詳細な説明
バイオセンサシステムは、容器中に残留水分レベルを保持する乾燥剤を有する容器の中に密封された試験センサを含む。低湿度環境において、乾燥剤は水分を速やかには吸湿せず、それが、試験センサの試薬組成物が酵素をその活性構成に維持することに役立つ水分レベルを維持することを可能にすることができる。そのような乾燥剤を含む容器の中に貯蔵された試験センサは、従来の乾燥剤を含む容器又は乾燥剤を含まない容器の中に貯蔵された同等の試験センサよりも正確及び/又は高精度である分析対象物の濃度の計測値を提供することができる。したがって、試験センサは、非最適な条件下に長期間貯蔵された場合でさえ、一貫して正確な試験を短い試験時間で提供することができる。
バイオセンサシステムは複数の試験センサを含み、各試験センサが、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物を含む。バイオセンサシステムはさらに、乾燥剤を含む容器を含む。複数の試験センサは容器の中に密封されている。
バイオセンサシステムの容器中の乾燥剤は、好ましくは、40℃で10%〜20%相対湿度(RH)の環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿する。より好ましくは、乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で10%を吸湿する。より好ましくは、乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の5%〜10%を吸湿する。
40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の5%〜10%を吸湿する乾燥剤の例はシリカゲルを含む。シリカゲルは、0%〜約60%のRH値の場合、周囲環境の相対湿度にほぼ比例するレベルで水分を吸湿することができる。従って、乾燥シリカゲルの試料は、低い相対湿度を有している周囲環境から吸収する場合に、乾燥シリカゲルの同一試料がより高い相対湿度を有している周囲環境から吸収するよりも、より少ない水を吸収する。
対照的に、試験センサ容器に従来から使用されているモレキュラーシーブ乾燥剤は、10%〜20%RHを有する環境から多量の水分を速やかに吸湿することができる。例えば多孔性結晶質のアルミノ・ケイ酸塩を含んでいるようなモレキュラーシーブは、40℃で5%RHの環境と接したとき、水分重量の15%〜20%超を吸湿することができ、その後、相対湿度が高まるとともに、最小量のさらなる水分を吸湿することができる。従って、乾燥モレキュラーシーブの試料は、低い相対湿度を有している周囲環境から吸収する場合に、吸収した水の量が乾燥モレキュラーシーブの吸湿キャパシティに達するまでは、乾燥モレキュラーシーブの同一試料がより高い相対湿度を有している周囲環境から吸収するのと同量の水を吸収する。
40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿することができる乾燥剤の例はポリマー配合モレキュラーシーブの組成物を含む。乾燥剤をポリマーとブレンドすることによって乾燥剤の吸湿能力を下げることができる。ポリマー中の乾燥剤は部分的にしか環境に暴露されないため、水分の吸湿は、純粋な乾燥剤の吸湿速度よりも低い速度でしか起こらない。40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき、水分重量の最大で15%を吸湿することができる乾燥剤のもう一つの例はモレキュラーシーブとシリカゲルとのブレンドを含む。ブレンド中のモレキュラーシーブ及びシリカゲルのタイプ及び相対量の選択が、低い相対湿度でブレンド組成物によって吸湿される全水分の調整を可能にすることができる。
図1A〜1Cは、1デシリットルあたり400ミリグラム(mg/dL)のグルコース濃度を有し、40%のヘマトクリット含有率を有する全血サンプルからの試験センサ出力信号を示す。試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤「モレキュラーシーブ13x」22.5mgを有する容器(図1A)、試験センサ1個あたりシリカゲル30mgを有する容器(図1B)又は乾燥剤なしの容器(図1C)の中に密封されていた。「モレキュラーシーブ13x」乾燥剤は、約9オングストロームの有効孔開口を含む「タイプX」結晶構造を有するナトリウム・アルミノ・ケイ酸塩を含んでいる。乾燥剤のタイプごとに、容器の半分量を50℃で二週間貯蔵し、もう半分量を−20℃で二週間貯蔵した。50℃で二週間の熱ストレス環境は、バイオセンサのパフォーマンスをその貯蔵寿命の最後で評価するために一般に使用される加速ストレス条件である。貯蔵期間ののち、試験センサは、それらの容器から摘出され、それらの導体によって測定装置と接続され、分析対象物としての、グルコースを含む全血サンプルと接触し、全血サンプルの電気化学的試験を実施するように使用される。
「Wu」他への「Gated Amperometry」と題する米国特許出願公開公報2008/0173552及び「Wu」他への「Rapid−Read Gated Amperometry」と題する米国特許出願公開公報2009/0145779に記載されているように、計測装置によって試験センサに入力される信号は、ゲート制御された電流測定用パルスシーケンスであり、一つ以上の出力電流値が、サンプルの分析対象物の濃度と相関する。ゲート制御された電流測定用パルスシーケンス及び出力電流値と分析対象物の濃度との相関に関するこれらの特許出願の開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
図1Dは、入力信号に複数のパルスを含んで、ゲートで制御されたパルス・シークエンスを示す。そのパルスからの結果としての出力信号の電流値は、上記各パルスにより示される。記録された中間信号の電流値は、円で示されている。各i値は、入力信号に対応した出力信号の電流値である。i値の添え字の第1の数字は、パルス番号を意味し、添え字の第2の数字が、電流値が記録された時の出力信号の順番を意味する。例えば、i2,3は、第2のパルスのために記録された第三の電流値を意味する。
図1A〜1Cのグラフを生成するために使用されたパルスは、七つの緩和によって分けられた八つの励起を含むものであった。第二から第八までの励起は持続時間が約0.4秒であり、第二から第七までの緩和は持続時間が約1秒であった。第二から第八までの励起中、三つの出力電流値が記録された。
図1A〜1Dに示すような出力電流値は、相関を介して、サンプル中の分析対象物の濃度に関連させることができる。出力電流値とサンプルの分析対象物の濃度との相関は、分析中の特定の時間における出力電流を、分析対象物を含有する一連の原液中の分析対象物の既知の濃度に対してプロットすることによって作成することができる。出力信号からの出力電流値をサンプルの分析対象物の濃度と相関させるために、励起による初期電流値は、好ましくは、減衰(decay)中でそれに続く電流値よりも大きい。好ましくは、サンプルの分析対象物の濃度と相関した出力電流値は、試験センサの最大運動性能を反映する電流データを含む減衰から取り出される。出力電流の基礎にあるレドックス反応の速度は多数の要因によって影響を受ける。これらの要因は、試薬組成物が再水和する速度、酵素系が分析対象物と反応する速度、酵素系が電子をメディエータに移動する速度及びメディエータが電子を電極に移動する速度を含むことができる。
試験センサの最大運動性能は、ゲート制御電流測定パルスシーケンスの励起中、減衰する電流値を有する励起の初期電流値が、多数の励起に関して最大になったとき、到達することができる。好ましくは、試験センサの最大運動性能は、減衰する電流値を有する励起に関して得られた最後の電流値が、多数の励起に関して得られた最大で最後の電流値になったとき、到達する。より好ましくは、試験センサの最大運動性能は、減衰する電流値を有する励起の初期電流値が、多数の励起に関して最大であり、同じ励起に関して得られた最後の電流値が、多数の励起に関して得られた最大の最後の電流値になったとき、到達する。最大運動性能は、減衰する電流値を有する最初の励起において、到達することもできるし、減衰する電流値を有する後続の励起、たとえば第二、第三又は第四以降の励起において到達することもできる。
最大運動性能は、分析対象物を含有するサンプルが電気化学的試験センサと接触したのち、電気化学的に試験センサが、その最大出力電流値を得る時間であるパラメータ「ピーク時間」として表すことができる。最大出力電流値は、好ましくは、サンプルの分析対象物の濃度との相関のために使用される。好ましくは、試験センサのピーク時間は、サンプルを試験センサに導入してから約7秒未満であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約5秒未満である。好ましくは、ピーク時間は、サンプルを試験センサに導入してから約0.4〜7秒の範囲内であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約0.6〜約6.4秒の範囲内であり、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから約1.1〜約3.5秒の範囲内である。
図1Aを参照すると、従来の乾燥剤を有する容器の中に密封されていた試験センサは、50℃で二週間貯蔵された場合(ピーク時間=〜3.5秒)、−20℃で二週間貯蔵された場合(ピーク時間=〜2秒)よりも長いピーク時間を示した。対照的に、シリカゲル乾燥剤とともに密封されていたセンサ(図1B)又は乾燥剤なしで密封されていたセンサ(図1C)は、50℃で二週間貯蔵された場合に、−20℃で二週間貯蔵された場合(ピーク時間=〜2秒)に対してピーク時間の増加を示さなかった。従って、試験センサを従来の乾燥剤と一緒に格納することは、貯蔵温度が−20℃から50℃に増加した時の、最大出力電流値を得るように要求された時間内に、75%(75%=100%のx[(3.5秒−2秒)/2秒])の増加を導く、一方、シリカゲル乾燥剤、又は、乾燥剤以外と共に格納される試験センサは、貯蔵温度が−20℃から50℃に増加した時に、最大出力電流値を得るように要求された時間内に、0%の増加を示した
試験センサのグルコース結果は一般に固定時点において計測された出力電流から導出されるため、試験センサの電流プロフィールの変化は、一貫性を欠くグルコース試験結果を招くことがある。この増大した不正確さは、10秒以下のような短めの時間で実施された試験の場合に特に顕著である。図1A〜1Cに関して検査した試験センサの場合、従来の乾燥剤とともに密封された試験センサの電流プロフィールの変化は、バイオセンサのバイアスにおける望ましくない増大を生じさせた。
バイオセンサの計測性能はその確度及び/又は精度として決定される。確度は、確率的誤差成分と系統的誤差成分との組み合わせ効果を反映する。系統的誤差又は真度とは、バイオセンサシステムから決定された平均値とサンプルの分析対象物の濃度に関する一つ以上の承認された参照(リファレンス)値との間の差である。真度は、平均バイアスとして表すことができ、より大きな平均バイアス値がより低い真度を表し、それにより、より低い確度に寄与する。精度は、平均に対する多数の分析対象物の表示値の間の一致の近さを反映する。分析における一つ以上の誤差が、バイオセンサシステムによって測定される分析対象物の濃度のバイアス及び/又は不精密さに寄与する。したがって、バイオセンサシステムの分析誤差の減少が、確度の向上、ひいては計測性能の改善につながる。
バイアスは、サンプル中の分析対象物の濃度に依存して「絶対的バイアス」又は「%バイアス」として表すことができる。絶対的バイアスは、計測の単位、たとえばmg/dLで表すことができ、100mg/dL未満の分析対象物の濃度の場合に使用することができる。%バイアスは、参照値に対する絶対的バイアス値の割合として表すことができ、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度の場合に使用することができる。承認された参照値は、参照計器、たとえばYSI Inc.(Yellow Springs, Ohio)から市販されているYSI 2300 STAT PLUS(商標)グルコース分析装置を用いて得ることができる。
選択されたバイアス境界の「バイアスリミット」内に入る分析の割合が、参照(リファレンス)濃度に近い測定された分析対象物の濃度の割合を示す。したがって、リミットは、測定された分析対象物の濃度が参照濃度にどれほど近いのかを決める。バイアスリミットは、100mg/dL未満の分析対象物の濃度の場合には絶対的バイアスリミットとして表すことができ、少なくとも100mg/dLの分析対象物の濃度の場合には%バイアスリミットとして表すことができる。たとえば、実施された100の分析のうち95(95%)が±10%バイアスリミット内に入ることは、実施された100の分析のうち80(80%)が±10%バイアスリミット内に入ることよりも正確な結果である。同様に、実施された100の分析のうち95が±5%バイアスリミット内に入ることは、実施された100の分析のうち95が±10%バイアスリミット内に入ることよりも正確な結果である。このように、選択されたバイアスリミット又はより狭いバイアスリミット内に入る分析の割合の増加がバイオセンサシステムの計測性能の向上を表す。
図2A及び2Bは、40%のヘマトクリット含有率を有し、50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合のバイアス(絶対的バイアス又は%バイアス)値のグラフを示す。分析に使用された試験センサは、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x0〜22.5mgを有する容器(図2A)又は試験センサ1個あたりシリカゲル0〜30mgを含む容器(図2B)の中に、50個の試験センサのグループが入れられて、密封され、50℃で二週間貯蔵されたものである。貯蔵期間の後に、試験センサは、それらの容器から摘出され、それらの導体によって測定装置と接続され、そして、全血サンプルのうちの1つと接触する。
乾燥剤なし(乾燥剤0mg/試験センサ)では、試験センサ熱ストレス後の血中グルコース試験は、低いグルコース量(50mg/dL)を含有するサンプルの場合には15mg/dLの正のバイアスを示し、100mg/dL及び400mg/dLのグルコース濃度を有するサンプルの場合には7〜10%のバイアスを示し、高いグルコース量(600mg/dL)を含有するサンプルの場合にはほとんどバイアスを示さなかった。試験センサを従来のモレキュラーシーブ乾燥剤とともに密封した場合(図2A)、低及び正常グルコース量を有するサンプルの場合の正のバイアスが補正されたが、600mg/dLグルコースを有するサンプルの場合のバイアスは、乾燥剤レベルが増すとともに−10%及び15%バイアスに増大した。対照的に、30mg/センサのシリカゲルとともに貯蔵されたセンサの場合のバイアスは、100mg/dL未満のグルコースを有するサンプルの場合には5mg/dLバイアスの範囲内であり、100mg/dL〜600mg/dLのグルコースを有するサンプルの場合には±5%バイアスの範囲内であった(図2B)。
従来の乾燥剤の存在において50℃で二週間密封された試験センサの場合の試験ピーク時間(図1A)及び試験バイアス(図2A)の増大は、乾燥剤なしで(図1C)、又はより弱いシリカゲル乾燥剤(図1B、2B)とともに密封された同様に処理された試験センサの場合の結果に比較した場合、驚くべきものである。一般に、乾燥剤は、試験センサの使用の前に、メディエータをはじめとする試薬組成物の成分の変質を防ぐために使用されてきた。したがって、特に高い分析対象物の濃度を有するサンプルを分析する場合、従来の乾燥剤との試験センサの貯蔵が、乾燥剤なしで、又はより活動性が低い乾燥剤とともに貯蔵された同等の試験センサと比べて、試験センサの確度及び/又はその貯蔵寿命を損なうということは予想外であろう。
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサを使用して、一定範囲の濃度にわたる既知の濃度の分析対象物を有するサンプルの分析対象物の含量を測定したのち、実際の濃度に対する測定値のバイアスを計算することによって評価することができる。そのような測定において、複数の試験センサを、乾燥剤を含む容器中に、50℃の温度で二週間密封する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物を含む。次いで、各試験センサを容器から取り出し、少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続し、既知の分析対象物の含量を有するサンプルの一つと接触させ、それを使用してサンプル中の分析対象物の濃度を測定する。
この例において、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合、好ましくは、100mg/dL未満の測定された分析対象物の濃度の95%が±10mg/dLバイアスリミット内であり、少なくとも100mg/dLの測定された分析対象物の濃度の95%が±10%バイアスリミット内である。「50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度」とは、サンプルの少なくとも一つが50mg/dLの分析対象物の濃度を有し、他のサンプルの少なくとも一つが600mg/dLの分析対象物の濃度を有することをいう。残りのサンプルがあるならば、それらのサンプルは、50mg/dL〜600mg/dLの分析対象物の濃度を有することができる。より好ましくは、100mg/dL未満の測定された分析対象物の濃度の97%、99%又は100%が±10mg/dLバイアスリミット内であり、少なくとも100mg/dLの測定された分析対象物の濃度の97%、99%又は100%が±10%バイアスリミット内である。
上記例において、好ましくは、100mg/dL未満の測定された分析対象物の濃度の95%、97%、99%又は100%が±7mg/dLバイアスリミット内であり、少なくとも100mg/dLの測定された分析対象物の濃度の95%、97%、99%又は100%が±7%バイアスリミット内である。より好ましくは、100mg/dL未満の測定された分析対象物の濃度の95%、97%、99%又は100%が±5mg/dLバイアスリミット内であり、少なくとも100mg/dLの測定された分析対象物の濃度の95%、97%、99%又は100%が±5%バイアスリミット内である。好ましくは、この例において、容器の中に密封された試験センサの数は、少なくとも5であり、好ましくは少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも100である。好ましくは、この例において、サンプルは、10mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有する。
バイオセンサシステムの精度は、平均に対する多数の測定された分析対象物の濃度の間のバイアスの分布又はばらつきとして表すことができる。平均及び標準偏差は、試験センサを使用する多数の分析から計算することができ、標準偏差は、多数の分析の互いからの分布を表す。平均及び標準偏差から変動係数(%CV)を計算することができ、%CVは(標準偏差/平均)×100%と定義される。測定される分析対象物の濃度のより低い分布がより小さな標準偏差に反映され、それが他方でより小さな%CV値を生じさせる。したがって、%CVは、多数の分析の精度の指標とみなすことができ、%CVの低下はバイオセンサシステムの計測性能の向上を表す。
乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサを使用して、既知の分析対象物の濃度を有するサンプルの分析対象物の含量を測定したのち、測定値の%CVを計算することによって評価することができる。そのような測定において、複数の試験センサを、乾燥剤を含む容器中、50℃の温度で二週間密封する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置された試薬組成物を含む。次いで、各試験センサを容器から取り出し、少なくとも二つの導体を介して計測装置に接続し、既知の分析対象物の含量を有するサンプルの一つと接触させ、それを使用してサンプル中の分析対象物の濃度を測定する。そして、測定された分析対象物の濃度の%CVを計算する。この例において、測定される分析対象物の濃度の%CVは、好ましくは最大で2.5%である。より好ましくは、測定される分析対象物の濃度の%CVは最大で2%である。
表1は、42%のヘマトクリット含有率を有し、50、100、400又は600mg/dLのグルコース濃度を有する全血サンプルのグルコース試験の場合の%CVを一覧にしたものである。分析に使用された試験センサは、試験センサ50個ごとのグループとして、乾燥剤を有しない容器、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x7.5又は22.5mgを有する容器又は試験センサ1個あたりシリカゲル乾燥剤10又は30mgを有する容器の中に密封した。試験センサを使用してグルコース濃度を測定する前に容器を50℃で二週間貯蔵した。貯蔵期間後に、試験センサがそれらの容器から摘出され、それらの導体によって測定装置と接続され、全血サンプルの1つに接触し、サンプルのグルコース濃度を測定するために使用される。一覧にした各結果は、10個の試験センサを使用した測定に基づく。
表2は、試験センサを−20℃で二週間貯蔵した場合の、表1に記載されたようなグルコース試験の場合の%CVを一覧にしたものである。一覧にした各結果は、10個の試験センサを使用した測定に基づく。
乾燥剤なし(乾燥剤0mg/試験センサ)では、試験センサ熱ストレス(50℃で二週間)後の血中グルコース試験は、50mg/dL〜600mg/dLの範囲(表1中の結果の第1横列)にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合で1.3〜2.4%の%CV値を示した。試験センサを従来のモレキュラーシーブ乾燥剤(7.5又は22.5mg/試験センサ)又はシリカゲル10.0mg/試験センサとともに密封しても、血中グルコース試験の%CVの上限は下がらなかった(表1中の結果の第2〜4横列:各々、4.9%、2.9%、及び、3.3%)。しかし、試験センサをシリカゲル30mg/試験センサとともに密封すると、血中グルコース試験の%CVの上限は1.5%に低下した(表1中の結果の最終横列:%CVレンジの1.1〜1.5%)。
また、試験センサが−20℃で二週間密封された後にも、血中グルコース試験に関して同様な傾向が計測された。乾燥剤無し(0mgの乾燥剤/試験センサ)で、−20℃で2週間密閉された後の血液グルコース試験では、50mg/dl〜600mg/dl、の範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルのために1.0〜2.9%の%CV値を有した(表2の結果の第1の横列)。従来のモレキュラーシーブ乾燥剤(7.5又は22.5mg/試験センサ)、又は、10mg/試験センサ・シリカゲル、と共の試験センサの密閉は、血液グルコース試験のための%CVの上限(表2中の結果の第2〜第4横列:各々、3.4%、4.2%、及び、3.3%)を減少させなかった。30mg/試験センサ・シリカゲルと共の試験センサの密閉では、しかしながら、血液グルコース試験のための%CVの上限を2.1%(表2中の結果の最終横列;1.3%〜2.1%%CVレンジ)減少させた。両方(50℃で2週間と−20℃で2週間)の貯蔵条件のセットの場合、シリカゲル30mg/試験センサとともに密封された試験センサを使用して実施された血中グルコース試験は、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる分析対象物の濃度を有するサンプルの場合で2.1%未満の%CV値を示した。
従来のモレキュラーシーブ乾燥剤とともに貯蔵された試験センサの%CV値とシリカゲルとともに貯蔵された試験センサの%CV値との間のこれらの違いは統計的に有意であった。たとえば、50mg/dL〜600mg/dLの範囲にわたる濃度の場合、シリカゲル30mg/センサとともに50℃で二週間貯蔵された試験センサから測定されたグルコース濃度の%CV値(表1中の結果の最終横列)は、モレキュラーシーブ乾燥剤22.5mg/センサとともに50℃で二週間貯蔵された試験センサから測定されたグルコース濃度の%CV値(表1中の結果の第3横列)よりも有意に低く、信頼水準は少なくとも90%であった。50mg/dL〜100mg/dLの範囲にわたる濃度の場合、シリカゲル30mg/センサとともに50℃で二週間貯蔵された試験センサから測定されたグルコース濃度の%CV値(表1中の結果の最終横列)は、モレキュラーシーブ乾燥剤22.5mg/センサとともに50℃で二週間貯蔵された試験センサから測定されたグルコース濃度の%CV値(表1中の結果の第3横列)よりも有意に低く、信頼水準は少なくとも95%であった。
図3A及び3Bは、グルコースを含まない全血サンプルのグルコース試験の場合のバックグラウンド電流のグラフを表す。分析に使用された試験センサは、乾燥剤を有しない容器、試験センサ1個あたり従来の乾燥剤モレキュラーシーブ13x7.5又は22.5mgを有する容器(図3A)又は試験センサ1個あたりシリカゲル乾燥剤10又は30mgを有する容器(図3B)の中に密封され、−20℃、室温(25℃)又は50℃で二週間貯蔵されたものであった。貯蔵期間後に、試験センサがそれらの容器から摘出され、それらの導体によって測定装置と接続され、全血サンプルの1つに接触する。サンプルはグルコースを含有しなかったため、計測されたバックグラウンド電流は、還元された酸化状態にある物質、たとえば還元されたメディエータの存在によるものである。
容器中に、乾燥剤なし(図3A及び3Bの0mgの乾燥剤/センサ)で貯蔵された試験センサは、熱ストレス後、バックグラウンド電流が25℃の〜90ナノアンペア(nA)から50℃の〜175nAまで増加したように、バイオセンサバックグラウンド電流の大きな増大を示した。これは、乾燥剤が、おそらくはメディエータの自己還元を防ぐことにより、試験センサ中に低いバックグラウンド電流を維持するのに重要であるという従来の理論と合致している。50又は100mg/dlの低いグルコース濃度のサンプルの場合、センサバックグラウンド電流の増大が、図2A及び2Bに示される正の試験バイアスに寄与したのかもしれない。従来のモレキュラーシーブ乾燥剤の存在において貯蔵された試験センサ(図3A)は、低いバックグラウンド電流(7.5mg/センサ)を維持するのに、シリカゲルの存在において貯蔵された試験センサ(図3B、10mg/センサ)よりも少ない乾燥剤しか要しなかった。したがって、従来の乾燥剤は、メディエータの早期還元を阻止するというその所期の機能を達成すると思われた。
図3Aの実施例において、従来の乾燥剤と共に50℃で2週間貯蔵された試験センサは、従来の乾燥剤と共に−20℃で2週間貯蔵された同一の試験センサで測定されたバックグラウンド電流の約±30%(7.5mg/センサ)以内、又は、約±20%(22mg/センサ)以内のバックグラウンド電流を有する(〜30%=[(90nA−70nA)/70nA]×100%;〜30%=[(90nA−75nA)/75nA]×100%)。図3Bの実施例において、30mg/センサ・シリカゲル乾燥剤と共に50℃で2週間貯蔵された試験センサは、従来の乾燥剤と共に−20℃で2週間貯蔵された同一の試験センサで測定されたバックグラウンド電流の約±10%以内のバックグラウンド電流を有する(〜10%=[(85nA−80nA)/80nA]×100%)。
従って、容器に封入された複数の試験センサを含むバイオセンサ・システムのために、貯蔵中のメディエーターの早期低減は、分析対象物を含んでいないサンプルと共の試験センサを使用した電気化学的分析中のバックグラウンド電流を測定することによって試験されるだろう。そのような試験において、複数の試験センサは、50℃の温度で2週間容器に貯蔵され、各試験センサが、少なくとも2つであり、それらの1つが作用電極である導体を含み、メディエータを含んでいる試薬組成物が、作用電極の上又は近くに配置される。各試験センサは、その後容器から摘出され、少なくとも2つの導体によって測定装置と接続され、分析対象物を含まいサンプルと接触し、その後、バックグラウンド電流を想定するために使用される。好ましくは、測定されたバックグラウンド電流は、代わりに−20℃で2週間貯蔵された同一の試験センサで測定されたバックグラウンド電流の±20%以内である。好ましくは、測定されたバックグラウンド電流は、代わりに−20℃で2週間貯蔵された同一の試験センサで測定されたバックグラウンド電流の±10%以内又は±5%以内である。
図1〜5で使用された試験センサの試薬組成物中のメディエータは、2電子移動メディエータ3−(2′,5′−ジスルホフェニルイミノ)−3H−フェノチアジンビスナトリウム塩であった。試験センサの貯蔵中の水分の認められる効果は、他の2電子移動メディエータ、たとえば他の有機キノン類及びハイドロキノン類にも当てはまると考えられる。そのようなメディエータの例は、フェナントロリンキノン、フェノチアジン及びフェノキサジン誘導体、たとえば3−フェニルイミノ−3H−フェノチアジン類(PIPT)及び3−フェニルイミノ−3H−フェノキサジン類(PIPO)、3−(フェニルアミノ)−3H−フェノキサジン類、フェノチアジン類ならびに7−ヒドロキシ−9,9−ジメチル−9H−アクリジン−2−オン及びその誘導体を含む。試験センサの貯蔵中の水分の認められる効果はまた、1電子移動メディエータ、たとえば1,1′−ジメチルフェロセン、フェロシアン化物及びフェリシアン化物、ルテニウム(III)及びルテニウム(II)ヘキサアミンにも当てはまると思われる。
ピーク時間、バイアス及び/又は精度に関する驚くべき結果に考えられる一つの説明は、より活動性が低い乾燥剤が試験センサ試薬組成物中の酵素の予想外に良好な保護を提供することができるということである。シリカゲルのような、より活動性が低い乾燥剤は、従来の乾燥剤よりもFAD−GDH酵素との適合性が高いと思われたが、それでも、メディエータのための十分な保護を提供した。特に高グルコース量サンプルの場合、これまで、バイオセンサ計測性能に対する酵素の活性の損失の影響が過小評価されていたのかもしれない。
図4は、様々なタイプ及びレベルの乾燥剤を有する容器中、−20℃(菱形記号)、50℃(三角形記号)又は室温(四角形記号)で二週間密封された試験センサに関するセンサ内FAD−GDH酵素の活性のグラフを示す。黒塗りの記号は従来のモレキュラーシーブ乾燥剤に対応し、白抜きの記号はシリカゲル乾燥剤に対応する。いずれの乾燥剤も−20℃では酵素の活性の有意な損失が認められないように示されている。乾燥剤なし(乾燥剤0mg/センサ)の容器の中に密封されたセンサの場合、50℃で二週間の貯蔵ののち、センサ酵素の活性の約13%の損失が生じた(0mgの乾燥剤/センサ;13.4%=100%×[(0.819U/センサ−0.709U/センサ)/0.819U/センサ]。従来のモレキュラーシーブ乾燥剤とともに容器の中に密封されたセンサの場合(黒塗りの三角形記号)、センサ1個あたり乾燥剤7.5mgの相対的に低いレベルでさえ、酵素の活性は約40%に低下した(38.7%=100%×[(0.819U/センサ−0.502U/センサ)/0.819U/センサ];22.5mg/センサ用、40.3%=100%×[(0.819U/センサ−0.489U/センサ)/0.819U/センサ])。対照的に、10mgのシリカゲル乾燥剤とともに容器の中に50℃で2週間密封されたセンサの保持された酵素の活性は、7.5mgの従来の乾燥剤と密閉されたセンサよりも、約28%高かった((28.3%=100%×[(0.644U/センサ−0.502U/センサ)/0.502U/センサ] )。50℃で2週間の貯蔵後、シリカゲル乾燥剤によって密封されたセンサでは、約73〜79%の酵素の活性を維持していた(白抜きの三角形記号;73.4%の維持は26.6%の減少に対応し、26.6%=100%×{(0.819U/センサ=0.601U/センサ)/0.819Uセンサ];78.6%の維持は21.4%の減少に対応し、21.4%=100%×[(0.8U/センサ−0.644U/センサ)/0.8U/センサ]))。室温貯蔵の場合でさえ、従来のモレキュラーシーブ乾燥剤とともに容器の中に密封された試験センサ(黒塗りの四角形記号)は、シリカゲル乾燥剤とともに容器の中に密封された試験センサ(白抜きの四角形記号;すなわち、4.5%=100%×[(0.763U/サンサ−0.729U/センサ)/0.763U/センサ];5.2%=100%×[(0.753U/センサ−0.714U/センサ)/0.753U/センサ])よりも約5%低い保持された酵素の活性を示した。
図4の結果は、図1〜3の結果と組み合わさると、FAD−GDH酵素がその本来の構造及び活性を維持するために最小レベルの水分を必要とするという分析と合致している。
従来のモレキュラーシーブと共に容器に封入され、その後、600mg/dLのグルコース濃度を測定するために使用されるセンサの実施例において、モレキュラーシーブ乾燥剤の増加とともに起こる負のバイアスの増大(図2A)は、従来のモレキュラーシーブ乾燥剤とともに容器の中に密封された試験センサの場合のFAD−GDH酵素の活性のほぼ40%の損失(図4)と相関した。
対照的に、シリカゲル乾燥剤と共に容器に密封され、その後、600mg/dLのグルコース濃度を測定するために使用されるセンサにおいて、シリカゲル乾燥剤の増加とともに起こる相対的に一定かつゼロに近いバイアス(図2B)は、シリカゲル乾燥剤とともに容器の中に密封された試験センサの場合のFAD−GDH酵素の活性のわずか21〜27%の損失(図4)と相関した。
表3は、様々なタイプの乾燥剤を有する容器の中に50℃で二週間密封された試験センサに関する、試薬組成物が酵素安定剤ソルビトールを有する場合及び有しない場合でのセンサ内FAD−GDH酵素の活性(「%酵素回復率」)を一覧にしたものである。これらの試験センサは、各々酵素安定剤としてのソルビトールを含む1つの試薬組成物又は酵素安定剤の試薬組成物を含んでいる。使用された乾燥剤は、シリカゲル、モレキュラーシーブ13x(MS−13x)及びモレキュラーシーブ4Aを含有するボトルスリーブであった。「モレキュラーシーブ4A」乾燥剤は、約4オングストロームの効果的な孔開口を含む「タイプA」結晶構造を有するナトリウム・アルミノ・ケイ酸塩を含んでいる。コントロール(対照)試験センサのための試薬組成物は、水、80ミリモル(mM)3−(2′,5′−ジスルホニルイミノ)−3H−フェノチアジンビスナトリウム塩メディエータ、1マイクロリットルあたり3.75酵素単位FAD−GDH、0.2%(w/w)重量平均分子量(Mw)300,000のヒドロキシエチレンセルロース(HEC)バインダ、0.362%(w/w)Mw90,000のHECバインダ、112.5mM Na2HPO4バッファ塩、0.225%(w/w)N−オクタノイル−N−メチル−D−グルカミン(MEGA-8)及び0.01%(w/w)タウリン酸ナトリウムメチルココイル(Geropon TC-42)を含む試薬液を塗布し、乾燥させることによって形成した。「ソルビトール」と標識された試験センサのための試薬組成物は、試薬液が0.4%(w/w)ソルビトールをも含むことを除き、コントロール(対照)センサの場合と同様にして形成した。
この例において、純粋なモレキュラーシーブ乾燥剤又はボトル乾燥剤スリーブとともに容器の中に密封された試験センサは酵素の活性の各々26.6%と26%の低下を示したが、シリカゲル乾燥剤とともに容器の中に密封された試験センサは酵素の活性の16.2%の低下しか示さなかった。従って、モレキュラーシーブ又はボトル・スリーブ乾燥剤をシリカゲル乾燥剤と交換することは、38〜39%の酵素安定性の改良を提供する(39%=100%[(6%26.−16。2%)/26。6%];、38%=100%[(26%−16。2%)/26%])。0.4%ソルビトールによる試薬組成物中の酵素の安定化が各乾燥剤の各々の酵素の活性の損失を減らした。しかし、ここでもまた、モレキュラーシーブ乾燥剤又はボトル乾燥剤スリーブとともに密封され、ソルビトールにより安定化された試験センサは、シリカゲル乾燥剤によって認められる酵素不活性化の約2倍の量の酵素不活性化が認められた(従来のモレキュラーシーブについて17.9%の不活化、及び、ボトル乾燥剤スリーブについての21%の不活化であり、それに対してシリカゲルについて10.6%の不活化である)。
表4は、様々なタイプの乾燥剤を有する容器の中に50℃で二週間密封された試験センサに関するセンサ内FAD−GDH酵素の活性(「%酵素回復率」)を一覧にしたものである。使用された乾燥剤は、シリカゲル、モレキュラーシーブ13xならびに二つの異なるポリマー配合乾燥剤、すなわちモレキュラーシーブでコートされたポリプロピレンフィルム及びシリカゲルでコートされたポリプロピレンフィルムであった。ポリマー配合乾燥剤はMultisorb Technologies(Buffalo, NY)から得たものであった。試験センサのための試薬組成物は、上記表3のコントロール(対照)試験センサの試薬組成物にしたがって調製された試薬液の塗布及び乾燥によって形成した。
この例において、モレキュラーシーブ乾燥剤とポリプロピレンとのブレンドは、シリカゲル乾燥剤によって提供されるもの(86.4%)に同等の83%の酵素の活性の保持力を提供した。したがって、モレキュラーシーブの乾燥能力の阻害が、酵素が熱ストレス中にその活性を保持することを可能にした。
そのため、乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサを含むバイオセンサシステムの場合、システムは、試験センサが様々な条件で貯蔵されたのち、試験センサの試薬組成物中のレドックス酵素の活性の保持力を計測することによって評価することができる。そのような測定において、複数の試験センサを、乾燥剤を含む容器中、50℃の温度で二週間密封する。各試験センサは、少なくとも二つであって、そのうち一つが作用電極である導体、及び作用電極の上又は近くに配置された、活性を有するレドックス酵素を含む試薬組成物を含む。次いで、試験センサを容器から取り出し、各試験センサの試薬組成物中のレドックス酵素の活性を計測する。この例において、各試験センサの試薬組成物は、好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも75%を保持する。より好ましくは、この例において、各試験センサの試薬組成物は、好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも80%を保持し、より好ましくは、レドックス酵素の活性の少なくとも85%を保持する。好ましくは、この例において、複数の試験センサの数は、少なくとも5であり、好ましくは少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも100である。
一つ以上の出力電流値、たとえば図1A〜1Cに示す出力電流値とサンプルの分析対象物の濃度との相関は、計測における誤差を考慮するように調節することもできる。バイオセンサ分析に関連する誤差を補正するための一つの手法は、出力電流値の中間電流値から抽出される指数関数を使用して、出力電流値からサンプル中の分析対象物の濃度を決定するための相関を調節することである。指数関数は、出力電流値から分析対象物の濃度を決定するための相関を、測定される分析対象物の濃度のバイアスを生じさせるおそれのある分析における一つ以上の誤差に関して補正することができる。指数関数は、分析における一つ以上の誤差による、分析対象物の濃度と出力電流値との間の相関におけるバイアスに対応する。
分析対象物の濃度測定におけるバイアスは、一つ以上の誤差パラメータから得られる一つ以上のΔS値によって表すことができる。ΔS値は、一つ以上の誤差パラメータから決定される、分析対象物の濃度と出力電流値との間の相関の傾斜偏差を表す。相関の傾斜は、サンプルの分析対象物の濃度の所与の変化に関する出力電流の変化に対応する。傾斜又は傾斜の変化に対応する指数関数を正規化して、出力電流値の変化の統計的効果を減らす、出力電流値の変動の微分を改善する、出力電流値の計測を標準化する、それらを組み合わせて実施するなどができる。調節された相関は、生物学的サンプル中の分析対象物の濃度を出力電流値から測定するために使用することができ、従来のバイオセンサに比較して改善された確度及び/又は精度を有することができる。指数関数及びΔS値を使用する誤差補正は、たとえば、「Wu」への「Slope−Based Compensation」と題する米国特許出願公開公報2009/0177406及び2009年12月8日出願の「Complex Index Functions」と題してWO2010/077660として公開された国際特許出願PCT/US2009/067150号に記載されている。指数関数及びΔS値を使用する誤差補正に関するこれらの特許出願の開示は参照することによって本明細書に組み込まれる。
たとえば、ΔS/Sを表す指数関数を使用して、サンプルグルコース濃度に対応する出力電流値をサンプルの補正グルコース濃度に変換することができる。あるいはまた、指数関数及び等式、たとえばGcorr=Graw/(1+f(Index))(式中、Gcorrは、サンプルの補正グルコース濃度であり、Grawは、補正なしのサンプルの測定された分析対象物の濃度であり、f(Index)は指数関数である)を使用して、非補正グルコース濃度値から補正グルコース濃度値を決定することもできる。
指数関数は、出力信号、たとえば図1A〜1Dに示す出力信号から抽出される比を含むことができる。たとえば、比R3=i3,3/i3,1(式中、i3,3は、第三の信号減衰に関して記録された第三の電流値を示し、i3,1は、第三の信号減衰に関して記録された第一の電流値を示す)のように、個々のパルス信号減衰サイクル内で出力信号値を比較することができる。もう一つの例において、比R4/3=i4,3/i3,3(式中、i4,3は、第四の信号減衰に関して記録された第三の電流値を示す)のように、別々のパルス信号減衰サイクルの間で出力信号値を比較することもできる。
指数関数は、たとえば図1A〜1Dに示す出力信号のような出力信号から抽出された比の組み合わせを含むこともできる。そのような測定において、指数関数は、簡単な比の比、たとえばRatio3/2=R3/R2、RatioR4/3−R4/R3、等を含むこともできる。もう一つの例において、指数関数は、指数関数の組み合わせを含むこともできる。たとえば、組み合わせ指数関数、Index-1を、Index-1=R4/3−Ratio3/2として表すこともできる。もう一つの例において、指数関数Index-2を、Index-2=(R4/3)p−(Ratio3/2)q(式中、p及びqは、独立して、正の数である)で表すこともできる。
指数関数は、その関数が、重み付け係数で修正された用語の組合せを含む場合には複雑になる。前記組合せは、好ましくは、線形結合である、しかし、その用語に重み付け係数を提供する他の組合せ方法を使用してもよい。各用語は、一つ以上のエラー・パラメータを含んでもよい。複雑な指数関数の実施例としては、以下のように示される:
f(CIndex)= a1 +(a2)(R3/2)+(a3)(R4/3)+(a4)(R5/4)+(a5)(R3/2)(Graw)+(a6)(R4/3)(Graw)+(a7)(R3/2)(Temp)+(a8)(R4/3)(Temp)+(a9)(Temp)+(a10)(Graw)+…(式1)、
そこにおいて、a1は定数であり、a2−a10は各々重み付け係数であり、Grawは補償されないサンプルの決定された分析対象物濃度であり、Tempは温度である。各重み付け係数(a2−a10)は、その関連する用語に従う。
式1で示された複雑な指数関数では、用語に少なくとも3つの基本タイプがある:(1)例えば、R3/2及びR4/3のような出力信号から抽出された独自の比率指数、(2)出力信号と例えば、(R3/2)(Graw)、(R3/2)(Temp)のような温度、又は、Grawから抽出された比率指数の間のインタラクション用語、及び、(3)温度、及び、Graw。前記用語は、Grawを含んで、エラー・パラメータ以外の値を含む。前述したように、指数関数の組合せを含んで、しかし、それに限定されないで、他の用語も、使用することができる。複雑な指数関数は、複雑な指数の値を、用語が適当な値によって置換された時に提供することで解かれるだろう。統計処理は、一つ以上の定数及び重み付け係数を決定するために、複数の用語に実行されるだろう。統計パッケージ・ソフトは、MINITAB (MINTAB, INC. , State College, PA)を含んで、統計処理を実行するために使用されるだろう。
定数a1は、回帰又は他の数学的テクニックによって決定されるだろう。式1に一つの定数が示されるとき、定数には、1つ以上が使用されることと、0と等しくなることは要求されない。従って、複雑な指数関数には、一つ以上の定数が含まれてもよいし、又は、含まれなくてもよい。
複雑な指数関数は、少なくとも2つの、指数関数への用語の寄与を個別に重み付けする能力を提供する重み付け係数により修正される用語を含む。重み付け係数は、1又は0以外の数値である。好ましくは、エラー・パラメータを含んでいる各用語は、重み付け係数により修正される。より好ましくは、複雑な指数関数の各非定数の用語は、重み付け係数により修正される。重み付け係数は、正の値又は負の値を有してもよい。重み付け係数は、複数の分析対象物濃度の組合せから収集された実験データ、異なるヘマトクリット・レベル、異なる温度、及び、その他の統計処理によって決定されてもよい。
好ましくは、グルコース試験における指数関数は、ヘマトクリット含有率の変動に関連する誤差を補正する。たとえば、従来のバイオセンサシステムは、サンプルの実際のヘマトクリット含有率にかかわらず、全血サンプルの場合で40%(v/v)ヘマトクリット含有率を仮定してグルコース濃度を報告するように構成されていることがある。これらのシステムにおいて、40%未満又は40%超のヘマトクリットを含有する血液サンプルに対して実施されるグルコース計測は誤差を含み、したがって、ヘマトクリット効果に起因するバイアスを有する。
ヘマトクリット含有率の変動に伴う誤差を補正する指数関数の計算は、ヘマトクリット含有率とともに変化する出力信号を生成する試験センサを使用することによって容易にすることができる。一部のバイオセンサの場合、R5/4比パラメータが、サンプル中のヘマトクリットの指標として働き、計測された分析対象物の濃度を、サンプル中のヘマトクリット含有率を考慮して調節するために使用されている。R5/4比パラメータは、図1A〜1Dのゲート制御電流測定パルスシーケンスの4番目及び5番目のパルスに反応して分析対象物によって生成された電流の間の関係を表す。
図5は、試験センサが、試験センサの作用電極上で異なるレベルの酵素密度を有する場合の、50℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータの、−20℃で二週間貯蔵された試験センサに関するR5/4比パラメータに対する変動のグラフを示す。二つのタイプのデータ点は二つの異なるアニオン界面活性剤Phospholan CS131(ノニルフェノールエトキシレートホスフェート)及びGeropon TC-42を表す。
高めの酵素濃度において、50℃で貯蔵した試験センサと−20℃で貯蔵した試験センサとでR5/4比パラメータの間の差は小さめであった。この傾向は、試薬組成物に使用された両タイプのアニオン界面活性剤に関して明白であった。R5/4比パラメータは、分析対象物の計測値を補正するための指数関数における変数として使用することができるため、環境要因によるパラメータのより低い変動が望ましい。したがって、より活動性が低い乾燥剤によって提供される酵素の活性の保持力の増大は、補正率の可変性を減らすというさらなる恩典を提供することができる。
図1〜5で使用された試験センサの試薬組成物中の酵素はFAD−GDH酵素であった。試験センサの貯蔵中の残留水分の認められる効果は、たとえばアルコールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、β−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ(GOx)、グルコースデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ及び3−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを含むシステムのような他の実質的に水溶性酵素系にも当てはまると考えられる。
好ましい酵素系は酸素非依存性であり、したがって、実質的に酸素によって酸化されない。一つのそのような酸素非依存性酵素ファミリーがグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である。様々な補酵素又は補因子を使用すると、GDHは、様々なメディエータによって異なるやり方で媒介されることができる。GDHとの関連に依存して、FAD−GDHの場合のように、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)のような補因子をホスト酵素によって堅く保持することもできるし、PQQ−GDHの場合のように、ピロロキノリンキノン(PQQ)のような補因子をホスト酵素に共有結合させることもできる。これらの酵素系それぞれにおける補因子がホスト酵素によって永久に保持されることもできるし、酵素系が試薬液に加えられる前に補酵素及びアポ酵素が再構成されることもできる。補酵素はまた、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD/NADH+の場合又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADP/NADPH+をNAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(NAD−GDH)と組み合わせた場合のように、ホスト酵素の触媒機能を支援するために、独立して試薬液中のホスト酵素部分に加えることもできる。
試験センサのための試薬組成物又は試薬組成物を形成するための試薬液の成分は、たとえば、「Zhu」への「Porous Particle Reagent Compositions, Devices, and Methods for Biosensors」と題する米国特許出願公開公報2009/0178936及び2009年12月7日出願の「Low Total Salt Reagent Compositions And Systems For Biosensors」と題してWO2010/0077598として公開された国際特許出願PCT/US2009/066963に記載されている。試薬組成物を形成するための試薬組成物成分及び液に関するこれらの特許出願の開示は参照されることによって本明細書に組み込まれる。
試験センサ中の酵素の活性及び試験センサの試験性能の両方が、センサの容器の中で使用される乾燥剤のタイプによって影響されると思われる。水分重量の最大で15%を吸湿する、又は好ましくは水分重量の最大で10%又は5%〜10%を吸湿する乾燥剤は、40℃で10%〜20%RHの環境と接すると、酵素をその活性状態に保持することを可能にする残留水分レベルを試薬組成物中に提供することができる。対照的に、モレキュラーシーブのような活動性の乾燥剤による試薬組成物の過度の乾燥は酵素不活性化を招くおそれがある。より活動性が低い乾燥剤は、パッケージ中の湿度レベルが20%RHを超えたときのみ雰囲気から水を吸湿することにより、試験センサの容器中のメディエータと酵素とで正反対の水分要件を均衡させることができる。したがって、より活動性が低い乾燥剤は、酵素安定剤(例えば糖、又は、砂糖アルコール)さえない場合でも、酵素の活性に悪影響を及ぼすことなく、メディエータを高い水分から保護することができる。
試験センサの計測性能は、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき水分重量の最大で15%を吸湿する乾燥剤を含む容器の中に試験センサを密封することによって向上させることができる。たとえば、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき水分重量の最大で15%を吸湿する乾燥剤を含む容器の中に密封された試験センサは、乾燥剤を有しない容器の中に密封された試験センサと比べて又はモレキュラーシーブのような従来の乾燥剤を有する容器の中に密封された試験センサに比べ、増大した計測確度を有することができる。
もう一つの例において、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき水分重量の最大で15%を吸湿する乾燥剤を含む容器の中に密封された試験センサは、乾燥剤を有しない容器又はモレキュラーシーブのような従来の乾燥剤を有する容器の中に密封された試験センサに比べ、試験センサの試薬組成物中のレドックス酵素の活性のより高い割合を保持することができる。
もう一つの例において、40℃で10%〜20%RHの環境と接したとき水分重量の最大で15%を吸湿する乾燥剤を含む容器の中に密封された複数の試験センサは、乾燥剤を有しない容器又はモレキュラーシーブのような従来の乾燥剤を有する容器の中に密封された複数の試験センサに比べ、増大した計測精度を有することができる。
図6は、試験センサを使用してサンプル中の分析対象物の濃度を測定するバイオセンサ600の略図を示す。バイオセンサ600は、生物学的流体、たとえば全血、尿、唾液などの中の一つ以上の分析対象物、たとえばアルコール、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビン、遊離脂肪酸、トリグリセリド、タンパク、ケトン体、フェニルアラニン、酵素などの濃度を測定するために使用することができる。特定の構成が示されているが、バイオセンサ600は、さらなる構成部品を有するものを含め、他の構成を有することもできる。
バイオセンサシステム600は、計測装置602及び試験センサ604を含む。計測装置602は、ベンチトップ装置、ポータブル又は手持ち装置などとして実現することができる。手持ち装置とは、手の中に保持することができ、ポータブルである装置である。手持ち装置の一例は、Bayer Healthcare, LCC(Elkhart, IN)から市販されているAscensia(登録商標)Elite Blood Glucose Monitoring Systemの計測装置である。試験センサ604が貯蔵される容器の中に残留水分レベルを保持する乾燥剤が、サンプル中の分析対象物の濃度を測定する際のバイオセンサ600の確度及び/又は精度を改善する。
試験センサ604は、開口612付きの貯留部608を形成するベース606を有する。省略可能な流路610が貯留部608と開口612との間の流体連絡を提供することができる。貯留部608及び流路610は、通気口(図示せず)付きのふたによって覆われることもできる。貯留部608は、部分的に閉じ込められた容積を画定する。貯留部608は、液体サンプルの保持を支援する組成物、たとえば水膨潤性ポリマー又は多孔性ポリマーマトリックスを含むことができる。試薬を貯留部608及び/又は流路610の中に置くことができる。試薬は、一つ以上の酵素、メディエータ、バインダ及び他の活性又は非反応性種を含む。作用電極607における試薬組成物は低総塩量の試薬組成物を含むことができる。対電極605は、同じ又は異なる試薬組成物、好ましくは酵素系を欠く試薬組成物を使用して形成することができる。試験センサ604はまた、貯留部608の部分的に閉じ込められた容積と電気的に連絡するサンプルインタフェース614を有することができる。試験センサ604は他の構成を有することもできる。
試験センサ604は計測装置602に隣接して配置される。隣接とは、サンプルインタフェース614がセンサインタフェース618と電気的に通信する位置を含む。電気的通信とは、センサインタフェース618中の接点とサンプルインタフェース614中の導体609との間の入力及び/又は出力信号の有線又は無線の送信を含む。
サンプルインタフェース614は、作用電極607及び対電極605に接続された導体609を有する。電極は、実質的に同じ面にあってもよいし、二つ以上の面にあってもよい。電極605、607は、ベース606の、貯留部608を形成する面に配置されることができる。電極605、607は、貯留部608の中に延びる、又は突出することもできる。誘電層が導体609及び/又は電極605、607を部分的に覆うこともできる。メディエータを作用電極及び対電極の上又は近くに配置することができる。サンプルインタフェース614は他の電極及び導体を有することもできる。
計測装置602は、センサインタフェース618及びディスプレイ620に接続された電気回路616を含む。電気回路616は、信号生成器624、省略可能な温度センサ626及び記憶媒体628に接続されたプロセッサ622を含む。計測装置602は他の構成部品及び構成を有することもできる。
信号生成器624は、プロセッサ622に応答して電気励起信号をセンサインタフェース618に提供する。電気励起信号は、センサインタフェース618により、電気励起信号をサンプルに印加するためのサンプルインタフェース614に送信されることができる。電気励起信号は、電位又は電流であることができ、一定の信号、可変性信号又は、AC信号がDC信号オフセットとともに印加される場合のように、それらの組み合わせであることができる。電気励起信号は、一つのパルスとして印加することもできるし、多数のパルス、シーケンス又はサイクルで印加することもできる。信号生成器624はまた、生成器・記録器として、センサインタフェース618から受信される信号を記録することができる。
省略可能な温度センサ626は、サンプルの分析中に使用するための温度を測定する。サンプルの温度は、直接計測することもできるし、出力信号から計算することもできるし、周囲温度又はバイオセンサ600を実現する計測装置602の温度の計測値と同じ又は同程度と推定することもできる。温度は、サーミスタ、温度計、赤外センサ、サーモパイル又は他の温度感知装置を使用して計測することができる。他の技術を使用してサンプル温度を測定することもできる。
記憶媒体628は、磁気、光学又は半導体メモリ、別の記憶装置などであることができる。記憶媒体628は、固定メモリ装置、リムーバブルメモリ装置、たとえばメモリカード、遠隔アクセス媒体などであることができる。
プロセッサ622が、記憶媒体628中に記憶されたプロセッサ読み取り可能なソフトウェアコード及びデータを使用して分析対象物の分析及びデータ処理を実施する。プロセッサ622は、センサインタフェース618における試験センサ604の存在、試験センサ604へのサンプルの塗布、ユーザ入力などに応答して分析対象物の分析を開始することができる。プロセッサ622は、信号生成器624に対し、電気入力信号をセンサインタフェース618に提供するよう命令する。
プロセッサ622は、センサインタフェース618からの出力信号を受け、計測する。出力信号は、電気信号、たとえば電流又は電位であることができる。出力信号は、ポーリング出力信号、たとえば充填不足管理システムにおいて使用される信号を含むことができる。出力信号は、サンプルの分析対象物の濃度を測定するために使用される、サンプル中の計測可能な種のレドックス反応に対応して生成される分析出力信号を含む。プロセッサ622は、ポーリング及び/又は分析出力信号を一つ以上のしきい値に比較することができる。
プロセッサ622は、好ましくは、出力信号を計測して励起による電流値を得る。初期電流値は、その後の減衰中及びサンプルを試験センサ604に導入してから約3秒未満内の電流値よりも大きい。より好ましくは、プロセッサ622は、出力信号を計測して、604においてサンプルを試験センサに導入してから約3秒未満内の電流値を得、第一の電流値に続く電流値が低下し続ける励起から記録される第一の電流値を得る。さらに好ましくは、プロセッサ622は、出力信号を計測して、604においてサンプルを試験センサに導入してから約3秒未満内の電流値を得、第一の電流値に続く電流値が低下し続ける励起から記録される第一の電流値を得、試験センサの最大運動性能中の電流値を得る。
プロセッサ622は、一つ以上の相関式を使用して、出力信号から分析対象物の濃度を測定する。分析対象物の分析の結果は、ディスプレイ620に出力することもできるし、記憶媒体628に記憶することもできる。好ましくは、分析対象物の分析の結果は、サンプルを試験センサに導入してから5秒以内にディスプレイ620に出力され、より好ましくは、サンプルを試験センサに導入してから3秒以内にディスプレイ620に出力される。
分析対象物の濃度及び出力電流値に関する相関式は、図式的に、数学的に、それらの組み合わせなどによって表すことができる。相関式は、記憶媒体628に記憶されているプログラム番号(PNA)テーブル、別のルックアップテーブルなどによって表すことができる。分析対象物の分析の実施に関する命令は、記憶媒体628に記憶されたコンピュータ読み取り可能なソフトウェアコードによって提供されることができる。コードは、本明細書に記載される機能性を記述又は制御するオブジェクトコード又は他のコードであることができる。分析対象物の分析からのデータは、プロセッサ622中での減衰率、K定数、比などの決定を含む一つ以上のデータ処理に付すことができる。
センサインタフェース618は、試験センサ604のサンプルインタフェース614中の導体609と接続又は電気的に連絡する接点を有する。電気的に連絡とは、ワイヤを介するもの、ワイヤレスのものなどを含む。センサインタフェース618は、接点を介して信号生成器624からの電気励起信号をサンプルインタフェース614中の導体609に伝達する。センサインタフェース618はまた、サンプルインタフェース614からの出力信号をプロセッサ622及び/又は信号生成器624に伝達する。
ディスプレイ620はアナログ又はデジタルであることができる。ディスプレイは、LCD、LED、OLED、TFT、真空蛍光又は数値表示値を表示するように適合された他のディスプレイであることができる。他のディスプレイを使用することもできる。ディスプレイ620はプロセッサ622と電気的に連絡する。ディスプレイ620は、プロセッサ622とでワイヤレス通信する場合など、計測装置602から切り離されていてもよい。あるいはまた、ディスプレイ620は、計測装置602が遠隔コンピューティング装置、薬剤計量供給ポンプなどと電気的に連絡する場合など、計測装置602から取り外されることもできる。
使用中、バイオセンサシステム600は、サンプルの分析の前に一つ以上の診断ルーチン又は他の準備機能をアクティブ化し、実行する。試験センサ604のサンプルインタフェース614は、計測装置602のセンサインタフェース618と電気的及び/又は光学的に連絡している。電気的に連絡とは、センサインタフェース618中の接点とサンプルインタフェース614中の導体との間での入力及び/又は出力信号の移動を含む。試験センサ604は、サンプル、好ましくは生物学的流体の液体形態を受ける。サンプルは、開口612に導入されることにより、貯留部608によって形成される容積の中に移動される。サンプルは、省略可能な流路610中を流れて貯留部608に入り、事前に含まれていた空気を押し出しながら容積を満たす。サンプルは、流路610及び/又は貯留部608の中に置かれた試薬と化学反応する。好ましくは、サンプルは流体であり、より好ましくは液体である。
プロセッサ622は、好ましくは、分析のためにサンプルが存在する、又は存在しないときを認識する。サンプルインタフェース614がサンプル出力信号をセンサインタフェース618に提供する。プロセッサ622はセンサインタフェース618からサンプル出力信号を受ける。プロセッサ622は、サンプル出力信号をディスプレイ620上に示すこともできるし、サンプル出力信号を記憶媒体628中に記憶することもできる。プロセッサ622は、サンプルポーリング出力信号が一つ以上のサンプルしきい値に到達したとき、又は二つ以上の電極の間で電気伝導が生じたとき、サンプルが存在することを検出することができる。プロセッサ622は、サンプルポーリング出力信号が一つ以上のサンプルしきい値に到達しないとき、又は二つ以上の電極の間で電気伝導が生じないとき、サンプルが存在しないことを検出することができる。
図7は、乾燥剤及び複数の試験センサ730を含む容器710を含むバイオセンサシステム700を示す。容器710は、試験センサ730を容器710の中に密封することができる栓712を含む。システム700は、容器710の中に密封された少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50又は少なくとも100の試験センサ730を含むことができる。容器710は、容器中の別個のパッケージ中の乾燥剤720、たとえば乾燥剤を含むパケット又はディスクを含むことができる。容器710は、栓712の中に乾燥剤722を含むこともできる。容器710は、容器の壁の中の乾燥剤724、たとえば乾燥剤を含む成形スリーブを含むこともできる。容器710は、容器の底に乾燥剤726を含むこともできる。容器710は、プラスチック、金属箔及び/又はガラスを含む多様な材料でできていることができる。容器710中の乾燥剤の量及びタイプは、所定の水分レベルを容器中に提供するように選択することができる。
図8A及び8Bは、試験センサ800を表す。図8Aは、少なくとも部分的に蓋820によってカバーされセンサ・ベース810、及び、ベント830、サンプルカバレージエリア840、及び、入口側端部開口850を含んで組立てられた試験センサ800の斜視図である。部分的に囲まれたリザーバ860は、ベース810、及び、蓋820の間に形成される。他の試験センサ・デザインも、使用することができる。
分析のための液体サンプルは、開口850に液体を投入することによってリザーバ860へ移動されるだろう。液体は、ベント830を通って前に含まれた空気を排出すると共にリザーバ860を満たす。リザーバ860は、リザーバの中の液体サンプルを保持することをアシストする保持構成(図示せず)を含むだろう。保持組成物の実施例には、例えば、カルボキシメチルセルロース及び、ポリエチレングリコールのような水膨潤性ポリマー;、及び、例えば、デキストラン、及び、ポリアクリルアミドのような多孔性高分子基材を含む。
図8Bは、蓋820を取り去った状態の試験センサ800の上面図を示す。導体870及び880は、誘電層890の下で、測定装置インターフェース855から作用電極875まで及び反対の電極885までのそれぞれに通されるだろう。作用電極875、及び、反対の電極885は、図示するように、実質的に同じ平面にあっても良く、又は、異なる平面(図示せず)にあっても良い。作用電極875、及び、反対の電極885は、蓋820の上部から少なくとも100のμmだけ分離されていてもよい。誘電層890は、電極875、885を部分的にカバーしてもよく、例えば断熱ポリマーのようないかなる適切な誘電材料からも作成されても良い。
反対の電極885は、試験センサ800の作用電極875における電気化学的動作をサポートすることができる。作用電極875における電気化学的動作をサポートするためのポテンシャルは、例えばカーボンのような不活性材料から反対の電極885を形成すること、及び、リザーバ860の中に例えばフェリシアン化物メディエータのような可溶なレドックス化学種を含むことによって、センサシステムに提供されるだろう。反対の電極885のポテンシャルは、連結した基準の反対の電極を提供するための、例えばAg/AgClのような、レドックス対から、反対の電極885を形成することによって提供された基準電位となるだろう。別法として、試験センサ800は、センサシステムと基準電位を提供するための、第三導体及び電極(図示せず)に提供されるだろう。作用電極875の領域は、反対の電極885の領域と同様でもよいし、又は、両電極のうちの1方が他方の電極より大きな領域を有してもよい。近年では、作用電極の領域は、反対の電極の領域より小さいほうが好まれている。
図9は、図8Bの試験センサの作用電極875及び反対の電極885の層構造を示す側端面図を示す。導体870及び880は、直接にベース810に配置されることができる。表面導体層970及び980は、導体870及び880上の任意の位置に、それぞれ配置することができる。表面導体層970、980は、導体870、880と同じ材料又は異なる材料から形成することができる。
導体870、880及び表面導体層970、980を形成するための物質、又は、複数の物質は、いかなる電気導体を含んでもよい。好ましい電気導体は、サンプルの分析の間に純量に酸化、又は、純量の低減を受けないような材料であり、イオン化しない。導体870、880は、好ましくは、例えば金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、又は、タングステンのような金属、又は、金属ペーストの薄い層を含む。表面導体層970、980は、好ましくは、カーボン、金、プラチナ、パラジウム、又は、それらの組合せを含む。表面導体層が導体上に存在しない場合、導体は、好ましくは、非イオン化物質から形成される。
試薬組成物975及び985は、導体870及び880の上又は近くに、それぞれ配置することができる。用語“上(on)”は“上(above)”、及び、記載された向きに関係して定義される。例えば、第1の要素は、第2の要素の少なくともある1部分の上に積層されるかどうか、第1の要素は、第2の“上(on)”になるように記載されているかである。もう一つの実施例において、第1の要素が第2の要素の少なくとも一部上にある場合、第1の要素は、第2の“上(on)”にあると記載される。用語“上に(on)”の使用は、記載された上下の要素間の材料の存在を除外するものではない。例えば、第1の要素は、その上面上のコーティングを有してもよく、そのうえ、第2の要素が第1の要素の少なくとも1部上にあり、その上部コーティングが第1の要素の“上(on)”として記載されていてもよい。従つて、用語“上(on)”の使用は、関係する2つの要素が物理的に接触していることを意味することもあるし、又は、意味しないこともある。
試薬組成物は、試薬、及び、バインダを含む。バインダは、少なくとも、実質的に水溶性である一つの高分子材を含み、任意に、実質的な水不溶性の多孔性粒子を含むことができる。多孔性粒子は、高分子材に付加的な物理的な構造を提供することができる。試薬組成物のための多孔性粒子の実施例は、例えば、「Zhu」への「Porous Particle Reagent Compositions, Devices, and Methods for Biosensors」と題する米国特許出願公開公報2009/0178936に開示されている。バインダは、サンプルによって水和するときに、ゲル、又は、ゲル様(gel−like)物質を形成することができる。任意の層990は、導体870上および/または表面導体970上に配置することができる。任意の層990は、試薬組成物975の中の一つ以上の構成要素を欠いていてもよい。
試薬組成物975及び985は、同じ又は異なる試薬を含んでもよい。同じ試薬を含むときには、試薬組成物975及び985は、同じ組成物としてもよい。異なる試薬を含むときには、第1の組成物975に存在する試薬は、作用電極875を用いて選ぶことができ、一方、第2の組成物985に存在する試薬は、反対の電極885を用いて選ぶことができる。例えば、組成物985の試薬は、サンプル及び導体880の間の電子のフリーな流れを促進するための、メディエータを含んでもよい。同様に、組成物975の試薬は、酵素系を含んでもよく、任意に、分析対象物の反応を促進するためのメディエータを含んでもよい。
試薬組成物975に含まれる酵素系は、分析対象物に対して特異的であってもよく、特に複雑な生物試料において分析対象物とセンサシステムの特性を強化するときに、分析対象物の反応を促進してもよい。酵素系は、酸化還元反応において分析対象物に関与する一つ以上の酵素、共同因子および/または他成分を含んでもよい。例えば、アルコール・オキシダーゼは、サンプル中のアルコールの存在に高感度である試験センサを提供するために使用されることができる。そのようなシステムは、血中アルコール濃度を測定する際に役立てることができる。もう一つの実施例において、グルコース・デヒドロゲナーゼ又はグルコース・オキシダーゼは、サンプル中のグルコースの存在に高感度である試験センサを提供するために使用することができる。このシステムは、例えば、糖尿病を有することが既知又は疑われる患者において、血液グルコース濃度を測定する際に役立てることができる。
例えば975、985のような試薬組成物の成分は、組成物の寸法と関連して定量化することができ、又は、成分は、上に、例えばリザーバ容積又は作用電極領域のような組成物が配置されたセンサの、もう一つの寸法と関連して定量化することができる。一つの実施例において、試薬組成物の成分は、マイクログラム(μg)、ナノグラム(ng)、ナノモル(nmol)、又は、試薬組成物表面積の中の平方ミリメートル(mm2)あたりの酵素ユニット(U)で定量化することができ、その際に、試薬組成物表面積は、試薬組成物の2次元の領域である。もう一つの実施例において、試薬組成物の成分は、マイクログラム(μg)、ナノモル(nmol)、又は、リザーバ容積のマイクロリットル(μL)あたりの酵素ユニット(U)で、定量化することができる。もう一つの実施例において、試薬組成物の成分は、マイクログラム(μg)、ナノモル(nmol)、又は、作用電極領域の平方ミリメートル(mm2)あたり酵素ユニット(U)で、定量化することができる。
バインダとしての用いるための適切な実質的に水溶性ポリマー物質は、ボリエステル繊維(酸化エチレン)(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)(ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチル・ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル・エチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアミノ酸(例えばポリリシン)、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチン、アクリル酸、メタクリル酸、それらの無水マレイン酸塩類、それらの誘導体、及び、それらの組合せを含むことができる。ポリマー材料は、モノマー、プレポリマー、及び、反復ユニットを形成するか又は有する他の材料を含む。他のポリマー物質も、使用することができる。
試薬組成物は、好ましくは、試薬組成物表面積の中のmm2あたりのバインダの約0.14から約0.43μgまでを含み、より好ましくは、バインダの約0.17から約0.38μg/mm2までを含み、及び、より好ましくは、バインダの約0.22から約0.35μg/mm2を含む。試薬組成物は、好ましくは、リザーバ容積のμLあたりのバインダの約1から約3μgを含み、より好ましくは、バインダの約1.2から約2.6μg/μLを含み、及び、より好ましくは、バインダの約1.5から約2.3μg/μLを含む。試薬組成物は、好ましくは、作用電極領域のmm2あたりのバインダの約1から約7.5μgを含み、より好ましくは、バインダの約1.2から約6.5μg/mm2を含み、及び、より好ましくは、バインダの約1.5から約5.7μg/mm2を含む。
試薬組成物は、好ましくは、緩衝塩を含む。試薬組成物が水溶性サンプルと接触するときに、緩衝塩は、好ましくは、混合物のpHを約4.5から約7.5までに維持し、より好ましくは、約6から約7までに維持する。好ましいpH、及び、試薬組成物のための緩衝塩(複数)は、酵素の動作を維持するように選択することができる。リン酸塩ベースの緩衝剤は、目下のところ好ましいが、他も使用することができる。好ましくは、緩衝塩は、Na2HPO4を含む。
試薬組成物は、好ましくは、試薬組成物表面積のmm2あたりの緩衝塩の約2.30から約9.54nmolを含み、より好ましくは、緩衝塩の約2.80から約6.43nmol/mm2を含み、及び、より好ましくは、緩衝塩の約3.40から約4.77nmol/mm2を含む。試薬組成物は、好ましくは、リザーバ容積のμLあたりの緩衝塩の約16から約67nmolを含み、より好ましくは、緩衝塩の約20から約45nmol/μLを含み、及び、より好ましくは、緩衝塩の約24から約34nmol/μLを含む。試薬組成物は、好ましくは、作用電極領域のmm2あたりの緩衝塩の約16から約167nmolを含み、より好ましくは、緩衝塩の約20から約113nmol/mm2を含み、及び、より好ましくは、緩衝塩の約24から約84nmol/mm2を含む。
試薬組成物は、1または2電子の実質的に水溶性のメディエータを含むことができる。メディエータは、それらの電気化学的動作に基づいて2つのグループに分離することができる。1電子移動メディエータは、電気化学反応の状態の間の1つの付加的な電子を運ぶことができる化学成分であり、2電子移行メディエータは、反応の状態の間の2つの付加的な電子を運ぶことができる化学成分である。1電子移動メディエータの実施例では、例えば1(1’−ジメチル・フェロセン)、フェロシアン化物、及び、フェリシアン化物、及び、ルテニウム(III)、及び、ルテニウム(II)ヘキサ・アミンのような化合物を含む。2電子移動メディエータの実施例では、上記したように例えばPIPT及びPIPOのような、有機キノン及び、ヒドロキノン、及び、前記カルボン酸、又は、例えばアンモニウム塩のような塩、例えば(E)−2(3Hフェノチアジン−3−ylideneamino)ベンゼン−1、4−二スルホン酸、(E)−5(3Hフェノチアジン−3−ylideneamino)イソフタル酸、アンモニウム(E)−3(3Hフェノチアジン−3−ylideneamino)−5−カルボキシ・ベンゾアート、及び、それらの組合せのような、これらのフェノチアジン誘導体、を含む。エレクトロアクティブ有機分子を含む付加的な2電子移動メディエータの実施例は、アメリカ特許番号5、393、615;、5、498、542;、及び、5、520、786中で記載される。
上にリストされた2電子移動メディエータは、不純物として無機の非移行金属塩を含むことができる。一般的に無機の、非移行金属塩は、アルカリ金属であるか、又は、硫酸塩イオン([SO4]2−)のアルカリ土類金属塩である。例えば、(E)−2(3Hフェノチアジン−3−ylideneamino)ベンゼン−1、4−二スルホン酸は、質量パーセンテージによって、例えば、3%(w/w)から30%(w/w)と、4%(w/w)から25%(w/w)と、5%(w/w)から及び21%(w/w)のように、1%(w/w)から50%(w/w)までのメディエータと関連して、不純物として無機の、非移行金属塩を含むことができる。
試薬組成物は、好ましくは、試薬組成物表面積のmm2あたりのメディエータの約1.70から約4.76nmolを含み、より好ましくは、メディエータの約2.30から約5.14nmol/mm2を含み、及び、より好ましくは、メディエータの約2.80から約4.00nmol/mm2を含む。試薬組成物は、好ましくは、リザーバ容積のμLあたりのメディエータの約12から約40nmolを含み、より好ましくは、メディエータの約16から約36nmol/μLを含み、及び、より好ましくは、メディエータの約20から約28nmol/μLを含む。試薬組成物は、好ましくは、作用電極領域のmm2あたりのメディエータの約12から約100nmolを含み、より好ましくは、メディエータの約16から約90nmol/mm2を含み、及び、より好ましくは、メディエータの約20から約70nmol/mm2を含む。試薬組成物は、好ましくは、試薬組成物表面積のmm2あたりのメディエータの多くても4.76nmol、リザーバ容積のμLあたりのメディエータの多くても40nmol、又は、作用電極領域のmm2あたりメディエータの多くても100nmolを含む。
試薬組成物は、また、上記したように、例えばFAD−GDHシステムのような実質的な水溶性酵素系を含む。試薬組成物は、好ましくは、約0.07から約0.3の試薬組成物表面積のmm2あたりの酵素系の活性のユニット(U、製造業者によって特定される)を含む。より好ましくは、酵素系の約0.09から約0.25のU/mm2を含み、及び、より好ましくは、酵素系の約0.1から約0.2のU/mm2を含む。試薬組成物は、好ましくは、リザーバ容積のμLあたりの酵素系の約0.5から約1.8Uを含み、より好ましくは、酵素系の約0.6から約1.6U/μLを含み、及び、より好ましくは、酵素系の約0.8から約1.4U/μLを含む。試薬組成物は、好ましくは、作用電極領域のmm2あたりの酵素系の約0.5から約5Uを含み、より好ましくは、酵素系の約0.6から約4U/mm2を含み、及び、より好ましくは、酵素系の約0.8から約3.5U/mm2を含む。
試薬組成物は、好ましくは、非イオン性の界面活性剤を含む。界面活性剤は、所望の粘性及び安定性のコロイド懸濁液の形成をアシストし、堆積方法と分析がコンパチブルであれば、いかなる非イオン性界面活性剤であってもよい。非イオン性界面活性剤の実施例は、例えば、N−ヘプタノイル−N−メチルグルカミン、N−オクタノイル−N−メチル−グルカミン、N−ノナノイル−N−メチルグルカミン、N−デカノイル−N−メチルグルカミン、オクチルβ−D−グルコピラノシド、ヘキシルβ−D−グルコピラノシド、及び、n−ヘプチルβ−D−グルコピラノシドのような、サッカリドベースの界面活性剤を含む。現在、例えば、N−オクタノイル−N−メチル−D−グルカミン(メガ8として販売され、DOJINDOGaithersburg, MDから入手可能である)のようなサッカリドベースの界面活性剤、及び、例えばPEG−30テトラメチルdecynediol界面活性剤(例えば、SURFYNOL 485、Air Products, Allentown, PAから入手可能である)のようなエトキシレート ベースの中性のサーファクタント、が好まれている。
試薬組成物は、好ましくは、試薬組成物表面積のmm2あたりの非イオン性界面活性剤の約0.04から約0.24μgを含み、より好ましくは、非イオン性界面活性剤の約0.07から約0.21μg/mm2を含み、及び、より好ましくは、非イオン性界面活性剤の約0.09から約0.18μg/mm2を含む。試薬組成物は、好ましくは、リザーバ容積のμLあたりの非イオン性界面活性剤の約0.3から約1.7μgを含み、より好ましくは、非イオン性界面活性剤の約0.5から約1.5μg/μLを含み、及び、より好ましくは、非イオン性界面活性剤の約0.6から約1.3μg/μLを含む。試薬組成物は、好ましくは、作用電極領域のmm2あたりの非イオン性界面活性剤の約0.3から約4.3μgを含む、より好ましくは、非イオン性界面活性剤の約0.5から約3.8μg/mm2を含み、及び、より好ましくは、非イオン性界面活性剤の約0.6から約3.2μg/mm2を含む。
試薬組成物は、任意に、陰イオン界面活性剤を含む。界面活性剤は、試薬組成物の明確に定義された周辺部の形成をアシストし、堆積方法及び分析がコンパチブルである、いかなる陰イオン界面活性剤でもあってもよい。アニオン性界面活性剤の実施例は、例えばアルキルフェノール・エトキシレートリン酸塩のようなリン酸塩エステル類;、例えばアルキルフェノール・エトキシレート硫酸塩のような硫酸塩;、及び、例えばアルキル、及び、ヘテロアルキルスルホン酸塩のようなスルホン酸塩を含む。アニオン性界面活性剤の具体例は、ノニルフェノール・エトキシレートリン酸塩ホスホランCS131、及び、ホスホランCS141、エトキシレート硫酸ナトリウム・ノニルフェノール(Witcolate D−51−53)、ナトリウム・メチルcocoyl taurate(Geropon TC−42)、及び、ジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム、を含む。
試薬組成物は、好ましくは、試薬組成物表面積のmm2あたりの陰イオン界面活性剤の約3から16ナノグラム(ng)を含み、より好ましくは、陰イオン界面活性剤の4から12ng/mm2を含み、及び、より好ましくは、陰イオン界面活性剤の5.5から9ng/mm2を含む。試薬組成物は、好ましくは、リザーバ容積のμLあたりの陰イオン界面活性剤の約20から140ngを含み、より好ましくは、陰イオン界面活性剤の30から80ng/μLを含み、及び、より好ましくは、陰イオン界面活性剤の35から60ng/μLを含む。試薬組成物は、好ましくは、作用電極領域のmm2あたりの陰イオン界面活性剤の約10から350ngを含み、より好ましくは、陰イオン界面活性剤の30から220ng/mm2を含み、及び、より好ましくは、陰イオン界面活性剤の40から150ng/mm2を含む。
試薬組成物は、好ましくは、従来の試薬組成物より、緩衝塩の低い濃度および/または他塩類の低い濃度を有する低全塩の試薬組成物である。好ましくは、低全塩試薬組成物は、試薬組成物表面積のmm2あたりの緩衝塩の多くても9.54nmol、及び、無機の多くても20%(w/w)、メディエータにおける非移行金属塩を含む。より好ましくは、低全塩試薬組成物は、試薬組成物表面積のmm2あたりの緩衝塩の多くても6.43nmol、及び、無機の多くても10%(w/w)、メディエータにおける非移行金属塩を含む。より好ましくは、低全塩試薬組成物は、試薬組成物表面積のmm2あたりの緩衝塩の多くても4.77nmol、及び、無機の多くても5%(w/w)、メディエータにおける非移行金属塩を含む。
本発明の様々な実施態様を記載したが、当業者には、本発明の範囲内で他の実施態様及び具現化が可能であることが明かであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物に照らして以外、限定されない。