ところで、プラズマジェット点火プラグにおいて一層優れた着火性を得るためには、キャビティ部の開口から噴出するプラズマ(プラズマフレーム)の噴出長を増大させるとともに、プラズマフレームをより大きくする(太くする)ことが考えられる。ここで、より太いプラズマフレームを得るためには、キャビティ部の開口径を増大させる必要があるが、キャビティ部の開口径を増大させると、プラズマフレームの噴出長が減少することとなってしまう。従って、プラズマフレームを太くしつつ、十分な噴出長を得るためには、間隙に投入する電力をより高エネルギーなものとする必要が生じる。ところが、高エネルギーの電力を投入すると、中心電極が消耗しやすくなってしまい、耐久性の低下を招いてしまうおそれがある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、耐久性の低下を招くことなく、プラズマフレームの噴出長及び太さを増大させることができ、着火性を飛躍的に向上させることができる点火装置及び点火システム並びにプラズマジェット点火プラグを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
構成1.本構成の点火装置は、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、先端面が前記絶縁体の先端よりも前記軸線方向後端側に位置するように前記軸孔内に挿設される主電極と、前記絶縁体の先端よりも前記軸線方向先端側に位置するように配置されるとともに前記主電極との間に第1間隙を形成する主接地電極と、前記軸孔の内周面と前記主電極の先端面とにより形成されるキャビティ部とを有するプラズマジェット点火プラグ用の点火装置であって、
前記プラズマジェット点火プラグを燃焼装置に取付けた状態において、自身の先端部が前記主接地電極よりも前記軸線方向先端側に位置する補助電極と、
前記補助電極との間で第2間隙を形成する補助接地電極と、を備え、
前記第2間隙は、前記軸線上を通るとともに、前記第1間隙に印加される電圧よりも低い電圧が印加されることを特徴とする点火装置。
上記構成1によれば、点火装置には、補助電極及び補助接地電極が設けられており、両電極間に形成された第2間隙が、主接地電極よりも先端側の軸線上を通るように構成されている。すなわち、キャビティ部の開口から噴出するプラズマフレームが、第2間隙に入り込むように構成されている。そして、第2間隙には電圧が印加されており、第2間隙にイオン化された気体であるプラズマフレームが入り込むことで、補助電極及び補助接地電極間が導通状態となる。これにより、プラズマフレームにエネルギーを与えることができ、プラズマフレームを増幅させることができる。その結果、プラズマフレームの噴出長及び太さを増大させることができ、着火性を飛躍的に向上させることができる。
また、着火性を向上させるにあたって、プラズマ生成時の投入エネルギーを増大させる必要がないため、主電極や主接地電極の消耗を抑制することができる。さらに、第2間隙に印加される電圧は、プラズマ生成時に第1間隙に印加される電圧よりも低くされている。そのため、補助電極や補助接地電極の消耗を抑制することができ、主電極等の消耗抑制が図られることと相俟って、優れた耐久性を実現することができる。
尚、火花放電により着火する点火プラグの分野においては、主高圧電極と主接地電極と補助電極とを備え、主高圧電極及び主接地電極間に形成された放電領域で火花放電を生じさせる前に、補助電極により前記放電領域において予め電界又は磁界を生成しておき、火花放電により生成された火炎に含まれるイオン又は電子が前記電界又は磁界の領域内を移動することで、火炎を拡大させる技術が提案されている(特開2007−32349号公報参照)。これに対して、本願は、上述の通り、第2間隙に電圧が印加されており、噴出したプラズマフレームにより補助電極及び補助接地電極間を導通状態とすることで、プラズマフレームにエネルギーを与え、プラズマフレームを増幅させるものである。従って、本願と前記技術とは、構成及び作用の面で大きく相違しており、技術的思想が異なる。
構成2.本構成の点火装置は、上記構成1において、前記補助接地電極は、前記主接地電極に対して電気的に接続されることを特徴とする。
上記構成2によれば、補助接地電極が主接地電極に対して電気的に接続されている。そのため、両接地電極をそれぞれ異なるラインで接地させる場合と比較して、装置の簡素化を図ることができる。
構成3.本構成の点火装置は、上記構成1又は2において、前記軸線に垂直な面に前記キャビティ部の開口を投影したときの開口投影像と、前記主接地電極を投影したときの主接地電極投影像を除いた領域とが重なる領域に、前記補助電極の投影像が重なることを特徴とする。
上記構成3によれば、軸線方向先端側から見たときに、プラズマの噴出口に対して補助電極の少なくとも一部がかかるように構成されている。従って、第2間隙に対してプラズマフレームがより確実に入り込むこととなり、プラズマフレームをより確実に増幅させることができる。
構成4.本構成の点火装置は、上記構成1又は2において、前記軸線に垂直な面における、前記主接地電極の投影像に対して、前記補助電極の投影像の前記軸線に垂直な方向の先端が重なることを特徴とする。
上記構成4によれば、軸線方向先端側から見たときに、プラズマの噴出口に対して補助電極がかからないように構成されている。従って、補助電極によりプラズマフレームの噴出が阻害されてしまうといった事態をより確実に防止することができ、プラズマフレームの噴出長をより効果的に増大させることができる。
構成5.本構成の点火装置は、上記構成1又は2において、前記軸線に垂直な面における、前記キャビティ部の開口の投影像と前記主接地電極の投影像とが離間した領域を有しており、前記補助電極の投影像の前記軸線に垂直な方向の先端が、前記離間した領域に位置することを特徴とする。
上記構成5によれば、軸線方向先端側から見たときに、キャビティ部の開口よりも外周側に主接地電極が配置されており、キャビティ部の開口と主接地電極との間に、補助電極の先端が位置するように構成されている。従って、第2間隙に対してプラズマフレームをより確実に入り込ませることができるとともに、補助電極によるプラズマフレームの噴出阻害を極力抑制することができる。その結果、着火性の一層の向上を図ることができる。
構成6.本構成の点火システムは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、先端面が前記絶縁体の先端よりも前記軸線方向後端側に位置するように前記軸孔内に挿設される主電極と、前記絶縁体の先端よりも前記軸線方向先端側に位置するように配置されるとともに前記主電極との間に第1間隙を形成する主接地電極と、前記軸孔の内周面と前記主電極の先端面とにより形成されるキャビティ部とを有するプラズマジェット点火プラグと、
上記構成1乃至5のいずれかに記載の点火装置とを備えることを特徴とする。
上記構成6によれば、基本的に上記構成1等と同様の作用効果が奏されることとなる。
構成7.本構成の点火システムは、上記構成6において、前記主接地電極は、前記補助接地電極を兼ねることを特徴とする。
上記構成7によれば、補助接地電極としての機能を主接地電極が有することとなり、補助接地電極を省略することができる。そのため、点火プラグの構成をより簡素化することができ、製造コストの増大抑制等を図ることができる。
構成8.本構成の点火システムは、上記構成6又は7において、前記補助電極、及び、前記補助接地電極は、前記プラズマジェット点火プラグに設けられることを特徴とする。
補助電極や補助接地電極をプラズマジェット点火プラグとは別体で設ける場合には、点火プラグの構成を簡素化できるものの、補助電極等を設けるために、燃焼装置の構成(エンジンレイアウト等)を変更する必要が生じてしまう。
この点、上記構成8によれば、プラズマジェット点火プラグに補助電極及び補助接地電極が設けられている。従って、燃焼装置の構成を変更する必要がなく、従前の燃焼装置に対して点火システムを適用することができる。
構成9.本構成のプラズマジェット点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
先端面が前記絶縁体の先端よりも前記軸線方向後端側に位置するように前記軸孔内に挿設される主電極と、
前記絶縁体の先端よりも前記軸線方向先端側に位置するように配置されるとともに前記主電極との間に第1間隙を形成する主接地電極と、
前記軸孔の内周面と前記主電極の先端面とにより形成されるキャビティ部とを有するプラズマジェット点火プラグであって、
自身の先端部が前記主接地電極よりも前記軸線方向先端側に位置する補助電極と、
前記補助電極との間で第2間隙を形成する補助接地電極とを備え、
前記第2間隙は、前記軸線上を通るとともに、前記補助電極は、前記主接地電極及び前記主電極から絶縁された状態で配置されることを特徴とする。
上記構成9によれば、上記構成8と同様の作用効果が奏されることとなる。
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、プラズマジェット点火プラグ(以下、「点火プラグ」と称す)1と、電圧印加部41、電力投入部51、及び、増幅用電圧印加部61を具備する点火装置71とを備えた点火システム101の概略構成を示すブロック図である。尚、図1では、点火プラグ1を1つのみ示しているが、燃焼装置としての内燃機関ENには複数の気筒が設けられており、各気筒に対応して点火プラグ1が設けられている。そして、各点火プラグ1ごとに電圧印加部41や電力投入部51、増幅用電圧印加部61が設けられている。
まず、点火システム101の説明に先立って、点火プラグ1の構成を説明する。
図2は、点火プラグ1を示す一部破断正面図である。尚、図2では、点火プラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側を点火プラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
点火プラグ1は、筒状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれよりも細径に形成された脚長部13とを備えている。加えて、絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている。そして、中胴部12と脚長部13との連接部にはテーパ状の段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
さらに、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されており、当該軸孔4の先端側には主電極5が挿入、固定されている。主電極5は、熱伝導性に優れる銅や銅合金等からなる内層5A、及び、ニッケル(Ni)を主成分とするNi合金〔例えば、インコネル(商標名)600や601等〕からなる外層5Bを備えている。さらに、主電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端面が絶縁碍子2の先端面よりも軸線CL1方向後端側に配置されている。加えて、主電極5のうち、その先端から軸線CL1方向後端側に少なくとも0.3mmまでの部位には、Ni、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及び、タングステン(W)のうち少なくとも一種を含有する金属からにより形成された電極チップ5Cが設けられている。
また、軸孔4の後端側には、絶縁碍子2の後端から突出した状態で端子電極6が挿入、固定されている。
さらに、主電極5と端子電極6との間には、円柱状のガラスシール層9が配設されている。当該ガラスシール層9により、主電極5と端子電極6とがそれぞれ電気的に接続されるとともに、主電極5及び端子電極6が絶縁碍子2に固定されている。
加えて、前記主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面には点火プラグ1を燃焼装置(例えば、内燃機関や燃料電池改質器等)の取付孔に取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15の後端側の外周面には座部16が形成され、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を前記燃焼装置に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。
また、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するためのテーパ状の段部22が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3の後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部22に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって主体金具3に固定されている。尚、絶縁碍子2及び主体金具3双方の段部14,22間には、円環状の板パッキン23が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材24,25が介在され、リング部材24,25間にはタルク(滑石)26の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン23、リング部材24,25及びタルク26を介して絶縁碍子2を保持している。
また、図3に示すように、主体金具3の先端内周面には、絶縁碍子2の先端よりも軸線CL1方向先端側に位置するようにして、円板状をなす主接地電極27が接合されている。主接地電極27は、Ni、Ir、Pt、及び、Wのうち少なくとも一種を含有する金属により構成されており、自身の中央に板厚方向に貫通する貫通孔27Hを有している。そして、主電極5の先端部(電極チップ5C)と主接地電極27の内周部分との間には、第1間隙29が形成されている。
加えて、絶縁碍子2の先端部には、軸孔4の内周面と主電極5の先端面とにより形成された円柱状の空間であるキャビティ部28が設けられている。当該キャビティ部28内には、前記第1間隙29が位置するとともに、キャビティ部28は貫通孔27Hを介して外部へと連通されている。そして、第1間隙29に電圧を印加した上で第1間隙29に電力を投入することにより、キャビティ部28においてプラズマが生成され、当該プラズマが貫通孔27Hを通って外部へと噴出するようになっている。尚、本実施形態では、貫通孔27Hの先端の内径が、キャビティ部28の先端の内径よりも大きくされており、主接地電極27によるプラズマの噴出阻害が生じないようになっている。
さらに、本実施形態では、自身の先端部が主接地電極27よりも先端側に位置する棒状の補助電極31が設けられている。補助電極31は、図2に示すように、工具係合部19から座部16にかけての外周面に設けられた窪みと、主体金具3のうち座部16よりも先端側の部位に設けられた挿通孔とを通るようにして配置されている。また、補助電極31の先端側は、主体金具3の先端面から突出しており、補助電極31のうち主体金具3から突出する部位の略中間部分は、軸線CL1側へと曲げ返されている。
さらに、本実施形態では、補助電極31のうち少なくとも前記主体金具3の窪みや挿通孔を通る部位の外周は、絶縁性材料からなる筒状の絶縁被膜(図示せず)で覆われている。そのため、補助電極31は、主体金具3から絶縁された状態となっており、ひいては主体金具3に接合された主接地電極27からも絶縁された状態となっている。また、補助電極31は、絶縁碍子2を介することで、主電極5からも絶縁された状態となっている。
加えて、補助電極31の先端部(補助電極31のうち後述する第2間隙33を形成する部位)は、Ni、Ir、Pt、及び、Wのうち少なくとも一種を含有する金属により構成されている。
また、図3に示すように、主体金具3の先端部には、棒状の補助接地電極32が接合されている。補助接地電極32は、自身の略中間部分が軸線CL1側へと曲げ返され、自身の先端面が補助電極31の先端面と対向するように構成されている。そして、補助電極31の先端部と補助接地電極32との間には第2間隙33が形成されており、当該第2間隙33は、軸線CL1上を通る位置に形成されている。加えて、軸線CL1に沿った主体金具3の先端面から第2間隙33の中心までの距離が所定値(例えば、10mm)以下とされており、噴出したプラズマが第2間隙33に至るように構成されている(すなわち、キャビティ部28からプラズマが噴出した際には、噴出したプラズマの少なくとも一部が第2間隙33を通るように構成されている)。さらに、第2間隙33の大きさは、所定数値範囲内(例えば、0.5mm以上5.0mm以下)とされており、補助接地電極32のうち第2間隙33を形成する部位は、Ni、Ir、Pt、及び、Wのうち少なくとも一種を含有する金属により構成されている。
本実施形態において、主体金具3は主接地電極27に対して電気的に接続されているため、主体金具3に接合される補助接地電極32は、主接地電極27に対して電気的に接続されている。また、点火プラグ1を内燃機関ENに取付けた際には、図4に示すように、接地状態のエンジンヘッドEHに対してガスケット18を介して主体金具3が接触する。そのため、点火プラグ1を内燃機関ENに取付けた状態においては、主体金具3及びこれに接合される主接地電極27及び補助接地電極32が接地されることとなる。
尚、図5に示すように、補助接地電極32を省略し、主接地電極27が補助接地電極を兼ねるように構成してもよい。この場合には、補助接地電極を兼ねる主接地電極27と補助電極31との間に第2間隙33が形成されることとなる。
さらに、本実施形態では、キャビティ部28、主接地電極27、及び、補助電極31の相対位置関係が次のように設定されている。すなわち、図6に示すように、軸線CL1と垂直な投影面PSに、軸線CL1に沿ってキャビティ部28の開口を投影したときの開口投影像P1と、投影面PSに対して軸線CL1に沿って主接地電極27を投影したときの主接地電極投影像P2とが離間しており、両投影像P1,P2の間には、領域P3(図6中、散点模様を付した部位)が形成されている。そして、投影面PSに対して軸線CL1に沿って補助電極31を投影したときの補助電極投影像P4(図6中、斜線を付した部位)のうち、軸線CL1と垂直な方向の先端(軸線CL1に最も接近する部位)PXが前記領域P3に位置している。すなわち、軸線CL1方向先端側から見たとき、キャビティ部28の開口と主接地電極27の内周面先端との間に、補助電極31の先端が位置するように構成されている。
上述した点火プラグ1においては、電圧印加部41から第1間隙29に高電圧を印加することにより火花放電を生じさせた上で、電力投入部51から第1間隙29に電力を投入し、放電状態を遷移させることで、キャビティ部28にプラズマを生成するとともに、貫通孔27Hからプラズマを噴出させる。また、増幅用電圧印加部61から第2間隙33に対して電圧が印加されており、貫通孔27Hから噴出したプラズマフレーム(イオン化した気体)が第2間隙33に入ると、第2間隙33を形成する補助電極31及び補助接地電極32間が導通状態となり、その結果、プラズマフレームにエネルギーが与えられ、プラズマフレームが増幅される。
そこで次に、電圧印加部41、電力投入部51、及び、増幅用電圧印加部61について説明する。
図1に示すように、電圧印加部41は、電力投入部51から自身に対する電流の流入を防止するためのダイオード46、及び、ノイズ抑制用の抵抗47を介して点火プラグ1に対して電気的に接続されている。また、電圧印加部41は、一次コイル42、二次コイル43、コア44、及び、イグナイタ45を備えている。
一次コイル42は、前記コア44を中心に巻回されており、その一端が電力供給用のバッテリVAに接続されるとともに、その他端がイグナイタ45に接続されている。また、二次コイル43は、前記コア44を中心に巻回されており、その一端が一次コイル42及びバッテリVA間に接続されるとともに、その他端が点火プラグ1に接続されている。
加えて、イグナイタ45は、所定のトランジスタにより形成されており、所定のECU(電子制御装置)81から入力される通電信号に応じて、バッテリVAから一次コイル42に対する電力の供給及び供給停止を切り替える。点火プラグ1に高電圧を印加する場合には、バッテリVAから一次コイル42に電流を流し、前記コア44の周囲に磁界を形成した上で、ECU81からの通電信号をオンからオフに切り替えることにより、バッテリVAから一次コイル42に対する通電を停止する。通電の停止により、前記コア44の磁界が変化し、二次コイル43に負極性の高電圧(例えば、5kV〜30kV)が発生する。この高電圧が点火プラグ1に印加されることで、第1間隙29において火花放電を発生させることができる。
加えて、前記電力投入部51は、ダイオード53とインダクタ54とを介して点火プラグ1に接続されており、電源装置PSと、コンデンサ52とを備えている。
電源装置PSは、負極性の高電圧(例えば、500V〜1500V)を発生可能な電源回路であり、点火プラグ1及びコンデンサ52に対して電気的に接続されている。また、ECU81により、電源装置PSからコンデンサ52に対する充電タイミングが制御されており、電力投入部51(コンデンサ52)から点火プラグ1に対する電力の投入前(点火プラグ1における火花放電の前)に、コンデンサ52に対する充電が行われるようになっている。
加えて、コンデンサ52は、一端が電源装置PS及びインダクタ54間に接続されるとともに、自身の他端が接地されている。そして、点火プラグ1の第1間隙29にて火花放電が生じ、主電極5及び主接地電極27間が絶縁破壊されると、コンデンサ52に蓄積された電力が点火プラグ1へと投入され、キャビティ部28においてプラズマが生成されるようになっている。
さらに、増幅用電圧印加部61は、定電圧を発生可能な電源回路であり、点火プラグ1の補助電極31に対して接続されている。そして、増幅用電圧印加部61により、第1間隙29に印加される電圧よりも低い電圧(本実施形態では、10V〜1kV)が第2間隙33に常時印加されている。本実施形態では、上述の通り、第2間隙33の大きさが所定数値以上(例えば、0.5mm以上)とされているため、常には補助電極31及び補助接地電極32間が絶縁状態とされている。一方で、第2間隙33の大きさが所定数値以下(例えば、5.0mm以下)とされているため、第2間隙33にプラズマフレーム(イオン化した気体)が入り込んだ場合には、両電極31,32間が導通状態となり、プラズマフレームにエネルギーが与えられるようになっている。
以上詳述したように、本実施形態によれば、点火装置71には、補助電極31及び補助接地電極32が設けられており、両電極31,32間に形成された第2間隙33に対して、キャビティ部28の開口から噴出するプラズマフレームが入り込むように構成されている。そして、第2間隙33には電圧が印加されており、第2間隙33にプラズマフレームが入り込むことで、補助電極31及び補助接地電極32間が導通状態となる。これにより、プラズマフレームにエネルギーを与えることができ、プラズマフレームを増幅させることができる。その結果、プラズマフレームの噴出長及び太さを増大させることができ、着火性を飛躍的に向上させることができる。
また、着火性を向上させるにあたって、プラズマ生成時の投入エネルギーを増大させる必要がないため、主電極5や主接地電極27の消耗を抑制することができる。さらに、第2間隙33に印加される電圧は、プラズマ生成時に第1間隙29に印加される電圧よりも低くされている。そのため、補助電極31や補助接地電極32の消耗を抑制することができ、主電極5等の消耗抑制が図られることと相俟って、優れた耐久性を実現することができる。
加えて、補助接地電極32が主接地電極27に対して電気的に接続されているため、点火装置71の簡素化を図ることができる。
さらに、軸線CL1方向先端側から見たときに、キャビティ部28の開口よりも外周側に主接地電極32が配置されており、キャビティ部28の開口と主接地電極27との間に、補助電極31の先端が位置するように構成されている。従って、第2間隙33に対してプラズマフレームをより確実に入り込ませることができるとともに、補助電極31によるプラズマフレームの噴出阻害を極力抑制することができる。その結果、着火性の一層の向上を図ることができる。
さらに、点火プラグ1に補助電極31及び補助接地電極32が設けられているため、燃焼装置の構成を変更する必要がなく、従前の燃焼装置に対して点火システム101を適用することができる。
また、主接地電極27が補助接地電極を兼ねるように構成した場合には、点火プラグ1の構造をより簡素化することができ、製造コストの増大抑制等を図ることができる。
加えて、本実施形態によれば、第2間隙33に電圧が常時印加されており、プラズマフレームの噴出を契機として、プラズマフレーム(イオン化した気体)により補助電極31及び補助接地電極32間が導通状態となり、プラズマフレームにエネルギーを与えることができる。従って、第2間隙33に対する電圧の印加タイミングを制御するための機器等が不要となり、点火装置71の簡素化を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、軸線CL1方向先端側から見たときに、キャビティ部28の開口と主接地電極27の内周面先端との間に、補助電極31の先端が位置するように構成されているが、図7に示すように、軸線CL1方向先端側から見たときに、キャビティ部28の開口(プラズマの噴出口)上に補助電極31の先端が位置するように構成してもよい。また、図8に示すように、貫通孔27Hの先端内径がキャビティ部28の開口径以下とされている場合(すなわち、プラズマの噴出口が貫通孔27Hの先端となる場合)には、軸線CL1方向先端側から見たときに、貫通孔27H上に補助電極31の先端が位置するように構成してもよい。すなわち、図9に示すように、前記開口投影像P1と、前記投影面PS上の全領域から前記主接地電極投影像P2を除いた領域P5とが重なる領域P6(図9中、散点模様を付した部位)に、前記補助電極投影像P4(図9中、斜線を付した部位)が重なるように構成してもよい。この場合には、噴出したプラズマフレームをより確実に第2間隙33に入り込ませることができ、プラズマフレームをより一層確実に増幅させることができる。
また、図10に示すように、軸線CL1方向先端側から見たときに、主接地電極27上に、補助電極31の先端が位置するように構成してもよい。すなわち、図11に示すように、前記投影面PSにおいて、主接地電極投影像P2(図11中、散点模様を付した部位)に対して、前記補助電極投影像P4(図11中、斜線を付した部位)の先端PXが重なるように構成してもよい。この場合には、補助電極31によりプラズマフレームの噴出が阻害されてしまうといった事態をより確実に抑制することができ、プラズマフレームの噴出長をより効果的に増大させることができる。
(b)上記実施形態では、点火プラグ1が補助電極31を有するように構成されているが、図12に示すように、点火プラグ1を燃焼装置ENに取付けた状態において、自身の先端部が主接地電極27よりも軸線CL1方向先端側に位置する補助電極91を点火プラグ1とは別体で設けることとしてもよい。この場合には、点火プラグ1の構成を簡素化することができ、製造コストの低減等を図ることができる。尚、図12においては、点火プラグ1に設けられた主接地電極27が補助接地電極を兼ねる構成とされているが、補助接地電極を点火プラグ1と一体又は別体で設けることとしてもよい。
(c)上記実施形態において、増幅用電圧印加部61は、定電圧を発生可能な電源回路により構成されているが、図13に示すように、増幅用電圧印加部92を、コンデンサ93とこれを充電可能な電源装置PS2とにより構成し、プラズマフレームの噴出時に、コンデンサ93により蓄えられた電荷により、補助電極31及び補助接地電極32間を導通状態とするように構成してもよい。このように構成することで、第2間隙33に定電圧を印加する場合と比較して、第2間隙33に対して過度に大きな電圧が加わってしまうことを抑制でき、補助電極31や補助接地電極32の消耗をより効果的に抑制することができる。尚、電源装置PS2を設けることなく、電力投入部51に設けられた電源装置PSにより、コンデンサ93の充電を行うこととしてもよい。
(d)上記実施形態では、プラズマ生成用の電力を点火プラグ1へと投入すべく、電力投入部51が設けられている。これに対して、図14に示すように、電力投入部51に代えて、電圧印加部41から点火プラグ1に対する電圧の印加ラインに、点火プラグ1と並列にコンデンサ94を接続し、電圧印加部41からの出力電圧により、第1間隙29にて火花放電を生じさせるとともに、コンデンサ94を充電し、コンデンサ94に蓄えられた電荷を第1間隙29に投入することで、第1間隙にてプラズマを生成することとしてもよい。この場合には、電圧印加部41からの出力電圧により、プラズマ生成のための出力を得ることができるため、電源装置PSを設ける必要がなくなり、装置の小型化や製造コストの抑制を図ることができる。さらに、電力投入部51から電圧印加部41側への電流流入を防止するためのダイオードを設ける必要がなくなり、製造コストの更なる抑制を図ることができる。また、ダイオードを設けることなく構成すれば、ダイオードの存在によってコンデンサから供給される電力の共振が抑制され、点火プラグ1への投入エネルギーが低減してしまうという事態が発生しなくなる。従って、点火プラグ1への投入エネルギーを増大させることができ、着火性をより一層向上させることができる。
(e)上記実施形態では、点火プラグ1において主接地電極27及び補助接地電極32が電気的に接続されているが、点火プラグ1において両電極27,32を電気的に独立させることとしてもよい。従って、例えば、点火プラグ1とは別体で補助接地電極を設けた場合には、主接地電極27が接地されるラインとは異なるラインで、補助接地電極を接地させることとしてもよい。
(f)上記実施形態において、主電極5の先端部や補助電極31の先端部、主接地電極27等が、NiやIr等を含有する金属により構成されているが、主電極5の先端部や補助電極31の先端部等を前記金属とは異なる金属により構成してもよい。また、主電極5や補助電極31、補助接地電極32の全体をNiやIr等を含有する金属により構成してもよいし、主接地電極27の一部(例えば、主電極5との間で第1間隙29を形成する部位)を、NiやIr等を含む金属により構成してもよい。
(g)上記実施形態では、各点火プラグ1ごとに電圧印加部41や電力投入部51、増幅用電圧印加部61が設けられているが、各点火プラグ1ごとに電圧印加部41等を設けることなく、電圧印加部41等からの電力をディストリビュータを介して各点火プラグ1に供給することとしてもよい。
(h)上記実施形態では、増幅用電圧印加部61から第2間隙33に対して常時電圧が印加されているが、プラズマの生成タイミングに合わせて増幅用電圧印加部61から第2間隙33に対して電圧を印加してもよい。