JP2013053325A - 降伏比の低い内面突起つきスパイラル鋼管およびその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】現場での補強作業を省略でき、建築物等から受ける軸力や曲げモーメントに対しても十分な強度と低降伏比を有するコンクリート充填鋼管に使用される内面突起つきスパイラル鋼管およびその製造法を提供する。
【解決手段】C:0.05〜0.20、Si:0.01〜0.6、Mn:0.8〜2.2、P:0.02以下、S:0.005以下、Nb:0.005〜0.080、Ti:0.005〜0.030、Al:0.001〜0.05、N:0.001〜0.006、O:0.006以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、CE値が0.40〜0.55の範囲にある母材からなる内面突起つきスパイラル鋼管を、860〜960℃に加熱後、鋼管外表面が650〜850℃の温度から水槽の中に鋼管を浸漬させて、10℃/秒以上の冷却速度となるように200℃以下まで水冷し、その後、650℃以下で焼き戻し処理する。
【選択図】なし

Description

本発明は、建築物や橋梁、鉄塔などの基礎構造に用いられるコンクリート充填鋼管に使用される450MPa以上650MPa以下の降伏強度と0.85未満の降伏比を有する、内面突起つきスパイラル鋼管およびその製造法に関するものである。
一般に、ビルディング等の建築物や橋梁、鉄塔などの基礎構造は、鋼管杭の杭頭部にフーチングを支持させた構造になっている。鋼管杭の杭頭部には、建築物等の自重や地震時に発生する水平力により、軸力やせん断力や曲げモーメントが作用することになるが、最近の鋼管杭では、鋼管の高支持力化等による基礎構造の合理化等を背景に、杭頭部に要求される耐力が大きくなってきている。かかる要求に対応すべく、大径で厚肉の鋼管杭を用いることも行われているが、大径の鋼管杭に用いられるスパイラル鋼管は、加工上の理由から強度や板厚に限度がある。そこで、従来から鋼管杭において特に大きな曲げモーメントが発生する杭頭部を別途補強することが行われている。
例えば、特許文献1には、杭頭部の内部に鉄筋とコンクリートを充填した構造が開示されている。また、特許文献2には、二重管式杭頭構造の構築方法が開示されている。また、特許文献3には、フーチングの下部の鋼管杭と外管との中間に形成される空間内に物質を充填して水平耐力を増大させる方法が開示されている。また、特許文献4には、ずれ止めあるいは鉄筋を取り付けてコンクリートと鋼管との付着力を増大させる構造が開示されている。
一方、建築構造物の大型化や鋼管杭の高支持力化に伴う杭本数の効率化などを背景に、杭頭部にはより一層大きな支持力が要求されるようになった。杭頭の耐力を高めるためには、鋼管の高強度化、大径化、厚肉化、コンクリート充填鋼管が有効である。鋼管を高強度化する方法は数多くあり、例えば、特許文献5には、鋼管を加熱して水冷することによる厚肉高強度曲り管の製造方法が開示されている。また特許文献6にはコンクリートを充填する合成鋼管の製造方法が開示されている。
さらに、特許文献7および特許文献8には内面突起を有する高強度スパイラル鋼管の製造方法が開示されている。
特開2005−163421号公報 特開2009−30372号公報 特開2009−46879号公報 特開2009−46881号公報 特開平5−279743号公報 特開昭53−53021号公報 特開2011−63878号公報 特開2011−63879号公報
しかしながら、上記特許文献1のように、杭頭部の内部から補強するためには、鋼管杭を地盤に打設した後、あるいは、打設している最中に、杭頭部の内部を洗浄等することが必要となり、施工性を低下させるといった難点がある。また、上記特許文献2〜4の方法では、いずれの場合も建設現場で杭頭部を補強する作業をしなければならず、施工が煩雑となり、施工コストが高くなるという課題もある。
鋼管杭の杭頭部の耐力を高めるためには、鋼管の高強度化、大径化、厚肉化、コンクリート充填鋼管が有効であり、上記特許文献5には、API規格X65〜X70クラスの高強度厚肉曲り管の製造方法が開示されているが、コンクリートとの合成構造を目的とした鋼管ではないので、鋼管杭が素管(コンクリートとの合成構造ではない鋼管単体)だけの場合には杭頭部の十分な耐力が得られない。鋼管とコンクリートの付着強度を向上させるための方法としては鋼管に溶接ビードやスタッドボルトを施す方法も考えられるが、高強度材への溶接は施工管理が難しく合成構造とすることは困難である。また、鋼管杭が素管の場合、杭頭部の十分な耐力を得るためには、例えば降伏強度で700MPa以上の鋼管が必要となり、合金元素の添加量が必然的に多くなるので、溶接性(耐溶接低温割れ性)や焼き戻し処理後の溶接金属の低温靭性が低下するという問題があった。
上記特許文献6にはコンクリートとの合成構造に使用される内面突起つきスパイラル鋼管の製造方法が開示されている。高強度の内面突起つきスパイラル鋼管を製造するためには高強度の熱延コイルが必要となるが、熱延コイルの巻取り能力の観点から高強度で厚肉の熱延コイルを経済的に製造することは困難である。また高強度の熱延コイルをスパイラル成形する際も大きな成形荷重が必要となり製造上の課題がある。
上記特許文献7には内面突起つきスパイラル鋼管を加熱後、外面側から水冷して高強度化する方法が開示されている。この製造方法では降伏比が0.85を超えるため、巨大地震発生時の構造物の信頼性が低下するという課題がある。
上記特許文献8には内面突起つきスパイラル鋼管を鋼管長手方向が上下方向となる状態で加熱後、外面側から水冷して高強度化する方法が開示されている。上記特許文献7と同様、この製造方法では降伏比が0.85を超えるため、巨大地震発生時の構造物の信頼性が低下するという課題がある。
本発明の目的は、現場での補強作業を省略でき、建築物等から受ける軸力や曲げモーメントに対しても十分な強度と低降伏比を有するコンクリート充填鋼管に使用される内面突起つきスパイラル鋼管およびその製造法を提供することにある。
本発明によれば、質量%で、C:0.05〜0.20、Si:0.01〜0.6、Mn:0.8〜2.2、P:0.02以下、S:0.005以下、Nb:0.005〜0.080、Ti:0.005〜0.030、Al:0.001〜0.05、N:0.001〜0.006、O:0.006以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にあり、フェライト分率が16〜50%、残部の組織がベイナイトとマルテンサイトからなることを特徴とする450MPa以上650MPa以下の降伏強度、かつ、0.85未満の降伏比を有する内面突起つきスパイラル鋼管が提供される。
CE=C+Si/24+Mn/6 ・・・(1)
このスパイラル鋼管は、鋼成分が、質量%で、さらにCr:0.1〜1.0、Mo:0.1〜1.0、V:0.01〜0.10、B:0.0003〜0.002のうち一種または二種以上を含有し、かつ、前記式(1)に代えて、下記式(2)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にあっても良い。
CE=C+Si/24+Mn/6+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(2)
また、本発明によれば、質量%で、C:0.05〜0.20、Si:0.01〜0.6、Mn:0.8〜2.2、P:0.02以下、S:0.005以下、Nb:0.005〜0.080、Ti:0.005〜0.030、Al:0.001〜0.05、N:0.001〜0.006、O:0.006以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にある母材からなる内面突起つきスパイラル鋼管を、860〜960℃に加熱後、鋼管外表面が650〜850℃の温度から水槽の中に鋼管を浸漬させて、10℃/秒以上の冷却速度となるように200℃以下まで水冷し、その後、650℃以下で焼き戻し処理することを特徴とする450MPa以上650MPa以下の降伏強度、かつ、0.85未満の降伏比を有する内面突起つきスパイラル鋼管の製造法が提供される。
CE=C+Si/24+Mn/6 ・・・(1)
この製造法において、前記母材が、質量%で、さらに、Cr:0.1〜0.5、Mo:0.1〜0.5、V:0.01〜0.10、B:0.0003〜0.002のうち一種または二種以上を含有し、かつ、前記式(1)に代えて、下記式(2)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にあっても良い。
CE=C+Si/24+Mn/6+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(2)
本発明によれば、溶接性に優れた450MPa以上の降伏強度と0.85未満の降伏比を有する、内面突起つきスパイラル鋼管が安定して製造できる。その結果、ビルディング等の建築物や橋梁、鉄塔などの基礎構造の安全性が向上する。
以下に、本発明の降伏比の低い内面突起つきスパイラル鋼管およびその製造法について詳細に説明する。
ビルディング等の建築物や橋梁、鉄塔などの基礎構造において、鋼管杭の杭頭部の耐力を高めるためには、鋼管の高強度化、大径化、厚肉化、コンクリート充填鋼管が有効であるが、溶接性の観点から鋼管杭の耐力の増加について研究した結果、本発明に至った。すなわち、コンクリート充填鋼管に使用される内面突起つき鋼管の化学成分、降伏強度の範囲を制限するとともに、スパイラル鋼管を860〜960℃に加熱後、鋼管外表面が650〜850℃の温度から水槽の中に鋼管を浸漬させて水冷し、その後焼戻しすることによって、高強度かつ低降伏比の内面突起つきスパイラル鋼管が得られる。
鋼管杭をコンクリートとの合成構造とした場合、杭頭部にはN−M曲線(軸力Nと曲げモーメントMの関係曲線)において曲げ耐力(曲げモーメントに対する耐力)で15,000kN・m以上が求められている。これを達成するためには、内面突起つき鋼管の降伏強度として、450MPa以上650MPa以下、鋼管の厚みとして14mm以上25mm以下が必要である。この時の鋼管厚みは、内面突起部のない箇所の厚みを示す。例えば、外径1400mmで鋼管厚25mmの時、降伏強度が450MPaで曲げ耐力19,000kN・mが得られる。また、外径1400mmで鋼管厚14mmの時、降伏強度が650MPaで曲げ耐力16,500kN・mが得られる。なお、鋼管厚みは、熱延巻き取り能力の観点から最大厚みを25mmとすることが好ましい。また、降伏強度が650MPaを超えると鋼管の溶接性が低下するので、溶接性の観点から降伏強度の上限を650MPaに制限した。また建築用基礎杭として、巨大地震発生時の構造物の安全性の観点から0.85未満の低降伏比が必要であることがわかった。このような高強度と低降伏比を達成する金属組織として、本発明では、フェライト分率が16〜50%、残部の組織をベイナイトあるいはマルテンサイトとする必要があり、フェライト分率が15%以下では低降伏比が達成できず、50%以上になると、降伏強度が450MPaを満足できない。なお、フェライト分率は水冷開始前に生成するポリゴナルフェライトおよび水冷中の生成するアシキュラーフェライトの分率を合わせたものである。
つぎに、化学成分の限定理由について述べる。なお、成分についての%の表記は、特に断りがない場合は質量%を意味する。
Cの下限0.05%は、強度の確保ならびにNb、V添加による析出硬化、結晶粒の微細化効果を発揮させるための最小量である。しかしC量が多過ぎると溶接性や低温靱性の著しい低下を招くので、上限を0.20%とした。
Siは脱酸や強度向上のため添加する元素であり、その下限は0.01%である。しかし、多く添加すると溶接性、低温靭性を低下させるので、上限を0.6%とした。
Mnは強度、低温靭性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.8%である。しかし、Mnが多すぎると鋼の焼入性が増加して溶接性、低温靭性を低下させるだけでなく、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温靭性も低下させるので上限を2.2%とした。
本発明において、不可避的不純物であるP量を0.02%以下とする。この主たる理由は、母材の低温靭性をより一層向上させるためである。P量の低減は、連続鋳造スラブの中心偏析を低減させて、粒界破壊を防止し低温靭性を向上させる。なお、本発明において、Pは不純物であり、含有していなくても良い。
またS量を0.005%以下とする。S量の低減は、延伸化したMnSを低減して延靱性を向上させる効果がある。なお、本発明において、Sは不純物であり、含有していなくても良い。
Nbは制御圧延において結晶粒の微細化や析出硬化に寄与し、鋼を強靱化する作用を有する。この効果を発揮させるための最小量として、その下限を0.005%とした。しかしNbを0.080%以上添加すると、溶接金属のNb量が増加し、溶接金属の低温靭性を低下させるとともに溶接性や低温靱性に悪影響をもたらすので、その上限を0.080%とした。
Ti添加は微細なTiNを形成し、スラブ再加熱時および溶接HAZのオ−ステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現させるためには、最低0.005%のTi添加が必要である。しかしTi量が多過ぎると、TiNの粗大化やTiCによる析出硬化が生じ、低温靱性が低下するので、その上限は0.030%に限定した。
Alは通常脱酸剤として鋼に含まれる元素で組織の微細化にも効果があり、その下限は0.001%である。しかしAl量が0.05%を超えるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害するので、上限を0.05%とした。
NはTiNを形成してスラブ再加熱時および溶接熱影響部(HAZ)のオ−ステナイト粒の粗大化を抑制して母材、HAZの低温靱性を向上させる。このために必要な最小量は0.001%である。しかし多過ぎるとスラブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性の低下の原因となるので、その上限は0.006%に抑える必要がある。
O量の低減は鋼中の酸化物を少なくして、低温靱性の改善に効果があるので、その上限は0.006%以下とした。なお、本発明においてOは不純物であり、含有していなくても良い。
さらに、本発明のスパイラル鋼管は、下記式(1)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にある。
CE=C+Si/24+Mn/6 ・・・(1)
この式(1)において、「C」、「Si」、「Mn」は、スパイラル鋼管に含有される各化学成分の質量%を意味する。
CE値が0.40未満では十分な強度が得られない。またCE値が0.55を超えると、溶接性および靭性が低下する。
また、本発明のスパイラル鋼管は、鋼成分が、質量%で、さらにCr:0.1〜1.0、Mo:0.1〜1.0、V:0.01〜0.10、B:0.0003〜0.002のうち一種または二種以上を含有しても良い。
さらにCr、Mo、V、Bを添加する理由について説明する。基本成分にさらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の特徴を損なうことなく、強度・低温靭性などの特性の向上をはかるためである。したがって、その添加量は自ら制限されるべき性質のものである。
Crは母材の強度を増加させる効果があり、この効果を発揮させるためには0.1%以上の添加が必要である。しかし、多過ぎると溶接性やHAZ靱性を低下させる。このためCr量の上限は0.5%である。
Moは母材及び溶接部の強度を上昇させる元素であるが、0.5%を超えるとCrと同様に母材、HAZ靭性及び溶接性を低下させる。また、0.1%以下の添加ではその効果が薄い。
Vは、ほぼNbと同様の効果を有するが、その効果はNbに比較して格段に弱い。その効果を発揮させるためには0.01%以上の添加が必要である。また、上限は現地溶接性、HAZ靭性の点から0.1%まで許容できる。
Bは極微量で鋼の焼入性を飛躍的に高め、良好な強度と靭性が得られる。この効果を発揮させるためには0.0003%以上の添加が必要である。また、多すぎるとHAZ靭性を低下させるので、その上限の値を0.002%に限定した。
また、本発明のスパイラル鋼管は、このようにCr、Mo、V、Bのうち一種または二種以上を含有する場合は、前記式(1)に代えて、下記式(2)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にある。
CE=C+Si/24+Mn/6+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(2)
この式(2)において、「C」、「Si」、「Mn」、「Cr」、「Mo」、「V」は、スパイラル鋼管に含有される各化学成分の質量%を意味する。
この式(2)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲に限定する。CE値が0.40未満では十分な強度が得られない。またCE値が0.55を超えると、溶接性および靭性が低下する。
なお、本発明のスパイラル鋼管において、これらCr、Mo、V、Bは選択的に含有される化学成分である。したがって、これらCr、Mo、V、Bについては、含有しない場合は上記(式2)において0として計算する。
つぎに製造条件の限定理由について説明する。
本発明では、上記の成分を有する内面突起つきスパイラル鋼管を860〜960℃に加熱後、鋼管外表面が650〜850℃の温度から、鋼管長手方向が水平方向となる状態で水槽の中に鋼管を浸漬させ、10℃/秒以上の冷却速度となるように200℃以下まで水冷し、その後、650℃以下で焼き戻し処理する。
内面突起つき熱延コイルをスパイラル状に成形、溶接した鋼管をコンクリートとの合成構造に用いることにより、コンクリートと鋼管の密着性を高めることができる。なお、内面突起つき鋼管の突起高さおよび突起間隔はJIS A 5525(2009)で規定されている。
鋼管の加熱温度を860〜960℃とする理由は、オ−ステナイト域で合金元素を溶体化させ、強度と低温靱性を向上させるためである。しかし加熱温度が960℃を超えると、加熱時のオ−ステナイト粒が成長し、結晶粒が大きくなって低温靱性の低下を招くばかりでなく、加熱時に鋼管が自重により大きく変形するためである。このため加熱温度の上限は960℃とした。
加熱後、外表面が650〜850℃の温度から水槽の中に鋼管を浸漬させて、10℃/秒以上の冷却速度で200℃以下まで冷却することによって、ミクロ組織をフェライトとベイナイトやマルテンサイトの2相混合組織とし、所定の強度と0.85未満の低降伏比を達成する。650℃以上から水冷する理由は、過度なフェライトの生成を抑制し、未変態のオーステナイトを変態強化によって十分な強度を得るためである。850℃以下から水冷する理由は、水冷後のミクロ組織をフェライトとベイナイトやマルテンサイトの2相混合組織として、低降伏比を達成するためである。また10℃/秒以上の冷却速度で冷却する理由は、未変態のオーステナイトを変態強化によってベイナイトやマルテンサイトを生成させて、十分な強度を得るためである。さらに200℃以下まで冷却する理由は、水冷による変態強化によってベイナイトやマルテンサイトを生成させて十分な強度を得るためである。鋼管を冷却する際、水槽の中に浸漬する必要がある。水槽に浸漬せずに鋼管外表面側から冷却する方法では、冷却に時間を要し、鋼管内の材質ばらつきが多くなるとともに製造コストが上昇するからである。水槽の中に浸漬して鋼管を冷却する場合、鋼管内の材質ばらつきが低減できる。650℃を超える温度で焼き戻しすると、所定の強度が得られないので、上限の温度を650℃とした。
本発明の実施例について述べる。種々の成分を有する熱延コイルからスパイラル成形、溶接して、外径1400mmの内面突起つきスパイラル鋼管を製造した。その後、この鋼管に加熱、水冷、焼き戻し処理をして、諸性質を調査した。低温靭性はシャルピー衝撃試験を行い、0℃での吸収エネルギーで評価した。鋼管の溶接性は鋼管へ付属品を溶接した時の低温割れ発生の有無で評価した。
成分範囲および製造条件が本発明の範囲内である本発明鋼No.1〜16の組成、組織、降伏強度および降伏比を表1に示す。また、成分範囲もしくは製造条件が本発明の範囲から外れた条件を有する比較鋼No.17〜35の組成、組織、降伏強度および降伏比を表2に示す。また、表1に示すそれぞれの母材からなるスパイラル鋼管の加熱、冷却、焼き戻し条件および諸性質を、それぞれ表3に示す。また、表2に示すそれぞれの母材からなるスパイラル鋼管の加熱、冷却、焼き戻し条件および諸性質を、それぞれ表4に示す。なお、表2、4において、本発明の範囲から外れている条件または性質を示す欄にアンダーラインを付した。
Figure 2013053325
Figure 2013053325
Figure 2013053325
Figure 2013053325
表1、3に示すように、本発明例であるNo.1〜16の内面突起つき鋼管は、強度、低温靭性、溶接性において、優れた特性を有していた。これに対して、表2、4に示すように、比較鋼No.17〜35は、化学成分またはスパイラル鋼管の製造条件が適切でなく、いずれかの特性が劣っていた。No.17は母材のC量が多過ぎるため、低温靱性が低い。No.18は母材のMn量が多過ぎるため、低温靱性が低い。No.19は母材のNb量が多過ぎるため、低温靱性が低い。No.20はCr量が多すぎるため、低温靭性が低い。No.21はMo量が多すぎるため、低温靭性が低い。No.22はV量が多すぎるため、低温靭性が低い。No.23はB量が多すぎるため、低温靭性が低い。No.24はCE値が大きすぎるため、強度が著しく上昇し、低温靭性が低く、溶接時に低温割れが発生した。No.25はCE値が低く、降伏強度YSが低いため十分な曲げ耐力が得られない。No.26はフェライト分率が高く、降伏強度が低いため十分な曲げ耐力が得られない。No.27はCE値が高く、強度が高すぎるため、低温靭性が低く、溶接時に低温割れが発生した。No.28は鋼管の加熱温度が低すぎるため、降伏強度が低く、十分な曲げ耐力が得られない。
No.29は鋼管の加熱温度が高すぎるため、降伏比が0.85を超え、低温靱性が低い。No.30は加熱後の水冷開始温度が低すぎるため、強度が低い。No.31は加熱後の水冷開始温度が高すぎるため、降伏比が0.85を超える。No.32は加熱後の冷却速度が遅いため強度が低い。No.33は冷却停止温度が高すぎるため、強度が低く、低温靭性も低い。No.34は冷却時に水槽内に浸漬せず、鋼管外表面から冷却しているため、円周方向の降伏強度のばらつきが大きい。No.35は焼き戻し温度が高すぎるため、強度が低く、低温靭性も低い。
以上のように、本発明のいずれかの条件から外れると、良好な性質のスパイラル鋼管が得られないのに対し、本発明により、溶接性に優れた450MPa以上の降伏強度と0.85未満の降伏比を有する、溶接性に優れた内面突起つきスパイラル鋼管が安定して製造できた。
本発明は、建築物や橋梁、鉄塔などの基礎構造に用いられるコンクリート充填鋼管に有用である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.20、Si:0.01〜0.6、Mn:0.8〜2.2、P:0.02以下、S:0.005以下、Nb:0.005〜0.080、Ti:0.005〜0.030、Al:0.001〜0.05、N:0.001〜0.006、O:0.006以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にあり、フェライト分率が16〜50%、残部の組織がベイナイトとマルテンサイトからなることを特徴とする450MPa以上650MPa以下の降伏強度、かつ、0.85未満の降伏比を有する内面突起つきスパイラル鋼管。
    CE=C+Si/24+Mn/6 ・・・(1)
  2. 鋼成分が、質量%で、さらにCr:0.1〜1.0、Mo:0.1〜1.0、V:0.01〜0.10、B:0.0003〜0.002のうち一種または二種以上を含有し、かつ、前記式(1)に代えて、下記式(2)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の450MPa以上650MPa以下の降伏強度、かつ、0.85未満の降伏比を有する内面突起つきスパイラル鋼管。
    CE=C+Si/24+Mn/6+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(2)
  3. 質量%で、C:0.05〜0.20、Si:0.01〜0.6、Mn:0.8〜2.2、P:0.02以下、S:0.005以下、Nb:0.005〜0.080、Ti:0.005〜0.030、Al:0.001〜0.05、N:0.001〜0.006、O:0.006以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にある母材からなる内面突起つきスパイラル鋼管を、860〜960℃に加熱後、鋼管外表面が650〜850℃の温度から水槽の中に鋼管を浸漬させて、10℃/秒以上の冷却速度となるように200℃以下まで水冷し、その後、650℃以下で焼き戻し処理することを特徴とする450MPa以上650MPa以下の降伏強度、かつ、0.85未満の降伏比を有する内面突起つきスパイラル鋼管の製造法。
    CE=C+Si/24+Mn/6 ・・・(1)
  4. 前記母材が、質量%で、さらに、Cr:0.1〜0.5、Mo:0.1〜0.5、V:0.01〜0.10、B:0.0003〜0.002のうち一種または二種以上を含有し、かつ、前記式(1)に代えて、下記式(2)で定義されるCE値が0.40〜0.55の範囲にあることを特徴とする請求項3記載の450MPa以上650MPa以下の降伏強度、かつ、0.85未満の降伏比を有する内面突起つきスパイラル鋼管の製造法。
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