JP2013029390A - 金属原子を含有する廃液の処理方法及び吸着剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属原子、特に放射性ストロンチウムを含有する廃液から、効率よくかつ簡便に前記放射性ストロンチウムを除去することのできる処理方法及び吸着剤を提供する。
【解決手段】廃液中の金属原子を除去及び回収する廃液処理方法であって、前記廃液に、(a)リン酸化合物と、(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩とを添加する工程を有することを特徴とする処理方法。
【選択図】なし
【解決手段】廃液中の金属原子を除去及び回収する廃液処理方法であって、前記廃液に、(a)リン酸化合物と、(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩とを添加する工程を有することを特徴とする処理方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、金属原子、特に放射性ストロンチウムを含有する廃液から、前記金属原子を吸着除去することにより廃液を処理する方法、及び前記金属原子を除去するための吸着剤に関し、詳しくは、リン酸化合物と、水溶性金属塩とを添加する工程を有する廃液処理方法、及びリン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属とからなる吸着剤に関する。
原子力発電所、使用済み核燃料の再処理工場等の原子力施設では、種々の放射性物質を含む廃液が発生する。放射性廃液は、蒸発濃縮、イオン交換、凝集沈殿等の操作によって放射性物質と水に分けられ、放射性物質が充分に除去された水は放出され、濃縮された放射性物質はガラス固化、アスファルト固化等の方法によって固定され、保管される。
これらの方法の中で、蒸発濃縮法は水と放射性物質を分離する効率、すなわち、除染効率は非常に高いが、蒸発設備の建設コスト及び運転コストが高く、また蒸発缶の材料が腐食しやすい等の欠点がある。一方、イオン交換樹脂法や凝集沈殿法は、設備の建設コスト及び運転コストは小さいが、除染効率が低いといった欠点がある。
放射性廃液には通常、核燃料物質の抽出剤の洗浄に用いられたナトリウム塩が混入するため、蒸発濃縮法では硝酸ナトリウム等のナトリウム塩が釜残中に析出して濃縮倍率が上がらないといった問題があり、イオン交換樹脂法では、硝酸ソーダの濃度が高くなることによりセシウム等の一価の陽イオンの吸着量が低下し、除染効率が低下するといった問題があり、凝集沈殿法では硝酸ソーダの存在により除染係数が低下するといった問題がある。
廃液中の放射性物質には、水酸化物として溶解度の小さいルテニウム、ジルコニウム等の重金属、及び水酸化物として溶解度の高いセシウム、ストロンチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属等、種々の元素が含まれている。これらの中でルテニウム、ジルコニウム等の重金属は、液性をアルカリ性にすることによって水酸化物として、また、水酸化鉄等との共沈によって析出させ、除去する凝集沈殿法が有効だが、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の除去は非常に困難である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属等の除去法としては、イオン交換体による方法が広く検討されている。ストロンチウム等のアルカリ土類金属及びウラン等の吸着体としては、チタン酸が知られており、例えば、特開昭57-140644号(特許文献1)に示されるような、チタン酸の表面積を非常に大きくして吸着能力を向上させると同時に吸着体としての取り扱い性等を改良した、チタン酸とアクリロニトリル系重合体の複合吸着体成型物が有効である。
しかしながら、チタン酸のストロンチウムに対する吸着除去能はそれほど高いものではなく、放射性廃液からストロンチウムを完全に除去することはできず、他の方法との併用が必要であり、より高い吸着除去能を有する吸着剤の開発が望まれている。
Sheng-Heng Tan et al., Hydrothermal removal of Sr2+in aqueous solution via formation of Sr-substituted hydroxyapatite, “Journal of Hazardous Materials,” 179 (2010) 559-563(非特許文献1) は、235U及び239Puの核***によって生成する廃棄物から放射性ストロンチウム(90Sr及び89Sr)を、Caイオン及びリン酸化合物によってSr置換ハイドロキシアパタイトとして除去する方法を開示している。この方法は、Sr及びCaを含有する水溶液に、リン酸水素ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウムを添加し、オートクレーブで160℃14時間加熱処理して行い、99.5%以上のストロンチウムを除去することができると記載されている。しかしながら、この方法はオートクレーブで160℃14時間加熱処理する必要があるため、大量の放射性廃液を処理することは現実的には不可能であり、改良が望まれている。
従って、本発明の目的は、金属原子、特に放射性ストロンチウムを含有する廃液から、効率よくかつ簡便に前記放射性ストロンチウムを除去することのできる処理方法及び吸着剤を提供することにある。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、放射性ストロンチウムを含む廃液に、トリポリリン酸等のリン酸化合物と、バリウム等の金属の水溶性無機塩とを添加することにより、速やかに放射性ストロンチウムを含む沈殿が生成し、廃液から放射性ストロンチウムを除去することができることを見いだし、本発明に想到した。
すなわち、本発明の廃液処理方法は、廃液中の金属原子を除去及び回収する方法であって、前記廃液に
(a)リン酸化合物と、
(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩と
を添加する工程を有することを特徴とする。
(a)リン酸化合物と、
(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩と
を添加する工程を有することを特徴とする。
前記リン酸化合物と、水溶性金属塩とを添加する工程の後に、凝集剤を添加する工程を有するのが好ましい。
前記リン酸化合物と、水溶性金属塩との添加は50〜80℃に加熱した前記廃液に対して行うのが好ましい。
前記リン酸化合物は、リン酸塩、リン酸水素塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩及びメタリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有するのが好ましい。
前記水溶性金属塩は、前記金属のハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
前記凝集剤は、無機凝集剤及び/又は有機高分子凝集剤であるのが好ましい。
前記無機凝集剤は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
前記有機高分子凝集剤は、カチオン性有機高分子凝集剤、アニオン性有機高分子凝集剤、ノニオン性有機高分子凝集剤、両イオン性有機高分子凝集剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
前記凝集剤を添加する工程は、前記無機凝集剤及び/又は前記高分子凝集剤を添加混合した後に、さらに前記高分子凝集剤を添加混合する工程からなるのが好ましい。
廃液中の金属原子を吸着するための本発明の吸着剤は、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属とからなる。
本発明の廃液処理方法及び吸着剤は、廃液中の金属原子、特にストロンチウムを選択的に、しかも迅速に除去することが可能なので、放射性物質を含有する大量の廃液から放射性ストロンチウム(90Sr及び89Sr)を除去するのに好適である。
[1]廃液処理方法
本発明の廃液処理方法は、廃液中の金属原子を除去及び回収するものであり、前記廃液に、
(a)リン酸化合物と、
(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩と
を添加することにより、前記金属原子を含有する沈殿物を生成させ、その沈降物を回収する方法である。
本発明の廃液処理方法は、廃液中の金属原子を除去及び回収するものであり、前記廃液に、
(a)リン酸化合物と、
(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩と
を添加することにより、前記金属原子を含有する沈殿物を生成させ、その沈降物を回収する方法である。
本発明の廃液処理方法は、特にストロンチウム等のアルカリ土類金属を選択的に沈殿させることができるので、例えば放射性物質を含有する廃液から、放射性ストロンチウムを除去回収するのに有効である。
本発明の方法においては、ストロンチウム等のアルカリ土類金属を含有する水溶液に、前記リン酸化合物と、前記水溶性金属塩とを添加した後、充分に攪拌することにより速やかに沈殿物が生じる。反応を十分に完結させ、沈殿物を十分に沈降させるため、混合後10分以上放置するのが好ましく、1時間以上放置するのがより好ましく、5時間以上放置するのが最も好ましい。
ストロンチウム等の水溶液に、リン酸化合物及び水溶性金属塩を添加すると、リン酸と金属との塩が形成されると同時に、前記リン酸と金属との塩にアルカリ土類金属が取り込まれ、複合塩が形成され沈殿することにより、廃液中のアルカリ土類金属を効率よく迅速に除去することができる。これらの処理は、室温で行うことが可能であるが、特に迅速に処理を行いたい場合は、25℃よりも高く90℃よりも低い温度に廃液を加熱して行うのが好ましく、50〜80℃で行うのがより好ましい。
(1)水溶性金属塩
水溶性金属塩は、廃液中に含まれるストロンチウム等のアルカリ土類金属に対して10当量以上添加するのが好ましく、100当量以上添加するのがより好ましく、1000当量以上添加するのが最も好ましい。10当量よりも少ない添加量の場合、ストロンチウム等のアルカリ土類金属の除去効率が低下する。また、多量に添加するとリン酸化合物の必要量が多くなるため、ストロンチウム等のアルカリ土類金属に対して10000当量以下で使用するのが好ましい。
水溶性金属塩は、廃液中に含まれるストロンチウム等のアルカリ土類金属に対して10当量以上添加するのが好ましく、100当量以上添加するのがより好ましく、1000当量以上添加するのが最も好ましい。10当量よりも少ない添加量の場合、ストロンチウム等のアルカリ土類金属の除去効率が低下する。また、多量に添加するとリン酸化合物の必要量が多くなるため、ストロンチウム等のアルカリ土類金属に対して10000当量以下で使用するのが好ましい。
水溶性金属塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。前記アルカリ金属としては、カリウム、ルビジウム又はセシウムが好ましく、前記アルカリ土類金属としては、バリウムが好ましく、前記遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル又は銅が好ましい。水溶性金属塩は、塩化バリウム、硝酸バリウム等のバリウム塩が最も好ましい。
(2)リン酸化合物
リン酸化合物は、前記水溶性金属塩に対して、1/10当量以上添加するのが好ましく、1当量以上添加するのがより好ましく、10当量以上添加するのが最も好ましい。上限は特に規定する必要はないが、実用的には前記水溶性金属塩に対して、100当量以下で使用するのが好ましい。
リン酸化合物は、前記水溶性金属塩に対して、1/10当量以上添加するのが好ましく、1当量以上添加するのがより好ましく、10当量以上添加するのが最も好ましい。上限は特に規定する必要はないが、実用的には前記水溶性金属塩に対して、100当量以下で使用するのが好ましい。
リン酸化合物としては、リン酸塩、リン酸アミノ塩、無水リン酸塩、三リン酸塩、四リン酸塩、縮合リン酸塩等が使用できるが、リン酸塩、リン酸水素塩及び縮合リン酸塩が好ましく、特に縮合リン酸塩を単独で、若しくはリン酸塩及び/又はリン酸水素塩と組合せて使用するのが好ましい。縮合リン酸塩とは、オルソリン酸(H3PO4)の脱水縮合によって得られた酸の塩であり、特に限定はしないが、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩及びメタリン酸塩が好ましい。メタリン酸塩[(PO3)n]の中でも、特に低級ポリリン酸塩(n=6以下)が好ましく、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩がより好ましく、特にトリポリリン酸塩が好ましい。
リン酸化合物には金属を含んでいても良く、含まれる金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びAl等が好ましい。アルカリ金属としては、Na及びKが好ましく、アルカリ土類金属としては、Mg及びCaが好ましく、遷移金属としては、Fe及びZnが好ましい。
好ましいリン酸化合物の使用例としては、リン酸水素塩とポリリン酸との組合せが好ましく、特にリン酸水素二ナトリウムとトリポリリン酸との組合せが好ましい。リン酸水素塩及びポリリン酸の比率は、限定されないが、リン酸水素塩/ポリリン酸のモル比で、1/10〜10/1の範囲が好ましく、1/2〜5/1の範囲がより好ましい。
(3)凝集剤
前記沈殿物は、濾過、デカンテーション等の方法により廃液から除去することができるが、凝集剤を添加することにより、さらに速やかに凝集及び固化させることができる。
前記沈殿物は、濾過、デカンテーション等の方法により廃液から除去することができるが、凝集剤を添加することにより、さらに速やかに凝集及び固化させることができる。
凝集剤の添加量は、特に限定されず、凝集物を十分に沈降させることのできる量であればよい。なお、十分な沈降とは、生成した凝集物の99%以上が沈降したことを意味する。従って、実際にはこのような除去効率を達成するように適宜凝集剤添加量を調整すればよいが、例えばアニオン系凝集剤を用いる場合、廃液中に添加したリン酸化合物及び水溶性金属塩の総量に対して凝集剤を0.1〜10%程度添加すれば十分に凝集沈殿させることができる。
凝集剤を添加した廃液から効率的に凝集物を分離するための方法としては、濾過、デカンテーション、遠心分離、不織布等に吸着させる方法等があるが、取り扱いの簡便さから濾過又はデカンテーションが好ましい。凝集剤を添加した後一定時間静置することで、凝集物が処理槽底面に沈殿するので、上澄みを濾過するか、デカンテーションにより除去する。デカンテーションは、ドレンバルブからの抜き出しや、ポンプによる吸引や吸い上げ、サイホン等の利用、処理槽そのものを傾斜させて壁面上端からの排出等の方法が用いられる。さらには不織布をフィルターとして使用しての自然濾過が濾過後の取り扱いに優れておりより好ましい。不織布は、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン等からなるものが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
凝集剤の使用方法としては、無機凝集剤及び有機高分子凝集剤を併用して用いる方法が好ましい。無機凝集剤のみでは、凝集によって生じたコロイド粒子の機械的強度があまり大きくなく、粒子の大きさや沈降速度に限界がある。有機高分子凝集剤を併用することにより、粒子の結合力を強め、粒径が大きく沈降速度の大きい粗大粒子(フロック)が得られる。
無機凝集剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、その他一般の水処理で用いられている多価金属塩等を用いることができ、中でも硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄及びポリ硫酸第二鉄が好ましい。これらの無機凝集剤を1種又は2種以上組合せて使用する。
有機高分子凝集剤は、カチオン性有機高分子凝集剤、アニオン性有機高分子凝集剤、ノニオン性有機高分子凝集剤、両イオン性有機高分子凝集剤の中から選択して使用するのが好ましく、特にカチオン性有機高分子凝集剤とアニオン性有機高分子凝集剤との併用、又は両イオン性有機高分子凝集剤が好ましい。
カチオン性有機高分子凝集剤としては、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、水溶性アニリン樹脂、ポリチオ尿素、ポリアクリルアミドにホルマリンとアミン類で変成したポリアクリルアミドのカチオン化変成物、カチオン性ビニルラクタム−アクリルアミド共重合体、ジアリルアンモニウムハロゲン化物の環化重合物、イソブチレンと無水マレイン酸との共重合物にジアミンを反応させた共重合体、ビニルイミダゾリン重合体、ジアルキルアミノエチルアクリレートの重合体、アルキレンジクロライドとアルキレンポリアミンとの重縮合物、ジシアンジアミドとホルマリンとの重縮合物、アニリンとホルマリンとの重縮合物、アミン類とエピクロヒドリンとの共重合体、アンモニアとエピクロヒドリンとの共重合体、アミン類とアスパラギン酸との共重合体、第4級アンモニウム塩を側鎖に有するアクリルポリマー等が挙げられる。
前記アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、メトキシプロピルアミン、ブツルアミン、アミルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、モノメチルアミノプロピルアミン、ベンジルアミン、ピペリジン、ピロリジン等のアルキル及び環状アミン類、ポリエチレンポリアミン類、アミノプロピルエタノールアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、モノメチルアミノプロピルアミン、ジアルキルアミノプロピルアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
アニオン性有機高分子凝集剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、マレイン酸共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、ポリアクリルアミド-アクリル酸共重合体、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド等が挙げられる。
ノニオン性有機高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素−ホルマリン樹脂、ポリアミノアルキルメタクリレート、キトサン等が挙げられる。
両イオン性有機高分子凝集剤は、1つの分子中にカチオン性基及びアニオン性基を有する高分子凝集剤である。カチオン性基としては、第3級アミン、その中和塩、4級塩等、アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン基又はこれらの塩等が挙げられる。特にカルボキシル基を有する両性系高分子凝集剤が好ましい。また、これらのイオン性成分の他にノニオン性成分が含まれていてもよい。より具体的には、アニオン性のモノマー単位として、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。カチオン性のモノマー単位としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルジメチルアミン若しくはこれらの中和塩、4級塩等が挙げられる。ノニオン性のモノマー単位としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
両イオン性有機高分子凝集剤としては、ジメチルアミノエチルアクリレート/アクリル酸/アクリルアミド共重合体、ジメチルアミノエチルメタクリレート/アクリル酸/アクリルアミド共重合体、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩/アクリル酸/アクリルアミド共重合体、ジメチルアミノエチルアクリレート/アクリル酸共重合体、アクリル酸ソーダ/アクリルアミド共重合体のマンニッヒ変性物等が好ましい。
複数の凝集剤を用いる場合、それらの添加順序及び添加方法は特に限定されないが、凝集物の結合を強くしフロックを粗大化させるためには、(a)無機凝集剤及びカチオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合後、さらにアニオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合する方法、(b)無機凝集剤、カチオン性有機高分子凝集剤及びアニオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合後、さらにアニオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合する方法、(c)無機凝集剤を添加し撹拌混合後、カチオン性有機高分子凝集剤及びアニオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合する方法、(d)無機凝集剤を添加し撹拌混合後、両イオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合する方法、(e)無機凝集剤及び両イオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合後、さらに両イオン性有機高分子凝集剤を添加し撹拌混合する方法等が好ましく用いられる。凝集剤の添加方法は上記の方法に限定されず、様々な組合せが考えられ、廃液の種類によって適宜選択するのが好ましい。
カチオン性有機高分子凝集剤又はアニオン性高分子凝集剤を使用する場合、前記高分子凝集剤を効果的に働かせるため、それらを添加する前に廃液を、それぞれの高分子凝集剤に応じてpH調節するのが好ましい。カチオン性有機高分子凝集剤を用いる場合、弱酸性に、アニオン性高分子凝集剤を用いる場合、弱アルカリ性に、調製することにより、凝集剤の凝集沈殿効果を高めることができ、凝集剤の添加量も低減できる。また、カチオン性有機高分子凝集剤及びアニオン性高分子凝集剤を併用する場合、両イオン性有機高分子凝集剤を使用する場合は、中性付近のpHに調節するのが好ましい。特に、無機凝集剤を添加した後は、pHが大きく酸性側又はアルカリ性側によっていることがあるので、有機高分子凝集剤の凝集効率を高めるため、pH調節を行うのが好ましい。
無機凝集剤及び有機高分子凝集剤を併用して用いる場合、凝集剤の添加量は、廃液量に対してそれぞれ無機凝集剤(無水分基準)が10〜1000 mg/L好ましくは20〜500 mg/L、カチオン性有機高分子凝集剤が5〜100 mg/L好ましくは10〜50 mg/L、アニオン性有機高分子凝集剤が2〜50 mg/L好ましくは5〜30 mg/L、両イオン性有機高分子凝集剤が5〜100 mg/L好ましくは10〜50 mg/L添加である。
本発明の方法は、放射性ストロンチウム等のアルカリ土類金属の濃度が低い廃液からも効率よく前記アルカリ土類金属を除去することが可能なので、あらかじめチタン酸、ゼオライト等の既存の吸着剤で処理し、放射性物質をある程度除去した後、微量に残った放射性ストロンチウムを本発明の方法により除去するのが好ましい。このように二段階で廃液を処理することにより、より効率よく放射性ストロンチウムを除去することができる。
[2]吸着剤
リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属とからなる塩は、廃液中の金属原子、特にストロンチウム等のアルカリ土類金属を吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属とからなる塩は、廃液中の金属原子、特にストロンチウム等のアルカリ土類金属を吸着するための吸着剤として高い効果を発揮する。
前記吸着剤は、リン酸化合物と、前記アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の水溶性塩とを混合することにより生成することができる。リン酸化合物と前記水溶性金属塩とを混合するときの、これらの化合物の使用量は、本発明の方法と同様で良い。
前記リン酸化合物は、本発明の方法で用いるものと同じものを使用することができる。
前記水溶性金属塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましく、前記アルカリ金属としては、カリウム、ルビジウム又はセシウムが好ましく、前記アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムが好ましく、前記遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル又は銅が好ましい。水溶性金属塩は、特にアルカリ土類金属の塩が好ましく、中でも塩化バリウム、硝酸バリウム等のバリウム塩が最も好ましい。
吸着剤は、ストロンチウム等のアルカリ土類金属を含有する廃液に添加して使用する。前記吸着剤の廃液への添加量は、廃液中に含まれるストロンチウム等の金属原子に対して前記吸着剤に含まれる水溶性金属の合計量として10当量以上となる量であるのが好ましく、100当量以上となる量であるのがより好ましく、1000当量以上となる量であるのが最も好ましい。添加量の上限は特に設ける必要はないが、実用的には、廃液1L当たり50 g程度である。前記吸着剤を添加後、充分に攪拌し1時間以上放置するのが好ましく、5時間以上放置するのがより好ましく、24時間以上放置するのが最も好ましい。
前記金属原子を吸着させた吸着剤は、濾過、デカンテーション等の方法により廃液から除去することができるが、凝集剤を添加することにより、速やかに凝集及び固化させることができる。凝集剤としては、本発明の方法で使用したものを使用するのが好ましく、それらの使用量及び使用方法も前記方法と同様で良い。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
6.5 ppmの塩化ストロンチウムを含む水溶液試料40 mLに、1 M塩化バリウム水溶液2 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、100 g/Lのトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを加えたところ、瞬時に灰白色の沈殿が生成した。なお、各水溶液は全て60℃に温調して試験を行った。この溶液を十分攪拌した後、室温で10時間静置し、上澄み液を分離した。上澄み液に含まれるストロンチウムをICP-AESで定量したところ、95%のストロンチウムが除去されていた。
6.5 ppmの塩化ストロンチウムを含む水溶液試料40 mLに、1 M塩化バリウム水溶液2 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、100 g/Lのトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを加えたところ、瞬時に灰白色の沈殿が生成した。なお、各水溶液は全て60℃に温調して試験を行った。この溶液を十分攪拌した後、室温で10時間静置し、上澄み液を分離した。上澄み液に含まれるストロンチウムをICP-AESで定量したところ、95%のストロンチウムが除去されていた。
実施例2
6.5 ppmの塩化ストロンチウムを含む水溶液試料40 mLに、1 M塩化バリウム水溶液2 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、100 g/Lのトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを加えたところ、瞬時に灰白色の沈殿が生成した。なお、各水溶液は全て60℃に温調して試験を行った。
6.5 ppmの塩化ストロンチウムを含む水溶液試料40 mLに、1 M塩化バリウム水溶液2 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、100 g/Lのトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを加えたところ、瞬時に灰白色の沈殿が生成した。なお、各水溶液は全て60℃に温調して試験を行った。
この分散液に、室温で2 gのポリ塩化アルミニウム水溶液(10質量%)、0.01 gのカチオン系高分子凝集剤(ユニフロッカUF-340、ポリメタアクリル酸エステル系分子量約310万、ユニチカ(株)製)、0.01 gのアニオン系高分子凝集剤(ユニフロッカUF-105、ポリアクリルアミド系分子量約1300万、ユニチカ(株)製)を加え30分攪拌後、3時間静置したところ、石ころ状に固化した沈殿物と上澄みとに分離した。この上澄み液を100μmφのメンブランフィルターで濾過し沈殿物を除去した。濾過後の水に含まれるストロンチウムをICP-AESで定量したところ、96%のストロンチウムが除去されていた。
比較例1
10 ppmの塩化ストロンチウムを含む水溶液試料40 mLに、1 M硝酸カルシウム水溶液2 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、100 g/Lのトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを加え十分攪拌すると、白色の沈殿が生成した。なお、各水溶液は全て60℃に温調して試験を行った。この溶液を室温で10時間静置し、上澄み液を分離した。上澄み液に含まれるストロンチウムをICP-AESで定量したところ、ストロンチウムはほとんど除去されていなかった。
10 ppmの塩化ストロンチウムを含む水溶液試料40 mLに、1 M硝酸カルシウム水溶液2 g、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、100 g/Lのトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを加え十分攪拌すると、白色の沈殿が生成した。なお、各水溶液は全て60℃に温調して試験を行った。この溶液を室温で10時間静置し、上澄み液を分離した。上澄み液に含まれるストロンチウムをICP-AESで定量したところ、ストロンチウムはほとんど除去されていなかった。
実施例3
(1)リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤
1 M塩化バリウム4 gを攪拌しながら、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、及び100 g/Lトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを順次加えたところ、白色の沈殿が生成した。デカンテーションで上澄み液を除き、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を得た。
(1)リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤
1 M塩化バリウム4 gを攪拌しながら、0.6 Mリン酸水素二ナトリウム水溶液4 g、及び100 g/Lトリポリリン酸ナトリウム水溶液8 gを順次加えたところ、白色の沈殿が生成した。デカンテーションで上澄み液を除き、リン酸化合物及びバリウムからなる吸着剤を得た。
(2) ストロンチウム吸着除去試験
6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液40 mLに、前記吸着剤4 gを加え2時間攪拌した後、1 gの硫酸バンド水溶液(10%質量%)、及び0.3 gのポリエチレンイミン水溶液(30質量%)を加え30分攪拌し、さらに2gのポリアクリル酸ナトリウム水溶液(0.3質量%)を加え30分攪拌後、3時間静置したところ、石ころ状に固化した沈殿物と上澄みとに分離した。この上澄み液を100μmφのメンブランフィルターで濾過し沈殿物を除去した。濾過後の水溶液に含まれるストロンチウムをICP-AESで定量したところ、95%以上のストロンチウムが除去されていた。
6.5 ppmの塩化ストロンチウム水溶液40 mLに、前記吸着剤4 gを加え2時間攪拌した後、1 gの硫酸バンド水溶液(10%質量%)、及び0.3 gのポリエチレンイミン水溶液(30質量%)を加え30分攪拌し、さらに2gのポリアクリル酸ナトリウム水溶液(0.3質量%)を加え30分攪拌後、3時間静置したところ、石ころ状に固化した沈殿物と上澄みとに分離した。この上澄み液を100μmφのメンブランフィルターで濾過し沈殿物を除去した。濾過後の水溶液に含まれるストロンチウムをICP-AESで定量したところ、95%以上のストロンチウムが除去されていた。
Claims (10)
- 廃液中の金属原子を除去及び回収する廃液処理方法であって、前記廃液に、
(a)リン酸化合物と、
(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩と
を添加する工程を有することを特徴とする処理方法。 - 請求項1に記載の廃液処理方法において、前記添加工程の後に、凝集剤を添加する工程を有することを特徴とする処理方法。
- 請求項1又は2に記載の廃液処理方法において、前記リン酸化合物と、前記水溶性金属塩との添加は、50〜80℃に加熱した前記廃液に対して行うことを特徴とする処理方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の廃液処理方法において、前記リン酸化合物が、リン酸塩、リン酸水素塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩及びメタリン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする処理方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の廃液処理方法において、前記水溶性金属塩が、前記金属のハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする処理方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の廃液処理方法において、前記凝集剤が、無機凝集剤及び/又は有機高分子凝集剤であることを特徴とする処理方法。
- 請求項6に記載の廃液処理方法において、前記無機凝集剤が、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする処理方法。
- 請求項6又は7に記載の廃液処理方法において、前記有機高分子凝集剤が、カチオン性有機高分子凝集剤、アニオン性有機高分子凝集剤、ノニオン性有機高分子凝集剤、両イオン性有機高分子凝集剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする処理方法。
- 請求項2〜8のいずれかに記載の廃液処理方法において、前記凝集剤を添加する工程が、前記無機凝集剤及び/又は前記高分子凝集剤を添加混合した後に、さらに前記高分子凝集剤を添加混合する工程からなることを特徴とする処理方法。
- 廃液中の金属原子を吸着するための吸着剤であって、リン酸化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属とからなる吸着剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011164865A JP2013029390A (ja) | 2011-07-27 | 2011-07-27 | 金属原子を含有する廃液の処理方法及び吸着剤 |
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JP2011164865A Withdrawn JP2013029390A (ja) | 2011-07-27 | 2011-07-27 | 金属原子を含有する廃液の処理方法及び吸着剤 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015200505A (ja) * | 2014-04-04 | 2015-11-12 | 住友大阪セメント株式会社 | 放射性ストロンチウムを含む廃液の処理方法 |
-
2011
- 2011-07-27 JP JP2011164865A patent/JP2013029390A/ja not_active Withdrawn
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