JP2013023156A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】EV走行状態からのエンジン始動時における車速上限値を高く設定するハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン24を停止させると共に第2電動機MG2を駆動源とするEV走行状態からのそのエンジン24の始動に際して、第1電動機MG1が負回転である場合には、そのエンジン24の始動と同期して自動変速機20のダウンシフトが行われるものであることから、その自動変速機20のダウンシフトにより第2電動機MG2の回転速度を持ち上げることで、第1電動機MG1の発電量を抑制しつつ車速Vの上限値を引き上げることができる。すなわち、EV走行状態からのエンジン始動時における車速上限値を高く設定するハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、EV走行状態からのエンジン始動時における車速上限値を高く設定するための改良に関する。
主駆動源であるエンジンと、駆動源として機能する電動機とを、備えたハイブリッド車両が知られている。例えば、第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された第1電動機と、前記第3回転要素から駆動輪までの動力伝達経路に連結された第2電動機と、前記差動機構から駆動輪までの動力伝達経路に設けられた自動変速機とを、備えたハイブリッド車両がそれである。斯かるハイブリッド車両において、前記自動変速機の変速に関して燃費の向上を図る技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置の制御装置がそれである。
特開2010−89771号公報
ところで、前述したようなハイブリッド車両では、EV走行状態すなわち前記エンジンを停止させると共に例えば前記第2電動機を駆動源とする状態において、車速が高くなると前記第1電動機の負回転が大きくなる。斯かる状態からアクセルペダルが踏み込まれる等して前記エンジンの始動が行われる場合、前記第1電動機が負回転から正回転に向かう過程において発電が行われるが、当初の負回転が大きい場合にはそれだけ発電量も大きくなるため、その発電量がバッテリの入力制限値よりも大きくなることが考えられる。前記従来の技術では、斯かる場合において前記第1電動機の発電量がバッテリの入力制限値を超えないように車速を規制する制御を行っており、車速上限値を高く設定できないという不具合があった。このような課題は、ハイブリッド車両の走行性向上を意図して本発明者等が鋭意研究を続ける過程において新たに見出したものである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、EV走行状態からのエンジン始動時における車速上限値を高く設定するハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された第1電動機と、前記第3回転要素から駆動輪までの動力伝達経路に連結された第2電動機と、前記差動機構から駆動輪までの動力伝達経路に設けられた自動変速機とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記エンジンを停止させると共に前記第2電動機を駆動源とするEV走行状態からのそのエンジンの始動に際して、前記第1電動機が負回転である場合には、そのエンジンの始動と同期して前記自動変速機のダウンシフトが行われることを特徴とするものである。
このように、前記第1発明によれば、前記エンジンを停止させると共に前記第2電動機を駆動源とするEV走行状態からのそのエンジンの始動に際して、前記第1電動機が負回転である場合には、そのエンジンの始動と同期して前記自動変速機のダウンシフトが行われるものであることから、前記自動変速機のダウンシフトにより前記第2電動機の回転速度を持ち上げることで、前記第1電動機の発電量を抑制しつつ車速上限値を引き上げることができる。すなわち、EV走行状態からのエンジン始動時における車速上限値を高く設定するハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
ここで、前記第1発明に従属する本第2発明の要旨とするところは、前記EV走行状態からの前記エンジンの始動に際して、前記第1電動機が負回転であり且つその第1電動機の発電量が入力制限値よりも大きくなる場合には、そのエンジンの始動と同期して前記自動変速機のダウンシフトが行われるものである。このようにすれば、前記第1電動機の発電量を抑制することが求められる状態において、前記自動変速機のダウンシフトにより前記第2電動機の回転速度を持ち上げることで、前記第1電動機の発電量を抑制しつつ車速上限値を引き上げることができる。
また、前記第1発明又は第2発明に従属する本第3発明の要旨とするところは、前記エンジンの始動と同期して行われる前記自動変速機のダウンシフトは、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度が、そのダウンシフトに係る変速前の回転速度から変速後の回転速度へ等しい割合で変化させられものである。このようにすれば、前記第2電動機の回転速度を持ち上げるための前記自動変速機のダウンシフトに関して、エネルギ収支を所望の値に制御しつつ変速ショック等の発生を抑制することができる。
また、前記第1発明に従属する第3発明、又は、前記第2発明に従属する第3発明に従属する本第4発明の要旨とするところは、前記エンジンの始動と同期して行われる前記自動変速機のダウンシフトは、変速後の前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの目標回転速度と現時点におけるそれら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転速度との差分値を算出し、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転数時間変化率の比が、それら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれに対応する前記差分値の比と等しくなるように制御するものである。このようにすれば、前記第2電動機の回転速度を持ち上げるための前記自動変速機のダウンシフトに関して、エネルギ収支を所望の値に制御しつつ変速ショック等の発生を抑制することができる。
本発明が好適に適用されるハイブリッド車両の駆動装置を説明する骨子図である。 図1のハイブリッド車両に備えられた自動変速機の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。 図1のハイブリッド車両に備えられた差動部と自動変速機とから構成される駆動装置において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。 図1のハイブリッド車両の駆動を制御するために備えられた制御系統の要部を説明する図である。 図1のハイブリッド車両における電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 従来の技術によるEV走行状態からのエンジン始動について説明する図であり、図3の共線図における差動部に対応する部分に相当する。 本実施例によるEV走行状態からのエンジン始動について概略的に説明する図であり、図3の共線図における差動部に対応する部分に相当する。 図1のハイブリッド車両における電子制御装置による、EV走行状態からのエンジンの始動と同期して行われる自動変速機のダウンシフトにおける各関係値の経時変化の一例を示すタイムチャートである。 図1のハイブリッド車両における電子制御装置によるエンジン始動制御の要部を説明するフローチャートである。 図9に示すエンジン始動制御におけるエンジン始動時変速制御の要部を説明するフローチャートである。 図1のハイブリッド車両における電子制御装置によるエンジン始動制御の他の一例の要部を説明するフローチャートである。
本発明は、前記自動変速機として、複数の油圧式摩擦係合要素を備え、それら係合要素の係合乃至解放の組み合わせに応じて複数の変速段を選択的に成立させる機械式の有段変速機を備えたハイブリッド車両に好適に適用される。この有段変速機としては、前進3段以上の多段式変速機が好適に用いられるが、例えば低変速段及び高変速段の何れかが選択的に成立させられる前進2段の変速機が用いられるものであってもよい。更に、変速比を段階的に変化させる多段変速モードでの変速動作を行い得るベルト式無段変速機(CVT)等の無段変速機を備えたハイブリッド車両に本発明が適用されても構わない。
また、前記機械式の有段変速機は、好適には、複数の係合要素の掴み替えすなわち所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速によるダウンシフトを行うものであり、本発明は、前記EV走行状態からのそのエンジンの始動に際して、前記自動変速機のクラッチ・トゥ・クラッチ変速によるダウンシフトを同時に実行する態様のハイブリッド車両に好適に適用されるが、例えば複数の油圧式摩擦係合要素を備え、それら係合要素の係合乃至解放の組み合わせに応じて複数の変速段を選択的に成立させる機械式の有段変速機を備えたハイブリッド車両において、解放側の係合要素を解放させると共にワンウェイクラッチをロックさせて変速後の変速段を成立させる態様の変速制御にも本発明は好適に適用されるものである。
また、本発明において、前記エンジンの始動と同期して前記自動変速機のダウンシフトが行われるとは、好適には、そのエンジンのクランキング開始と略同時に前記自動変速機のダウンシフトに係るイナーシャ相が開始され、前記エンジンの回転速度が目標回転速度に達するのと略同時に前記自動変速機における変速制御が終了することをいうが、前記エンジンの始動制御と前記自動変速機のダウンシフト制御とが少なくとも一部において時間的に重複するものであればよく、必ずしもそれらの制御の開始時点及び終了時点が一致しなくともよい。
また、本発明は、好適には、後述する(5)式のような運動方程式を用いて各回転要素の目標回転変化を算出するものであるが、例えば、実験的に求められる関係やシミュレーション結果等から、目標変速時間やアクセル開度等に基づく複数のマップを予め用意しておき、それら複数のマップを用いて各回転要素の目標回転変化を算出するものであってもよい。
また、本発明は、好適には、前記エンジンの動作点の移動及び前記有段変速部の変速制御を同時に行う場合において、変速後の前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの目標回転速度のうち少なくとも1つに変更が生じた場合には、変更後の目標回転速度に対応して前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転数時間変化率を再設定するものである。このようにすれば、変速進行中にアクセルペダルの踏込操作が行われる等して各回転要素の目標回転速度に変更が生じた場合であっても、パワー収支にずれを生じさせることなく好適な変速を実現することができる。
また、本発明は、好適には、前記回転数時間変化率の再設定は、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転数時間変化率の絶対値が予め定められた閾値未満であるタイミングにおいて実行されるものである。このようにすれば、各回転要素の急激な回転速度変化を抑制することができ、更に好適な変速を実現することができる。
また、本発明は、好適には、予め定められた関係から、前記差分値の比に対応する前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転数時間変化率の比、変速中における前記エンジンの出力パワー、前記有段変速部に備えられた係合要素の伝達パワー、前記第1の電動機及び第2の電動機に係るパワー収支値の目標値、及び慣性仕事率に基づく釣合計算を行うことにより、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転数時間変化率の目標値を算出するものである。このようにすれば、パワー収支にずれを生じさせることなく好適な変速を実現する各回転要素の回転数時間変化率の目標値を実用的な態様で導出することができる。また、本発明に係る制御において、好適には、変速中における前記エンジンの出力パワーは零とされる。
また、本発明は、好適には、前記エンジンのトルク、前記有段変速部に備えられた係合要素のトルク、前記第1の電動機のトルク、及び前記第2の電動機のトルクのうち少なくとも1つを制御することにより、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転数時間変化率の目標値を達成する制御を行うものである。このようにすれば、パワー収支を所望の値に制御しつつ、変速ショック等の発生を抑制する好適な変速を実用的な態様で実現することができる。また、本発明に係る制御において、好適には、変速中における前記エンジンのトルクは零とされる。
また、本発明は、好適には、前記釣合計算は、前記第1の電動機及び第2の電動機の作動に係る仕事を除外したパワーの釣合について計算するものである。このようにすれば、前記電気的無段変速部及び有段変速部を備えた動力伝達装置に関して実用的な態様で入出力パワーの釣合計算を行うことができる。
また、本発明は、好適には、前記回転数時間変化率の目標値を達成する制御においては、前記第1の電動機及び第2の電動機の作動に係る仕事を考慮するものである。このようにすれば、パワー収支を所望の値に制御しつつ、変速ショック等の発生を抑制する好適な変速を実用的な態様で実現することができる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両の駆動装置10を説明する骨子図である。この図1に示す駆動装置10は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)車両等に好適に用いられるものであって、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力軸14と、その入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパ(振動減衰装置)等を介して間接に連結された差動部16と、その差動部16と1対の駆動輪34との間の動力伝達経路に伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている自動変速機20と、その自動変速機20に連結された出力軸22とを、直列に備えている。
また、上記駆動装置10は、上記入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパを介して直接的に連結された走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン24を備え、そのエンジン24と上記1対の駆動輪34との間の動力伝達経路に設けられて、そのエンジン24により発生させられた動力を差動歯車装置32等を介して上記1対の駆動輪34へと伝達する動力伝達装置である。なお、本実施例の駆動装置10において、上記エンジン24と差動部16とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパ等を介する連結はこの直結に含まれる。また、上記駆動装置10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
前記差動部16は、第1電動機MG1と、前記入力軸14に入力されて前記エンジン24の出力を機械的に分配する機械的機構であってそのエンジン24の出力を第1電動機MG1及び伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配装置26と、前記伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機MG2とを、備えている。本実施例の駆動装置10に備えられた第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、好適には、何れも発動機及び発電機として機能する所謂モータジェネレータであるが、上記第1電動機MG1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、上記第2電動機MG2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(発動機)機能を少なくとも備える。斯かる構成により、前記差動部16は、上記第1電動機MG1及び第2電動機MG2を介して運転状態が制御されることにより、入力回転速度(入力軸14の回転速度)と出力回転速度(伝達部材18の回転速度)の差動状態が制御される電気式差動部として機能する。
前記動力分配装置26は、シングルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。この遊星歯車装置は、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転及び公転可能に支持するキャリアCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素(要素)として備えており、キャリアCA0は前記入力軸14すなわち前記エンジン24に連結され、サンギヤS0は前記第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は前記伝達部材18に連結されている。すなわち、差動機構としての前記動力分配装置26においては、サンギヤS0が第1回転要素に、キャリアCA0が第2回転要素に、リングギヤR0が第3回転要素にそれぞれ対応する。また、前記動力分配装置26において、キャリアC0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能している。
上記のように構成された動力分配装置26では、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、前記エンジン24の出力が前記第1電動機MG1と伝達部材18とに分配されると共に、分配された前記エンジン24の出力の一部で前記第1電動機MG1から発生させられた電気エネルギにより蓄電が行われたり、前記第2電動機MG2が回転駆動される。従って、前記差動部16(動力分配装置26)は電気的な差動装置として機能させられて例えば所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされ、前記エンジン24の所定回転に拘わらず前記伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、前記差動部16はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。このように、前記動力分配装置26(差動部16)に動力伝達可能に連結された前記第1電動機MG1、第2電動機MG2、及びエンジン24の運転状態が制御されることにより、前記入力軸14の回転速度と差動部16の出力軸として機能する前記伝達部材18の回転速度の差動状態が制御される無段変速機構として作動させられる。
また、前記駆動装置10においては、前記エンジン24を停止させると共に前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の少なくとも一方(好適には、第2電動機MG2)を走行用の駆動源とするEV走行状態(EVモード)、前記エンジン24を駆動させて走行用の駆動源とすると共に前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2を空転させるか或いは回生させるエンジン走行状態(エンジン走行モード)、前記エンジン24及び第2電動機MG2を走行用の駆動源とすると共に前記第1電動機MG1により必要に応じて回生を行うハイブリッド走行状態(ハイブリッドモード)等が選択的に成立させられる。
前記自動変速機20は、前記エンジン24と前記1対の駆動輪34との間の動力伝達経路に、前記動力分配装置26と直列に設けられたものであり、シングルピニオン型の遊星歯車装置28、30を主体として構成され、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。上記遊星歯車装置28、30は、それぞれサンギヤS1、S2、遊星歯車P1、P2、それら遊星歯車P1、P2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、CA2、遊星歯車P1、P2を介してサンギヤS1、S2と噛み合うリングギヤR1、R2を備えている。
また、前記自動変速機20では、上記サンギヤS1がブレーキB1を介して前記ケース12に選択的に連結されるようになっている。また、上記キャリアCA1とリングギヤR2とが一体的に連結され、第2ブレーキB2を介して前記ケース12に選択的に連結されるようになっていると共に、一方向クラッチF1を介してそのケース12に対する一方向の回転が許容されつつ逆方向の回転が阻止されるようになっている。また、上記サンギヤS2が第1クラッチC1を介して前記伝達部材18に選択的に連結されるようになっている。また、一体的に連結された上記キャリアCA1及びリングギヤR2が第2クラッチC2を介して前記伝達部材18に選択的に連結されるようになっている。また、上記リングギヤR1とキャリアCA2とが一体的に連結されると共に前記出力軸22に連結されている。
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、例えば互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本又は2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキ等により構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
図2は、前記自動変速機20の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。この図2に示すように、前記自動変速機20においては、前記第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.20」程度である第1速ギヤ段が成立させられる。なお、第2速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウン変速時には、前記一方向クラッチF1により前記キャリアCA1及びリングギヤR2の前記ケース12に対する相対回転が阻止されるため、前記第2ブレーキB2は係合させられなくともよい。また、前記第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.72」程度である第2速ギヤ段が成立させられる。また、前記第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.00」程度である第3速ギヤ段が成立させられる。また、前記第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.67」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、前記第1クラッチC1及びブレーキB2の係合により変速比γRが例えば「3.20」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2の解放によりニュートラル「N」状態とされる。
以上のように構成された本実施例の駆動装置10において、無段変速機として機能する前記差動部16と、その差動部16に連結される前記自動変速機20とで全体として無段変速機が構成される。また、前記差動部16の変速比を一定となるように制御することにより、その差動部16と自動変速機20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。具体的には、前記差動部16が無段変速機として機能し、且つその差動部16に直列の前記自動変速機20が有段変速機として機能することにより、その自動変速機20の少なくとも1つの変速段Mに対してその自動変速機20に入力される回転速度(以下、自動変速機20の入力回転速度)すなわち前記伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。従って、前記駆動装置10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、前記駆動装置10において無段変速機が構成される。この駆動装置10の総合変速比γTは、前記差動部16の変速比γ0と自動変速機20の変速比γとに基づいて形成される前記駆動装置10全体としてのトータル変速比γTである。
例えば、無段変速機としての前記差動部16の作動により、図2の係合作動表に示される前記自動変速機20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対して、前記伝達部材18の回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。従って、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、前記駆動装置10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。また、前記差動部16の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチC及びブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する前記駆動装置10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。従って、前記駆動装置10において有段変速機と同等の状態が構成される。例えば、前記差動部16の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように前記自動変速機20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する前記駆動装置10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、前記自動変速機20の第3速ギヤ段において前記差動部16の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
図3は、前記差動部16と自動変速機20とから構成される駆動装置10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であって、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち前記入力軸14に連結された前記エンジン24の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度N18を示している。
また、前記差動部16を構成する動力分配装置26の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第1回転要素に対応するサンギヤS0、第2回転要素に対応するキャリアCA0、第3回転要素に対応するリングギヤR0の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は前記動力配分装置26を構成する遊星歯車装置のギヤ比に応じて定められている。また、前記自動変速機20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、Y4がサンギヤS1の相対回転速度を、Y5が相互に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2の相対回転速度を、Y6が相互に連結されたリングギヤR1及びキャリアCA2の相対回転速度を、Y7がサンギヤS2の相対回転速度をそれぞれ表し、それら縦線Y4〜Y7の間隔は前記遊星歯車装置28、30のギヤ比に応じてそれぞれ定められている。
図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の駆動装置10は、前記動力分配装置26(差動部16)において、その動力分配装置26の第2回転要素(キャリアCA0)が前記入力軸14すなわちエンジン24に連結され、第1回転要素(サンギヤS0)が前記第1電動機MG1に連結され、第3回転要素(リングギヤR0)が前記伝達部材18及び第2電動機MG2に連結されて、前記入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速機20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により前記サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
例えば、前記差動部16においては、前記動力分配装置26の第1回転要素乃至第3回転要素が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される前記リングギヤR0の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度NEを制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される前記キャリアCA0の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される前記サンギヤS0の回転速度すなわち前記第1電動機MG1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
また、前記差動部16の変速比γ0が「1」に固定されるように前記第1電動機MG1の回転速度を制御することによって前記サンギヤS0の回転がエンジン回転速度NEと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、そのエンジン回転速度NEと同じ回転で前記リングギヤR0の回転速度すなわち前記伝達部材18が回転させられる。或いは、前記差動部16の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように前記第1電動機MG1の回転速度を制御することによって前記サンギヤS0の回転が零とされると、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
また、前記自動変速機20において、第4回転要素である前記サンギヤS1は前記第1ブレーキB1を介して前記ケース12に選択的に連結され、第5回転要素である相互に連結された前記キャリアCA1及びリングギヤR2は前記第2クラッチC2を介して前記伝達部材18に選択的に連結されると共に前記第2ブレーキB2(一方向クラッチF1)を介して前記ケース12に選択的に連結され、第6回転要素である相互に連結された前記リングギヤR1及びキャリアCA2は前記出力軸22に連結され、第7回転要素である前記サンギヤS2は前記第1クラッチC1を介して前記伝達部材18に選択的に連結されている。
前記自動変速機20では、図3に示すように、前記第1クラッチC1と第2ブレーキB2(一方向クラッチF1)とが係合させられることにより、第7回転要素の回転速度を示す縦線Y7と横線XGとの交点と第5回転要素の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、前記出力軸22と連結された第6回転要素の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速(1st)における前記出力軸22の回転速度が示される。同様に、前記第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と前記出力軸22と連結された第6回転要素の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速(2nd)における前記出力軸22の回転速度が示され、前記第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と前記出力軸22と連結された第6回転要素の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速(3rd)における前記出力軸22の回転速度が示され、前記第2クラッチC2と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L4と前記出力軸22と連結された第6回転要素の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速(4th)における前記出力軸22の回転速度が示される。
図4は、前記駆動装置10の駆動を制御するためにその駆動装置10に備えられた制御系統の要部を説明する図である。この図4に示す電子制御装置50は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等を含んで構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行する所謂マイクロコンピュータであり、前記エンジン24の駆動制御や、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に関するハイブリッド駆動制御をはじめとする前記駆動装置10の駆動に係る各種制御を実行する。なお、この電子制御装置50は、前記エンジン24の出力制御用や前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動制御用といったように、必要に応じて各制御毎に個別の制御装置として構成される。
図4に示すように、上記電子制御装置50には、前記駆動装置10の各部に設けられたセンサやスイッチ等から各種信号が供給されるように構成されている。すなわち、アクセル開度センサ52により運転者の出力要求量に対応する図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度ACCを表す信号、エンジン回転速度センサ54により前記エンジン24の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、MG1回転速度センサ56により前記第1電動機MG1の回転速度NMG1を表す信号、MG2回転速度センサ58により前記第2電動機MG2の回転速度NMG2を表す信号、出力回転速度センサ60により車速Vに対応する前記出力軸22の回転速度NOUTを表す信号、車輪速センサ62により前記駆動装置10における各車輪それぞれの速度NWを表す信号、及びバッテリSOCセンサ64によりバッテリ46の充電容量(充電状態)SOCを表す信号等が、それぞれ上記電子制御装置50に供給される。
また、前記電子制御装置50からは、前記駆動装置10の各部に作動指令が出力されるように構成されている。すなわち、前記エンジン24の出力を制御するエンジン出力制御指令として、燃料噴射装置による吸気配管等への燃料供給量を制御する燃料噴射量信号、点火装置による前記エンジン24の点火時期(点火タイミング)を指令する点火信号、及び電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを操作するためにスロットルアクチュエータへ供給される電子スロットル弁駆動信号等が、そのエンジン24の出力を制御するエンジン出力制御装置42へ出力される。また、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動を指令する指令信号がインバータ44へ出力され、そのインバータ44を介して前記バッテリ46からその指令信号に応じた電気エネルギが前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に供給されてそれら第1電動機MG1及び第2電動機MG2の出力(トルク)が制御される。また、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2により発電された電気エネルギが上記インバータ44を介して前記バッテリ46に供給され、そのバッテリ46に蓄積されるようになっている。
図5は、前記電子制御装置50に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。本実施例においては、図5に示す各種制御機能が前記電子制御装置50に一元的に備えられた態様について説明するが、それら制御機能が例えばエンジン制御用の電子制御装置、電動機制御用の電子制御装置、自動変速機制御用の電子制御装置等に分散的に備えられ、それら複数の電子制御装置が相互に通信を行うことにより以下に詳述する各種機能を奏するものであっても構わない。
図5に示す変速制御手段70は、電気的無段変速機としての前記差動部16及び有段変速機としての前記自動変速機20による変速を制御する。すなわち、予め定められた関係から車両の走行状態例えば車速V及びアクセル操作量ACC等に応じて前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動を制御することにより前記差動部16の変速比を無段階に変化させる無段変速制御を行う。また、予め定められた関係から車両の走行状態例えば車速V及びアクセル操作量ACC等に応じて前記自動変速機20において前記第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れかの変速段を選択的に成立させる有段変速制御を行う。ここで、上記変速制御手段70は、好適には、前記差動部16の変速制御を行う無段変速制御手段と、前記自動変速機20の変速制御を行う有段変速制御手段とに分けて構成されるが、本実施例においてはそれらを区別しないものとして説明する。
上記変速制御手段70は、必要に応じて前記差動部16及び自動変速機20による変速制御を同時に実行する。すなわち、予め定められた関係から車両の走行状態に応じて前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動を制御することにより前記差動部16の変速比を無段階に変化させる無段変速制御及び前記自動変速機20において前記第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れかの変速段を選択的に成立させる有段変速制御を同時に(併行して)実行する。また、前記エンジン24の動作点の移動及び前記自動変速機20の変速制御を同時に実行する。そのような前記エンジン24の動作点の移動及び前記自動変速機20の変速制御を同時に行う制御に関して、上記変速制御手段70は、回転勾配比算出手段72、エンジントルク値取得手段74、クラッチトルク値取得手段76、パワー収支目標値取得手段78、回転勾配目標値算出手段80、MG必要トルク算出手段82、及びクラッチトルク指令値算出手段84を含んでいる。なお、本実施例においては、前記エンジン24の動作点の移動の一態様として、そのエンジン24に対して前記エンジン出力制御装置42に備えられた点火装置による点火等の制御が行われないまま、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の少なくとも一方の回転状態が変更されることにより前記エンジン24の回転速度NEが変化させられる態様も含むものとする。
ここで、前述のように、本実施例の駆動装置10においては、前記エンジン24を停止(エンジン回転速度NE=0)させると共に前記第2電動機MG2等の電動機を走行用の駆動源とするEV走行状態が成立させられる。本実施例においては、このEV走行状態からアクセルペダルの踏込操作が行われた場合等において、前記エンジン24の始動が行われる場合を考える。前記駆動装置10における前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動では、例えば、前記第1電動機MG1によりそのエンジン24の回転速度の引き上げが行われる。
図6は、従来の技術によるEV走行状態からのエンジン始動について説明する図であり、図3の共線図における前記差動部16に対応する部分に相当する。この図6に実線で示す状態(NE=0)から破線で示す状態まで前記エンジン24の回転を引き上げることを考えると、前記第2電動機MG2の回転速度NMG2が固定である場合、前記第1電動機MG1の回転速度NMG1を引き上げることにより斯かるエンジン24の回転速度引き上げが達成される。このエンジン24の始動制御において、当初(始動が行われる前)の前記第1電動機MG1の回転が負回転すなわち前記入力軸14の正転方向(車両前進方向)の回転を正方向とした場合における負方向の回転であった場合(NMG1<0)には、図6に示すように、その第1電動機MG1の回転速度NMG1が零となるまでその第1電動機MG1により発電(バッテリ46に対する電気エネルギの供給)が行われ、回転速度NMG1が正の値となって以降は放電(バッテリ46からの電気エネルギの持ち出し)が行われる。しかし、斯かる従来の制御においては、車速Vが高くなるほどEV走行状態からの前記エンジン24の始動に伴う前記第1電動機MG1の回転速度引き上げ量が増加するため、前記エンジン24のクランキングの応答時間を揃えようとすると前記第1電動機MG1により発電される発電量(バッテリ46に供給される電気エネルギ)が増加する傾向にある。この発電量が前記バッテリ46の電力入力制限量Winを超えないようにする必要があるため、前記従来の技術では、斯かる場合において前記第1電動機MG1の発電量が前記バッテリ46の入力制限値Winを超えないように車速Vを規制する制御を行っており、必ずしも十分に高い車速上限値を設定できないという問題があった。
図7は、本実施例によるEV走行状態からのエンジン始動について概略的に説明する図であり、図3の共線図における前記差動部16に対応する部分に相当する。なお、この図7においては、比較のために上述した図6における実線及び破線で示す状態も併せて記載している。本実施例の駆動装置10において、前記変速制御手段70は、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、前記第1電動機MG1が負回転である場合には、そのエンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトすなわち変速比γを増加させる方向への変速を実行する。前記自動変速機20においてダウンシフトが行われた場合、前記駆動輪34の回転速度に対する前記伝達部材18の回転速度が上昇するため、結果として前記第2電動機MG2の回転が持ち上げられる。従って、図7に一点鎖線で示すように、図6に破線で示した状態における前記エンジン24の回転速度を達成するための前記第1電動機MG1の回転速度引き上げ量が、その破線で示した状態よりも小さくて済み、延いてはその第1電動機MG1による発電量が抑制される。すなわち、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、前記第1電動機MG1が負回転である場合には、そのエンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトを行うことで、斯かる制御時における車速Vの上限値を前記従来の技術による制御よりも高く設定することが可能となる。
また、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、前記自動変速機20のダウンシフトを行う場合に、前記差動部16及び自動変速機20から成る変速機構全体でのエネルギ収支等を予め見込んで、全体でのバランスを考えた変速制御を行うことが望ましい。すなわち、前記エンジン24の始動時に前記差動部16における各回転要素すなわち第1回転要素であるサンギヤS0、第2回転要素であるキャリアCA0、及び第3回転要素であるリングギヤR0の変速進行度を揃えて所望のパワー収支を実現する前記自動変速機20のダウンシフトを同時に行うことで、前記第2電動機MG2の回転速度上昇に伴う前記バッテリ6の放電が可能となり、充電過多のパワー収支が更に好適に改善される。以下、前記エンジン24の始動と同期して行われる本実施例の前記自動変速機20のダウンシフト制御を、図5に示す各制御機能の説明と併せて詳説する。
図5に示すエンジン始動時間取得手段66は、前記EV走行状態(エンジン停止状態)においてアクセルペダルの踏込操作が行われる等して前記エンジン24の始動要求が行われた場合に、目標エンジン始動時間tesを取得する。この目標エンジン始動時間tesは、前記エンジン24の回転速度が目標回転速度である例えば1000(rpm)程度のアイドル回転速度に到達するまでの時間であり、好適には、車両性能から予め定められた一定値であるが、予め定められた関係から前記出力回転速度センサ60により検出される車速V及びアクセル開度センサ54により検出されるアクセル開度ACC等に基づいて算出される値であってもよい。また、上記エンジン始動時間取得手段66により取得される目標エンジン始動時間tesは、前記エンジン24の始動に際して実行される前記自動変速機20のダウンシフトに要する変速時間の目標値に相当する。すなわち、上記エンジン始動時間取得手段66は、換言すれば、前記エンジン24の始動に際して実行される前記自動変速機20のダウンシフトに係る目標変速時間を取得する目標変速時間取得手段である。
充電パワー算出手段68は、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して前記バッテリ46に充電される電気エネルギの量すなわち前記第1電動機MG1による発電量を算出する。好適には、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、前記自動変速機20におけるダウンシフトを行わない場合における前記第1電動機MG1の発電量を算出する。例えば、現時点における前記第2電動機MG2の回転速度NMG2及び変速後のエンジン目標回転速度に基づいて、前記エンジン24の始動に際しての前記第1電動機MG1の回転速度変化量(増加量)を算出し、その回転速度変化量に対応する第1電動機MG1による発電量を算出する。
前記変速制御手段70は、好適には、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、当初(制御開始前)において前記第1電動機MG1が負回転であり且つ上記充電パワー算出手段68により算出される第1電動機MG1の発電量が前記バッテリ46の蓄電量に対応して決定される入力制限値Winよりも大きくなる場合には、前記エンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトを実行する。また、好適には、この判定に前記第2電動機MG2の駆動による放電量が考慮される。すなわち、上記充電パワー算出手段68により算出される第1電動機MG1の単位時間あたりの発電量から、前記第2電動機MG2の回転速度に対応するその単位時間あたりの放電量を引いた値が、前記バッテリ46の単位時間あたりの入力制限値Winよりも大きくなる場合には、前記エンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトを実行する。換言すれば、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2による充放電収支(トータルでの充電量)が前記バッテリ46の入力制限値Win未満である場合には、前記エンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトを非実行とする。
前記充電パワー算出手段68は、前記自動変速機20の変速を行わない条件で算出された、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際しての前記第1電動機MG1の発電量に対応するその電動機MG1及び第2電動機MG2による充放電収支が前記バッテリ46の入力制限値Winよりも大きくなる場合には、前記自動変速機20の現時点での変速段から各変速段へのダウンシフトを行うと共に前記エンジン24の始動を行う場合における前記第1電動機MG1による発電量を算出する。例えば、前記自動変速機20の現時点での変速段が第3速ギヤ段である場合には、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速を行った場合、第1速ギヤ段への変速を行った場合それぞれについて前記第1電動機MG1の発電量を算出する。すなわち、現時点における前記第2電動機MG2の回転速度NMG2、変速後のエンジン目標回転速度、及び各ダウンシフトに対応する前記第2電動機MG2(伝達部材18)の回転速度引き上げ量に基づいて、前記エンジン24の始動に際しての前記第1電動機MG1の回転速度変化量(増加量)を算出し、その回転速度変化量に対応する第1電動機MG1による発電量を算出する。
前記変速制御手段70は、好適には、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、そのエンジン始動要求と同期して(同時に)前記自動変速機20のダウンシフトを実行(開始)する。斯かるダウンシフト制御に関して、通常の変速判定に用いられる変速マップ(変速線図)等に基づく変速判断の有無は問わない。すなわち、車速V及びアクセル開度ACC等によらず前記自動変速機20のダウンシフトを実行する。
また、前記変速制御手段70は、好適には、前記充電パワー算出手段68による算出結果に基づいて、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際しての前記自動変速機20のダウンシフト後の変速段すなわち変速先の変速段を決定する。ダウンシフト後の変速段がより低ギヤ段(変速比γが大きい変速段)であるほど前記第2電動機MG2の回転速度変化量が増加するため、充電解消量を大きくとることができる。前記変速制御手段70は、前記エンジン24の始動に際しての前記自動変速機20のダウンシフト先のギヤ段は、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2のパワー収支に係る充電側への偏りを解消するための必要充電解消量の大きさに応じて選択する。
すなわち、前記変速制御手段70は、好適には、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、そのエンジン始動要求と同時に前記自動変速機20のダウンシフトを実行した場合に関して、前記充電パワー算出手段68により算出される前記第1電動機MG1の発電量に対応するその電動機MG1及び第2電動機MG2による充放電収支が前記バッテリ46の入力制限値Win未満となるダウンシフトが行われるように、前記自動変速機20の変速先のギヤ段を設定する。換言すれば、前記電動機MG1及び第2電動機MG2による充放電収支が前記バッテリ46の入力制限値Win未満となり、且つ、最も変速比γの変化が少ないダウンシフトを実行する。例えば、前記自動変速機20の現時点での変速段が第3速ギヤ段である場合であって、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速を行った場合、第1速ギヤ段への変速を行った場合の何れについても前記電動機MG1及び第2電動機MG2による充放電収支が前記バッテリ46の入力制限値Win未満となる場合には、前記自動変速機20において第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフトを実行するが、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速を行った場合には前記電動機MG1及び第2電動機MG2による充放電収支が前記バッテリ46の入力制限値Win以上となる一方、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段への変速を行った場合には前記電動機MG1及び第2電動機MG2による充放電収支が前記バッテリ46の入力制限値Win未満となる場合には、前記自動変速機20において第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフトを実行する。
前記変速制御手段70は、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際しての前記自動変速機20のダウンシフトに関して、差動機構としての前記動力分配装置26における3つの回転要素すなわち第1回転要素であるサンギヤS0(MG1)、第2回転要素であるキャリアC0(エンジン24)、及び第3回転要素であるリングギヤR0(MG2)の変速進行度を揃え且つ所望のパワー収支を実現する変速制御を行う。このために、各回転要素の実際の回転速度時間変化率dω/dtに基づいて変速制御を2つのフェーズに区分し、それぞれで異なるアルゴリズムによる変速制御を行う。
前記変速制御手段70は、好適には、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素の回転変化勾配に応じて、前記エンジン24の動作点の移動及び前記自動変速機20の変速制御を同時に行う制御に係る制御アルゴリズム乃至制御量決定アルゴリズムを変更する。例えば、各回転要素の回転変化勾配に応じて区分される第1のフェーズ及び第2のフェーズそれぞれにおいて異なるアルゴリズムによる変速制御を実行する。好適には、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転数時間変化率すなわち回転速度時間変化率dω/dt(数式等においては時間微分すなわち時間変化率をドットで示している、以下の説明において同じ)の絶対値が予め定められた閾値未満であるタイミング、更に好適には、全ての回転要素の実際の回転速度時間変化率dω/dtの絶対値が予め定められた閾値未満であるタイミングにおいて変速制御に係るアルゴリズムを切り替える処理を実行する。
図8は、前記EV走行状態からのエンジン24の始動と同期して行われる前記自動変速機20のダウンシフトにおける各関係値の経時変化の一例を示すタイムチャートである。この図8に示す制御においては、先ず、時点t1において、前記エンジン24の始動(停止状態からのクランキング開始)及び自動変速機20のダウンシフトに係るイナーシャ相の開始が判定される。この時点t1から第2電動機MG2の回転速度がピークに達する時点t3までの間、前記変速制御手段70による第1のフェーズ(Phase.1)に対応する変速制御が実行され、前記自動変速機20のダウンシフトに伴い第1回転要素であるサンギヤS0(MG1)に対応するm軸の回転速度が漸増させられる。また、そのm軸の回転速度上昇に併行して第2回転要素であるキャリアC0(エンジン24)に対応するe軸の回転速度が漸増させられる。なお、図8においては省略しているが、上記m軸及びe軸の回転速度の漸増に伴い、第3回転要素であるリングギヤR0(MG2)に対応するg軸の回転速度が漸増させられる。ここで、本実施例のエンジン始動制御においては、図8に示すように、エンジントルクTeが零のままエンジン回転速度NEを例えばアイドル回転速度である1000(rpm)程度にまで上昇させる制御について説明する。すなわち、図8のタイムチャートに示す制御においては、前記エンジン24に対して前記エンジン出力制御装置42に備えられた点火装置による点火等の制御は行われない。
時点t1においてエンジン始動制御が開始された後、前記自動変速機20の変速(ダウンシフト)に係る解放側係合要素の解放が開始されると共に、係合側係合要素の係合が開始される。例えば、前記自動変速機20において第4速ギヤ段から第3速ギヤ段への変速が行われる場合には、解放側係合要素である前記第1ブレーキB1のクラッチトルク(係合トルク)Tb1を漸減させる制御が開始されると共に、係合側係合要素である前記第1クラッチC1のクラッチトルク(係合トルク)Tc1を漸増させる制御が開始される。すなわち、解放側係合要素を解放させると共に係合側係合要素を係合させる所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速によるダウンシフトが開始される。また、時点t2において、前記第2電動機MG2の実際の回転速度NMG2がその第2電動機の変速後の同期回転速度(目標回転速度)をまたぎ超している。すなわち、時点t2以降において、上記m軸の回転に関してはやや吹き上がり気味となる。
次に、時点t3において、前記第2電動機MG2の回転速度NMG2がピークに到達する。すなわち、上記m軸の回転に関してやや吹き上がり気味となっている。同様に、上記e軸の回転及び図示しないg軸の回転に関してもやや吹き上がり気味となり、変速後の同期回転速度(目標回転速度)よりも各軸の回転速度が高く(オーバーシュート)なっている。従って、時点t3以降はそれらの回転速度が減少するように制御が行われる。すなわち、時点t3において、上記m軸、e軸、及びg軸の回転速度時間変化率dω/dtは略零であり、各軸の回転速度の変化が増加から減少へと切り替わる変曲点に相当する。この時点t3以降においては、前記変速制御手段70による第2のフェーズ(Phase.2)に対応する変速制御が実行され、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2それぞれのトルクTg及びTmが制御されること等により時点t4において上記m軸、e軸、及びg軸の回転速度がそれぞれの目標値(変速後の目標回転速度)に到達させられた後、時点t5において制御が終了させられる。すなわち、図8のタイムチャートに示す制御においては、時点t1から時点t3までの間、前記変速制御手段70による第1のフェーズに対応する変速制御が実行された後、時点t3から時点t5までの間、前記変速制御手段70による第2のフェーズに対応する変速制御が実行されている。
ここで、前述のように、前記自動変速機20において第4速ギヤ段から第3速ギヤ段への変速が行われる場合には、前記第1ブレーキB1が解放されると共に前記第1クラッチC1が係合される。また、前述した図2に示すように、前記自動変速機20においては、第4速ギヤ段から第3速ギヤ段への変速、第4速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段への変速、及び第2速ギヤ段から第1速ギヤ段への変速の何れの変速(ダウンシフト)においても、解放側係合要素を解放させると共に係合側係合要素を係合させる所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が行われる。ここで、係合要素の掴み替え以降、変速終了に向けては各回転要素の回転速度を同期回転速度に一致させてゆく必要があり、図8に時点t3における値と時点t4における値(目標回転速度)との差で示すように比較的小さな速度差に対して各回転要素の回転速度を精緻に制御する必要がある。従って、各回転要素の同期回転速度を過ぎて回転変化勾配が存在する場合には、各回転要素の実際の回転速度時間変化率dω/dtがある程度小さくなったことをトリガとして制御を2つのフェーズに区分し、それぞれで異なるアルゴリズムによる変速制御を行っている。以下、図8に示す第1のフェーズ(Phase.1)における変速制御について説明する。
前記変速制御手段70による第1のフェーズに対応する変速制御において、前記回転勾配比算出手段72は、差動機構としての前記動力分配装置26における3つの回転要素すなわち第1回転要素であるサンギヤS0(MG1)、第2回転要素であるキャリアC0(エンジン24)、及び第3回転要素であるリングギヤR0(MG2)それぞれの回転勾配比を算出する。具体的には、前記エンジン24の始動に際して前記自動変速機20のダウンシフトを同時に行う場合において、変速後の前記第1回転要素の目標回転速度すなわちMG1の目標回転速度ωgaimと現時点における回転速度ωgとの差分値Δωg(=ωgaim−ωg)、変速後の前記第2回転要素の目標回転速度すなわちエンジン24の目標回転速度ωeaimと現時点における回転速度ωeとの差分値Δωe(=ωeaim−ωe)、及び変速後の前記第3回転要素の目標回転速度すなわちMG2の目標回転速度ωmaimと現時点における回転速度ωmとの差分値Δωm(=ωmaim−ωm)を算出し、それらの比すなわちΔωg:Δωe:Δωmを算出する。また、前記第1回転要素の回転速度時間変化率dωg/dt、前記第2回転要素の回転速度時間変化率dωe/dt、及び前記第3回転要素の回転速度時間変化率dωm/dtを算出し、それらの比すなわちdωg/dt:dωe/dt:dωm/dtを算出する。
前記エンジントルク値取得手段74は、現時点における前記エンジン24の出力トルクすなわちエンジントルク値Teを取得する。例えば、予め定められた関係から、現時点において実際に検出されるエンジン回転速度Ne及び図示しない電子スロットル弁の開度θTH等の値に基づいて上記エンジントルク値Teを算出する。また、トルクセンサ等により前記エンジン24の実際の出力トルクを検出するものであってもよい。なお、前述のように、本実施例のエンジン始動制御においては、エンジントルクTeを増加させないままエンジン回転速度NEを持ち上げる制御を考えるため、前記エンジントルク値取得手段74により取得されるエンジントルク値Teは零(Te=0)となる。
前記クラッチトルク値取得手段76は、前記自動変速機20に備えられた係合要素であって、変速に係る係合側係合要素及び解放側係合要素それぞれの現時点における係合トルクすなわちクラッチトルク値Tbを取得する。例えば、予め定められた関係(係合トルク特性)から、現時点における各係合要素の油圧指令値(図示しない油圧制御回路における電磁制御弁の出力圧指令値)に基づいて上記クラッチトルク値Tbを算出する。また、油圧制御回路に備えられた油圧センサにより各係合要素にそれぞれ供給される作動油の実際の油圧を検出するものであってもよい。
前記パワー収支目標値取得手段78は、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支目標値ΔPaimを取得する。例えば、予め定められた関係から、車両の走行状態及び前記動力伝達装置10に備えられた前記バッテリ46の充電レベル(SOC)等に基づいてパワー収支目標値ΔPaimを算出する。このパワー収支目標値ΔPaimは、例えば−30[kw]〜30[kw]の範囲内の値をとるものであり、好適には零(±0[kw])であるが、前記バッテリ46に対する充電要求があった場合には5[kw]程度、放電要求があった場合には−5[kw]程度といったように、システムの充電状況に応じて適宜定められる。
前記回転勾配目標値算出手段80は、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値を算出する。すなわち、前記サンギヤS0(MG1)の回転速度時間変化率dωg/dt、前記キャリアC0(エンジン24)の回転速度時間変化率dωe/dt、及び前記リングギヤR0(MG2)の回転速度時間変化率dωm/dtそれぞれの制御の狙い値(ターゲット)となる目標値を算出する。
前記回転勾配目標値算出手段80は、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して前記自動変速機20のダウンシフト制御を同時に行う場合において、変速中の少なくとも一定期間、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度変化勾配の比が、現時点における回転速度から目標回転速度までの差分値(回転速度変化量)の比、若しくはそれに準じて算出される値と等しくなるように制御する。すなわち、前記回転勾配比算出手段72により算出される、変速後の前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの目標回転速度と現時点におけるそれら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転速度との差分値の比Δωg:Δωe:Δωmと、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dtとが等しくなるように前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値を算出する。
前記回転勾配目標値算出手段80は、換言すれば、変速後における前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの狙い回転速度と現時点における回転速度とを取得して回転速度変化勾配を算出すると共に、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率を算出し、それら回転速度時間変化率の比を各回転要素の回転速度変化勾配の比の狙い値とする。すなわち、変速後の前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの目標回転速度と現時点におけるそれら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転速度との差分値の比が次の(1)式で表される場合、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率の比が次の(2)式を満たすように制御する。すなわち、次の(3)式を満たすように前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値を算出する。
Figure 2013023156
Figure 2013023156
Figure 2013023156
また、前記回転勾配目標値算出手段80は、好適には、上記(1)〜(3)式に基づく回転速度時間変化率dω/dtの目標値の算出は、変速中のエンジン出力パワー、クラッチ伝達パワー、狙いとするパワー収支値、及び慣性仕事率の釣合計算に基づいて行う。すなわち、予め定められた関係から、前記差分値の比Δωg:Δωe:Δωmに対応する(すなわちその比に等しい)前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dt、変速中における前記エンジン24の出力パワー、前記自動変速機20に備えられた係合要素すなわち前記第1ブレーキB1乃至第2ブレーキB2の伝達パワー、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支値の目標値ΔPaim、及び慣性仕事率に基づく釣合計算を行うことにより、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値を算出する。なお、前述のように、本実施例のエンジン始動制御においては、エンジントルクTeを増加させないままエンジン回転速度NEを持ち上げる制御を考えるため、変速中における前記エンジン24の出力パワーは零となる。
前記回転勾配目標値算出手段80は、例えば、前述した(3)式を満たすと共に次の(4)式を満たす前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値を算出する。この(4)式において、第1項に係るTe・ωeは前記エンジン24の出力パワーに、第2項に係るTb・ωmは駆動系が消費するパワーに、第3項、第4項、及び第5項に係るIg・dωg/dt・ωg−Ie・dωe/dt・ωe−Im・dωm/dt・ωmはイナーシャの引き上げに使用されるパワーにそれぞれ対応する。ここで、本実施例においてはTe=0であるため、(4)式における第1項はTe・ωe=0となる。また、クラッチトルクTbは、好適には、前記自動変速機20の変速に係る係合側係合要素のクラッチトルクに対応するものであり、例えば第4速ギヤ段から第3速ギヤ段へのダウンシフトにおいては、前記第1クラッチC1のクラッチトルクTc1に対応する。ここで、(4)式に示す釣合計算においては、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2のパワーは、パワー収支値(零からのずれ)分を考慮するのみとされている。すなわち、前記回転勾配目標値算出手段80は、好適には、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値の算出において、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動に係る仕事を除外したパワーの釣合について計算する。
Figure 2013023156
前記MG必要トルク算出手段82は、前記回転勾配目標値算出手段80により算出された前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値を実現する前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2のトルクを算出する。例えば、前記回転勾配目標値算出手段80により算出された第1回転要素(MG1)の回転速度時間変化率dωg/dtの目標値、第2回転要素(エンジン24)の回転速度時間変化率dωe/dtの目標値、第3回転要素(MG2)の回転速度時間変化率dωm/dtの目標値、前記エンジントルク値取得手段74により取得されたエンジントルク値Te、及び前記クラッチトルク値取得手段76により取得されたクラッチトルク値Tbに対して、次の(5)式に示す運動方程式を満たすMG1トルクTg及びMG2トルクTmを求める。また、前記変速制御手段70は、上述のようにして算出されたMG1トルクTg及びMG2トルクTmが実現されるように前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動を制御する。
Figure 2013023156
以上に説明したように、前記変速制御手段70による第1のフェーズ(Phase.1)に対応する変速制御においては、(a)前記回転勾配比算出手段72により、各回転要素の目標回転速度と現時点における回転速度との差分値比Δωg:Δωe:Δωmを算出すると共に、各回転要素の回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dtを算出し、(b)前記エンジントルク値取得手段74により、現時点における前記エンジン24の出力トルクすなわちエンジントルク値Te(=0)を取得し、(c)前記クラッチトルク値取得手段76により、前記自動変速機20に備えられた係合要素すなわち前記第1ブレーキB1乃至第2ブレーキB2の現時点における係合トルクすなわちクラッチトルク値Tbを取得し、(d)前記パワー収支目標値取得手段78により、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支目標値ΔPaimを取得し、(e)前記回転勾配目標値算出手段80により、(a)〜(d)において得られた各値を用いて各回転要素の回転速度時間変化率dω/dtの目標値を算出し、(f)前記MG必要トルク算出手段82により、(e)において算出された各回転要素の回転速度時間変化率dωg/dt、dωe/dt、dωm/dtの目標値を達成するMG1トルクTg及びMG2トルクTmを算出し、(g)前記変速制御手段70により、(f)で算出されたMG1トルクTg及びMG2トルクTmを達成する作動指令を前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2へ出力する。すなわち、上記(a)〜(g)の一連の処理に対応するアルゴリズムにより前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素の回転を制御する。
続いて、図8に示す第2のフェーズ(Phase.2)における変速制御について説明する。前記変速制御手段70による第2のフェーズに対応する変速制御においては、上記(a)〜(g)の一連の処理における(b)〜(e)の処理に代え、以下の(b′)〜(e′)の処理が行われる。すなわち、(a)前記回転勾配比算出手段72により、各回転要素の目標回転速度と現時点における回転速度との差分値比Δωg:Δωe:Δωmを算出すると共に、各回転要素の回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dtを算出し、(b′)前記回転勾配目標値算出手段80により、(a)において得られた差分値比Δωg:Δωe:Δωmと回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dtとが等しくなる関係を満足するものであって、フェーズ切り替わりから所定時間で滑らかな回転変化をもって変速後の同期回転速度に到達する各回転要素の回転速度時間変化率dω/dtの目標値を算出し、(c′)前記エンジントルク値取得手段74により、現時点における前記エンジン24の出力トルクすなわちエンジントルク値Te(=0)を取得し、(d′)前記パワー収支目標値取得手段78により、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支目標値ΔPaimを取得し、(e′)以下に詳述するクラッチトルク指令値算出手段84により、(b′)〜(d′)において得られた各回転要素の回転速度時間変化率dωg/dt、dωe/dt、dωm/dtの目標値、エンジントルク値Te、及びパワー収支の目標値ΔPaimを用いてクラッチトルクTbの指令値を算出し、(f)前記MG必要トルク算出手段82により、(b′)において算出された各回転要素の回転速度時間変化率dωg/dt、dωe/dt、dωm/dtの目標値を達成するMG1トルクTg及びMG2トルクTmを算出し、(g)前記変速制御手段70により、(f)で算出されたMG1トルクTg及びMG2トルクTmを達成する作動指令を前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2へ出力すると共に、(e′)で算出されたクラッチトルクTbを実現する指令値を図示しない油圧制御回路へ出力する。すなわち、上記(a)、(b′)〜(e′)、(f)、(g)の一連の処理に対応するアルゴリズムにより前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素の回転を制御する。
前記クラッチトルク指令値算出手段84は、前記自動変速機20におけるダウンシフトに係る各係合要素(解放側係合要素及び係合側係合要素)の係合トルク指令値を算出する。具体的には、前記回転勾配目標値算出手段80により算出される前記第1回転要素の回転速度変化率dωg/dtの目標値、前記第2回転要素の回転速度変化率dωe/dtの目標値、前記第3回転要素の回転速度変化率dωm/dtの目標値、前記エンジントルク値取得手段74により取得されるエンジントルク値Te(=0)、及び前記パワー収支目標値取得手段78により取得されるパワー収支の目標値ΔPaimに対して、前述した(4)式を満たすクラッチトルクTbを算出する。ここで、このクラッチトルクTbは、好適には、前記自動変速機20の変速に係る係合側係合要素のクラッチトルクに対応するものであり、例えば第4速ギヤ段から第3速ギヤ段へのダウンシフトにおいては、前記第1クラッチC1のクラッチトルクTc1に対応する。
以上に説明したように、前記変速制御手段70は、好適には、前記自動変速機20に備えられた変速に係る各係合要素のトルク、前記第1電動機MG1のトルクTMG1、及び前記第2電動機MG2のトルクTMG2のうち少なくとも1つを制御することにより、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの目標値を達成する制御を行う。また、好適には、この回転速度時間変化率dω/dtの目標値を達成する制御においては、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動に係る仕事を考慮する。すなわち、(4)式に示す釣合計算において行っていたような、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の作動に係る仕事の除外を行わず、それらの仕事を含め関係する全てのデバイスを考慮して各制御デバイスの制御量を決定する。
また、前記変速制御手段70は、好適には、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して前記自動変速機20のダウンシフト制御を同時に行う場合において、変速後の前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの目標回転速度ωgaim、ωeaim、ωmaimのうち少なくとも1つに変更が生じた場合には、変更後の目標回転速度に対応して前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtを再設定する。また、好適には、この回転勾配の再設定は、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転速度時間変化率dω/dtの絶対値が予め定められた閾値未満(例えば、略零である小さな値)であるタイミング、更に好適には、全ての回転要素の実際の回転速度時間変化率dω/dtの絶対値が予め定められた閾値未満であるタイミングにおいて実行される。また、好適には、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転速度時間変化率dω/dtを、目標回転速度の変更前の回転速度時間変化率よりも低減した後に上記回転勾配の再設定を実行する。
図8のタイムチャートでは、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支値に関して、本実施例の制御すなわち前記エンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトを行う制御に対応する値を実線で、前記エンジン24の始動制御のみの(すなわち自動変速機20のダウンシフトによる第2電動機MG2の回転引き上げを行わない)従来の制御に対応する値を破線で、それぞれ示している。図8に示す例では、パワー収支値が零未満である領域が充電すなわち前記バッテリ46に電気エネルギを供給する側に、パワー収支値が零より大きい領域が放電すなわち前記バッテリ46から電気エネルギを持ち出す側に相当する。すなわち図8に実線で示す本実施例の制御では、破線で示す従来の制御に比べて特にエンジン回転速度上昇時における充電量が抑えられていることがわかる。これは、図7を用いて前述したように、前記自動変速機20のダウンシフトにより前記第2電動機MG2の回転が持ち上げられることにより、前記第1電動機MG1の回転速度上昇量が抑えられることによるものである。このように、前記エンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトを行うことで、前記2電動機MG2の回転速度上昇により放電が可能となり充電過多のパワー収支が改善され、結果としてEV可能車速を向上させることができる。
図9は、前記電子制御装置50によるエンジン始動制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記エンジン24を停止させると共に前記第2電動機MG2を駆動源とするEV走行状態からアクセルペダルの踏込操作が行われる等して、前記エンジン24の始動要求が行われたか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、前記エンジン24の始動制御が開始されてからその回転速度NEが目標回転速度である例えば1000(rpm)程度のアイドル回転速度に到達するまでの目標エンジン始動時間tesが取得される。次に、S3において、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して前記バッテリ46に充電される電気エネルギの量すなわち前記第1電動機MG1による発電量が算出される。好適には、そのエンジン24の始動に際して前記自動変速機20によるダウンシフトを同期して行う場合における各ダウンシフトに対応する前記第1電動機MG1による発電量(充放電収支、充電解消量)が算出される。次に、S4において、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に同期して行われる前記自動変速機20のダウンシフト後の変速段が選択される。好適には、S3にて算出された前記第1電動機MG1の発電量が入力制限値Win未満となる場合において、最も変速比γの変化が少ないダウンシフトに対応する変速段が選択される。次に、S5において、予め定められた関係から、車両の走行状態及び前記動力伝達装置10に備えられた前記バッテリ46の充電レベル(SOC)等に基づいて、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支目標値ΔPaimが取得(算出)される。次に、SSにおいて、図10に示すエンジン始動時変速制御が実行された後、本ルーチンが終了させられる。
図10は、図9に示すエンジン始動制御におけるエンジン始動時変速制御(エンジン始動時変速サブルーチン)の要部を説明するフローチャートである。先ず、SS1において、変速制御の態様がフェーズ1とされる。次に、SS2において、各回転要素すなわち前記第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素の目標回転速度と現時点における回転速度との差分値比Δωg:Δωe:Δωmが算出されると共に、各回転要素の回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dtが算出される。次に、SS3において、各回転要素の変速後の狙い回転数すなわち目標回転速度に変化があったか否かが判断される。このSS3の判断が否定される場合には、SS7以下の処理が実行されるが、SS3の判断が肯定される場合には、SS4において、各回転要素の回転勾配目標すなわち回転速度時間変化率dω/dtの目標値が0とされたか否かが判断される。このSS4の判断が否定される場合には、SS5において、各回転要素の回転速度時間変化率dω/dtの目標値が0とされた後、SS7以下の処理が実行されるが、SS4の判断が肯定される場合には、SS6において、各回転要素の目標回転速度と現時点における回転速度との差分値比Δωg:Δωe:Δωmが再計算されると共に、各回転要素の回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dtが再計算される。
SS7においては、変速制御の態様がフェーズ2であるか否かが判断される。このSS7の判断が肯定される場合には、SS17以下の処理が実行されるが、SS7の判断が否定される場合には、SS8において、各回転要素の回転速度がオーバーシュートしたか否か、すなわち各回転要素の回転速度ωが変速後の同期回転速度ωaim以上であるか否かが判断される。このSS8の判断が否定される場合には、SS10以下の処理が実行されるが、SS8の判断が肯定される場合には、SS9において、各回転要素の回転速度変化勾配すなわち回転速度時間変化率dω/dtが予め定められた所定範囲内であるか否か、すなわちその回転速度時間変化率dω/dtの絶対値が予め定められた閾値未満であるか否かが判断される。このSS9の判断が肯定される場合には、SS16以下の処理が実行されるが、SS9の判断が否定される場合には、SS10において、前記エンジン24の出力トルクすなわちエンジントルク値Teが取得された後、S11以下の処理が実行される。なお、本実施例においてはTe=0であるため、このSS10の処理は省かれてもよい。
SS11においては、前記自動変速機20の変速に係る係合要素の係合トルクすなわちクラッチトルク値Tbが取得される。次に、SS12において、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支目標値ΔPaimが取得される。次に、SS13において、SS2及びSS10〜SS12にて得られた各値を用いて各回転要素の回転速度時間変化率dω/dtの目標値が算出される。次に、SS14において、SS13にて算出された各回転要素の回転速度時間変化率dω/dtの目標値を達成するMG1トルクTg及びMG2トルクTmが算出され、算出されたMG1トルクTg及びMG2トルクTmを達成する作動指令が前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2へ出力される。次に、SS15において、変速終了であるか否かが判断される。このSS15の判断が否定される場合には、SS3以下の処理が再び実行されるが、SS15の判断が肯定される場合には、それをもって図9(乃至後述する図11)に示すエンジン始動制御に復帰させられる。
SS16においては、変速制御の態様がフェーズ1からフェーズ2に切り替えられる。次に、SS17において、SS2にて算出された差分値比Δωg:Δωe:Δωmと回転速度時間変化率の比dωg/dt:dωe/dt:dωm/dtとが等しくなる関係を満足するものであって、フェーズ切り替わりから所定時間で滑らかな回転変化をもって変速後の同期回転速度に到達する各回転要素の回転速度時間変化率dω/dtの目標値が算出される。次に、SS18において、前記エンジン24の出力トルクすなわちエンジントルク値Teが取得される。なお、本実施例においてはTe=0であるため、このSS18の処理は省かれてもよい。次に、SS19において、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に係るパワー収支目標値ΔPaimが取得される。次に、SS20において、SS17〜SS19にて得られた各回転要素の回転速度時間変化率dω/dtの目標値、エンジントルク値Te、及びパワー収支の目標値ΔPaimを用いてクラッチトルクTbの指令値が算出された後、SS14以下の処理が実行される。
図11は、前記電子制御装置50によるエンジン始動制御の他の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この図11に示す制御において、前述した図9に示す制御と共通のステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。図11に示す制御では、S3の処理に続いて、そのS3にて算出された前記第1電動機MG1の発電量が前記バッテリ46の蓄電量(SOC)に対応して決定される入力制限値Winを超えるか否かが判断される。このS3の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S3の判断が肯定される場合には、S4以下の処理が実行される。
以上の制御において、S2が前記エンジン始動時間取得手段66の動作に、S3が前記充電パワー算出手段68の動作に、S4、S5、SSがが前記変速制御手段70の動作に、SS2〜SS6が前記回転勾配比算出手段72の動作に、SS10及びSS18が前記エンジントルク値取得手段74の動作に、SS11が前記クラッチトルク値取得手段76の動作に、SS12及びSS19が前記パワー収支目標値取得手段78の動作に、SS13及びSS17が前記回転勾配目標値算出手段80の動作に、SS14が前記MG必要トルク算出手段82の動作に、SS20が前記クラッチトルク指令値算出手段84の動作に、それぞれ対応する。
このように、本実施例によれば、前記エンジン24を停止させると共に前記第2電動機MG2を駆動源とするEV走行状態からのそのエンジン24の始動に際して、前記第1電動機MG1が負回転である場合には、そのエンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトが行われるものであることから、その自動変速機20のダウンシフトにより前記第2電動機MG2の回転速度を持ち上げることで、前記第1電動機MG1の発電量を抑制しつつ車速Vの上限値を引き上げることができる。すなわち、EV走行状態からのエンジン始動時における車速上限値を高く設定するハイブリッド車両の電子制御装置50を提供することができる。
また、前記EV走行状態からの前記エンジン24の始動に際して、前記第1電動機MG1が負回転であり且つその第1電動機MG1の発電量が前記入力制限値Winよりも大きくなる場合には、そのエンジン24の始動と同期して前記自動変速機20のダウンシフトが行われるものであるため、前記第1電動機MG1の発電量を抑制することが求められる状態において、前記自動変速機20のダウンシフトにより前記第2電動機MG2の回転速度を持ち上げることで、前記第1電動機MG1の発電量を抑制しつつ車速Vの上限値を引き上げることができる。
また、前記エンジン24の始動と同期して行われる前記自動変速機20のダウンシフトは、差動機構としての前記動力分配装置26における第1回転要素である前記サンギヤS0、第2回転要素である前記キャリアCA0、及び第3回転要素であるリングギヤR0それぞれの回転速度ωg、ωe、ωmが、そのダウンシフトに係る変速前の回転速度から変速後の回転速度へ等しい割合で変化させられものであるため、前記第2電動機MG2の回転速度を持ち上げるための前記自動変速機20のダウンシフトに関して、エネルギ収支を所望の値に制御しつつ変速ショック等の発生を抑制することができる。
また、前記エンジン24の始動と同期して行われる前記自動変速機20のダウンシフトは、変速後の第1回転要素であるサンギヤS0、第2回転要素であるキャリアC0、及び第3回転要素であるリングギヤR0それぞれの目標回転速度と現時点におけるそれら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転速度との差分値Δωを算出し、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度時間変化率dω/dtの比が、それら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれに対応する前記差分値Δωの比と等しくなるように制御するものであることから、前記第2電動機MG2の回転速度を持ち上げるための前記自動変速機20のダウンシフトに関して、エネルギ収支を所望の値に制御しつつ変速ショック等の発生を抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
20:自動変速機、24:エンジン、26:動力分配装置(差動機構)、34:駆動輪、50:電子制御装置、CA0:キャリア(第2回転要素)、MG1:第1電動機、MG2:第2電動機、R0:リングギヤ(第3回転要素)、S0:サンギヤ(第1回転要素)

Claims (4)

  1. 第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された第1電動機と、前記第3回転要素から駆動輪までの動力伝達経路に連結された第2電動機と、前記差動機構から駆動輪までの動力伝達経路に設けられた自動変速機とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
    前記エンジンを停止させると共に前記第2電動機を駆動源とするEV走行状態からの該エンジンの始動に際して、前記第1電動機が負回転である場合には、該エンジンの始動と同期して前記自動変速機のダウンシフトが行われるものであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 前記EV走行状態からの前記エンジンの始動に際して、前記第1電動機が負回転であり且つ該第1電動機の発電量が入力制限値よりも大きくなる場合には、該エンジンの始動と同期して前記自動変速機のダウンシフトが行われるものである請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  3. 前記エンジンの始動と同期して行われる前記自動変速機のダウンシフトは、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転速度が、該ダウンシフトに係る変速前の回転速度から変速後の回転速度へ等しい割合で変化させられものである請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  4. 前記エンジンの始動と同期して行われる前記自動変速機のダウンシフトは、変速後の前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの目標回転速度と現時点におけるそれら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの実際の回転速度との差分値を算出し、前記第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれの回転数時間変化率の比が、それら第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素それぞれに対応する前記差分値の比と等しくなるように制御するものである請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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