JP2012250875A - 炭素薄膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高品質なグラフェンを、低コストで大面積に形成できるようにする。
【解決手段】金属層103の上に有機化合物からなる有機薄膜104を形成する。この工程において、本実施の形態では、有機薄膜104の膜厚を制御することで、後述する金属層103の表面に成長する炭素薄膜104におけるグラフェンの層数を制御するところに特徴がある。次に、不活性な雰囲気で金属層103を加熱して有機化合物を構成する炭素を金属層103に固溶させ、酸化シリコン膜102の上に炭素が固溶した金属層が形成された状態とする。次に、不活性な雰囲気で金属層を冷却して金属層に固溶していた炭素を金属層の表面に析出させることで、金属層103の表面にグラフェンからなる炭素薄膜104を成長させる。
【選択図】 図1D
【解決手段】金属層103の上に有機化合物からなる有機薄膜104を形成する。この工程において、本実施の形態では、有機薄膜104の膜厚を制御することで、後述する金属層103の表面に成長する炭素薄膜104におけるグラフェンの層数を制御するところに特徴がある。次に、不活性な雰囲気で金属層103を加熱して有機化合物を構成する炭素を金属層103に固溶させ、酸化シリコン膜102の上に炭素が固溶した金属層が形成された状態とする。次に、不活性な雰囲気で金属層を冷却して金属層に固溶していた炭素を金属層の表面に析出させることで、金属層103の表面にグラフェンからなる炭素薄膜104を成長させる。
【選択図】 図1D
Description
本発明は、遷移金属層の上にグラフェンおよび複数層のグラフェンからなるグラファイト薄膜などを形成する炭素薄膜の形成方法に関するものである。
近年、炭素原子から構成される1原子層の平面シートであるグラフェンが、将来のエレクトロニクス材料として注目を集めている。グラフェンは、グラファイトの1原子層を取り出したものである。グラフェンは、大きなキャリア移動度を有しており、また化学的にも安定である。このため、グラフェンは、配線材料や電界効果トランジスタなどの電子素子、透明電極材料などとしての応用が期待されている。
上述した特徴を有するグラフェンは、現在、主に以下の3つの方法で形成されている。第1の方法は、剥離法である。これは、グラファイトを粘着性のテープで何度も剥離して薄くした後、基板上に転写する方法である(非特許文献1参照)。この場合、顕微鏡などにより適当なグラフェン片を見つけてデバイスを形成する。この方法では、最も良好なキャリア移動度を有するグラフェン片が得られるが、現在のところ大面積化できる見通しは全くない。
第2の方法は、SiCを熱分解する方法である(非特許文献2参照)。SiC基板を高温で加熱することにより、表面のSiを昇華させ、基板表面にグラフェン薄膜を形成する。この方法の産業応用上の主な短所は、大面積のSiC基板が製造されておらず、またSiC基板は単位面積あたりの価格も比較的高価であることから、コストが高くなることである。また、第2の方法では、1000℃を超える非常に高い温度に加熱できる高温炉が必要であることも、コストの上昇を招いている。
第3の方法は、熱化学気相成長(CVD)法である(非特許文献3参照)。遷移金属の基板を不活性ガス雰囲気中で加熱し、炭素を含む原料ガスを供給することにより基板表面にグラフェン薄膜を形成する。この方法は、3つの方法の中では比較的低コストで大面積のグラフェンを形成できる方法として期待されている。しかしながら、原料ガスにメタンなどの可燃性を有するガスを用いることになり、取り扱いが容易ではなく、この点でコストがかかるものとなる。またCVD法では、分解した原料ガス中の炭素が既に形成されたグラファイト膜表面に付着することによる膜形成効果もあるが、遷移金属との相互作用を受けないこの付着による膜形成は結晶性を低下させる。
また、広く一般に用いられているとはいえないが、MgO単結晶上に成膜したCo薄膜に、スピンコートにより厚さ300〜1000nmのポリスチレン膜を形成し、これを加熱することによりグラフェンを形成できることが報告されている(非特許文献4参照)。ただしこの場合、グラフェンはCo上ではなく、加熱時に自発的に形成される単結晶性のCo薄膜の穴の中、つまりMgOの上に形成されるとされている。この方法ではCo上にグラフェンが形成されるわけではない。また、Coの穴は離散的に形成されるので、グラフェンも離散的に形成されるものとなり、均一な大面積のグラフェンが形成できない。また、基板に高価な単結晶を用いる必要があるためコストがかかる。
さらにごく最近、Cu基板上に、スピンコートにより厚さ100nm程度のPMMAからなるポリマー膜を形成し、これをAr/H2中で加熱することによりグラフェンが形成できることが報告された(非特許文献5参照)。この方法では、加熱中のH2の流量によってグラフェンよりなる膜の膜厚を制御している。これはH2ガスが高温で炭素を含む物質に対してエッチング作用があることを利用している。このように、この方法では、可燃性の水素ガスを用いており、取り扱いが容易ではなく、コストの上昇を招くことになる。
A.K.GEIM and K.S.NOVOSELOV, "The rise of graphene", Nature Materials, vol.6, pp.183-191, 2007.
H.Hibino, H.Kageshima and M.Nagase, "Epitaxial few-layer graphene: towards single crystal growth",JOURNAL OF PHYSICS D: APPLIED PHYSICS, vol.43, 374005, 2010.
H.J. Park et al. , "Growth and properties of few-layer graphene prepared by chemical vapor deposition",CARBON, vol.48, pp.1088-1094, 2010.
H.Ago et al. , "Patterned Growth of Graphene over Epitaxial Catalyst", Small, vol.6, No.11, pp.1226-1233, 2010.
Z.Sun et al. , "Growth of graphene from solid carbon sources",NATURE, vol.468, 2010.
上述したように、これまでのグラフェンの形成法では、大面積のグラフェンを低コストで合成することができないという問題があった。例えば、比較的低コストのCVD法においても、可燃性ガスを用いる必要があり、高品質のグラファイト膜を得ることが容易ではない。また、スピンコートして形成したポリマー膜からグラフェンを形成する方法でも、金属基板の上に大きな面積でグラフェンを形成できず、あるいは、取り扱いが容易ではないH2を用いる必要がありコストの上昇を招いている。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、高品質なグラフェンを、低コストで大面積に形成できるようにすることを目的とする。
本発明に係る炭素薄膜の形成方法は、炭素を固溶する遷移金属からなる金属層の上に有機化合物からなる有機薄膜を形成する第1工程と、不活性な雰囲気で金属層を加熱して有機化合物を構成する炭素を金属層に固溶させる第2工程と、不活性な雰囲気で金属層を冷却して金属層に固溶していた炭素を金属層の表面に析出させて金属層の表面にグラフェンからなる炭素薄膜を成長させる第3工程とを少なくとも備え、有機薄膜の膜厚を制御することで金属層の表面に成長する炭素薄膜におけるグラフェンの層数を制御する。
上記炭素薄膜の形成方法において、有機化合物は高分子化合物であり、第1工程では、有機化合物を塗布することで有機薄膜を形成すればよい。例えば、有機化合物はポリスチレンであり、遷移金属はニッケルであればよい。この場合、金属層は、層厚280〜320nmの範囲とし、有機薄膜は、膜厚0.1〜5nmの範囲とし、第2工程では、加熱の温度を850〜1000℃の範囲とすればよい。
以上説明したことにより、本発明によれば、高品質なグラフェンを、低コストで大面積に形成できるようになるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1A〜図1Dは、本発明の実施の形態における炭素薄膜の形成方法を説明するための、各工程における状態を模式的に示す断面図である。
まず、図1Aに示すように、炭素を固溶する遷移金属からなる金属層103を用意する。例えば、単結晶シリコンからなる基板101の上に酸化シリコン膜102を形成し、酸化シリコン膜102の上に蒸着法およびスパッタリング法などにより遷移金属を堆積することで、金属層103を形成すればよい。
次に、図1Bに示すように、金属層103の上に有機化合物からなる有機薄膜104を形成する(第1工程)。この工程において、本実施の形態では、有機薄膜104の膜厚を制御することで、後述する金属層103の表面に成長する炭素薄膜104におけるグラフェンの層数を制御するところに特徴がある。
次に、不活性な雰囲気で金属層103を加熱して有機化合物を構成する炭素を金属層103に固溶させ、図1Cに示すように、酸化シリコン膜102の上に炭素が固溶した金属層131が形成された状態とする(第2工程)。
次に、不活性な雰囲気で金属層131を冷却して金属層131に固溶していた炭素を金属層131の表面に析出させることで、図1Dに示すように、金属層103の表面にグラフェンからなる炭素薄膜104を成長させる(第3工程)。
より詳細に説明すると、まず、基板101の上に形成する酸化シリコン膜102は、基板101のシリコンと金属層103の遷移金属との高温時の反応を防ぐために形成する。従って、酸化シリコン膜102は、膜厚100nm程度あればよい。例えば、スパッタリング法により酸化シリコンを堆積することで、膜厚300nmの酸化シリコン膜102を形成すればよい。
また、炭素を固溶する遷移金属としては、例えば、ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe)などがある。ただし、遷移金属の選択では、金属層103を形成する下層の材料との反応に注意することが重要である。金属層103は、例えば、ニッケルの多結晶層であればよい。
次に、有機薄膜104の形成では、有機化合物を溶媒に溶解または分散した塗布液を作製し、この塗布液をよく知られたスピンコート法,バーコート法などの塗布法により金属層103の上に塗布することで行えばよい。例えば、スピンコート法により有機薄膜104を形成する場合、有機化合物を溶解する溶媒に溶解した塗布溶液を作製する。次に、作製した塗布溶液を基板101の金属層103の上に滴下し、この後、基板101を所定の回転数で回転させることで滴下した塗布溶液を延伸させて有機薄膜104を形成する。このスピンコート法によれば、分子量が大きく蒸着が困難な有機化合物(高分子化合物)の薄膜も容易に形成することができる。
ここで、所望とする膜厚が得られるように、塗布溶液における有機化合物の濃度、および回転数などのスピンコート条件を適宜に制御する。有機薄膜104の膜厚は、有機化合物の分解温度、金属層103の層厚を考慮し、冷却の過程において、金属層103に過飽和状態となった炭素が金属層103の表面に析出する条件となるように決定すればよい。例えば、1〜5層程度のグラフェンが積層された状態とするためには、有機薄膜104の膜厚は、nmオーダーとすることが重要となる。一般には、スピンコート法で形成した有機薄膜の膜厚は、100nmのオーダーである。これに対し、本実施の形態では、100分の1程度の厚さになるように、用いる塗布溶液の濃度を調製することで適切な制御を実現している。
有機化合物としては、例えば、ポリスチレンを用いればよい。ポリスチレンを用いる場合、トルエンに溶解させた塗布溶液を作製し、上述したように金属層103の上に塗布すれば、有機薄膜104が形成できる。作製する塗布溶液は、ポリスチレンの濃度を0.1mg/mlとすればよい。また、スピンコート法における条件としては、毎分4000回転で60秒間回転を維持するものとすればよい。上述した塗布液の濃度条件およびスピンコート条件によれば、金属層103の上に、膜厚2nm程度の有機薄膜104が形成できる。
次に、不活性な雰囲気における加熱について説明する。例えば、上述したようにポリスチレンからなる有機薄膜104を形成した後、基板101を所定の電気炉の炉内に搬入する。次いで、炉内に100sccmでアルゴンガスを導入し、炉内をアルゴンガスの雰囲気とした後、炉内を66661Pa(500Torr)程度の圧力に保持する。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1013hPaの流体が1分間に1cm3流れることを示す。
以上のように、炉内を不活性な雰囲気としたら、炉内の温度(基板温度)を1分間に60℃の条件で昇温させて950℃にし、この後950℃の状態を10分間保持する。この加熱処理により、有機薄膜104を構成しているポリスチレン中の炭素が、ニッケルよりなる金属層103に溶解する。ポリスチレンからなる有機薄膜104の膜厚が適切であれば、上述した加熱処理条件で、950℃の保持時間が10分程度になると、金属層103の上に形成されていた有機薄膜104が全て分解し、揮発あるいは金属層103中に溶け込み、ポリスチレンやこれから生成したアモルファス炭素は表面に残存しない。
このとき、金属層103の中において、溶解している炭素は層厚方向に濃度分布を持つと考えられる。例えば、ポリスチレンからなる有機薄膜104が全て消滅した直後には、金属層103の表面近傍では、金属層103の内部よりも炭素濃度が高い。また、時間の結果とともに、上述した炭素濃度の分布は変化し、炭素は層厚方向に拡散していく。
以上の加熱処理により炭素が固溶した金属層131が形成された後、950℃に加熱されている状態より、1分間に20℃の条件で炉内の温度を室温(20〜25℃程度)まで低下させる。温度の低下とともに、金属層131(金属層103)の表面近傍で溶けきれなくなった炭素が、グラフェンとして金属層103の表面上に析出する。このとき形成されるグラファイト薄膜(炭素薄膜)の厚さ(グラフェンの層数)は、金属層131の表面近傍に溶けていた炭素の量に依存するが、形成される炭素薄膜は、表面から金属層103との界面まで全て結晶化した状態であり、アモルファス炭素層は残存しない。
上で述べた条件以外にもグラフェン、あるいはグラファイト薄膜が得られる条件は存在すると考えられるが、加熱処理の中で、ポリスチレンの層が全て消失し、かつ表面近傍での金属層中の炭素濃度が適切な値になるように調節することが重要となる。例えば、ニッケルからなる金属層103は、層厚280〜320nmの範囲とし、ポリスチレンからなる有機薄膜104は、膜厚0.1〜5nmの範囲とすればよい。また、加熱の温度は、850〜1000℃の範囲とすればよい。
なお、上述した実施の形態では、加熱中にArを100sccm流しているが、66661PaのAr雰囲気中で電気炉を封じ(Arの供給は停止)、この状態で加熱を行っても同様なグラフェンを得ることができている。またArを用いず、加熱を真空中(減圧雰囲気)で行っても同様な結果が得られる。真空状態とすることで、不活性な雰囲気が得られる。
図2は、上述した本実施の形態により形成したグラフェンの光学顕微鏡像(a)、および熱CVD法により形成されたグラフェンの光学顕微鏡像(b)である。図2の(a)および図2の(b)に示すように、本実施の形態によれば、熱CVD法と同様なグラフェンが形成されていることがわかる。
図3は、本実施の形態により形成した炭素薄膜のラマンスペクトルの結果を示す特性図である。励起光波長は、532nmを用いた。また、比較のためにメタンを原料として用いた熱CVD法でニッケル薄膜上に形成したグラファイト薄膜、およびスパッタリングで堆積したアモルファス炭素のラマンスペクトルを併せて示した。図3の(a)が、本実施の形態により形成した炭素薄膜のラマンスペクトルを示し、図3の(b)が、メタンを原料として用いた熱CVD法でニッケル薄膜上に形成したグラファイト薄膜のラマンスペクトルを示し、図3の(c)が、スパッタリングで堆積したアモルファス炭素のラマンスペクトルを示している。
本実施の形態により形成した炭素薄膜には、図3の(a)に示すように、アモルファス炭素層の残存の形跡は見られず、得られた炭素薄膜は、この表面から下層の金属層(ニッケル層)の界面まで、全て積層したグラフェンから構成されていることがわかる。一般にGバンドとDバンドの比がグラファイト薄膜の結晶性を表す指標として用いられており、G/D比が大きいほど結晶性が高い。
図2の(b)に示す写真の状態に形成されたCVD法で合成したグラファイト薄膜のG/D比は約22であるが、これに対し、本実施の形態により形成した炭素薄膜のG/D比は約60あるいはそれ以上である。この値は、一般的なCVD法で得られるグラファイト薄膜の値よりも大きい。CVD法でも一旦金属に溶け込んだ炭素原子がグラフェンとして金属から析出する効果があると考えられるが、これ以外にも、原料ガス分子が分解して基板を経ずに直接炭素が表面に堆積する効果もあると考えられる。後者の効果は、特に厚いグラファイト膜の形成時に重要となる。しかし、金属基板から析出するグラフェンは、一般に基板との相互作用により原子配列が非常に規則的に揃いやすいのに対して、直接炭素がグラファイト表面に付着する効果による膜形成では欠陥が生じやすく、生成したグラファイト膜の品質を低下させる。本発明による炭素薄膜は、金属からの析出のみによって形成されるため、CVD法に比べて結晶性が高い。
図4は、本実施の形態により形成した炭素薄膜を原子間力顕微鏡で観察した結果を示す写真(a)、および断面状態を示すグラフ(b)である。図4の(a)の写真中の黒線部分の凹凸が、図4の(b)のグラフに示されている。ここで、炭素薄膜を形成した後の金属層の表面には、高温処理の多結晶化による数十nmの凹凸が形成されてしまうため、原子間力顕微鏡を用いても、金属層の上に形成された炭素薄膜の厚さを知ることができない。
このため、酸により金属層を溶解することで、炭素薄膜を剥離させ、この剥離した炭素薄膜を平坦なシリコン基板の上に担持させ、この状態を原子間力顕微鏡により観察(測定)した。この測定結果が、図4に示すものとなる。剥離、担持の際に形成された炭素薄膜の破断部分を利用して膜厚測定を行った結果、約0.7nmの厚さであった。この値は、単原子層であるグラフェンで観測される値と一致しており、単原子層状態のグラフェンが形成されていることを示している。
以上に説明したように、本発明は、遷移金属からなる金属層の上に、平均厚さ0.1から5nm程度の極薄の有機薄膜を形成し、不活性な雰囲気の中で加熱することにより、有機物中の炭素を金属層中に一度溶解させ、温度を下げる過程で金属層の表面上に炭素をグラフェンもしくは数層のグラフェンが積層したグラファイト薄膜(炭素薄膜)として析出させるものである。
CVD法では、原料ガスを高温金属基板上で熱分解することにより炭素を供給するが、本発明では、炭素を有機薄膜の形で予め金属層上に形成しておく点が異なる。また非特許文献5の技術が、H2ガスを供給することでグラフェンの膜厚を制御しているのに対し、本発明では、金属層に形成する有機薄膜の膜厚の制御により、形成されるグラフェンの層数制御を行っていることが特徴である。
上述した本発明によれば、大面積で高品質のグラフェンをこれまでよりも低コストで形成することができる。また、取り扱いが容易ではない可燃性ガスなどを使用することなく、簡便にグラフェンを形成することができる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、遷移金属は、Ni,Co,Feに限るものではなく、炭素が固溶すればよく、モリブデン(Mo)などの他の遷移金属であってもよい。また、遷移金属からなる金属板などの金属構造体の表面に、有機薄膜を塗布することで、グラフェンを形成するようにしてもよい。
また、例えば、有機薄膜の形成は、塗布法に限るものではない。蒸着が可能な有機物を用い、蒸着法により有機薄膜を形成してもよい。また、有機化合物としては、炭化水素系高分子のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレンや、酸素を含む高分子ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸や、アクリル樹脂のポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレートや導電性高分子のポリアセチレン、ポリアセン、ポリp−フェニレンエチニレンや、炭素および水素以外の元素を含むポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンが例示される。また、これらの高分子化合物の共重合体や混合物も使用できる。
101…基板、102…酸化シリコン膜、103…金属層、104…有機薄膜、131…金属層。
Claims (4)
- 炭素を固溶する遷移金属からなる金属層の上に有機化合物からなる有機薄膜を形成する第1工程と、
不活性な雰囲気で前記金属層を加熱して前記有機化合物を構成する炭素を前記金属層に固溶させる第2工程と、
不活性な雰囲気で前記金属層を冷却して前記金属層に固溶していた炭素を前記金属層の表面に析出させて前記金属層の表面にグラフェンからなる炭素薄膜を成長させる第3工程と
を少なくとも備え、
前記有機薄膜の膜厚を制御することで前記金属層の表面に成長する前記炭素薄膜におけるグラフェンの層数を制御することを特徴とする炭素薄膜の形成方法。 - 請求項1記載の炭素薄膜の形成方法において、
前記有機化合物は高分子化合物であり、前記第1工程では、前記有機化合物を塗布することで前記有機薄膜を形成することを特徴とする炭素薄膜の形成方法。 - 請求項1または2記載の炭素薄膜の形成方法において、
前記有機化合物はポリスチレンであり、前記遷移金属はニッケルであることを特徴とする炭素薄膜の形成方法。 - 請求項3記載の炭素薄膜の形成方法において、
前記金属層は、層厚280〜320nmの範囲とし、前記有機薄膜は、膜厚0.1〜5nmの範囲とし、前記第2工程では、前記加熱の温度を850〜1000℃の範囲とすることを特徴とする炭素薄膜の形成方法。
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