JP2013065698A - 電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents

電気−機械変換素子、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット方式の画像形成装置等に備えられ、振動板の表面粗さを適正にすることにより、下部電極、電気−機械変換膜の結晶配向を適正化し、経時的に安定した駆動力を得る電気−機械変換素子、これを備えインク等の液滴を吐出するヘッド、これを備えた液滴吐出装置、これらを備えたかかる画像形成装置の提供。
【解決手段】電気−機械変換素子10が、基板11上に形成された振動板12と、振動板12上に直接又は間接的に形成された下部電極21と、下部電極21上に形成された電気−機械変換膜16と、電気−機械変換膜16上に形成された上部電極22とを有し、下部電極21は(111)配向を有する層を含み、電気−機械変換膜16は(111)を優先配向とするPZTからなり、振動板12は表面粗さが5nm以下のポリシリコン層を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット方式のプリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置等に備えられた、インク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの駆動源等として用いられる電気−機械変換素子、これを備えたかかる液滴吐出ヘッド、これを備えかかる画像形成装置等に具備された液滴吐出装置、これらを備えたかかる画像形成装置に関する。
従来より、かかる液滴吐出ヘッドであって、液滴を吐出するノズルと、このノズルが連通し液滴となるインク等(以下インク)を収容した加圧室と、この加圧室内のインクをノズルから吐出させるために振動する振動板と、振動版を振動させる駆動源としての、圧電素子などの電気−機械変換素子若しくはヒータなどの電気熱変換素子、又は、インク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなるエネルギー発生手段とを備え、駆動源又はエネルギー発生手段で発生したエネルギーで振動板を振動させ加圧室内のインクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させるものが知られている。なお、かかる加圧室は、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称されることがある。
かかる駆動源として用いられる、または用いられ得るアクチュエータとして、半導体デバイス、電子デバイス等の膜構造体が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献19〕参照)。このようなアクチュエータとして、たとえば、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとの2種類が実用化されている。
たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとしては、たとえば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
このような圧電アクチュエータにおいては、圧電膜の自発分極軸のベクトル成分と電界印加方向とが一致するときに、電界印加強度の増減に伴う伸縮が効果的に起こり、大きな圧電定数が得られるため、圧電膜の自発分極軸と電界印加方向とは完全に一致することが最も好ましい。また、インク吐出量のばらつき等を抑制するには、圧電膜の圧電性能の面内ばらつきが小さいことが好ましい。これらの点を考慮すれば、結晶配向性に優れた圧電膜が好ましい。
結晶配向性に関する技術としては、たとえば、表面にTiが島状に析出したTi含有貴金属電極上に圧電膜を成膜することで、結晶配向性に優れた圧電膜を成膜する技術(たとえば、〔特許文献1〕参照)、基板としてMgO基板を用いることで、結晶配向性に優れた圧電膜を成膜する技術(たとえば、〔特許文献2〕参照)、アモルファス強誘電体膜を成膜し、その後、急速加熱法によって該膜を結晶化させる強誘電体膜の製造方法に関する技術(たとえば、〔特許文献3〕参照)、成膜工程においては、正方晶系、斜方晶系、及び菱面体晶系のうちいずれかの結晶構造を有するペロブスカイト型複合酸化物(不可避不純物を含んでいてもよい)からなり、(100)面、(001)面、及び(111)面のうちいずれかの面に優先配向し、配向度が95%以上である圧電膜を成膜する圧電膜の製造方法に関する技術(たとえば、〔特許文献4〕参照)が知られている。
なお、圧電素子の製造方法については、基板上に下部電極と圧電膜と上部電極とが順次積層されてなる圧電素子の製造方法において、基板上に圧電膜の構成元素を少なくとも1種含むシード層と下部電極とを順次成膜する工程と、非酸化雰囲気中にてシード層に含まれる圧電膜の構成元素を拡散させて、下部電極の表面に析出させる工程と、下部電極上に前記圧電膜を成膜する工程とを順次有する技術が提案されている。この技術によれば、MgO等の高価な基板を用いることなく、比較的低温で、結晶性に優れ、圧電性に優れた圧電膜を成膜することが可能であるとされている。また、かかる技術ではさらに、Tiを含むシード層の厚みを5〜50nmとし、下部電極の厚みを50〜500nm、下部電極の平均表面粗さRaが0.5〜8.0nmとなる条件で、拡散を実施することで、圧電膜の圧電定数d31が150pm/V以上である圧電素子を提供することが提案されている。
ところで、振動板については、従来から種々の検討がなされており、金属酸化膜を用いる技術(たとえば、〔特許文献5〕参照)や、ニッケル、クロム、アルミニウム、アルミナ、酸化シリコン、またはポリイミド系樹脂、その他、SiO2や、ニッケル、クロム、アルミニウムの酸化物、ポリイミドなどの有機高分子材料を用いる技術(たとえば、〔特許文献6〕参照)などの試みがなされている。
一方、振動板に関して、本発明者らは、LPCVD法で成膜された膜から構成される振動板を備えた圧電型アクチュエータでは、振動板の表面粗さが、下部電極、PZTの結晶配向に大きく影響を与え、液滴吐出特性に大きく影響を与える為、振動板の表面粗さの制御が重要であることを見出した。
具体的には、表面粗さを小さくすることにより、電界集中が生じにくい圧電膜となり、耐圧を上昇させることが可能となり、また圧電体の劣化を抑制することが可能となることを見出した。振動板の表面粗さが小さいことで、後工程の加工精度が向上し、ウエハ面内での均一性がよく、各液滴吐出ヘッドのインク吐出特性を均一にすることが可能となるものである。
また、LPCVD法で成膜された膜で構成された振動板は、半導体、MEMSデバイスで一般的に従来から適用されている膜であり、加工もし易いことから、新たなプロセス課題を持ち込まず、SOI等の高価な基板を用いることなく、安定した振動板が得られ、高精度でばらつきの少ない液滴吐出ヘッドが実現されることとなる。
さらに、ポリシリコン膜を含む振動板においては、ポリシリコンの結晶粒により、表面粗さが大きくなり、振動板の粗さが増大することも、本発明者らは見出した。これに関して、アモルファス状のシリコン膜においては、表面粗さを低減することは可能であるが、結晶配向性に優れた圧電膜を形成するプロセスにおいては、焼成工程などの高温での熱処理が必要とされるため、シリコン膜の粗さ、応力などが変動し、信頼性の高い液滴吐出ヘッドの実現が不可能であること、圧電素子形成のプロセスを制限することとなり、場合によっては歩留り、コストに影響を及ぼす可能性があることがわかった。
このように、振動板の表面粗さが、下部電極、PZTの結晶配向に大きく影響を与え、液滴吐出特性に大きく影響を与えることから、振動板の表面粗さの制御が重要であるにもかかわらず、上述した技術など、従来の技術では、振動板の粗さについての詳細が規定されていない。なお、本発明者らの研究により、振動板の表面粗さは、たとえばシリコン層の膜厚の影響を受けること、シリコン層を薄くすれば表面粗さを低減することが可能となるが振動板の剛性を著しく小さくしてしまうことも判明したため、振動板の表面粗さを制御するには、これらのことにも留意することを要する。
本発明は、インクジェット方式のプリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置等に備えられ、振動板の表面粗さを適正にすることにより、下部電極、電気−機械変換膜の結晶配向を適正化し、経時的に安定した駆動力を得ることを可能とした電気−機械変換素子、これを備えインク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、これを備えた液滴吐出装置、これらを備えたかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、基板上に形成された振動板と、この振動板上に直接又は間接的に形成された下部電極と、この下部電極上に形成された電気−機械変換膜と、この電気−機械変換膜上に形成された上部電極とを有し、前記下部電極は(111)配向を有する層を含み、前記電気−機械変換膜は(111)を優先配向とするPZTからなり、前記振動板は表面粗さが5nm以下のポリシリコン層を含む電気−機械変換素子にある。
本発明は、基板上に形成された振動板と、この振動板上に直接又は間接的に形成された下部電極と、この下部電極上に形成された電気−機械変換膜と、この電気−機械変換膜上に形成された上部電極とを有し、前記下部電極は(111)配向を有する層を含み、前記電気−機械変換膜は(111)を優先配向とするPZTからなり、前記振動板は表面粗さが5nm以下のポリシリコン層を含む電気−機械変換素子にあるので、振動板の表面粗さの適正化により、下部電極、電気−機械変換膜の結晶配向を適正化し、経時的に安定した駆動力を得ることを可能とした電気−機械変換素子を提供することができる。
本発明を適用した電気−機械変換素子の一例の断面の概略図である。 図1に示した電気−機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの一例の断面の概略図である。 図1に示した電気−機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッドの別の例の断面の概略図である。 図1に示した電気−機械変換素子に備えられた振動板の断面の概略図である。 図1に示した電気−機械変換素子の各配向のピークの測定結果を示した図である。 電気-機械変換素子の特性の評価を行った場合の代表的なP−Eヒステリシス曲線を示す図である。 図3に示した液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置の概略図である。
図1に本発明を適用した電気−機械変換素子の一例の断面の概略を示す。
電気−機械変換素子10は、基板11上の下地膜として基板11上に成膜された成膜振動板である振動板12と、この振動板12上に形成された密着層13と、この密着層13上に形成された下部電極21と、下部電極21上に形成された電気−機械変換膜16と、電気−機械変換膜16上に形成された上部電極22とを有している。
電気−機械変換素子10は、基板11上に、振動板12、密着層13、下部電極21、電気−機械変換膜16、上部電極22が、この順で、半導体製造プロセス等の、膜構造体の製造において用いられる手法によって成膜されることによって形成される。
よって、下部電極21は、振動板12上に、密着層13を介して間接的に形成されている。ただし、密着層13を省略して下部電極21を振動板12上に直接形成しても良い。また、密着層13は下部電極21に含まれる構成であっても良い(次に示す図2、図3参照)。ただし、図2、図3においては、単に、密着層13の図示を省略したに過ぎない。なお、振動板12は基板11上に直接形成されている。
電気−機械変換素子10は、電気−機械変換膜16を圧電膜として備えた圧電素子となっている。上部電極22は個別電極となっている。
図2、図3に示すように、電気−機械変換素子10は、液体噴射ヘッドである液滴吐出ヘッド30の一部として用いることが可能である。なお、図2に示す液滴吐出ヘッド30は1ノズルの構成の一例の概略であり、図3は図2に示したエレメントを複数個配列して形成された液滴吐出ヘッド30の概略を示している。
液滴吐出ヘッド30は、その駆動源として機能する電気−機械変換素子10の他、電気−機械変換素子10を形成されている基板11を後述のようにエッチングして形成されインク等の液体(以下、「インク」という)を収容するインク室である加圧室としての圧力室31と、圧力室31内のインクを液滴状に吐出するインク吐出口としてのノズル孔であるノズル32を備えたインクノズルとしてのノズル板33とを有している。
液滴吐出ヘッド30は、電気−機械変換素子10が駆動されることにより、ノズル32からインクの液滴を吐出するヘッドである。具体的には、液滴吐出ヘッド30は、後述のように下部電極21、上部電極22に給電されることで電気−機械変換膜16に応力が発生し、これによって振動板12を振動させ、この振動に伴って、ノズル32から圧力室31内のインクを液滴状に吐出するようになっている。なお、圧力室31内にインクを供給するインク供給手段である液体供給手段、インクの流路、流体抵抗についての図示及び説明は省略している。
以下、基板11、振動板12、密着層13、下部電極21、電気−機械変換膜16、上部電極22の材質、成膜条件、配向等について、より具体的に説明する。
基板11としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を使用した。
図2、図3に示した圧力室31のような圧力室を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。たとえばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54.74°の傾斜を持つ構造体が作製されるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることが可能であるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることが可能であることが分かっている。よって本構成としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうため、この点に留意して用いている。
振動板12は、電気−機械変換膜16によって発生した力を受けて変形変位し、圧力室31内のインクをインク滴として吐出させる。そのため、振動板12は所定の強度を有したものであることが好ましい。
振動板12は、LPCVD法により作製し、表面粗さを算術平均粗さで4nm以下としたものを用いる。粗さについては、この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。振動板12の材料としては、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜やその組み合わせが挙げられ、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜の少なくとも一方を含む構成となっている。LPCVD法で成膜された膜それ自身としては、半導体、MEMSデバイスで一般的に従来から適用されている膜であり、加工もし易いことから、新たなプロセス課題を持ち込まず、SOI等の高価な基板を用いることなく、安定した振動板が得られる。振動板12は熱処理成膜法で成膜しても良い。
振動板12は、(100)の面方位を持つシリコン単結晶基板11に、振動板構成膜として、LPCVD法で厚さ200nmのシリコン酸化膜を成膜し、その後、LPCVD法で厚さ500nmのポリシリコン膜を成膜し、次に、LPCVD法でシリコン窒化膜を成膜した。ポリシリコン層の厚さは0.1μm以上3μm以下、表面粗さが算術平均粗さで5nm以下である。
振動板12は、実際にはさらに多層の9層構造となっている。
具体的には、図4に示すように、基板11側から密着層13側に向けて、次に述べる各膜が順に成膜されている。シリコン単結晶基板である基板11に、LPCVD法あるいは熱処理製膜法で成膜されたシリコン酸化膜12a。このシリコン酸化膜12aに、LPCVD法で成膜されたポリシリコン膜12b。このポリシリコン膜12bに、LPCVD法で成膜されたシリコン酸化膜12c。このシリコン酸化膜12cに、LPCVD法で成膜されたシリコン窒化膜12d。このシリコン窒化膜12dに、LPCVD法で成膜されたシリコン酸化膜12e。このシリコン酸化膜12eに、LPCVD法で成膜されたシリコン窒化膜12f。このシリコン窒化膜12fに、LPCVD法で成膜されたシリコン酸化膜12g。このシリコン酸化膜12gに、LPCVD法で成膜されたポリシリコン膜12h。このポリシリコン膜12hに、LPCVD法で成膜されたシリコン酸化膜12i。以上の各膜の成膜により、振動板12の構成膜の成膜が完了する。各膜の膜厚は、振動板12が9層全体で所望の振動板剛性、および応力になるように設定されている。
振動板12の熱酸化膜をLPCDV法で形成すると、数10ナノの表面粗さとなるため、積層することで表面粗さを低下させる。しかし、一般的な手法で従来知られている構造を形成すると、積層を行っても、表面粗さは通常10nm程度となり、4nm以下とすることが難しい。そこで、振動板12に、LPCVD法で成膜した、5nm以下の表面粗さで厚さが0.1μm以上3μm以下のポリシリコン膜を含むようにすることにより、振動板12の表面粗さを4nm以下とする手法を、本発明者らは開発したものである。
LPCVD法にて、表面粗さ5nm以下のポリシリコン膜を成膜する手法について述べる。まず、LPCVD法にて、600℃以下、好ましくは500〜600℃にてアモルファスシリコン膜を成膜する。続けて成膜されたアモルファスシリコンを高温において安定な膜となるポリシリコンとするために、不活性ガス雰囲気中、たとえばアルゴン中や窒素中で、700〜1100℃の高温にて30分〜2時間程度の熱処理を施す。これにより、表面粗さ5nm以下のポリシリコン膜が成膜される。本発明者らは、このような手法を、インクジェットの振動板の構成膜であるポリシリコン膜の成膜手法として、新たに開発した。
下部電極21は、(111)配向を有する層からなる。ただし、下部電極21が密着層13を含むように構成される場合には、密着層13を除く部分あるいは全体を、(111)配向を有する層とする。この点において、下部電極21は、(111)配向を有する層を含む。下部電極21の材質としては、Pt、Ir、IrO2、RuO2、LaNiO3、SrRuO3から選ばれる少なくとも1種類を主成分とする金属または金属酸化物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
下部電極21を構成する金属材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もある。よって、下部電極21を構成する金属材料としては、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これら合金膜も挙げられる。
下部電極21の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。下部電極21の膜厚としては、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがさらに好ましい。またこのとき、電気−機械変換膜16としてPZTを選択したときにその結晶性として(111)配向を有していることが好ましい。そのために下部電極21の材料としては、(111)配向性が高いPtを含む。
ただし、下部電極21の材質として以上述べた材質の中でも、SrRuO3(ルテニウム酸ストロンチウム)を含むことがとくに好ましい。この理由は次のとおりである。
圧電体動作時に、経時的に圧電体中の酸素欠損が増大する可能性が従来指摘されている。その欠損酸素成分の補給源として、導電性の酸化物電極を、誘電体材料との接触界面として利用することが好ましい。この点、SrRuO3は、PZTと同じペロブスカイト型結晶構造を有しているので、界面での接合性に優れ、PZTのエピタキシャル成長を実現し易く、Pbの拡散バリア層としての特性にも優れている。
密着層13は、中間層として備えられているものであり、Ti、TiO2、Ta、Ta2O5、Ta3N5等を下部電極21より先に積層することによって形成されている。これは、下部電極21に白金を使用する場合には、振動板12によって形成されている下地と、下部電極21との密着性が低いためである。
上部電極22の構成にはとくに制限はなく、上部電極22の材料としては、下部電極21で例示した材料、Al、Cu等の、一般に半導体プロセスで用いられる材料およびその組み合わせが挙げられる。
電気-機械変換膜16は、PZTからなっている。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO3)とチタン酸(PbTiO3)との固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3との比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3となり、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
作製方法としては、スパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することが可能である。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZTをSol−gel法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ことで、PZT前駆体溶液が作製される。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
また、インクジェット工法により作製していく場合については、下部電極21と同様の作製フローにてパターニングされた膜を得ることが可能である。表面改質材については、下地である下部電極21の材料によっても異なるが、酸化物を下地とする場合は主にシラン化合物、金属を下地とする場合は主にアルカンチオールを選定する。
電気−機械変換膜16の膜厚としては0.5〜5μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜2μmとなる。この範囲より小さいと十分な変位を発生することが出来なくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
図5に、下部電極21上にPZTをSol−gel法により作製した溶液を用いてスピンコートにより1μm成膜した後のXRDについて示す。同図より、PZTは(111)面が非常に優先配向した膜が得られていることがわかる。また、PZTの熱処理条件によっては(111)以外の配向膜にもなっており、以下の式を用いたときに、(111)配向度が0.95以上かつ(110)配向度が0.05以下であることが好ましい。
この式は、XRDで得られた各配向のピークの総和を1とした時のそれぞれの配向の比率を表す計算方法を示している。この式によって得られる値は平均配向度を表している。
ρ=I(hkl)/ΣI(hkl)
分母:各ピーク強度の総和
分子:任意の配向のピーク強度
この範囲を超える場合は、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないことがわかった。
以上述べたことからわかるように、電気−機械変換素子10は、簡便な製造工程で形成可能であり、バルクセラミックスと同等の性能を持つとともに、その後の圧力室31形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル32を有するノズル板33を接合することで、液滴吐出ヘッド30が製造可能である。
以下、本発明の実施例及び実施例と比較される比較例を説明する。
これらの例において、電気−機械変換素子の構成は、図2に示したのと同様となっている。なお、以下の説明で述べていない事項については、適宜、すでに述べた事項を援用する。
<実施例1>
基板11としてのシリコンウェハに膜厚1ミクロンの熱酸化膜による振動板12をLPCVD法によって形成した。振動板12は、具体的に、LPCVD法で厚さ200nmのシリコン酸化膜を成膜し、その後、LPCVD法で厚さ500nmのポリシリコン膜を成膜し、次に、LPCVD法でシリコン窒化膜を成膜した。次いで、膜厚50nmのチタン膜による密着層13を成膜し、次に下部電極21として、膜厚250nmの白金膜をスパッタ成膜し、さらに膜厚50nmのSrRuO膜をスパッタ成膜した。
なお、下部電極21を構成している白金膜、SrRuO膜はそれぞれ、電気−機械変換素子10における第1の電極、第2の電極となっている。
密着層13であるチタン膜は、熱酸化膜と白金膜との間の密着層となっている。
SrRuO膜のスパッタ成膜時の基板加熱温度については550℃にて成膜を実施した。
電気−機械変換膜16の作成にあたってはPb:Zr:Ti=110:53:47の組成比で調合した溶液を準備した。具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上述の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/リットルにした。
電気−機械変換膜16を、この液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥→500℃熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、温度750℃による結晶化熱処理を急速熱処理であるRTAにて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回実施し、24層で約2μmのPZT膜厚を得た。
次に上部電極22として膜厚40nmのSrRuO膜、さらに膜厚125nmのPt膜をスパッタ成膜した。なお、上部電極22を構成しているSrRuO膜、Pt膜はそれぞれ、電気−機械変換素子10における第3の電極、第4の電極となっている。
その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いてパターンを作製した。
その後、基板11を構成しているシリコンウエハに加工を施し、圧力室31と、ノズル32を備えたノズル板33とを形成した。
以上のようにして、電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例2>
振動板12のLPCVD法による振動板構成を変化させ、表面粗さを表1(a)に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例3>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜を成膜しなかったこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例4>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜を成膜しなかったこと以外は、実施例2と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例5>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をIr膜に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例6>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をIr膜に変更したこと以外は、実施例2と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例7>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をIrO2膜に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例8>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をIrO2膜に変更したこと以外は、実施例2と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例9>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をRuO2膜に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例10>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をRuO2膜に変更したこと以外は、実施例2と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例11>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をLaNiO3膜に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<実施例12>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をLaNiO3膜に変更したこと以外は、実施例2と同様に電気−機械変換素子10を作製した。
<比較例1>
振動板12のLPCVD法による振動板構成を変化させ、表面粗さを表1(a)に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。
<比較例2>
振動板12のLPCVD法による振動板構成を変化させ、表面粗さを表1(a)に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。
<比較例3>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜を成膜しなかったこと以外は、比較例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。
<比較例4>
下部電極21の構成を表1(b)に示すように変更し、SrRuO膜をIr膜に変更したこと以外は、比較例1と同様に電気−機械変換素子を作製した。
実施例1、2、比較例1、2で作製した電気−機械変換素子について、プロセス過程において、振動板12をLPCVDにて成膜した直後に、日本ビーコ社製 NanoScope IIIaAFMを用いて表面粗さについて評価を行った。この表面粗さは平均粗さである。AFM測定において、測定モードはタッピングモード、測定範囲は3μm×3μm、走査速度は1Hzとした。作製した電気-機械変換素子を用いて電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。代表的なP−Eヒステリシス曲線を図6に示す。電気−機械変換能は電界印加(150kV/cm)による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。初期特性を評価した後に、耐久性(10^10回繰り返し印可電圧を加えた直後の特性)評価を実施した。
これらの詳細結果を表1(a)にまとめた。
なお、同表において、太枠内の数値は、特性が劣っていることを示している。太枠内に数値が記載されていない項目については、試験中に評価不能となった場合を示している。
Figure 2013065698
実施例1、2、比較例1については、初期特性、耐久性試験後の結果についても一般的なセラミック焼結体と同等の特性を有していた。たとえば、残留分極Pr:20〜25μC/cm2、圧電定数d31:−130〜−160pm/Vの範囲内となっている。
一方、比較例2については、初期特性において、一般的なセラミックス焼結体に比べて、残留分極Pr及び圧電定数d31の双方において特性が劣っている。さらに10^10回後すなわち10^10回繰り返し印加電圧を加えた耐久性試験言い換えると劣化試験直後の特性においては、実施例1、2に比べて、比較例2は残留分極Pr及び圧電定数d31の双方において劣化しているのが確認され、劣化試験中に電極リークが発生し、途中で評価が出来なくなってしまった。
実施例1、2、比較例1と、比較例2とのこのような特性の比較から、電気−機械変換膜10の電気特性については、150kV/cmでのP−Eヒステリシスにおいて、2Pr値が35μC/cm2以上であることが好ましいことが分かった。
実施例1、2、比較例1で作製した電気-機械変換素子を用いて、図3に示した液滴吐出ヘッド30を作製し液の吐出評価を行った。粘度を5cpに調整したインクを用いて、単純Push波形により−10〜−30Vの印可電圧を加えたときの吐出状況を確認したところ、全てどのノズル孔からも吐出されていることを確認した。
ただし、同表(a)の耐久性試験後液滴速度Vjの劣化率に関しては、10^10回後すなわち10^10回繰り返し印加電圧を加えた耐久性試験直後のvj特性において、実施例1、2に比べて、比較例1は、10%以上劣化しているのが確認され、耐久性で劣っており、NGと判断した。
次に、実施例3〜12、比較例3、4で作製した電気-機械変換素子を用いて、図3に示した液滴吐出ヘッド30を作製し液の吐出評価を行った。具体的には次のとおりである。
粘度を5cpに調整したインクを用いて、単純Push波形により−10〜−30Vの印可電圧を加えたときの吐出状況を確認したところ、全てどのノズル孔からも吐出されていることを確認した。
同表(b)に、この場合の耐久性試験後液滴速度Vjの劣化率を示す。10^10回後すなわち10^10回繰り返し印加電圧を加えた耐久性試験直後のVj特性においては、実施例3〜12に比べて、比較例3、4は、10%以上劣化しているのが確認され、耐久性で劣っており、NGと判断した。
液滴吐出ヘッド30をインクジェット式記録ヘッドとして搭載した画像形成装置であるインクジェット記録装置の一例について図7を参照して説明する。なお、同図(a)は同記録装置の機構部の側面図、同図(b)は同記録装置の斜視図である。
インクジェット記録装置50は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことが可能なデジタル印刷装置である。インクジェット記録装置50は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
インクジェット記録装置50は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。インクジェット記録装置50は、記録媒体である用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
インクジェット記録装置50は、記録装置本体81の内部に、主走査方向に移動可能なキャリッジ93と、キャリッジ93に搭載したインクジェットヘッドとしての記録ヘッドである液滴吐出ヘッド30と、液滴吐出ヘッド30へインクを供給する液体供給部としてのインクカートリッジ95とを有する液滴吐出装置としての印字機構部82等を収納している。
インクジェット記録装置50は、本体81の下方部に前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84を抜き差し自在に装着されるようになっている。また、本体81は、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒可能である。給紙カセット84は給紙トレイであっても良い。
インクジェット記録装置50は、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ93には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを吐出する液滴吐出ヘッド30が、複数のノズル32を主走査方向と交差する方向に配列した状態で、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。またキャリッジ93には液滴吐出ヘッド30のそれぞれに各色のインクを供給するためのインクカートリッジ95を交換可能に装着されている。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する図示しない大気口、下方には液滴吐出ヘッド30へインクを供給する図示しない供給口を有しているとともに、内部にはインクが充填された図示しない多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド30へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。本構成の液滴吐出ヘッド30は各色に対応して複数備えられているが、液滴吐出ヘッド30は、各色のインクを吐出する構成とし、これを1つ備えられていてもよい。
キャリッジ93は後方側に対応した用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装され、前方側に対応した用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置されている。キャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間に、キャリッジ93を固定したタイミングベルト100を張装し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動するようになっている。
インクジェット記録装置50は、給紙カセット84にセットした用紙83を液滴吐出ヘッド30の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によって図示しないギヤ列を介して回転駆動される。
液滴吐出ヘッド30の下方には、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を液滴吐出ヘッド30の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109が設けられている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド30を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド30の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117は、図示を省略するが、キャップ手段と、吸引手段と、クリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド30をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド30のノズル32を密封し、図示しないチューブを通して吸引手段でノズル32からインクとともに気泡等を吸い出し、ノズル板33の表面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体81下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このような構成のインクジェット記録装置50においては液滴吐出ヘッド30を搭載しており、この液滴吐出ヘッド30が、電気−機械変換素子10、すなわち、振動板12の表面粗さの適正化により、下部電極21、電気−機械変換膜16の結晶配向を適正化した電気−機械変換素子10を備えていることにより、経時的に安定してインク吐出特性が得られ、インク滴吐出不良が防止ないし抑制され、良好な画像品質が得られる。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、電気−機械変換素子は、基板、下地膜、密着層、下部電極、電気−機械変換膜、上部電極のうち、少なくとも下地膜、下部電極、電気−機械変換膜、上部電極を有していれば良く、これに加えて密着層及び/又は基板を備えていても良い。
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。
電気−機械変換素子は、その適用範囲が画像形成装置に限られないが、画像形成装置に適用される場合であっても、画像形成装置において、液滴吐出ヘッドと異なる部分に、アクチュエータとして備えられていても良い。電気−機械変換素子は、インクジェット技術を利用した3次元造型技術等に応用可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
10 電気−機械変換素子
11 基板
12 振動板
16 電気−機械変換膜
21 下部電極
22 上部電極
30 液滴吐出ヘッド
50 画像形成装置
82 液滴吐出装置
95 液体供給部
特開2004−186646号公報 特開2004−262253号公報 特開2003−218325号公報 特開2007−258389号公報 特開2005−144918号公報 特開2004−262253号公報 特許第4091641号公報 特開2009−054994号公報 特許第4519810号公報 特開2010−045152号公報 特許第4100953号公報 特開平10−264385号公報 特開2003−309303号公報 特開2004−214308号公報 特開2002−134806号公報 特開2004−237676号公報 特開2000−196157号公報 特開2008−094019号公報 特開2009−285886号公報

Claims (8)

  1. 基板上に形成された振動板と、
    この振動板上に直接又は間接的に形成された下部電極と、
    この下部電極上に形成された電気−機械変換膜と、
    この電気−機械変換膜上に形成された上部電極とを有し、
    前記下部電極は(111)配向を有する層を含み、
    前記電気−機械変換膜は(111)を優先配向とするPZTからなり、
    前記振動板は表面粗さが5nm以下のポリシリコン層を含む電気−機械変換素子。
  2. 請求項1記載の電気−機械変換素子において、
    前記振動板は、表面粗さが4nm以下であり、前記ポリシリコン層の厚さが0.1μm以上3μm以下であることを特徴とする電気−機械変換素子。
  3. 請求項1または2記載の電気−機械変換素子において、
    前記電気−機械変換膜の結晶配向について、
    ρ=I(hkl)/ΣI(hkl)
    [I(hkl):任意の配向のピーク強度、ΣI(hkl)各ピーク強度の総和]
    によって表される、XRDで得られた各配向のピークの総和を1としたときのそれぞれの配向の比率を表す計算方向による平均配向度において、
    (111)配向の配向度が0.95以上であり、(110)配向の配向度が0.05以下であることを特徴とする電気−機械変換素子。
  4. 請求項1ないし3の何れか1つに記載の電気−機械変換素子において、
    前記電気−機械変換膜の電気特性について、150kV/cmでのP−Eヒステリシスにおいて、2Pr値が35μC/cm2以上であることを特徴とする電気−機械変換素子。
  5. 請求項1ないし4の何れか1つに記載の電気−機械変換素子において、
    前記振動板は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜の少なくとも一方を含むことを特徴とする電気−機械変換素子。
  6. 請求項1ないし5の何れか1つに記載の電気−機械変換素子を備え、この電気−機械変換素子が駆動されることにより液滴を吐出する液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項6記載の液滴吐出ヘッドと、この液滴吐出ヘッドに、液滴となる液体を供給する液体供給部とを備えた液滴吐出装置。
  8. 請求項1ないし5の何れか1つに記載の電気−機械変換素子、または、請求項6記載の液滴吐出ヘッド、または、請求項7記載の液滴吐出装置を備えた画像形成装置。
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