ1によってエアシリンダ51内のエアが大気解放される。このとき、エアシリンダ51は戻しバネ51aによる付勢力のみであって、より大きな外力による伸縮が自由になる。従って、軸箱6の移動が前後方向に拘束されることはなく、剛性の低い弾性部材の変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾き、車輪5のアタック角が減少することにより押圧を下げたスムーズな曲線走行が可能になる。
一方、直線走行時にはエアシリンダ51内に圧縮エアが供給されるため、エアシリンダ51の出力が軸箱6を支える支持荷重Fとなって作用する。従って、軸箱6を介して輪軸7が支持され、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。
そして、曲線及び直線走行のいずれの場合であっても、緊急停止などの非常制動時には踏面ブレーキユニット20のブレーキシリンダ21に圧縮エアが供給され、制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が止められる。
続いて、図8及び図9は、第4実施形態の軸箱支持システムについてその一部を示した取り付け構造図であり、図8は平面を示し、図9は側面を示している。なお、図2及び図3に示したものと同じ構成部材については同じ符号を付している。
本実施形態の鉄道車両は、軸箱6と一体になった軸梁60を有するものであり、その軸梁60は側梁2に形成されたブラケット2aに対して連結されている。軸梁60は、軸受部60aが支持ピン61によって連結されているが、その軸受部60aには円筒形状の軸梁支持ゴムが装填され、支持ピン61に対する軸梁60の傾きや前後方向の変位が吸収できるように構成されている。
また、軸梁60には水平方向に連結アーム62が張り出し、シリンダユニット65(踏面ブレーキユニット20と同様の構造)の制輪子頭67に固定された固定ピン78に連結されている。連結アーム62の軸穴には緩衝ゴム63が装填され、その緩衝ゴム63を介して固定ピン78が挿入されている。このシリンダユニット65には、例えば制輪子の代わりに柔らかい素材であって踏面5aに押し付けても制動力が発生しない踏面清掃部材66が制輪子頭67に取り付けられている。従って本実施形態ではこのシリンダユニット65を軸箱支持に使用するため、制動には図7に示すように車輪5の前方に不図示の踏面ブレーキユニット20が別に設けられている。
軸梁60を連結する支持ピン61と、軸梁60と一体の連結アーム62を連結する固定ピン78とは同軸になるように配置され、軸箱支持装置の上下変動によるピッチングが作用しても、両ピン61,78が回転中心となってシリンダユニット65に負荷がかからないように構成されている。そして、シリンダユニット65のエアシリンダには、図1に示すようにブレーキコントローラ1が接続され、その出力がコントロールされるように構成されている。
そこで、本実施形態の鉄道車両では、走行位置が不図示の検出装置によって検出され、ブレーキコントローラ1によってシリンダユニット65がコントロールされる。曲線走行時には、ブレーキコントローラ1によってシリンダユニット65からエアが大気解放される。そのため、シリンダユニット65のエアシリンダは、内部の戻しバネの付勢力より大きな外力によって伸縮が自由になる。従って、軸箱6の移動が前後方向に拘束されることはなく、軸受部60a内に設けられた剛性の低い軸梁支持ゴムの弾性変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾く。そのため、車輪5のアタック角が減少することによって押圧を下げたスムーズな曲線走行が可能になる。
一方、直線走行時には、ブレーキコントローラ1によってシリンダユニット65へ圧縮エアが供給され、その出力が連結アーム62及び軸梁60を介して軸箱6を支える支持荷重Fとなって作用する。そのため軸箱6を介して輪軸7が支持され、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。なお、このとき踏面清掃部材66が車輪5の踏面5aに接触したとしても、それによって制動力が発生することはない。
ところで、前述した各実施形態のように弾性部材の前後剛性を低くし、輪軸7の自己操舵性を高める鉄道車両は、最も横圧の高い車両内先頭軸の外軌輪は、曲線進入時にアンダーステア状態になりやすい。これは走行抵抗やアタック角を持ったフランジ接触の分力などによる。従って、車両内先頭軸の車輪は、動力源を持たない自己ステアリング力だけでは操舵に限界があり、積極的に輪軸を操作しなければ精度の高いステアリングとなり得ない。そこで次に、操舵機能をもった鉄道車両について説明する。
図10は、軸箱支持システムの第5実施形態を示した簡略図である。本実施形態は、図1に示すものの変形例であり、踏面ブレーキユニット20とブレーキコントローラ1との間に電磁切替弁70を接続させたものである。電磁切替弁70は、4ポート3ブロック弁であり、ブレーキコントローラ1側の配管71,72と、ブレーキシリンダ21L,21Rの配管73,74が接続されている。この場合、配管71はブレーキシリンダ21へ圧縮エアを供給する供給管であり、配管72はブレーキシリンダ21L,21R内の圧縮エアを大気解放する排気管である。
そこで、鉄道車両が直線走行している場合、電磁切替弁70は、図示するようにBブロックによってポート間接続が行われ、配管71から供給された圧縮エアは、配管73,74を介して左右のブレーキシリンダ21L,21Rへと送られる。従って、軸箱6を介して輪軸7が支持され、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。また、緊急停止などの非常制動時にも電磁切替弁70のポート間はBブロックで接続され、ブレーキシリンダ21L,21Rへ圧縮エアが供給され、制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が止められる。
そして、鉄道車両が右カーブを走行する場合には、電磁切替弁70のポート間がAブロックによって接続され、配管71と73、配管72と74がそれぞれ連通する。従って、ブレーキコントローラ1からの圧縮エアは左側のブレーキシリンダ21Lに供給され、剛性ロッド30を介して軸箱6に支持荷重Fが作用する。一方、右側のブレーキシリンダ21Rからは圧縮エアが大気解放されるため、軸箱6に対する前後方向の拘束が解除される。よって、左側ブレーキシリンダ21Lの出力によって輪軸7が曲線に従って傾けられ、アタック角を小さくしたスムーズな走行が可能となる。
逆に、鉄道車両が左カーブを走行する場合には、電磁切替弁70のポート間がCブロックによって接続され、配管71と74、そして配管72と73がそれぞれ連通する。従って、ブレーキコントローラ1からの圧縮エアは右側のブレーキシリンダ21Rに供給され、剛性ロッド30を介して軸箱6に支持荷重Fが作用する。一方、左側のブレーキシリンダ21Lからは圧縮エアが大気解放されるため、軸箱6に対する前後方向の拘束が解除される。よって、右側ブレーキシリンダ21Rの出力によって輪軸7が曲線に従って傾けられ、アタック角を小さくしたスムーズな走行が可能となる。
以上、本発明に係る鉄道車両について実施形態をしめして説明したが、本発明はこれらに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、図10の第5実施形態では、軸箱6を踏面ブレーキユニット20で支持する図1の第1実施形態を変形させて示したが、図6及び図7の第2または第3実施形態において、エアシリンダ51とブレーキコントローラ1とを接続する配管に電磁切替弁70を設けるようにしてもよい。
1 ブレーキコントローラ
2 側梁
3 横梁
5 車輪
6 軸箱
7 輪軸
20 踏面ブレーキユニット
21 ブレーキシリンダ
22 制輪子
25 制輪子頭
27 脱シュー止ピン
30(30A,30B) 剛性ロッド
F 支持荷重
本発明は、軸箱支持装置に設けられた弾性部材による前後剛性を低くしながらも走行安定性を良くした鉄道車両に関するものである。
鉄道車両は、安定した状態で高速走行するため、台車の台車枠を輪軸に対して弾性支持する軸箱支持装置が設けられている。その軸箱支持装置は、例えばコイルバネや円筒積層ゴムなどの弾性部材を有し、軸箱が上下方向及び水平方向に弾性支持されている。こうした軸箱支持装置の構造としては、例えば特開2002−331930号公報に開示されたものを挙げることができる。図11は、当該公報に開示されている鉄道車両の鉄道車両用軸箱支持装置を示した一部断面図である。
軸箱体101には、その軸受部102の支持腕103が張り出し、鉛直方向に貫通する取付孔104に下部軸バネ受105が上方から挿入され、棒状のバネ軸106が差し込まれている。支持腕103を貫通した固定ボルト108はバネ軸106に螺設され、下部軸バネ受105及びバネ軸106が支持腕103に固定されている。上方の上部軸バネ受111は、下部軸バネ受105との間に逆円錐状のコイルバネ112が装着され、そのコイルバネ112によって軸箱体101に弾性的にフローティング支持されている。一方、バネ軸106には複数のゴムが積層された積層ゴム113が設けられ、水平方向(前後方向及び左右方向)の変位に対して荷重を受けている。
ところで、例えば、軸箱支持装置の積層ゴム113に硬いものが使用され、前後方向の剛性が高く設定されていると、曲線部を通過する際にはアタック角が大きくなってしまい曲線走行時の安定性がよくない。更に、積層ゴム113による剛性が高いと車輪とレールとの摩擦によって両者の摩耗の進み具合が早くなる。そのため、摩耗によって荒れた車輪やレールの頻繁な交換が余儀なくされ、鉄道事業者はこうしたメンテナンスに大幅な予算を当てなければならなかった。車輪やレールに対する摩耗は、曲線通過時のレールに対する外軌輪の横圧力が大きくなる場合に顕著である。
こうした問題に対しては、前後方向の剛性を下げれば輪軸の持つ自己操舵性によってアタック角が減少して横圧が下がり、走行安定性が高まる。しかし、その一方で積層ゴム113を柔らかく、前後方向の剛性が低く設定されていると、輪軸蛇行動などが発生し易くなり、直線を高速走行する際の安定性を低下させることにつながる。また、曲線通過時のレールに対する外軌輪の横圧力を低減するために様々な技術が開発されてきたが、強制操舵台車方式の鉄道車両は重く大掛かりな追加装置が必要であったため、有効なものとはなり得なかった。
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、軸箱支持装置に対して設けられた弾性部材による前後剛性を低くしながらも直線の高速走行安定性を良くした鉄道車両を提供することを目的とする。
本発明に係る鉄道車両は、車輪の踏面に対してブレーキシリンダの動作によって制輪子を押し当てて制動する左右の踏面ブレーキユニットと、各ブレーキシリンダへの圧縮エアの給排気を制御するブレーキコントローラとを有するものであって、前記踏面ブレーキユニットが車輪前方に配置され、その踏面ブレーキユニットを構成するブレーキシリンダとは別に設けられたエアシリンダが、前記踏面ブレーキユニットと同様に制輪子頭を動作させる構造のシリンダユニットを構成し、輪軸を回転支持する軸箱に対して車体後方側から支持荷重を作用させるための軸箱支持シリンダであり、前記軸箱は、車体後方側に突設した先端の軸受け部が側梁に対して支持ピンによって連結された軸梁を備え、その軸梁には、水平方向に張り出して形成された連結アームが前記制輪子頭に固定された固定ピンに連結され、前記ブレーキコントローラが、直線走行時には、輪軸と台車枠との間で車体前後方向に弾性力が作用する弾性部材に関し、その弾性変形内で前記軸箱を後方から前記支持荷重で支えるように前記軸箱支持シリンダに圧縮エアを供給し、曲線走行時には、前記弾性部材の弾性変形に伴う前記軸箱の移動を自由にするように前記軸箱支持シリンダから圧縮エアを排気するようにしたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記支持ピンと固定ピンとが同軸上に配置されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記制輪子頭には踏面清掃部材が取り付けられたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記軸箱支持シリンダとブレーキコントローラとを連結する配管には電磁切替弁が接続され、その電磁切替弁は、前記ブレーキコントローラから左右の前記軸箱支持シリンダに対する圧縮エアの供給と排気とを左右同時に行う場合と、一方に供給を行い他方から排気を行う場合とで切り替えられるものであることが好ましい。
よって、本発明の鉄道車両によれば、ブレーキコントローラから軸箱支持シリンダに対して圧縮エアを供給或いは排気することにより、直線走行時には軸箱に対して後方から支持荷重を作用させ、曲線走行時には荷重をかけずに軸箱の移動を自由にするので、軸箱支持装置に対して設けられた弾性部材による前後剛性を低いものにした場合に、曲線走行時には車輪のアタック角の減少により押圧を下げてスムーズに曲線を走行する一方、直線走行時には輪軸蛇行動を防止し高速での直線走行を安定させることができる。
軸箱支持システムの第1参考例を示した簡略図である。
軸箱支持システムの第1参考例についてその一部の取り付け構造を示した平面図である。
軸箱支持システムの第1参考例についてその一部の取り付け構造を示した側面図である。
油圧回路を利用した剛性ロッドを示した図である。
ピエゾ素子を利用した剛性ロッドを示した図である。
軸箱支持システムの第2参考例を示した簡略図である。
軸箱支持システムの第3参考例を示した簡略図である。
軸箱支持システムの実施形態についてその一部の取り付け構造を示した平面図である。
軸箱支持システムの実施形態についてその一部の取り付け構造を示した側面図である。
軸箱支持システムの第4参考例を示した簡略図である。
鉄道車両の鉄道車両用軸箱支持装置を示した一部断面図である。
次に、本発明に係る鉄道車両の一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
最近、環境問題に関する意識の高まりから、鉄道輸送では車両の制動エネルギを積極的に架線もしくは蓄電装置に戻す開発が進んでいる。そのため、多くの鉄道車両には消費電力を削減するための電力回生ブレーキが採用され、車両停止時にはモータを発電機として作動させ、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換して再利用することが行われている。そして、回収された電気エネルギは、架線を媒体として他の列車に電力が融通される。
しかし、電力回生ブレーキだけでは電気システムがダウンした場合に鉄道車両が制動不能となってしまうため、鉄道車両には依然として従来からの機械式ブレーキがバックアップ装置として搭載されている。しかし、その機械式ブレーキは、緊急停止などの非常時にしか使用されないにもかかわらず重量物として鉄道車両に搭載されており、イニシャルコストの割に不経済であった。よって、機械式ブレーキは、高価なものであるにも関わらず非常制動時以外にその機能を持て余しているのが現状であった。そこで本実施形態では、そうした機械式ブレーキを利用した軸箱支持システムを備えた鉄道車両を提案する。
図1は、軸箱支持システムの第1参考例を示した簡略図である。機械式ブレーキを構成する踏面ブレーキユニット20は、エアシリンダによるブレーキシリンダ21が制輪子22を車輪5の踏面に押し付けることによって制動トルクを発生させるように構成されている。そのブレーキシリンダ21には、圧縮エアを供給するためのブレーキコントローラ1が接続されている。ブレーキコントローラ1は、ブレーキシリンダ21から車体前方に出力される支持荷重Fなどをコントロールできるようにしたものである。
この軸箱支持システムには、ブレーキシリンダ21と軸箱6とが剛性ロッド30を介して連結され、輪軸7を車体後方から支える構造がとられている。軸箱支持装置は、積層ゴムなどの弾性部材によって台車枠を水平方向に支持しているが、曲線走行時のアタック角を小さくして横圧を低くするため、前後方向の剛性が低く設定されている。しかし、それでは前述したように直線走行時の輪軸蛇行動などが発生し易くなってしまう。そこで、弾性部材そのものの剛性を低くしながらも、前後方向の剛性を補うための構造が採用されている。すなわち、曲線走行時には弾性部材そのものの柔らかい剛性のまま走行し、直線走行時には後方から軸箱6に対して支持荷重Fを作用させることで剛性を補うようにしている。
ここで図2及び図3は、軸箱支持システムの一部を示した取り付け構造図であり、図2は平面を示し、図3は側面を示している。
台車枠は、左右の側梁2が横梁3によって連結され、側梁2の中間位置には車体を支持する空気バネ4が配置されている。台車は側梁2の前後位置に車輪5が配置され、車輪5は、その輪軸7が軸箱6によって回転可能に支持されている。
軸箱6は、軸箱支持装置を介して側梁2の端部に設けられたものであり、その側梁2に沿って延びる支持腕8が一体になって形成されている。軸箱支持装置は、側梁2の端部位置に筒状に形成されたバネ帽9が溶接接合され、その中には例えば図11に示すようなコイルバネと積層ゴムの組合せのように、輪軸7に対して台車枠を弾性支持する弾性部材が収納されている。また、軸箱6と一体の支持腕8には支軸11が上下方向に貫通し、その支軸11が側梁2の下面に溶接接合された座板12に締結されている。
踏面ブレーキユニット20は横梁3に取り付けられ、ブレーキシリンダ21(適宜図1参照)の出力を受けて作動する押棒の先端に、車輪5の踏面5aに対して圧接・離間する制輪子22が取り付けられている。なお、ブレーキ装置の詳しい内部構造図は省略する。 踏面ブレーキユニット20は、梃子の原理によってブレーキシリンダ21の出力を伝え、車輪5の踏面5aに制輪子22を押し当てるように構成されている。すなわち、制輪子22の駆動手段としてブレーキシリンダ21が使用され、圧縮エアが供給ポート23から供給されると、ブレーキシリンダ21は、圧縮エアによって戻しバネ21aに付勢された内部のピストンが作動し、ボックス24内に設けられたリンク部材を介して梃子レバーの回転運動に変換され、それが更に押棒の直線運動になって制輪子22を動作させる。
制輪子22を装着した制輪子頭25は、ボックス24に形成されたブラケット24aとの間に制輪子頭吊り26が連結されている。制輪子頭吊り26が下端側で連結されたピン27は、脱シュー止ピンとしても機能している。すなわち、車輪5の踏面5aはテーパになっているため、大きな荷重で押し当てられた制輪子22が滑って脱落してしまうことがある。そこで、制輪子22がずれる方向には不図示の剛体部(台車枠に固定された当て板)が設けられ、制輪子22が滑った場合にでも脱シュー止ピン27の先端が剛体部に当たってずれを防止するようになっている。
剛性ロッド30は、こうした脱シュー止ピン27を利用して一端が連結され、他端は、図2に示すように支持腕8に支持ピン28が固定されているので、その支持ピン28に連結されている。こうして支持腕8と制輪子頭25との間に剛性ロッド30が連結され、ブレーキシリンダ21による制輪子22を動作させるための駆動力が、剛性ロッド30を介して支持腕8から軸箱6へと伝えられるよう構成されている。従って、台車枠を前後方向に支える弾性部材の剛性を低く設定しているが、剛性ロッド30を介して軸箱6に後方から支持荷重Fを作用させることによって、柔らかい弾性部材の剛性を補っている。
ところで、この軸箱支持システムでは踏面ブレーキユニット20を利用しているため、踏面ブレーキユニット20が制動手段として機能する場合には、その制動動作を妨げないようにする必要がある。そこで、剛性ロッド30は、次に示すような構造によって剛性支持状態の切り換えが可能なものとして構成されている。図4及び図5は図1乃至図3に示す剛性ロッド30を示した図であり、図4は油圧回路を利用した剛性ロッド30Aであり、図5はピエゾ素子を利用した剛性ロッド30Bである。
先ず、図4に示す剛性ロッド30Aは、一端を開口した筒状のシリンダ31と、そのシリンダ31に挿入された棒状のピストン32によって構成され、シリンダ31とピストン32の摺動による伸縮を可能にしたものである。シリンダ31とピストン32にはピン孔31a,32aが形成され、取り付けに際して図2に示すように脱シュー止ピン27や支持ピン28が挿入される。シリンダ31の筒内には、開口部分と内部奥の2箇所に低摩擦樹脂33が装着され、そこにOリング34がそれぞれ嵌め込まれている。軸方向に配置されたOリング34の間には、円筒状の低摩擦樹脂による摺動支持ガイド35が設けられ、ピストン32が摺動可能に挿入されている。
こうした剛性ロッド30Aは、シリンダ31とピストン32が軸方向に摺動して伸縮が可能である一方、所定の長さを保って収縮方向にかかる支持荷重Fを受けることができるよう構成されている。つまり、剛性ロッド30Aには支持荷重Fに対して剛性を発揮するための構造として油圧回路が形成されている。具体的には、シリンダ31とピストン32との間には閉じられた可変のシリンダ油室36が形成され、その油室36内に作動油が注入されている。一方、シリンダ31には、図4に記載するようにリザーブタンク37が設けられ、シリンダ油室36との間でリリーフ弁38とチェック弁39が接続されている。
チェック弁39は、シリンダ油室36からリザーブタンク37への流れを遮断し、逆にリザーブタンク37からシリンダ油室36への流れを許容するように設けられている。また、リリーフ弁38は、支持荷重Fを受けることができるようにリリーフ圧が設定され、そのリリーフ圧以上でシリンダ油室36内の作動油がリザーブタンク37へと流れるように構成されている。なお、ここでは油圧回路の構成を概念的に示しており、具体的な構造は、リザーブタンク37、リリーフ弁38及びチェック弁39がシリンダ31内に組み込まれる他、外部に設けるようにしたものであってもよい。
こうした剛性ロッド30Aは、その収縮方向に荷重が作用するとシリンダ油室36内に満たされた作動油が加圧されるが、リリーフ圧以下であれば作動油が流れないため収縮せずに長さが維持される。しかし、シリンダ油室36内の圧力がリリーフ圧を超えてしまった場合には、作動油がリリーフ弁38を通ってリザーブタンク37へと流れて剛性ロッド30Aが収縮する。剛性ロッド30Aが収縮することによって、制輪子22と車輪5の踏面5aとの隙間が無くなって制動が可能になる。よって、リリーフ弁38は、軸箱6を支持する支持荷重Fが作用していても作動油を流さないが、それ以上に大きい荷重が作用した場合には作動油を流し、制輪子22を車輪5に押圧させる制動を可能にする。
剛性ロッド30Aが収縮すると、シリンダ油室36内の作動油がリリーフ弁38を通ってリザーブタンク37へと流れる。一方、剛性ロッド30Aが伸びる際にはシリンダ31に対して相対的にピストン32が引っ張られ、シリンダ油室36が拡張して内部が負圧になる。そのため、リザーブタンク37内の作動油がチェック弁39を通って流れ、シリンダ油室36を満たすように注入される。
軸箱支持システムを備えた鉄道車両では、機械式ブレーキが使用される非常制動時の他、直線走行時と曲線走行時とで踏面ブレーキユニット20の操作がそれぞれ切り換えられる。つまり非常制動時にはリリーフ圧を超える荷重を出力する他、曲線走行時には、図1に示す支持荷重Fを解除し、弾性部材そのままの低い剛性によって台車枠に対する輪軸7の傾きを許容する一方、直線走行時には、軸箱6を介して走行前方に支持荷重Fを作用させることで弾性部材の剛性を補って輪軸7を支持する。
鉄道車両の走行位置は不図示の位置検出装置によって検出され、その検出信号を受けたブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21が操作される。そこで先ず、曲線走行が検出された場合には、ブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21内のエアが大気解放される。これによりブレーキシリンダ21は、戻しバネ21aによる付勢力が作用するのみであって、より大きな外力によって自由に伸縮するので軸箱6の移動を制限しない。そのため、剛性の低い弾性部材の変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾き、車輪5のアタック角を減少させることにより、押圧を下げてスムーズに曲線を走行することが可能になる。
一方、直線走行時には、ブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21内に圧縮エアが供給され、そうしたブレーキシリンダ21からの出力が制輪子22を車輪5の踏面5a側へ近づけるように作用する。しかし、このとき制輪子22が踏面5aに当てられる前に剛性ロッド30Aが移動を制限するので、ブレーキシリンダ21の出力が軸箱6を支える支持荷重Fとなって作用する。そして、軸箱6を介して輪軸7が支持されるため、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動が防止され、高速での直線走行を安定させることができる。
剛性ロッド30Aは、支持荷重Fによってシリンダ油室36内の作動油が加圧されるが、リリーフ圧以下であるため作動油の流れが制限されて長さが維持される。よって、このような状態ではブレーキは作用しないが、緊急停止などの非常制動時には電力回生ブレーキではなく、この制輪子22を使用した停止が必要になる。そこで、非常制動時にはブレーキコントローラ1から供給される圧縮エアによって高圧でブレーキシリンダ21が操作され、リリーフ圧を超える荷重が出力される。すると、シリンダ油室36内の作動油がリザーブタンク37へと流れて剛性ロッド30Aが収縮し、これによって制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が停止する。
次に、図1乃至図3の剛性ロッド30が図5に示す剛性ロッド30Bの場合について説明する。剛性ロッド30Bは、一端を開口した筒状のシリンダ41と、そのシリンダ41に挿入された棒状のピストン42とによって構成され、シリンダ41とピストン42の摺動による伸縮が可能なものである。シリンダ41とピストン42にはピン孔41a,42aが形成され、取り付けに際して図2に示すように脱シュー止ピン27や支持ピン28が挿入される。シリンダ41の内周面には、軸方向に長いピエゾ素子43が円周状に等間隔で複数配置されている。ピエゾ素子43の軸方向両端にはピストン42を摺動支持する低摩擦樹脂44が固定されており、開口側の低摩擦樹脂44内にはOリング45がはめ込まれている。また、他方の低摩擦樹脂44内にはピエゾ素子43に接続された電源線46が入れられている。そして、剛性ロッド30Bがスムーズに伸縮するようにシリンダ41にはエア抜孔47が形成されている。
剛性ロッド30Bは、通常時はシリンダ41とピストン42とがフリーであるため伸縮が自在である。しかし、ピエゾ素子43に電圧が印加されると、そのピエゾ素子43が径方向に膨張することによってピストン42が把持され、その摩擦力によってピストン42の移動が制限されるようになっている。従って、剛性ロッド30Bは、ピエゾ素子43に対する電圧の印加によって、その長さを維持する剛性支持状態の切り替えが可能になっている。
そこで、軸箱支持システムを備えた鉄道車両が走行すると、その走行位置が検出され、検出信号を受けたブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21が操作され、また剛性ロッド30Bのピエゾ素子43に対する電圧が制御される。
先ず、曲線走行時には、ブレーキコントローラ1によってブレーキシリンダ21内のエアが大気解放される。そのため、ブレーキシリンダ21の戻しバネ21aによって制輪子22は車輪5から離されている。また、剛性ロッド30Bは、ピエゾ素子43への通電が遮断された縮小した状態であるため、ピストン42がフリーになっている。従って、軸箱6の移動が前後方向に拘束されることはなく、剛性の低い弾性部材の変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾き、車輪5のアタック角が減少することによって押圧を下げたスムーズな曲線走行が可能になっている。
一方、直線走行時には、ピエゾ素子43に電圧が印加されることによってピストン42が把持され、剛性ロッド30Bの長さが一定に保たれる。そして、ブレーキコントローラ1からブレーキシリンダ21に圧縮エアが供給されると、その出力が剛性ロッド30Bを介して軸箱6に伝えられる。従って、このとき軸箱6を介して輪軸7が支持されるため、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。
更に、緊急停止などの非常制動時には、ピエゾ素子43への通電が遮断されてシリンダ41とピストン42とがフリーになって剛性ロッド30Bの伸縮が自由になる。そこで、ブレーキコントローラ1からブレーキシリンダ21の圧縮エアが供給されると、ブレーキシリンダ21の出力によって制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が停止する。
ところで、図1に示す軸箱支持システムでは、踏面ブレーキユニット20を機械式ブレーキとして機能させる他、軸箱6を支持荷重Fで支持するための荷重発生手段としても機能させている。従って、非常制動時には踏面ブレーキユニット20がブレーキとしての機能を損なわないようにするため、軸箱6と踏面ブレーキユニット20とが剛性ロッド30(30A,30B)によって連結されていた。そこで、次に説明する軸箱支持システムでは、踏面ブレーキユニット20とは別の駆動源を持って軸箱6を支持するようにしたものを提案する。図6及び図7は、そうした第2または第3参考例の軸箱支持システムを示した簡略図である。
図6に示す軸箱支持システムは、踏面ブレーキユニット20の他に荷重発生手段としてエアシリンダ51が設けられている。エアシリンダ51は、ブレーキシリンダ21と同様にブレーキコントローラ1に接続され、供給される圧縮エアによって支持荷重Fを出力するものである。エアシリンダ51には軸箱6との間で剛性ロッド52が連結され、エアシリンダ51からの支持荷重Fが剛性ロッド52を介して軸箱6に伝達されるよう構成されている。この剛性ロッド52は、図4及び図5に示す伸縮可能なものではなく、エアシリンダ51の支持荷重Fをそのまま軸箱6へ伝達するものである。
次に、図7に示す軸箱支持システムは、同じく踏面ブレーキユニット20の他に、荷重発生手段としてエアシリンダ51が設けられ、ブレーキコントローラ1から供給される圧縮エアによって支持荷重Fを出力するものである。そして、軸箱6との間に剛性ロッド52が連結され、エアシリンダ51からの支持荷重Fが剛性ロッド52を介して軸箱6に伝達されるよう構成されている。しかし、踏面ブレーキユニット20が車輪5の前方に配置され、エアシリンダ51との設置箇所を分散させて狭い設置スペースにおける取り扱いが容易になるように構成されている。
そこで、こうした軸箱支持システムを備えた鉄道車両は、その走行位置が不図示の検出装置によって検出され、ブレーキコントローラ1によってエアシリンダ51がコントロールされる。曲線走行時には、ブレーキコントローラ1によってエアシリンダ51内のエアが大気解放される。このとき、エアシリンダ51は戻しバネ51aによる付勢力のみであって、より大きな外力による伸縮が自由になる。従って、軸箱6の移動が前後方向に拘束されることはなく、剛性の低い弾性部材の変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾き、車輪5のアタック角が減少することにより押圧を下げたスムーズな曲線走行が可能になる。
一方、直線走行時にはエアシリンダ51内に圧縮エアが供給されるため、エアシリンダ51の出力が軸箱6を支える支持荷重Fとなって作用する。従って、軸箱6を介して輪軸7が支持され、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。
そして、曲線及び直線走行のいずれの場合であっても、緊急停止などの非常制動時には踏面ブレーキユニット20のブレーキシリンダ21に圧縮エアが供給され、制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が止められる。
続いて、図8及び図9は、実施形態の軸箱支持システムについてその一部を示した取り付け構造図であり、図8は平面を示し、図9は側面を示している。なお、図2及び図3に示したものと同じ構成部材については同じ符号を付している。
本実施形態の鉄道車両は、軸箱6と一体になった軸梁60を有するものであり、その軸梁60は側梁2に形成されたブラケット2aに対して連結されている。軸梁60は、軸受部60aが支持ピン61によって連結されているが、その軸受部60aには円筒形状の軸梁支持ゴムが装填され、支持ピン61に対する軸梁60の傾きや前後方向の変位が吸収できるように構成されている。
また、軸梁60には水平方向に連結アーム62が張り出し、シリンダユニット65(踏面ブレーキユニット20と同様の構造)の制輪子頭67に固定された固定ピン78に連結されている。連結アーム62の軸穴には緩衝ゴム63が装填され、その緩衝ゴム63を介して固定ピン78が挿入されている。このシリンダユニット65には、例えば制輪子の代わりに柔らかい素材であって踏面5aに押し付けても制動力が発生しない踏面清掃部材66が制輪子頭67に取り付けられている。従って本実施形態ではこのシリンダユニット65を軸箱支持に使用するため、制動には図7に示すように車輪5の前方に不図示の踏面ブレーキユニット20が別に設けられている。
軸梁60を連結する支持ピン61と、軸梁60と一体の連結アーム62を連結する固定ピン78とは同軸になるように配置され、軸箱支持装置の上下変動によるピッチングが作用しても、両ピン61,78が回転中心となってシリンダユニット65に負荷がかからないように構成されている。そして、シリンダユニット65のエアシリンダには、図1に示すようにブレーキコントローラ1が接続され、その出力がコントロールされるように構成されている。
そこで、本実施形態の鉄道車両では、走行位置が不図示の検出装置によって検出され、ブレーキコントローラ1によってシリンダユニット65がコントロールされる。曲線走行時には、ブレーキコントローラ1によってシリンダユニット65からエアが大気解放される。そのため、シリンダユニット65のエアシリンダは、内部の戻しバネの付勢力より大きな外力によって伸縮が自由になる。従って、軸箱6の移動が前後方向に拘束されることはなく、軸受部60a内に設けられた剛性の低い軸梁支持ゴムの弾性変形に応じて輪軸7が台車枠に対して傾く。そのため、車輪5のアタック角が減少することによって押圧を下げたスムーズな曲線走行が可能になる。
一方、直線走行時には、ブレーキコントローラ1によってシリンダユニット65へ圧縮エアが供給され、その出力が連結アーム62及び軸梁60を介して軸箱6を支える支持荷重Fとなって作用する。そのため軸箱6を介して輪軸7が支持され、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。なお、このとき踏面清掃部材66が車輪5の踏面5aに接触したとしても、それによって制動力が発生することはない。
ところで、前述した各参考例のように弾性部材の前後剛性を低くし、輪軸7の自己操舵性を高める鉄道車両は、最も横圧の高い車両内先頭軸の外軌輪は、曲線進入時にアンダーステア状態になりやすい。これは走行抵抗やアタック角を持ったフランジ接触の分力などによる。従って、車両内先頭軸の車輪は、動力源を持たない自己ステアリング力だけでは操舵に限界があり、積極的に輪軸を操作しなければ精度の高いステアリングとなり得ない。そこで次に、操舵機能をもった鉄道車両について説明する。
図10は、軸箱支持システムの第4参考例を示した簡略図である。本参考例のものは、図1に示すものの変形例であり、踏面ブレーキユニット20とブレーキコントローラ1との間に電磁切替弁70を接続させたものである。電磁切替弁70は、4ポート3ブロック弁であり、ブレーキコントローラ1側の配管71,72と、ブレーキシリンダ21L,21Rの配管73,74が接続されている。この場合、配管71はブレーキシリンダ21へ圧縮エアを供給する供給管であり、配管72はブレーキシリンダ21L,21R内の圧縮エアを大気解放する排気管である。
そこで、鉄道車両が直線走行している場合、電磁切替弁70は、図示するようにBブロックによってポート間接続が行われ、配管71から供給された圧縮エアは、配管73,74を介して左右のブレーキシリンダ21L,21Rへと送られる。従って、軸箱6を介して輪軸7が支持され、剛性の低い弾性部材を使用しても直線走行時の輪軸蛇行動を防止し、高速での直線走行を安定させることができる。また、緊急停止などの非常制動時にも電磁切替弁70のポート間はBブロックで接続され、ブレーキシリンダ21L,21Rへ圧縮エアが供給され、制輪子22が車輪5の踏面5aに押し付けられて鉄道車両が止められる。
そして、鉄道車両が右カーブを走行する場合には、電磁切替弁70のポート間がAブロックによって接続され、配管71と73、配管72と74がそれぞれ連通する。従って、ブレーキコントローラ1からの圧縮エアは左側のブレーキシリンダ21Lに供給され、剛性ロッド30を介して軸箱6に支持荷重Fが作用する。一方、右側のブレーキシリンダ21Rからは圧縮エアが大気解放されるため、軸箱6に対する前後方向の拘束が解除される。よって、左側ブレーキシリンダ21Lの出力によって輪軸7が曲線に従って傾けられ、アタック角を小さくしたスムーズな走行が可能となる。
逆に、鉄道車両が左カーブを走行する場合には、電磁切替弁70のポート間がCブロックによって接続され、配管71と74、そして配管72と73がそれぞれ連通する。従って、ブレーキコントローラ1からの圧縮エアは右側のブレーキシリンダ21Rに供給され、剛性ロッド30を介して軸箱6に支持荷重Fが作用する。一方、左側のブレーキシリンダ21Lからは圧縮エアが大気解放されるため、軸箱6に対する前後方向の拘束が解除される。よって、右側ブレーキシリンダ21Rの出力によって輪軸7が曲線に従って傾けられ、アタック角を小さくしたスムーズな走行が可能となる。
以上、本発明に係る鉄道車両について実施形態をしめして説明したが、本発明はこれらに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
1 ブレーキコントローラ
2 側梁
3 横梁
5 車輪
6 軸箱
7 輪軸
20 踏面ブレーキユニット
21 ブレーキシリンダ
60 軸梁
61 支持ピン
62 連結アーム
65 シリンダユニット
67 制輪子頭