図1は、SELEX核酸リガンド選択工程の略図である。
図2は、GPVIに対する核酸リガンドを同定するために実行したSELEX繰り返しのための選択条件を示している。
図3は、GPVIに対する核酸リガンドを濃縮し、トレース32Pで末端をラベルしたライブラリの結合曲線を示している。
図4A−図4Bは、第10周目の選抜後の「E/F」連続選抜における個々のクローンについて同定された一次ランダム領域由来配列、及び、第10周目の選抜後の「E2」連続選抜における個々のクローンについて同定された一次ランダム領域由来配列を示している。
図5は、GPVI結合に必要な予想される最小限の一次配列、及び、選択手順において同定された配列について予想される保存二次構造を示している。「L」は環を表し、「S」は軸部を表す。
図6は、GPVIに対するEF−3 GPVIリガンドの結合を表したグラフであり、タンパク相互作用中にEF−3の3’固定領域を覆い隠すように、3’プライマーをEF−3にアニーリングさせているものと、させていないものとを示している。
図7は、親GPVIリガンドであるEF−2及びEF−3と比較した、短縮されたリガンドのGPVIに対する結合曲線のグラフである。
図8は、EF−3及びEF−31 GPVIリガンド短縮変異体のいくつかの短縮の配列及び予想二次構造を示している。
図9は、短縮された配列であるEF−3 T2及びEF−2 T2 GPVIリガンドの予想二次構造及び不活性な点変異の位置を示している。
図10は、GPVI核酸リガンド変異体についてのGPVI結合分析の結果を示している。
図11は、様々なGPVI核酸リガンドの予想二次構造及び糖置換を示している。
図12は、GPVI核酸リガンド変異体についてのGPVI結合分析の結果を示している。
図13A及び図13Bは、核酸配列中の2個のヌクレオチドの間に組み込まれたヘキサエチレングリコールスペーサホスホラミダイト及びスペーサホスホラミダイトを示している。
図14A及び図14Bは、リンカーを介してGPVIリガンドに結合することができるPEG部位、及び、結合した部位の構造を示している。
図15は、EF−2及びEF−3 GPVIリガンド短縮変異体を用いたときに、コラーゲンによって誘導された血小板凝集を、不活性化点変異を含む変異体と比較して、コントロールに対する割合として表したグラフである。
図16は、選択したGPVI核酸リガンドの濃度を変化させたときに、コラーゲンによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対するパーセンテージとして表したグラフである。
図17は、選択したGPVI核酸リガンドの濃度を変化させたときに、コラーゲン関連ペプチドによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対するパーセンテージとして表したグラフを示している。
図18は、選択したGPVI核酸リガンドの濃度を変化させたときに、コラーゲンによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対するパーセンテージとして表したグラフを示している。
図19は、選択したGPVI核酸リガンドの濃度を変化させたときに、コラーゲン関連ペプチドによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対するパーセンテージとして表したグラフを示している。
図20は、血小板を濃縮した血漿においてGPVIリガンドRB571の濃度を変化させたときに、コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対する割合として表したグラフを示している。
図21は、全血液流に暴露させたコラーゲン塗布面上の血小板蓄積に対するGPVI核酸リガンドの効果を、不活性なコントロールリガンドを最大反応%として表したグラフである。
図22は、血小板レセプタであるP2Y1、P2Y12及びPAR−1と比較した、GPVIに対するGPVIリガンドRB571の結合特異性を表したグラフを示している。
図23は、血小板レセプタGP1bα−フォンウィルブランド因子相互作用又は血小板トロンボキサンA2受容体と比較した、GPVIに対するGPVIリガンドRB571の結合特異性を表すグラフを示している。
図24は、短縮配列GPVIリガンドであるEF2−T2及びEF3−T2の予想される二次構造、並びに、これらのリガンドとGPVIリガンド調節因子RB416−423との間の相補性の部位を示している。
図25は、GPVIリガンドEF2−T2単独又は様々なGPVIリガンド調節因子の様々な濃縮との組み合わせの場合に、コラーゲンによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対する割合として表したグラフを示している。
図26は、GPVIリガンドEF3−T2単独又は様々なGPVIリガンド調節因子の様々な濃縮との組み合わせの場合に、コラーゲンによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対する割合として表したグラフを示している。
図27は、GPVIリガンドRB490単独又は様々なGPVIリガンド調節因子の様々な濃縮との組み合わせの場合に、コラーゲンによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対する割合として表したグラフを示している。
図28は、GPVIリガンド調節因子RB515を用いたGPVI核酸リガンドRB490の抗GPVI活性の無効化の持続性を表すグラフを示している。
図29は、GPVIリガンドRB571の予測される二次構造、及び、そのリガンドとGPVIリガンド調節因子RB515との予測される相互作用を示している。
図30は、GPVIリガンドRB571単独又は様々なGPVIリガンド調節因子RB515の様々な濃縮との組み合わせを用いたときに、コラーゲンによって誘導された血小板凝集及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対する割合として表したグラフを示している。
図31は、血小板を濃縮した血漿においてGPVIリガンドRB571単独又は様々なGPVIリガンド調節因子RB515の様々な濃縮との組み合わせを用いたときに、コラーゲンによって誘導された血小板凝集及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導された血小板凝集を、コントロールに対する割合として表したグラフを示している。
詳細な説明
本発明は、血小板細胞膜グリコプロテインVI(GPVI)に結合する核酸リガンドの医薬品組成物、そのリガンドの調節因子、及び、血小板を介してもたらされる疾病及び病気を治療するためのそれらの使用方法を提供する。さらに、GPVI核酸リガンド及び/又はそのGPVIリガンドの調節因子を含む医薬製剤を提供する。
A.定義
この「約」という用語は、本明細書において用いられているように、重量、時間、用量等の量のように測定可能な値を表す場合には、そのような変動が開示されている方法を実行するのに適切である限り、所定量から±20%、±10%、±5%、±1%、又は、±0.1%の変動を含むように意図されている。
「核酸リガンド」は、標的分子と相互作用することを可能にする三次構造を形成することができる核酸であり、本明細書において「リガンド」又は「アプタマ」とも称される。「GPVI核酸リガンド」又は「GPVIリガンド」又は「抗GPVIリガンド」又は「核酸GPVIリガンド」は、GPVIに対して特異的に結合するリガンド又はアプタマを表す。これらの用語は、生理的環境下で意図した標的分子との複合体を形成することができる特異的結合部位を有するオリゴヌクレオチドを表す。標的分子に対するリガンドの結合の親和性は、リガンドと標的分子との間の相互作用の解離定数(Kd)を単位として定義される。一般に、標的に対するリガンドのKdは、約1nM〜約100nMである。一般に、結合の特異性は、リガンド及び環境中の無関係な物質又は付随物質に対する解離定数と比較した、標的に対するリガンドの相対的な解離定数として定義される。一般的に、標的に対するリガンドのKdは、環境中の無関係な物質又は付随物質に対するKdの1/10、1/50、1/100、又は、1/200未満であろう。
「リガンド調節因子ペア」又は「リガンドと調節因子とのペア」は、標的分子に対する特定のリガンドと、そのリガンドと標的との相互作用が調節されるように、リガンドの二次構造及び/又は三次構造を変化させるリガンド調節因子とを含むように意図されている。調節因子は、リガンドの一部分に対して相補的なオリゴヌクレオチドであり得る。調節因子は、リガンドの標的結合親和性力を、生理的条件下において、10%から100%、20%から100%、25%、40%、50%、60%、70%、80%、90%若しくは100%低下させるか、又は、10%から100%の間の範囲内の任意のパーセンテージで低下させるように、リガンドの立体構造を変化させることができる。
「調節因子(modulator)」、「拮抗剤(antidote)」、「調節因子(regulator)」又は「制御因子(control agent)」は、本明細書に記載されているようなリガンド又はアプタマに結合することができ、かつ、リガンドとその標的分子(例えばリガンドの構造の修飾による)との間の相互作用を所望の態様で変化させることができる薬学的に許容可能なあらゆる物質を表す。
本明細書で使用されるように、「調節する(modulate)」は、活性の低下、上昇又は他のいくつかの測定可能な変化を意味する。
「薬学的に許容可能(Pharmaceutically acceptable)」であることは、本明細書で使用されるように、連邦の規制機関若しくは州政府によって承認されていること、又は、米国薬局方若しくは人間に使用するための他の一般に認識されている薬局方に一覧されていることを意味する。
薬学的有効量は、病状の発生を阻害、防止する、又は、病状を治療(ある程度まで症状を緩和する)するのに必要な用量である。薬学的有効量は、疾病の種類、使用する組成物、投与経路、治療する哺乳動物の種類、調査する特定の哺乳動物の物理的特性、併用薬剤、及び、医学分野の当業者が認識する他の要因に応じて変わる。核酸リガンド及び調節因子の能力に応じて、一般に、1日当たりに体重1kg当たりで0.1mg〜100mgの量の有効成分を投与する。
「安定化された核酸分子」は、安定化されていない核酸分子と比較して、インビボにおいて(例えばエキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼによって)容易に分解されない核酸分子を表す。安定化は、オリゴヌクレオチド骨格のホスフェート部分の糖内部の化学的置換の長さ及び/又は二次構造及び/又は短縮の作用であってもよい。安定化は、例えば、分子を安定させることができる二次構造をコントロールすることによって達成することができる。例えば、核酸分子の3’末端が上流領域に対して相補的であれば、その部分は、折り返して、分子を安定化させる「軸環(stem loop)」構造を形成することができる。
「結合親和性」及び「結合活性」という用語は、リガンド分子が標的に結合する又は標的に結合しない傾向を表すように意図されている。前記相互作用のエネルギー論が「結合活性」及び「結合親和性」において重要である。なぜなら、これらが、相互作用するパートナの必要濃度、これらのパートナが会合することができる速度、及び、溶液中の結合した分子及び自由分子の相対濃度を定義するからである。エネルギー論は、特に、解離定数Kdの決定によって特徴付けられる。
本明細書で使用されているように、「治療」又は「治療すること」は、哺乳動物における疾病のあらゆる治療を意味するものであり、次のこと:(a)病気に対して防御すること、すなわち、臨床症状を生じさせないこと;(b)病気を抑制すること、すなわち、臨床症状の発生を阻止、改善、低下又は抑制すること;及び/又は、(c)病気を軽減すること、すなわち、臨床症状の後退を生じさせることを含む。最終誘起現象が未知若しくは潜在的であることもあり、又は、その現象の発生のかなり後まで患者が判明しないので、「予防すること(preventing)」と「防ぐこと(suppressing)」こととを区別することが必ずしも可能ではないことは、人間医学分野の当業者によって理解されるであろう。したがって、本明細書で使用されているように、「予防(prophylaxis)」という用語は、「治療」の一要素として、本明細書で定義されているような「保護すること」及び「抑制する」を含むように意図されている。「保護(protection)」という用語は、本明細書で使用されているように、「予防」を含むように意図されている。
「有効量」という用語は、治療している病気又は病状の治療を提供するのに充分な量を意味する。これは、患者、疾病、及び、もたらされる治療に応じて変わるだろう。
本明細書で使用されているように、GPVI核酸リガンド「変異体」は、GPVI核酸リガンドと本質的に同じ機能を発揮する変異体を包含し、本質的に同じ構造を含む。
B.グリコプロテインVI
グリコプロテインVI(GPVI)は、血小板細胞の表面で特異的に発現される。コラーゲンが介在したGPVIの活性化は血小板付着及び凝集において重要な役割を果たすことが多数の研究によって示されている。従って、GPVIは、血小板とコラーゲンによってもたらされる病気を治療するためのますます興味深い治療標的である。
生理学的止血と病理学的血栓形成との間の境界は非常に狭いので、コラーゲンによってもたらされるGPVI活性化に対して、血小板活性の微調節された制御を提供できることが必要である。従って、本明細書では、開示されているGPVIリガンドの活性を調節又は制御することができる調節因子成分も提供する。
GPVIは、339個のアミノ酸残基の長さのグリコプロテインである(GenBank Accession No.Q9HCN6、配列番号:1として開示されている)。アミノ酸残基1〜20は、319個のアミノ酸を有する成熟したタンパクを生産するために切断されるシグナル配列を表す。GPVIは、2個の細胞外免疫グロブリンドメイン、ムチン様コア、ショートペプチドリンカー配列、膜貫通領域、及び、Fyn及びLyn Srcファミリーキナーゼに結合する短い細胞質尾部を有する。Sykの集合及び活性化を可能にし、かつ、免疫レセプタによって使用されるものと多くの親和性がある下流シグナル経路の活性化を開始させるように、GPVIは、FcRγ鎖と構造的に複合化されている。GPVIをコードする遺伝子は、ヒト染色体19の白血球レセプタクラスター(LRC)に見られる。GPVI又はFcRγ鎖のいずれかを欠くマウスでは、コラーゲンに対する血小板応答が著しく阻害され、血栓形成が減少した。さらに、新規なモノクローナル抗ヒトGPVI抗体(OM4)のFab断片は、抗GPIIb/IIIa抗体を用いた場合に見られた出血時間の長期化を伴わずに、ラットの血栓症モデルにおいてインビボにおける血栓形成を阻害する。
GPVI細胞外ドメイン(配列番号:2)は、コラーゲンタイプI−IVに特異的に結合することが示されている(Jung et al、Platelets、2008、19:32−42)。さらに、コラーゲンタイプI−IVは、血小板活性化、凝集及び付着を支援することがわかっている。一方で、非原線維コラーゲン、タイプVI、VII及びVIIIは、血小板凝集を伴わずに、弱い付着を生じさせるだけである。従って、血小板を介してもたらされる病気又は疾病の治療に役立ち得る医薬品を作成するために、GPVI細胞外ドメインに対して結合するGPVIリガンドを特定するために研究を行った。
C.GPVIに対する核酸リガンドの発生
SELEX法を使用して、GPVIタンパクに特異的に結合する核酸リガンドを同定した。その後、GPVIリガンドの特性を理解するために、SELEXによって最初に得たリガンドを完全に特性評価した。そのような特性評価には、配列決定、保存配列を決定するための配列比較、二次構造予測、並びに、GPVIに特異的に結合して阻害する求められる機能に最も重要なリガンド部位を特定するための切断部分及び突然変異の分析が含まれる。最適なリガンド配列及び二次構造を特定した後に、製薬使用のためにそのリガンドを最適化するために修飾を加えた。これらの修飾の具体例は、ペグ化、核酸リガンド内部のスペーサの使用、及び、核酸リガンドの糖部分及びホスフェート部分に対する選択された修飾を含む。使用した様々な修飾の結果としてリガンド機能を監視するために、結合分析を実行した。
SELEXは、指数関数的増殖によるリガンドの系統的進化を表す。この方法は、標的分子に対する高度な特異的結合性を有する核酸分子のインビトロ的進化を可能にする。SELEX法は、例えば、米国特許第7087735号、第5475096号、及び、第5270163号に記載されている(WO91/19813も参照されたい)。
SELEX法は、結合親和性及び選択性の事実上あらゆる所望の基準を達成するために、同一の一般的な選択機構を用いながら、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択と、結合、分離及び増幅の段階的反復とを含む。SELEX法は、結合に好適な状況下において混合物を標的分子に接触させるステップと、標的分子に特異的に結合した核酸から非結合核酸を分離するステップと、核酸と標的分子との複合体を解離させるステップと、リガンドを増幅した核酸混合物を作るために、核酸と標的分子との複合体から解離させた核酸を増幅するステップと、標的分子に対して高度に特異的で高親和性のリガンドを作るために望ましいサイクル数にわたって、結合、分離、解離、及び、増幅のステップを反復するステップとを含む。
基礎的なSELEX法は、多くの特別な目標を達成するために変更されてきた。例えば、米国特許第5707796号は、湾曲DNA等のような特別な構造特性を有する核酸分子を選択するために、ゲル電気泳動と併用してSELEXを使用することを記載する。米国特許第5763177号は、標的分子に結合する能力がある及び/又は標的分子に光架橋する能力がある及び/又は標的分子を光不活化する能力がある光反応性基を含むリガンドを選択するための、SELEXをベースとした方法を記載する。米国特許第5580737号は、密接に関連する複数の分子を区別することができる高度に特異的なリガンドを同定するための、カウンタSELEXと呼ばれる方法を記載する。米国特許第5567588号及び第5861254号は、標的分子に対する高い親和性を有するオリゴヌクレオチドと、標的分子に対する低い親和性を有するオリゴヌクレオチドとの高度に効率的な分離を達成する、SELEXをベースとした方法を記載する。米国特許第5496938号は、SELEXプロセスを実行した後に、改良されたリガンドを得る方法を記載する。米国特許第5705337号は、リガンドを標的に共有結合で結合させる方法を記載する。
小さいペプチドに対する核酸リガンドを溶液中において同定する実現可能性が米国特許第5648214号において実証されている。標的分子の特定部位を標的とするリガンドを生産するために、リガンドを用いた親和溶出を使用できることが、米国特許第5780228号において例示されている。米国特許第5780228号は、特定のレクチンに結合する高親和性リガンドの生産に関するものである。特定の組織(細胞種の群を含む)に対する核酸リガンドを調製する方法が米国特許第6127119号に記載されている。コウシの腸のホスファターゼに対する修飾された高親和性リガンドを生産することが米国特許第6673553号に記載されている。米国特許第6716580号は、核酸リガンドを同定するための、ロボット操作の使用を含む自動プロセスを記載する。
SELEXプロセスは、その最も基本的な形態において、以下の連続的ステップによって定義されるものであってもよい。
1)異なる配列の核酸の候補混合物を調製する。候補混合物は、一般に、不変の配列の部位(すなわち、候補混合物の各配列が同一の位置に同一の配列を含む)と、ランダム化された配列の部位とを含む。不変の配列部位は、(a)以下に記載されている増幅ステップを支援するように、(b)標的に結合することがわかっている配列を模倣するように、又は、(c)候補混合物中の核酸の所定の構造配置の濃度を高めるように選択される。ランダム化された配列は、完全にランダム化されていてもよい(すなわち、任意の位置において1つの塩基を発見する確率が4分の1である)し、又は、部分的にのみランダム化されていてもよい(例えば、任意の位置において1つの塩基を発見する確率が0%〜100%の任意のレベルから選択され得る)。
2)標的と候補混合物の核酸とが結合するのに好適な条件下において、選択した標的に候補混合物を接触させる。これらの条件下では、標的と候補混合物の核酸との相互作用は、標的とその標的に対して最も強い親和性を有する核酸とによる核酸標的複合体を形成するものとして考えることができる。
3)標的に対して最も高い親和性を有する核酸を標的に対してより低い親和性を有する核酸から分離する。最も親和性が高い核酸に対応する配列は極めて少ない数(おそらく核酸の1分子のみ)でしか候補混合物中に存在しないので、候補混合物中の相当量の核酸が分離時に保持されるように分離基準を設定することが一般に望ましい(おおよそ5%〜50%)。
4)その後、標的に対して比較的高い親和性を有する核酸の濃度を高めた新しい候補混合物を作成するために、標的に対して比較的高い親和性を有するものとして分離時に選択された核酸を増幅する。
5)上記の分離ステップ及び増幅ステップを繰り返すことによって、新たに作成される候補混合物に含まれる結合性が弱い配列が徐々に少なくなり、標的に対して平均程度の親和性を有する核酸が一般に増加するであろう。その極限まで行くと、SELEXプロセスは、初めの候補混合物中の核酸配列を代表する1個又は少数のユニークな核酸であって、標的分子との最も高い親和性の相互作用を可能にする特異的な二次及び三次構造に折りたたまれる核酸を含む候補混合物が与えられるであろう。
レセプタを含む1つのタンパクの2つ以上のエピトープに対する親和性を有する2個以上の結合領域を有する二価結合を生じさせるために、SELEXを使用することができる。特に、一実施形態において、GPVIレセプタの2つ以上の部位に対する親和性を有する核酸リガンドを選択するために、このプロセスを使用することができる。例えば、特定の実施形態において、リガンドは、C2領域の少なくとも2つの部分に結合することができる。特定の実施形態において、リガンドは、二量体の立体構造を乱すこと又は安定させることによって、GPVIレセプタの二量体化に影響を与える。これらの実施形態において、調節因子は、核酸リガンドが結合するエピトープの1つのみ、1つ以上、又は、すべてに対する結合を抑制するように設計されたものであってもよい。調節因子は、例えば、レセプタのC2−1領域又はC2−2領域等の単一のエピトープのみに対する結合を阻害するものであってもよい。
例えば、米国特許第7087735号に記載されているようなSELEX法を使用して、GPVIに対して特異的な核酸リガンドを、その分子の細胞外ドメインに相当する短鎖ペプチドに対してSELEXを実行することによって得ることができる。あるいは、例えば、米国特許第6730482号に記載されているようなSELEX法を使用して、未処理の血小板、タンパクを増やした血小板膜画分、精製したGPVI、又は、GPVIレセプタを特異的に過剰発現する細胞系に対してSELEXを実行することによって、GPVIに対して特異的な核酸リガンドを分離することができる。
さらに、SELEXプロセスは、米国特許第5780228号に記載されているような競合親和溶出機構を使用して、特異的なGPVI核酸リガンドを単離するように意図されたものであってもよい。例えば、GPVIに対して特異的な核酸リガンドを分離するために、コラーゲン、コンブルキシン、若しくは、CRP、又は、関連化合物等のような、GPVIの活性化剤又は結合剤を充分な量で加えることによって、タンパクに結合したリガンドの溶出を実行することができる。
GPVIレセプタは、組み換え技術によって発現される精製されたタンパクであって、SELEX法のために使用されるタンパクであってもよい。特定の実施形態において、GPVI核酸リガンドは、生理的条件下においてGPVIレセプタに結合する。生理的条件は、一般に塩の濃度及び溶液のpHに関する。インビトロにおいて、生理的条件は、一般に、150mMのNaCl、2mMのCaCl2、及び、20mMのHEPESを含むバッファ(pH約7.4)において再現される。特定の実施形態においては、核酸リガンドの集合を選別して、血小板でみられるタンパクを対象とするリガンドを含む濃縮された集合を与えるために、天然の、典型的には活性化されていない血小板を上述されているように使用する。その後、求められるGPVIレセプタを過剰発現する安定な細胞系、又は、そのタンパクを一時的にトランスフェクトした細胞系のいずれかに対してその濃縮した集合を使用する。リガンド競合調査を行うこと又は細胞内シグナル経路に対する影響を識別することのいずれかを通じて、これらの細胞から単離されたレセプタ又は細胞全体のいずれかに対して修飾したSELEX法を使用することによって、第2周目の選抜を実行することができる。
特定の実施形態において、GPVI標的に対して特異的な核酸リガンドを、固定されたタンパクを使用して同定することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、精製されたタンパクを、化学的リンカーによって固体マトリクスに結合させることができる。他の実施形態においては、固定人工膜に結合したタンパク及び混合物の特定の画分を単離するために、特定のタンパクを過剰発現する細胞から得た細胞膜を、陰イオン性界面活性剤(例えば、コール酸エステル)等の洗剤を使用して抽出することができる。一般に、脂質及びタンパクが、(通常はビーズ等のサポートマトリクス上にある)固定人工膜の炭化水素鎖と共に再構成して層を形成する間に、洗剤を除去することによって再構成を実行することができると考えられる。
アゴニストによって特別な特異的な血小板機能及び/又はGPVIによって誘導される細胞内シグナル現象を阻害する能力を求めるように核酸リガンドを選抜することによって、GPVIに対して特異的なこれらのSELEX法によって分離された核酸リガンドであって、求められる機能的活性を有する核酸リガンドを同定することができる。求められる核酸リガンドは、単に相手に結合するだけでなく、レセプタシグナリングの阻害剤でもあるので、血小板活性に対して与えるリガンドの影響を評価することによって、求められる機能を有するリガンドを同定することができる。これには、GPVIによって制御されることがわかっている種々のシグナル経路に対してリガンドが与える影響の評価が含まれていもよい。例えば、GPVIシグナリングは、GPVIタンパクのクラスター化、及び、ホスホリパーゼCγ2を活性化する事象の局所的シグナル連鎖を開始するためキナーゼの活性化を生じさせ、Ca2+濃度を上昇させること及びプロテインキナーゼCを活性化することに関与するセカンドメッセンジャである1,4,5−イノシトール三リン酸及びジアシルグリセロールを放出することができる。これらのセカンドメッセンジャ系又はセカンドメッセンジャシグナルのあらゆるものを当業者に周知の方法を用いて測定することができる。
さらに、GPVI核酸リガンドの存在下又は非存在下におけるGPVIのコラーゲン結合を、これらのシステムにおいて測定することができる。
血小板を多く含む血漿及び洗浄血小板調合物の中で実行する光透過凝集測定(Light Transmittance Aggregometry)、又は、全血液中で実行するインピーダンス凝集測定法(Impedance Aggregometry)等の血小板機能分析において血小板凝集を抑制する能力を求めるようにリガンドを選抜することもできる。さらに、静的条件において又は流動全血中において、コラーゲン塗布面との血小板相互作用を抑制する能力を求めるように、リガンドを選抜することができる。所定のレセプタの既知のアゴニストによって生じる細胞内シグナリング現象をブロックするリガンドの能力によって、GPVIに対する所定の核酸リガンドの特異性をさらに同定することができる。例えば、GPVIの阻害物質である核酸リガンドは、例えば、ヘビC型レクチン・コンブルキシン、コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチド(CRP)によって生じるシグナリングを阻害すると予想することができる。GPVI以外のレセプタを活性化するアゴニストによって凝集が生じる場合には、血小板凝集に対して影響を与えないことによって、GPVIに対する所定の核酸リガンドの特異性をさらに選別することができる。
上記方法の任意のものを単独又は組み合わせて利用することによって、GPVIに対して特異的な複数の核酸リガンドが生じるであろう。求められる阻害特性を有する核酸リガンドを同定したら、そのリガンドの調節因子を以下に説明するように同定することができる。
D.GPVIに対する核酸リガンド
本明細書に開示されているGPVIリガンドは、好ましくは、核酸リガンド等のリガンドである。GPVI細胞外ドメイン(ECD)(アミノ酸残基Gln21−Lys267、配列番号:2)に特異的に結合するGPVIリガンドを、以下の実施例1においてより詳細に記載されているSELEX法を使用して選択した。その後、そのリガンドを、安定性、GPVIに対する親和性、及び/又は、GPVI活性を制御する能力を増加させるように修飾した。
本発明のGPVI核酸リガンドは、単離された核酸配列で構成されている。その核酸配列は、DNA又はRNAであってもよく、また、修飾されたリボ核酸又はデオキシリボ核酸を用いて合成することができる。本明細書に記載されているように、RNAの塩基構造を利用する場合には、その構造は、塩基配列中にチミジン(T)の代わりにウリジン(U)を含む。本明細書に記載されている特定の実施形態においては、核酸の配列がRNA配列として記載されている。同様に、本明細書に記載されている特定の実施形態において、核酸リガンドが最初にDNA分子であると確認された場合には、核酸の配列がDNA配列として記載されている。DNA配列としてテキスト形式で示されているヌクレオチドの配列が、対応するRNA配列の記載を固有に与えることは当然である。この場合、DNA配列中のチミン(T)をウリジン(U)で置き換えることによって、ヌクレオチドの対応するRNA配列が得られる。同様に、RNA配列としてテキスト形式で示されている配列が、対応するDNA配列の記載を固有に与えることは当然である。この場合、RNA配列中のウリジン(U)をチミン(T)で置き換えることによって、ヌクレオチドの対応するDNA配列が得られる。
SELEX法で得られたいくつかのGPVI核酸リガンドの配列を決定し、それらの配列を並べた。図4に示されている配列比較によって、選択工程において濃縮された6つのユニークな配列が同定された。「A」から「F」とされる6種類の配列比較は、UAA配列の存在を示している。さらに、この完全に保存された配列は、配列:(G/A)UAAの内部に含まれている。両側がGCに隣接する(G/A)UAA配列は、保存されたGC(G/A)UAAGC配列を生じさせる。
その後、ユニークなGPVIリガンドについて、二次構造予測分析を実行した。二次構造は、リガンドの機能的特性に寄与する。当業者によく理解されているように、二次構造を、分子中で5’から3’方向に存在するように、軸部構造及び環構造を単位として記載することができる。以下の実施例2に記載されている二次構造予測に基づけば、GPVI細胞外ドメインに対するリガンドは、3つの軸部と4つの環とを含む二次構造を有する。その5’から3’の立体配置は、第1の軸部(軸部1又はS1)と、第1の環(環1又はL1)と、第2の環及び第3の環(環3又はL3)につながっている第2の軸部(軸部2又はS2)と、第3の環と、第3の軸部(軸部3又はS3)と、第4の環(環4又はL4)とを含む(図8A−図8C参照)。いくつかの実施形態において、第2の軸部は、第1の環、第2の環及び第3の環を連結し、第3の軸部は、第3の環と第4の環とを連結する。一実施形態において、第3の軸部は、5’−3’方向において第1の軸部に隣接している。配列GC(G/A)UAAGCは、軸部3(GC塩基対)及び環4((G/A)UAA)を形成する。配列GAC形態は環1を形成する。
SELEXによって同定されたGPVIリガンドの突然変異分析は、環3のUA、UU又はUGの配列がGPVIに対するリガンドの高い親和性結合をサポートすることを示している。従って、いくつかの実施形態において、GPVI核酸リガンドの環3は、配列5’−YD−3’(ここで、Yはピリミジンを表し、DはU、G又はAを表す)を含む。
いくつかの実施形態において、GPVI核酸リガンドの環2は、当業者に知られている方法を用いてスペーサで置換されていてもよい。このスペーサは、環2がスペーサで置換されたときに、GPVIリガンドがその構造及び機能を維持するように、環2に類似した構造を与える非ヌクレオチドスペーサであってもよい。GPVI核酸リガンド中に9−O−ジメトキシトリチル−トリエチレングリコール,1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトを組み込むことによって与えられるヘキサエチレングリコールスペーサによる環2の置換は、GPVIに対する親和性を損なわない結果となった(図13A−図13B参照)。従って、当業者は、商業的に入手可能な種々の非ヌクレオチドスペーサによって環2を置換することができることを理解するであろう。そのようなスペーサの例は、以下に限定されないが、GPVI核酸リガンドに、5’−O−ジメトキシトリチル−1’,2’−ジデオキシリボース−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト;18−O−ジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール,1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト;及び、12−(4,4’−ジメトキシトリチル)ドデシル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトを組み込むことによって与えられものを含む。
GPVI機能を制御すること、又は、血小板を介してもたらされる疾病を治療することにおけるGPVIリガンドの有効性は、リガンドがGPVIタンパクに対して充分な親和性で結合する能力に大部分は依存する。従って、SELEXプロセスを通じてGPVIリガンドを得た後に、各リガンドの配列を決定し、次に、そのGPVIリガンドを、標的分子との結合の観点によって評価することができる。本明細書におけるリガンドの結合親和性は、標的(GPVI)対するKdの単位で定義することができる。この解離定数の値は、実施例1に記載されている放射性リガンド結合方法等の周知の方法によって直接的に測定することができる。しかしながら、小さいオリゴヌクレオチドについては、Kdの直接測定が困難であり、誤って高い結果になってしまうことがある。これらの状況においては、標的分子又は他の候補物質に結合することがわかっている物質に関して、その標的又は候補に対する競合結合測定法を実施することができる。50%の抑制が生じる濃度(Ki)の値は、理想的な条件において、Kdに等しい。しかしながら、いかなる場合にもKiがKdより小さくなることはない。したがって、Kiの測定は、別の方法でKdの値の最大値を決める。Kdの正確な測定が技術的困難によって妨げられる状況においては、Kdの上限を与えるために、Kiの測定を簡易に代用することができる。Ki値は、本発明のリガンドが標的に結合することを確認するために使用されてもよい。GPVIリガンド結合特性の評価において、コラーゲン、CRP(コラーゲン関連ペプチド)又はコンブルキシン(Cvx)等の既知のGPVI結合分子を用いた競技結合分析又は機能分析を使用して、特異性を分析することができる。
いくつかの実施形態において、GPVIに対するリガンドの結合のKdは、約1nM〜約100nM、約10nM〜約50nM、又は、約20nM〜約0.1nMであり得る。他の実施形態において、GPVIに対するリガンドの結合のKdは、無関係なタンパク又は環境中の他の付随物質に対するリガンドの結合のKdと比較して、少なくとも1/2倍、1/3倍、1/4倍、1/5倍又は1/10倍小さい。その無関係なタンパクは、他のIgスーパーファミリのタンパク、又は、コラーゲン結合領域、若しくは、他の血小板活性化/接着受容体を含む他のタンパク等のような、GPVI中に存在するモチーフに関連したモチーフを有するタンパクであってもよい。
以下により詳しく検討されているように、種々の技術的方法を使用して、SELEX法によって得られて同定されるリガンドの結合活性をさらに修飾又は改良することができる。
いくつかの実施形態において、リガンドは、GPVIの細胞外ドメインと相互作用する。そのリガンドは、GPVIレセプタのコラーゲン結合を阻害することができる。特定の実施形態において、リガンドは、GPVIレセプタを介した細胞内シグナルリングを阻害することができる。この細胞内シグナルリングには、イノシトール三リン酸の生成を減少させること、又は、細胞内カルシウム濃度の変動が含まれる。また、リガンドは、レセプタがコラーゲン又はFcRγと相互作用する能力が低くなるように、二量体の立体構造等のレセプタの立体構造を安定させ又は乱すものでもよい。。リガンドは、コラーゲン又は他のGPVIアゴニストによる血小板活性化に影響を与えることができる。リガンドは、コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドに対する血小板付着に影響を与えることができるものでもよい。リガンドは、コラーゲン又は他のGPVIアゴニストによって誘導される血小板凝集に影響を与えることができるものでもよい。
本明細書に記載されている核酸リガンドは、活性が可逆的な物質として機能し得る。これらは、患者に投与した後に、第2の物質を投与することによって直接的に制御されることが可能な薬剤又は薬学的に活性な分子である。以下にさらに詳細に説明されているように、本明細書において調節因子と呼ばれる第2の物質は、リガンドの薬理学的活性を遮断又は微調節することができる。結果として、例えば薬物クリアランス以外の手段によって、リガンドの薬理学的活性を無効化することができる。
E.調節因子
いくつかの実施形態においては、GPVIに対する核酸リガンドが可逆的である。一態様において、本発明は、核酸リガンドを投与された接種者に対してGPVIリガンドの調節因子を投与することによって、GPVIに対する核酸リガンドの活性を調節する方法を提供する。
本発明の調節因子は、核酸リガンドに結合することができ、かつ、求められる態様でそのリガンドとその標的分子との間の相互作用を(例えば、核酸リガンドの構造を変化させることによって)変化させることができる、又は、その生物学的作用を変化させるように核酸リガンドを分解、代謝、切断、若しくは、化学的に変化させるあらゆる薬学的に許容可能な物質を含む。本発明の調節因子の例には、オリゴヌクレオチド、又は、その類似化合物であって、核酸リガンド配列(リボザイム又はDNAザイムを含む)の少なくとも一部分に対して相補的である類似化合物が含まれる。他の例には:ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸(MNA)、若しくは、ロックド核酸(LNA);核酸結合タンパク又はペプチド;オリゴ糖;小分子;又は、核酸結合ポリマー、脂質、ナノ粒子、若しくは、ミクロスフェアをベースとした調節因子が含まれる。
調節因子は、高い程度の特異性と求められる程度の親和性とを有する特定の核酸リガンドに結合するように設計されたものであり得る。また、調節因子は、結合したときに、リガンドの構造がより高活性又はより低活性の形態のいずれかに変化するように設計されたものであってもよい。例えば、調節因子は、標的とされる核酸リガンドに結合する時に、そのリガンドの二次構造及び/又は三次構造が変化し、それによって、そのリガンドが標的分子ともはや結合することができないか又はより小さい親和性でその標的分子と結合するように設計することができる。あるいは、調節因子は、結合時に、リガンドの標的分子に対するリガンドの親和性が強くなるように、リガンドの三次元構造が変化するように設計されたものであってもよい。すなわち、調節因子は、結合時に、リガンドの親和性が強化されるように、構造モチーフを変化させるように設計されたものであってもよい。他の一実施形態においては、リガンドと調節因子とのペアは、対象とする標的分子と結合することができない核酸リガンド分子に対する調節因子の結合が、そのリガンドがその標的分子と結合できるようになる構造モチーフをリガンド中に生じさせることができるように設計されたものである。
調節因子は、複合体を形成するのに充分な親和性で、特定の核酸リガンド又は核酸リガンドの集合に非特異的に結合するように設計されたものであってもよい。そのような調節因子は、一般に、電荷間相互作用によって核酸と結合することができる。そのような調節因子は、同時に複数の核酸リガンドに結合することもできる。調節因子は、1つ以上の核酸リガンドに結合する時に、核酸リガンドの構造をその活性形態から著しく変化させないが、むしろ、その調節因子が標的分子との核酸リガンドとの結合を遮断又は立体的に阻害するように設計されたものであってもよい。
ヌクレオチド調節因子は、リガンド分子に対する効果的な結合を可能にするあらゆる長さであり得る。例えば、オリゴヌクレオチド調節因子は、約10ヌクレオチド(nt)から約30nt、約10ntから約20nt、又は、約15nt以上の長さであり得る。ヌクレオチド調節因子の長さは、8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25nt、26nt、27nt、28nt、29nt、又は、30ntであり得る。当業者は、30nt以上の長さを有するヌクレオチド調節因子を構想することもできる。
本明細書に記載されている核酸リガンドは、活性な三次構造を有する。その三次構造は、適切な安定した二次構造の形成によって影響され得る。したがって、本発明の相補的なオリゴヌクレオチド調節因子と核酸リガンドとによる二本鎖の形成のメカニズムは、2つの短い直鎖オリゴリボヌクレオチド間の二本鎖の形成と同様ではあるが、そのような相互作用を設計するための規則、及び、そのような生成物の形成の動態の両方は、リガンドの分子内構造によって影響される可能性がある。
核酸リガンドとオリゴヌクレオチド調節因子との間での最初の塩基対形成の核生成の速度は、最後の安定的な二本鎖の形成において重要な役割を果たす。また、このステップの速度は、オリゴヌクレオチド調節因子を、核酸リガンド中に存在する一本鎖の環及び/又は3’若しくは5’の一本鎖の尾部にターゲッティングすることによって非常に向上する。分子内二本鎖の最適な形成を生じさせるためには、標的とする核酸リガンド中に存在する分子内二本鎖の形成に関して、自由エネルギーが、分子内二本鎖の形成に理想的には有利である。
本発明に記載されている調節因子は、一般に、標的とする核酸リガンド配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドである。例えば、調節因子オリゴヌクレオチドは、標的とするリガンドの約6nt〜25nt、8nt〜20nt、又は、10nt〜15ntに対して相補的な配列を含むものであってもよい。調節因子オリゴヌクレオチドの長さは、標的とするリガンド及び求められる結果を考慮に入れて、本明細書に記載されている技術及び当業者に知られている技術を使用して容易に最適化することができる。D型若しくはL型の立体構造を有するヌクレオチド又はそれらの混合物を用いて、オリゴヌクレオチドを作ることができる。天然に存在するヌクレオシドはD型である。
本発明のオリゴヌクレオチド調節因子は、核酸リガンドの少なくとも一部分に対して相補的な配列を含むが、完全な相補性は必要とされない。「核酸リガンドの少なくとも一部分に対して相補的である」と本明細書で呼ばれる配列は、核酸リガンドとハイブリダイズすることができる充分な相補性を有する配列である。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度及び核酸の長さの両方に依存し得る。一般に、ハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが大きくなるほど、そのオリゴヌクレオチドは、標的リガンドとのより多くの塩基の不一致を含んでいても安定な二本鎖を形成することができる(あるいは、三重鎖の場合であっても同様である)。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定するための標準的方法を使用することによって、不一致の許容可能な程度を確認することができる。本発明のオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA若しくは一本鎖RNA、又は、キメラ混合物、又は、誘導体、又は、これらを変性したものであってもよい。
調節因子は、核酸骨格、及び、各核酸の構造の両方に修飾を含むものであってもよい。特定の実施形態において、調節因子は、リガンド中の少なくとも1つの環部に対して相補的な核酸である。いくつかの実施形態において、調節因子は、生理的条件下で二次構造中の第4の環に対してハイブリダイズする配列を少なくとも有するオリゴヌクレオチドであり、特に、配列3’−AUU−5’を含むオリゴヌクレオチドである。他の実施形態において、調節因子は、生理的条件下でリガンドの二次構造中の第1の環に対してハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、特に、配列3’−CUG−5’を少なくとも含むオリゴヌクレオチドである。調節因子の求められる機能に応じて、核酸リガンドの二次構造及び/又は三次構造を乱し又は安定させるように、調節因子を設計することができる。
いくつかの実施形態において、調節因子は、リガンドの「自己不活性化位置」に結合し、それによってリガンドの配列を崩壊させるように設計されたものである。自己不活性化位置は、酵素によって切断され易い(リガンドの)一本鎖の部分である。例示的一実施形態において、調節因子がリガンドに結合した時に、自己不活性化位置が一本鎖になって不安定になり、血液又は肝臓のエンドヌクレアーゼ等の循環中の酵素によるリガンドの切断を増やすことができる。特定の実施形態において、調節因子がリガンドに結合した後には、そのリガンドがもはや標的と相互作用することができなくなる。
例示的一実施形態において、調節因子は、配列番号74〜88から選択される核酸配列を含む(配列番号74及び88を含む)。
いくつかの実施形態において、調節因子配列は、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含む。例えば、2’−O−メチルシトシン、2’−O−メチルウリジン、2’−O−メチルアデノシン、2’−O−メチルグアノシン、2’−フルオロシチジン、又は、2’−フルオロウリジン等のように、2’−O−メチル修飾及び2’−フルオロ修飾を含んでいてもよい。
オリゴヌクレオチド調節因子が結合するための核酸リガンド中の最適位置を決定するために、様々な戦略を使用することができる。相補的なオリゴヌクレオチドが核酸リガンドの周囲を「巡る」ような実証的戦略を使用することができる。このアプローチに従って、長さが約15のヌクレオチドのオリゴヌクレオチド(例えば、2’−O−メチルオリゴヌクレオチド又は2’−フルオロオリゴヌクレオチド)であって、リガンドの約5個のヌクレオチドずつずらした配列(例えば、リガンドの1−15、6−20、11−25等に対して相補的なオリゴヌクレオチド)を使用することができる。ハイブリダイゼーションの効率に対する核酸リガンドの三次構造の影響を予測することは困難であり得るので、実証的戦略が特に有効になり得る。
様々なオリゴヌクレオチドが特定の核酸リガンドに対してハイブリダイズする能力を評価するために、核酸リガンドの完全な結合を達成するのに必要とされるモル過剰のオリゴヌクレオチドを特に重点を置いて、以下の実施例に記載されている分析を使用することができる。様々なオリゴヌクレオチド調節因子が、標的分子からの核酸リガンドの解離の速度を速める能力、又は、リガンドとの標的分子の結合の速度を速める能力を、例えば、BIACORE分析を使用して、標準的な動態研究を行うことによって決定することができる。リガンドとその標的分子との間の相互作用を所望の態様に変化させるために、5倍〜50倍の又はそれより少ないモル過剰のオリゴヌクレオチドが必要とされるように、オリゴヌクレオチド調節因子を選択することができる。
あるいは、オリゴヌクレオチド調節因子との結合を促進するために、一本鎖の尾部(3’又は5’)を含むように、標的とする核酸リガンドを修飾することができる。好適な尾部は、1個〜20個のヌクレオチド、1個〜10個のヌクレオチド、1個〜5個のヌクレオチド、又は、3個〜5個のヌクレオチドを含むものであってもよい。尾部は修飾されたもの(例えば、2’−O−メチルシトシン、2’−O−メチルウリジン、2’−O−メチルアデノシン、2’−O−メチルグアノシン、2’−フルオロシチジン、又は、2’−フルオロウリジン等のような、2’−O−メチル修飾及び2’−フルオロ修飾)であってもよい。一本鎖の尾部の付加が核酸リガンドの活性構造を崩壊させないことを確認するために、結合分析及び生物学的分析において(例えば、後の実施例に記載されているように)、尾部を有するリガンドを試験することができる。例えば、尾部配列と1個、2個、3個、4個又は5個の塩基対を形成することができる一連の複数のオリゴヌクレオチド(例えば、2’−O−メチルオリゴヌクレオチド)を設計し、それらのオリゴヌクレオチドを、尾部を有するリガンドに単独で結合する能力のみならず、標的分子からのリガンドの解離の速度を速める能力、又は、標的分子とリガンドの結合の速度を速める能力について試験することができる。その効果が二本鎖形成によるものであり、非特異的効果ではないことを確認するために、順序を入れ替えたコントロール配列を使用することができる。
他の一実施形態において、調節因子は、リボザイム又はDNAザイムである。酵素的核酸は、標的とするRNA又はDNAに対して最初に結合することによって作用する。そのような結合は、酵素的核酸の標的結合部位によって生じる。標的結合部位は、標的RNAを切断するように作用する分子の酵素的部位に隣接して保持されている。したがって、酵素的核酸は、最初に標的とするRNA又はDNAを認識し、相補的塩基の対合によって結合する。酵素的核酸は、正しい位置に結合すると、標的とするRNAを切断するように酵素的に作用し、それによってRNA又はDNA、RNAリガンドの不活性化を可能にする。それぞれ異なる種類の特異性を示す少なくとも5つのクラスのリボザイムが存在する。例えば、グループIイントロンは、大きさがおよそ300〜1000ヌクレオチドであり、切断部位の5’側にすぐ隣接して標的配列中にUを必要とし、切断部位の5’側の4個〜6個のヌクレオチドに結合する。もう1つのクラスは、RNaseP RNA(M1 RNA)である。これは、大きさがおよそ290〜400ヌクレオチドである。第3のクラスは、ハンマーヘッドリボザイム(Hammerhead Ribozyme)である。これは、サイズがおよそ30〜40ヌクレオチドである。これらは、切断部位の5’側にすぐ隣接して標的配列UH(ここで、HはGではない)を必要とし、切断部位の両側の可変数のヌクレオチドに結合する。第4のクラスは、ヘアピンリボザイムであり、約50ヌクレオチドの大きさである。これらは、切断部位の3’側にすぐに隣接して標的配列GUCを必要とし、切断部位の5’側において4個のヌクレオチドを、及び、切断部位の3’側に対して可変数のヌクレオチドを結合させる。第5のグループは、デルタ肝炎ウイルス(HDV)リボザイムであり、て約60ヌクレオチドの大きさである。DNAザイムは一本鎖で、RNA及びDNAの両方を切断する。DNAザイムの一般的なモデルが提案されており、そのモデルは「10−23」モデルとして知られている。「10−23」モデルに従ったDNAザイムは、15個のデオキシリボヌクレオチドの触媒ドメインを有しており、それぞれ、7個〜9個のデオキシリボヌクレオチドからなる2つの基質認識ドメインが隣接している。
他の一実施形態において、調節因子は、それ自体が核酸リガンドである。この実施形態においては、求められる治療的標的に結合する第1リガンドを生成する。第2ステップにおいては、本明細書に記載されているSELEXプロセス又は他のプロセスを使用して第1リガンドに結合する第2リガンドを生成し、治療用リガンドと標的との間の相互作用を調節する。一実施形態において、第2のリガンドは、第1リガンドの効果を不活性化する。
他の例示的一実施形態において、調節因子は、PNA、MNA、LNA又はPCOをベースとした調節因子である。本発明のオリゴヌクレオチド調節因子の核酸塩基は、例えば、ペプチジル結合(ペプチド核酸(PNA)の場合等;Nielsenら、(1991)Science 254、1497及びUS特許第5539082)、及び、モルホリノ結合(Qinら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.10、11(2000);Summerton、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.7、187(1997); Summertonら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.7、63(1997);Taylorら、J Biol Chem.271、17445(1996);Partridgeら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.6、169(1996))等の核酸塩基間結合を介して、又は、他の天然の又は修飾された結合によって連結されていてもよい。オリゴヌクレオチドの核酸塩基は、ロックされた核酸(LNA)であってもよい(Nielsenら、J Biomol Struct Dyn 17、175(1999);Petersenら、J Mol Recognit 13、44(2000);Nielsenら、Bioconjug Chem 11、228(2000))。
PNAは、オリゴヌクレオチドと類似するが、組成が異なる化合物である。PNAにおいて、オリゴヌクレオチドのデオキシリボース骨格は、ペプチド骨格で置換されている。ペプチド骨格の各サブユニットは、天然に存在する核酸塩基又は天然に存在しない核酸塩基に付着している。PNAは、多くの場合、N−(2−アミノエチル)−グリシン単位からなる光学不活性のポリアミド骨格を有する。プリン塩基又はピリミジン塩基は、相補的な核酸を標的とするように、メチレンカルボニルリンカー(1−3)を介して各単位につながっている。PNAは、ワトソンクリック型塩基対規則に従って、平行又は逆平行の配置で相補的RNA又は相補的DNAと結合する。天然の同族二本鎖と比較して、PNAオリゴマの荷電していない性質は、ハイブリッドPNA/DNA(RNA)二本鎖の安定性を高める。
モルホリノ核酸は、モルホリノサブユニットから組み立てられるので、そのように名付けられた。各モルホリノサブユニットは、六員環のモルホリン環につながった4種の遺伝子的塩基(アデニン、シトシン、グアニン及びチミン)の1つを含む。これらの4種のサブユニットからなる18個〜25個のサブユニットは、オリゴモルホリノを与えるように、非イオン性のホスホロジアミデートサブユニット間結合によって特定の順で連結されている。
LNAは、本発明の調節因子の主要な候補にせしめるいくつかの特徴を有するDNA類似化合物のクラスの1つである。LNAモノマーは、RNAモノマーに構造的に類似する二環化合物である。LNAは、DNA及びRNAの化学的性質の大部分を共有しており、水溶性であり、ゲル電気泳動、エタノール沈殿等によって分離可能である(Tetrahedron、54、3607−3630(1998))。しかしながら、DNA又はRNAのオリゴマーのいずれかにLNAモノマーを導入することは、ワトソンクリック型塩基対規則に従うと同時に、相補的DNA又は相補的RNAとの二本鎖の高い熱安定性をもたらす。
偽環オリゴ核酸(PCO)を本発明において調節因子として使用することもできる(米国特許第6383752号参照)。PCOは、3’−3’端又は5’−5’端を介して接続された2つのオリゴヌクレオチド断片を含んでいる。PCOの1つの断片(「機能的断片」)は、いくつかの機能性(例えば、標的RNAに対する相補性)を有する。もう1つの断片(「保護断片」)は、(機能的断片が接続される末端に依存して)機能的断片の3’又は5’端末側終端に対して相補的である。機能的断片と保護断片との間の相補性の結果として、PCOは、標的核酸(例えば、RNA)の非存在下において分子間偽環構造を形成する。PCOは、3’−3’結合又は5’−5’結合の存在、及び、分子間偽環構造の形成に起因して、従来のオリゴヌクレオチドよりも安定である。マウスにおける薬物動態調査、生体内分布調査、及び、安定性調査によって、PCOは、インビボにおいてPSオリゴヌクレオチド全般よりも高い安定性、並びに、PSオリゴヌクレオチド全般と類似した薬物動態及び生体内分布特性を有するが、特定の組織からは急速に除去されることが示唆されている。蛍光色素分子及び消光分子が本発明のPCOに適切に結合していれば、その分子は、線形構造にある時に発光するが、その発光は環構造中で消光される。この特徴を、潜在的な調節因子としてPCOを選別するために使用することができる。
他の例示的一実施形態において、調節因子は、ペプチドをベースとした調節因子である。核酸リガンドのペプチドベース調節因子は、オリゴヌクレオチド又はその類似化合物に対する調節因子の代替的分子クラスの1つを意味する。標的核酸リガンドとオリゴヌクレオチド調節因子との間の核生成を促進するための充分な一本鎖領域がないことに起因して、標的核酸リガンドの充分に活性なオリゴヌクレオチド調節因子を単離することができない場合には、調節因子のこのクラスが特に有用である。さらに、ペプチド調節因子は、オリゴヌクレオチド調節因子とは異なる生物学的利用可能性及び薬物動態を与える。例示的一実施形態においては、調節因子がプロタミンである(Oneyら、2009、Nat.Med.15:1224−1228)。プロタミンは、水に可溶であり、熱によって凝固せず、アルギニン、アラニン及びセリンを含む(大部分がプロリン及びバリンをさらに含んでおり、また、多数はグリシン及びイソロイシンを含んでいる)。調節因子には、プロタミン変異体(例えば、Wakefieldら、J.Surg.Res.63:280(1996)参照)、及び、米国公開公報第20040121443号に記載されているものを含むプロタミンの修飾された形態が含まれる。他の調節因子には、米国特許第6624141号及び米国特許公開公報第20050101532号に記載ているもののようなプロタミン断片が含まれる。調節因子には、一般に、ヘパリン、他のグリコサミノグリカン又はプロテオグリカンの活性を調節するペプチドが含まれる(例えば、米国特許第5919761号参照)。例示的一実施形態において、調節因子は、ポリLリジン及びポリLオルニチン等の電荷間相互作用を安定させることができる陽イオン性NH基を含むペプチドである。
標的核酸リガンドに結合することができ、それによって標的核酸リガンドの活性を調節することができるペプチドを単離するいくつかの戦略が利用可能である。例えば、コードされてビーズに固定されたペプチドコンビナトリアルライブラリが記載されている。このライブラリは、ウィルスRNA配列に結合することができ、かつ、RNAに特異的に結合するウイルス制御タンパクとそのウィルスRNAとの間の相互作用を乱すことができるペプチドを含むことが実証されている(Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci USA、1999、96:12997)。標的核酸リガンドにラベルを付し、ライブラリのいくつかのペプチドと核酸との間の結合を促進する条件下で、ラベルを付した標的とビーズに固定されたペプチドライブラリとを一緒にインキュベートすることによって、そのようなライブラリを使用して核酸リガンドの調節因子を単離することができる。所定のビーズ上の特定のペプチドに対する核酸リガンドの結合は、その核酸リガンド上のラベルによってそのビーズを「有色」にし、したがって、ビーズの単純な分離によって、標的に結合できるペプチドの同定が可能になる。そのような選抜方法によって分離されたペプチドと標的核酸リガンドとの間の直接的な相互作用は、核酸リガンドの調節因子を同定するために記載されている任意の数の結合分析を使用して、確認及び定量することができる。前記ペプチドが標的核酸リガンドの活性を調節する能力は、適切な生物学的分析によって確認することができる。
さらなる実施形態において、調節因子は、オリゴ糖をベースとした調節因子である。オリゴ糖は、核酸と相互作用することができる。例えば、抗生剤アミノグリコシドは、ストレプトミセス(Streptomyces)種の生成物であり、様々なリボザイム、リボソームのRNA成分、及び、HIV−1のTAR配列及びRRE配列等のRNA分子の種々の配列と特異的に相互作用する。したがって、オリゴ糖は、核酸に結合することができ、核酸リガンドの活性を調節するために使用することができる。
他の一実施形態において、調節因子は、小分子をベースとした調節因子である。リガンドと標的との間にインターカレートする、又は、リガンドと標的との間の結合を崩壊若しくは修飾する小分子を、治療的調節因子として使用することができる。小分子を用いて及び小分子を用いずにリガンドと標的との間の結合変化を測定する分析において候補を選別することによって、又は、小分子を用いて及び小分子を用いずにインビボ若しくはインビトロにおいて標的に対するリガンドの生物学的作用における差を測定する分析を使用することによって、そのような小分子を同定することができる。所望の結果を与える小分子が同定されれば、所望の制御効果のために化学構造を最適化するために、組み合わせのアプローチ等の技術を使用することができる。
さらなる例示的一実施形態において、調節因子は、核酸結合ポリマー、脂質、ナノ粒子又はミクロスフェアである。さらなる非限定的な例において、調節因子は:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−エチルホスフォコリン(EDOPC);ジラウロイルエチルホスファチジルコリン(EDLPC);EDLPC/EDOPC;ピリジニウム界面活性剤;ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE);(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(ドデシロキシ)−1−プロパナミニウムブロミド(GAP−DLRIE)に、前述の中性共脂質である、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を加えたもの(GAP−DLRIE/DOPE);(±)−N,N−ジメチル−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−2,3−ビス(ジオレオイルオキシ−1−プロパニミニウムペタヒドロクロリド(DOSPA);ジラウロイルエチルホスファチジルコリン(EDLPC);エチルジミリストイルホスファチジルコリン(EDMPC);(±)−N,N,N−トリメチル−2,3−ビス(z−オクタデカ−9−エン−オイルオキシ)−1−プロパナミニウムクロリド(DOTAP);(±)−N−2−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(テトラデシロキシ)−1−プロパナミニウムブロミド(DMRIE);(±)−N,N,N−トリメチル−2,3−ビス(z−オクタデカ−9−エニルオキシ)−1−プロパナミニウムクロリド(DOTMA);5−カルボキシスペルミルグリシン・ジオクタデシル・アミド(DOGS);ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン・5−カルボキシスペルミルアミド(DPPES);1,3−ジオレオイルオキシ−2−(6−カルボキシスペルミル)−プロピルアミド(DOSPER);テトラメチル・テトラパルミトイル・スペルミン(TMTPS);テトラメチルテトラオレイルスペルミン(TMTOS);テトラメチルテトララウリルスペルミン(TMTLS);テトラメチルテトラミリスチルスペルミン(TMTMS);テトラメチルジオレイルスペルミン(TMDOS);ジフィタノイルホスファチジル・エタノールアミン(DPhPE);及び、(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(ドデシロキシ)−1−プロパナミニウムブロミド(GAP−DLRIE)からなる群より選択することができる。
他の実施形態において、調節因子は:キトサン;キトサン誘導体;1,5−ジメチル−1,5−ジアザウンデカメチレン・ポリメトブロミド;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体;ポリLリジン;ポリアミドアミン(PAMAM);β−シクロデキストリン含有ポリカチオン(CDP);β−シクロデキストリン含有ポリカチオン(イミダゾール含有変異体)(CDP−Im);ポリホスホロアミダートポリマー(8kDa、30kDa)(PPA−DPA 8k、PPA−DPA 30k);ポリブレン;スペルミン;PEG−ブロック−PLL−デンドリマ;ポリエチレンイミン(PEI);マンノース・PEI;トランスフェリン・PEI;線状・PEI(lPEI);ゼラチン;メタクリレート/メタクリルアミド;ポリ(β−アミノエステル);高分子電解質複合体(PEC);ポリ(ビニルアミン)(PVA);コラーゲン;ポリプロピレンイミン(PPI);ポリアリルアミン;ポリビニルピリジン;アミノアセタール化されたポリ(ビニルアルコール);アクリル酸ポリマー又はメタクリル酸ポリマー;Newkomeデンドリマー;ポリフェニレン;ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DAB);セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB);アルブミン;酸処理したゼラチン;ポリリシン;ポリオルニチン;ポリアルギニン;DEAEセルロース;DEAEデキストラン;ポリ(N,N−ジメチルアミノメタクリレート;及び、ポリプロピルアミン(POPAM)からなる群より選択される。
一実施形態において、調節因子は、キトサン及びキトサン誘導体から選択される。キトサン誘導体は、水溶性キトサンナノ粒子(米国特許第6475995号;米国特許出願第2006/0013885号;Limpeanchobら、(2006) Efficacy and Toxicity of Amphotericin B−Chitosan Nanoparticles、Nareusan University Journal14(2):27−34記載されているもの)を含む。キトサンポリマー(グルコサミンモノマーの繰り返しから実質的に構成される非常に大きいポリアミンポリマー)のポリカチオン的特性を考慮して、接種者への注入に続いて、インビボにおいてリガンドを凝集させ及び/又は高分子電解質複合体中に閉じ込めるために、キトサンを使用することができる。これは、一部分において、キトサン上にみられる第1級アミンとリガンドのリン酸ジエステル骨格との相互作用に基づいている。
特定の実施形態においては、水溶性及び荷電状態を変化させるために、キトサンポリマー上の第1級アミンを実質的に修飾することができる。キトサン誘導体は:様々な程度の四級化度で合成され得るトリメチルキトサンクロリド(TMC);両性ポリマーであるモノカルボキシメチル化キトサン(MCC);グルタルアルデヒドと架橋したキトサン誘導体(CSGA);チオール化されたキトサン(Leeら、(2007)Pharm.Res.24:157−67);グリコールキトサン(GC);エチレングリコールと共役したキトサン誘導体(Leeら、(2007) Int J Pharm);[N−(2−カルボキシベンジル)キトサン(CBCS)(Linら、(2007)Carbohydr Res.342(1):87−95);β−シクロデキストリンキトサンポリマー(Venterら、(2006) Int J Pharm.313(1−2):36−42);O−カルボキシメチルキトサン;N,O−カルボキシメチルキトサン;又は、キサンテート基を骨格に導入することによって化学修飾されたキトサンを含む。
一実施形態においては、中空のキトサンナノ粒子を生成し、その粒子を調節因子として使用する。10,000da〜1,000,000daの範囲内の分子量のキトサン又はキトサン誘導体を使用することができる。特定の実施形態において、キトサンの分子量は500,000da以下である。特定の実施形態において、キトサンの分子量は100,000da以下である。いくつかの実施形態において、この化合物の分子量は、10000Da〜100000Da、10000Da〜90000Da、10000Da〜80000Da、20000Da〜700000、30000Da〜70000Da、約30000、約40000Da、約50000Da、又は、約60000Daである。
いくつかの実施形態においては、脱アセチルされた第1級アミンを様々な程度で含むキトサンポリマーが使用される。これらの実施形態において、脱アセチルの程度が様々であることによって、ポリマーの荷電状態が変化し、それによってポリマーの結合特性が変化する。接種者の体内でキトサンナノ粒子がリガンドと接触すると、リガンドは、ナノ粒子表面に結合して捕捉されるか、又は、ナノ粒子の中に入ってイオン相互作用によって閉じ込められる。
他の一実施形態において、調節因子は、ポリホスフェートポリマーミクロスフェアである。特定の実施形態において、米国特許第6548302号に記載されているように、調節因子は、ポリ(L−ラクチド−コ−エチル−ホスファイト)又はP(LAEG−EOP)等のミクロスフェア及びその他のものの誘導体である。そのようなポリマーは、重合体の骨格の一部分として様々な官能基を含むように生産されたものであってもよい。一例において、このポリマーは、接触したときに、1つ以上の核酸と複合化するか又はその核酸を閉じ込めることができるように、陽電荷を有する第四級アミンを生理学的pHにおいて含んでいてもよい。特定の実施形態において、ポリマーはプラス電荷を含まない。
本発明は、核酸GPVIリガンドの調節因子を同定する方法も提供する。一般に、結合分析、分子モデリング、又は、生物学的機能の変化を測定するインビボ若しくはインビトロにおける分析を通じて、調節因子を同定することができる。一実施形態において、ゲルシフト分析によって、核酸に対する調節因子の結合を測定する。他の一実施形態においては、BIACORE分析によって、核酸リガンドに対する調節因子の結合を測定する。
本発明の調節因子を同定及び選抜するために、標準結合分析を使用することができる。非限定的な例は、ゲルシフト分析及びBIACORE分析である。すなわち、試験条件下又は典型的な生理的条件下において、標的とする核酸リガンドに試験用調節因子を接触させて、実際にその試験用調節因子がリガンドに結合するかどうかを決定することができる。その後、標的分子に対するリガンドによって生じる生物学的作用にその試験用調節因子が影響を与えることができるかどうか判断するために、核酸リガンドに結合することが判明した試験用調節因子を、適切な生物学的分析(この分析は、リガンド及び標的分子に応じて変わり、例えば、凝集試験法が挙げられる)において分析することができる。
ゲルシフト分析は、結合能力を評価するために使用される周知の技術である。例えば、最初に、試験用配列を含むDNA断片を、試験用タンパク又は推定される結合タンパクを含む混合物と共にインキュベートし、次に、インキュベートしたものを電気泳動によってゲル上に分離する。DNA断片がタンパクに結合していれば、サイズがより大きくなり、したがって、その移動は、結合していない断片の速度よりも遅くなる。例えば、電気泳動によるゲル移動シフト分析のための1つの方法は、(a)複合体の形成においてタンパクと核酸との間の特異的結合相互作用を促進するのに適した条件下で、分子プローブを含む非放射性又は放射性のラベルを付した核酸分子に核酸結合タンパクを混合物中で接触させるステップであって、前記プローブが二本鎖DNA、1本鎖DNA及び1本鎖RNAからなる群より選択されるステップと、(b)その混合物を電気泳動するステップと、(c)複合体中の非放射性又は放射性のラベルを検出することによって、膜に結合した複合体を検出するステップであってもよい。
BIACORE技術は、センサチップ表面における結合現象を測定し、表面に付着した反応体によって分析の特異性が決定される。相互作用の特異性の試験は、固定された反応体に様々な分子が結合することができるかどうかを単純に分析することを含む。結合によって表面プラズモン共鳴(SPR)信号が急速に変化し、その結果、相互作用が生じているかどうかが直接明らかになる。表面プラズモン共鳴に基づいたバイオセンサは、表面に近い生体分子の質量濃度を測定することによって、相互作用を測定する。その表面を、相互作用のパートナーの1つを付着させることによって特異的にする。別のパートナーを含むサンプルは表面上を流れる。すなわち、サンプルに由来する分子が表面に付着させた反応体と結合するときに、局所的濃度が変化して、SPR反応が測定される。その反応は、表面に結合する分子の質量に正比例する。
特定の条件下において、異なる屈折率の2つの媒体間の界面において電導膜から光が反射されるときに、SPRが生じる。BIACORE技術において、媒体はサンプルとセンサチップのガラスであり、電導膜は、チップ表面上の金の薄層である。SPRは、特定の反射角で反射光線の強度の低下を生じさせる。この角度は、反射光線から反対側の表面付近の屈折率に応じて変わる。サンプル中の分子がセンサ表面と結合するときに、濃度、したがって、表面における屈折率が変化して、SPR反応が検出される。相互作用中の時間に対して反応をプロットすることによって、相互作用の進行の定量的測度が与えられる。BIACORE技術は、最小の反射光強度の角度を測定する。この光はサンプルに吸収されない。すなわち、この光エネルギーは金の膜においてSPRによって消失する。SPR反応値は共鳴単位(RU)で表される。1RUは、最小強度の角度における0.0001度の変化を表し、ほとんどのタンパクについて、これは、センサ表面における約1pg/mm2の濃度変化におおよそ等しい。RUと表面濃度との間の正確な変換係数は、センサ表面の特性、及び、濃度変化の原因となる分子の性質に応じて変わる。
標的との相互作用が変化するように、オリゴヌクレオチド若しくはその類似化合物、ペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖又は小分子がリガンドに結合することができるかどうか判断できる他の多数の分析方法が存在する。ある物質が核酸リガンドに結合する能力を評価するために、例えば、電気泳動度移動分析(EMSA)、滴定熱量測定、シンチレーション近接アッセイ、分析用超遠心法を使用した沈澱平衡分析(例えば、www.cores.utah.edu/interaction参照)、蛍光偏光分析、蛍光異方性分析、蛍光強度分析、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)分析、ニトロセルロースフィルタ結合分析、ELISA、ELONA(例えば、米国特許第5789163号参照)、RIA、又は、平衡透析法分析を使用することができる。物質と核酸リガンドとの間の相互作を直接的に測定する直接分析を実行することができる。又は、物質がターゲットからリガンドを置き換える能力を測定する競合分析若しくは置換分析を実行することができる(例えば、Green、Bell and Janjic、Biotechniques 30(5)、2001、p1094、及び、米国特許第6306598号参照)。調節因子の候補を同定したら、標的に対する核酸リガンドの活性を調節因子が調節する能力を、生物学的分析において確認することができる。あるいは、リガンドの標的との相互作用を調節することができる物質を同定したら、その物質がリガンドと直接的に相互作用しており、その相互作用の親和性を測定することができることを確認するために、そのような結合分析を使用することができる。
他の一実施形態においては、核酸リガンドに結合する調節因子の同定、調節因子と核酸リガンドとの間の相互作用の部位、及び、リガンドに対する物質の相対的結合親和性のために、質量分光測定を使用することができる(例えば、米国特許第6329146参照)。選択されたターゲットリガンドに結合する各化合物であって、そのリガンドの調節因子として使用することができるものを目的として、化学混合物又はライブラリ(特に組み合わせライブラリ)を選別するために、そのような質量分光方法を使用することもできる。更に、複数のターゲット核酸リガンドを同時に選別するために、例えば、化合物の組み合わせライブラリに対して、質量分光技術を使用することができる。さらに、複数の分子種間、特に「小さい」分子間における相互作用を同定するために、及び、ターゲットリガンドの分子相互作用部位を同定するために、質量分光技術を使用することができる。
核酸リガンドと標的との間の相互作用を変更することにおける調節因子の有効性を評価するインビボ又はインビトロにおける分析は、治療する病気に対して特異的である。使用可能な周知の生物学的特性についての充分な標準的分析が存在する。生物学的分析の例は、本出願において引用されている特許に提供されている。それらの特許には、特定の用途のための特定の核酸リガンドが記載されている。
いくつかの実施形態において、調節因子は小分子である。例えば、特定の実施形態において、核酸リガンドは、ビオチン分子に連結されている。それらの例においては、リガンドに結合させてリガンドの効果を無効化するために、ストレプトアビジン又はアビジンを投与する(Saviら、J Thrombosis and Haemostasis、6:1697−1706参照)。アビジンは、鳥類、爬虫類及び両生類の卵管において生産される四量体のタンパクであり、それらの生物の卵の白身に蓄積される。ストレプトアビジンは、細菌ストレプトミセスアビジニイ(Streptomyces avidinii)から精製された四量体タンパクである。この四量体タンパクは、4つの同一のサブユニット(ホモ四量体)を含んでおり、これらのサブユニットのそれぞれは、高い程度の親和性及び特異性でビオチン(ビタミンB7、ビタミンH)に結合することができる。
特定の実施形態においてが、調節因子が陽イオン性分子である。特定の実施形態において、リガンドは、グアニン四重鎖(G−四重鎖又はG−四本鎖)構造を形成している。これらの構造は、陽イオン性分子によって結合している。特定の実施形態において、前記分子は、金属キレート化分子である。いくつかの実施形態においては、調節因子がポルフィリンである。いくつかの実施形態においては、前記化合物がTMPyP4である。Joachimiら、JACS 2007、129、3036−3037、及び、Toroら、Analytical Biochemistry 2008年8月1日、379(1)8−15を参照されたい。
一実施形態において、調節因子は、10(10.0)マイクロモル(μM)未満、1(1.0)マイクロモル(μM)未満、好ましくは0.1μM未満、及び、より好ましくは0.01μM未満の調節因子濃度の溶液中において核酸リガンドに実質的に結合する能力を有する。「実質的に」は、標的の存在下において、調節によって標的の生物活性の少なくとも50パーセントが低下することが観察されることを意味する。また、本明細書において50%の低下をIC50値と称する。
F.リガンド及び調節因子の最適化
リガンドを治療的用途に適するものとするために、そのリガンドは、安価に合成され、接種者における使用が安全であり、インビボにおいて安定であることが好ましい。野生型RNAオリゴヌクレオチド及び野生型DNAオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼによる分解を受けやすいので、一般に、インビボにおいて安定ではない。2’位に修飾基を組み込むことによって、ヌクレアーゼによる分解に対する抵抗性を大幅に向上させることができる。
後でリガンドを選抜するオリゴヌクレオチドプールに2’−フルオロ基又は2’−アミノ基を組み込むことができる。リガンド選抜のための最初のオリゴヌクレオチドプールを生成するために、本開示においては、インビトロの転写反応において2’−フルオロピリミジンを使用した(実施例1参照)。しかしながら、各プリン位に2’−ヒドロキシル糖を含むそのようなライブラリから選択されて得られるリガンドは、したがって、インビボにおいて相当するRNA又はDNAのリガンドより安定ではあるものの、さらなる最適化を必要とする。従って、本明細書に記載されている方法を使用して同定されたリガンドは、機能性及び安定性を高めたのみならず、大規模製造プロセスの実現可能性を高めたリガンドを得るための様々な方法で、その後に修飾される。
リガンド(例えば、SELEXによるもの)及び調節因子(例えば、配列相補性に基づいた設計)の最初の同定の後に、所望の構造、機能及び/又は安定性を改良するために、様々な手段によってリガンド及び調節因子を修飾又は改変することができる。これらは、以下に限定されないが、特定の糖残基を置換すること、リガンド中の特定の領域及び/又は構造の組成と大きさを変更すること、並びに、調節因子によってより効果的に制御され得るリガンドを設計することを含む。
核酸リガンドの設計及び最適化は、リガンドの二次構造の認識のみならず、二次構造と調節因子制御との関係を含む。核酸を修飾するための従来の方法式とは異なり、GPVIタンパクに対するリガンドの設計は、リガンドの変更が、潜在的な調節因子の設計に対して与える影響を考慮することを含んでいてもよい。リガンドを切断によって修飾する場合には、例えば、対応する調節因子は、その切断されたリガンドを制御するように設計されるべきである。
SELEXプロセスを通じて同定されたリガンドの二次構造は、当業者に知られている様々な方法によって予測可能である。例えば、各配列をMfold等のソフトウェアプログラムを使用して分析することができる(mfold.bioinfo.rpi.edu;また、Zuker、2003、Nucleic Acids Res.31:3406−3415、及び、Mathewsら、1999、J.Mol.Biol.288:911−940を参照されたい)。次に、保存された共通する二次構造エレメントに基づいて、予測されるGPVIリガンドの二次構造に達するようにその配列を整列させるために、選択された様々な配列の比較配列分析を使用することができる(実施例2参照)。上述されているような分析によって、向上した機能性及び安定性を有するリガンドを生成するように、SELEXによって得られる配列の変異体を設計及び試験することが可能になる。
リガンド全体の長さだけでなく、軸構造及び環構造の長さを変更することによって、本発明のGPVI核酸リガンドを修飾することができる。例えば、SELEXプロセスで選択したリガンドの5’末端及び/又は3’末端の一部分を削除するように、リガンド切断を生じさせることができる。リガンドが耐えられる切断の範囲を決定するために、そのリガンドの5’又は3’末端部位に対して相補的なオリゴヌクレオチド(例えば、DNAオリゴヌクレオチド)を加熱してそのリガンドにアニーリングし、その後、アニーリングされたオリゴヌクレオチドを有するリガンドの結合と、オリゴヌクレオチドを有しないリガンドの結合とを比較する方法を使用することができる。アニーリングされたオリゴヌクレオチドを有するリガンドの結合と、オリゴヌクレオチドを有しないリガンドの結合との間に顕著な差がみられなければ、このことは、リガンドのアニーリングされた部分が標的タンパクに対するそのリガンドの結合にとって重要ではないことを示唆する。完全に機能するリガンドを与える5’及び3’の境界を決定するために、リガンドの5’末端又は3’末端の様々な長さに対してアニーリングするオリゴヌクレオチドを使用して、この方法を実行することができる。
他の一実施形態において、設計は、リガンドの大きさを小さくすることを含む。他の一実施形態において、調節因子の大きさは、リガンドの大きさに関連させて変更される。さらに別の一実施形態において、グアニン鎖は、4個未満のグアニン、3個未満のグアニン、若しくは、2個未満のグアニンとなるように、又は、グアニンを全く含まないように減らされる。しかしながら、適切な活性を与え、かつ、調節因子によって容易に無効化されるリガンドを生成するという課題を、これらの変更の複合効果が満たさなければならない。
調節因子のターゲッティングのために、オリゴヌクレオチド調節因子との結合を促進するために、一本鎖の尻部(3’又は5’)を含むように、その改良されたリガンドを修飾することができる。適切な尻部は、1nt〜20nt、好ましくは1nt〜10nt、1nt〜5nt、又は、3nt〜5ntを含んでいてもよい。以下にさらに詳細に説明されているように、修飾されたヌクレオチドが、そのような尾部に含まれていてもよいことは、容易に理解されるであろう。
一本鎖の尾部を付加することによってリガンドの活性構造が崩壊しないことを確認するために、結合分析及び生物学的分析において(例えば、以下に説明されているように)、尾部を有するリガンドを試験することができる。例えば、尾部配列と1個、3個、又は、5個の塩基対を形成することができる一連の複数のオリゴヌクレオチド(例えば、2’−O−メチルオリゴヌクレオチド)を設計し、それらのオリゴヌクレオチドを、尾部を有するリガンドに単独で結合する能力のみならず、標的分子からのリガンドの解離の速度を速める能力、又は、標的分子とリガンドの結合の速度を速める能力について試験することができる。その効果が二本鎖形成によるものであり、非特異的効果ではないことを確認するために、順序を入れ替えたコントロール配列を使用することができる。
共通構造の決定は、リガンド構造及び機能を向上又は低下させることができる1つ以上のヌクレオチドを同定するためのリガンドの改変を容易にする。例えば、特定の軸構造及び環構造に対するヌクレオチドの付加、削除及び置換を、より効率的に同定及び試験することができる(実施例3参照)。
共通の二次構造についての知識によって、リガンド構造及び機能に対して有害となり得る修飾を回避することができる。例えば、軸部又は環内部のそのような2’−フルオロ等のように、共通の二次構造の内部に特定の修飾が保存されていてもよい。これらの例において、リガンドの軸部又は環からの2’−フルオロの除去は、活性の喪失を生じさせることができる。
特定の実施形態において、リガンドは、表1〜表7から選択される核酸分子であり、それらの切断された配列及び実質的に相同な配列も含む。本明細書で用いられているように、相同部位の文脈において、「実質的に相同な」配列は、特定の分子内のワトソンクリック型塩基対によって同じ二次構造を形成する配列である。特定の実施形態において、複数の配列が特定のリガンドに対して、少なくとも80%、85%、又は、より高い配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を共に有する場合には、それらの複数の配列が「実質的に相同」である。50個以下のヌクレオチド等のような特定の長さの核酸リガンドの文脈において、相同な配列は、特定の領域中の配列同一性にかかわらず、ワトソンクリック型結合が同じ二次構造を形成できるあらゆる部位にみられる。
リガンドは、自己不活性化部位を有するように設計されたものであってもよい。それによって、ペアにした調節因子によるさらに効果的な制御が可能になる。調節因子がリガンドに結合するときに、自己不活性化位置が一本鎖になって不安定になり、それによって、血液エンドヌクレアーゼ又は肝臓エンドヌクレアーゼ等のような血液中に天然に存在する酵素によるリガンドの切断が容易になる。これは、循環からの活性リガンドの有効かつ実質的に急速な除去のための手段となる。
化学的修飾
核酸の治療的使用において生じる問題の1つは、求められる効果が現れる前に、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ等のような細胞内酵素及び細胞外酵素によって、リン酸ジエステル形態のオリゴヌクレオチドが体液中で急速に分解されてしまうということである。核酸リガンドの特定の化学的修飾は、インビボにおける核酸リガンドの安定性を高めることができ、又は、核酸リガンドの送達を向上若しくは媒介することができる。さらに、特定の化学的修飾は、核酸リガンド内で所望の構造エレメントの形成を安定化若しくは促進することによって、又は、標的分子にさらなる分子相互作用を与えることによって、標的に対する核酸リガンドの親和性を高めることができる。
リガンドの修飾は、以下に限定されないが、さらなる電荷、分極率、疎水性、水素結合、静電相互作用、及び、機能性を、核酸リガンドの塩基又はリガンド全体に組み込む化学基を与えるものを含んでいてもよい。そのような修飾は、以下に限定されないが、2’位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンにおける修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモウラシル又は5−ヨードウラシルの置換、骨格修飾、ホスホロチオエート修飾又はアルキルホスフェート修飾、メチル化、及び、イソ塩基であるイソシチジンとイソグアニジン等のような異常な塩基対合の組み合わせを含む。修飾は、キャッピング等のような3’修飾及び5’修飾を含んでいてもよい。
SELEX法は、インビボにおける向上した安定性又は向上した送達特性等のように、向上した特性をリガンドに与える修飾ヌクレオチドを含む高親和性の核酸リガンドの同定を包含する。そのような修飾の例には、リボース及び/又はホスフェート及び/又は塩基の位置における化学的な置換が含まれる。修飾ヌクレオチドを含むSELEXで同定された核酸リガンドは、米国特許第5660985号に記載されている。その米国特許には、ピリミジンの5位及び2’位が化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含むオリゴヌクレオチドが記載されている。米国特許第5580737号には、2’−アミノ(2’−NH2)、2’−フルオロ(2’−F)、及び/又は、2’−O−メチル(2’−OMe)で修飾された1つ以上のヌクレオチドを含む特殊な核酸リガンドが記載されている。米国特許第5756703号には、2’位が修飾された様々なピリミジンを含むオリゴヌクレオチドが記載されている。
SELEX法は、選択されたオリゴヌクレオチドを、他の選択されたオリゴヌクレオチド、並びに、米国特許第5637459号及び第5683867号に記載されているような非オリゴヌクレオチド機能単位に組み合わせることを包含する。米国特許第5637459号には、2’−アミノ(2’−NH2)、2’−フルオロ(2’−F)、及び/又は、2’−O−メチル(2’−OMe)で修飾された1つ以上のヌクレオチドを含む非常に特殊な核酸リガンドが記載されている。SELEX法は、選択された核酸リガンドを、米国特許第6011020に記載されている診断用又は治療用の複合体中の脂肪親和性又は非免疫原性の高分子化合物に組み合わせることをさらに包含する。
SELEX法によって核酸リガンドが得られる場合には、修飾が、SELEX前又は後の修飾であってもよい。SELEX前修飾によって、標的に対する特異性及び向上したインビボ安定性の両方を有するリガンドを作成することができる。核酸リガンドの2’−ヒドロキシル(2’−OH)に対するSELEX後修飾によって、核酸リガンドの結合能力を損なうことなく、インビボ安定性を向上させることができる。一実施形態において、リガンドの修飾は、分子の3’末端の3’−3’反転ホスホジエステル結合、2’−フルオロ(2’−F)、2’−アミノ(2’−NH2)、2’デオキシ、及び/又は、2’−O−メチル(2’−OMe)の修飾を含む。この修飾は、ヌクレオチドのすべて又はいくつかにおける修飾である。
C残基及びU残基を2’−フルオロで置換し、A残基及びG残基が2’−OHで置換した転写物のライブラリを使用して、本明細書に記載されているリガンドを、SELEXによって最初に生成した。そのような修飾は、選抜に適したリガンド分子を生じさせるものの、2’位のヒドロキシル含有が高いものは、これらの位置がインビボにおいてヌクレアーゼによる分解を非常に受けやすく、非経口適用後に達成される最高濃度が限定されるのみならず、循環半減期が限定されるという事実に起因して薬剤候補に適さない。従って、SELEX法等によって機能的配列を同定したら、リガンド構造、機能、及び、安定性に対するこれらの置換の影響を評価することによって、個々の残基を、置換に対する耐性について試験することができる。
特定の実施形態において、リガンドを構成する核酸は、修飾された糖及び/又は修飾された塩基を含む。特定の実施形態において、修飾は、2’安定化修飾等のような安定化修飾を含む。一実施形態において、2’安定化修飾は、糖環における2’−フルオロ修飾、2’デオキシ修飾又は2’−O−メチル修飾を含んでいてもよい。
一実施形態において、設計には、リガンド若しくは調節因子又は両方の2’−ヒドロキシル含有量を減少させることが含まれる。他の一実施形態において、設計には、リガンド若しくは調節因子又は両方の2’−フルオロ含有量を減少させることが含まれる。他の一実施形態において、設計には、リガンド若しくは調節因子又は両方の2’−O−メチル含有量を増加させることが含まれる。
オリゴヌクレオチドは、以下に限定されないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル、ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル、チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2、2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2α−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−イソペンテニルアデニン、ウラシルオキシ酢酸、ワイブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチルチオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシルオキシ酢酸(v)、5−メチルチオウラシル、3−(3−アミノ−3−Nカルボキシプロピル)及び2,6−ジアミノプリンを含む基から選択される少なくとも1つの修飾塩基部位を含んでいてもよい。
以下に記載されているリガンド及び調節因子のオリゴヌクレオチドは、修飾された糖基を含んでいてもよく、例えば、1つ以上の水酸基が、ハロゲン、脂肪族基で置換されているか、又は、エーテル若しくはアミンとして官能化されている。一実施形態において、フラノース残基の2’位は、O−メチル、O−アルキル、O−アリル、S−アルキル、S−アリル、又は、ハロ基の任意のものによって置換されている。他の一実施形態において、本発明の核酸リガンド又は調節因子は、以下に限定されないが、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、ヘキソース、2’−フルオロリボース、2’−O−メチルリボース、2’−O−メトキシエチルリボース、2’−O−プロピルリボース、2’−O−メチルチオエチルリボース、2’−O−ジエチルアミノオキシエチルリボース、2’−O−(3−アミノプロピル)リボース、2’−O−(ジメチルアミノプロピル)リボース、2’−O−(メチルアセトアミド)リボース、及び、2’−O−(ジメチルアミノエチルオキシエチル)リボースを含む群から選択される少なくとも1つの修飾された糖部位を含んでいてもよい。
リガンド又は調節因子は、以下に限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、メチルホスホナート、アルキルホスホトリエステル、及び、ホルムアセタール、又は、これらの類似物を含む群から選択される少なくとも1つの修飾されたホスフェート骨格を含んでいてもよい。
治療的用途のために、1つ以上の核酸環構造をより安定した環構造で置換することによって、軸構造と環構造とを含むリガンド分子をさらに安定化することができる。例えば、本明細書に記載されているGPVIリガンドについて、ヘキサエチレングリコールスペーサによる環2の置換は、同等の親和性を有するGPVIリガンド、及び、ヌクレオチジル環を有する抗GPVIリガンドを生じさせることがわかった。図13Aは、合成において使用されるヘキサエチレングリコールリンカーのための出発物であるホスホラミダイトを示している。図13Bは、核酸リガンドの2個のヌクレオチドの間に組み込まれた時のヘキサエチレングリコールスペーサを示している。
医薬品組成物中において、リガンドは、溶解度又は生物学的利用性を向上させる塩形態等のような形態で提供されていてもよい。
本発明のオリゴヌクレオチドのあらゆるものは、例えば、自動DNA合成装置(例えば、バイオサーチ、アプライドバイオシステムズから購入できるものなど)を使用することによって、当業界で知られている標準分析法によって合成できる。
本明細書において、リガンド及び修飾剤は、当業者によって容易に理解される略語を使用して記載されており、以下のように記載されている。「rA」は、2’OH A又はアデノシンである。「A」は、2’−デオキシA又は2’−デオキシアデノシンである。「mA」は、2’−O−メチルA又は2’−メトキシ−2’−デオキシアデノシンである。「rG」は2’−OH G又はグアノシンである。「G」は、2’−デオキシG又は2’−デオキシグアノシンである。「mG」は、2’−O−メチルG又は2’−メトキシ−2’デオキシグアノシンである。「fC」は、2’−フルオロC又は2’−フルオロ−2’デオキシシチジンである。「mC」は、2’−O−メチルC又はメトキシ−2’−デオキシシチジンである。「fU」は、2’−フルオロU又は2’−フルオロウリジンである。「mU」は、2’−O−メチルU又は2’−メトキシウリジンである。「iT」は、反転した2’HTであり、(C6L)は、ヘキシルアミノリンカーである。(6GLY)は、ヘキサエチレングリコールスペーサである。(PEG40KGL2−NOF)は、約40kDa分岐したPEG(SUNBRIGHT(商標)製品番号GL2−400GS2)である。(6FAM)は、6−カルボキシフルオレスセインである。(s)は、2個のヌクレオチド間のホスホロチオエート結合である。
担体への結合
GPVIリガンドは、生物学的利用性又は安定性を向上させる修飾を含んでいてもよい。そのような修飾は、担体分子に対する接合を含んでいてもよい。担体分子は、限定されないが、親水性又は疎水性の部位を含んでいてもよい。一例は、核酸配列に結合したポリエチレングリコール分子である。例えば、後述されているようなポリマーへの接合は、リガンドの細胞質部分への分散を限定することができ、循環半減期を長くすることができる。
糖修飾は、上述されているように、安定性を保証することができるが、核酸リガンドが治療的に活性であるための適切な薬物動態を保証しない。健康な個体において、リガンドは、おそらく、腎***を通じて静脈注射の数分以内に血漿から除去される。ポリエチレングリコール(PEG)等の大きい高分子にリガンドを接合させることによって、注射から数時間乃至数日間にわたって血液中で完全なリガンドを維持することが達成された。リガンドの血漿クリアランスは、リガンドをリポソーム中に埋め込むことによって低下した。
したがって、一実施形態において、GPVI核酸リガンド又はGPVIリガンドの調節因子は、ポリエチレングリコール(PEG)等の非免疫原性高分子化合物、又は、ポリアミノアミン(PAMAM)、デキストラン等のような多糖類、若しくは、ポリオキサゾリン(POZ)を含む(これらに限定されない)その他の水溶性の薬学的に許容可能なポリマーに共有結合によって結合していてもよいし、又は、他の態様で付着していてもよい。GPVI核酸リガンド又はGPVIリガンドの調節因子は、共有結合を介して高分子化合物に結合していてもよい。共有結合による連結を使用する場合には、リガンド又は調節因子の様々な位置に共有結合によって高分子化合物を結合させることができる。いくつかの実施形態においては、必要がある接種者に投与するために、リポソーム中にリガンド又は調節因子を閉じ込めることができる。
一実施形態においては、リガンド又は調節因子がポリエチレングリコール(PEG)に付着している。潜在的に(1)循環中の化合物の半減期を延ばし、(2)化合物の分布パターンを変化させ、及び/又は、(3)化合物を覆い隠すことによって、潜在的な免疫原性を低減し、また、酵素による分解から化合物を保護するための生物学的に「不活性」な担体として機能ように、ポリエチレングリコール(PEG)を活性化合物に接合させることができる。
リガンド又は調節因子は、共有結合を介してPEG分子に結合していてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドリガンド又は調節因子は、マレイミド又はビニルスルホンの官能基を介して5’−チオールに接合されていてもよい。
一般的に、活性化されるPEG及び他の活性化される水溶性高分子は、治療用薬剤の所望の位置に結合させるのに適した適切な活性基を用いて活性化される。これらのポリマーを活性物質に接合させるための代表的な高分子試薬及び方法は、当業界で知られており、例えば、Zalipsky, S.ら、「Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols) for Modification of Polypeptides」、Polyethylene Glycol Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications, J. M. Harris, Plenus Press, New York (1992);及び、Zalipsky, Advanced Drug Reviews, 1995, 16:157-182においてさらに記載されている。そのような試薬は市販されて購入することができる。
例えば、アミド結合による接合体を調製するための1つのアプローチにおいては、NHSエステル等のような活性化されたエステルを有する水溶性ポリマー(例えば、mPEG−スクシンイミジル−α−メチルブタノアート)を、活性物質のアミン基に反応させて、それによって活性物質と水溶性高分子との間のアミド結合を生じさせる。反応性アミノ基と反応できるさらなる官能基は、特に、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、p−ニトロフェニルカーボネート、スクシンイミジルカーボネート、アルデヒド、アセタール、N−ケト−ピペリドン、マレイミド、カルボニルイミダゾール、アザラクトン、環式イミドチオン、イソシアネート、イソチオシアナート、トレシルクロリド、及び、ギ酸ハロゲンを含む。
一実施形態において、複数のGPVIリガンド又はGPVIリガンド調節因子は、1個のPEG分子に結合していてもよい。結合する複数のリガンド及び調節因子は、同一又は異なる配列及び修飾であってもよい。さらに別の一実施形態において、複数のPEG分子は、互いに付着していてもよい。この実施形態において、同一のGPVIタンパク標的配列又は異なるGPVIタンパク標的配列に対する1つ以上のGPVIリガンド又はGPVIリガンド調節因子は、各PEG分子に結合していてもよい。同一の標的に対して特異的な複数のリガンド又は複数の調節因子がPEGに付着している実施形態においては、それらの同一の標的間の特異的な相互作用を生じさせるために、同一の標的を互いの近くに移動させる可能性がある。異なる標的に対して特異的な複数のリガンド又は複数の調節因子がPEGに付着している場合には、それらの標的間の特異的な相互作用を生じさせるために、別々の標的を互いの近くに移動させる可能性がある。
PEG分子等のような親水性部位を接合するための様々なリンカー及び様々な方法が、当業者に周知であるが、以下にいくつかの実施形態を提供する。一実施形態においては、合成されたオリゴヌクレオチドの5’末端にヘキシルアミノリンカーを付加するために、図14に示されているC6ヘキシルアミノリンカー、6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキサノール(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピル)ホスホラミダイト等のようなアミノリンカーを使用することができる。合成されたオリゴヌクレオチドにリンカーを付加するために使用することができる他のリンカーホスホラミダイトを以下に記載する。
下記構造:
を有するTFAアミノC4 CEDホスホラミダイト(ChemGenesから入手可能、カタログ番号CLP−1453)
下記構造:
を有する5’−アミノモディファイアC3 TFA(Glen Researchから入手可能、カタログ番号10−1923−90):
下記構造:
を有する 5’−アミノモディファイア5(Glen Researchから入手可能、カタログ番号10−1905−90)
下記構造:
を有する5’−アミノモディファイアC12(Glen Researchから入手可能、カタログ番号10−1912−90)
下記構造:
を有する5’チオールモディファイアC6(Glen Researchから入手可能、カタログ番号10−1926−90)
例えば、5’−チオールモディファイアリンカーは、PEG−マレイミド、PEG−ビニルスルホン、PEG−ヨードアセトアミド、及び、PEG−オルソピリジル−ジスルフィドと共に使用される。
PEGの分子量は5KD〜200KDであってもよく、典型的なPEGは、医薬製剤として10KD〜60KDの範囲内で使用される。最大約30KDの直鎖PEGを生産することができる。30KDを超えるPEGについては、求められる大きさのPEGを生産するために、複数のPEGを付着させることができる(マルチアーム又は「分岐した」PEG)。分岐した「mPEG2」連結体(アミノ酸を介して連結された2個のmPEG)を含む化合物の一般的な合成は、Monfardiniら、Bioconjugate Chem.1995、6:62−69に記載されている。「分岐した」PEG、すなわち、共通の反応性基に連結された1つより多いPEG又はmPEGを含む化合物を目的として、複数のPEG又は複数のmPEGSを、リジン等のようなアミノ酸を介して連結させることもできるし、又は、例えばグリセリン等を介して連結させることもできる。それぞれのmPEGが約10KD、約20KD、又は、約30KDである分岐したPEGについては、全質量が約20KD、約40KD、又は、約60KDであり、その全質量によって命名される(すなわち、40kDのmPEG2は、20kDのmPEGが2個連結されたものである)。ペグ化された化合物を生産するための試薬として使用することができる総分子量が40KDのPEGには、例えば、下記構造:
を有する[N
2−(モノメトキシ・20Kポリエチレングリコール・カルバモイル)−N
6−(モノメトキシ・20Kポリエチレングリコール・カルバモイル)]リジン N−ヒドロキシスクシンイミドが含まれる。
本発明の安定化された化合物を調製するために使用することができるさらなるPEG試薬には、下記一般式:
を有し、40KD又は60KDの総分子量を有する(ここで、それぞれのmPEGは約20KD又は約30KDである)他の分岐したPEG N−ヒドロキシスクシンイミド(mPEG−NHS)が含まれる。上述されているように、アミノ酸等のようなあらゆる適切な試薬を介して、複数の分岐したPEGを連結させることができる。特定の実施形態においては、リシン残基又はグリセリン残基を介して分岐した複数のPEGを連結させる。分岐したPEGには、一般式:
(mPEGは約20KD又は約30KDである)を有する分岐していないmPEG−スクシンイミジルプロピオナート(mPEG−SPA)を含まれ得る。特定の実施形態において、反応性エステルは、−OCH
2CH
2−CO
2−NHSである。
この試薬には、Sunbright(商標)シリーズ(NOF株式会社、日本)等のようなグリセロールを介して連結された分岐PEGも含まれ得る。これらの試薬の特別な非限定的な例は、
である。これらの試薬には、一般式:
を有し、mPEGが10KD〜30KDの分岐していないスクシンイミジルα−メチルブタノアート(mPEG−SMB)が含まれ得る。ある下位実施形態において、反応性エステルは、−OCH
2CH
2CH(CH
3)−CO
2−NHSである。この構造の化合物は、カタログ番号2M4K0R01として、Nektar Therapeuticsから販売されている。
PEG試薬には、以下の構造:
等を有するニトロフェニルカーボネートを介して連結された複数のPEGが含まれ得る。この構造の化合物は、例えば、Sunbio社から購入できる。ニトロフェニルカーボネートを含む化合物は、第1級アミンを含むリンカーに接合させることができる。この反応において、O−ニトロフェニルは、構造[mPEG]n−NH−CO−NH−リンカー−リガンドを残す脱離基として機能する。
上述されているような、チオール反応性基を有するPEGであって、チオール修飾されたリンカーと共に使用することができるPEGは、下記一般構造:
を有する(mPEGが、約10KD、約20KD又は約30KDである)化合物を含む。さらに、この構造は、例えば、
(それぞれのmPEGは、約10KD、約20KD又は約30KDであり、かつ、全質量が約20KD、約40KD又は約60KDである)のように分岐していてもよい。上述されているような、チオール反応性基を有する分岐したPEGであって、チオール修飾されたリンカーと共に使用することができるPEGには、約40KD又は60KDの総分子量を有する分岐したPEGであって、それぞれのmPEGが20KD又は30KDの分子量を有するPEGが含まれる。PEG試薬は、以下の構造:
を有するものであってもよい。PEGマレイミドは、目標化合物のチオール化物をペグ化する。このとき、マレイミド環の二重結合が裂けてチオールと結合する。反応速度はpH依存性であり、一実施形態において、反応は、pH6〜10の間で、pH7〜9の間で、又は、pH約8で実行される。
一実施形態においては、複数のGPVIリガンド調節因子が、1個のPEG分子に結合していてもよい。この調節因子は、同一の又は異なるGPVI核酸リガンドに対するものであり得る。同一のリガンドに対して複数の調節因子が存在する実施形態においては、リガンドとの多重結合相互作用によって結合力が高まる。さらに別の一実施形態においては、複数のPEG分子が互いに付着していてもよい。この実施形態においては、同一の核酸リガンド又は異なる複数のリガンドに対する1個以上の調節因子が、各PEG分子に結合していてもよい。これは、標的に対するそれぞれの調節因子の結合力を高める結果にもなる。
一実施形態において、コレステロール、ジアルキルグリセロール、又は、ジアシルグリセロール等のような脂肪親和性化合物に、核酸リガンド又はその調節因子を共有結合で連結することができる。リガンド又は調節因子との非共有結合性の相互作用を経由して、脂肪親和性化合物又は非免疫原性高分子化合物を共有結合的に結合又は連結することができる。脂肪親和性化合物又は非免疫原性高分子化合物に対するリガンド又はオリゴヌクレオチド調節因子の連結は、直接的に、又は、リンカー若しくはスペーサを用いて行うことができる。
直接的な共有結合による連結を使用する実施形態においては、塩基の環外アミノ基、ピリミジンヌクレオチドの5位、プリンヌクレオチドの8位、リン酸エステルの水酸基、又は、5’末端若しくは3’末端の水酸基若しくは他の基等のように、リガンド又は調節因子の様々な位置に、脂肪親和性化合物又は非免疫原性高分子化合物を共有結合で結合させることができる。
リガンド又は調節因子がリンカー又はスペーサを介して脂肪親和性化合物又は非免疫原性高分子化合物に付着している実施形態においては、例えば、6炭素アミノリンカーを使用して、脂肪親和性化合物又は非免疫原性高分子化合物を、リガンド又は調節因子に付着させることができる。
他の一実施形態において、1つ以上のリン酸基がリンカーと核酸配列との間に含まれていてもよい。
脂肪親和性化合物又は非免疫原性高分子化合物に対してリガンド又は調節因子を付着させるための適切なさらなるリンカー及びスペーサは、米国特許第7531524号に記載されている。この特許はここで言及することによって組み込まれている。
例えば、分子の安定性及び意図した標的に対する親和性等のような特性を向上させるために、本発明のオリゴヌクレオチドの塩基部位、糖部位、又は、ホスフェート骨格を修飾することができる。
G.血小板を介してもたらされる病気を治療する方法
血小板は、2つの生理学的に重要なコラーゲン受容体であるGPVI及びインテグリンα2β1を含んでいる。これらのうち、コラーゲンに対する血小板の活性化は、GPVIを介して媒介される。GPVIとのコラーゲンの相互作用による血小板活性化によって、血小板から高密度のα顆粒内容物が放出される。顆粒成分は、多数の血小板アゴニストのみならず、ATP、GTP、ADP、GDP、ポリホスフェート、CD63、LAMP2、セロトニン、血小板第4因子、β−トロンボグロブリン、MIP−1α、ランテス、MCP−3、CCL17、CXCL1、CXCL5、IL−8、BFGF、EGF、HGF、インスリン様増殖因子−1、TGF−β、VEGF−A、VEGF−C、PDGF、P−セレクチン、フォン−ウィルブランド因子、トロンボスポンジン、フィブリノゲン、インテグリンαIIβ3及びαvβ3、フィブロネクチン、アルブミン、α1−トリプシン、Gas6、ヒスチジンリッチグリコプロテイン、高分子量キニノーゲン、及び、アミロイドβ−タンパク前駆体を含む、炎症性サイトカイン、成長因子、接着分子、及び、他のタンパクを含む。したがって、コラーゲンとのGPVIの相互作用による血小板活性化は、近傍にある広範な細胞種を刺激し得る炎症性の環境を局所的に生じさせる。
コラーゲンとのGPVIの相互作用は、病的な又は損傷された血管壁に対する血小板の付着に必要とされる。最終的に、コラーゲンによるGPVIの活性化は血小板凝集を生じさせる。コラーゲンによるGPVI活性化は、血管損傷によって血管のコラーゲンが露出し、それによって血小板血栓が形成される止血において重要な役割を果たす。血栓形成における血小板の役割は、よく理解されており、通常は、内皮細胞下のマトリクス中に存在し、かつ、アテローム斑に多く存在するコラーゲンI型及びIII型とのGPVIの相互作用によって媒介されるが、活性化に対する血小板の炎症性反応が、アテローム性動脈硬化、糖尿病性血管疾患、慢性関節リウマチ、及び、強皮症を含む血栓症性疾病に加えた多数の病的状態の根底にあることが、より最近のデータによって示唆されている。例えば、コラーゲンとのGPVIの相互作用は、GPVIの発現が異常に多いときや、血小板が病態生理学的濃度のコラーゲンに暴露されるときや、血小板が異常分布したコラーゲンに暴露されるときに、病的状態を生じさせることがある。従って、本明細書において、治療的有効量のGPVIリガンドを使用して、血小板を介してもたらされる疾病又は病気を治療するための方法を提供する。これらのGPVIリガンドは、血小板に結合して、血小板活性化を阻害することによって機能することができる。
コラーゲンによる血小板の活性化には、そのコラーゲンがGPVIと相互作用できることが必要であるので、抗GPVI療法によって治療効果を与えることができる疾病を理解するためには、体内にみられる様々なコラーゲン種に関するGPVIの特異性を理解することだけは必要である。異なる29種類のコラーゲンが存在する。これらのうち、I型、III型、IV型、V型、VI型、VIII型、XII型、XIII型及びXIV型を含む9個は、脈管構造中で発現されることが判明している。さらに、これらのうち、I型、II型、III型、IV型、V型、XI型、XXIV型及びXXVII型を含む7個は、繊維状であり、かつ、安定な三重螺旋構造及び高次繊維構造に集合することができる(Nieswandtら、Blood、2003、102:449−461、及び、Herrら、J.Biol.Chem、2009、284:19781−19785)。非線維状コラーゲンであるVI型、VII型及びVIII型は、血小板凝集を伴わない弱い付着のみを生じさせるが、繊維形成コラーゲンであるI型、II型、III型及びIV型は、血小板の活性化、凝集及び付着をサポートすることが示されている。したがって、コラーゲンI型〜IV型は、GPVIと相互作用することができ、血小板を特異的に活性化することができる。さらに、GPVIは、コラーゲンI型〜IV型に対して特異的に結合することが示されている(Jungら、Platelets、2008、19:32−42)。したがって、コラーゲンI型〜IV型の多量の発現が生じる疾病、又は、これらのコラーゲン種の血小板に対する異常な局在又は存在が生じる疾病を、GPVIリガンドで治療することができる。
コラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによるGPVI結合のための構造的要件は、よく理解されている(実施例6;Smethurstら、J.Biol.Chem、2007、282:1296−1304;Smethurstら、Blood、2004、103:903−911;Horiiら、Blood、2008:936−942を参照されたい)。コラーゲン繊維中のGPVIの第1認識部位の1つは、トリペプチド配列GPOである。さらに、GPVI中のコラーゲン結合溝は、約5.5nmの間隔で分離している。したがって、GPO反復配列を含み、かつ、GPVI二量体に結合することができるように約5.5nmの単位距離のGPO反復配列を展開することができる繊維構造を形成する他のコラーゲン種は、GPVIを介して血小板を活性化させ、それによってGPVIリガンドを用いて治療可能な疾病を生じさせることが予想される。
通常、GPVIは、血小板1個当たり通常レセプタの数が約1200個となるように、血小板表面において低から中の濃度で発現される。しかしながら、GPVI発現量の増加は、血小板がコラーゲンに対して過剰に反応するようにし、したがって、個体を病気にし易くするか、又は、血小板とコラーゲンと相互作用によって媒介される病的状態を直接生じさせる可能性がある。GPVIの過剰発現は、一過性脳虚血発作(TIA)及び急性冠動脈症候群を含む血栓性血管疾患の発症に結びつけて考えられている(Bigalkeら、Thromb.Res、2010:125:e184−189;Bigalkeら、Int.J.Cardiol、2009年1月11日、epub;Bigalkeら、Clin.Res.Cardiol、2010、99:227−233)。したがって、GPVIリガンドを用いた、TIA及び卒中等のような脳血管事象の治療又は急性冠動脈症候群の治療は、治療効果を与えることができる。
止血反応及び炎症反応における血小板の役割の根底には共通の分子機構が存在する。例えば、糖尿病及びアテローム性血管疾患等における損傷のような血管内皮損傷が存在する状況では、高い程度のGPVI血小板活性化が存在する。これは、結果的に、サイトカインの放出と、白血球細胞の活性化、局在化及び成熟とを生じさせる。アテローム性動脈硬化による血管疾患が存在する状況におけるこのプロセスの発生及び永続は、内皮表面に対する血小板の付着を生じさせ、それによって、血小板が不安定になり、さらなる血管損傷が生じる。これらの現象の併発は、血管内で虚血を生じさせる可能性がある。したがって、例えば、血小板の表面におけるGPVI発現のアップレギュレーション、又は、コラーゲンに対する暴露の増加による血小板の活性化の増加に関係することがわかっている様々な疾病を治療するために、血小板の望ましくない活性化を防止又は低減するGPVIリガンド等のような治療薬を使用することができる。
糖尿病は、コラーゲンによって媒介される血小板活性化の上昇に関連しており、また、GPVI発現は、非糖尿病患者と比較して糖尿病患者において有意に高い(Cabezaら、Diabetes、2004、53:2117−2121)。糖尿病患者における高いGPVI発現は、糖尿病に伴う血栓性合併症の著しい原因となる。したがって、抗GPVI療法は、糖尿病性に伴う血栓性疾病の治療において治療効果を与えることができる。GPVIの活性化は、CD40Lの表面発現を著しく増大させる。CD40Lは、血栓症及びアテローム性動脈硬化に関与する強力な血小板由来のサイトカインである。さらに、GPVIによって活性化された血小板におけるCD40L過剰発現は、CD62P、αvβ3、及び、細胞間接着分子1の内皮表面発現を増加させ、また、単球遊走因子1の分泌を増加させる。これらの結果は、コラーゲン受容体GPVIの機能が、2型糖尿病患者において変化しており、また、糖尿病性のアテローム血栓性合併症及び局所的血管疾患において重要な役割を果たし得ることを示唆している。
従って、糖尿病に一般的に伴う様々な病気であって、血小板を介してもたらされる病気を治療するために、GPVIリガンドを使用することができる。一実施形態においては、糖尿病に罹患した患者を治療する方法であって、GPVIリガンドを投与するステップを含む方法を提供する。ハイリスクの糖尿病患者をGPVIリガンドで治療することによって、これらの患者における糖尿病に伴う疾患を低減又は予防することができる。以下に限定されるものではないが、これらの疾患には、糖尿病性網膜症、糖尿病性血管障害、アテローム性動脈硬化、虚血性脳血管障害、及び、慢性腎不全が含まれる。GPVIリガンドを用いて糖尿病患者を治療することによって、これらの患者における微小血栓形成を低減又は防止することができる。
さらに、慢性関節リウマチ(RA)又は他の炎症性の関節炎病気等のような、血小板を介してもたらされる炎症性障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。慢性関節リウマチや他の形態の炎症性関節炎に罹患した患者は、関節液中の血小板微粒子の濃度が増加していることが、最近の研究によって示されている(Boilardら、Science、2010、327:580−583)。血小板微粒子は、炎症反応促進性であり、周辺細胞(例えば、滑膜線維芽細胞)からの炎症反応を誘発する。例えば、GPVIに対するコラーゲンIV型の結合は、結果的にIL−1及びIL−8の放出を生じさせる。
マウスにおけるメカニズム研究によって、血小板の炎症反応促進状態とGPVI活性化とは関連づけられる。ノックアウトマウスモデルにおけるGPVIの不存在は、炎症誘発性細胞の動員を阻害し、したがって、関節滑膜及び細胞間マトリックスにおける白血球の動員及び成熟を阻害する。
関節の炎症は、関節の細胞外マトリクスにおいて血小板とコラーゲンとの相互作用を生じさせ、GPVIによって媒介される血小板活性化を介して近隣細胞の炎症を拡大させ、GPVIリガンドによって治療可能な慢性関節リウマチ/炎症性関節炎を発症させる。従って、GPVIリガンドは、以下に限定されないが、痛風、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ウイルス性若しくはウイルス感染後の関節炎、並びに、脊椎関節炎を含む慢性関節リウマチ又は他の炎症性関節炎等のような炎症性疾患の改善、回復又は予防における治療的使用を提供することができる。
強皮症又は全身性硬化症に罹患した患者を治療するためにGPVIリガンドを使用することもできる。強皮症は、コラーゲンの生成過剰を伴った、筋肉及び関節における腫れ(炎症)を生じさせる自己免疫反応として発症すると考えられている。微小血管の損傷は、全身性硬化症又は強皮症に付随する主な発病プロセスの1つである。血小板のI型及びIII型コラーゲン受容体(GPVI)と、全身性硬化症患者における継続的な微小血管損傷の結果として露出した内皮下ストロマ中の各リガンドとの相互作用は、炎症性伝達物質の放出を伴って、血小板の活性化及び凝集を生じさせ、これらが血管損傷及び炎症の原因となる(Chiangら、Thrombosis、2006、117:299−306)。全身性硬化症において、血管病変は、単核細胞浸潤を伴った小動脈毛細血管における血管周囲炎を特徴とし、内皮細胞及び基底膜の減少を伴って、動脈内膜増殖と小動脈及び毛細血管の閉塞とを生じさせる。内皮細胞若しくは基底膜又は両方への損傷の再発パターンは、全身性硬化症の特徴である。さらに、これらの現象は、体内組織におけるコラーゲンの生成過剰及び蓄積によって促進され、体全体の組織の広範囲な硬化及び損傷を生じさせる。従って、GPVIリガンドを使用することによって、コラーゲン濃度の上昇及び血小板を介してもたらされる微小血管損傷に関連した強皮症又は全身性硬化症等のような疾病からの治療的緩和を与えることができる。強皮症に罹患した患者を治療的有効量のGPVIリガンドを投与することによって治療する方法を提供する。
癌と診察された患者を治療するために本明細書に開示されているGPVIリガンドを使用することもできる。最近の研究によって、GPVIが腫瘍転移を媒介することが示唆されている(例えば、Jainら、J.Thromb.Haemostasis、2009、7:1713−1717を参照されたい)。Jainらは、インビボの実験転移分析を使用して、ワイルドタイプコントロールマウスと比較して、GPVIノックアウトマウスにおける腫瘍転移が著しく減少したことを示した。従って、一実施形態において、原発性の癌性腫瘍を有すると診断された患者における転移を阻害、低減又は防止する方法であって、前記患者に治療的有効量のGPVIリガンドを投与する方法を提供する。
抗血小板治療を必要とする病気の治療に使用するための調節可能な抗血小板薬剤として、本明細書に記載されている方法、医薬品組成物、及び、GPVI核酸リガンドの使用を提供する。特定の実施形態において、治療は外科的処置である。この方法は、必要性がある接種者にGPVI核酸リガンドを投与するステップであって、前記接種者が、冠状動脈、大脳若しくは末梢血管系の閉塞性血栓症の疾病又は疾患に罹患した又は罹患する危険がある接種者であるステップを含んでいてもよい。
一実施形態において、GPVIリガンドは、血小板活性化の開始を阻害する。他の実施形態においては、GPVIリガンドは、血小板活性化を阻害し、結果的に、血小板の炎症促進性反応を阻害する。他の実施形態において、GPVIリガンドは、血小板付着を阻害する。他の実施形態において、GPVIリガンドは、血小板凝集を阻害する。さらに別の実施形態において、GPVIリガンドは、トロンビン生成を阻害する。
一実施形態において、前記接種者は、冠状動脈、大脳及び末梢血管系の閉塞性血栓症に罹患しているか又は罹患する危険がある者である。特定の他の実施形態において、前記接種者は、外科的処置を受ける準備をしているか若しくは外科的処置を受けている者であるか、又は、閉塞性血栓症発症の危険がある外科的処置を受けた者である。他の実施形態において、前記接種者は、血液透析を可能にするために管移植を受けており、前記管と血小板との間の相互作用に起因した閉塞の危険がある者である。
特定の実施形態においては、血管事象の形成、特に、血栓症又は血栓塞栓的事象を治療又は予防する方法であって、必要性のある接種者に本発明のGPVI核酸リガンドを投与するステップを含む方法を提供する。
一実施形態において、GPVI核酸リガンドは長期間にわたって与えられる。この例において、例えば、治療が、頭蓋内出血又は胃腸出血を含む出血を発生させるような緊急事態のみに、GPVIリガンド調節因子を使用することができる。他の一実施形態においては、GPVI核酸リガンド治療を受けた患者に緊急外科手術が必要なときに、調節因子が投与される。他の一実施形態においては、GPVI核酸リガンドの濃度を制御し、それによって治療の期間及び強度を制御するために、調節因子が投与される。他の一実施形態において、GPVI核酸リガンドは、人工心肺処置時の血小板麻酔薬として提供される。他の一実施形態において、GPVI核酸リガンドは、経口による抗血小板薬剤からの又は経口による抗血小板薬剤への移行期間を提供するために投与される。調節因子は、治療効果のある濃度の経口の抗血小板薬剤が確立された時点で、GPVI核酸リガンドを無効化するために使用される。
H.医薬品組成物
本明細書に教示されているGPVI核酸リガンド又はGPVIリガンド調節因子は、以下に限定されないが、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含み得る医薬品組成物中に配合されたものであってもよい。この組成物の詳細な性質は、少なくとも部分的に、あらゆる安定化修飾及び投与経路を含めたリガンド及び/又は調節因子の性質に応じて変わるだろう。調節因子を含む組成物は、リガンドの活性の変化を可能にし、したがって、投与したGPVI核酸リガンドの抗血小板活性を制御するように、GPVI核酸リガンドを与えた接種者に対して投与するために設計されたものであってもよい。
医薬品組成物又は薬学的組成物の設計及び調製は、本開示を参照した当業者に既知であろう。通常、そのような組成物は、液溶体又は懸濁液のいずれかとして注射可能なものとして;注射前の液体に溶解又は懸濁させるのに適した固体形態;経口投与用の錠剤又は他の固体として;経口投与用液体としての限時解放カプセルとして;エリキシル剤、シロップ剤、坐薬、ゲル剤として、又は、目薬、クリーム剤、ローション剤、軟膏、吸入剤等を含む当業界で使用される他の形態に調製されたものであってもよい。作業領域中の特定領域を処理するために、外科医内科医又は保健従事者が、生理食塩水をベースとした洗浄剤等のような無菌調合物の使用することも特に有用であり得る。微小デバイス、微粒子又はスポンジによる送達のためにこの組成物を配合することもできる。
本発明のGPVI核酸リガンド又はGPVIリガンド調節因子を含む薬学的に有用な組成物は、薬学的に許容可能な担体の混合剤として、少なくとも部分的に配合されていてもよい。そのような担体の例及び配合方法は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th edition (Lippincott Williams & Wilkins, 2000)、及び、Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 6th Ed.(Media, Pa.: Williams & Wilkins, 1995)において見つけることができる。
適切な医薬品賦形剤には、安定剤、酸化防止剤、浸透圧調節剤、バッファ、及び、pH調整剤が含まれる。適切な添加剤には、生理学的に生体適合性のバッファ(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、EDTA、DTPA又はDTPAビスアミド等)若しくはカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミド)の追加分、又は、選択的に、カルシウム塩若しくはナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)の追加分が含まれる。本発明の医薬品組成物は、液体形態で使用するためにパッケージされていてもよいし、又は、凍結乾燥されていてもよい。
有効な投与に適した薬学的に許容可能な組成物を作るために、そのような組成物は、有効な量の核酸リガンド又は調節因子を含む。そのような組成物は、1つ以上の化合物の混合剤を含んでいてもよい。この組成物は、通常、約0.1重量パーセント(wt%)〜約50重量%、約1重量%〜約25重量%、又は、約5重量%〜約20重量%の活性物質(リガンド又は調節因子)を含む。
ここでは、皮下注射、筋肉内注射又は静脈内注射や、点滴剤を含む非経口的注入可能な投与のための医薬品組成物を提供する。非経口適用としては無菌懸濁及び無菌溶液が望ましい。静脈内投与が求められる場合には、適切な保存剤を通常含む等浸透圧製剤を使用する。この医薬品組成物は、殺菌されたものであってもよいし、及び/又は、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/又は、バッファ等のような添加物を含んでいてもよい。液体、特に、注射可能な組成物は、例えば、溶解、分散させことなどによって調製することができる。活性化合物は、例えば、水、緩衝水、食塩水、0.4%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸、水溶性デキストロース、グリセロール、エタノール等のような薬学的に純粋な溶媒中に溶解又は混合されており、それによって注射液又は懸濁液を構成する。さらに、注射前の液体に溶解させるのに適した固体形態を配合することができる。
水性環境中に物質が溶解するを助けるために、湿潤剤として界面活性剤を加えることができる。界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及び、スルフォン酸ジオクチルナトリウム等のような陰イオン洗浄剤が含まれ得る。陽イオン性洗剤を使用することもでき、陽イオン性洗浄剤には、塩化ベンザルコニウム又はベンゼトニウムクロリドが含まれ得る。界面活性剤としての配合物中に含まれ得る非イオン系洗剤は、以下に限定されないが、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレイト、ポリオキシエチレン水素化キャスターオイル10、50及び60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート20、40、60、65及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、並びに、プルロニックF68及び/又はプルロニックF127等のようなプルロニック洗剤のあらゆるものを含む(例えば、Strappeら、Eur.J.of Pharm.Biopharm、2005、61:126−133参照)。界面活性剤は、タンパク又は誘導体の配合物中に単独で又は様々な比率の混合物として存在していてもよい。
錠剤又はカプセルの形態での経口投与のために、エタノール、グリセロール、水等のような経口的に無毒で薬学的に許容可能な不活性の担体に、活性薬剤成分を組み合わせることができる。さらに、求められる場合又は必要とされる場合には、適切なバインダ、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤を混合物中に含ませることもできる。限定されるものではないが、適切なバインダには、デンプン、ゼラチン、グルコース又はβラクトース等のような天然の糖、コーン甘味料、アカシア等のような天然ゴム及び合成ゴム、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、並びに、ワックス等が含まれる。これらの投薬形態において使用される潤滑剤には、限定されるものではないが、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び、塩化ナトリウム等が含まれる。限定されるものではないが、崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天培地、ベントナイト、キサンタンガム等が含まれる。
経口投与において使用される液体形態のために、例えば、トラガカント、アラビアゴム及びメチルセルロース等のような合成ゴム又は天然ゴム等のような適切に味付けした懸濁化剤又は分散剤に、活性薬剤成分を組み合わせることができる。使用可能な他の分散剤にはグリセリン等が含まれる。
例えば、アルコール溶液、局所用洗浄剤、洗顔クリーム、皮膚ゲル剤、皮膚化粧水、及び、シャンプーをクリーム剤又はゲル剤として作成するために、例えば、アルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAオイル、ビタミンEオイル、鉱油、PPG2ミリスチリルエーテルプロピオナート等のような当業界で周知の様々な担体材料と、活性薬剤成分を含む局所用製剤を混合することができる。
小さい単層の小胞、大きい単層の小胞、及び、多重層の小胞等のようなリポソーム送達系の形態で本発明の化合物を投与することもできる。コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン等のような様々なリン脂質からリポソームを作成することができる。直接的に(例えば、単独で)又はリポソーム製剤として投与される活性物質は、例えば、米国特許第6147204号に記載されている。
ターゲットにできる薬剤担体として可溶性ポリマーと、本発明の化合物を結合させることができる。そのようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリル−アミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルトアミドフェノール、又は、パルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンが含まれ得る。さらに、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリオキサゾリン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及び、ヒドロゲルの架橋された若しくは両親媒性のブロック共重合体等のような、薬剤の制御された放出を達成するのに有効な生分解性高分子種に、本発明の化合物を(好ましくは共有結合によって)結合させることができる。生体利用性を増大及び延長させるために、核酸リガンドにコレステロール及び類似分子を連結することができる。
現在当業界において知られている又は後で開発される様々な技術のあらゆるものによって、本発明において使用するために本発明の調節因子と共に配合することができる脂肪親和性化合物及び非免疫原性高分子化合物を調製することができる。通常、これらの化合物は、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン等のリン脂質から調製され、例えば、中性脂肪(例えば、コレステロール)等のような他の材料を含んでいてもよく、さらに、正に帯電した化合物(例えば、コレステロールのステリルアミン誘導体やアミノマンノース誘導体やアミノマンニトール誘導体)又は負に帯電した化合物(例えば、ジアセチルホスフェート、フォスファチジルグリセロール)のような表面改質剤を含んでいてもよい。多重膜リポソームは、従来の技術によって(すなわち、適切な溶媒中に脂質を溶解させることによって適切な容器又は管の内壁に選択した脂質を堆積させ、次に、管内部に薄膜を残すように溶媒を蒸発させることによって、又は、噴霧乾燥によって)作成することができる。その後、回転又は攪拌しながら水相をその管に加えると、多重膜小胞が生じる。その後、多重膜小胞をホモジナイズ、超音波処理又は(フィルタを通した)押し出しすることによって、単層小胞を作成することができる。さらに、洗剤除去技術によって単層小胞を作成することができる。本発明の特定の実施形態において、この複合体は、リポソームと、治療薬又は診断薬とを含み、リポソームの表面にターゲティング核酸リガンド結びついている。予め作成されたリポソームは、核酸リガンドと結びつくよう修飾されたものであってもよい。例えば、陽イオン性リポソームは、静電相互作用によって核酸と結びつく。あるいは、コレステロール等のような脂肪親和性化合物に結びついた核酸を、予め作成されたリポソーム中に加えることもできる。それによってコレステロールがリポソーム膜に結びつくようになる。あるいは、リポソームを形成するときに、核酸をリポソームに結びつけることもできる。
他の一実施形態において、当業者に既知の方法によって、GPVIリガンド又はGPVIリガンド調節因子を含む製剤で、ステント又は医療器具をコーティングすることができる。
治療用キットも構想されている。このキットは、試薬、活性物質、及び、上記方法を実行するために必要な材料を含む。このキットは、通常、適切な容器手段の中に、GPVIリガンド及び/又はGPVIリガンド調節因子の薬学的に許容可能な製剤を含む。このキットは、1個の容器手段を有していてもよいし、及び/又は、各化合物又は各反応液若しくは各ステップのための別々の容器手段を有していてもよい。
I.投与方法
接種者に対する本発明のGPVIリガンド及び/又はGPVIリガンド調節因子の投与形態は、以下に限定されないが、非経口投与(注射又はゆっくり時間をかけた注入)、静脈内投与、皮内投与、関節内投与、滑膜内投与、脊髄腔内投与、動脈内投与、心臓内投与、筋肉内投与、皮下投与、眼窩内投与、嚢内投与、脊髄内投与、胸骨内投与、局所的投与、経皮貼布、直腸坐薬、膣坐薬、尿道坐薬、腹膜投与、経皮投与、鼻内噴霧、外科移植、体内外科塗料、輸液ポンプ、又は、カテーテル等をを含む。一実施形態において、薬剤及び担体は、移植片、巨丸薬、微粒子、ミクロスフェア、ナノ粒子又はナノスフェア等のような持続放出性製剤として投与される。一実施形態において、GPVI核酸リガンドは、皮下注入(浸透圧ポンプ等によって)を含む皮下注射又は皮下沈着によって届けられる。
一実施形態において、GPVI核酸リガンドは皮下投与によって届けられる。また、調節因子は、皮下投与又は静脈内投与によって届けられる。
本発明のリガンド及び調節因子を含む治療用組成物は、単位用量を注射すること等によって静脈内に投与することができる。この「単位用量」という用語は、本発明の治療組成物に関して使用する場合には、接種者用の単位ごとの投薬として適切な物理的に別個の複数の単位であって、各単位が、必要とされる希釈剤(すなわち、担体又は賦形剤)と連携して求められる治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性物質を含む複数の単位を意味する。
さらに、非経口適用のアプローチの1つにおいては、一定レベルの用量を維持することを保証する遅効放出系又は継続放出系の埋め込みが使用される。
例えば、罹患関節の間質に対する局所投与も提供する。シリンジからの注射又は針のような注射装置を含む他の製品からの注射によって、局所投与を実現することができる。求められる時間にわたってシリンジの内容物を供給する圧力を制御することによって、シリンジからの投与速度を制御することができる。他の一例において、注入によって局所的投与を実現することができる。ポンプ又は他の類似した装置を使用することによって注入を容易にすることができる。
さらに、血管組織に対する局所投与のための代表的で非限定なアプローチを提供する。このアプローチは、(1)例えば、インビボにおける送達のための核酸リガンドを含むゲルで血管組織をコーティング又は該ゲルを該血管組織に浸透させることによって、損傷又は疾病して除去され又は迂回された管組織断片に代えて、コーティングした又は浸透させた管を埋め込むステップと、(2)送達が求められる血管にカテーテルを介して送達するステップと、(3)患者に埋め込む管に組成物を注入するステップと、を含む。あるいは、マイクロインジェクション又はリポソームカプセル化によってこの化合物を細胞内に導入することもできる。
さらに、リガンドを含む医薬品組成物でステント等のような医療用具をコーティングすることによる接種者へのGPVIリガンドの投与も提供する。リガンドの適切な放出及び投与を可能にするためのコーティング方法は、当業者に既知である。
本明細書に記載されている組成物のための最適な投与方式は、当業者によって容易に確立され得るものであり、調節因子、患者、及び、求められる効果に応じて変化し得る。有効量は、患者の状態、体重、性別、年齢、及び、投与した核酸リガンドの量等のような様々な要因によって変化し得る。他の要因には投与形態が含まれる。
本明細書の組成物は、通常、体重に応じて調整された用量(例えば、体重1kg当たり約1μg〜体重1kg当たり約100mgの用量)で投与される。この用量は、より一般的には、体重1kg当たり約0.1mg〜約20mg、さらに一般的には約0.5mg〜約10mg、若しくは、体重1kg当たり約1.0mg〜約5.0mg、又は、体重1kg当たり約1.0mg、体重1kg当たり約2.0mg、体重1kg当たり約3.0mg、体重1kg当たり約4.0mg、体重1kg当たり約5.0mg、体重1kg当たり約6.0mg、体重1kg当たり約7.0mg、体重1kg当たり約8.0mg、体重1kg当たり約9.0mg、若しくは、約10.0mgであろう。通常、この用量は、約0.002μg/ml〜約2000μg/ml、より一般的には約2.0μg/ml〜約400μg/ml、さらに一般的には約10μg/ml〜200μg/ml、若しくは、約20μg/ml〜約100μg/ml、又は、約20μg/ml、約40μg/ml、約60μg/ml、約80μg/ml、約100μg/ml、約120μg/ml、約140μg/ml、約160μg/ml、約180μg/ml、若しくは、約200μg/mlの血漿中薬剤濃度を初期に与える。
既にリガンドを投与された接種者に調節因子を投与する場合には、リガンドの阻害の所望のレベルに基づいて、調節因子とリガンドとの比率を調節することができる。調節因子の用量は、リガンドの用量との関係に基づいて算出することができる。一実施形態においては、調節因子とリガンドとの重量比が1:1である。他の実施形態においては、調節因子とリガンドとの比率が1:1より大きく、例えば、2:1若しくは約2:1、3:1若しくは約3:1、4:1若しくは約4:1、5:1若しくは約5:1、6:1若しくは約6:1、7:1若しくは約7:1、8:1若しくは約8:1、9:1若しくは約9:1、10:1若しくは約10:1、又は、それ以上である。他の実施形態において、調節因子とリガンドとの用量比は、約1:1より小さく、例えば、0.9:1若しくは約0.9:1、0.8:1若しくは約0.8:1、0.7:1若しくは約0.7:1、0.6:1若しくは約0.6:1、0.5:1若しくは約0.5:1、0.45:1若しくは約0.45:1、0.4:1若しくは約0.4:1、0.35:1若しくは約0.35:1、0.3:1若しくは約0.3:1、0.25:1若しくは約0.25:1、0.2:1若しくは約0.2:1、0.15:1若しくは約0.15:1、0.1:1若しくは約0.1:1であり、又は、0.1:1より小さく、例えば、約0.005:1である。いくつかの実施形態において、この比率は、0.5:1〜0.1:1の間、0.5:1〜0.2:1の間、又は、0.5:1〜0.3:1の間である。他の実施形態において、この比率は、1:1〜5:1の間、1:1〜10:1の間、又は、1:1〜20:1の間である。
本発明のGPVI核酸リガンドは、1日1回の投与で又は1日おきの投与で静脈内に投与することができる。あるいは、1日の全用量をいくつかの量に分けて投与することもできる。リガンド及び/又は調節因子の投与は、1日1回(q.d.)、1日2回(b.i.d.)、1日3回(t.i.d.)、又は、必要に応じてそれより多く行うことができる。その後に、調節因子の投与によって核酸リガンドの効果を変化させるために、あらゆる適切な手段によって調節因子を与える。本発明の核酸リガンドは、週2回、週1回、2週間に1回、又は、月1回、皮下投与することができる。ある実施形態においては、1日1回よりも少ない回数でリガンド又は調節因子を投与することができる。例えば、2日に1回、3日に1回、4日に1回、週1回、又は、月1回でリガンド投与を実行することができる。
一実施形態においては、他の薬剤との同時投与又は連続的投与が望ましい場合もある。複数の活性物質を用いた複合療法であって、その複数の活性物質が別個の投薬調合物に存在する場合には、それらの複数の活性物質を同時に投与してもよいし、又は、それらの活性物質を時間をずらしてに別々に投与することもできる。
この組成物は、投与製剤形態と矛盾しない態様で、かつ、治療に有効な量で投与される。投与量は、治療される接種者、接種者の身体が有効成分を生かす能力、及び、求められる治療効果の程度に応じて変化する。投与する必要がある有効成分の正確な量は、実施者の判断に応じて変わり、各患者ごとに異なる。しかしながら、全身的な使用に適した用量範囲は、本明細書に開示されており、また、投与経路に応じて変化する。投与の適切な方式も一定ではないが、初回投与の後に、続発的注射又はその他の投与による1時間又はそれ以上の間隔での繰り返し投与を続けることが典型的である。あるいは、インビボ治療用に規定された範囲内に血液中濃度を維持するのに充分な持続点滴を提供する。
実施例
実施例1:GPVIに対する核酸リガンドの同定
図1に記載及び図示されているGPVIの細胞外ドメインに結合するリガンドを得るためにSELEX法を使用した。
1ナノモルのテンプレートDNAオリゴ及び1.5ナノモルの5’DNAプライマーオリゴをヒートアニーリング及び急速冷却することによって開始候補DNAライブラリを作成した。候補混合物を設計するためのDNAテンプレートオリゴの配列は以下の通り:5’-TCTCGGATCC TCAGCGAGTC GTCTG(N40)CCGCA TCGTCCTCCC TA-3’(配列番号:4)(N40は、等モル量のA、T、G及びCを用いて合成された40個の隣接したヌクレオチドを表す)、5’-GGGGGAATTC TAATACGACT CACTATAGGG AGGACGATGC GG-3’ (配列番号:5)(T7プロモータ配列は下線で表されている)、及び、5'-TCTCGGATCC TCAGCGAGTC GTCTG-3'(配列番号:6)である。この反応は、エキソクレノー(Exo−Klenow)で満たされており、最終濃度が2mMとなるようにEDTAを加えることによって停止させ、PCI(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を用いて抽出し、その後、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を用いて抽出した。この抽出物を脱塩及び濃縮し、組み込まれていないヌクレオチドをアミコン10スピンカラムを用いて除去した。2’フルオロピリミジン開始ライブラリを生成するために、転写反応においてDNAテンプレートを使用した。インビトロ転写条件は、40mM トリスHCl(pH8.0)、4%PEG−800、12mM MgCl2、1mM スペルミジン、0.002%トリトン、5mM DTT、1mM rGTP、1mM rATP、3mM 2’F−CTP、3mM 2’F−UTP、8μg/mL無機ピロホスファターゼ、0.5μM DNAライブラリ、及び、Y639F変異T7ポリメラーゼであった。転写物を、37℃で一晩インキュベートし、DNA分解酵素で処理し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を用いて2回抽出し、アミコン10スピンカラムを用いて濃縮し、12%変性PAGEゲル上でゲル精製した。RNAをゲルから溶出させ、バッファを交換し、アミコン10スピンカラムにおいてTE(10mMトリス(pH7.5)及び0.1mM EDTA)洗浄剤で濃縮した。
約1014個の異なる2’フルオロピリミジン(RNA配列)の複合ライブラリを用いてGPVI選択を開始した。この複合RNAプールを、磁気ストレプトアビジンビーズ上に固定されたビオチン−PEG6−His6ペプチドに接触させて予備精製(preclear)した。予備精製されたRNAを、C末端にHis6タグを付したGPVIタンパク(配列番号:3)の精製された組換細胞外ドメインに結合させた。ヒスチジンタグを付したGPVI細胞外ドメインタンパクの精製物を、R&D Systems(ミネアポリス、ミネソタ州、カタログ番号3627−GP)から得て、残基Gln21−Lys267を網羅した。
第1周目のGPVIリガンド選択を結合バッファ「E」の中で実行し、より後の周回の選択では結合バッファ「F」にして厳格性を高めた。結合バッファEは、20mM HEPES pH7.4、50mM NaCl、2mM CaCl2及び0.01%BSAからなる。結合バッファFは、20mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、2mM CaCl2及び0.01%BSAからなる。タンパクRNA複合体を25mmのニトロセルロースディスク上で洗浄すると共に解離させた。PCI(25:24:1)中でインキュベートし、結合したRNAをニトロセルロースディスクから抽出した。トリスEDTAバッファを加え、水相を抽出し、その後、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)を用いて抽出した。結合したRNAをエタノール沈殿させた。沈殿させたRNAの4分の1を、3’プライマーに対してヒートアニーリングし、AMV RTを用いて逆転写した。5’プライマー及び3’プライマーと、次の周回のRNA生成のためのDNAテンプレートを生成するための標準的PCR条件とを用いたPCRにおいて全逆転写反応を用いた。選択の各周回における詳細な条件は図2に示されている。第6周目の後に、選択を、「E2」及び「EF」と命名される2つの経路に分けた。E2選択は、結合バッファFにおいて実行した第1周回〜第8周回と、結合バッファEにおいて実行した第9周回〜第10周回を含む。EF選択は、結合バッファFにおいて実行した第1周回〜第6周回と、結合バッファEにおいて実行した第7周回−第10周回とを含む。
SELEXの各周回から得た放射性標識リガンドRNA及び可溶性GPVIを利用した直接結合試験において、GPVIに対するリガンドライブラリの濃縮を監視した。結合バッファFによるGPVIの段階的希釈物に加えたトレースP32末端標識RNAを用いて結合試験を実行した。結合試験用の放射性同位体で識別されたRNAを調製するために、100ピコモルのRNAを、細菌性アルカリホスファターゼを用いて50℃において1時間にわたって脱リンした。この反応物を、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で抽出し、その後、エタノール沈殿した。3ピコモルの脱リン酸化したRNAを、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、供給したバッファ及び20μCiのγ−P32−ATPを用いて末端標識し、その後、バイオラッド・マイクロバイオ・スピン(Biorad MicroBio Spin)P−30スピンカラムを用いて洗浄した。末端にラベルを付したRNAを、2000cpm/μLの最終濃度に希釈し、65℃で5分間熱変性した。RNA及びGPVI希釈物を使用前に37℃において平衡化した。RNA(5μL)を37℃の様々な濃度のGPVI(15μL)に加え、それを一緒に5分間〜15分間インキュベートした。その後、複合化したRNA/GPVIタンパク混合物を、プロトランBA85ニトロセルロース膜の上に載せ、ジェネスクリーン・プラス・ナイロン膜(Genescreen Plus Nylon membrane)で覆い、96ウェルの真空マニホールドシステムの中で洗浄した。モレキュラダイナミクス(Molecular Dynamics)社のストーム(Storm)840 ホスフォイメージャ(Phosphorimager)装置を用いて、その膜を、ホスフォイメージャスクリーンに露出させ、スキャンし、定量した。全カウントによってニトロセルロース上のカウントを割り、バックグラウンドに合わせて調整することによって、結合割合を算出した。SELEXの第10周回E2及び第10周回EFから得た濃縮リガンドライブラリの結合についての結果を、開始時の未処理のGPVIリガンドライブラリと比較して、図3に示す。
実施例2:GPVI核酸リガンドの構造ファミリの配列決定及び同定
実施例1に記載されているSELEX試験の第10周から得た抗GPVI濃縮リガンドライブラリに相当する最終PCR生成物を、EcoR1及びBamH1で消化し、精製キットを用いて浄化し、線形化したpUC19ベクターに直接クローンした。それぞれ1個のクローンについて細菌コロニーを作成し、それぞれ1個のコロニーから5mLの一昼夜培養液に植菌した。キアゲン・プラスミド・ミニ・プレップ・キット(Qiagen Plasmid Mini Prep kit)を使用して、それぞれ1個のコロニーからプラスミドDNAを調製した。ベクタープライマーを用いて、各SELEX試験から得た40個のプラスミドを配列決定した。ランダム領域に由来するDNA配列を図4に示す。これらの配列の分析によって6個のユニークな配列が同定された。それらの配列は、図4において「A」乃至「F」として表示されている。完全長リガンドクローンの類似するユニークDNA配列を表1に示す。また、ランダム領域を表す配列を表2に提供する。
これらのユニークなリガンドの代表例を完全長のRNAとして表3に示す。また、RNA配列として、SELEX試験において使用した2’−フルオロピリミジンヌクレオチドの組み込み位置を表4に示す(fは2−フルオロピリミジン修飾を示し、rは修飾されていないリボヌクレオチドを示す。)。完全長は、SELEXプロセスから得た配列であって、SELEXプロセスにおいて使用したリガンドライブラリのランダム領域と、そのランダム領域に隣接した固定配列の部分との両方に由来する配列を含む配列を表す。
配列番号は、「修飾された配列」と題された列に記載されているリガンドの修飾されていない型を表す。
rG=2’リボG;rA=2’リボA;fC=2’−フルオロC;fU=2’−フルオロU
これらの6個の配列をさらに検討することによって、配列GC(例えば、GC(A/G)UAAGC)が両側に隣接する(A/G)UAAからなる各クローンによって共有されている保存一次配列が同定され、これらの6個のユニーク配列が関連するファミリのメンバであることが示唆された。
mfoldサーバー(mfold.bioinfo.rpi.edu)を用いて、潜在的二次構造を求めるように配列の選抜を実行した。これらの方法は、そのサーバーのサイトに加えて、M.Zuker (2003)「Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction」、Nucleic Acids Res.31(13)、3406−15、及び、D.H.Mathewsら、(1999)「Expanded Sequence Dependence of Thermodynamic Parameters Improves Prediction of RNA Secondary Structure」、J.Mol.Biol.288、911−940に記載されている。次に、保存されている共通二次構造エレメントに基づいてこれらの配列を整列するためにユニーク配列の比較配列分析を使用し、抗GPVIリガンドの予測される二次構造に到達した(図5及び図8参照)。
抗GPVIリガンドは、3個の軸部(S1−S3)及び4個の環(L1−L4)からなる共通の二次構造を共有しており、環4の中に保存された(A/G)UAA配列を含み、隣接する2つのGC配列が対合領域を形成することによって軸部3を構成していた。図5に示されているように、抗GPVIリガンドファミリの共通した二次構造の決定によって、さらなる保存された構造エレメントが同定された。環1の大きさ及び配列は保存されており、環1は、配列GACの3個のヌクレオチドからなっていた。環3の大きさ及び配列も保存されており、環3は、2個のヌクレオチドからなり、CAがファミリのメンバ1つのに存在していたものの、最も多くの場合に配列UU又は配列UGからなっていた。軸部1は、4個〜5個の塩基対からなっていた。軸部2の長さは、軸部1より長く、典型的には7個〜8個の塩基対からなっていた。環2の長さは、より可変的であり、4個〜7個のヌクレオチドである。
実施例1に上述されている結合方法に従って、放射性同位体で標識したトレースリガンドRNA及び可溶性GPVIを使用した直接結合試験によって、GPVIに対するそれぞれの抗GPVIリガンドの親和性を決定した。GPVIに対する抗GPVIリガンドの親和性は高く、Kdは〜11nMから〜50nMに及び、親和性の能力の順位は、EF−2≒EF−3≒E2−6≒EF−22≒EF−31>>F−1であった。興味深いことに、環3に配列CAを含むリガンドEF−1は、GPVIに対して最も低い親和性を示した。これは、高親和性のGPVI結合には環3配列のUU又はUGが重要であることと一致する。
実施例3:抗GPVIリガンド構造の短縮及び変異の試験
図5に示されている抗GPVIリガンドの保存二次構造は、この構造を形成し、かつ、GPVIに高親和性で結合するのに必要な最低限の配列に関する信頼できる予測を可能にする。最初試験は、所望の構造及び機能を有するリガンドを維持するために必要な5’及び3’の限界配列の要件を決定することを目的としていた。
図5に示されている共通の二次構造は、リガンドライブラリの3’固定領域に由来する(リガンドの)領域がGPVI結合にとっておそらく重要はないことを示している。上において同定されたP32末端標識RNAに対して相補的DNA3’プライマをヒートアニーリングし、平衡化し、結合試験を(実施例1に上述されているように)実行することによって、GPVIとの相互作用における3’固定領域由来配列の重要性を試験した。その結果を図6に示す。アニーリングプライマを用いた場合と用いない場合とでは、リガンドの結合は同等であった。このことは、図5に示されている共通構造によって予想されたように、この領域がGPVIタンパクに結合するのには重要でないことを示唆している。
図5に示されている共通構造によって予測されるような、軸部1に必要とされる5’及び3’の限界配列を含む抗GPVIリガンドのいくつかの短縮された化合物を調製した(表5)。また、GPVIに対するそれらの配列の親和性を測定した。「RB ID」は、「修飾された配列」と題された列に記載されている特定の修飾を有する配列のリガンドを表すユニークな名称である。「配列番号」は、修飾を含まない対応核酸配列(DNA及び/又はRNA)を表す。
PCRによって生成したテンプレート又はクレノーによって生成したテンプレートからインビトロにおいてすべてのRNAを転写した。
配列番号は、「修飾された配列」と題された列に記載されているリガンドの修飾されていない型を表す。
rG=2’リボG;rA=2’リボA;fC=2’−フルオロC;fU=2’−フルオロU
下線されているヌクレオチドは導入した変更を表している。
++++ 10nMより小さいK
d
+++ 10nM〜24nMのK
d
++ 25nM〜40nMのK
d
+ K
d>40nM
結合非検出 結合が検出されなかった
割当なし RB IDが割り当てられていない
いくつかの代表的な短縮体の結合データを図7に示す。図5に定義されている二次構造によって予測される共通の5’及び3’限界と一致して、EF−1 T1、EF2 T2、EF−3 T2、E2−6 T1、EF−22 T1及びEF−31 T2は、それぞれの完全長の親リガンドと同等のKdでGPVIに結合した。このことによって、5’及び3’末端の予想限界が、軸部1及び機能的な抗GPVIリガンドを形成するのに充分であることが確かめられた(表5参照)。
図5に示されている共通構造は、軸部2が安定な軸構造を形成するために必要とされる塩基対よりも多くの塩基対を含んでいてもよいことを示唆している。更に、開始リガンドライブラリの5’固定領域に由来する環1の大きさ及び配列が保存されていることは、軸部2の大きさ及び環2の長さ又は配列の保存の欠落と組み合わされて、軸部2及び環2は、環1を適切に与えるためのスペーシング機能をある程度有していてもよいことを示唆している。これらの見識に基づいて、GPVIに対する高親和性結合を保持しながら、軸部2の大きさをより小さくすることできる。したがって、GPVIに対する高親和性結合に必要な軸部2の最小の大きさを決定するために、さらなる短縮物を調製した(二次構造表示については図8A、B、Cを参照されたい。配列名称については表5を参照されたい。)。EF−3 T4及びT5、並びに、EF−31 T5、T6及びT7は、それぞれの完全長の親リガンドと同等のKdでGPVIに結合した。これによって、4塩基対の長さの軸部2がGPVIに対する高親和性結合に充分であることが確認された。これらの結果は、環1のGAC配列を適切に与えることにおける軸部2及び環2の役割と完全に一致している。さらに、軸部2の底から2番目の位置でA−U塩基対を削除した短縮物である、EF−3 T3及びEF−31 T4の両方は、それぞれの完全長親リガンドと比較して結合が低下した。親配列中に存在するG−C塩基対又はA−U塩基対とは対照的に、これらの短縮物に関する軸部2の構成試験によって、上に一覧されているGPVI親和性が低下しなかった短縮物に関する軸部2の構成と比較したときに、EF−3 T3及びEF−31 T4の軸部2はこの位置にU−Gがユニークに配置されていたことが明らかになった。このことは、高親和性GPVI結合のためには、軸部2の底から2番目の塩基対にプリンとピリミジンとのペアが必要であることを示唆している。このペアは、図5に示されているいくつかの抗GPVIリガンドの共通二次構造において保存された特徴である。
図5に示されている抗GPVIリガンドの共通の二次構造は、環1、環3及び環4における一次配列が保存されていることと、環2の大きさ又は配列が保存されていないことを示している。これらの環においてみられた保存された又は保存されなかった配列の機能的重要性を評価するために、これらの環配列中に変異及び置換を作成した(表5上部参照。変異させた残基は下線で示されている。)。
EF−2 T2又はEF−3 T2の環3にみられた保存されたUU配列をAAに変異させる(EF−2 T2mut3及びEF−3 T2mut3、二次構造表示については図9参照)と、GPVIに対する測定可能な結合性が完全に失われる結果となった。このことは、図5に示されている共通の二次構造によって予測される環3のUU配列又はUG配列の重要性と一致している。EF−3 T2の環3に存在する保存されたUU配列を、UAに(EF−3 T2mut6)また、AUに(EF−3 T2mut7)変異させた。抗GPVIリガンドの共通構造と一致して、環3の最初のUをAに変異させることは、GPVIに対する測定可能な結合性を失わせる結果となったが、環3の第2のUをAに変異させることは、GPVIに対する親和性をわずかに低下させる結果となった。したがって、UU又はUG等のようなUAの環3配列は、GPVIに対する抗GPVIリガンドの高親和性結合をサポートし、5’−YD−3’(ここで、Yはピリミジンを表し、Uは環3のそのピリミジンとして高度に望ましく、DはU又はG又はAを表す(Cではない))のような環3の観察された保存と一致している。
EF−3 T2の環4の保存されたGUAA及びEF−2 T2の環4の保存されたAUAAを、それぞれ、GUUU(EF−3 T2mut4)及びAUUU(EF−2 T2mut4)に変異させ、また、GUGG(EF−3 T2mut5)及びAUGG(EF−2 T2mut5)にも変異させた(二次構造表示については図9参照)。置換の両方の組み合わせは、測定可能なGPVI結合性を完全に失わせる結果となった。これは、図5に示されている共通の二次構造によって予測されるような、GPVI結合に対するAUAA又はGUAAの環4配列の重要性に一致している。環3及び環4における保存配列の重要性をさらに確認するために、EF−3 T2の環3を、EF−22、E2−6及びEF−31配列においてみられるように、UGに変更した(EF−3 T2mut8)。その結果、GPVIに対する親和性に顕著な変化は生じなかった。これは、図5に示されている抗GPVIリガンドの保存された構造と一致している。さらに、EF−3 T2の環4を、EF−2、EF−22、E2−6及びEF−31にみられるように、AUAAに変更した(EF−3 T2 mut9)。その結果、GPVIに対する親和性に顕著な変化は生じなかった。これは、図5に示されている抗GPVIリガンドの保存された構造と一致している。最後に、EF−3 T2の環3を、EF−22、E2−6及びEF−31にみられるように、UGに変更し、同時に環4をAUAAに変更すること(EF−3 T2mut10)は、GPVIに対する親和性に顕著な変化を生じさせなかった。これは、図5に示されており抗GPVIリガンドの保存された構造と一致している。
環1配列をそれぞれCAC、GUC及びGAGに変更して、環1に単一位置変異を有する合成抗GPVIリガンドを生産した(RB470−RB472、下記表6参照)。各置換は、測定可能なGPVI結合を完全に失わせる結果となった。これは、図5に示されている共通の二次構造によって予測されるような、GPVI結合に対するGACの環1配列の重要性と一致している。
環2の長さ又は配列構成に明らかな保存性はみられなかったが、むしろ、環2は、SELEXにおいて使用されるリガンドライブラリの5’固定配列に由来するGAC配列が環1に存在できるようにするための、単離されたリガンドにおけるスペーサとして機能することができた。これによって、環2のヌクレオチド構成はGPVIに対する高親和性結合には必須ではないことが予想される。この予想と一致して、ヘキサエチレン・グリコール・スペーサ(図13A−B参照)を有するEF−31 T7(RB466)の環2の置換によって、親リガンド(RB448)と比較しても、GPVIに対する親和性は失われなかった。RB466に関する結合するデータは図10に示されている。
実施例4:2’糖修飾及び抗GPVIリガンドのリン酸ジエステル骨格のさらなる短縮及び最適化
2’−フルオロピリミジン/2’−ヒドロキシプリンライブラリから単離されるリガンドは、インビトロ選抜のために充分なヌクレアーゼ安定性を示す。しかしながら、多量の2’−ヒドロキシルは、これらの位置がインビボにおいてヌクレアーゼによる分解を非常に受けやすいという事実によって、非経口投与後に達成される最高濃度のみならず、循環半減期を限定することになり、そのライブラリを薬剤開発候補に適さないものにする。したがって、我々は、ヌクレアーゼ安定性を高めながらGPVIに対する親和性を保持するのに必要とされるようなホスホロチオエート置換によるリガンド骨格の修飾を用いて、2’−ヒドロキシルヌクレオチドによる2’−O−メチルヌクレオチドの置換による、又は、2’−ヒドロキシルヌクレオチドの2’−デオキシヌクレオチドの置換による骨格のさらなる安定化によって、抗GPVIリガンドを最適化を目指した。安定性をさらに向上させ、製造コストを下げ、製造プロセス中の2’−フルオロウリジン含有オリゴヌクレオチドの加熱中に生じ得る潜在的不純物のレベルを下げるために、2’−O−メチルヌクレオチドによる2’−フルオロヌクレオチドのさらなる置換を行った。インビボにおける安定性を高めるために、最後に、オリゴヌクレオチドのエキソヌクレアーゼによる分解を防ぐ5’末端及び3’末端の「キャッピング」を試みた。抗GPVIリガンドにおいて必要とされる最小限配列の保存性は完全に高かった。また、一般にGPVIに対する親和性は類似していた。リガンドEF−31 T7は、高いGPVI親和性と短い環2とを有する最小限の抗GPVIリガンドに相当した。したがって、リガンドEF−31 T7は、ヌクレアーゼ安定性及びGPVI結合のための抗GPVIリガンドのさらなる最適化のための親分子として選択された。
そのリガンドの3’末端に3’−3’結合を作成するために、反転したデオキシチミジンを乗せたCPG支持物からのリガンドの合成によって、EF−31 T7の3’末端のキャッピングを実行した(RB448)。この修飾は耐性が高く、したがって、このリガンドに対して合成的に生成したすべての修飾においてこの修飾を使用した。RB448(配列番号:62)は以下の配列:rGrGrGrArGrGrAfCrGrGfCrGfCfUrArAfCrGfCfCfUrGrGfCrAfUrArArGfCfCfUfCfCfCiTを有する。ここで、「r」はリボ核酸を表し、「f」は2’−フルオロヌクレオチドを表し、「iT」は反転したデオキシチミジンを表す。
2’ヒドロキシルヌクレオチド及び2’フルオロヌクレオチドに対する2’Oメチルヌクレオチドによる最初の置換を、軸部1、軸部2及び軸部3の中に合成し、それらの置換体を、実施例1に記載されているような直接結合分析においてGPVIに対する結合について試験した。この結合分析の結果を表6下部に示す。軸部1における2’−O−メチルによる大部分の2’ヒドロキシルの置換(RB452)又は2’−O−メチルによるすべての2’ヒドロキシルの置換(RB453)は非常に耐久性が高く、軸部1のすべてが2’−O−メチル構成であるものは、親化合物(RB448)と比較してGPVIに対する親和性が高かった。これは、抗GPVIリガンドの保存された二次構造と一致している。軸部2の上方の2つの塩基対における2’−O−メチルによる2’−ヒドロキシルの置換(RB455)もまた耐久性が高く、保存された二次構造及び短縮体のデータと一致していた。これは、軸部2の上部の塩基対修飾のいくつかの組み合わせが抗GPVIリガンドの中に存在していてもよく、その組み合わせがGPVIに対する高親和性結合をサポートすることを示唆している。最後に、軸部3(RB462)における2’−O−メチルG−C塩基対による2’ヒドロキシル−2’フルオロG−C塩基対の置換は、GPVIに対する親和性を顕著に増加させる結果となった。この置換は、軸部3の安定性を高めると予想される。また、この置換は、抗GPVIリガンドの共通の二次構造(この共通構造において、軸部3は2塩基対の短い軸であると予想される)と一致している。
次に、RB453、RB455、RB462及びRB466の置換を含む複合分子を合成し(RB490)、その分子をGPVIに対する結合について直接結合分析において試験した(図10参照)。それぞれの置換の組を含む複合物の親和性と矛盾せず、RB490は、開始時の親化合物よりも著しく強い親和性でGPVIに結合した。RB448のKdが〜14−15nMであるのに対して、RB490のGPVIに対するKdは、〜4−5nMであった。次に、抗GPVIリガンドのさらなる最適化のための親化合物としてRB490を使用した。この分子の第1残基(位置1のG)における2’−O−メチル置換は耐久性が高かったが、この修飾はP32によるこれらの複合物の5’末端標識の効率を大幅に低下させることに留意すべきである。したがって、試験される多くの残存する修飾の評価のために、直接結合試験を容易にするために、この残基を2’−ヒドロキシルとして残した。ここで検討されている重要な複合物の糖修飾を示す二次構造表示は、図11A〜図11Dに示されている。
軸部2の5’側の半分は、SELEX試験に使用したリガンドライブラリの5’固定領域に由来したものであるので、リガンドライブラリのランダム領域に由来する配列と比較すると、この軸部配列の配列構成は、この軸部の下部の2塩基対における2’−ヒドロキシルヌクレオチド又は2’−フルオロヌクレオチドの置換の耐久性に関する指標としては信頼性が低い可能性がある。したがって、軸部2の底部の2個のG−C塩基対において、2’−O−メチルによって2’−ヒドロキシル及び2’−フルオロを置換した(RB497、RB498、RB499及びRB500)。軸部2の端末位置のG−C塩基対のGにおいて2’−ヒドロキシルを2’−O−メチルに置換したもの(RB497)は、耐久性が高い結果となったが、この塩基対のCにおいて2’−フルオロを2’−O−メチルに置換したもの(RB498)は、耐久性が低い結果となった。軸部2の2番目の位置のG−C塩基対のGにおいて2’−ヒドロキシルを2’−O−メチルに置換したもの(RB499)、及び、Cにおいて2’−フルオロ糖を2’−O−メチルに置換したもの(RB500)は、いずれも耐久性が高い結果となったが、Gにおける2’−O−メチル置換(RB499)はわずかに親和性が低下した。
抗GPVIリガンドの共通の二次構造予測のいくつかは、軸部1が4塩基対程度の短さであってもよいことを示唆している。共通の二次構造と一致して、軸部1のG−C塩基対を1個欠失させた場合には、親合成物RB490と比較して親和性の損失がなく、耐久力も良好であった(RB507)。
軸部3の最初のG−C塩基対を2’−O−メチル糖含有塩基対に修飾すること(RB462)は、その位置に2’ヒドロキシル−2’フルオロG−C塩基対を有する複合物と比較して、親和性が高める結果となった。対照的に、軸部3のそのC−G塩基対における糖の2’−O−メチル置換(RB463)は、測定可能なGPVI親和性を失わせる結果となった。したがって、軸部3の最適な糖修飾パターンをさらに調査するために、軸部3のC−G塩基対において、それぞれ、2’−フルオロ糖及び2’−ヒドロキシル糖に対する2’−O−メチルによる単独置換を実施した(RB501及びRB502)。このC−G塩基対のGの2’−ヒドロキシル糖を2’−O−メチルに置換したもの(RB502)は、耐久性が良好であり、GPVIに対する親和性に明らかな低下は生じなかった。しかし、このC−G塩基対のCの2’−フルオロを2’−O−メチルに置換したもの(RB501は、測定可能なGPVI親和性を失わせる結果となった。このことは、この合成物でみられたGPVI結合の欠損の原因であることを示唆している。全体的に、軸部2の好ましい糖修飾パターンは、抗GPVIリガンド共通構造と一致しており、軸部3のこのC−G塩基対におけるCの存在が糖修飾、軸部形成及び一次配列のレベルで保存されていることを示唆している。
抗GPVIリガンドの環4の配列は高度に保存されており、したがって、環4のこれらの位置のそれぞれにおいて糖を2’−O−メチルで置換置換した(RB503、RB504、RB505及びRB506)。これらの各位置において2’−O−メチルに置換したものは、耐久性が優れていた。また、環4のAにおいて2’−ヒドロキシル糖を2’−O−メチルで置換したものは、親組成物RB490(RB503、RB505及びRB506)と同等のGPVIに対する親和性を有する複合物を生じさせた。しかし、環4のUにおいて2’−フルオロ糖を2’−O−メチルで置換したもの(RB504)は、GPVI親和性を穏やかに低下させる結果となった。それにもかかわらず、2’−フルオロによる糖修飾が顕著なヌクレアーゼ耐性を与えるので、この環のUを2’−フルオロヌクレオチドとして維持した。
変異分析(実施例3、RB470、RB471及びRB472参照)によって、GPVIに対する高親和性結合における環1のGAC配列の重要性が実証された。したがって、環1ヌクレオチド(RB491、RB492、RB493、RB494、RB495及びRB496)の好ましい糖修飾パターンを決定するために、環1のそれぞれの位置で糖を2’−O−メチル及び2’−デオキシで置換した。環1のGにおいて2’−ヒドロキシルを2’−O−メチルに置換したもの(RB491)は、耐久性に優れており、親合成物RB490と同等にGPVIに対して親和性であった。また、この位置では2’−デオキシ置換の試験を行わなかった(RB494)。環2のAにおいて2’−ヒドロキシルを2’−デオキシで置換したもの(RB495)は、この位置における2’−O−メチルの置換(RB492)よりも耐久性が優れており、親合成物RB490とほぼ同等にGPVIに対して親和性であった。環2のCの2’−フルオロ糖を2’−O−メチル糖又は2’−デオキシ糖のいずれかによって置換したものは、GPVIに対する親和性を穏やかに低下させる結果となった。したがって、それ以上試験を行わなかった。環1の個々の糖置換と一致して、2’−O−メチルG、2’−デオキシA及び2’−フルオロCからなる環1を有する合成物(RB518)は、2’−O−メチルG、2’−O−メチルA及び2’−フルオロCからなる環1を有する化合物(RB519)よりも高い親和性でGPVIに結合した。
これらの置換のすべてを1個の構成に組み込むことによって優れた耐久性が実現されることを確認するために、RB491、RB502、RB503、RB505及びRB506の置換からなる複合分子(RB520)、並びに、RB491、RB502、RB503、RB505、RB506及びRB507の置換からなる複合分子(RB521)を合成した。個々の置換から予想されるように、RB520及びRB521(RB520と同一の糖置換パターンを有するが、4塩基対の軸部1を有するもの)は、GPVIに対するRB490の結合に類似したKd(約6nM、RB490は4−5nM)でGPVIに結合した。同様に、これらの置換を有する複合物であって、軸部2の2番目のG−C塩基対に2’−フルオロを有する複合物(RB524)は、GPVIに高親和性で結合した。
RB524は、この分子の中心コア(軸部1、環1の頂部、軸部2、環3、軸部3、及び、環4の底部によって定義される)の中に4個の残存する2’ヒドロキシル残基を含んでいた。高度に修飾されたRB524構成中の残存2’−ヒドロキシル残基に対する最適な糖置換パターンを決定するために、RB524をバックグラウンドとして、前に別々に試験したように1個の、ペアの、及び、複数の糖置換を作成した。2’−O−メチルG、2’−デオキシA及び2’−フルオロCの環1配列と、軸部2の末端のG−C塩基対のGにおける2’−デオキシ置換とを組み合わせてRB524バックグラウンドに組み込んだもの(RB526)は、2個のみの残存2’−ヒドロキシルを有しながら、GPVIに対する高親和性結合を保持した構成となった。次に、軸部1の長さの前分析から予想されたように、RB526のG−C塩基対の欠損(RB537)は、GPVIに対する高親和結合性を保持する構成となった。また、RB537の環3のGにおいて2’−ヒドロキシ糖を2’−O−メチルによって置換したもの(RB538)は、GPVIに対する高親和結合性を保持する構成となった。最後に、RB538の軸部2の2番目のG−C塩基対のGに残存する唯一の2’−ヒドロキシルを2’−デオキシに置換したもの(RB540)は、耐久性が優れていた。これによって、GPVIに対するKdが約15nMであり、2’位の糖が完全に置換された構成が与えられた。
GPVIに対する親和性と、コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集の抑制との間には、かなりの相関があることが機能試験(実施例6参照)によって示唆された。さらに、コラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集を抑制する抗GPVIリガンドの能力は、該リガンドが、GPVIのコラーゲン関連ペプチド結合部位に重なる又は該部位の近くのコラーゲン結合領域のある領域に結合できることを示唆している。GPVIのコラーゲン結合部位は、正味の正電荷及び大きい電気陽性表面を有する。したがって、ホスホロチオエート置換はオリゴヌクレオチドの正味の電気陰性度を高め、それによってGPVIに対するリガンドの親和性を高めるので、RB540において、環1及び軸部2の中の2’−デオキシ置換からなる部位にホスホロチオエート置換を作成した。さらに、2’−デオキシ糖を含む残基の前後のホスホロチオエート置換は、ヌクレアーゼによる分解からのさらなる保護を与えることができる。RB540を元にして、ホスホロチオエート置換を、それぞれ、環1のAとCに隣接するように、また、軸部2の末端の2塩基対のGに隣接するように作成した(RB546、RB547、RB548、RB549、RB550)。軸部2の底部の2個のGの間の1個のホスホロチオエート置換(RB549)又は軸部2の2番目のGに対して3’側の1個のホスホロチオエート置換(RB550)は、GPVIに対するリガンドの親和性を高めた。これらのホスホロチオエート置換の両方を複合抗GPVIリガンドに組み込んだもの(RB566)は、GPVIに対するリガンドの親和性をさらに高まり、GPVIに対するKdがおよそ2−4nMであるRB490と比較してGPVIに対する親和性がわずかに向上し、また、RB540と比較して親和性が非常に向上する結果となった(図12参照)。
ヌクレアーゼ安定化の程度に加えて、リガンド非経口投与後の分布及び半減期は、そのリガンドの分子量によって非常に影響される。リガンドを高分子量ポリエチレングリコール(PEG)等のような高分子量担体に対して接合させることは、リガンドの分布を主として血漿部分に限定し、単位用量当たりのC
maxをより高くし、リガンドの腎濾過を非常に制限し、したがって、リガンドのインビボにおける能力及び循環半減期を非常に向上させる。抗GPVIリガンドの能力及び半減期(実施例8参照)を微調整するために調節因子を投与することができることを前提として、主として分布を血漿部分に限定するとともに、最も長い潜在的半減期に与えるために、抗GPVIリガンドを高分子量担体に接合させる。リガンドのPEG化は、リガンドの合成中に部位特異的リンカーを組み込み、リガンドのユニークな部位に対してPEGを接合させることによって達成することができる。したがって、RB540、RB549及びRB566に対するリンカーの付加及びPEG接合の影響を評価した。これらのそれぞれのリガンド(RB542、RB560及びRB567)の5’ヘキシルアミノリンカーを含む構成は、リンカーを含まない親組成物の構成と同等の親和性でGPVIに結合した。5’リンカーを含む構成、又は、5’リンカーとPEGとを含む構成のいずれかについて、リガンドの位置1のGの糖が2’−O−メチルであったことに留意されたい。さらに、リガンドの5’末端へのリンカーの組み込みは、P
32を用いた5’末端のラベル付けを妨げるので、実施例1に概説されている方法を本質的に使用して、放射性同位体で識別した同種の親リガンドに対する競合結合によって、リンカー及びPEGによって修飾されたリガンドの親和性を測定した。リンカーを含むそれぞれのリガンド(RB569、RB570、RB571)を分岐した40KDaのPEGに対して接合させることは、リンカーを含まない又はリンカーのみを含む構成(例えば、RB571に対するRB566)と比較して、GPVIに対する親和性がおよそ1.2倍〜1.7倍低下する結果となった。したがって、RB566の(位置1に2’−O−メチルGを有する)構成を含み、かつ、40KDaのPEGに接合したRB571は、GPVIに対して約5nMのK
dを示す。
++++ 10nMより低いK
d
+++ 10nM〜24nMのK
d
++ 25nM〜40nMのK
d
+ K
d>40nM
結合なし 結合しなかった
未測定 測定を行わなかった
(**) 機能分析した化合物
「修飾された配列」と題された列に記載されているすべてのリガンドは、配列番号:6(RB448)の修飾された型である。
rG=2’リボG;rA=2’リボA;mG=2’O−メチルG;mA=2’O−メチルA;mC=2’O−メチルC;mU=2’O−メチルU;fC=2’フルオロC;fU=2’フルオロU;G=2’デオキシG;A=2’デオキシA;iT−反転したデオキシチミジン;(s)−ホスホチオエート結合;(C6L)=ヘキシルアミノリンカー;(6GLY)=ヘキサエチレングリコールリンカー((9−O−ジメトキシトリチル−トリエチレングリコール,1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトを用いて組み込んだ);(PEG40KGL2−NOF)=40kDaの分岐したPEG(SUNBRIGHT社、GL2−400GS2製品);(6FAM):6−カルボキシフルオレセイン
「RB ID」は、「修飾された配列」と題された列に記載されている特定の修飾を有する配列のリガンドを表すユニークな名称である。
「配列番号」は、修飾を含まない対応核酸配列(DNA及び/又はRNA)を表す。
実施例5:抗GPVIリガンドの抗血小板活性、活性の特異性、及び、活性の調節を評価する方法
A.ヒト血小板濃縮血漿調製物及び洗浄済血小板におけるコラーゲン誘導血小板凝集(CIPA)分析
1.ヒト血小板濃縮血漿(PRP)及び凝集試験
抗凝血剤として、0.3mM PPACKを含む食塩水(9:1 血液:抗凝固性食塩水混合物;Biomolカタログ番号PI1117)を使用して、60mlのシリンジに回収した新鮮な全血からヒト血小板濃縮血漿(PRP)を調製した。この血液を、50mlの円錐形チューブ内で低速(250G)で16分間遠心分離した。遠心分離によって血液細胞から分離された血小板濃縮血漿を10mlの血清用ピペットを使用して回収した。また、2200Gで10分間高速遠心分離することによって、残存血液から血小板乏血漿(PPP)を調製した。血小板乏血漿を回収し、光線透過血小板凝集測定(LTA)のブランクとして保存した。
450μLのヒト血小板濃縮血漿(25μL食塩水をさらに加えたもの)を使用して、クロノログ社(Chrono-log、Havertown、ペンシルベニア州)のルミ血小板凝集計(lumi-aggregometer)において37℃で6分間(1200rpmで撹拌した)、ヒト血小板濃縮血漿における血小板凝集をモニターした。アゴニストとして25μLのコラーゲンを使用して凝集を開始させた。500μLの血小板乏血漿(PPP)を血小板凝集計におけるベースラインとして使用した。コラーゲンによって誘導される血小板凝集をブロックする能力を求めて抗GPVIリガンドを選抜するために、所望の最終濃度を与えるための濃度で抗GPVIリガンドを含む25μLの溶液と共に、血小板凝集計細胞において37℃で3分間、アゴニストであるコラーゲンを加える前に1200rpmで持続的に攪拌しながら、450μLのヒト血小板濃縮血漿をインキュベートした。70%〜90%のパーセント凝集を与えるように、示されている濃度のコラーゲン(ウマの腱コラーゲン繊維タイプ−1、クロノログ社、カタログ番号385)を加えることによって血小板凝集を開始させ、光線透過率を4分間〜6分間にわたって連続的に記録した。
2.洗浄済血小板(WP)の調製及び凝集試験
基本的にはマスタードら(1972、Br.J.Haematol22、193−204)に記載されているように、ヒトの洗浄済血小板を調製した。簡潔に説明すると、酸/クエン酸塩/デキストロース(ACD)バッファ(85mMクエン酸ナトリウム、65mMクエン酸、及び、110mMグルコース)の6分の1の量となるようにヒト血液を回収し、37℃の水槽に30分間静置し、室温で16分間250Gで遠心分離した。血小板濃縮血漿を、除去し、室温において2200Gで13分間遠心分離し、次に、10U/mLヘパリン及び5μM(最終濃度)プロスタグランジンI2(PGI2)を含む40mLのHEPES緩衝タイロード溶液(136.5mM NaCl、2.68mM KCl、1mM MgCl2、2mM CaCl2、12mM NaHCO3、0.43mM NaH2PO4、5.5mM グルコース、5mM HEPES、0.35%ウシ血清アルブミンpH7.4)中に再懸濁した。血小板懸濁物を37℃の水槽中で10分間インキュベートし、それに5μM(最終濃度)のPGI2を加えて、その混合物を1900Gで8分間遠心分離した。得られたペレットを、5μM(最終濃度)PGI2を含む40mLのHEPES緩衝タイロード溶液中に再懸濁し、次に、37℃の水槽中で10分間インキュベートし、1900Gで8分間遠心分離した。このペレットを、0.1U/mLポテトアピラーゼを含むHEPES緩衝タイロード溶液中に3×108個の血小板/mLの濃度で再懸濁し、血小板凝集試験において使用する前に37℃の水槽中で1時間インキュベートした。
37℃においてルミ血小板凝集計(クロノログ社、Havertown、ペンシルバニア州)によって、洗浄済血小板の0.5mlの撹拌した(1200rpm)懸濁液(425μlの洗浄済血小板、25μlのフィブリノゲン、25μLのインヒビター又はコントロール、及び、25μLのコラーゲン)を通る光透過率を測定することによって、コラーゲンによって誘導された洗浄済血小板の凝集を測定した。この装置のベースラインは、0.5mlのHEPES緩衝タイロード溶液を使用して設定した。凝集測定を行う前に、血小板懸濁物に1mg/mlのフィブリノゲンを補給した。70%〜90%のパーセント凝集を与えるように、示されている濃度のコラーゲン(ウマの腱コラーゲン繊維タイプ−1、クロノログ社、カタログ番号385)を加えることによって血小板凝集を開始させ、光線透過率を少なくとも6分間にわたって連続的に記録した。コラーゲンによって誘導される血小板凝集をブロックする能力を求めて、抗GPVIリガンド又はコントロール(リガンドの様々な変異体)を選抜するために、所望の最終濃度を与えるための濃度で抗GPVIリガンドを血小板懸濁液に加え、コラーゲンを加える前に3分間インキュベートし、コラーゲンを加えた後に反応を4〜6分間記録した。
4μg/mlのコラーゲンを含む食塩水の2倍段階希釈を使用して、用量反応曲線から得た最大の凝集パーセントから、各ドナーごとにコラーゲンの効力を測定し、投与濃度を決定した。上述されている洗浄済血小板(WP)及び血小板濃縮血漿(PRP)調製物の両方において、広範囲の抗GPVIリガンド濃度(2μM〜7.8nM)を使用して、コラーゲン誘導血小板凝集を抗GPVIリガンドが阻害する能力を試験した。
B.洗浄済血小板(WP)及び血小板濃縮血漿(PRP)におけるコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集(CRPIPA)の分析
コラーゲン関連架橋ペプチド、CRP−XL[(GPO)10]は、GPVIの選択的で有力なアゴニストであり(Farndaleら、J.Thromb Haemost 2004、2:561−573、及び、Smethurst PAら、J.Biol.Chem 2007、282:1296−1304)。また、血小板濃縮血漿(PRP)及び洗浄済血小板(WP)の凝集分析の両方において、GPVIレセプタを介した血小板凝集を特異的に開始させるために、このコラーゲン関連架橋ペプチドを使用することができる。
400ng/mlのコラーゲン関連架橋ペプチドを含む食塩水の2倍段階希釈を使用して、用量反応曲線から得た最大の凝集パーセントから、各ドナーごとにコラーゲン関連架橋ペプチドの効力を測定し、投与濃度を決定した。広範囲の抗GPVIリガンド濃度(2μM〜7.8nM)を用いて、上述されている洗浄済血小板(WP)及び血小板濃縮血漿(PRP)調製物の両方において、コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集を抗GPVIリガンドが阻害する能力を試験した。
C.コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集の低下パーセント及びIC50決定
所定濃度のコラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドの接種による血小板凝集の最大値を100パーセントとして、コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集を抗GPVIリガンドが低下させるパーセンテージを算出し、それをグラフパッドプリズム(GraphPad Prism)を使用してプロットした。
広範囲の濃度(通常、1μMから1μMの濃度)の抗GPVIリガンドを試験した場合には、同時にIC50値も得た。IC50値は、所定濃度のコラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドによって誘導される凝集を50%阻害するのに必要なリガンドの濃度を表す。
D.バイオフラックス(商標)200(Bioflux 200、Fluxion Biosciences社)を使用した抗GPVIリガンド活性に関する全血におけるインビトロフローベース血小板付着分析
1.コラーゲンコーティングを有する試験プレートの調製
フロー試験のために、バイオフラックス48ウェルプレート(製品番号0009−0013)を規定通りに使用した。このプレートに、0.02M酢酸を5dyn/cm2で5分間入れ、次に、0.02M酢酸で希釈した25μg/mlの線維コラーゲン(クロノログ社、製品番号385)を5dyn/cm2で10分間にわたって注入ウェルから散布した。この流れを止め、プレートを室温で1時間培養した。5dyn/cm2の10分間にわたるPBSでコラーゲンを洗浄した。その後、排出ウェル(1ml)をPBS+5%BSA(w/v)で完全に満たし、さらに、5dyn/cm2で15分間にわたってこの溶液をチャネルに潅流させることによって、このコラーゲンコーティングプレートを塞いだ。流れを止め、室温でさらに10分間にわたってプレートを培養した。すべてのウェルから過剰なPBS+BSAを除去し、そのプレートを、同日に使用するために室温で保持するか、又は、PBS+BSA(最大で2週間)の中で4℃において保持した。
2.潅流及びフロー試験のための全血調製物
193/4標準規格注射針を用いて、健康なボランティアから血液を採取し、PPACK(0.3mM)/CTI(60μg/ml)抗凝血剤を含む60mLのシリンジの中に入れた。この血液を、直ちに、4μMカルセインAM(Invitrogen社、製品番号C3100MP)を用いて37℃において1時間にわたって蛍光標識した(混合するためにチューブを数回反転させることによって、非常に穏やかに血液にカルセインAMを加えた。また、採取から3.5時間以内にその血液を使用した。)。200μLの標識された血液を排出ウェル上に加えることによって試験を開始し、バイオフラックス(商標)ソフトウェアを使用して、20dyn/cm2で37℃における全血フロー設定を使用して潅流を直ちに開始した。経時的蛍光倒立顕微鏡(アキシオカムCCDカメラに取り付けたツァィス200Mアキシオバート顕微鏡及びアキシオビジョンソフトウェア)を用いて、データ(血小板凝集の蛍光画像)を6秒ごとに合計6分間にわたって収集した。被験物質(抗GPVIリガンド、コントロールリガンド、又は、コントロール抗体)とする目的で、排出ウェルに加える前に、200μLの標識された血液を、指示濃度のリガンド(又は、バッファF、10μLの体積)と共に室温において4分間インキュベートした。バイオフラックス・モンテージ(Bioflux Montage)(商標)ソフトウェアを用いて蛍光強度を計算するためにタグド・イメージ・ファイル(TIFF)形式の画像を使用し、次に、そのデータをマイクロソフトエクセルにエクスポートし、グラフプリズムを用いてプロットした。蛍光血小板凝集によってコントロールチャンバが閉塞した時(最大の血小板応答として定義される)にコントロールチャンバにおいて観察された蛍光シグナルに対して、データをノーマライズした。この閉塞は、通常、抗GPVIリガンドの非存在下において3分〜4分で生じた。
E.GPVIに対する抗GPVIリガンドの特異性を評価するための、ADPによって誘導される血小板凝集(AIPA)の分析、TRAPによって誘導される血小板凝集(TIPA)の分析、アラキドン酸によって誘導される血小板凝集(AAIPA)の分析、及び、リストセチンによって誘導される血小板凝集(RIPA)の分析
他の非常に特徴的な血小板レセプタを介して機能が媒介されるアゴニストによって誘導される血小板凝集に対する効果を評価することによって、GPVIに対する抗GPVIリガンドの特異性を決定した。様々なアゴニストの活性を評価する必要があるので、これらの試験のために、ヒト血小板濃縮血漿(PRP)及び洗浄済血小板(WP)調製物を使用した。P2Y12レセプタ及びP2Y1レセプタの特異的なアゴニストとしてADPを用い、PAR−1レセプタのアゴニストとしてTRAPを用い、トロンボキサンA2(TXA2)レセプタのアゴニストとしてアラキドン酸を用い、フォン・ウィルブランド因子GP1bα相互作用のアゴニストとしてリストセチンを用いた。それぞれのアゴニストの用量反応曲線から得た凝集パーセンテージの最大値から、それぞれのアゴニスト(ADP、TRAP、アラキドン酸及びリストセチン)の能力を決定した。また、別々のアゴニストのEC70−90%をそれぞれ得るために、投与濃度を測定した。
1.洗浄済血小板(WP)におけるAIPA及びTIPAによる抗GPVI核酸リガンドの特異性決定
抗GPVIリガンドとP2Y12及びP2Y1との潜在的相互作用を評価することを目的として、主として5μMの投与濃度のADPを使用することによって血小板凝集を促進した。また、抗GPVIリガンドとPAR−1との潜在的相互作用を評価することを目的として、主として2.5μMの投与濃度のTFLLRN(TRAP)を使用することによって血小板凝集を促進した。各ドナーのアゴニスト用量反応曲線に基づいて、各試験の固有のアゴニスト投与濃度を決定する。上述されているように、洗浄済血小板(WP)調製物において、ADP及びTRAPによって誘導される血小板凝集を測定した。これらの分析においてターゲットレセプタの阻害を検出できることを実証するために、各レセプタに対する特異的阻害因子をポジティブコントロールとして使用した。PAR−1に対するアンタゴニスト作用のポジティブコントロールとしてSCH79797(Tocris Biosciences社)を使用し、P2Y12に対するアンタゴニスト作用のポジティブコントロールとしてINS50589(Inspire Pharmaceuticals社)を使用した。
2.PRPにおける堤線によるGPVI核酸リガンドの特異性決定
抗GPVIリガンドとフォン・ウィルブランド因子又はGP1bαとの潜在的相互作用を評価することを目的として、1.0〜2.0mg/mLの投与濃度のリストセチン(シグマ社、カタログ番号R7752)を使用することによって血小板凝集を促進した(各ドナーのアゴニスト用量反応曲線に基づいて、各試験の固有のアゴニスト投与濃度を決定する)。リストセチンによって誘導される血小板凝集を、上述されているようにPRP調製物において測定した。ターゲットレセプタGP1bαの阻害を分析において検出できることを実証するために、GP1bαに対するHIP1抗体(又は、アイソタイプIgGコントロール、Axxora Bio社、25μg/ml最終濃度)をポジティブコントロールとして使用した。
3.血小板濃縮血漿(PRP)におけるAAIPAによるGPVI核酸リガンドの特異性決定
抗GPVIリガンドとTXA2レセプタとの潜在的相互作用を評価することを目的として、0.25〜0.5mg/mlの投与濃度のアラキドン酸(Helena Biosciences社、カタログ番号5364)を使用することによって血小板凝集を促進した(各ドナーのアゴニスト用量反応曲線に基づいて、各試験の固有のアゴニスト投与濃度を決定する)。アラキドン酸によって誘導される血小板凝集を、上述されているようにPRP調製物において測定した。
F.WP及びPRPにおいて抗GPVIリガンドの核酸調節因子を試験することを目的とした、コラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集の分析
コラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集を、WP調製物及びPRP調製物において上述されているように実行した。核酸調節因子が抗GPVIリガンドによる血小板凝集阻害を無効化する能力を評価することを目的として、抗GPVIリガンドのIC95−100(所定濃度のアゴニスト投与によって誘導される凝集を95%〜100%阻害するのに必要とされるリガンド濃度)において試験を行った。抗GPVIリガンドと血小板調製物とを最初にインキュベートした後に、調節因子の量を変更するステップを加え、調節因子対リガンドのモル過剰が8:1から0.5:1となるようにし、アゴニストを加える前に10分間一緒にインキュベートした以外は、上述されているように、血小板凝集試験を実行した。
G.WPにおける核酸調節因子による抗GPVIリガンドの無効化に対する持続性試験
核酸調節因子による抗GPVI活性の無効化に対する持続性を評価することを目的として、37℃の全容積4mlのWP懸濁液中に、RB490(最終濃度0.25μM)及びRB515(最終濃度0.75μM)を(核酸調節因子を評価するために上述されている添加の順序及びタイミングで)加え、指定した時点(0時間、0.16時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間及び3.5時間)にこのWP懸濁混合液から450μLの分割量を回収し、コラーゲンによって血小板凝集を誘導した。WP懸濁液の活性、RB490の活性、及び、このインキュベート中にRB515による干渉がないことを実証することを目的として、個別のインキュベートを3.5時間にわたって実施した。このインキュベートにおいては、バッファのみ、RB490のみ、又は、RB515のみをWP懸濁液に加え、コラーゲンによって誘導された血小板凝集を測定した。
実施例6:コラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板機能の抗GPVIリガンドによる抑制
血小板で独占的に発現されるGPVIは、主要な血小板コラーゲン受容体である。GPVIは安定した血小板付着に必要であり、また、GPVIのコラーゲンとの相互作用は、血小板インテグリンα2β1及び血小板インテグリンαIIbβ3の完全な活性化のみならず、血小板顆粒成分の分泌(これは、次に、近傍の循環する血小板を活性化する)を生じさせる、血小板の最も強力なアクチベータの1つである。ヒトにおいて、GPVIの欠損は、コラーゲンに応答した血小板活性化が失われる原因であり、インビトロにおいては、コラーゲンに応答した血小板凝集が失われる原因である。GPVI細胞外ドメインの予想される構造は、コラーゲン結合領域(CBD)を含む2個のIg用ドメインと、それに続いた、極度にOグリコシル化された軸部を含む。LRCレセプタの中では典型的であるように、GPVIは、FcRγ鎖コレセプターと結びつく。GPVIシグナリングは、FcRのγ鎖を介して間接的に媒介され、また、GPVI細胞質ドメインを介して直接的に媒介される。繊維コラーゲンの四次構造はGPVI活性化に必要である。また、コラーゲンによって媒介される活性化は、配列(GPO)nのトリペプチド繰り返し配列からなり、Gがグリシンであり、Pがプロリンであり、Oがヒドロキシプロリンであるコラーゲン関連架橋ペプチド(CRP−XL)によって再現可能である、
残基Q1−T183からなるGPVIのコラーゲン結合ドメインの結晶構造が決定されている(Horiiら、Blood 108、2006、第936−942頁)。変異生成データに加えた構造データは、コラーゲンとGPVIとの分子間相互作用、及び、CRP−XLとGPVIとの分子間相互作用に対する詳細な見識を与える。そのような試験によって、GPVI活性化の機構を理解することが容易になる。そのコラーゲン結合ドメインは、2個のIg様ドメインであるC2−1及びC2−2(ここで、C2−1はN末端であり、C2−2はC末端である)からなり、これらのドメインは90度離れて方向を向いている。GPVIのコラーゲン結合ドメインは、その結晶構造中に二量体を形成しており、それぞれのコラーゲン結合ドメインのそれぞれのC2−2ドメインが相互作用することによって背中合わせの二量体を形成している。コラーゲン関連ペプチド及びコラーゲンは、それぞれ、C2−1の浅い溝の中に部分的に結合する。この溝は、いくつかのLRCレセプタの中でもGPVIに特有であり、他のLRCレセプタにはない、GPVIにおける11個の残基欠失に起因するものである。この結合溝の底は、いくつかの疎水性残基(L53、F54、P56、L62、及びY66及びK41の脂肪族部分)と、その周囲のいくつかの極性残基(S43、S44、Q48、Q50及びS61)及び塩基性残基(K41、R46、K59及びR166)によって形成される。コラーゲン又はコラーゲン関連ペプチドの結合に直接的に関与する残基は、2つのクラスタに分類される。第1の領域は、K41、K59、R60及びR166を含む、C2−1の表面の塩基性残基で構成されている。コラーゲン関連ペプチド又はコラーゲンの結合に関与する残基の第2のクラスタは、C2−1の遠位端に位置する。その第2のクラスタには、L36(これは、コラーゲン関連ペプチドの結合には関与しないが、コラーゲンの結合に関与する)、並びに、V34、及び、N−グリカンが付着したN72(これらは、コラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドの結合の両方に関与する)とが含まれる。突然変異分析と一致して、GPVIのコラーゲン結合ドメインに対するコラーゲン関連ペプチドのコンピュータによるドッキングは、コラーゲン関連ペプチドの結合溝が、K41及びR166との直接相互作用によって塩基性残基の第1のクラスタの内部に位置しており、また、K59の側鎖及びR60の側鎖の結合距離内にあることを示している。
それぞれのGPVI二量体は、2個のコラーゲン結合溝を含んでおり、それぞれのコラーゲン結合ドメインのそれぞれのC2−1サブユニットの中にその1つが存在する。未変性コラーゲン線維は、1.3〜1.4nm離れた並列のコラーゲン関連ペプチド様三重螺旋の擬似六角形配列(可溶性コラーゲン関連ペプチドの結晶構造に保存されている配列)で構成されている。GPVI二量体内のコラーゲン結合溝は、実質的に平行であり、約5.5nmの間隔である。この距離は、コラーゲン線維中のn個〜n+4個の螺旋である。コラーゲン螺旋とGPVIの2つの結合溝の幾何学的な適合性によって、GPVI二量体が、コラーゲン線維中の2個の螺旋に同時に結合することが可能になると考えられる。コラーゲン関連架橋ペプチドについても同様である。したがって、コラーゲン関連架橋ペプチドの形状は、未変性コラーゲンのそれを模倣するものであり、その形状によってGPVIのコラーゲン結合ドメインの別個のプローブとしてコラーゲン関連架橋ペプチドを使用することが可能になる。
GPVIの機能をブロックする抗GPVIリガンドの能力を最初に評価することを目的として、実施例5に記載されているように、洗浄済血小板調製物中でコラーゲンによって誘導される血小板活性化をブロックする能力について、リガンドEF−2 T2及びリガンドEF−3 T2(図9参照)を評価した。コラーゲンによって誘導される血小板凝集に対するリガンドによるあらゆる潜在的な非特異的な効果に関するコントロールとして、GPVI非結合性変異体リガンドである、EF−2 T2 M3−M5及びEF−3 T2 M3−M5(図9参照)を、特異性コントロールとしての最初の選抜に含めた。図15に示されているように、EF−2 T2及びEF−3 T2の両方は、コラーゲンによって誘導される血小板凝集を有効にブロックしたが、不活性な変異体コントロールリガンドは、何の効力も有していなかった。
次に、洗浄済血小板調製物(WP)中でコラーゲンによって誘導される血小板凝集において、最適化された抗GPVIリガンドであるRB490、RB540、RB549及びRB566の活性を評価した(図16)。最適化されたリガンドは、それぞれコラーゲンによって誘導される血小板凝集を有効にブロックした。これらの抗GPVIリガンドの相対効力は、GPVIに対するそれぞれの親和性と一致しており、RB540(GPVIに対するKdが〜15nM)は1nMのIC50を示し、RB549(GPVIに対するKdが〜6−7nM)は25nMのIC50を示し、RB490(GPVIに対するKdが〜4−5nM)は23nMのIC50を示し、RB566(GPVIに対するKdが2−3nM)は20nMのIC50を示した。
抗GPVIリガンドがGPVIの機能をブロックする潜在的なメカニズムをさらに調査することを目的として、実施例5に記載されているように、洗浄済血小板調製物においてコラーゲン関連架橋ペプチドによって誘導される血小板凝集をブロックする能力について、リガンドRB490、リガンドRB549及びリガンドRB566を評価した(図17)。コラーゲンによって誘導される血小板凝集をブロックするこれらのリガンド能力と一致して、RB490、RB549及びRB566は、用量依存的態様でコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集をブロックした。コラーゲンと同様に、リガンドの相対効力は、GPVIに対するそれぞれの親和性と一致しており、RB566、RB490及びRB549のIC50は、それぞれ、38nM、79nM、及び、98nMであった。驚くべきことではないが、これらの分析において使用したコラーゲン関連架橋ペプチドは、コラーゲンより強力な血小板アゴニストであるので、抗GPVIリガンドのIC50は、コラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集においてさらに高い。同時に、抗GPVIリガンドがGPVIに又はGPVIのコラーゲン結合溝の近くに結合し、それによって、血小板表面のGPVIとのコラーゲン又はコラーゲン関連架橋ペプチドの会合をブロックする作用のメカニズムと、これらのデータは一致していた。
さらに、ペグ化されたリガンドであるRB570、RB569及びRB571の抗GPVI活性を、洗浄済血小板(WP)調製物においてコラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集におけるRB490の活性と比較した(図18−図19)。上述されているように、ペグ化されたリガンドは、コラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集を同様に用量依存的に阻害した。リガンドにPEGを付加することは、コラーゲンによって誘導される血小板凝集においてはRB490の活性と比べてそれらのリガンドの活性に多少影響が与えたが、コラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集においては影響を与えなかった。RB571は、洗浄済血小板調製物におけるコラーゲン関連ペプチドによって誘導される凝集を阻害することにおいて最も強い能力を示し、IC50は〜33nMであった。同様に、RB571は、血小板濃縮血漿におけるコラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集を強力に阻害した(図20参照。詳細については実施例5を参照されたい。)。
実施例5に記載されているように、高せん断条件下における全血中でのコラーゲンコーティング面とのGPVIの相互作用に応答した血小板付着、活性化及び凝集をブロックする能力について、抗GPVIリガンドを評価した。この分析の形式は、全血流における表面結合線維コラーゲンとGPVIの会合、及び、GPVIとコラーゲンとの相互作用によって媒介される3つの重要な機能(すなわち、血小板付着、活性化、凝集)の再現を含む、インビボにおけるGPVIの機能の多数の特徴を反映している。不活性なコントロールリガンドであるRB471と比較して、RB566及びRB571は、血小板付着、活性化及び凝集を大幅に低下させた(図21)(この分析における血小板反応は、RB471とバッファコントロールとで同等であった。)。
したがって、抗GPVIリガンドは、静的条件下及び全血流において、単離された血小板分析においてGPVIの機能をブロックし、GPVIによって媒介される血小板付着、活性化及び凝集に影響を与える。さらに、GPVIの表面のコラーゲン結合部位に又はその結合部位の近くに抗GPVIリガンドが結合するメカニズムと一致して、これらのリガンドは、GPVIに対する各リガンドの親和性と一致した相対的効力で、コラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板凝集の両方を用量依存的に阻害する。
実施例7:GPVIに対する抗GPVIリガンドの特異性
GPVIは、いくつかの血小板レセプタの1つであり、同族リガンドによる活性化は、該レセプタを介して血小板活性化及び凝集を促進する。他のそのようなレセプタには、トロンボキサンA2受容体(TXA2)、ADPレセプタP2Y12及びP2Y1、トロンビンレセプタPAR−1、及び、コラーゲンに結合したフォンウィルブランド因子(vWF)のみによって活性化されるGP1bαを含む。抗GPVIリガンドがGPVIに結合して血小板機能をブロックする際の特異性を測定することを目的として、実施例5に記載されているように、ADP、TRAP(PAR−1アゴニスト)、アラキドン酸(TXA2アゴニスト)及びリストセチン(フォンウィルブランド因子・GP1bα相互作用のアゴニスト)によって誘導される血小板凝集の分析において、抗GPVIリガンドRB571の効果を評価した。図22及び図23に示されているように、RB571は、洗浄済血小板(WP)調製物においてADP若しくはTRAPによって誘導される血小板凝集に対して、又は、血小板濃縮血漿(PRP)においてリストセチン若しくはアラキドン酸によって誘導される血小板凝集に対して効果がなかった。したがって、GPVIに対するそれらリガンドの高い親和性及びSELEXによる単離に基づいて予想されるように、抗GPVIリガンドはGPVIに対して特異的である。
実施例8:抗GPVIリガンドの核酸調節因子
リガンドは、相補的なワトソンクリック型の塩基対合規則に基づいてそれらのリガンドに対する核酸調節因子又は制御因子を設計するために必要な情報をコードする。ある制御因子の有効性は、核生成のための(リガンドの)ターゲット領域と制御因子との近接容易性に加えて、リガンドとの完全な二本鎖を形成する前に変性を必要とする(制御因子中の)二次構造が存在しないか又は限定されていることを含むいくつかの要因に応じて変化する。核酸調節因子との会合するための好ましい領域になる(抗GPVIリガンドの)領域を決定することを目的として、EF−2 T2及びEF−3 T2に対して、一連の制御因子(表7及び図24参照)を設計した。
配列番号137−151は、「修飾された配列」と題された列に記載されている調節因子の未修飾バージョンに相当する。
血小板凝集分析において、実施例5に記載されているように、EF−2 T2に対する制御因子RB416−RB419の無効化活性、及び、EF−3 T2に対する制御因子RB420−423の無効化活性を評価した。図25及び図26に示されているように、制御因子は、GPVIリガンドに対する低いモル過剰において、抗GPVIリガンドの機能を10分以内に無効化することができた。抗GPVIリガンドに対して相補的な(制御因子の)領域に関連して、EF−2 T2のために設計した制御因子とEF−3 T2との間における一貫した効力が観察された。RB418及びRB422は、3’側の軸部2、環3と、5’側の軸部3及び環4からなる(抗GPVIリガンドの)類似領域と会合し、最も強い効力を示した。これらの制御因子は、これらの制御因子と共に完全に相補的な二本鎖を形成することができる上記抗GPVIリガンドのあらゆるものと同様の効力特性を示すことが予想される。
潜在的制御因子の同様の集合をRB490に対して設計した(表7参照)。図27に示されているように、これらの核酸調節因子がRB490の抗GPVI活性を無効化する能力は、EF−2T及びEF−3Tに対する制御因子について定義されるような好ましい対合領域と一致しており、RB515が最も強い能力を示した。調節因子の重要な特徴は、リガンドと複合化すると、その調節因子とリガンドとの複合体が解離せず、かつ、リガンド活性が持続的に無効化され続けるということである。RB515によるRB490の無効化の持続性を評価することを目的として、実施例5に記載されているように、コラーゲンによって誘導される血小板凝集において、RB490の抗GPVI活性の無効化の持続性を測定した。RB515は、RB490活性を3.5時間にわたって持続的に無効化した(図28)。この時間は、コラーゲンに対して洗浄済血小板(WP)調製物が完全な凝集活性を維持した持続時間である。RB515の非存在下におけるRB490は、明らかに、3.5時間のインキュベート時間にわたってコラーゲンによって誘導される血小板凝集を完全に阻害し続けた。RB490の抗GPVI活性に対するRB515の無効化活性の持続時間は、ヒト血漿における制御因子RB007による抗FIXaリガンドRB006の抗凝固性活性の無効化についてインビトロにおいて測定された持続時間と同等であった。RB006とRB007との組み合わせは、人間及び他の種においてインビボで持続的な無効化を示したリガンド・制御因子ペアである。
RB571及びRB490は、RB515に対して相補的な領域中に同一の塩基配列を共有している。したがって、RB515は、RB571に対する潜在的な制御因子である(図29参照)。したがって、WP及びPRPの調製物中でコラーゲン及びコラーゲン関連ペプチドによって誘導される血小板活性化において、RB571に対するRB515の無効化活性を評価した。RB515は、低いモル過剰において、両方の基質における両方のアゴニストに対するRB571の抗GPVI活性を有効に無効化した(図30及び図31)。RB515によってRB571活性を完全に無効化するために必要なモル過剰は、インビトロにおいてRB007によってRB006を完全に無効化するために必要な量より少ない(無効化に必要なRB007とRB006との比が4:1であるのに対して、RB515とRB571との比は2:1又はそれ以下のモル比である)。このことは、ヒト及び他の種において、インビボでのRB515によるRB571の無効化が成功する可能性が高いことを示唆している。