本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
〔第1の実施の形態〕
前述したように、図2に示される面発光レーザにおいて、ビームプロファイルの通電経時変化は、X方向(H方向)とY方向(V方向)で異なっている。図4は、図2に示される面発光レーザにおいて、出力を上げていった状態におけるSMSR(Sub-Mode Suppression Ratio)と、X方向の遠視野プロファイル(FFP−H)及びY方向の遠視野プロファイル(FFP−V)との関係を示すものである。尚、SMSRとは、メインの波長ピーク強度とセカンドの波長ピーク強度との比を対数でみた数量である。出力を上げることにより、相対的にセカンドピークの強度が強くなり、SMSRの値は小さくなる。このSMSRの値の低下に伴って、ビームプロファイル(FFP−H、FFP−V)は広がっていく。一般的に、セカンドピークにおけるビーム形状の方が、メインピークにおけるビーム形状よりも広いため、セカンドピークが高くなるに伴いビームプロファイルも広がるものと考えられる。このビームプロファイルが広がる速さは、FFP−Hよりも、FFP−Vの方が速く広がる。
図5は、図2に示す面発光レーザのシングルモード出力が、1.4mW、80℃、15時間の通電負荷を与えた後に、通電負荷前の値からどのくらい変化するかについて測定を行なった結果を示すものである。面発光レーザは、図2に示されるように、透明膜11Aと透明膜11Bとの隙間の間隔cが異なる面発光レーザを複数作製して測定を行なった。尚、図5においてシングルモード出力の変化率が1の場合とは、シングルモード出力が当初より変化していない場合を意味している。また、間隔cの値は、面発光レーザを作製する際に用いたフォトマスクにおける値であり、実際の面発光レーザに形成される透明膜11Aと透明膜11Bのパターン間の距離とは若干異なる場合があるが、便宜上、透明膜11Aと透明膜11Bのパターン間の距離cと記載する。図5に示されるように、フォトマスクによる透明膜11Aと透明膜11Bとの隙間の間隔cが狭いと、シングルモード出力の変化は小さく、間隔cが広いと、シングルモード出力の変化は大きくなる傾向にある。即ち、間隔cが広い程、シングルモード出力(及び、その指標となるSMSR)の通電経時変化が大きく、低下する傾向にある。このように、シングルモード出力が低下すると、ビームプロファイルは広がり、図3等に示されるように、FFP−Hよりも、FFP−Vの方が速く広がる。
ここで、VCSEL出射面に形成される透明膜11Aと透明膜11Bについて説明する。透明膜11Aと透明膜11Bは、相対的に反射率が低くなるように、所定の膜厚の誘電体膜により形成されており、これにより、面発光レーザから出射されるレーザ光の中心部分における反射率が、周辺部分よりも相対的に高くなる。尚、周辺部分とは、中心部分の周辺における部分であり、この周辺部分に所定の膜厚の誘電体膜を形成することにより、光の干渉による影響によって、周辺部分の反射率よりも、中心部分の反射率が高くなるように形成することができる。
このようにして、レーザ光の中心部分よりも周辺部分における閉じ込めを弱くすることができ、基本モードを優位に取り出すことができる。即ち、高次横モードのプロファイルは、基本モードのビームプロファイルよりも広がっているため、透明膜11Aと透明膜11Bを形成することにより周辺部分の反射率が低くなるため、基本モードのレーザ光を優位に取り出すことができる。
また、図2に示される面発光レーザのように、所定の方向に透明膜11Aと透明膜11Bとによる隙間等を設けることにより、面発光レーザの偏光方向を例えば矢印Pに示す方向となるように制御することができる。即ち、図6(a)に示すように、透明膜11Aと透明膜11Bとの隙間をY軸方向に設けることにより、出射されるレーザ光の偏光方向を所定の方向に制御することができる。尚、図6(a)は、図2に示すものと同様の構造のものである。また、図6(b)に示すように、透明膜11Cと透明膜11Dとの隙間をY軸方向に設けることにより、出射されるレーザ光の偏光方向を所定の方向に制御することができる。しかしながら、このようにY軸方向に隙間を設けることにより、図3に示されるように、隙間の設けられた方向において、レーザビームの広がりが速くなってしまう。よって、図6(c)に示すように、透明膜11Eに隙間を設けないことにより、X軸方向またはY軸方向のいずれかにおいて、レーザビームの広がりが速くなることを抑制することができる。しかしながら、この場合、偏光方向を揃える効果は弱くなる。
(面発光レーザ)
次に、図7に基づき本実施の形態における面発光レーザについて説明する。本実施の形態における面発光レーザは、メサの上面に形成される複数、例えば、4つの透明膜が、面発光レーザのレーザ光の発光の中心を基準として、X軸方向の両側及びY軸方向の両側に存在するように形成されており、各々の透明膜間には隙間が形成されている。透明膜は誘電体膜により形成されており、この後更に、後述する誘電体膜からなる保護層等を所定の膜厚で形成等することにより、透明膜の形成されている領域の反射率が低くなるように形成されている。尚、本実施の形態においては、メサの上面は、正方形又は長方形状に形成されており、正方形又は長方形を構成する辺は、X軸方向又はY軸方向に沿って形成されている。よって、X軸方向とY軸方向は直交する。このような面発光レーザにおいては、出射されるレーザ光の偏光方向は、X軸方向またはY軸方向となる。
図7(a)に示す場合では、メサの上面のp側電極113に囲まれた領域内において、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向に透明膜111A及び111Bが形成されており、Y軸方向に透明膜111C及び111Dが形成されている。
透明膜111A、111B、111C及び111Dが形成されている領域は、透明膜111A、111B、111C及び111Dが形成されていない領域に比べて、反射率が低くなるような膜厚により形成されている。また、透明膜111Aと透明膜111Cとの間、透明膜111Aと透明膜111Dとの間、透明膜111Bと透明膜111Cとの間、透明膜111Bと透明膜111Dとの間には各々隙間が形成されており、この隙間の部分は反射率が高くなっている。
このように、透明膜111A、111B、111C及び111Dは、輪帯形状に4つの隙間を設けることにより、4つに分割された形状となるように形成されており、透明膜111A及び111Bは、Y軸方向に沿って長く形成され、透明膜111C及び111Dは、透明膜111Aと透明膜111Bとの間に形成されている。
これにより、面発光レーザの偏光方向を一定の方向に揃えることができるとともに、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザにおけるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。即ち、隣接する透明膜111A、111B、111C及び111D間に各々隙間を設けることにより、偏光方向を揃えることができ、また、レーザの発光中心に対しX軸方向及びY軸方向に透明膜111A、111B、111C及び111Dを形成することにより、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザから出射されるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。尚、透明膜111Aと透明膜111Cとの間、透明膜111Aと透明膜111Dとの間、透明膜111Bと透明膜111Cとの間、透明膜111Bと透明膜111Dとの間に形成される隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域には形成されてはいない。即ち、これらの隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域以外に形成されている。
図7(b)に示す場合では、メサの上面のp側電極113に囲まれた領域内において、レーザ光の発光の中心100Aに対し、Y軸方向に透明膜111E及び111Fが形成されており、X軸方向に透明膜111G及び111Hが形成されている。
透明膜111E、111F、111G及び111Hが形成されている領域は、透明膜111E、111F、111G及び111Hが形成されていない領域に比べて、反射率が低くなるような膜厚により形成されている。また、透明膜111Eと透明膜111Gとの間、透明膜111Eと透明膜111Hとの間、透明膜111Fと透明膜111Gとの間、透明膜111Fと透明膜111Hとの間には各々隙間が形成されており、この隙間の部分は反射率が高くなっている。
このように、透明膜111E、111F、111G及び111Hは、輪帯形状に4つの隙間を設けることにより、4つに分割された形状となるように形成されており、透明膜111E及び111Fは、X軸方向に沿って長く形成され、透明膜111G及び111Hは、透明膜111Eと透明膜111Fとの間に形成されている。
これにより、面発光レーザの偏光方向を一定の方向に揃えることができるとともに、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザにおけるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。即ち、隣接する透明膜111E、111F、111G及び111H間に各々隙間を設けることにより、偏光方向を揃えることができ、また、レーザの発光中心に対しX軸方向及びY軸方向に透明膜111E、111F、111G及び111Hを形成することにより、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザから出射されるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。尚、透明膜111Eと透明膜111Gとの間、透明膜111Eと透明膜111Hとの間、透明膜111Fと透明膜111Gとの間、透明膜111Fと透明膜111Hとの間に形成される隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域には形成されてはいない。即ち、これらの隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域以外に形成されている。
図7(c)に示す場合では、メサの上面のp側電極113に囲まれた領域内において、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向に透明膜111J及び111Kが形成されており、Y軸方向に透明膜111L及び111Mが形成されている。
透明膜111J、111K、111L及び111Mが形成されている領域は、透明膜111J、111K、111L及び111Mが形成されていない領域に比べて、反射率が低くなるような膜厚により形成されている。また、透明膜111Jと透明膜111Lとの間、透明膜111Jと透明膜111Mとの間、透明膜111Kと透明膜111Lとの間、透明膜111Kと透明膜111Mとの間には各々隙間が形成されており、この隙間の部分は反射率が高くなっている。
このように、透明膜111J、111K、111L及び111Mは、四角い開口部を有する正方形又は長方形の形状、即ち、ロの字の形状に4つの隙間を設けることにより、4つに分割されている形状となるように形成されており、透明膜111J及び111Kは、Y軸方向に沿って長く形成され、透明膜111L及び111Mは、透明膜111Jと透明膜111Kとの間に形成されている。
これにより、面発光レーザの偏光方向を一定の方向に揃えることができるとともに、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザにおけるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。即ち、隣接する透明膜111J、111K、111L及び111M間に各々隙間を設けることにより、偏光方向を揃えることができ、また、レーザの発光中心に対しX軸方向及びY軸方向に透明膜111J、111K、111L及び111Mを形成することにより、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザから出射されるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。尚、透明膜111Jと透明膜111Lとの間、透明膜111Jと透明膜111Mとの間、透明膜111Kと透明膜111Lとの間、透明膜111Kと透明膜111Mとの間に形成される隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる部分には形成されてはいない。即ち、これらの隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域以外に形成されている。
図7(d)に示す場合では、メサの上面のp側電極113に囲まれた領域内において、レーザ光の発光の中心100Aに対し、Y軸方向に透明膜111N及び111Pが形成されており、X軸方向に透明膜111Q及び111Rが形成されている。
透明膜111N、111P、111Q及び111Rが形成されている領域は、透明膜111N、111P、111Q及び111Rが形成されていない領域に比べて、反射率が低くなるような膜厚により形成されている。また、透明膜111Nと透明膜111Qとの間、透明膜111Nと透明膜111Rとの間、透明膜111Pと透明膜111Qとの間、透明膜111Pと透明膜111Rとの間には各々隙間が形成されており、この隙間の部分は反射率が高くなっている。
このように、透明膜111N、111P、111Q及び111Rは、四角い開口部を有する正方形又は長方形の形状、即ち、ロの字の形状に4つの隙間を設けることにより、4つに分割されている形状となるように形成されており、透明膜111N及び111Pは、X軸方向に沿って長く形成され、透明膜111Q及び111Rは、透明膜111Nと透明膜111Pとの間に形成されている。
これにより、面発光レーザの偏光方向を一定の方向に揃えることができるとともに、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザにおけるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。即ち、隣接する透明膜111N、111P、111Q及び111R間に各々隙間を設けることにより、偏光方向を揃えることができ、また、レーザの発光中心に対しX軸方向及びY軸方向に透明膜111N、111P、111Q及び111Rを形成することにより、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザから出射されるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。尚、透明膜111Nと透明膜111Qとの間、透明膜111Nと透明膜111Rとの間、透明膜111Pと透明膜111Qとの間、透明膜111Pと透明膜111Rとの間に形成される隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる部分には形成されてはいない。即ち、これらの隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域以外に形成されている。
図7(e)に示す場合では、メサの上面のp側電極113に囲まれた領域内において、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向に透明膜111S及び111Tが形成されており、Y軸方向に透明膜111U及び111Vが形成されている。
透明膜111S、111T、111U及び111Vが形成されている領域は、透明膜111S、111T、111U及び111Vが形成されていない領域に比べて、反射率が低くなるような膜厚により形成されている。また、透明膜111Sと透明膜111Uとの間、透明膜111Sと透明膜111Vとの間、透明膜111Tと透明膜111Uとの間、透明膜111Tと透明膜111Vとの間には各々隙間が形成されており、この隙間の部分は反射率が高くなっている。尚、隙間は図7(a)に示すように、Y軸方向に平行に形成されているのではなく、レーザ光の発行の中心100Aから放射状に伸びるような形状で形成されている。よって、これらの隙間は、X軸方向及びY軸方向とは平行には形成されていない。即ち、これらの隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域以外に形成されている。
このように、透明膜111S、111T、111U及び111Vは、輪帯形状に4つの隙間を設けることにより、4つに分割された形状となるように形成されており、透明膜111S及び111Tは、Y軸方向に沿って長く形成され、透明膜111U及び111Vは、透明膜111Sと透明膜111Tとの間に形成されている。
これにより、面発光レーザの偏光方向を一定の方向に揃えることができるとともに、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザにおけるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。即ち、隣接する透明膜111S、111T、111U及び111V間に各々隙間を設けることにより、偏光方向を揃えることができ、また、レーザの発光中心に対しX軸方向及びY軸方向に透明膜111S、111T、111U及び111Vを形成することにより、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザから出射されるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。
図7(f)に示す場合では、メサの上面のp側電極113に囲まれた領域内において、レーザ光の発光の中心100Aに対し、Y軸方向に透明膜111W及び111Xが形成されており、X軸方向に透明膜111Y及び111Zが形成されている。
透明膜111W、111X、111Y及び111Zが形成されている領域は、透明膜111W、111X、111Y及び111Zが形成されていない領域に比べて、反射率が低くなるような膜厚により形成されている。また、透明膜111Wと透明膜111Yとの間、透明膜111Wと透明膜111Zとの間、透明膜111Xと透明膜111Yとの間、透明膜111Xと透明膜111Zとの間には各々隙間が形成されており、この隙間の部分は反射率が高くなっている。尚、隙間は図7(b)に示すように、Y軸方向に平行に形成されているのではなく、レーザ光の発行の中心100Aから放射状に伸びるような形状で形成されている。よって、これらの隙間は、X軸方向及びY軸方向とは平行には形成されていない。即ち、これらの隙間は、レーザ光の発光の中心100Aに対し、X軸方向及びY軸方向となる領域以外に形成されている。
このように、透明膜111W、111X、111Y及び111Zは、輪帯形状に4つの隙間を設けることにより、4つに分割された形状となるように形成されており、透明膜111W及び111Xは、X軸方向に沿って長く形成され、透明膜111Y及び111Zは、透明膜111Wと透明膜111Xとの間に形成されている。
これにより、面発光レーザの偏光方向を一定の方向に揃えることができるとともに、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザにおけるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。即ち、隣接する透明膜111W、111X、111Y及び111Z間に各々隙間を設けることにより、偏光方向を揃えることができ、また、レーザの発光中心に対しX軸方向及びY軸方向に透明膜111W、111X、111Y及び111Zを形成することにより、X軸方向または、Y軸方向のいずれか一方において、面発光レーザから出射されるレーザビームの広がりが早くなることを抑制することができる。
(面発光レーザの構造)
次に、図8に基づき本実施の形態における面発光レーザ100の構造について説明する。尚、図8(a)は、面発光レーザ100の上面図であり、図8(b)は、図8(a)における一点鎖線8A−8Bにおいて切断した面発光レーザ100のXZ面における断面図である。また、本明細書では、前述のとおり、レーザ発振方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面内における互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。
面発光レーザ100は、発振波長が780nm帯の面発光レーザであり、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109などを有している。更に、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109及び下部スペーサ層104の一部にはメサ110が形成されている。メサ110の側面及び上面の一部には、誘電体膜111が形成されており、誘電体膜111及びメサ110の上面の一部には、p側電極113が形成されている。また、基板101の裏面にはn側電極114が形成されている。更に、メサ110の上面のコンタクト層109上においてp側電極113に囲まれた領域内には、透明膜111A、111B、111C及び111Dが形成されており、透明膜111A、111B、111C及び111Dとコンタクト層109上には、保護層121が形成されている。また、上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間、または、上部半導体DBR107内には、電流狭窄層108が形成されており、電流狭窄層108は、メサ110の側面より酸化された周辺部の選択酸化領域108aと中心部分の酸化されていない電流狭窄領域108bにより形成されている。
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図9(a)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図9(b)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+X方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−X方向となるように配置されている。
尚、基板101として、このような傾斜基板を用いることによって、偏光方向をX軸方向に安定させようとする偏光制御作用が働く。
バッファ層102は、基板101の+Z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層103aと、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層103bのペアを40.5ペア積層形成することにより形成されている。各屈折率層の間には、図10に示されるように、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層の厚さは、いずれも隣接する組成傾斜層の厚さの1/2を含んだ厚さが、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。尚、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層されており、図10に示されるように、3層の量子井戸層105aと4層の障壁層105bとを有する3重量子井戸構造の活性層である。各量子井戸層105aは、0.7%の圧縮歪みを誘起する組成であるGaInAsPからなり、バンドギャップ波長が約780nmである。また、各障壁層105bは、0.6%の引張歪みを誘起する組成であるGaInPからなる。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、図10に示されるように、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学厚さとなるように設定されている。尚、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層107aとp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層107bのペアを25ペア積層形成することにより形成されている。
上部半導体DBR107における各屈折率層の間には、図10に示されるように、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層における膜厚は、いずれも隣接する組成傾斜層の膜厚の1/2を含んだ膜厚が、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる電流狭窄層108が厚さ30nmで挿入されている。この電流狭窄層108の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。尚、電流狭窄層108は、メサ110を形成した後、熱酸化等を行うことにより選択酸化領域108aが形成される。電流狭窄層108は、酸化された選択酸化領域108aと酸化されていない電流狭窄領域108bとにより形成されている。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
尚、このように基板101上にバッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109等を積層形成したものを便宜上「積層体」ともいう。
(面発光レーザの製造方法)
次に、図11から図18に基づき、面発光レーザ100の製造方法について説明する。なお、ここでは、所望の偏光方向P(たとえば、P偏光)は、X軸方向であるものとする。
最初に、図11(a)に示すように、積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)または分子線エピタキシャル成長法(MBE法)により結晶成長させることにより形成する。例えば、MOCVD法により作製する場合では、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
次に、積層体の表面に一辺が25μmの正方形状の不図示のレジストパターンを形成する。具体的には、作製された積層体の表面にフォトレジストを塗布し、プリベーク、露光装置による露光、現像を行うことによりレジストパターンを形成する。
次に、Cl2ガスを用いたECRエッチング法により、レジストパターンをマスクとして、レジストパターンの形成されていない領域の積層体を除去する。本実施の形態では、下部スペーサ層104が露出するまでドライエッチングを行う。
次に、図11(b)に示すように、フォトマスクを除去する。これにより、四角柱状のメサ構造体(以下では、便宜上「メサ」と略述する)110が形成される。
次に、図11(c)に示すように、積層体を水蒸気中で熱処理する。これにより、電流狭窄層108中のAl(アルミニウム)がメサ110の側面となる外周部から選択的に酸化される。これにより、電流狭窄層108には、周辺部分の選択酸化領域108aと、中央部分の酸化されていない電流狭窄領域108bとが形成される。このようにして、いわゆる電流狭窄構造(酸化狭窄構造)が形成され、活性層に流れる電流経路をメサ110の中央部だけに制限することができる。即ち、電流は酸化されていない電流狭窄領域108bに流れ、選択酸化領域108aは流れない。よって、メサ110の中央部分に電流を集中して流すことができる。このような電流狭窄領域108bは、例えば、一辺の幅4μmから6μm程度の略正方形状に形成する。
次に、図12(a)に示すように、気相化学堆積法(CVD法)を用いて、シリコン窒化膜であるSiNからなる誘電体膜111を形成する。本実施の形態では、誘電体膜111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。尚、誘電体膜111は、SiN(SiNx)以外にもシリコン酸化(SiOx)膜、酸化チタン(TiOx)膜、シリコン酸窒化(SiON)膜により形成してもよい。
次に、図12(b)に示すように、レーザ光の出射面となるメサ110上部にP側電極コンタクトの窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクM、MA、MB、MC及びMDという)を作製する。ここでは、一例として、メサ110の周囲、メサ110上面の周囲がエッチングされないようにマスクMを作製し、メサ110上面の中心部を輪帯状に囲むように透明膜111A、111B、111C及び111Dが形成されるように、マスクMA、MB、MC、MDを作製する。例えば、図13に示されるように、透明膜111Aを形成するためのマスクMAと透明膜111C及び111Dを形成するためのマスクMC及びMDとの間隔及び透明膜111Bを形成するためのマスクMBと透明膜111C及び111Dを形成するためのマスクMC及びMDとの間隔L1が1μm、透明膜111Aを形成するためのマスクMA及び透明膜111Bを形成するためのマスクMBのX軸方向における幅L2が4μm、透明膜111Cを形成するためのマスクMC及び透明膜111Dを形成するためのマスクMDのX軸方向における幅L3が2μm、透明膜111Cを形成するためのマスクMC及び透明膜111Dを形成するためのマスクMDのY軸方向における幅L4が3.5μm、透明膜111Cを形成するためのマスクMCと透明膜111Dを形成するためのマスクMDのY軸方向における間隔L5が4.5μmとなるように形成する。尚、図13は、図12(b)におけるメサ110の部分の拡大図である。尚、本実施の形態では、このマスクM、MA、MB、MC及びMDはレジストパターンにより形成されている。
次に、BHF(バッファドフッ酸)にて、マスクM、MA、MB、MC及びMDの形成されていない領域における誘電体膜111をエッチングし、P側電極コンタクトのための窓開けを行う。
次に、図14に示すように、マスクM、MA、MB、MC及びMDを除去する。これにより、メサ110の周囲、メサ110の上面の周囲には、保護膜となる誘電体膜111が形成され、メサ110の上面のコンタクト層109上には、透明膜111A、111B、111C及び111Dが形成される。尚、図14(a)は、この工程におけるXY面における上面図であり、図14(b)は、図14(a)における一点鎖線14A−14Bにおいて切断した断面図であり、図14(c)は、図14(a)における一点鎖線14C−14Dにおいて切断した断面図である。
次に、メサ110上部の光出射部(金属層の開口部)となる領域に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、この後、p側電極材料の蒸着を行う。p側電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
次に、図15に示すように、光出射部となる領域(出射領域)に蒸着された電極材料の一部をリフトオフにより除去することにより、p側電極113を形成する。p側電極113はメサ110の上面において、ロの字状に形成されており、このp側電極113により囲まれた領域が出射領域となる。
尚、図16は、メサ110の上部における拡大図である。出射領域の形状は、一辺の長さがL6(例えば、10μm)の正方形である。本実施形態では、出射領域内において、光学的厚さがλ/4のSiNからなる透明な誘電体膜からなる透明膜111A、111B、111C及び111Dが、レーザ光の発光の中心100Aの周囲に、レーザ光の発光の中心100Aに対して、X軸方向の両側及びY軸方向の両側に各々形成されている。
次に、図17に示すように、気相化学堆積法(CVD法)により、SiNからなる保護層121を光学的厚さが2λ/4となるように形成する。即ち、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=2λ/4n)は約210nmに設定した。これにより、透明膜111A、111B、111C及び111D上にも保護層121が形成される。尚、保護層121は、SiN(SiNx)以外にもシリコン酸化(SiOx)膜、酸化チタン(TiOx)膜、シリコン酸窒化(SiON)膜により形成してもよい。
次に、図18に示すように、基板101の裏側を所定の厚さ(例えば、100μm程度)まで研磨した後、n側電極114を形成する。ここでは、n側電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。尚、図18(a)は、面発光レーザ100のXZ面における断面図であり、図18(b)は、面発光レーザ100のYZ面における断面図である。
次に、アニールによって、p側電極113とn側電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサ110が発光部となる面発光レーザ100を形成することができる。
次に、チップ毎に切断し、面発光レーザが二次元的に配列されている面発光レーザアレイチップを作製する。
このようにして、形成される本実施の形態における面発光レーザにおいては、透明膜111A、111B、111C及び111Dの上に保護層121が形成されており、誘電体膜における光学的な膜厚は3λ/4となり、透明膜111A、111B、111C及び111Dが形成されていないメサ110の中心部における誘電体膜の光学的な膜厚は2λ/4となるように形成することができる。
図19は、本実施の形態における面発光レーザAと図2に示される構造の面発光レーザBにおいて、出力を上げていった状態におけるSMSRと、X方向の遠視野プロファイル(FFP−H)及びY方向の遠視野プロファイル(FFP−V)との関係を示すものである。図19に示されるように、本実施の形態における面発光レーザAの方が、図2に示される構造の面発光レーザBよりも、X方向の遠視野プロファイル(FFP−H)とY方向の遠視野プロファイル(FFP−V)との差を小さくすることができる。
上記説明では、透明膜111A、111B、111C及び111Dの光学的な膜厚が3λ/4となる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光学的な膜厚が波長λの1/4の奇数倍であればよい。また、保護層121の光学的な膜厚が2λ/4となる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光学的な膜厚が波長λの1/4の偶数倍であればよい。
(面発光レーザアレイ)
次に、本実施の形態における面発光レーザ100が複数形成されている面発光レーザアレイについて説明する。面発光レーザは、2次元的に容易に配列させることが可能であるため、複数の面発光レーザにより容易に面発光レーザアレイを形成することができる。
以下、図20に基づき面発光レーザアレイ300について説明する。図20に示されるように、この面発光レーザアレイ300は、複数(ここでは、32個(4×8個))の発光部200となる面発光レーザ100が同一基板上に、主走査方向の間隔cが30μm、副走査方向の間隔d1が24μmで配置されている。尚、X軸方向は主走査対応方向であり、Y軸方向は副走査対応方向である。複数の発光部200は、すべての発光部200をY軸方向に伸びる仮想線上に正射影したときに等間隔d2となるように配置されている。このようにして、32個の発光部200は2次元的に配列されている。尚、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部200の中心間距離を意味する。また、図20では発光部200の数が32個であるものを示しているが、発光部200の個数は、複数であればよく、例えば、発光部200が40個のものであってもよい。このような面発光レーザアレイ300により、円形で且つ光密度の高い微小な光スポットを32個同時に、後述する感光体ドラム上に形成することが可能となる。
また、面発光レーザアレイ300では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d2であるので、点灯のタイミングを調整することにより、後述する感光体ドラム上において副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。尚、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
ところで、本実施の形態における面発光レーザアレイ300において、隣接する2つの発光部200の間の溝は、各発光部の電気的及び空間的分離のために、5μm以上であることが好ましい。あまり狭いと製造時のエッチングの制御が難しくなるからである。また、発光部200を構成するメサの大きさ(1辺の長さ)は10μm以上であることが好ましい。あまり小さいと動作時に熱がこもり、特性が低下するおそれがあるからである。
尚、図21には、面発光レーザアレイ300における配線構造を示す。このように面発光レーザアレイ300では、2次元的に配列されている32個の発光部200、及び32個の発光部の周囲に設けられ各発光部200に対応した32個の電極パッド210を有している。また、各電極パッド210は、対応する発光部200と配線部材220によって電気的に接続されている。
本実施の形態における面発光レーザ及び面発光レーザアレイは、通電経時変化が少なく、即ち、通電させた状態において生じるX方向の遠視野プロファイル(FFP−H)の広がりの変化と、Y方向の遠視野プロファイル(FFP−V)の広がりの変化の差を小さくすることができるため、従来のものと比べて、長寿命化させることができ、信頼性を向上させることができる。
また、上述した2次元的に面発光レーザが配列された面発光レーザアレイ300に代えて、発光部200となる面発光レーザが1次元配列された面発光レーザアレイを用いてもよい。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における面発光レーザまたは面発光レーザアレイを用いた画像形成装置としてのレーザプリンタ1000である。
図22に基づき、本実施の形態におけるレーザプリンタ1000について説明する。本実施の形態におけるレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060等を備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、矢印Xで示す方向に回転するようになっている。
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、このトナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、この給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。このレジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、この記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
次に、図23に基づき光走査装置1010について説明する。光走査装置1010は、光源ユニット1100、不図示のカップリングレンズ及び開口板、シリンドリカルレンズ1113、ポリゴンミラー1114、fθレンズ1115、トロイダルレンズ1116、2つのミラー(1117、1118)、及び上記各部を統括的に制御する不図示の制御装置を備えている。尚、光源ユニット1100は、第1の実施の形態における面発光レーザまたは面発光レーザアレイを含むものである。
シリンドリカルレンズ1113は、光源ユニット1100から出力された光を、ミラー1117を介してポリゴンミラー1114の偏向反射面近傍に集光する。
ポリゴンミラー1114は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向反射面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、矢印Yに示す方向に一定の角速度で回転されている。
従って、光源ユニット1100から出射され、シリンドリカルレンズ1113によってポリゴンミラー1114の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー1114の回転により一定の角速度で偏向される。
fθレンズ1115は、ポリゴンミラー1114からの光の入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー1114により一定の角速度で偏向される光の像面を、主走査方向に関して等速移動させる。 トロイダルレンズ1116は、fθレンズ1115からの光をミラー1118を介して、感光体ドラム1030の表面に結像する。
トロイダルレンズ1116は、fθレンズ1115を介した光束の光路上に配置されている。そして、このトロイダルレンズ1116を介した光束が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー1114の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー1114と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施の形態では、走査光学系は、fθレンズ1115とトロイダルレンズ1116とから構成されている。なお、fθレンズ1115とトロイダルレンズ1116の間の光路上、及びトロイダルレンズ1116と感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されてもよい。
本実施の形態におけるレーザプリンタ1000では、第1の実施の形態における面発光レーザまたは面発光レーザアレイを用いているため、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
また、この場合には、各発光部からの光束の偏光方向が安定して揃っているため、レーザプリンタ1000では、高品質の画像を長期間安定して形成することができる。
尚、本実施の形態における説明では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であってもよい。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000である。
図24に基づき、本実施の形態におけるカラープリンタ2000について説明する。本実施の形態におけるカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図24において示される矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転順にそれぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、第1の実施の形態における面発光レーザまたは面発光レーザアレイを含む光源ユニットを、各々の色毎に有しており、第2の実施の形態において説明した光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、第2の実施の形態におけるレーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、光走査装置2010の各光源が第1の実施の形態における面発光レーザまたは面発光レーザアレイを含む光源ユニットにより形成されているため、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。
よって、本実施の形態におけるカラープリンタ2000では、第1の実施の形態における面発光レーザまたは面発光レーザアレイを用いているため、高品質の画像を長期間安定して形成することができる。
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、面発光レーザを1次元に配列させた面発光レーザ素子となる1次元の面発光レーザアレイである。
図25に基づき、本実施の形態について説明する。本実施の形態は、面発光レーザ素子3010において、複数の面発光レーザ3100が1次元に配列されている構造のものである。各々の面発光レーザ3100には、電極パッド3120が設けられている。この面発光レーザ3100は、基板上に、下部半導体DBR、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、上部半導体DBRが形成されているものである。基板としてはGaAs基板を用いており、下部半導体DBRは光学的な膜厚がλ/4となるように形成されたn−GaAs高屈折率層とn−Al0.9Ga0.1As低屈折率層とを交互に36.5ペア積層形成することにより形成されている。また、活性層は3層からなるGaInNAs量子井戸活性層により構成されており、発振波長が1.3μmとなるように形成されており、上部スペーサ層及び下部スペーサ層と障壁層はGaAsにより形成されている。上部半導体DBRは光学的な膜厚がλ/4となるように形成されたp−GaAs高屈折率層とp−Al0.9Ga0.1As低屈折率層とを交互に26ペア積層形成することにより形成されている。電流狭窄層は、上部スペーサ層、活性層及び下部スペーサ層により構成される共振器領域より5λ/4離れた上部半導体DBRに、厚さ20nmのAlAsにより形成されている。また、上部半導体DBRの最下部の低屈折率層は、他の低屈折率層とは異なるp−Al0.6Ga0.4Asにより形成されており、電流狭窄層との間には、厚さ35nmのp−Al0.8Ga0.2As中間層が設けられている。
次に、本実施の形態における面発光レーザ素子を光源として用い、光ファイバと組み合わせた構造の光通信モジュールについて説明する。具体的には、図26に示されるように、面発光レーザ素子3010に1次元的に形成された各々の面発光レーザに対応して光ファイバ3200が設けられた構成のものである。図に示されるように、均一である面発光レーザを同一基板上に多数集積化することにより、例えば、光通信に適用した場合に、容易に、同時に多数ビームによるデータ伝送が可能となるため、高速通信を行なうことができる。更に、面発光レーザは低消費電力で動作させることができるため、通信機器等の装置内に組み込んだ場合においても、発熱することが少なく、あまり温度が上昇することがない。
本実施の形態では、面発光レーザと光ファイバとを1:1に対応させた場合について説明したが、発振波長の異なる複数の面発光レーザを1次元または2次元にアレイ状に配列して、波長多重送信を行なうことにより、伝送速度をより一層高めることができる。
また、本実施の形態では、信頼性の高い面発光レーザ素子を用いているため、信頼性の高い光送信モジュールを得ることができ、更には、信頼性の高い光通信システムを実現することができる。この光通信システムは、家庭用、オフィス等の室内用、機器内部等の短距離のデータ通信に用いることが、特に好ましい。
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。