JP2012519697A - キナーゼタンパク質結合阻害剤 - Google Patents
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Abstract
本発明はタンパク質結合阻害化合物ならびにそれらを特定および使用する方法に関する。さらに、本発明は、細胞増殖性疾患(特に癌)などの様々な疾患および障害を治療するための医薬組成物および方法にも関する。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年3月6日に出願された米国仮出願第61/209,431号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、2009年3月6日に出願された米国仮出願第61/209,431号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
この研究の一部は、米国国立衛生研究所/国立癌研究所の助成金(助成金番号2−R01−CA65910−09−13)による支援の下でなされた。連邦政府は本発明において所定の権利を有する。
この研究の一部は、米国国立衛生研究所/国立癌研究所の助成金(助成金番号2−R01−CA65910−09−13)による支援の下でなされた。連邦政府は本発明において所定の権利を有する。
接着斑キナーゼ(FAK)は、広範囲の固形腫瘍において上方制御され、正常組織において超低レベルで発現する重要な生存分子であり、そのため、治療域が確立され、本発明者らの研究室[1]および最近ではこの分野における他の主要な著者ら[2、3]によって示唆されているように、このタンパク質は癌の治療のための非常に魅力的な標的となっている。国際公開第2005/049852号も参照されたく、この開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。本発明者らは、正常細胞でなく癌細胞においてアポトーシスを引き起こす結合部位から、FAKおよびペプチドのこの重要な結合パートナーを特定した。これらの発見ならびに相関的な構造および機能データに基づいて、本発明者らは、FAKとタンパク質との相互作用を阻止することでアポトーシスおよび腫瘍細胞死が引き起こされることを提唱している。本発明者らは、FAK相互作用を標的とすることが細胞生存にとって重要であるという文書で十分に裏付けられたデータを有し、特定の結合部位の原子分解構造データを使用して小分子リード化合物を特定した。本発明者らは、小分子ライブラリをスクリーニングし、FAKが重要なシグナル伝達分子に結合するのを阻害し、かつ乳癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌ならびに黒色腫の癌細胞株においてアポトーシスを誘発するいくつかのリード化合物を特定した。これらの化合物のいくつかによって低ナノモル濃度でアポトーシスが引き起こされた。本発明者らは、リード化合物によって標準的な化学療法剤に対する癌細胞の感受性が増加することも示している。
本発明者らのデータは、FAKのペプチドおよび小分子阻害剤が、標的とされる新規な癌治療薬の基礎を提供するリード化合物として特定することができることを示唆している。そのような化合物によって、生存シグナル伝達に関わる両分子の活性化が効果的に減少し、かつ癌細胞死および化学療法に対する感受性が生じる。本発明者らは、自分たちの(FAKタンパク質間相互作用を標的とする)手法が、チロシンキナーゼのATP結合部位を標的とすることによるキナーゼ活性を標的とした典型的な方法よりも成功した薬物の発見および開発であるという賛同が得られると予測している。いくつかの大手の製薬会社が、他の必須なチロシンキナーゼとの交差反応により、キナーゼ活性を標的とするFAKの特異的阻害剤の開発に失敗しているため、経験上この手法はFAKの場合に特に難しいことが分かっている。
乳癌、結腸癌、膵臓癌および甲状腺癌を標的とする新規な薬物療法の市場は大きい。米国癌学会によれば、今年この国だけでこれらの癌の425,000件の新しい症例が診断されるものと推定されている。癌薬物療法は、いくつかの製薬会社の既存の主要な製品ラインであり、FAKを標的とする薬物の開発は、彼らの既存の製品への自然な補足物である。
FAKは、他のキナーゼ標的と比較して多くの癌種において過剰発現する。FAKを標的とする化合物は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌および黒色腫などの多くの癌種に対して処方することができる。
いくつかのグループが、可能な癌療法としてFAKの標的化について調査している。FAKの標的化では典型的に、FAKのキナーゼドメインに焦点が当てられる。この手法は、キナーゼドメインの阻害によってFAKの下流におけるシグナル伝達が特異的に妨害されず、他の関連するチロシンキナーゼが薬物による影響を受けるため、成功しないことが分かっている。本明細書には、FAKの下流シグナル伝達に非常に特異的であるタンパク質間相互作用を調査する新規な手法について詳細に記載されている。さらに、FAKの異なる結合パートナーを標的とすることは、異なる種類の腫瘍に関連するものとなり得る。
本発明者らの研究室は、1993年にヒトの接着斑キナーゼのクローンを作製し、異なるヒトの腫瘍におけるその上方制御を実証した最初のグループであった[4、5]。本発明者らは、正常細胞および腫瘍細胞におけるFAK生物学についての知識に基づいて、FAKのタンパク質間相互作用を小分子系腫瘍治療の標的として特定した。ファージ提示法によって多くの可能なFAK結合パートナーが明らかとなり、そのうちの幾つかは、本発明者らが異なる手法(例えば、53頁)[6]によって既に発見しており、幾つかは、本発明者らがファージ提示データ(例えば、VEGFR3)に基づいて特徴づけた[7]。選択したペプチドの多くは、試験管内で正常細胞ではなく癌細胞において生存率の低下およびアポトーシスを引き起こした。これらの結果は、FAKの重要なパートナーの結合部位を模倣することによってそれらが引き起こされ得ることを示唆している。本発明者らは、FAKの3つの重要な構造的相互作用および特定の結合部位に焦点を当てている。本発明者らの手法の利点は、以下の2つの点からなる。すなわち、本発明者らは、FAK相互作用を標的とすることが細胞生存にとって重要であるという明確なデータを有し、特定の結合部位の原子分解構造データを使用して小分子リード化合物を特定した[8〜10]。本発明者らは、これらの小分子に対するFAKの結合についての構造的な分析のためにこれらのデータを利用している。本発明者らは、多種多様な生物医学的に関連する標的タンパク質に応用することができる新規な計算法も開発した[11、12]。NCIDOCKと呼ばれるこの方法は、約140,000種の小分子が特定の構造的特徴に配置されている大規模な分子ドッキング実験のための基準として標的タンパク質の原子座標を利用する。各化合物について標的に対するその推定される結合エネルギーを記録し、次いで、候補リード化合物のリストを作製するためにランク付けした。次いで、本発明者らは、機能試験のために上位の小分子を依頼した。
本発明者らは、FAKの重要なパートナーの3つの選択された結合部位のそれぞれについて240,000種のそのような化合物からなる化学ライブラリーの予備スクリーニングを行い、本発明者らがFAK機能の阻害を評価した一連の小分子を特定した後、FAK生物学および本発明者らが既に評価したモデルシステムにおける本発明者らの広範囲な経験を適用して、リード化合物の生物学的活性の分析のための複数の細胞系アッセイ(生存率、増殖、運動性および浸潤、細胞周期およびアポトーシス)を行った、。本発明者らは、これらの選択されたFAK阻害剤を用いて癌細胞株(例えば、乳癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌またはヒト黒色腫)を調査し、試験管内で有意な腫瘍細胞の生存率の低下および腫瘍細胞死の増加を再現的に示した。
一態様では、本発明は、細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法であって、それを必要としている対象に、FAKタンパク質間結合相互作用を調節することができる化合物の治療的有効量を投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、本化合物は、FAKとMdm−2との結合に影響を与える結合ポケットに結合または相互作用することができる。
一実施形態では、本化合物は、FAK−NTとMdm−2との相互作用の構造座標によって定義された結合ポケットに結合または相互作用することができる。別の実施形態では、本化合物は、Mdm−2の構造座標によって定義された結合ポケットに結合または相互作用することができる。
一態様では、本化合物は、Mdm−2とFAK−NTとの結合相互作用を調節することができる。一態様では、本化合物は、FAK−NTとMdm−2との結合相互作用を調節することができる(例えば、F3 lobe amino acids 254-352 of
FAK-NT;例えばMol. Cell. 29:9-22 (2008)を参照)。
FAK-NT;例えばMol. Cell. 29:9-22 (2008)を参照)。
一態様では、本発明は、細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。本方法は、それを必要としている対象に、FAK結合阻害化合物(例えば、本明細書中の化合物)の治療的有効量を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。本方法は、それを必要としている対象に、FAK結合パートナーの結合能力を直接調節することによってFAKタンパク質間結合相互作用を調節することができる化合物(例えば、本明細書中の化合物)の治療的有効量を投与することを含む。
別の実施形態では、本発明は、細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。本方法は、それを必要としていると特定された対象に、FAK阻害化合物またはFAK結合パートナー(例えば、Mdm−2)阻害化合物の治療的有効量を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、癌などの細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。本方法は、それを必要としている対象に、FAKまたはFAKタンパク質結合パートナーのドメインに結合することができる化合物の治療的有効量を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、癌に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法であって、対象が治療されるように、対象に、FAKが(例えば、FAK結合パートナーに)結合するのを阻害することができる化合物(例えば、本明細書中の化合物)の有効量を投与することを含む方法を提供する。
別の態様では、本発明は、疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法であって、それを必要としている対象に、増殖を調節することができる化合物(例えば、本明細書中の化合物)の治療的有効量を投与することを含み、本化合物によって増殖を刺激することを特徴とする方法を提供する。他の態様では、本方法は、FAKタンパク質間結合相互作用を刺激することを含む。
別の態様では、本発明は、FAKタンパク質間結合相互作用を調節する化合物を特定する方法であって、FAKタンパク質またはFAKタンパク質結合パートナー(例えば、Mdm−2)の結晶構造を得ること、またはFAKタンパク質またはFAKタンパク質結合パートナーの結晶構造に関する情報を得ること、および本化合物がFAKタンパク質間結合の相互作用を調節するか否かを判定するために、試験化合物をFAKタンパク質またはFAKタンパク質結合パートナー構造の中または上にモデル化することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、モデル化工程は、FAKまたはFAKタンパク質結合パートナーのドメインの構造座標によって定義された結合ポケットに結合または会合する本化合物の能力をモデル化または判定することを含む。
本発明のさらに別の態様は、細胞増殖を阻害する化合物を特定する方法である。本方法は、本明細書中の化合物に接触させて細胞増殖を阻害するか、アポトーシスを誘発するか、またはFAKとFAKタンパク質結合パートナーとの結合を調節することを含む。
本発明のさらに別の態様は、FAKの活性を調節する化合物を特定する方法であって、FAKのドメイン(例えば、Mdm−2相互作用ドメイン)の原子座標を用いて、結合ポケットを含む分子の3次元構造を(例えば、コンピュータで)生成すること、および3次元構造を用いて、FAKのドメインの活性を調節する化合物を特定するか、またはFAKとFAKタンパク質結合パートナーとの結合を調節することを含む。
別の態様では、本発明は、FAK阻害剤またはFAKタンパク質間結合相互作用阻害化合物の治療的有効量および薬学的に許容される担体または希釈液を含む包装された組成物を提供する。本組成物は、細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療するために製剤化され、かつ細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療するための説明書と共に包装されていてもよい。
一態様では、本発明は、本明細書中の化合物、その薬学的に許容されるエステル、塩およびプロドラッグ、ならびに使用説明書を含む、対象における細胞増殖性疾患を治療するためのキットを提供する。さらなる態様では、本発明は、細胞増殖を阻害し、対象における抗細胞増殖治療の有効性を評価し、細胞増殖阻害剤で治療されている対象の経過を監視し、細胞増殖阻害剤での治療のために細胞増殖性疾患に罹患している対象を選択し、かつ/または癌に罹患しているか罹患しやすい対象を治療するためのキットを提供する。特定の実施形態では、本発明は、対象における細胞増殖性疾患を治療するためのキットであって、FAK活性またはFAKタンパク質間結合相互作用を調節する(例えば阻害する)ことができる化合物を含むキットを提供する。
別の態様では、本発明は、FAKまたはFAKタンパク質結合パートナー(それぞれ単独またはそれらの組み合わせ)のドメインの3次元構造に関する。
従って、本発明は、これらの結合ポケットの一方または両方あるいは類似した3次元形状を有するいずれかの結合ポケットの相同体を含む分子または分子複合体を提供する。
本発明は、本明細書に記載されている化合物の医薬組成物であって、薬学的に許容される担体と共に、FAKのドメインの活性を調節することができる化合物またはFAKとFAKタンパク質結合パートナーとの結合を調節する化合物あるいはその薬学的に許容されるエステル、塩またはプロドラッグを含む医薬組成物も提供する。
別の態様では、本発明は、FAKのドメインを定義しているかFAKとFAKタンパク質結合パートナーとの結合を調節する結合ポケットまたは相同的結合ポケットの構造座標を含む機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。
別の態様では、本発明は、FAKまたはFAKタンパク質間結合パートナーのドメインの構造座標によって定義された結合ポケットを含む分子または分子複合体の3次元表示、または、b)前記アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差が約2.0オングストローム以下である結合ポケットを含む前記分子または分子複合体の相同体の3次元表示を生成するためのコンピュータを提供する。本コンピュータは、(i)機械読み取り可能なデータと共に符号化されたデータ記憶材料を含む機械読み取り可能なデータ記憶媒体であって、前記データがFAKまたはFAKタンパク質間結合パートナーのドメインの構造座標を含む記憶媒体と、(ii)前記機械読み取り可能なデータを処理するための命令を記憶するワーキングメモリと、(iii)前記機械読み取り可能なデータを前記3次元表示に処理するために、前記ワーキングメモリおよび前記機械読み取り可能なデータ記憶媒体に接続された中央処理装置と、(iv)前記中央処理装置に接続された前記3次元表示を表示するための表示装置とを含む。
本発明は、上述した結合ポケットに結合する化合物を設計、評価および特定する方法も提供する。本発明の他の実施形態を以下に開示する。
他の態様では、本明細書に詳述されている方法は、以下の特徴を有する:
モデル化することは、試験化合物の3次元表示を作成し、かつ試験化合物および結合ポケットの結合相互作用を評価することを含み、
モデル化することは、試験化合物の3次元表示を作成し、かつ試験化合物と結合ポケットとの結合相互作用を評価することを含み、
試験化合物を、試験管内または生体内でさらに評価し、
結合ポケットは、FAKの3次元構造座標内に化合物M13と相互作用するFAKドメインアミノ酸のうちの1つまたは複数を含み、かつ、
結合ポケットは、FAKの3次元構造座標内に化合物M13と相互作用するFAKドメインアミノ酸のうちの1つを含む。
モデル化することは、試験化合物の3次元表示を作成し、かつ試験化合物および結合ポケットの結合相互作用を評価することを含み、
モデル化することは、試験化合物の3次元表示を作成し、かつ試験化合物と結合ポケットとの結合相互作用を評価することを含み、
試験化合物を、試験管内または生体内でさらに評価し、
結合ポケットは、FAKの3次元構造座標内に化合物M13と相互作用するFAKドメインアミノ酸のうちの1つまたは複数を含み、かつ、
結合ポケットは、FAKの3次元構造座標内に化合物M13と相互作用するFAKドメインアミノ酸のうちの1つを含む。
本発明について以下の非限定的な実施例を参照し、かつ以下の図を参照しながら以下にさらに説明する。
本発明者らは、FAK結合パートナーとのFAKタンパク質間結合相互作用を標的にすることによるFAKの阻害に取り組む治療的な戦略を発見した。そのような相互作用は、特に、FAK機序が重大な役割を担う特定の癌種におけるアポトーシスおよび細胞増殖の調節に関連する。
本発明は、少なくとも部分的には、FAKタンパク質間相互作用が腫瘍治療の(例えば、選択的な)標的として有用であるという発見に関する。特に、それはFAKとMdm−2との相互作用である。これらの結合相互作用の阻害によって、試験管内で正常細胞でなく癌(例えば、乳癌または結腸癌)において生存率の低下およびアポトーシスが引き起こされる。
1.定義
本発明のさらなる説明の前に、本発明をより容易に理解できるようにするために、特定の用語を最初に定義し、かつ便宜上ここに集約する。
本発明のさらなる説明の前に、本発明をより容易に理解できるようにするために、特定の用語を最初に定義し、かつ便宜上ここに集約する。
「投与」または「投与すること」という用語は、目的の機能を果たすように本発明の化合物(1種または複数)を対象に導入する経路を含む。使用され得る投与経路の例としては、注射(皮下、静脈内、非経口、腹膜内、クモ膜下腔内)、経口、吸入、直腸内および経皮が挙げられる。医薬製剤は、各投与経路に適した形態で投与してもよい。例えば、これらの製剤は、錠剤またはカプセルの形態で、注射、吸入、洗眼剤、軟膏、坐薬などによる投与、注射、注入または吸入による投与、ローションまたは軟膏による局所投与、および坐薬による直腸内投与によって投与される。経口投与が好ましい。注射は、ボーラスまたは持続注入であってもよい。投与経路に応じて、本発明の化合物は、選択した材料でコーティングするか、その材料の中に配置して、目的の機能を果たすその能力に悪影響を及ぼし得る自然条件からそれを保護することができる。本発明の化合物は、単独で、あるいは上述した別の薬剤のいずれかまたは薬学的に許容される担体あるいは両方と組み合わせて投与することができる。本発明の化合物は、他の薬剤の投与前、他の薬剤と同時または他の薬剤の投与後に投与することができる。さらに、本発明の化合物は、生体内でその活性な代謝産物またはより活性な代謝産物に変換されるプロドラッグの形態で投与することもできる。
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基などの飽和脂肪族基のラジカルを指す。アルキルという用語は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素を置き換えている酸素、窒素、硫黄またはリン原子(例えば、酸素、窒素、硫黄またはリン原子)をさらに含むことができるアルキル基をさらに含む。好ましい実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格に30個以下(例えば、直鎖ではC1〜C30、分枝鎖ではC3〜C30)、好ましくは26個以下、より好ましくは20個以下、さらにより好ましくは4個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造に3〜10個の炭素原子、より好ましくはその環構造に3、4、5、6または7個の炭素を有する。
さらに、本明細書および文の全体にわたって使用されるアルキルという用語は、「未置換アルキル」および「置換アルキル」を含むことが意図されており、後者は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノなど)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドなど)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。適切であれば、炭化水素鎖上で置換されている部分それ自体も置換可能であることは当業者によって理解されるであろう。シクロアルキルは、例えば、上記置換基によってさらに置換することができる。「アルキルアリール」部分は、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。「アルキル」という用語は、長さが類似しかつ上記アルキルの代わりとなることができるが、それぞれ少なくとも1つの二重もしくは三重結合を含む不飽和脂肪族基も含む。
炭素数が特に明記されていない限り、本明細書で使用される「低級アルキル」は、直鎖でも分枝鎖であってもよいその骨格構造に、上に定義したアルキル基であるが、1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキルを意味する。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、tert−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。好ましい実施形態では、「低級アルキル」という用語は、その骨格に4個以下の炭素原子を有する直鎖アルキル、例えば、C1〜C4アルキルを含む。
「アルコキシアルキル」、「ポリアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」という用語は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素を置き換えている酸素、窒素または硫黄原子(例えば、酸素、窒素または硫黄原子)をさらに含む上述したアルキル基を指す。
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、長さが類似しかつ上記アルキルの代わりとなることができるが、それぞれ少なくとも1つの二重もしくは三重結合を含む不飽和脂肪族基を指す。例えば、本発明は、シアノおよびプロパルギル基を想定している。
本明細書で使用される「アリール」という用語は、0〜4個のヘテロ原子、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを含んでいてもよい5員および6員の単一環芳香族基などのアリール基のラジカルを指す。アリール基としては、多環式の縮合した芳香族基、例えば、ナフチル、キノリル、インドリルなどが挙げられる。環構造にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリールヘテロ環」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」と呼ばれる場合もある。芳香族環は、1つまたは複数の環位置において、上述した置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスファート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノなど)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドなど)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分で置換することができる。アリール基は、多環(例えば、テトラリン)を形成するために、芳香族でない脂環式もしくは複素環式の環と縮合または架橋させることもできる。
「〜に結合している」という用語は、化学物質もしくは化合物(またはそれらの部分)とタンパク質上の結合ポケットもしくは結合部位との間の近接状態を指す。結合は、非共有結合(ここでは、水素結合またはファンデルワールスあるいは静電的相互作用により、並置がエネルギー的に有利である)であっても共有結合であってもよい。
本明細書で使用される「結合ポケット」という用語は、その形状により有利に別の化学物質もしくは化合物に結合する分子または分子複合体の領域を指す。
本発明の化合物の「生物学的活性」という言葉は、反応性細胞における本発明の化合物によって誘発される全ての活性を含む。この言葉は、これらの化合物によって誘発されるゲノムおよび非ゲノム活性を含む。
「生物学的組成物」または「生体試料」は、細胞または生体高分子を含むか、またはそれらに由来する組成物を指す。細胞を含む組成物としては、例えば、哺乳類の血液、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、白血球濃縮物、血液細胞タンパク質、血漿、多血小板血漿、血漿濃縮物、血漿の任意の分別からの沈殿物、血漿の任意の分別からの上澄み、血漿タンパク質画分、精製もしくは部分的に精製された血液タンパク質または他の成分、血清、***、哺乳類の初乳、牛乳、唾液、胎盤抽出物、寒冷沈降物、寒冷上澄み(cryo supernatant)、細胞可溶化物、哺乳類の細胞培養液または培地、発酵製品、腹水液、血液細胞中で誘発されたタンパク質、および正常細胞または形質転換細胞によって細胞培養液中で産生された産物(例えば、組み換えDNAもしくはモノクローナル抗体技術による)が挙げられる。生物学的組成物は無細胞であってもよい。好ましい実施形態では、好適な生物学的組成物または生体試料は赤血球懸濁液である。いくつかの実施形態では、血球懸濁液は哺乳類の血液細胞を含む。好ましくは、血液細胞は、ヒト、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタから得られる。好ましい実施形態では、血球懸濁液は、赤血球および/または血小板および/または白血球および/または骨髄細胞を含む。
「キラル」という用語は、鏡像相手に重ね合わせ不可能な特性を有する分子を指し、「アキラル」という用語は、鏡像相手に重ね合わせ可能な分子を指す。
「ジアステレオマー」という用語は、2つ以上の不斉中心を有し、かつその分子が互いに鏡像でない立体異性体を指す。
「有効量」という用語は、投与時および所望の結果を達成するのに必要な(例えば、細胞増殖性疾患を治療するために十分な)期間において効果的な量を含む。本発明の化合物の有効量は、対象の病状、年齢および体重などの要因、ならびに対象において所望の反応を誘発する本発明の化合物の能力に応じて変動し得る。投与計画は、最適な治療反応を与えるように調整してもよい。有効量は、治療的に有益な効果が本発明の化合物の任意の有毒または有害な効果(例えば、副作用)を上回る量でもある。
本発明の化合物の治療的有効量(すなわち、有効な投与量)は、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20mg/kg体重、さらにより好ましくは約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kgまたは5〜6mg/kg体重の範囲であってもよい。当業者であれば、疾患または障害の重症度、以前の治療、一般的な健康状態および/または対象の年齢ならびに存在する他の疾患などのこれらに限定されない特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要とされる投与量に影響を与え得ることを理解しているであろう。さらに、本発明の化合物の治療的有効量による対象の治療は、単一の治療または好ましくは一連の治療を含むことができる。一例では、対象は、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、さらにより好ましくは約4、5または6週間にわたって約0.1〜20mg/kg体重の範囲の本発明の化合物で週に1回治療される。治療のために使用される本発明の化合物の有効な投与量が特定の治療の過程を通じて増減し得ることも理解されるであろう。
「鏡像異性体」という用語は、互いの重ね合わせ不可能な鏡像である化合物の2種類の立体異性体を指す。2種類の鏡像異性体の等モル混合物は、「ラセミ混合物」または「ラセミ体」と呼ばれる。
「ハロアルキル」という用語は、ハロゲンによって一置換、二置換または多置換されている上に定義したアルキル基、例えば、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルを含むことが意図されている。
「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを表す。
「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味する。
本明細書で使用される「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄およびリンである。
「ホメオスタシス」という用語は、内部環境の静的(すなわち一定)状態の維持を意味するように当該技術分野で認識されている。
「向上した生物学的特性」という用語は、生体内でのその有効性を高める本発明の化合物に固有の任意の活性を指す。好ましい実施形態では、この用語は、本発明の化合物の任意の質的または量的に向上した治療的特性(例えば、毒性の減少)を指す。
「細胞増殖性疾患」という用語は、細胞の望ましくない増殖または制御されない増殖に関わる疾患を含む。そのような疾患の例としては、腫瘍または癌(例えば、肺癌(小細胞および非小細胞)、甲状腺癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌または結腸癌)、肉腫または黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
「FAKタンパク質間結合パートナー」という用語は、FAK(例えば、全長、N末端、C末端、カルボキシ末端、キナーゼドメイン、FERMドメイン、FATドメイン)に結合するタンパク質(本明細書に詳述されているものなど)を指す。
「任意に置換された」という用語は、未置換基あるいは、1つまたは複数の好適な基(それらは同一であっても異なっていてもよい)によって、1つまたは複数の利用可能な位置、典型的には1、2、3、4または5位において水素以外で置換された基を包含することが意図されている。そのような任意の置換基としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C1〜C8アルコキシ、C2〜C8アルキルエーテル、C3〜C8アルカノン、C1〜C8アルキルチオ、アミノ、モノまたはジ(C1〜C8アルキル)アミノ、ハロC1〜C8アルキル、ハロC1〜C8アルコキシ、C1〜C8アルカノイル、C2〜C8アルカノイルオキシ、C1〜C8アルコキシカルボニル、−COOH、−CONH2、モノまたはジ(C1〜C8アルキル)アミノカルボニル、−SO2NH2および/またはモノまたはジ(C1〜C8アルキル)スルホンアミドならびに炭素環式基および複素環式基が挙げられる。任意の置換は、「0〜X個の置換基で置換されている」という語句によっても示されており、ここで、Xは可能な置換基の最大数である。任意に置換された特定の基は、0〜2、3または4個の独立して選択された置換基で置換されている(すなわち、未置換であるか、あるいは列挙されている最大数までの置換基で置換されている)。
「異性体」または「立体異性体」という用語は、同一の化学構造を有するが、空間における原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
「調節する」という用語は、例えば、本発明の化合物に対する曝露に反応して細胞が増殖する能力における増加または減少、例えば、望まれた最終的な結果(例えば、治療的な結果)が達成されるように動物における少なくとも細胞の亜集団の増殖の阻害を指す。
FAKまたはFAKタンパク質間相互作用パートナー結合を調節することができる化合物を得るという場合の「得る」という用語は、本化合物を購入、合成またはそれ以外の方法で得るすることを含むことが意図されている。
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与された」という語句は、経腸および局所投与以外の通常は注射による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内および胸骨内注射および注入が挙げられるが、これらに限定されない。
「ポリシクリル」または「多環式ラジカル」という用語は、二環式以上の環のラジカル(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を指し、ここでは、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通であり、例えば、これらの環は「縮合環」である。隣接していない原子を介して結合された環は「架橋された」環と称される。多環の各環は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノなど)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドなど)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの上記置換基で置換することができる。
「プロドラッグ(prodrug)」または「プロドラッグ(pro−drug)」という用語は、生体内で代謝することができる部分を有する化合物を含む。一般に、プロドラッグは、エステラーゼによって、あるいは活性薬物に対する他の機序によって生体内で代謝される。プロドラッグおよびそれらの使用例は当該技術分野で良く知られている(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical
Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離および精製の間に原位置で、あるいは好適なエステル化剤によってその遊離酸形態の精製された化合物またはヒドロキシルを別々に反応させることによって調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボキシル酸による処理によってエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例としては、置換もしくは未置換の、分岐鎖もしくは非分岐鎖低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ低級アルキルアミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシロキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、(例えば、メチル、ハロまたはメトキシ置換基で)置換されたアリールおよびアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ低級アルキルアミドおよびヒドロキシアミドが挙げられる。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオン酸エステルおよびアシルエステルである。生体内で他の機序によって活性型に変換されるプロドラッグも含まれる。
Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離および精製の間に原位置で、あるいは好適なエステル化剤によってその遊離酸形態の精製された化合物またはヒドロキシルを別々に反応させることによって調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボキシル酸による処理によってエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例としては、置換もしくは未置換の、分岐鎖もしくは非分岐鎖低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ低級アルキルアミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシロキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、(例えば、メチル、ハロまたはメトキシ置換基で)置換されたアリールおよびアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ低級アルキルアミドおよびヒドロキシアミドが挙げられる。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオン酸エステルおよびアシルエステルである。生体内で他の機序によって活性型に変換されるプロドラッグも含まれる。
化合物の「予防的に有効な量」という用語は、細胞増殖性疾患を予防または治療する際に患者に単回もしくは複数回用量を投与すると有効である本明細書中の任意の式の本発明の化合物の量、またはそれ以外の本明細書に記載されている化合物の量を指す。
「毒性の減少」という用語は、生体内に投与された場合に本発明の化合物によって誘発された任意の望ましくない副作用の減少を含むことが意図されている。
「スルフヒドリル」または「チオール」という用語は−SHを意味する。
「対象」という用語は、細胞増殖性疾患に罹患することができる生物、またはそれ以外では、本発明の本発明の化合物の投与により恩恵を受けることができる生物、例えば、ヒトおよびヒト以外の動物を含む。好ましいヒトとしては、細胞増殖性疾患または本明細書に記載されている関連する状態に罹患しているか罹患しやすいヒトの患者が挙げられる。本発明の「ヒト以外の動物」という用語は、例えば、哺乳類、齧歯類(例えば、マウス)、および非哺乳類、ヒト以外の霊長類(例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ)、両生類、爬虫類などの全ての脊椎動物を含む。
「細胞増殖性疾患に罹患しやすい」という用語は、細胞増殖の疾患(例えば癌)を発病する恐れのある対象、すなわち、癌ウイルスによるウイルス性感染に罹患している対象、電離放射線または発癌性化合物に曝された対象、癌の家族歴または病歴を有する対象などを含むことが意図されている。
本明細書で使用される「全身投与」「全身に投与される」「末梢投与」および「末梢に投与される」という語句は、患者の組織に入れることで代謝および他の同様のプロセスが行われるように、本発明の化合物(1種または複数)、薬物または他の材料を投与(例えば皮下投与)することを意味する。
本発明の本発明の化合物の「治療的有効量」という用語は、患者に単回もしくは複数回用量を投与すると、細胞増殖および/または細胞増殖性疾患の症状を阻害する、あるいはそのような治療をしない場合に予想される生存性を超えてそのような細胞増殖性疾患に罹患している患者の生存性を引き延ばすのに有効な薬剤の量を指す。
キラル中心の命名法に関して、「d」および「l」立体配置という用語は、IUPAC勧告の定義による。用語の使用に関しては、ジアステレオマー、ラセミ体、エピマーおよび鏡像異性体は、製剤の立体化学を説明するためのそれらの通常の文脈で使用する。
2.本発明の化合物
一態様では、本発明は、FAK結合活性を(直接または間接的に)調節(例えば、阻害または刺激)することができる化合物を提供する。別の態様は、FAK結合活性を(直接または間接的に)調節(例えば、阻害または刺激)することができる化合物とさらなる治療薬(例えば、化学療法剤)との組み合わせである。
一態様では、本発明は、FAK結合活性を(直接または間接的に)調節(例えば、阻害または刺激)することができる化合物を提供する。別の態様は、FAK結合活性を(直接または間接的に)調節(例えば、阻害または刺激)することができる化合物とさらなる治療薬(例えば、化学療法剤)との組み合わせである。
一実施形態では、本発明は、FAKタンパク質間結合を調節することができる化合物およびその薬学的に許容されるエステル、塩およびプロドラッグを提供する。
特定の好ましい化合物としては、本明細書に具体的に詳述されている化合物が挙げられる:
阻害剤:
M2:1−(4−ブロモフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン、
M4:1−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン、
M13:1−[4−ヒドロキシ−5−[トリ(フェニル)メトキシメチル]オキソラン−2−イル]−5−メチルピリミジン−2,4−ジオン、
M23:2,6−ピペラジンジオン,(4,4’−(1,{2−エタンジイル)ビス)[1−(4−モルホリニルメチル)−}、
M24:2−(メチルアミノ)−N−(6−(((メチルアミノ)アセチル)アミノ)−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロ−2−アントラセニル)アセトアミド。
阻害剤:
M2:1−(4−ブロモフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン、
M4:1−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン、
M13:1−[4−ヒドロキシ−5−[トリ(フェニル)メトキシメチル]オキソラン−2−イル]−5−メチルピリミジン−2,4−ジオン、
M23:2,6−ピペラジンジオン,(4,4’−(1,{2−エタンジイル)ビス)[1−(4−モルホリニルメチル)−}、
M24:2−(メチルアミノ)−N−(6−(((メチルアミノ)アセチル)アミノ)−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロ−2−アントラセニル)アセトアミド。
本発明は、上述した化合物の薬学的に許容される塩およびエステルにも関する。
天然に生じる異性体または合成の異性体は、当該技術分野で知られているいくつかの方法で分離することができる。2種類の鏡像異性体のラセミ混合物を分離する方法としては、キラル固定相を用いるクロマトグラフィが挙げられる(例えば、"Chiral
Liquid Chromatography," W.J. Lough, Ed. Chapman and Hall,
New York (1989)を参照)。鏡像異性体は古典的な分解法によっても分離することができる。例えば、ジアステレオマー塩の形成および分別結晶を使用して鏡像異性体を分離することができる。カルボン酸の鏡像異性体の分離のために、鏡像異性的への純粋なキラル塩基(例えば、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネなど)の添加によって、ジアステレオマー塩を形成することができる。あるいは、メントールなどの鏡像異性的に純粋なキラルアルコールによってジアステレオマーエステルを形成した後、ジアステレオマーエステルを分離および加水分解して、鏡像異性的に富化された遊離カルボン酸を得ることができる。アミノ化合物の光学異性体の分離のために、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸または乳酸などのキラルなカルボン酸またはスルホン酸の添加によってジアステレオマー塩を形成することができる。
Liquid Chromatography," W.J. Lough, Ed. Chapman and Hall,
New York (1989)を参照)。鏡像異性体は古典的な分解法によっても分離することができる。例えば、ジアステレオマー塩の形成および分別結晶を使用して鏡像異性体を分離することができる。カルボン酸の鏡像異性体の分離のために、鏡像異性的への純粋なキラル塩基(例えば、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネなど)の添加によって、ジアステレオマー塩を形成することができる。あるいは、メントールなどの鏡像異性的に純粋なキラルアルコールによってジアステレオマーエステルを形成した後、ジアステレオマーエステルを分離および加水分解して、鏡像異性的に富化された遊離カルボン酸を得ることができる。アミノ化合物の光学異性体の分離のために、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸または乳酸などのキラルなカルボン酸またはスルホン酸の添加によってジアステレオマー塩を形成することができる。
別の実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載されている方法によって生成または特定されたFAK結合ポケットまたはFAKタンパク質間結合パートナー結合ポケット(FAKがパートナーに結合する結合部位またはパートナー中の他の結合部位など)に結合または会合する化合物を提供する。
別の態様では、本発明は、増殖疾患の治療に有用な化合物のスクリーニングに有用なポリペプチドを提供する。そのようなポリペプチドとしては、例えばFAK、FAKのドメイン、FAK結合パートナーのドメインが挙げられる。そのようなポリペプチドは、融合タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質などの検出可能なレポーター部分と融合した、あるいは蛍光標識、放射線標識などの検出可能なタグで標識された結合ポケット部分であってもよい。そのような融合タンパク質は、FAKまたはFAKタンパク質間結合パートナーを調節することができる化合物のスクリーニングで使用することができる。
3.本発明の化合物の使用
本明細書に詳述されている化合物は、FAK媒介性疾患および障害およびそれらの症状を調節する方法で有用である。FAKは、癌、肥満症および高血圧症、虚血再灌流障害、炎症、関節リウマチおよび白内障などの病気にも関係している。FAKレベルを減少または増加させることおよびその活性を調節することは、これらの病気に罹患している患者の利益になるものと結論づけられている。
本明細書に詳述されている化合物は、FAK媒介性疾患および障害およびそれらの症状を調節する方法で有用である。FAKは、癌、肥満症および高血圧症、虚血再灌流障害、炎症、関節リウマチおよび白内障などの病気にも関係している。FAKレベルを減少または増加させることおよびその活性を調節することは、これらの病気に罹患している患者の利益になるものと結論づけられている。
FAKの調節技術は、複数の対処されていない疾患標的を対象とした治療法の基礎となることができる。いくつかの化合物は、疾患(例えば癌)に対処するのに有用なFAK結合化合物として特定されている。FAKは、肝硬変、肥満症および高血圧症、炎症、関節リウマチおよび白内障にも関与していると思われる。
一実施形態では、本発明は、対象におけるFAK媒介性疾患または障害を治療する方法であって、それを必要としているものとして特定された対象に、接着斑キナーゼ(FAK)と第2のタンパク質との結合相互作用を阻害することができる化合物を投与することを含む方法を提供する。複数の態様では、疾患または障害は、肥満症、高血圧症、虚血再灌流障害、炎症、関節リウマチまたは白内障である。他の態様では、疾患または障害は卵巣癌である。他の態様では、疾患または障害は乳癌または結腸癌である。他の態様では、本化合物は、本明細書に詳述されている任意の化合物である。
一実施形態では、本発明は、FAKがFAKタンパク質間結合パートナーに結合するのを阻害することができる化合物の有効量を対象に投与することによって、細胞増殖性疾患に対して対象を治療する方法を提供する。細胞増殖性疾患としては、癌(例えば、ここでの癌は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌または黒色腫である)が挙げられる。特定の実施形態では、対象は、哺乳類、例えば霊長類(例えばヒト)である。
本実施形態では、本発明の化合物は、FAK、FAK結合パートナーまたはその特異的ドメインの活性を直接または間接的に調節してもよい。制御されない増殖下にある細胞を本発明の化合物に接触させて細胞増殖を阻害するかアポトーシスを誘発することができる。本発明の化合物の細胞との接触または対象への投与は、細胞の治療方法あるいは、好ましくないまたは望ましくない細胞増殖または細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法の1つである。
一実施形態では、好ましくないまたは望ましくない細胞増殖または細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療する方法は、それを必要としている対象に、FAK、FAK結合パートナーまたはその特異的ドメインの活性を直接または間接的に調節することができる化合物の治療的有効量を投与して、それにより、好ましくないまたは望ましくない細胞増殖または細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療することを含む。例示的な化合物としては、本明細書に記載されている化合物が挙げられる。
従って、一実施形態では、本発明は、FAKまたはFAK結合パートナーの結合ポケットに結合することができる化合物の有効量を対象に投与することによって、細胞増殖性疾患に対して対象を治療する方法を提供する。
他の態様では、細胞増殖性疾患は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌または黒色腫である。他の態様では、細胞増殖性疾患は卵巣癌である。他の態様では、細胞増殖性疾患は、血液癌、脳癌、白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、胃腸間質性腫瘍、腎臓癌、リンパ腫または多発性骨髄腫である。
特定の実施形態では、本発明の方法は、別の薬学的に活性な化合物と併用して本発明の化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む。薬学的に活性な化合物の例としては、細胞増殖性疾患を治療することで知られている化合物、例えば、抗癌剤、抗増殖剤、化学療法剤が挙げられる。使用され得る他の薬学的に活性な化合物は、Harrison's Principles of Internal
Medicine, Thirteenth Edition, Eds. T.R. Harrison et al. McGraw-Hill N. Y., NYおよびthe Physicians Desk Reference 50th Edition
1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.に記載されており、その内容は全て参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本発明の化合物および薬学的に活性な化合物は、同じ医薬組成物としてあるいは異なる医薬組成物として(同時または異なる時間に)対象に投与してもよい。
Medicine, Thirteenth Edition, Eds. T.R. Harrison et al. McGraw-Hill N. Y., NYおよびthe Physicians Desk Reference 50th Edition
1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.に記載されており、その内容は全て参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本発明の化合物および薬学的に活性な化合物は、同じ医薬組成物としてあるいは異なる医薬組成物として(同時または異なる時間に)対象に投与してもよい。
特定の実施形態では、本発明の化合物は、従来の癌化学療法剤との併用療法で使用することができる。白血病および他の腫瘍に対する従来の治療法としては、放射線、薬物またはそれらの組み合わせが挙げられる。放射線に加えて、以下の薬物:ビンクリスチン、プレドニゾン、メトトレキサート、メルカプトプリン、シクロホスファミドおよびシタラビンを通常互いに組み合わせて急性白血病を治療するために使用することが多い。他の例としては、例えば、ドキソルビシン、シスプラチン、タキソール、5‐フルオロウラシル、エトポシドなどが挙げられ、それらは、本明細書に記載されている化合物との併用で利点(例えば、細胞の化学増感)を示している。慢性白血病では、例えば、ブスルファン、メルファランおよびクロラムブシルを併用することができる。大部分の従来の抗癌剤は毒性が強く、治療を受けている間に患者の具合を非常に悪化させる傾向がある。強力な療法は、あらゆる癌細胞が破壊されない限り、残留細胞が増殖して再発を引き起こすという前提に基づいている。本発明の化合物は、ドキソルビシンまたはゲムシタビンなどの化学療法剤と併用投与することもできる。特に、化合物M13は、他の化学療法剤またはそれらの組み合わせとの併用において有用である。
特定の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、乳癌を治療するために、以下の化学療法剤(またはそれらの組み合わせ):アントラサイクリン(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン(エレンス)およびリポソームドキソルビシン(ドキシル)など)、タキサン(ドセタキセル(タキソテール)、パクリタキセル(タキソール)および蛋白結合パクリタキセル(アブラキサン)など)、シクロホスファミド(シトキサン)、カペシタビン(ゼローダ)および5−フルオロウラシル(5−FU)、ビノレルビン(ナベルビン)、ゲムシタビン(ジェムザール)、トラスツズマブ(ハーセプチン)と併用することができる。
複数の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、乳癌を治療するために、以下の化学療法剤の組み合わせと併用することができる:
CMF:シクロホスファミド(シトキサン)、メトトレキサート(アメトプテリン、メキサート(Mexate)、フォレックス(Folex))および5‐フルオロウラシル(フルオロウラシル、5−FU、アドルシル)、
CAF(FAC):シクロホスファミド、ドキソルビシン(アドリアマイシン)および5‐フルオロウラシル、
AC:ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド、
EC:エピルビシン(エレンス)およびシクロホスファミド、
TAC:ドセタキセル(タキソテール)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド、
AC→T:ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド、次いでパクリタキセル(タキソール)またはドセタキセル(タキソテール)、
A→CMF:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、次いでCMF、
A CEF(FEC):シクロホスファミド、エピルビシンおよび5‐フルオロウラシル(ドセタキセルの有無に関わらない)、
TC:ドセタキセル(タキソテール)およびシクロホスファミド、または
GT:ゲムシタビン(ジェムザール)およびパクリタキセル(タキソール)。
CMF:シクロホスファミド(シトキサン)、メトトレキサート(アメトプテリン、メキサート(Mexate)、フォレックス(Folex))および5‐フルオロウラシル(フルオロウラシル、5−FU、アドルシル)、
CAF(FAC):シクロホスファミド、ドキソルビシン(アドリアマイシン)および5‐フルオロウラシル、
AC:ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド、
EC:エピルビシン(エレンス)およびシクロホスファミド、
TAC:ドセタキセル(タキソテール)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド、
AC→T:ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド、次いでパクリタキセル(タキソール)またはドセタキセル(タキソテール)、
A→CMF:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、次いでCMF、
A CEF(FEC):シクロホスファミド、エピルビシンおよび5‐フルオロウラシル(ドセタキセルの有無に関わらない)、
TC:ドセタキセル(タキソテール)およびシクロホスファミド、または
GT:ゲムシタビン(ジェムザール)およびパクリタキセル(タキソール)。
複数の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、乳癌を治療するために、以下の化学療法剤(またはそれらの組み合わせ):カルボプラチン(パラプラチン)、シスプラチン(プラチノール)、ビノレルビン(ナベルビン)、カペシタビン(ゼローダ)、ペグ化リポソームドキソルビシン(ドキシル)およびアルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)と併用することができる。
特定の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、膵臓癌を治療するたに、以下の化学療法剤(またはそれらの組み合わせ):ゲムシタビン(ジェムザール)、フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(ゼローダ)、ベバシズマブ、バタラニブ、セツキシマブおよびエルロチニブと併用することができる。
特定の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、肺癌を治療するために、以下の化学療法剤(またはそれらの組み合わせ):カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イリノテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ペメトレキセド、エルロチニブ、トポテカン、ベバシズマブ、あるいはベバシズマブおよびカルボプラチンまたはパクリタキセルの組み合わせと併用することができる。
特定の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、卵巣癌を治療するに、以下の化学療法剤(またはそれらの組み合わせ):パクリタキセル(タキソール)およびカルボプラチンまたはシスプラチンの組み合わせと併用することができる。
特定の態様では、本明細書に詳述されている化合物は、結腸癌を治療するために、以下の化学療法剤(またはそれらの組み合わせ):AIO法(葉酸、フルオロウラシル[5−FU]およびイリノテカン)、LV5FU2法(ロイコボリンおよび5−FU)、FOLFOX4法(オキサリプラチン、ロイコボリンおよび5−FU)、FOLFOX6法(オキサリプラチン、ロイコボリンおよび5−FU)、FOLFIRI法(葉酸、5−FUおよびイリノテカン)、またはSaltz法(イリノテカン、5FUおよびロイコボリン)、レバミゾール法(5−FUおよびレバミゾール)、メイヨークリニックまたはNCCTG法(5−FUおよび低用量ロイコボリン)、ロズウェルパークまたはNSABP法(5−FUおよび高用量ロイコボリン)と併用することができる。
本発明の本発明の化合物の治療的に有効な抗増殖量または予防的に有効な抗増殖量は、公知の技術を用いて、および類似した環境下で得られた結果を観察することによって、当業者としての医師または獣医師(「主治医」)によって容易に決定することができる。投与量は、主治医の判断において患者の必要、すなわち治療されている病気の重症度および用いられている特定の化合物によって変動してもよい。治療的に有効な抗増殖量もしくは用量および予防的に有効な抗増殖量もしくは用量を決定する際には、罹患している特定の細胞増殖性疾患、特定の薬剤の薬力学的特性ならびに投与様式および投与経路、所望の治療の時間経過、哺乳類の種、その大きさ、年齢および一般的な健康状態、罹患している特異的疾患、疾患の罹患もしくは重症の程度、個々の患者の反応、投与される特定の化合物、投与様式、投与される製剤の生物学的利用能特性、選択される用法、併用治療の種類(すなわち、本発明の化合物と他の併用投与される治療薬との相互作用)、および他の関連する状況などのこれらに限定されない複数の要因が主治医によって検討される。
治療は本化合物の適量よりも少ない、より少ない投与量で開始することができる。その後、その状況下で最適な効果が得られるまで、少ない増加量で投与量を増加してもよい。便宜のために、必要に応じて総1日投与量を1日の間に複数回に分けて投与してもよい。本発明の本発明の化合物の治療的有効量および予防的に有効な抗増殖量は、体重1kg当たり1日約0.1ミリグラム(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日の範囲で変動することが予想される。
動物(例えば、イヌ、ニワトリおよび齧歯類)における細胞増殖性疾患の予防または治療に効果的であると判断された化合物は、ヒトにおける腫瘍の治療にも有用となり得る。ヒトにおける腫瘍を治療する当業者であれば、動物研究で得られたデータに基づいてヒトへの化合物の投与量および投与経路を知っているであろう。一般に、ヒトにおける投与量および経路は、動物における投与量および経路に類似していると予想される。
細胞増殖性疾患の予防的治療を必要とする患者の特定は、当業者の能力および知識の範囲に十分含まれている。主題の方法によって治療することができる細胞増殖性疾患を発病する恐れがある患者を特定する方法のいくつかは医療分野で理解されており、例えば、対象患者における家族歴およびその病状の発症に関連づけられる危険因子の存在である。当該技術分野の熟練した臨床医であれば、例えば、臨床検査、身体検査および病歴/家族歴を用いてそのような候補患者を容易に特定することができる。
対象における治療の有効性を評価する方法は、当該技術分野で良く知られている方法によって細胞増殖性疾患の治療前の程度を測定すること(例えば、細胞増殖性疾患が癌である場合には腫瘍の大きさを測定することまたは腫瘍マーカーをスクリーニングすること)、次いで、対象に本発明に係る細胞増殖阻害剤(例えば、本明細書に記載されている阻害剤)の治療的有効量を投与することを含む。本化合物の投与から適当な期間(例えば、1日、1週間、2週間、1ヵ月、6ヶ月)後に、細胞増殖性疾患の程度を再び測定する。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性の調節(例えば減少)は、治療の有効性を示す。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性は、治療中、定期的に測定してもよい。例えば、細胞増殖性疾患の程度または侵襲性を、数時間、数日または数週間ごとに検査し、治療のさらなる有効性を評価してもよい。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性の減少は、治療が有効であることを示す。本記載の方法は、細胞増殖性疾患の阻害剤を用いた治療が有効となり得る患者をスクリーニングまたは選択するために使用してもよい。
本明細書に使用されている「対象から生体試料を得ること」とは、本明細書に記載されている方法で使用される試料を得ることを含む。生体試料については上に記載されている。
さらに別の態様は、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの相互作用を調節する化合物を特定する方法を提供する。本方法は、試験化合物の存在および/または非存在下で、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの結晶構造(場合により分離型または複合型)を得ること、またはFAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの結晶構造(場合により分離型または複合型)に関する情報を得ることを含んでいてもよい。次いで、化合物を、結晶構造のFAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの結合部位の中または上にコンピュータでモデル化し、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインと試験化合物との相互作用の安定化を予測してもよい。可能な調節化合物が特定されたら、本明細書に特定されているアッセイおよび当該技術分野で知られている競合アッセイなどの細胞アッセイを用いて、本化合物をスクリーニングしてもよい。このようにして特定された化合物は治療薬として有用である。
別の態様では、本発明の化合物は、薬学的に許容される担体または希釈液と共に治療的有効量で包装されている。本組成物は、細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療するために製剤化され、かつ細胞増殖性疾患に罹患しているか罹患しやすい対象を治療するための説明書と共に包装されていてもよい。
別の態様では、本発明は細胞増殖を阻害する方法を提供する。一実施形態では、本発明に係る細胞増殖(または細胞増殖性疾患)を阻害する方法は、細胞をFAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインを調節することができる化合物に接触させることを含む。いずれの実施形態においても、接触させることは、試験管内で、例えば細胞を取り囲んでいる流体(例えば、細胞が生存または存在している培養基)に本化合物を添加することであってもよい。また、接触させることは、本化合物を細胞に直接接触させることであってもよい。あるいは、接触させことは、生体内で、例えば対象の体内に本化合物を通過させることであってもよい。例えば、投与後に投与経路に応じて、本化合物を消化管または血流内を移動させてもよく、あるいは治療を必要としている細胞に直接塗布または投与してもよい。
別の態様では、対象における細胞増殖性疾患の阻害方法は、対象に本発明の化合物(すなわち、本明細書に記載されている化合物)の有効量を投与することを含む。投与は、医薬分野で知られている任意の投与経路であってもよい。対象は、細胞増殖性疾患に罹患しているものであっても細胞増殖性疾患を発病する恐れがあるものであってもよく、あるいは細胞増殖性疾患への罹病性を増加させることができる状況への予期されるまたは予期されない曝露(例えば、発癌物質または電離放射線への曝露)の前に、予防治療を必要としているものであってもよい。
一態様では、本明細書中の化合物で治療されている対象の経過を監視する方法は、細胞増殖性疾患の治療前の状態(例えば、腫瘍の大きさ、成長率または侵襲性)を測定すること、対象に本明細書中の化合物の治療的有効量を投与すること、および本化合物による治療の第一の周期後の細胞増殖性疾患の状態(例えば、腫瘍の大きさ、成長率または侵襲性)を測定することを含み、ここでは、状態の調節は治療の有効性を示す。
対象は、細胞増殖性疾患の恐れがあるものであっても、細胞増殖性疾患の症状を呈しているものであってもよく、あるいは、細胞増殖性疾患に罹患しやすいものおよび/または細胞増殖性疾患であると診断されたものであってもよい。
状態の調節が対象が治療に対して好ましい臨床的反応を有し得ることを示す場合には、対象を本化合物で治療してもよい。例えば、本化合物の治療的に有効な単回もしくは複数回用量を対象に投与することができる。
別の態様では、試験化合物を評価する方法は、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインを試験化合物(複合体)に接触させること、および接触後に結合相互作用を評価することを含み、ここでは、基準値に対する複合体の安定性の変化は、試験化合物が複合体の安定性を調節するという指標である。
FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの複合体は、コンピュータでモデル化したものであってもよく、あるいは、細胞内の複合体、細胞から単離されたもの、組み換えによって発現されたもの、細胞もしくは組み換え型発現系から精製もしくは単離されたものまたは細胞もしくは組み換え型発現系から部分的に精製もしくは単離されたものであってもよい。
本発明のキットは、対象における細胞増殖性疾患を治療するためのキットを含む。本キットは、本発明の化合物(例えば、本明細書に記載されている化合物)、その薬学的に許容されるエステル、塩およびプロドラッグならびに使用説明書を含んでいてもよい。使用説明書は、投与量、送達方法、キットの保管などに関する情報を含んでいてもよい。また、本キットは、試薬(例えば試験化合物)、緩衝液、培地(例えば細胞増殖培地)、細胞などを含んでいてもよい。試験化合物は、公知の化合物または新しく発見された化合物、例えば、化合物のコンビナトリアルライブラリーを含んでいてもよい。本発明の1つまたは複数のキットが一緒に包装されていてもよく、例えば、細胞増殖性疾患の治療の有効性を評価するためのキットが、本発明に従って細胞増殖性疾患に対して治療されている対象の経過を監視するためのキットと一緒に包装されていてもよい。
本方法は、例えば試験管内または生体外で培養液中の細胞に対して、あるいは、例えば生体内で動物対象の体内に存在する細胞に対して実施することができる。本発明の化合物は、増殖している細胞(例えば、形質転換細胞、腫瘍細胞株など)の一次培養液を用いて試験管内で初期試験を行うことができる。
本方法は、例えば試験管内または生体外で培養液中の細胞に対して、あるいは、例えば生体内で動物対象の体内に存在する細胞に対して実施することができる。本発明の化合物は、胎生期の齧歯類の子(例えば、米国特許第5,179,109号:「胎児のラットの組織培養(fetal rat tissue culture)」を参照)、または他の哺乳類(例えば、米国特許第5,089,517号:「胎児のマウスの組織培養(fetal mouse tissue culture」を参照)、あるいは非哺乳類動物モデルの気道からの細胞を用いて試験管内で初期試験を行うことができる。
あるいは、本発明の化合物の効果は、動物モデルを用いて生体内で特徴づけることができる。
4.医薬組成物
本発明は、有効量の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。さらなる実施形態では、有効量は、上述したように、細胞増殖性疾患を治療するのに効果的である。
本発明は、有効量の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。さらなる実施形態では、有効量は、上述したように、細胞増殖性疾患を治療するのに効果的である。
一実施形態では、本発明の本化合物は、薬学的に許容される製剤、例えば、薬学的に許容される製剤が対象に投与されてから少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、1週間、2週間、3週間または4週間にわたる本発明の化合物の持続放出を対象に提供する薬学的に許容される製剤を用いて対象に投与される。
特定の実施形態では、これらの医薬組成物は、対象への局所もしくは経口投与に適している。他の実施形態では、以下に詳細に説明するように、本発明の医薬組成物は、以下のように構成されたものを含む固体または液体の形態で、投与のために特別に製剤化されていてもよい:(1)経口投与(例えば、飲薬(水性もしくは非水性溶液または懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末、顆粒、ペースト)、(2)非経口投与(例えば、無菌溶液または懸濁液としての、例えば皮下、筋肉内または静脈内注射)、(3)局所投与(例えば、皮膚に塗布されるクリーム、軟膏またはスプレー)、(4)膣内または直腸内投与(例えば、膣座薬、クリームまたは発泡剤)、あるいは(5)エアロゾル(例えば、本化合物を含む水性エアロゾル、リポソーム製剤または固体粒子)。
「薬学的に許容される」という語句は、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を生じることなく、適切な医学的判断の範囲においてヒトおよび動物の組織に接触させて使用するのに適した、妥当な利益/リスク比に見合った、本発明の本発明のそれらの化合物、そのような化合物を含む組成物および/または剤形を指す。
「薬学的に許容される担体」という語句は、ある器官または体の一部から別の器官または体の一部への主題の化学物質の運搬または輸送に関与する薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル(例えば、液体または固体充填剤)、希釈液、賦形剤、溶媒または封入材料を含む。各担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ患者に有害でないという意味において「許容」される。薬学的に許容される担体として有用となり得る材料のいくつかの例としては、(1)糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース)、(2)澱粉(例えば、コーンスターチおよびジャガイモ澱粉)、(3)セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース)、(4)トラガント末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤(例えば、カカオ脂および座薬ワックス)、(9)油(例えば、落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、(10)グリコール(例えば、プロピレングリコール)、(11)ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール)、(12)エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル)、(13)寒天、(14)緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)、(15)アルギン酸、(16)発熱性物質除去蒸留水、(17)等張食塩水、(18)リンガー液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、および(21)医薬組成物に用いられる他の毒性のない適合物質が挙げられる。
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、着香料および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も本組成物中に含めることができる。
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど)、(2)油溶性抗酸化剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α‐トコフェロールなど)、および(3)金属キレート化剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)が挙げられる。
本発明の化合物(1種または複数)を含む組成物としては、経口、経鼻、局所(口内および舌下を含む)、直腸内、膣内、エアゾールおよび/または非経口投与に適したものが挙げられる。本組成物は、好都合に単位剤形で提供してもよく、かつ薬学の分野で良く知られている任意の方法によって調製してもよい。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療されているホスト、特定の投与様式によって変動するであろう。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に治療効果を生じさせる本化合物のその量である。一般に、有効成分の量は100%中、約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、より好ましくは約10%〜約30%の範囲である。
これらの組成物を調製する方法は、本発明の化合物(1種または複数)を、担体および場合により1種または複数の副成分と混合する工程を含む。一般に、本製剤は、本発明の化合物(1種または複数)を液体担体または微粉固体担体あるいは両方と均一かつ密接に混合し、次いで、必要であればその生成物を成形することによって調製される。
経口投与に適した本発明の組成物は、有効成分として所定の量の本発明の化合物(1種または複数)をそれぞれ含む、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(風味をつけた主成分、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカンタを用いる)、粉末、顆粒の形態、水性もしくは非水性液体の溶液または懸濁液として、水中油型または油中水型液体エマルジョンとして、エリキシルまたはシロップとして、あるいは香錠(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性主成分を用いる)として、および/または洗口剤などとしてであってもよい。また、化合物は、巨丸剤、舐剤またはペースト剤として投与してもよい。
経口投与(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣丸、粉末、顆粒など)のための本発明の固体投与形態では、有効成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1種または複数の薬学的に許容される担体および/または(1)充填剤または増量剤(例えば、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸)、(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア)、(3)保湿剤(例えば、グリセリン)、(4)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム)、(5)溶液緩染剤(例えば、パラフィン)、(6)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)、(7)湿潤剤(例えば、アセチルアルコールおよびグリセリンモノステアレート)、(8)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)、(9)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物)、および(10)着色剤のうちのいずれかと混合する。カプセル、錠剤および丸剤の場合、本医薬組成物は、緩衝剤を含んでいてもよい。また、ラクトースすなわち乳糖や高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いた軟充填および硬充填ゼラチンカプセル内の充填剤として類似した種類の固体組成物を使用してもよい。
錠剤は、場合により1種または複数の副成分と共に、圧縮または成形によって調製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸澱粉ナトリウムまたはクロスリンクカルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製してもよい。湿製錠剤は、不活性液体希釈液で湿らせた粉末状の有効成分の混合物を好適な機械で成形することによって調製してもよい。
錠剤および糖衣丸、カプセル、丸剤および顆粒などの本発明の医薬組成物の他の固体投与形態は、場合により、刻み目を入れたり、あるいは医薬製剤化技術で良く知られている腸溶コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製したりしてもよい。また、それらは、例えば、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを提供するために、異なる割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いてその中の有効成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化してもよい。例えば、細菌保持フィルタ(bacteria-retaining filter)による濾過によって、あるいは使用直前に無菌水またはいくつかの他の無菌注射媒体に溶解することができる無菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、それらを滅菌してもよい。また、これらの組成物は場合により乳白剤を含んでいてもよく、消化管の特定の部分において場合により遅延的に、有効成分(1種または複数)のみを(すなわち優先的に)放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。有効成分は、適当であれば1種または複数の上記賦形剤と共にマイクロ封入された形態とすることもできる。
本発明の化合物(1種または複数)の経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。有効成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野において一般に使用される水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの不活性希釈剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油および胡麻油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルおよびそれらの混合物を含んでいてもよい。
不活性希釈剤に加えて、本経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、着香料、着色剤、芳香剤および防腐剤などの補助剤を含むことができる。
懸濁液は、本発明の活性化合物(1種または複数)に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカンタおよびそれらの混合物などの懸濁化剤を含んでいてもよい。
直腸内または膣内投与用の本発明の医薬組成物は、本発明の1種または複数の化合物を、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、座薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む1種または複数の好適な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製し得る坐薬であり、室温では固体だが体温で液体となるため直腸内または膣腔内で溶解して活性剤を放出する坐薬として提供してもよい。
また、膣内投与に適している本発明の組成物としては、適当なものとして当該技術分野で知られているような担体を含む膣座薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡剤またはスプレー製剤も挙げられる。
本発明の化合物(1種または複数)の局所または経皮投与用の剤形としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が挙げられる。本発明の活性化合物(1種または複数)は、無菌状況下で、薬学的に許容される担体および必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝液または噴射剤と混合してもよい。
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の本発明の化合物(1種または複数)に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカンタ、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはそれらの混合物などの賦形剤を含んでいてもよい。
粉末およびスプレーは、本発明の化合物(1種または複数)に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素および揮発性の未置換炭化水素(例えば、ブタンおよびプロパン)などの慣用の噴射剤をさらに含むことができる。
あるいは、本発明の化合物(1種または複数)はエアロゾルによって投与することができる。これは、本化合物を含む水性エアロゾル、リポソーム製剤または固体粒子を調製することによって達成される。非水性の(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁液を使用することができる。音波噴霧器は、薬剤を本化合物の分解を生じさせ得る剪断に曝すのを最小にするため好ましい。
通常、水性エアロゾルは、従来の薬学的に許容される担体および安定剤と共に薬剤の水溶液または懸濁液を製剤化することによって調製される。担体および安定剤は、特定の化合物の必要によって異なるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(トウィーン(Tween)、プルロニック(Pluronic)またはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩、糖または糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは一般に等張溶液から調製される。
経皮パッチは、体に本発明の化合物(1種または複数)を制御達するというさらなる利点を有する。そのような剤形は、適切な媒体に薬剤を溶解または分散させることによって調製することができる。皮膚全体における有効成分の流量を増加させるために吸収促進剤も使用することができる。そのような流量率は、膜の制御率を提供するか、あるいはポリマーマトリックスまたはゲル内に有効成分を分散させることによって制御することができる。
眼科用製剤(眼軟膏、粉末、溶液など)も本発明の範囲内のものとして想定されている。
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容される無菌の水性もしくは非水性等張溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンと、あるいは、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、製剤を対象のレシピエントの血液と等張させる溶質、懸濁剤または増粘剤を含み得る無菌の注射溶液または分散液に使用直前に再構成され得る無菌粉末と組み合わせて、本発明の1種または複数の化合物を含む。
本発明の医薬組成物中に用いられ得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および好適なそれらの混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いて、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。
また、これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含んでいてもよい。微生物の作用の予防は、様々な抗細菌薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール(phenol sorbic acid)などを含めることによって確保してもよい。また、本組成物に糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な医薬形態の長期にわたる吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによって生じさせてもよい。
薬物の効果を引き延ばすために、皮下もしくは筋肉内注射後の薬物の吸収を遅くすることが望ましい場合もある。これは、水溶性が乏しい結晶もしくは非晶質材料からなる液体懸濁液を使用することによって達成してもよい。ここで、薬物の吸収速度は、薬物の溶解速度に依存し、次いで、その溶解速度は結晶の大きさおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口的に投与された薬物形態の吸収の遅延は、油性ビヒクルに薬物を溶解または懸濁することによって達成される。
注射可能なデポー形態は、ポリ乳酸−ポリグリコライドなどの生分解性ポリマー内に本発明の化合物(1種または複数)のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって調製される。薬物とポリマーとの比および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルソエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。注射可能なデポー製剤は、体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を封入することによっても調製される。
本発明の化合物(1種または複数)がヒトおよび動物に医薬として投与される場合、それらは、それ単独で、あるいは薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは0.5〜90%)の有効成分を含む医薬組成物として投与することができる。
選択される投与経路に関係なく、本発明の好適な水和形態および/または医薬組成物で使用され得る本発明の化合物(1種または複数)は、当業者に知られている従来の方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化される。
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルおよび投与の時間経過は、患者に対して毒性がなく、特定の患者、組成物および投与様式に対する望ましい治療反応を達成するのに効果的な量の有効成分を得るように変更してもよい。例示的な用量範囲は、0.1〜10mg/日である。
本発明のための本発明の化合物の好ましい用量は、患者が耐えることができ、かつ深刻な副作用を生じない最大の量である。好ましくは、本発明の本発明の化合物は、体重あたり約0.001mg〜約100mg、約0.001〜約10mg/kg、または約0.001mg〜約100mg/kgの濃度で投与される。上記値の中間の範囲も本発明の一部であることが意図されている。
6.スクリーニング方法およびシステム
別の態様では、本発明は、本明細書に特定されている結合ポケットあるいは同じような形状の相同的な結合ポケットの一方または両方のいずれかの構造座標を含む機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。これらのデータと共に符号化されたそのような記憶媒体は、コンピュータスクリーンまたは類似の視覚装置にそのような結合ポケットを含む分子または分子複合体の3次元グラフィック表示を表示することができる。
別の態様では、本発明は、本明細書に特定されている結合ポケットあるいは同じような形状の相同的な結合ポケットの一方または両方のいずれかの構造座標を含む機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。これらのデータと共に符号化されたそのような記憶媒体は、コンピュータスクリーンまたは類似の視覚装置にそのような結合ポケットを含む分子または分子複合体の3次元グラフィック表示を表示することができる。
本発明は、上述した結合ポケットに結合する化合物を設計、評価および特定する方法も提供する。従って、本コンピュータは、結合ポケットを含む分子または分子複合体の3次元グラフィック構造を生成する。
別の実施形態では、本発明は、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらのドメインの構造座標によって定義された分子または分子複合体の3次元表示あるいは前記分子または分子複合体の相同体の3次元表示を生成するコンピュータを提供し、ここでは、前記相同体は、前記アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差が2.0(好ましくは、1.5)オングストローム以下の結合ポケットを含む。
例示的な実施形態では、本コンピュータまたはコンピュータシステムは、例えば、米国特許第5,978,740号および/または第6,183,121号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている当該技術分野で通常である構成要素を含むことができる。例えば、コンピュータシステムは、中心処理装置(「CPU」)、ワーキングメモリ(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)または「コア」メモリであってもよい)、大容量記憶装置(例えば、1つまたは複数のディスクドライブまたはCD−ROMドライブなど)、1つまたは複数のブラウン管(CRT)または液晶表示装置(LCD)表示端末装置、1つまたは複数のキーボード、1つまたは複数の入力回線および1つまたは複数の出力回線を備えたコンピュータを含むことができ、これらは全て、従来のシステムバスによって相互に接続されている。
本発明の機械読み取り可能なデータは、データ回線によって接続された1つまたは複数のモデムの使用によってコンピュータに入力してもよい。代わりとして、あるいは、追加として、入力ハードウェアは、CD−ROMドライブ、ディスクドライブまたはフラッシュメモリを含んでいてもよい。キーボードは、表示端末装置と組み合わせて、入力装置として使用してもよい。
出力回線によってコンピュータに接続された出力ハードウェアは、同様に従来の装置によって実装されていてもよい。一例として、出力ハードウェアは、プログラム(例えば、QUANTAまたはPYMOL)を用いて本発明の結合ポケットのグラフィック表示を表示するためのCRTまたはLCD表示端末装置を含んでいてもよい。また、出力ハードウェアは、プリンタまたは後の使用のためにシステム出力を記憶するディスクドライブを含んでいてもよい。
動作中、CPUは様々な入出力装置の使用を調節し、大容量記憶装置からのデータアクセスおよびワーキングメモリへ/からのアクセスを調節し、かつデータ処理工程の順序を決定する。市販のソフトウェアなどの複数のプログラムを使用して本発明の機械読み取り可能なデータを処理してもよい。
本発明に係る機械読み取り可能なデータを記憶するための磁気記憶媒体は、従来のものであってもよい。磁気データ記憶媒体は、上記コンピュータシステムなどのシステムによって実行することができる機械読み取り可能なデータと共に符号化することができる。この媒体は、従来型であってもよい好適な基板と、片面または両面に、極性または向きを磁気的に変更することが可能な磁区を含む従来型であってもよい好適なコーティングとを有する従来型のフロッピー(登録商標)ディスクまたはハードディスクであってもよい。また、この媒体は、ディスクドライブまたは他のデータ記憶装置のスピンドルを受け入れる開口(図示せず)を有していてもよい。
本明細書に記載されているコンピュータシステムなどのシステムによる実行のために、媒体の磁区は、従来の方法であってもよい方法で本明細書に記載されている機械読み取り可能なデータを符号化するように極性化または配向される。
光学的に読み取り可能なデータ記憶媒体も、機械読み取り可能なデータまたはコンピュータシステムによって実行することができる一組の命令と共に符号化することができる。この媒体は、従来のコンパクトディスク読出し専用メモリ(CD−ROM)または光学的に読み取り可能かつ磁気光学的に書込み可能である光磁気ディスクなどの書き換え可能な媒体であってもよい。
CD−ROMの場合、周知のように、ディスクコーティングは反射性であり、かつ機械読み取り可能なデータを符号化するための複数のピットが型押しされている。ピットの配置は、コーティングの表面からの反射レーザ光によって読み込まれる。好ましくは実質的に透明である保護コーティングが反射性コーティング上に設けられている。
光磁気ディスクの場合、周知のように、データ記録コーティングはピットを有していないが、例えば、レーザーによって特定の温度を超えて加熱された場合に極性または向きを磁気的に変えることができる複数の磁区を有する。磁区の向きは、コーティングから反射されたレーザ光の極性を測定することによって読み込むことができる。磁区の配置によって上記のようにデータが符号化される。
構造データは、それらの座標を結合ポケットを含む分子または分子複合体の3次元構造に変換するようにソフトウェアによってプログラムされたコンピュータと共に使用される場合、様々な目的、例えば薬物の発見のために使用してもよい。
例えば、データによって符号化された構造は、化学物質に結合するその能力についてコンピュータで評価してもよい。FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの結合ポケットに結合する化学物質は可能な薬物候補である。あるいは、データと共に符号化された構造は、コンピュータスクリーン上にグラフィック3次元表示で表示してもよい。これにより、構造の目視検査ならびに構造の化学物質との結合の目視検査が可能となる。
従って、別の実施形態によれば、本発明は、a)FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの結合ポケットを含む分子または分子複合体、またはb)前記アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差が2.0(好ましくは、1.5)オングストローム以下である結合ポケットを含む前記分子または分子複合体の相同体に結合する化学物質の可能性を評価する方法に関する。
本方法は、
i)化学物質と分子または分子複合体の結合ポケットとのフィッティング演算を行うための計算手段を用いる工程と、
ii)化学物質と結合ポケットとの結合を定量化するためにフィッティング演算の結果を分析する工程と、
を含む。本明細書で使用される「化学物質」という用語は、化学的化合物、少なくとも2種類の化学的化合物の複合体およびそのような化合物または複合体の断片を指す。
i)化学物質と分子または分子複合体の結合ポケットとのフィッティング演算を行うための計算手段を用いる工程と、
ii)化学物質と結合ポケットとの結合を定量化するためにフィッティング演算の結果を分析する工程と、
を含む。本明細書で使用される「化学物質」という用語は、化学的化合物、少なくとも2種類の化学的化合物の複合体およびそのような化合物または複合体の断片を指す。
本発明に係るFAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの結合ポケットに結合する、あるいはそれらを阻害する化合物の設計には、一般にいくつかの要因の考察が含まれる。第1に、化学物質は、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインに関連する結合ポケットの一部または全体と物理的かつ構造的に結合することができるものでなければならない。この結合において重要な非共有分子間相互作用としては、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水的相互作用および静電的相互作用が挙げられる。第2には、化学物質は、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインに関連する結合ポケットに直接結合するのを可能にする立体配座をとることができるものでなければならない。化学物質の特定の部分はこれらの結合に直接関与しないが、それでも化学物質のそれらの部分が分子の全体的な立体配座に影響を与える場合がある。次いで、これが作用強度に重大な影響を与える場合がある。そのような立体配座要件としては、結合ポケットの全体または一部に対する化学物質の全体的な3次元構造および方向、あるいは結合ポケットまたはその相同体と直接相互作用するいくつかの化学物質を含む物質の官能基間の間隔が挙げられる。
FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインに関連する結合ポケット上の化学物質の可能な阻害もしくは結合効果は、コンピュータモデリング技術を用いて、その実際の合成および試験前に分析してもよい。所与の化学物質の理論上の構造が物質と標的結合ポケットとの間の不十分な相互作用および結合を示唆する場合には、化学物質の試験は不要となる。しかし、コンピュータモデリングが強い相互作用を示す場合には、その分子を合成し、結合ポケットに結合するその能力について試験してもよい。これは、例えば、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの活性を阻害する分子の能力を試験することによって、例えば、本明細書に記載されているアッセイまたは当該技術分野で知られているアッセイを用いて達成してもよい。このようにして効力のない化合物の合成を回避してもよい。
FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインに関連する結合ポケットの可能な阻害剤は、化学物質または断片をFAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインに関連する結合ポケットに結合するそれらの能力についてスクリーニングおよび選択する一連の工程によってコンピュータで評価してもよい。
当業者は、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインに関連する結合ポケットに結合するそれらの能力について化学物質または断片をスクリーニングするいくつかの方法のうちの1つを使用してもよい。このプロセスは、本明細書に記載されているFAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの構造座標または機械読み取り可能な記憶媒体から生成された類似した形状を定義する他の座標に基づいて、例えば、コンピュータスクリーン上のFAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインに関連する結合ポケットの目視検査によって始めてもよい。次いで、選択された断片または化学物質を様々な方向に配置してもよいし、あるいは上に定義されているその結合ポケット内にドッキングしてもよい。ドッキングは、QuantaおよびDOCKなどのソフトウェア、次いで、CHARMMおよびAMBERなどの標準的な分子力学力場によるエネルギーの最小化および分子動力学を用いて達成してもよい。
専門のコンピュータプログラム(例えば、当該技術分野で知られているものおよび/または市販されているものおよび/または本明細書に記載されているもの)も、断片または化学物質を選択するプロセスにおいて有用となり得る。
好適な化学物質または断片が選択されると、それらを単一の化合物または複合体に組み立てることができる。組み立ては、標的結合ポケットの構造座標に対するコンピュータスクリーン上に表示された3次元画像上の断片の互いの関係の目視検査の後であってもよい。
上記のように、1度に1つの断片または化学物質で段階的に結合ポケットの阻害剤を構築し続ける代わりに、阻害化合物または他の結合化合物は、空の結合部位のいずれかを用いるか、または場合により公知の阻害剤(1種または複数)のいくつかの部分を含めて全体として、あるいは「新たに」設計してもよい。当該技術分野で知られている多くの新規のリガンド設計方法があり、そのうちのいくつかは市販されている(例えば、ミズーリ州セントルイスのTripos Associates社から入手可能なLeapFrog)。
他の分子モデリング技術も本発明に従って用いてもよい[例えば、N. C. Cohen et al., "Molecular
Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry", J. Med. Chem., 33, pp. 883-894
(1990)を参照、M. A. Navia and M. A. Murcko, "The
Use of Structural Information in Drug Design", Current Opinions in Structural
Biology, 2, pp. 202-210 (1992)、L. M.
Balbes et al., "A Perspective of Modern Methods in
Computer-Aided Drug Design", in Reviews in Computational
Chemistry, Vol. 5, K. B. Lipkowitz and D. B. Boyd, Eds., VCH, New York, pp.
337-380 (1994)も参照、W. C. Guida, "Software
For Structure-Based Drug Design", Curr. Opin. Struct. Biology,,
4, pp. 777-781 (1994)も参照]。
Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry", J. Med. Chem., 33, pp. 883-894
(1990)を参照、M. A. Navia and M. A. Murcko, "The
Use of Structural Information in Drug Design", Current Opinions in Structural
Biology, 2, pp. 202-210 (1992)、L. M.
Balbes et al., "A Perspective of Modern Methods in
Computer-Aided Drug Design", in Reviews in Computational
Chemistry, Vol. 5, K. B. Lipkowitz and D. B. Boyd, Eds., VCH, New York, pp.
337-380 (1994)も参照、W. C. Guida, "Software
For Structure-Based Drug Design", Curr. Opin. Struct. Biology,,
4, pp. 777-781 (1994)も参照]。
化合物が設計または選択されたら、その物質が結合ポケットに結合し得る効率をコンピュータ評価によって試験および最適化してもよい。
化合物の変形エネルギーおよび静電的相互作用を評価するための特定のコンピュータソフトウェアが当該技術分野において入手可能である。そのような用途のために設計されたプログラムの例としては、AMBER、QUANTA/CHARMM(ウィスコンシン州マディソンのAccelrys社)などが挙げられる。これらのプログラムは、例えば市販のグラフィックスワークステーションを用いて実行していてもよい。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは当業者に知られているであろう。
別の技術では、例えば、本明細書に記載されている化合物の仮想ライブラリーをコンピュータでスクリーニングする。何千もの多くの化合物を素早くスクリーニングすることができ、最良の仮想化合物を(例えば、合成および試験管内試験による)さらなるスクリーニングのために選択することができる。小分子データベースは、全体的または部分的に、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらの特異的ドメインの結合ポケットに結合することができる化学物質または化合物をスクリーニングすることができる。このスクリーニングでは、そのような物質の結合部位への適合性を、形状相補性によってあるいは推定される相互作用エネルギーによって判断してもよい。
一態様では、本明細書に詳述されている方法は、生体内または試験管内アッセイで試験化合物を獲得しかつ試験することをさらに含むことができる。関連するアッセイが当該技術分野で知られており、FAKおよびFAKの結合相互作用の評価のために知られているものおよび本明細書に詳述されているものが挙げられる。
一態様では、本明細書に詳述されているコンピュータまたは記憶媒体は、FAK結合化合物に結合したFAK(例えば、FAK/M−化合物複合体;FAKの座標、Mdm−2の座標)の構造座標を含む。
別の態様では、本明細書に詳述されている結合ポケットに結合する化合物を設計、評価または特定する方法は、FAK結合化合物に結合したFAK(例えば、FAK/M13複合体)の構造座標を含む。
本発明について本発明の範囲を限定するためではなく例示することを目的とした以下の実施例によってさらに示す。
実施例1
FAKおよびMdm−2小分子阻害剤の構造に基づくコンピュータによる分子ドッキング。我々は、タンパク質間相互作用の高分子ドッキング、小分子化合物の分子ドッキングを機能的な試験と組み合わせた、構造に基づく手法を使用した。最初に、FAK、N末端FERMドメイン(PDB ID:2AL6)およびMDM2 NMRの結晶構造およびタンパク質データベースからの結晶構造を高分子ドッキングおよび相互作用のモデル化のために使用した。FAK−NT−Mdm−2相互作用をモデル化するために、DOTソフトウェア(http://www.sdsc.edu/CCMS/DOT/)を使用し、これにより、静電学、ファンデルワールスおよび脱溶媒和エネルギーを用いて得られた界面のスコアに基づいて、この相互作用の10,000通りを超える可能な方向を分析した。FAK−NTおよびMdm−2相互作用の最も高いスコアを有するモデルを生成した。これは、主としてFAKと相互作用するということが最近報告された(MoL Cell, 29, 2008, 9-22)F3葉(F3
lobe)からのアミノ酸(254−352aa)を含んでいた。次いで、DOCK5.1プログラムを用いて、リピンスキーの法則に従う140,000種を超える小分子阻害剤をFAKおよびMdm−2相互作用のN末端ドメインのポケットに100通りの異なる方向でドッキングさせた。DOCK5.1プログラムパッケージSPHGENを用いてFAK−Mdm−2の標的ポケットを描く球を作成した。ドッキングの計算は、16台の処理装置を用いるフロリダ大学高性能コンピューティングスーパーコンピューティングクラスタで行った(http://hpc.ufl.edu)。
FAKおよびMdm−2小分子阻害剤の構造に基づくコンピュータによる分子ドッキング。我々は、タンパク質間相互作用の高分子ドッキング、小分子化合物の分子ドッキングを機能的な試験と組み合わせた、構造に基づく手法を使用した。最初に、FAK、N末端FERMドメイン(PDB ID:2AL6)およびMDM2 NMRの結晶構造およびタンパク質データベースからの結晶構造を高分子ドッキングおよび相互作用のモデル化のために使用した。FAK−NT−Mdm−2相互作用をモデル化するために、DOTソフトウェア(http://www.sdsc.edu/CCMS/DOT/)を使用し、これにより、静電学、ファンデルワールスおよび脱溶媒和エネルギーを用いて得られた界面のスコアに基づいて、この相互作用の10,000通りを超える可能な方向を分析した。FAK−NTおよびMdm−2相互作用の最も高いスコアを有するモデルを生成した。これは、主としてFAKと相互作用するということが最近報告された(MoL Cell, 29, 2008, 9-22)F3葉(F3
lobe)からのアミノ酸(254−352aa)を含んでいた。次いで、DOCK5.1プログラムを用いて、リピンスキーの法則に従う140,000種を超える小分子阻害剤をFAKおよびMdm−2相互作用のN末端ドメインのポケットに100通りの異なる方向でドッキングさせた。DOCK5.1プログラムパッケージSPHGENを用いてFAK−Mdm−2の標的ポケットを描く球を作成した。ドッキングの計算は、16台の処理装置を用いるフロリダ大学高性能コンピューティングスーパーコンピューティングクラスタで行った(http://hpc.ufl.edu)。
コンピュータによるドッキング。全てのドッキングの計算は、FAK−Mdm−2相互作用を標的とする球体のセットを有する小分子構造を方向付けるためのクリークマッチングアルゴリズムを用いるサンフランシスコのカリフォルニア大学DOCK5.1.プログラムによって行った。方向はシンプレックス最小アルゴリズムを用いて最適化し、標的部位内の各小分子につき100通りの方向を創出したが、それらは、DOCK5.1格子に基づくスコアリング関数を用いた独立したスコアであった。簡潔に言うと、国立癌研究所、開発治療プログラム(NCI/DTP)のデータベースの140,000種の化合物の3次元座標をNCIから得た。水素原子および部分的な電荷に関するファイルは、SYBDBプログラムを用いて作成した。
小分子化合物。FAK−Mdm−2ポケットに最も適合するようにDOCK5.1プログラムによって検出された上位の化合物は、NCI/DTPデータベースから無料で入手した。各化合物は、25mMの濃度で水に可溶化した。M13化合物は、試験管内での生化学分析および生体内研究のためのマウスへの注射のためにSigma社から入手した。
実施例2
細胞株および培養液。BT474乳癌細胞を、10%ウシ胎児血清(FB)、5μg/mlのインスリンおよび1μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地内に維持した。MCF−7細胞株をATCCから得、製造業者の手順に従って維持した。HCT116p53+/+およびp53−/−結腸癌細胞は、10%FBSを含むMcCoyの5A培地内に維持した。
細胞株および培養液。BT474乳癌細胞を、10%ウシ胎児血清(FB)、5μg/mlのインスリンおよび1μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地内に維持した。MCF−7細胞株をATCCから得、製造業者の手順に従って維持した。HCT116p53+/+およびp53−/−結腸癌細胞は、10%FBSを含むMcCoyの5A培地内に維持した。
細胞生存率アッセイ。細胞を異なる濃度の化合物で24時間処理した。Promega社製生存率キット(Promega Viability kit)(イリノイ州マディソン)の3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム化合物を添加し、細胞を37℃で1〜2時間インキュベートした。96プレート上の光学濃度を490nmにおいてマイクロプレートリーダーで分析し、細胞生存率を測定した。
ウェスタンブロット法。細胞または均質化した腫瘍試料を、冷たい1×PBSによって2回洗浄し、50mMのトリス−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、1%Triton−X、0.5%NaDOC、0.1%SDS、5mMのEDTA、50nmのNaF、1mMのNaVO3、10%グリセリンおよびプロテアーゼ阻害剤(10μg/mlのロイペプチン、10μg/mlのPMSFおよび1μg/mlのアプロチニン)を含む緩衝液に氷上で30分間溶菌した。溶菌液は、10,000rpmで、4℃で30分間遠心分離して不純物を除去した。タンパク質濃度をBio−Rad社製キットを用いて測定した。沸騰させた試料を、既製のSDS10%PAGEゲル(Bio−Rad社)に入れ、タンパク質特異的抗体によるウエスタンブロット分析のために使用した。化学発光ルネッサンス試薬(Renaissance reagent)(NEN Life Science Products社)を用いて免疫ブロットを行った。定量化のために、NIH Scion Imageソフトウェアを用いてタンパク質バンドの濃度測定を行った。
免疫沈降。標準的な手順に従って免疫沈降を行った。簡潔に言うと、同等の量のタンパク質を含む予め不純物が除去された溶菌液を、1μgの一次抗体および30μlのA/Gアガロースビーズと共に4℃で一晩インキュベートした。沈殿物を溶菌緩衝液で3回洗浄し、2×Laemmli緩衝液に再懸濁した。上述したように、沸騰させた試料をウェスタンブロット法のために使用した。
実施例3
脱離アッセイ。細胞を阻害剤を使用する場合と使用しない場合で24時間平板培養し、脱離および付着した細胞を血球計数器で計数した。我々は、脱離した細胞の数を細胞の総数で割って脱離の割合を計算した。脱離した細胞の割合は3回の独立した実験で計算した。
脱離アッセイ。細胞を阻害剤を使用する場合と使用しない場合で24時間平板培養し、脱離および付着した細胞を血球計数器で計数した。我々は、脱離した細胞の数を細胞の総数で割って脱離の割合を計算した。脱離した細胞の割合は3回の独立した実験で計算した。
実施例4
アポトーシスアッセイ。脱離した細胞をアポトーシスアッセイのために回収し、3.7%のホルムアルデヒドの1×PBS溶液で固定した。アポトーシスの検出はヘキスト33342染色を用いて行った。アポトーシス細胞の割合は、蛍光顕微鏡を用いたいくつかの現場での3回の独立した実験で、脱離したアポトーシス細胞を細胞の総数で割った比として計算した。各実験につき、1処置当たり300個の細胞を計数した。
アポトーシスアッセイ。脱離した細胞をアポトーシスアッセイのために回収し、3.7%のホルムアルデヒドの1×PBS溶液で固定した。アポトーシスの検出はヘキスト33342染色を用いて行った。アポトーシス細胞の割合は、蛍光顕微鏡を用いたいくつかの現場での3回の独立した実験で、脱離したアポトーシス細胞を細胞の総数で割った比として計算した。各実験につき、1処置当たり300個の細胞を計数した。
実施例5
生体内でのヌードマウスの腫瘍成長。雌のヌードマウス(6週齢)をHarlan Laboratory社から購入した。このマウスを動物施設内に維持し、全ての実験をNIH動物実験(animal-use)ガイドラインおよびUF動物管理委員会(UF Animal Care Committee)によって認可されたIACUC手順に準拠して行った。1回の注射につき2×106細胞でBT474細胞を皮下注射した。変動を減らすために、HCT116p53−/−およびHCT116p53+/+細胞を同じマウスの左右側に皮下注射した。予備実験では、異なる用量の本化合物をマウスに導入し、30〜50mg/kgを毒性のない最適な用量として選んだ。注射後、3週間にわたって5日/週で毎日30mg/kgの用量でM13化合物を腹腔内注射によって導入した。腫瘍の直径は測径器で測定し、腫瘍の体積(単位:mm3)は、式=(幅)2×長さ/2を用いて計算した。実験終了時に、腫瘍の重量および体積を測定した。
生体内でのヌードマウスの腫瘍成長。雌のヌードマウス(6週齢)をHarlan Laboratory社から購入した。このマウスを動物施設内に維持し、全ての実験をNIH動物実験(animal-use)ガイドラインおよびUF動物管理委員会(UF Animal Care Committee)によって認可されたIACUC手順に準拠して行った。1回の注射につき2×106細胞でBT474細胞を皮下注射した。変動を減らすために、HCT116p53−/−およびHCT116p53+/+細胞を同じマウスの左右側に皮下注射した。予備実験では、異なる用量の本化合物をマウスに導入し、30〜50mg/kgを毒性のない最適な用量として選んだ。注射後、3週間にわたって5日/週で毎日30mg/kgの用量でM13化合物を腹腔内注射によって導入した。腫瘍の直径は測径器で測定し、腫瘍の体積(単位:mm3)は、式=(幅)2×長さ/2を用いて計算した。実験終了時に、腫瘍の重量および体積を測定した。
実施例6
統計分析。有意性を判定するためにスチューデントのt−検定を行った。P<0.05を有するデータ間の差は有意であるとみなされた。
統計分析。有意性を判定するためにスチューデントのt−検定を行った。P<0.05を有するデータ間の差は有意であるとみなされた。
実施例7
FAKおよびMdm−2相互作用のモデルおよびこの相互作用を標的とした小分子阻害剤を生成する。FAK−NTおよびMdm−2高分子相互作用の最も高いスコアを有するモデルを生成した。これは、主としてFAKと相互作用するということが最近報告された(MoL Cell, 29, 2008, 9-22)F3葉からのアミノ酸(254-352 aa)を含んでいた。次いで、DOCK5.1プログラムを用いて、リピンスキーの法則に従うNCI(国立癌研究所)からの140,000種を超える小分子阻害剤をFAKおよびMdm−2相互作用のN末端ドメインのポケットに100通りの異なる方向にドッキングさせ、高いスコアが付けられた24種の化合物をNCIから入手した。
FAKおよびMdm−2相互作用のモデルおよびこの相互作用を標的とした小分子阻害剤を生成する。FAK−NTおよびMdm−2高分子相互作用の最も高いスコアを有するモデルを生成した。これは、主としてFAKと相互作用するということが最近報告された(MoL Cell, 29, 2008, 9-22)F3葉からのアミノ酸(254-352 aa)を含んでいた。次いで、DOCK5.1プログラムを用いて、リピンスキーの法則に従うNCI(国立癌研究所)からの140,000種を超える小分子阻害剤をFAKおよびMdm−2相互作用のN末端ドメインのポケットに100通りの異なる方向にドッキングさせ、高いスコアが付けられた24種の化合物をNCIから入手した。
M13は、試験管内で大部分の癌細胞の生存率を有意に減少させた。我々は、24種の化合物(M阻害剤と呼ぶ)を用いたMTTアッセイを行い、試験した全化合物の中で、M13が乳癌、黒色腫、結腸癌および膵臓癌などの異なる癌細胞において生存率を減少させる最良のものであることを示す。この化合物の名前はモノトリチルチミジン(Monotritylthymidine)であり、これは市販されており、Sigma社から入手した。
M13は、用量依存的にBT474乳癌細胞の生存率を減少させ、BT474癌細胞において脱離およびアポトーシスの用量依存的増加を引き起こした。我々は、BT474を用いたMTTアッセイを行い、M13が細胞において用量依存的な生存率を引き起こしたことを示す。同じことが脱離およびアポトーシスに関しても認められた。我々は、Mcf−7乳癌細胞も試験し、M13の効果はBT474細胞を用いた場合と同じであった。
M13は、BT474細胞において用量依存的なMdm−2の増加、FAKの減少およびカスパーゼ−8の活性化を引き起こした。我々は、異なる用量のM13でBT474細胞を処理し、抗FAK、Y397−FAK、Mdm−2、p53およびカスパーゼ−8抗体を用いてウェスタンブロット法を行った。M13は、生存率の減少および脱離およびアポトーシスの増加に一致する、用量依存的なMdm−2レベルの増加、FAKレベルの減少、およびカスパーゼ−8の活性化を引き起こした。
M13は、BT474細胞においてFAKおよびMdm−2の複合体を阻害する。我々は、FAKを免疫沈降させ、FAKとMdm−2との複合体を見い出し、Lim et al, Molecular Cell, 2008のデータを確認および再現した。10mMの用量のM13においてFAKとMdm−2との複合体のレベルが減少した。従って、M13は、FAKとMdm−2との結合を減少させ、かつ細胞におけるタンパク質レベルにも影響を与えた。
M13は、生体内における***腫瘍形成を減少させた。乳癌BT474細胞をマウスに移植して腫瘍を形成した。30mg/kgのM13は、生体内での***腫瘍形成を効果的に減少させた。
M13は、結腸癌HCT116p53+/+およびp53−/−細胞の両方において同様に用量依存的に生存率を減少させ、脱離およびアポトーシスを増加させた。結腸癌細胞におけるM13の効果およびp53経路に対するその依存性を研究するために、我々は、結腸癌HCT116p53−/−およびp53+/+細胞と共にBT474細胞に対して同様の実験をした。M13は同様に、これらの細胞の両方において用量依存的に生存率を減少させ、脱離およびアポトーシスを増加させた。従って生存率、脱離およびアポトーシスに対するM13の試験管内での効果はp53には依存していなかった。
M13は、生体内においてHCT116p53+/+およびp53−/−の両方における結腸腫瘍形成を同様に減少させた。我々は、M13をHCT116p53−/−およびp53+/+細胞に注射し、HCT116p53−/−およびp53+/+細胞の両方における腫瘍の大きさの減少を見い出した。HCT116p53−/−およびp53+/+細胞の場合、有意差は、腫瘍の大きさにおいて認められなかった。従って、腫瘍形成に対するM13の生体内での効果はp53には依存していなかった。
参考文献:
1. Xu, L.H., et
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apoptosis in tumor cells. Cell Growth Differ, 1996. 7(4): p. 413-8.
2. McLean, G.
W., et al., The role of focal-adhesion kinase in cancer - a new therapeutic
opportunity. Nat Rev Cancer, 2005. 5(7): p. 505-15.
3. van
Nimwegen, M.J. and B. van de Water, Focal adhesion kinase: A potential target
in cancer therapy. Biochem Pharmacol, 2006.
4. Weiner,
T.M., et al., Expression of focal adhesion kinase gene and invasive cancer. Lancet,
1993. 342(8878): p. 1024-5.
5. Owens, L.V.,
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tumors. Cancer Research, 1995. 55(13): p. 2752-5.
6. Golubovskaya,
V.M., R. Finch, and W.G. Cance, Direct interaction of the N-terminal domain of
focal adhesion kinase with the N-terminal transactivation domain ofp53. J Biol
Chem, 2005. 280(26): p. 25008-21.
7. Garces,
C.A., et al., Vascular endothelial growth factor receptor-3 and focal adhesion
kinase bind and suppress apoptosis in breast cancer cells. Cancer Res, 2006.
66(3): p. 1446-54.
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本明細書に引用されている全ての特許、特許出願および刊行物の各開示内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書中の可変部分の任意の定義における化学基の列挙の記載は、列挙した基の任意の単一の基または組み合わせとしてのその可変部分の定義を含む。本明細書中の可変部分に関する一実施形態の記載は、任意の単一の実施形態としてあるいは任意の他の実施形態またはそれらの一部との組み合わせとしてのその実施形態を含む。
特定の実施形態を参照しながら本発明を開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態および変形が他の当業者によって考案され得ることは明らかである。特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態および等価な変形を含むように解釈されることが意図されている。
Claims (19)
- 対象における癌細胞のアポトーシスを誘発する方法であって、それを必要としているものとして特定された対象に、接着斑キナーゼ(FAK)と第2のタンパク質との結合相互作用を阻害することができる化合物を投与することを含む方法。
- 前記第2のタンパク質はMdm−2である、請求項1に記載の方法。
- 前記化合物は、
M2:1−(4−ブロモフェニル)−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン、
M4:1−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−2−(15,3,5,7−テトラアザトリシクロ[3.3.1.1〜3,7〜]デカ−1−イル)エタノン、
M13:1−[4−ヒドロキシ−5−[トリ(フェニル)メトキシメチル]オキソラン−2−イル]−5−メチルピリミジン−2,4−ジオン、
M23:2,6−ピペラジンジオン,(4,4’−(1,{2−エタンジイル)ビス)[1−(4−モルホリニルメチル)−}、
M24:2−(メチルアミノ)−N−(6−(((メチルアミノ)アセチル)アミノ)−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロ−2−アントラセニル)アセトアミド
である、請求項1に記載の方法。 - 前記化合物は、Mdm−2と相互作用する配列ドメインにおいてFAK結合を阻害する、請求項3に記載の方法。
- 前記化合物は、FAK/Mdm−2相互作用を阻害する、請求項1に記載の方法。
- 前記癌は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌または黒色腫である、請求項1に記載の方法。
- そのような治療を必要とするものとして特定された対象においてFAKタンパク質間結合相互作用を阻害する方法であって、前記FAKタンパク質間結合相互作用を阻害することができるものとして特定された化合物を投与することを含む方法。
- 対象における癌を治療する方法であって、それを必要としているものとして特定された対象に、接着斑キナーゼ(FAK)と、FAKと相互作用する第2のタンパク質との結合相互作用を阻害することができる化合物を投与することを含む方法。
- 前記第2のタンパク質とFAKとの前記結合相互作用によって癌細胞のアポトーシスまたは細胞増殖が調節される、請求項8に記載の方法。
- 前記癌は、乳癌、結腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌または黒色腫である、請求項8に記載の方法。
- さらなる治療薬をさらに含む、請求項8に記載の方法。
- 前記さらなる治療薬は、ドキソルビシン、シスプラチン、タキソール、5‐フルオロウラシルまたはエトポシドである、請求項11に記載の方法。
- FAK結合またはFAKタンパク質間相互作用結合の相互作用を調節する化合物を特定する方法であって、FAK、FAK結合パートナーまたはそれらのドメインの結晶構造を得ること、またはFAK、FAK結合パートナーまたはそれらのドメインの前記結晶構造に関する情報を得ること、および前記化合物がFAK、FAK結合パートナーまたはそれらのドメインの相互作用を調節するか否かを判定するために、試験化合物を前記結晶構造の前記FAK、FAK結合パートナーまたはそれらのドメインの結合部位の中または上にモデル化することを含む方法。
- FAKまたはFAKタンパク質間結合パートナーのドメインの構造座標によって定義された結合ポケットを含む分子または分子複合体の3次元表示、または、b)前記アミノ酸の骨格原子からの根平均二乗偏差が約2.0オングストローム以下である結合ポケットを含む前記分子または分子複合体の相同体の3次元表示を生成するためのコンピュータであって、(i)機械読み取り可能なデータと共に符号化されたデータ記憶材料を含む機械読み取り可能なデータ記憶媒体であって、前記データがFAKまたはFAKタンパク質間結合パートナーのドメインの構造座標を含む記憶媒体と、(ii)前記機械読み取り可能なデータを処理するための命令を記憶するワーキングメモリと、(iii)前記機械読み取り可能なデータを前記3次元表示に処理するために、前記ワーキングメモリおよび前記機械読み取り可能なデータ記憶媒体に接続された中央処理装置と、(iv)前記3次元表示を表示するために前記中央処理装置に接続された表示装置とを備えるコンピュータ。
- FAKまたはFAKタンパク質間結合パートナーのドメインの構造座標によって定義された前記結合ポケットは、前記FAKドメインの構造座標によって定義されている、請求項14に記載のコンピュータ。
- FAKまたはFAKタンパク質間結合パートナーのドメインの構造座標によって定義された前記結合ポケットは、FAKのドメインの構造座標に基づいた表示である、請求項15に記載のコンピュータ。
- FAK結合またはFAKタンパク質間相互作用結合の相互作用を調節する化合物を特定する方法であって、FAKの3次元構造座標内に結合ポケットの空間方向を有する結合ポケットの3次元表示を作成すること、および前記化合物がFAK、FAK結合パートナーまたはそれらのドメインの相互作用を調節するか否かを判定すために、試験化合物を結合ポケットの前記3次元表示の中または上にモデル化することを含む方法。
- 前記モデル化することは、試験化合物の3次元表示を作成し、かつ前記試験化合物と結合ポケットとの結合相互作用を評価することを含む、請求項17に記載の方法。
- 前記結合ポケットは、化合物M13と相互作用する前記FAKドメインアミノ酸の1つまたは複数を含む、請求項18に記載の方法。
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