JP2013007928A - 成膜用塗布液および塗膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】架橋型のシロキサン重合体と、鎖状のシロキサンオリゴマーとを有するバインダー成分と、前記バインダー成分中に分散したシリカ系微粒子とを有し、前記鎖状のシロキサンオリゴマーが前記シリカ系微粒子の表面にグラフト化しており、前記架橋型のシロキサン重合体の分子量が2500以上、15000以下である。また、前記バインダー成分中の前記架橋型のシロキサン重合体の含有量は、60〜80wt%である。
【選択図】なし
Description
特許文献1に記載の塗布液は、次のようにして製造される。まず、フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を有機溶剤で希釈し、さらに、そこにエポキシ基を有する有機ケイ素化合物を添加する。その後、必要に応じて水または薄い塩酸、酢酸等を添加して加水分解縮重合を行う。次に、平均粒径1〜150nmのシリカ系微粒子を有機溶剤中にコロイド状に分散した分散液を添加する。その後、必要に応じ、硬化触媒、光重合開始剤、酸発生剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加し十分に撹拌する。以上のようにして塗布液が製造される。
しかしながら、本発明者らが、この塗布液を用いて成膜した反射防止膜について観察や試験を行ったところ、反射防止膜中でシリカ系微粒子が凝集していることを発見した。このようなシリカ系微粒子の凝集が生じると、密な塗膜を形成することが困難となり、耐水性、耐薬品性、耐熱性、耐傷性が低下するという問題がある。
本発明の成膜用塗布液は、架橋型のシロキサン重合体と、鎖状のシロキサンオリゴマーとを有するバインダー成分と、
前記バインダー成分中に分散したシリカ系微粒子とを有し、
前記鎖状のシロキサンオリゴマーが前記シリカ系微粒子の表面にグラフト化しており、
前記架橋型のシロキサン重合体の分子量が2500以上、15000以下であることを特徴とする。
これにより、緻密な塗膜を成膜することのできる成膜用塗布液を提供することができる。
これにより、成膜された塗膜がより緻密となる。
本発明の成膜用塗布液では、前記バインダー成分には、さらに、リニア型のシロキサン重合体が含まれていることが好ましい。
これにより、成膜された塗膜がより緻密となる。
これにより、成膜された塗膜がより緻密となる。
本発明の成膜用塗布液では、前記バインダー成分には、さらに、環状のシロキサンオリゴマーが含まれていることが好ましい。
これにより、成膜用塗布液が安定化する。
本発明の成膜用塗布液では、前記バインダー成分中の前記環状のシロキサンオリゴマーの含有量は、1〜15wt%であることが好ましい。
これにより、成膜用塗布液の安定化を図りつつ、成膜された塗膜の強度の低下を抑制することができる。
これにより、より屈折率の低い塗膜を成膜することができる。
本発明の成膜用塗布液では、反射防止膜を成膜するための塗布液であることが好ましい。
これにより、成膜用塗布液によって、例えば、メガネレンズ等のレンズ(プラスチックレンズ)に形成される反射防止膜を成膜することができる。
前記第1工程で得られた前記液体Aにシリカ系微粒子を加え、pH5.0〜7.0の環境下で前記シロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する第2工程とにより得られることが好ましい。
R1 nR2 pSiZ4−(n+p)・・・・・・(1)
(式中、R1、R2は、炭素数1〜16の有機基で少なくとも一方がエポキシ基を含む。Zは加水分解性基。n、pは、0〜2の整数であって1≦n+p≦3である。)
XmR3 3−mSi−Y−SiR3 3−mXm・・・・・・(2)
(式中、R3は炭素数1〜6の一価炭化水素基。Yはフッ素原子を1個以上含有する二価有機基。Xは加水分解性基。mは1〜3の整数である。)
これにより、成膜用塗布液を簡単に製造することができる。
本発明の塗膜は、本発明の成膜用塗布液を用いて成膜されたことを特徴とする。
これにより、密な塗膜を提供することができる。
図1は、本発明の好適な実施形態にかかる塗膜を示す模式的断面図、図2は、シリカゾルのpH値と反応速度との関係を示したグラフ、図3は、実施例および比較例の塗膜の光学顕微鏡写真である。なお、以下では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」と言い、下側を「下」と言う。
本発明の成膜用塗布液は、架橋型のシロキサン重合体と、鎖状のシロキサンオリゴマーとを含むバインダー成分と、このバインダー成分中に分散したシリカ系微粒子とを有しており、前記シリカ系微粒子の表面に前記鎖状のシロキサンオリゴマーがグラフト化している。また、架橋型のシロキサン重合体の分子量(重量平均分子量Mw)は、2500〜15000である。
このような成膜用塗布液を用いて成膜した塗膜(本発明の塗膜)は、緻密なものとなり、優れた密着性、膜強度、耐水性、耐薬品性、耐熱性および耐傷性を発揮することができる。
ここで、成膜用塗布液によって成膜した塗膜の屈折率は、特に限定されないが、1.40以下であるのが好ましい。これにより、この塗膜が優れた反射防止性能を発揮することができ、この塗膜を反射防止膜として好適に用いることができる。
前述したように、バインダー成分には、架橋型のシロキサン重合体と、鎖状のシロキサンオリゴマーとが含まれている。また、この他、リニア型のシロキサン重合体と、環状のシロキサンオリゴマーが含まれていてもよい。
前述したように、架橋型のシロキサン重合体の分子量(重量平均分子量Mw)は、2500〜15000であればよいが、5000〜9000であるのがより好ましい。これにより、上記効果がより顕著となる。
また、鎖状のシロキサンオリゴマーの分子量(平均分子量)としては、特に限定されないが、500〜5000程度であるのが好ましく、1250〜3250程度であるのがより好ましい。これにより、シリカ系微粒子の凝集を効果的に防止することができるとともに、シリカ系微粒子の分散性がより向上する。
また、鎖状のシロキサンオリゴマーの主鎖に含まれる珪素の数は、特に限定されないが、3つであるのが好ましい。これにより、上記効果がより顕著となる。
このようなリニア型のシロキサン重合体の分子量(平均分子量)としては、特に限定されないが、1000〜10000程度であるのが好ましく、2500〜6500程度であるのがより好ましい。これにより、架橋型のシロキサン重合体同士の間や、架橋型のシロキサン重合体とシリカ系微粒子との間に入り込み易くなり、より緻密な塗膜を形成することができる。
また、バインダー成分中におけるリニア型のシロキサン重合体の含有量は、特に限定されないが、5〜10wt%程度であるのが好ましい。これにより、リニア型のシロキサン重合体の含有量が適度な量となり、上記効果がより顕著となる。
また、バインダー成分中における環状のシロキサンオリゴマーの含有量は、特に限定されないが、1〜15wt%程度であるのが好ましい。これにより、上記効果がより顕著となる。なお、環状のシロキサンオリゴマーの含有量が前記下限値未満の場合には、成膜用塗布液の安定性が低下するおそれがあり、反対に、上記上限値を超える場合には、得られる塗膜の耐久性が低下するおそれがある。
また、環状のシロキサンオリゴマーの環内に含まれる珪素は、3〜5つ程度であるのが好ましい。これにより、環内に形成され得る空気層の大きさをより小さくすることができるため、塗膜の耐久性の低下をより効果的に防止することができる。
シリカ系微粒子としては、特に限定されないが、内部に空洞を有する中空シリカ粒子を用いるのが好ましい。中空シリカ粒子は、SiO2で構成されている。このような中空シリカ粒子は、屈折率が低いため、塗膜1の屈折率を充分に低くすることができ、反射防止膜として好適に利用することができる。また、このような中空シリカ粒子は、コロイド領域の微粒子であり分散性に優れているので、シリカ系微粒子が凝集を効果的に防止または抑制することができる。
シリカ系微粒子の屈折率は、低い程よく、具体的には、1.40以下程度であるのが好ましく、1.35以下であるのがより好ましい。これにより、成膜用塗布液を用いて、より優れた反射防止性能を発揮することのできる塗膜を形成することができる。
次に、前述した成膜用塗布液によって成膜された塗膜1について説明する。
図1に示すように、塗膜1は、例えば、メガネレンズ等のレンズ基板(プラスチックレンズ)100に形成され、反射防止性能を有する反射防止膜として用いられる。
レンズ基板100は、レンズ生地101と、レンズ生地101の表面に形成されたプライマー層102と、プライマー層102の表面に形成されたハードコート層103とを有しており、ハードコート層103の表面に塗膜1が形成されている。なお、レンズ基板100としては、これに限定されず、プライマー層102およびハードコート層103をそれぞれ省略してもよい。
(レンズ生地101)
レンズ生地101としては、特に限定されず、各種プラスチックレンズを用いることができる。より具体的には、レンズ生地101としては、例えば、チオウレタン系プラスチックレンズ基板(セイコーエプソン(株)製、商品名「セイコースーパーソブリン生地」、屈折率1.67)を用いることができる。
プライマー層102は、レンズ生地101とハードコート層103との間に介在し、これらの密着性を向上させるための層である。このプライマー層102は、例えば、レンズ生地101とハードコート層103の双方に密着性を有する(A)成分と、プライマーの屈折率を発現するとともに、フィラーとしてプライマー層102の架橋密度向上に作用して、耐水性、耐候性の向上させるための(B)成分とを含む組成物をレンズ生地101上にコーティングすることで形成することができる。
ハードコート層103は、レンズ生地101の表面を保護するための層である。このようなハードコート層103としては、特に限定されないが、下記の(C)成分および(D)成分を含む組成物をプライマー層102上にコーティングすることで形成することができる。
以上、レンズ基板100の一例について説明した。なお、レンズ基板100上に塗膜1を形成する前に、レンズ基板100に対してプラズマ処理(大気プラズマ)を施すのが好ましい。
塗膜1は、レンズ基板100上に成膜等塗布液を塗布し、乾燥することにより得られる。成膜用塗布液を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、スリットコーター法、転写法等の塗布方法を用いることができる。この中でも、スピンコート法を用いるのが好ましく、これにより、塗膜1の膜厚の均一性や低発塵性が優れたものとなる。
また、塗膜1の熱膨張係数は、レンズ生地(基材)101の熱膨張係数とほぼ等しいのが好ましい。具体的には、レンズ生地101の熱膨張係数をAとしたとき、塗膜1の熱膨張係数は、0.9A〜1.1A程度であるのが好ましく、1.0Aであるのがより好ましい。これにより、塗膜1が形成されたレンズ基板100が昇温した際に、レンズ生地101および塗膜1が同程度膨張するため、塗膜1に不本意な応力が加わるのを抑制することができる。そのため、塗膜1の破損、具体的には、クラックの発生を効果的に防止または抑制することができる。
また、塗膜1の屈折率としては、特に限定されないが、1.40以下であるのが好ましい。これにより、優れた反射防止性能を発揮することができる。
次に、成膜用塗布液の製造方法について説明する。
成膜用塗布液の製造方法は、下記の第1工程と第2工程とを有している。
[第1工程]
第1工程は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物と、下記一般式(2)で表わされるハロゲン化シランとを含むシランカップリング剤に酸性加水分解触媒を加え、pH3.0〜5.0の酸性環境化で、シラン化合物およびハロゲン化シランをそれぞれ加水分解・縮重合することにより、鎖状のシロキサンオリゴマーを含有する液体Aを得る工程である。
(式中、R1、R2は、炭素数1〜16の有機基で少なくとも一方がエポキシ基を含む。Zは加水分解性基。n、pは、0〜2の整数であって、1≦n+p≦3である。)
XmR3 3−mSi−Y−SiR3 3−mXm・・・・・・(2)
(式中、R3は、炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Yは、フッ素原子を1個以上含有する二価の有機基を表し、Xは、加水分解性基を表す。また、mは、1〜3の整数である。)
シラン化合物の含有量は、シランカップリング剤全量に対して0.1重量%以上、50.0重量%以下であるのが好ましく、4.0重量%以上、15.0重量%以下であるのがより好ましい。これにより、塗膜1は、より優れた反射防止性、防汚性、撥水性、耐擦傷性、耐薬品性等を発揮することができる。
前記式(2)で表わされるハロゲン化シランに含まれるフッ素原子の数が前記下限値未満である場合は、ハロゲン化シランの含有量等によっては、上述した効果を充分に発揮することができないおそれがある。反対に、フッ素原子の数が前記上限値を超えると、ハロゲン化シランの含有量等によっては、塗膜の密度が低下するおそれがある。
−CH2CH2(CF2)nCH2CH2−
−C2H4−CF(CF3)−(CF2)n−CF(CF3)−C2H4−
(nは、2〜20の整数である。)
また、前記式(2)中のR3としては、炭素数1〜6のアルキル基であればよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。これらの中でも、R3は、優れた耐擦傷性を得る目的から、メチル基であるのが好ましい。
また、前記式(2)中のmは、1〜3の整数であるが、2または3であるのが好ましく、3であるのがより好ましい。これにより、塗膜1をより高硬度なものとすることができる。
(CH3O)3Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(OCH3)3
(CH3O)3Si−C2H4−C8F16−C2H4−Si(OCH3)3
(C2H5O)3Si−C2H4−C4F8−C2H4−Si(OC2H5)3
(C2H5O)3Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(OC2H5)3
(C2H5O)2(CH3)Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(CH3)(OC2H5)2
pH3.0〜5.0の環境下で、前記式(1)で表されるシラン化合物と前記式(2)で表わされるハロゲン化シランとをそれぞれ加水分解・縮重合すると、3量体である鎖状のシロキサンオリゴマーと、4量体〜6量体程度の環状のシロキサンオリゴマーとが生成され、これらを含む液体Aが得られる。
図2は、シリカゾルのpH値と反応速度との関係を示したグラフである(表面技術50巻2号161〜164頁、「ゾル−ゲル法のやさしい概要とその用途」、土岐元幸著、参照)。
図2に示すように、加水分解反応速度は、pH1〜7にかけて徐々に低くなり、pH7〜14にかけて徐々に高くなる。一方、縮重合反応速度は、pH1〜2にかけて徐々に低くなり、pH2〜7にかけて徐々に高くなり、pH7〜14にかけて再び徐々に低くなる。また、pH4程度で加水分解反応速度と縮重合反応速度がほぼ等しくなる。
なお、上記の反応は、pH3.0〜5.0程度であれば良いが、pH4.0程度であるのがより好ましい。前述したように、pH4.0の環境下では、加水分解反応速度と縮重合反応速度が等しいため、環状のシロキサンオリゴマーの生成を抑えつつ、効率よくより多くの鎖状のシロキサンオリゴマーを生成することができる。
第2工程は、第1工程で得られた液体Aにシリカ系微粒子を加え、pH5.0〜7.0の環境下で液体A中に含まれる鎖状のシロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する工程である。
シリカ系微粒子は、内部に空洞を有する中空シリカ粒子である。この中空シリカ粒子は、SiO2で構成されている。このような中空シリカ粒子は、屈折率が低いため、成膜された塗膜の屈折率を充分に低くすることができ、反射防止膜として好適に利用することができる。また、このような中空シリカ粒子は、コロイド領域の微粒子であり分散性に優れているので、中空シリカ粒子の凝集を効果的に防止または抑制することができる。
このような、シリカ系微粒子は、分散媒に分散させた状態で液体Aに加えることができる。これにより、シリカ系微粒子の凝集を効果的に防止することができるとともに、分散媒との相互効果によって、液体Aとの混合物のpHを塩基性側へシフトさせることができる。
このような分散媒としては、例えば、水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒が挙げられる。具体的には、純水、超純水、イオン交換水などの水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類、アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、iso−オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などが挙げられる。
このような分散液を液体Aに加えることにより、液体A中にシリカ系微粒子を供給するとともに、液体Aと分散液との混合物のpHを5.0〜7.0とし、この環境下で、液体Aに含まれる鎖状のシロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する。
なお、この工程では、特に、架橋型のシロキサン重合体をより多く生成することができる。
そして、例えば、液体Bに必要に応じて溶媒を混合することにより、成膜用塗布液が得られる。
また、バインダー成分として架橋型のシロキサン重合体を含むため、このような成膜用塗布液を用いて成膜された塗膜は、密着性、膜強度、耐擦傷性に優れたものとなる。
塗膜1は、例えば、下記のように形成することができる。
[塗布工程]
まず、レンズ基板100(ハードコート層103)上に成膜用塗布液を塗布する。塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、スリットコーター法、転写法等の塗布方法を用いることができる。この中でも、スピンコート法を用いるのが好ましく、これにより、塗布膜の膜厚の均一性や低発塵性が優れたものとなる。
次に、レンズ基板100上に塗布された成膜用塗布液を、90℃〜110℃程度の温度で1分〜10分程度仮焼成する。仮焼成は、不活性ガスとしての窒素ガス雰囲気下または空気雰囲気下で行うことができる。
次に、仮焼成された成膜用塗布液を本焼成する。本焼成は、110℃〜130℃程度の温度で1時間〜2時間程度行う。本焼成は、不活性ガスとしての窒素ガス雰囲気下または空気雰囲気下で行うことができる。
以上の工程により、成膜用塗布液を用いて成膜された塗膜1が形成される。
以上、本発明の成膜用塗布液および塗膜について説明したが、本発明は、これに限定さに限定されるものではない。
(実施例1)
ステンレス製容器内に、下記式(A)で表されるシラン化合物(アルコキシシラン)2.8重量部に、下記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1×10−3モル/Lの硝酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが4.0の混合液を得た。この混合液を25℃で120時間攪拌して固形分10.0重量%の液体である準備液を得た。
ステンレス製容器内に、上記式(A)で表されるシラン化合物2.8重量部に、上記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1×10−3モル/Lの硝酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが4.0の混合液を得た。この混合液を25℃で120時間攪拌して固形分10.0重量%の液体である準備液を得た。
ステンレス製容器内に、上記式(A)で表されるシラン化合物2.8重量部に、上記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1×10−3モル/Lの硝酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが4.0の混合液を得た。この混合液を25℃で120時間攪拌して固形分10.0重量%の液体である準備液を得た。
ステンレス製容器内に、上記式(A)で表されるシラン化合物2.8重量部に、上記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1×10−3モル/Lの硝酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが4.0の混合液を得た。この混合液を25℃で120時間攪拌して固形分10.0重量%の液体である準備液を得た。
ステンレス製容器内に、上記式(A)で表されるシラン化合物2.8重量部に、上記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1×10−3モル/Lの硝酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが4.0の混合液を得た。この混合液を25℃で120時間攪拌して固形分10.0重量%の液体である準備液を得た。
ステンレス製容器内に、上記式(A)で表されるシラン化合物2.8重量部に、上記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1モル/Lの塩酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが1.0の混合液を得た。この混合液を25℃で5分間攪拌して固形分10.0重量%の液体である準備液を得た。
上述した実施例1〜5および比較例1の成膜用塗布液に、プロピレングリコールモノメチルエーテル420部を加えて希釈してコーティング液を得た。次に、コーティング液をスピンコート法によりレンズ基板上に塗布し、これを100℃で10分間、大気中で仮焼成した。次に、120℃で1時間半、大気中で本焼成した。これにより塗膜を形成した。この塗膜の厚さ(平均厚さ)は、100nmであった。
なお、レンズ基板は、次のようにして得た。
ステンレス製容器内に、メチルアルコール3700重量部、水250重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1000重量部を投入し、十分に攪拌したのち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(アナターゼ型結晶構造、メタノール分散、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)、商品名オプトレイク1120Z U−25・A8)2800重量部を加え撹拌混合した。次いでポリウレタン樹脂2200重量部を加えて攪拌混合した後、さらにシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7604)2重量部を加えて一昼夜撹拌を続けた後、2μmのフィルターでろ過を行い、プライマー組成物を得た。
ステンレス製容器内にブチルセロソルブ1000重量部を取り、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200重量部を加えて十分攪拌した後、0.1モル/リットル塩酸300重量部を添加して一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得た。このシラン加水分解物中にシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製;商品名L−7001)30重量部を加えて1時間撹拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、触媒化成工業(株)製;商品名オプトレイク1120Z 8RU−25、A17)7300重量部を加え2時間撹拌混合した。次いでエポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名デナコールEX−313)250重量部を加えて2時間攪拌した後、鉄(III)アセチルアセトナート20重量部を加えて1時間攪拌し、2μmのフィルターでろ過を行い、ハードコート組成物を得た。
チオウレタン系プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン(株)製、商品名セイコースーパーソブリン生地、屈折率1.67)を準備した。そして、準備したレンズ基材をアルカリ処理(50℃に保たれた2.0規定水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬した後に純水洗浄を行い、次いで25℃に保たれた0.5規定硫酸に1分間浸漬して中和する)し、純水洗浄及び乾燥、放冷を行った。そして、(1)において調製したプライマー組成物中に浸漬し、引き上げ速度30cm/min.で引き上げて80℃で20分焼成し、レンズ基材表面にプライマー層を形成した。そして、プライマー層が形成されたレンズ基材を、(2)において調製したハードコート組成物中に浸漬し、引き上げ速度30cm/min.で引き上げて80℃で30分焼成し、プライマー層上にハードコート層を形成した。その後、125℃に設定したオーブン内で3時間加熱して、プライマー層とハードコート層が形成されたプラスチックレンズを得た。形成されたプライマー層の膜厚は0.5μm、ハードコート層の膜厚は2.5μmであった。
そして、プライマー層とハードコート層が形成されたプラスチックレンズを、プラズマ処理(大気プラズマ)したものを前記レンズ基板として用いた。
(3−1)分子量の測定
実施例1〜5および比較例1の成膜用塗布液を用いて形成した塗膜について、それぞれ、バインダー中に含まれる架橋型のシロキサン重合体の分子量を測定した。なお、以下では、説明の便宜上、実施例1の成膜用塗布液を用いて形成した塗膜を「実施例1の塗膜」と言い、実施例2の成膜用塗布液を用いて形成した塗膜を「実施例2の塗膜」と言い、実施例3の成膜用塗布液を用いて形成した塗膜を「実施例3の塗膜」と言い、実施例4の成膜用塗布液を用いて形成した塗膜を「実施例4の塗膜」と言い、実施例5の成膜用塗布液を用いて形成した塗膜を「実施例5の塗膜」と言い、比較例1の成膜用塗布液を用いて形成した塗膜を「比較例1の塗膜」と言う。
まず、成膜用塗布液1gをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、1mlのTHF溶液(不溶分を含む)を得た。このTHF溶液を遠心分離専用のサンプル瓶に注入し、遠心分離機で、2000rpm、5分間の条件で遠心分離を行い、その上澄み液をサンプレップLCR13−LH(孔径:0.5μm)でろ過し、ろ液を得た。
実施例1〜5および比較例1の塗膜を、それぞれ、ラマン分光法で解析した。なお、この解析は、ラマン分光測定装置(株式会社東京インスツルメンツ製、商品名「Nanofinder30」)を用いて、325nmのレーザー光(He−Cdレーザ)を準備した塗膜の表面に照射し、バックスキャッタリング測定にて行った。そして、第1領域〜第3領域についてそのピーク強度の積分値I1〜I3を得た。測定したI1〜I3の数値を表1に示す。
また、第1領域は、環状(員環)構造に対するピーク群が存在する領域である。そのため、第1領域に存在するピークの強度(積分値I1)が大きいほど、前述した環状のシロキサンオリゴマーが多く含まれることとなる。
なお、積分する際のベースラインは、スペクトル上の各領域の両端(最小値と最大値)同士を結んだ直線として設定した。すなわち、第1領域であれば、スペクトル上の波数430に当たる点と、波数648に当たる点を結んだ直線として設定される。第2領域、第3領域についても同様である。
(4−1)耐温水性
眼鏡フレーム形状に合わせてレンズ基板(実施例1〜5の塗膜および比較例1の塗膜)を玉摺り加工した後、60℃の温水中に20日間浸漬させた。その後レンズを温水中から取り出して水冷し、水滴を擦り取った後、目視で塗膜の膜剥がれの状態を下記のA〜Dの基準で評価した。その結果を下記の表2に示す。
A:全く膜剥がれがない(剥がれの面積率0%)
B:ほとんど膜剥がれがない(剥がれの面積率1〜19%)
C:やや剥がれが発生(剥がれの面積率20〜49%)
D:膜剥がれが発生(剥がれの面積率50%以上)
実施例1〜5および比較例1の塗膜を光学顕微鏡(オリンパス株式会社製 システム生物顕微鏡 BX50)を用いて観察した。その結果を図3に示す。なお、図3中の(A)が実施例1を示し、(B)が比較例1を示す。
図3から明らかなように、実施例1の塗膜は、比較例1の塗膜と比較して白く見える点Aの数が極めて少ない。具体的には、0.71mm(縦)×0.95mm(横)の範囲にて、実施例1の塗膜中に発生した点Aが118個であり、比較例1の塗膜中に発生した点Aが727個であった。すなわち、実施例1の塗膜では、比較例1の塗膜と比較して点Aが83.8%減少した。
ここで、点Aは、シリカ粒子が凝集した二次粒子である。また、点Aは、比較的大きく、その一部が塗膜の表面から外部に突出している場合が多い。そのため、二次粒子は、塗膜を布等で拭いた拍子に塗膜から剥がれ落ちる可能性が高い。このような二次粒子の剥がれ落ちが生じると、その部分からクラックが発生したり、傷が広がったりし、また、液体等が膜内に侵入し易くなる。すなわち、二次粒子が多いほど、耐熱性や耐傷性が低下する。したがって、実施例1の塗膜は、比較例1の塗膜と比較して耐熱性および耐傷性に優れていることが明らかである。
Claims (10)
- 架橋型のシロキサン重合体と、鎖状のシロキサンオリゴマーとを有するバインダー成分と、
前記バインダー成分中に分散したシリカ系微粒子とを有し、
前記鎖状のシロキサンオリゴマーが前記シリカ系微粒子の表面にグラフト化しており、
前記架橋型のシロキサン重合体の分子量が2500以上、15000以下であることを特徴とする成膜用塗布液。 - 前記バインダー成分中の前記架橋型のシロキサン重合体の含有量は、60〜80wt%である請求項1に記載の成膜用塗布液。
- 前記バインダー成分には、さらに、リニア型のシロキサン重合体が含まれている請求項1に記載の成膜用塗布液。
- 前記バインダー成分中の前記リニア型のシロキサン重合体の含有量は、20〜30wt%である請求項3に記載の成膜用塗布液。
- 前記バインダー成分には、さらに、環状のシロキサンオリゴマーが含まれている請求項1ないし4のいずれかに記載の成膜用塗布液。
- 前記バインダー成分中の前記環状のシロキサンオリゴマーの含有量は、1〜15wt%である請求項5に記載の成膜用塗布液。
- 前記シリカ系微粒子は、中空シリカ粒子である請求項1ないし6のいずれかに記載の成膜用塗布液。
- 反射防止膜を成膜するための塗布液である請求項1ないし7のいずれかに記載の成膜用塗布液。
- 少なくとも下記一般式(1)で表されるシラン化合物および下記一般式(2)で表されるハロゲン化シランの少なくとも一方を含むシランカップリング剤に酸性加水分解触媒を加え、pH3.0〜5.0の環境下で前記シラン化合物および前記ハロゲン化シランの少なくとも一方を加水分解・縮重合することにより、鎖状のシロキサンオリゴマーを含有する液体Aを得る第1工程と、
前記第1工程で得られた前記液体Aにシリカ系微粒子を加え、pH5.0〜7.0の環境下で前記シロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する第2工程とにより得られる請求項1ないし8のいずれかに記載の成膜用塗布液。
R1 nR2 pSiZ4−(n+p)・・・・・・(1)
(式中、R1、R2は、炭素数1〜16の有機基で少なくとも一方がエポキシ基を含む。Zは加水分解性基。n、pは、0〜2の整数であって1≦n+p≦3である。)
XmR3 3−mSi−Y−SiR3 3−mXm・・・・・・(2)
(式中、R3は炭素数1〜6の一価炭化水素基。Yはフッ素原子を1個以上含有する二価有機基。Xは加水分解性基。mは1〜3の整数である。) - 請求項1ないし9のいずれかに記載の成膜用塗布液を用いて成膜されたことを特徴とする塗膜。
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