JP2012246535A - 金属膜を有する積層体およびその製造方法、並びに、パターン状金属膜を有する積層体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、基板に対する密着性に優れる金属膜を有する積層体の製造方法、および、該製造方法より得られる積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上に被めっき層を形成する被めっき層形成工程と、被めっき層に無電解めっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、無電解めっき処理を行い、被めっき層上に金属膜を形成する無電解めっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法であって、無電解めっき液の銅電極を用いて測定した混成電位と、無電解めっき触媒が付与された被めっき層の表面電位との差が0.1V以下であり、被めっき層の表面粗さが200nm未満である、金属膜を有する積層体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属膜を有する積層体およびその製造方法、並びに、パターン状金属膜を有する積層体およびその製造方法に関する。
従来から、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属パターン(金属膜)との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンを金属配線として使用する際、金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理する必要があるため、基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
この問題を解決する手段として、基板上に基板と高密着性を有するポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(特許文献1)。該方法によれば、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良することができる。
特開2010−248464号公報
近年、電子機器の小型化、高機能化の要求に対応するため、プリント配線板などの微細配線のより一層の高集積化が進んでいる。それに伴って、配線(金属パターン)の基板に対する密着性のより一層の向上が要求されている。
本発明者らは特許文献1に開示されている発明を参照して金属膜を有する積層体について検討を行ったところ、得られためっき膜(金属膜)の密着性は、必ずしも昨今要求されるレベルには達していないことが明らかになった。特に、昨今要求されるようなより過酷な高温高湿条件に曝された後の金属膜の密着性が劣っていた。
本発明は、上記実情に鑑みて、基板に対する密着性に優れる金属膜を有する積層体の製造方法、および、該製造方法より得られる積層体を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板との密着性に優れたパターン状金属膜を有する積層体の製造方法、および、該製造方法より得られる積層体を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、無電解めっき液の混成電位と、無電解めっき触媒を有する被めっき層の表面電位を制御すると共に、被めっき層の表面粗さRaを調整することにより、上記課題を解決できることを見出した。つまり、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
(1) 基板上に、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基および重合性基を有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物を塗布した後、前記基板上の被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、前記基板上に被めっき層を形成する被めっき層形成工程と、
前記被めっき層に無電解めっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、
前記無電解めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層と無電解めっき液とを接触させ無電解めっき処理を行い、前記被めっき層上に金属膜を形成する無電解めっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法であって、
前記無電解めっき液の銅電極を用いて測定した混成電位と、無電解めっき触媒が付与された被めっき層の表面電位との差が0.1V以下であり、
前記被めっき層の表面粗さRaが200nm未満である、金属膜を有する積層体の製造方法。
(2) 前記無電解めっき触媒またはその前駆体が、平均粒径10nm以下の金属粒子を含む、(1)に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。
(3) 前記被めっき層形成用組成物がスルホン酸基またはその塩を有する重合性モノマーをさらに含む、(1)または(2)に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法より得られる、金属膜を有する積層体。
(5) (4)に記載の積層体中の金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状金属膜を形成する工程を備える、パターン状金属膜を有する積層体の製造方法。
(6) (5)に記載の製造方法より得られる、パターン状金属膜を有する積層体。
(7) (6)に記載のパターン状金属膜を有する積層体と、前記パターン状金属膜を有する積層体上に設けられる絶縁層とを備える配線基板。
本発明によれば、基板に対する密着性に優れる金属膜を有する積層体の製造方法、および、該製造方法より得られる積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、基板との密着性に優れたパターン状金属膜を有する積層体の製造方法、および、該製造方法より得られる積層体を提供することもできる。
(A)〜(D)は、それぞれ本発明の積層体およびパターン状金属膜を有する積層体の製造方法における各製造工程を順に示す基板から積層体までの模式的断面図である。 (A)〜(D)は、本発明の積層体のエッチング工程の一態様を順に示す模式的断面図である。 (A)〜(E)は、本発明の積層体のエッチング工程の他の態様を順に示す模式的断面図である。
以下に、本発明の金属膜を有する積層体の製造方法について説明する。
まず、本発明の従来技術と比較した特徴点について詳述する。
本発明の特徴点としては、無電解めっき液の混成電位と、無電解めっき触媒を有する被めっき層の表面電位を制御すると共に、被めっき層の表面粗さRaを調整する点が挙げられる。無電解めっき液の混成電位と無電解めっき触媒を有する被めっき層の表面電位との差を所定範囲内に制御することにより、被めっき層上への金属膜の析出性がより高まり、無電解めっき液と被めっき層との接触時間が短くなる。結果として、被めっき層が無電解めっき液から受けるダメージ(例えば、加水分解)が軽減され、その上に形成される金属膜の密着性が高まる。また、被めっき層の表面粗さRaを所定範囲以下にすることにより、表面凹凸による面内のめっきムラが減少し、フクレ防止効果が高まる。
本発明の金属膜を有する積層体の製造方法は、被めっき層形成工程、触媒付与工程、無電解めっき工程の3つの工程を備える。
以下に、各工程で使用される材料、および、各工程の手順について詳述する。
[被めっき層形成工程]
被めっき層形成工程は、基板上に、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基(以後、適宜相互作用性基とも称する)および重合性基を有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物を塗布した後、基板上の被めっき層形成用組成物にエネルギーを付与して、基板上に被めっき層を形成する工程である。
該工程によって形成される被めっき層は、ポリマー中に含まれる相互作用性基の機能に応じて、後述する触媒付与工程で無電解めっき触媒またはその前駆体を吸着(付着)する。つまり、被めっき層は、無電解めっき触媒またはその前駆体の良好な受容層として機能する。また、重合性基は、ポリマー同士の結合や、基板との化学結合に利用される。その結果、被めっき層の表面に形成される金属膜(めっき膜)と、基板との間に優れた密着性が発現する。
より具体的には、該工程において、図1(A)に示されるように基板10を用意し、図1(B)に示すように基板10の上部に被めっき層12が形成される。
まず、本工程で使用される材料(基板、被めっき層形成用組成物など)について詳述し、その後該工程の手順について詳述する。
(基板)
本発明に用いる基板としては、従来知られているいずれの基板(例えば、絶縁性基板。より具体的には、樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板)も使用することができ、後述する処理条件に耐えることのできるものが好ましい。また、その表面が、後述するポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体がエネルギー付与(例えば、露光)によりポリマーと化学結合を形成しうるものであるか、または、基板上に、エネルギー付与により被めっき層と化学結合を形成しうる中間層が設けられていてもよい。
基板を構成する材料は特に制限されないが、例えば、樹脂、金属材料(例えば、金属合金、金属含有材料、純粋金属、またはこれらに類似したもの)、その他の材料(例えば、紙、プラスチックがラミネートされた紙)、これらの組み合わせが挙げられる。
樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを使用することができ、従来公知の汎用プラスチックまたはエンジニアリングプラスチックを使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリ乳酸、シクロオレフィンコポリマー(COP)、液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。
金属材料の具体例としては、アルミニウム、亜鉛、銅等の混合物、合金、及びこれらのアロイ等から適宜選択される。
また、本発明の積層体は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、使用される基板は、絶縁性樹脂からなる基板(絶縁性基板)、または、絶縁性樹脂からなる層(絶縁性樹脂層)を表面に有する基板(絶縁層付き基板)を用いることが好ましい。
なお、絶縁性樹脂としては、公知の材料を使用することができる。例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でも、またはそれらの混合物でもよい。それぞれの樹脂の例示は上述の通りである。
また、基板は、その内部、または、片面若しくは両面に金属配線を有していてもよい。金属配線は、基板の表面に対してパターン状に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。代表的には、エッチング処理を利用したサブストラクティブ法で形成されたものや、電解めっきを利用したセミアディティブ法で形成したものが挙げられ、いずれの工法で形成されたものを用いてもよい。
金属配線を構成する材料としては、例えば、銅、銀、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロム、タングステン、インジウム、亜鉛、またはガリウムなどが挙げられる。
さらに、基板としては、その表面に金属配線層と絶縁層とこの順で有する絶縁性基板(内層基板)を用いてもよい。また、その場合、金属配線層と絶縁層とはそれぞれが交互に2層以上積層していてもよい。
(ポリマー)
本工程で使用されるポリマーは、重合性基と、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基とを有する。
重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、または、ポリマーと基板との間に化学結合を形成しうる官能基であり、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基(アクリロイルオキシ基)、メタクリル酸エステル基(メタクリロイルオキシ基)、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられる。なかでも、メタクリル酸エステル基、アクリル酸エステル基、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましく、メタクリル酸エステル基、アクリル酸エステル基、スチリル基が特に好ましい。
相互作用性基は、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基であり、無電解めっき触媒またはその前駆体と静電相互作用を形成可能な官能基、あるいは、無電解めっき触媒またはその前駆体と配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などを使用することができる。
相互作用性基としては、例えば、非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)なども挙げられる。
相互作用性基としてより具体的には、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフォート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
なかでも、極性が高く、無電解めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、およびボロン酸基などのイオン性極性基や、エーテル基、またはシアノ基が特に好ましく、カルボキシル基またはシアノ基がさらに好ましい。
相互作用性基としてのこれら官能基は、ポリマー中に2種以上が含まれていてもよい。
ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度は特に制限されないが、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
(ポリマーの好適態様1)
ポリマーの第1の好ましい態様として、下記式(a)で表される重合性基を有するユニット(以下、適宜重合性基ユニットとも称する)、及び、下記式(b)で表される相互作用性基を有するユニット(以下、適宜相互作用性基ユニットとも称する)を含む共重合体が挙げられる。なお、ユニットとは繰り返し単位を意味する。
上記式(a)および式(b)中、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1〜R5が、置換または無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基が挙げられる。また、置換アルキル基としては、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、またはフッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、R1としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
2としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
3としては、水素原子が好ましい。
4としては、水素原子が好ましい。
5としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
上記式(a)および式(b)中、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の二価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−SO2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
置換または無置換の二価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基、または、これらの基が、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換または無置換の二価の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたフェニレン基が好ましい。
X、Y、およびZとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられ、より好ましくは単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)である。
上記式(a)および式(b)中、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義としては、上述したX、Y、およびZで述べた二価の有機基と同義である。
1としては、脂肪族炭化水素基、または、ウレタン結合またはウレア結合を有する二価の有機基(例えば、脂肪族炭化水素基)が好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
また、L2は、単結合、または、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L2は、単結合、または、総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、およびこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
上記式(b)中、Wは、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を表す。該官能基の定義は、上述の相互作用性基の定義と同じである。
上記式(a)で表される重合性基ユニットの好適態様としては、下記式(c)で表されるユニットが挙げられる。
式(c)中、R1、R2、ZおよびL1は、式(a)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Aは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
式(c)で表されるユニットの好適態様として、式(d)で表されるユニットが挙げられる。
式(d)中、R1、R2、およびL1は、式(a)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。AおよびTは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
上記式(c)および式(d)において、L1は、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
また、式(b)で表される相互作用性基ユニットの好適態様としては、下記式(e)または式(f)で表されるユニットが挙げられる。
上記式(e)中、R5およびL2は、式(b)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Qは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
また、式(e)におけるL2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、または、これらを組み合わせた基であることが好ましい。
式(f)中、WおよびR5は、式(b)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。
上記重合性基ユニットは、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜50モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40モル%である。5モル%未満では反応性(硬化性、重合性)が落ちる場合があり、50モル%超では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、上記相互作用性基ユニットは、無電解めっき触媒またはその前駆体に対する吸着性の観点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜95モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜95モル%である。
(ポリマーの好適態様2)
ポリマーの第2の好ましい態様としては、下記式(A)、式(B)、および式(C)で表されるユニットを含む共重合体が挙げられる。
式(A)で表されるユニットは上記式(a)で表されるユニットと同じであり、各基の説明も同じである。
式(B)で表されるユニット中のR5、XおよびL2は、上記式(b)で表されるユニット中のR5、XおよびL2と同じであり、各基の説明も同じである。
式(B)中のWaは、後述するVで表される親水性基またはその前駆体基を除く無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基を表す。
式(C)中、R6は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基の定義は、上述したR1〜R5で表されるアルキル基と同義である。
式(C)中、Uは、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したX、YおよびZで表される二価の有機基と同義である。Uとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基が好ましい。
式(C)中、L3は、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したL1およびL2で表される二価の有機基と同義である。L3としては、単結合、または、アルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
式(C)中、Vは親水性基またはその前駆体基を表す。親水性基とは親水性を示す基であれば特に限定されず、例えば、水酸基、カルボン酸基などが挙げられる。また、親水性基の前駆体基とは、所定の処理(例えば、酸またはアルカリにより処理)により親水性基を生じる基を意味し、例えば、THP(2−テトラヒドロピラニル基)で保護したカルボキシ基などが挙げられる。
親水性基としては、被めっき層が各種水性処理液や無電解めっき液と濡れ易くなり、イオン性極性基であることが好ましい。イオン性極性基としては、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましい。
上記ポリマーの第2の好ましい態様における各ユニットの好ましい含有量は、以下の通りである。
式(A)で表されるユニットは、反応性(硬化性、重合性)および合成の際のゲル化の抑制の点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜50モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜30モル%である。
式(B)で表されるユニットは、無電解めっき触媒またはその前駆体に対する吸着性の観点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜75モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜70モル%である。
式(C)で表されるユニットは、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、ポリマー中の全ユニットに対して、10〜70モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20〜60モル%であり、特に好ましくは30〜50モル%である。
上記ポリマーの具体例としては、例えば、特開2009−007540号公報の段落[0106]〜[0112]に記載のポリマー、特開2006−135271号公報の段落[0065]〜[0070]に記載のポリマー、US2010−080964号の段落[0030]〜[0108]に記載のポリマーなどが挙げられる。
該ポリマーは、公知の方法(例えば、上記で列挙された文献中の方法)により製造することができる。
被めっき層形成用組成物には上記ポリマーが含有される。
被めっき層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御がしやすい。
(溶剤)
被めっき層形成用組成物には、溶剤が含まれることが好ましい。
使用できる溶剤は特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
被めっき層形成用組成物中の溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御などがしやすい。
(重合性モノマー)
被めっき層形成用組成物には、スルホン酸基またはその塩を有する重合性モノマー(以後、重合性モノマーAとも称する)が含まれていてもよい。該重合性モノマーAを使用することにより、被めっき層の表面電位を調整することができ、結果としてめっきの析出がより促進されると共に、形成される金属膜(めっき膜)の密着性がより向上する。
重合性モノマーAとしては、式(1)で表される化合物が好ましく挙げられる。該化合物のスルホン酸基に無電解めっき触媒またはその前駆体が吸着しやすく、結果として金属膜の密着性がより向上する。
式(1)中、R10は、水素原子、金属カチオン、または第四級アンモニウムカチオンを表す。金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン(ナトリウムイオン、カルシウムイオン)、銅イオン、パラジウムイオン、銀イオンなどが挙げられる。なお、金属カチオンとしては、主に1価または2価のものが使用され、2価のもの(例えば、パラジウムイオン)が使用される場合、後述するnは2を表す。
第四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
なかでも、無電解めっき触媒の付着、および、パターニング後の金属残渣の点から、水素原子であることが好ましい。
10は、単結合、または、二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したX、Y、およびZで述べた二価の有機基と同義である。なかでも、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基が好ましく挙げられる。
11〜R13は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基が挙げられる。また、置換アルキル基としては、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、またはフッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、R11としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。
12としては、水素原子が好ましい。
13としては、水素原子が好ましい。
nは、1または2の整数を表す。なかでも、化合物の入手性の観点から、nは1であることが好ましい。
式(1)で表される化合物の好適態様として、式(2)で表される化合物が挙げられる。
式(2)中、R10、R11およびnは、上記の定義と同じである。
11は、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、またはフェニレン基を表す。なかでも、L11がアミド基であると、得られる被めっき層の重合性、および、耐溶剤性(例えば、アルカリ溶剤耐性)が向上する。
12は、単結合、2価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数3〜5)、または2価の芳香族炭化水素基を表す。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状であってもよい。
なお、L12が単結合の場合、L11はフェニレン基を表す。
重合性モノマーAの分子量は特に制限されないが、揮発性、溶剤への溶解性、成膜性、および、取扱い性などの観点から、100〜1000が好ましく、100〜300がより好ましい。
被めっき層形成用組成物中の重合性モノマーAの含有量は特に制限されないが、重合性モノマーAの含有量とポリマーの含有量との合計に対して、2〜30質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、めっき析出が促進されると共に、形成される金属膜(めっき膜)の密着性がより優れる。
(工程の手順)
上述した被めっき層形成用組成物を基板上に塗布する方法は特に限定されず、具体的な方法としては、スピンコート、デップコート、ダブルロールコータ、スリットコータ、エアナイフコータ、ワイヤーバーコータ、スライドホッパー、スプレーコーティング、ブレードコータ、ドクターコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、エクストロージョンコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアロールによる塗工法、押し出し塗布法、ロール塗布法等の公知の方法を用いることができる。
取り扱い性や製造効率の観点からは、被めっき層形成用組成物を基板上に塗布・乾燥させて、含まれる溶剤を除去し、ポリマーを含む組成物層を形成する態様が好ましい。
被めっき層形成用組成物の塗布量は、後述する無電解めっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.1g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
なお、本工程において被めっき層を形成するに際しては、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
(エネルギーの付与)
基板上の被めっき層形成用組成物にエネルギーを付与する方法は特に制限されないが、例えば、光(紫外線、可視光線、X線など)、プラズマ(酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、熱、電気、湿気硬化、化学硬化(例えば、酸化性の液体(過マンガン酸カリウム溶液)などによって表面を化学的に分解する)などの公知の方法を用いることができる。なかでも、露光処理または加熱処理が好ましく、露光処理が特に好ましい。
露光処理としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、Deep−UV光、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯などによる光照射等、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光、赤外線ランプ露光等があり、オゾン発生の少ないオゾンレスタイプもある。他に、放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線、g線、i線、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用することができる。なかでも、250nm〜450nmの露光波長で露光することが好ましい。
露光エネルギーとしては、10〜8000mJ程度であればよく、好ましくは100〜3000mJの範囲である。
加熱処理としては、一般の熱ヒートローラー、ラミネーター、ホットスタンプ、電熱板、サーマルヘッド、レーザー、送風乾燥機、オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥機、加熱ドラム等を用いることができる。
(被めっき層)
形成される被めっき層の表面粗さ(Ra)は、200nm未満である。上記範囲であれば、無電解めっきの面内ムラが減少し、フクレを軽減させることができ、金属膜の密着性を高めることできる。なかでも、100nm未満であることが好ましく、50nm未満であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、5nm以上であることが多い。なお、被めっき層の無電解めっき処理が施される領域が上記所定の表面粗さRaを有していればよい。
表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601(2001)に基づき、公知の測定機器(例えば、AFM)を用いて測定する。
得られる被めっき層の厚みは特に制限されないが、金属膜の基板への密着性の点から、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。
また、エネルギー付与を行う際に、パターン状にエネルギー付与を行い、その後公知の現像処理によりエネルギー未照射部を除去して、パターン状の被めっき層を形成してもよい。
[触媒付与工程]
触媒付与工程では、上記被めっき層形成工程で得られた被めっき層に無電解めっき触媒またはその前駆体を付与する。
本工程においては、ポリマー由来の相互作用性基がその機能に応じて、付与された無電解めっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。より具体的には、被めっき層中および被めっき層表面上に、無電解めっき触媒またはその前駆体が吸着される。
まず、本工程で使用される材料(無電解めっき触媒またはその前駆体など)について詳述し、その後該工程の手順について詳述する。
(無電解めっき触媒)
本工程において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられる。具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
無電解めっき触媒として、金属コロイド(金属粒子)を用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤または保護剤により調節することができる。
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき液への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき液に浸漬し、無電解めっき液中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層に付与することが好ましい。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数および触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
本発明で用いられる無電解めっき触媒またはその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、無電解めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、無電解めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
また、使用される無電解めっき触媒またはその前駆体としては、平均粒径が10nm以下の金属粒子(金属ナノ粒子)を使用することが好ましい。つまり、該平均粒径の金属粒子を被めっき層に付与することが好ましい。該金属粒子を使用することにより、後述する無電解めっき処理でのめっき析出性がより向上し、金属膜の密着性もより向上する。なかでも、該効果がより優れる点で、金属粒子の平均粒径が、5nm以下がより好ましく、3nm以下が特に好ましい。なお、下限に関しては特に制限されないが、合成上の問題から、通常、0.5nm以上である。
金属粒子の平均粒径の測定方法は特に制限されないが、例えば、公知の測定方法(TEM)で100個以上の金属粒子の粒径(直径)を測定して、それらを平均した値である。なお、金属粒径が楕円形の場合は、長径を測定し、得られた値を平均する。
(無電解めっき触媒液)
上記無電解めっき触媒またはその前駆体は、これらを溶媒に分散または溶解させた分散液または溶液(以後、適宜無電解めっき触媒液とも称する)の形態で使用されることが好ましい。
無電解めっき触媒液で使用される溶媒は、有機溶剤および/または水が用いられる。無電解めっき触媒液が有機溶剤を含有することで、被めっき層に対する無電解めっき触媒液の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よく無電解めっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
無電解めっき触媒液に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
(工程の手順)
無電解めっき触媒またはその前駆体を被めっき層に付与する方法は、特に制限されない。
例えば、上記無電解めっき触媒液(金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液)を調製し、無電解めっき触媒液を被めっき層上に塗布する方法、または、無電解めっき触媒液中に被めっき層が形成された基板を浸漬する方法などが挙げられる。
被めっき層と無電解めっき触媒液との接触時間は、30秒〜10分程度であることが好ましく、3分〜5分程度であることがより好ましい。
接触時の無電解めっき触媒液の温度は、20〜60℃程度であることが好ましく、30〜50℃程度であることがより好ましい。
無電解めっき触媒が付与された被めっき層の表面電位は特に制限されないが、後述する無電解めっき液の混成電位との差が0.1Vであるように調整される。なかでも、金属膜の密着性がより優れる点で、被めっき層の表面電位は−1.0〜−0.5Vが好ましく、−0.8〜−0.6Vがより好ましい。
無電解めっき触媒が付与された被めっき層(無電解めっき触媒を有する被めっき層)の表面電位の測定方法は、銅電極に被めっき層をディップ塗布によってコーティングし、無電解めっき触媒液に浸漬させ、無電解めっき触媒が付与された被めっき層を作製する。なお、無電解めっき触媒液として、金属イオンなどの無電解めっき触媒前駆体を含む液を使用した場合は、還元剤などを使用して金属イオンを金属に還元し、無電解めっき触媒である金属が付与された被めっき層を作製する。つまり、該工程で無電解めっき触媒前駆体を使用した場合、その前駆体を還元して得られる無電解めっき触媒を有する被めっき層の表面電位を測定し、無電解めっき液の混成電位との差を評価する。
その後、無電解めっき液中に上記銅電極を浸漬し、ポテンショスタットを用いて基準電極(Ag/AgCl電極)に対する酸化還元電位を測定することによって、無電解めっき触媒が付与された被めっき層の表面電位とする。
[無電解めっき工程]
無電解めっき工程は、無電解めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層と無電解めっき液とを接触させ無電解めっき処理を行い、被めっき層上に金属膜を形成する工程である。より具体的には、図1(C)に示すように、本工程においては、金属膜14が、被めっき層12上に形成される。
以下、本工程で使用される無電解めっき液について詳述し、その後該工程の手順について詳述する。
(無電解めっき液)
本工程で使用される無電解めっき液の混成電位は、上述した無電解めっき触媒が付与された被めっき層の表面電位との差が0.1V以下である。上記範囲内であることにより、得られる金属膜の密着性がより優れる。なかでも、その差が0.05V以下であることが好ましく、0Vであることが最も好ましい。
無電解めっき液の混成電位の値は、無電解めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層の構成により適宜設定されるが、還元剤の安定性の観点から、−1.0〜−0.6Vの範囲であることが好ましく、−0.9〜−0.7Vの範囲であることがより好ましい。
無電解めっき液の混成電位の測定方法は、銅電極を無電解めっき液中に浸漬し、ポテンショスタットを用いて基準電極(Ag/AgCl電極)に対する酸化還元電位を測定することによって混成電位とする。
本工程で使用される無電解めっき液の組成は特に制限されないが、通常、溶剤(例えば、水)の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。この無電解めっき液には、これらに加えて、無電解めっき液の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
なお、上記無電解めっき液の混成電位は、無電解めっき液中に含まれる、めっき用の金属イオンの還元反応と還元剤の酸化反応とが釣り合っている電位を意味する。
使用される金属イオンの種類としては、例えば、銅、すず、鉛、ニッケル、金、銀、パラジウム、ロジウムなどの金属イオンが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
使用される還元剤の種類としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、DMAB(ジメチルアミンボラン)、SBH(水素化ホウ素ナトリウム)などが挙げられる。
無電解めっき液中における還元剤の含有量は特に制限されないが、無電解めっき液の安定性に優れると共に、金属膜の密着性がより優れる点で、0.05〜1質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましい。
使用される安定剤の種類としては、例えば、マロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ビピリジンなどが挙げられる。
無電解めっき液は有機溶剤を含んでいてもよく、水に可能な溶媒であることが好ましく、例えば、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
無電解めっき液のpHは特に制限されないが、含有される還元剤の安定性の点から、10.5〜13.5であることが好ましく、11.5〜13.0であることがより好ましい。
(工程の手順)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程で実施される無電解めっきの方法は特に制限されず、従来公知の方法を実施できる。例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき液に浸漬して行う。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着または含浸した状態で無電解めっき液に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき液中へ浸漬させる。この場合には、無電解めっき液中において、無電解めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき液としても、上記同様、公知の無電解めっき液を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒またはその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒またはその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
無電解めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層の無電解めっき液への浸漬時間としては、5分〜1時間程度であることが好ましく、15分〜30分程度であることがより好ましい。
接触時の無電解めっき液の温度は、20〜60℃程度であることが好ましく、25〜40℃程度であることがより好ましい。
無電解めっきにより形成される金属膜の膜厚は、無電解めっき液の金属イオン濃度、浸漬時間、または、無電解めっき液の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2〜2μmであることがより好ましい。
ただし、無電解めっきによる金属膜を導通層として、後述する電解めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていることが好ましい。
[任意工程:電解めっき工程]
上記無電解めっき工程の後、形成された金属膜を電極とし、更に、電解めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電解めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
電解めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電解めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
また、電解めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、一般的な電気配線などに適用する場合、金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
[積層体]
上記工程を経ることにより、図1(C)に示すように、基板10と、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基を有する被めっき層12と、金属膜14とをこの順で備える積層体100(金属膜付き積層体)を得ることができる。
得られた積層体100は、様々な分野において使用することができ、例えば、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。
より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務機器、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料、多層配線基板、マザーボード、アンテナ、電磁波防止膜、時計等の電気・電子部品、および、通信機器等の用途に用いられる。
特に、金属膜と被めっき層の界面における平滑性が改良されたことから、例えば、装飾品(めがねフレーム、自動車装飾品、宝飾品、遊戯筐体、洋食器、水道金具、照明器具等)や、高周伝送を確保する必要がある用途(例えば、配線基板用、プリント配線基板用)等の種々の用途に適用することができる。
<任意工程:パターン形成工程>
必要に応じて、上記で得られた積層体に対して、金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状金属膜を形成する工程を実施してもよい。
より具体的には、図1(D)に示すように、本工程においては、金属膜14の不要部を除去することにより、パターン状金属膜16が、被めっき層12上に形成される。本工程において、基板表面全体に形成された金属膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望のパターン状の金属膜を生成することができる。
このパターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法(金属膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域をエッチング処理した後、マスクを除去して、パターン状の金属膜を形成する方法)、セミアディティブ法(金属膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域に金属膜を形成するようにめっき処理を行い、マスクを除去し、エッチング処理して、パターン状の金属膜を形成する方法)が用いられる。
サブトラクティブ法とは、形成された金属膜上にレジスト層を設けパターン露光、現像により金属膜パターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしてエッチング液で金属膜を除去し、パターン状の金属膜を形成する方法である。
レジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などの簡便性の点で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
より具体的に、図2にサブトラクティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、上記めっき工程(無電解めっき工程、または、無電解めっき工程および電解めっき工程)を行うことにより、図2(A)に示す、基板10と、絶縁性樹脂層22と、被めっき層12と、金属膜14とを備える積層体200を用意する。なお、図2(A)においては、基板10表面上およびその内部に、金属配線20が配置される。絶縁性樹脂層22、金属配線20は、必要に応じて追加される。また、図2(A)においては、基板10の片面に金属膜14が設けられているが、両面にあってもよい。
次に、図2(B)に示すように、パターン状のマスク24を金属膜14上に設ける。
その後、図2(C)に示すように、マスクが設けられていない領域の金属膜14を、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)により除去して、パターン状金属膜16を得る。最後に、マスク24を取り除き、本発明の積層体を得る(図2(D)参照)。
セミアディティブ法とは、具体的には、形成された金属膜上にレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属膜パターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして電解めっきを行い、レジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属膜をパターン状に除去することで、パターン状の金属膜を形成する方法である。
レジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電解めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
より具体的に、図3にセミアディティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、図3(A)に示す、金属配線20を有する基板10と、絶縁性樹脂層22と、被めっき層12と、金属膜14とを備える積層体200を用意する。
次に、図3(B)に示すように、パターン状のマスク24を金属膜14上に設ける。
次に、図3(C)に示すように、電解めっきを行い、マスク24が設けられていない領域に金属膜を形成させ、金属膜114を得る。
その後、図3(D)に示すように、マスク24を取り除き、凸部と凹部を含む凹凸状の金属膜114に対してエッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)を行い、凸部以外の凹部を除去し、図3(E)に示すようにパターン状金属膜16を備える積層体を得る。
なお、金属膜の除去と同時に、公知の手段(例えば、ドライエッチング)などによって、被めっき層を合わせて除去してもよい。
上記で得られたパターン状金属膜を有する積層体は、各種用途に使用することができる。例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の様々な用途に適用することができる。なかでも、配線基板(いわゆるプリント配線基板)として好適に利用できる。また、配線基板と使用する際には、必要に応じて、積層体上に絶縁層を設けてもよい。
本発明の積層体と絶縁層とを含む配線基板は、平滑な基板との密着性に優れた配線が形成でき、高周波特性も良好であるとともに、微細な高密度配線であっても、配線間の絶縁信頼性に優れる。
絶縁層としては公知の材料を使用することができ、例えば、公知の層間絶縁膜、ソルダーレジスト層などが挙げられる。
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1:ポリマーA)
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに、原料A47.4g、ピリジン22g、酢酸エチル150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加し、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去した。その後、カラムクロマトグラフィーにて、以下のモノマーM1を精製し20g得た。
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下65℃まで加熱した。そこへ、上記で得たモノマーM1:14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応溶液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54gを加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーA(重量平均分子量5.3万)を12g得た。得られたポリマーAの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマーAの酸価は3.9mmol/gであった。
得られたポリマーAの同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.8−8.1ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.3−3.5ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=30:20:50(mol比)であることが分かった。
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド22gを入れ、窒素気流下、60℃まで加熱した。そこへ、合成例1と同様の方法で得たモノマーM1:29.6g、アクリル酸(東京化成製)15g、V−65(和光純薬製)0.59gのN,N−ジメチルアセトアミド38g溶液を、6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド37gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.18g、DBU118gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応溶液に70質量%メタンスルホン酸水溶液116gを加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、以下の構造式のポリマーB(重量平均分子量4.2万)を20g得た。得られたポリマーBの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、および、滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマーBの酸価は5.7mmol/gであった。
得られたポリマーBをアセトンに溶解させ、IR測定機((株)堀場製作所製)にてKBr結晶を用いて測定を行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されず、シアノ基がポリマーBに含まれていないことが分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとして、アクリル酸が導入されている事が分かった。更に、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。重合性基含有ユニットに相当するピークが8.1−7.8ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.5−3.3ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットおよびカルボン酸基ユニットからなるポリマーが生成している事を確認した。
[実施例1]
[下地絶縁基板の作製]
ガラスエポキシ基板(商品名:FR−4、松下電工(株)製)上に、味の素ファインテクノ(株)製のエポキシ系絶縁膜(GX−13、45μm)を、0.2MPaの圧力で100〜110℃の条件で、真空ラミネーターを用いて加熱および加圧して接着することにより、電気的絶縁層を基板上に形成した。その後、170℃で1時間加熱処理を行い、該電気的絶縁層の熱層化を行い、基板A1を得た。
[被めっき層形成]
次に、後述する被めっき層形成用組成物Aを、厚さ1.0μmになるように基板A1上にスピンコート法で塗布し、その後、80〜120℃で乾燥した。
次に、基板A1上の被めっき層形成用組成物層に対して、露光機(紫外線照射装置、UVX−02516S1LP01、ウシオ電機(株)製)を用いて、波長254nmの紫外光を室温で2分間全面露光した(エネルギー量:5J)。
これにより、基板A1と被めっき層(厚み:0.1μm)を有する基板A2を得た。また、被めっき層の表面粗さRaは50nmであった。
なお、被めっき層の表面粗さRaを、JIS B 0601(2001)に基づき、AFM(S-image,エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を用いて測定した。
(被めっき層形成用組成物A)
・ポリマーA 3.1g
・重曹 2.0g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以後、AMPSと称する) 0.163g
[無電解めっき触媒付与]
基板A2を、クリーナーコンディショナー902(アトテックジャパン社製)にNaOHを加え、NaOH濃度を4質量%に調整した液に60℃にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。その後、上記処理が施された基板A2を、Pd触媒付与液であるアクチベーターネオガント834(アトテックジャパン社製)に室温にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。
[無電解めっき]
次に、上記処理が施された基板A2を、Pd還元剤であるレデューサーネオガントWA(アトテックジャパン社製)に36℃にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。なお、上記処理を施すことにより被めっき層には、平均粒径1nmのパラジウム粒子(無電解めっき触媒)が付与された。
その後、基板A2を、無電解めっき液であるプリントガントPV(アトテックジャパン社製)(pH:12.8、含有金属イオン:銅イオン、ニッケルイオン、還元剤:ホルムアルデヒド、還元剤の量:0.45質量%(液全量に対して))に室温にて30分浸漬して、被めっき層上に金属膜(めっき膜)を作製し、基板A3を得た。
[電解めっき〕
電解めっき液として、水1283g、硫酸銅5水和物135g、98%濃硫酸342g、36%濃塩酸0.25g、ET−901M(ロームアンドハース)39.6gの混合溶液を用い、ホルダーを取り付けた基板A3と銅板を電源に接続し、3A/dm2にて45分間電解銅めっき処理を行い、約20μmの金属膜を有する基板A4を得た。
(被めっき層の表面電位測定)
Cu電極を上記被めっき層形成用組成物A中に1分間浸漬し、Cu電極を取り出して80〜120℃で乾燥した。
Cu電極上の被めっき層形成用組成物層に対して、露光機(紫外線照射装置、UVX−02516S1LP01、ウシオ電機(株)製)を用いて、波長254nmの紫外光を室温で10分間全面露光し(エネルギー量:6J)、被めっき層で覆われたCu電極を得た。
得られた被めっき層で覆われたCu電極を用いて、上記[無電解めっき触媒付与]を行い、その後Pd還元剤であるレデューサーネオガントWA(アトテックジャパン社製)と接触させて触媒前駆体を還元し、被めっき層にPd触媒を付与した。
次に、Pd触媒が付与された被めっき層で覆われたCu電極を、無電解めっき液であるプリントガントPV(アトテックジャパン社製)に浸漬した直後の表面電位を測定した。なお、参照電極としてはAg/AgCl電極(BAS社製)を、表面電位の測定装置としてはポテンショスタット(ALS600、BAS社製)を使用した。
(無電解めっき液の混成電位測定)
Cu電極を、無電解めっき液であるプリントガントPV(アトテックジャパン社製)に浸漬した直後の電位(混成電位)を測定した。なお、参照電極としてはAg/AgCl電極(BAS社製)を、表面電位の測定装置としてはポテンショスタット(ALS600、BAS社製)を使用した。
(密着性評価)
基板A4を187℃で1時間加熱処理した。その後、基板A4を85℃、湿度85%の環境に24時間保管した。
保管後、基板A4の金属膜に10mmの間隔を開けて、平行に130mmの切り込みを入れ、その端部をカッターにて切り込みを入れ10mm立ち上げた。剥がした金属膜端部をつかんでテンシロン(SHIMAZU)を用いてピール強度を測定した(引張速度50mm/min)。以下の基準に従って、ピール強度を評価した。結果を表1に示す。なお、実用上、「◎」「○」であることが好ましい。
「◎」:ピール強度が0.8kN/m以上の場合
「○」:ピール強度が0.6kN/m以上0.8kN/m未満の場合
「△」:ピール強度が0.2kN/m以上0.6kN/m未満の場合
「×」:ピール強度が0.2kN/m未満の場合、または、金属膜に膨れが生じている場合
(めっき析出性評価)
上記[無電解めっき]において、基板A2をプリントガントPV(アトテックジャパン社製)に15分浸漬した時点で、得られた金属膜の膜厚が0.4μm以上の場合を「○」、金属膜の膜厚が0.2μm以上0.4μm未満の場合を「△」、0.2μm未満の場合を「×」と評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
AMPSの使用量を0.344gに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例1と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、40nmであった。
[比較例1]
AMPSを使用しなかった以外は、実施例1と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例1と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、30nmであった。
[比較例2]
AMPSの使用量を0.775gに変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例1と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。
[比較例3]
基板A2の被めっき層に対してプラズマ処理を行い、表面粗さRaを250nmにした後、[無電解めっき触媒付与]を実施した以外は、実施例1と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例1と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
以下の表1中、「AMPS使用量(質量%)」は、各実施例および比較例中での、組成物中での{AMPSの含有量(質量)/(AMPSの含有量(質量)+ポリマーAの含有量(質量))}を意味する。
上記実施例1〜2に示すように、本発明の製造方法により製造された金属膜は優れた密着性を示した。また、めっき析出性に関しても優れていた。特に、電位差が0.05V以下の場合、金属膜の密着性により優れていた。なお、実施例1および2に関しては、めっき析出性にも優れており、被めっき層を無電解めっき液中に浸漬する時間を短縮することにより、被めっき層へのダメージが軽減されたものと考えられる。
一方、電位差が0.1V超の比較例1および2に関しては、金属膜の密着性が損なわれていた。また、被めっき層の表面粗さRaが200nm以上の比較例3においても、金属膜の密着性が劣っていた。
[実施例3]
被めっき層形成用組成物Aの代わりに以下の被めっき層形成用組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例1と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。
(被めっき層形成用組成物B)
・ポリマーA 3.1g
・重曹 2.0g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
・スチレンスルホン酸 0.775g
[比較例4]
スチレンスルホン酸を使用しなかった以外は、実施例3と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、30nmであった。
[比較例5]
スチレンスルホン酸の使用量を12.4gに変更した以外は、実施例3と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、80nmであった。
[比較例6]
スチレンスルホン酸の使用量を3.1gに変更した以外は、実施例3と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。
[比較例7]
無電解めっき液であるプリントガントPV(アトテックジャパン社製)を以下の無電解めっき液Xに変えた以外は、実施例3と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。
(無電解めっき液X)
・蒸留水 859g
・メタノール 850g
・硫酸銅 18.1g
・エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩 54.0g
・ポリオキシエチレングリコール(分子量1000) 0.18g
・2,2’ビピリジル 1.8mg
・10%エチレンジアミン水溶液 7.1g
・37%ホルムアルデヒド水溶液 9.8g
以上の組成のめっき浴のpHは、水酸化ナトリウム及び硫酸で12.5(60℃)に調整した。なお、混成電位は−0.72Vだった。
[比較例8]
無電解めっき液であるプリントガントPV(アトテックジャパン社製)を以下の無電解めっき液Yに変えた以外は、実施例3と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。
(無電解めっき液Y)
・蒸留水 926g
・OPC T1 66ml
・OPC T3 110ml
・ホルムアルデヒド(35%) 10.7g
無電解めっき液のpH:12.5であり、混成電位は−1.02Vだった。
[比較例9]
無電解めっき液であるプリントガントPV(アトテックジャパン社製)を以下の無電解めっき液Zに変えた以外は、実施例3と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。
(無電解めっき液Z)
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬工業(株)製のホルムアルデヒド液(特級)である。なお、無電解めっき液Zの混成電位は−0.99Vだった。
[比較例10]
無電解めっき液であるプリントガントPV(アトテックジャパン社製)を以下の無電解めっき液Wに変えた以外は、実施例3と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。
(無電解めっき液W)
・蒸留水 774g
・ATSアドカッパーIW−A(奥野製薬工業(株)製) 45mL
・ATSアドカッパーIW−M(奥野製薬工業(株)製) 72mL
・ATSアドカッパーIW−C(奥野製薬工業(株)製) 9mL
・NaOH 1.98g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
なお、無電解めっき液Wの混成電位は−0.73Vだった。
以下の表2中、「スチレンスルホン酸使用量(質量%)」は、各実施例および比較例中での、組成物中での{スチレンスルホン酸の含有量(質量)/(スチレンスルホン酸の含有量(質量)+ポリマーAの含有量(質量))}を意味する。
なお、無電解めっき液としてプリントガントPV(アトテックジャパン社製)以外の無電解めっき液を使用した比較例では、各比較例における(被めっき層の表面電位測定)にて、プリントガントPV(アトテックジャパン社製)の代わりに各比較例で使用された無電解めっき液を使用して、各被めっき層の表面電位を測定した。
上記表2に示されるように、本願発明の製造方法に該当する実施例3の態様においては、得られた金属膜が基板に対して優れた密着性を示すことが確認された。
一方、被めっき層の表面電位と無電解めっき液の混成電位との差が0.1V超の比較例4〜10においては、金属膜の密着性に劣ることが確認された。さらに、めっき析出性にも劣っていた。
[実施例4]
実施例1で実施した[無電解めっき触媒付与]および[無電解めっき]の手順の代わりに、以下の[無電解めっき触媒付与X]および[無電解めっきX]を実施した以外は、実施例1と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。実施例3と同様に、(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った。結果を表3に示す。
なお、得られた被めっき層の表面粗さRaは、50nmであった。また、(被めっき層の表面電位測定)においては、以下の[無電解めっき触媒付与X]を実施し、かつ、プリントガントPV(アトテックジャパン社製)の代わりにスルカップPEAを使用して、被めっき層の表面電位を測定した。
[無電解めっき触媒付与X]
基板A2を、クリーナーコンディショナー902(アトテックジャパン社製)にNaOHを加え、NaOH濃度を4質量%に調整した液に60℃にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。その後、上記処理が施された基板A2を、Pd触媒付与液であるアルカップアクチベーターMAT−2(上村工業社製)に室温にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。
[無電解めっきX]
次に、上記処理が施された基板A2を、Pd還元剤であるアルカップレデューサーMAB−4(上村工業社製)に36℃にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。なお、上記処理を施すことにより被めっき層には、平均粒径2nmのパラジウム粒子が付与された。
次に、得られた基板を、アルカップアクセレレーターMEL−3−Aに1分間浸漬した。
その後、基板を、無電解めっき液であるスルカップPEA(上村工業社製)(pH:12.3、含有金属イオン:銅イオン、ニッケルイオン、還元剤:ホルムアルデヒド、還元剤の量:0.53質量%(液全量に対して))に室温にて30分浸漬して、被めっき層上に金属膜(めっき膜)を作製し、基板A3を得た。
表3に示すように、スルカップPEAを使用した場合も、所望の効果が得られた。
[実施例5]
実施例1で使用したポリマーAの代わりに2元系ポリマーであるポリマーBを使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、被めっき層上に金属膜を作製した。その際の、被めっき層の表面電位は−0.86Vであり、無電解めっき液の混成電位(−0.92V)との差は、0.06Vであった。また、被めっき層の表面粗さRaは、40nmであった。
上述した(密着性評価)および(めっき析出性評価)を行った所、実施例1と同様の結果が得られた。
[実施例6]
実施例1で得られた金属膜(銅めっき膜)を有する積層体に対し180℃/1時間の熱処理を行なった後、該積層体の金属膜表面に、ドライレジストフィルム(日立化成(株)製;RY3315、膜厚15μm)を真空ラミネーター((株)名機製作所製:MVLP−600)で70℃、0.2MPaでラミネートした。次いで、ドライレジストフィルムがラミネートされた積層体に、JPCA−ET01に定める櫛型配線(JPCA−BU01−2007準拠)が形成できるガラスマスクを密着させ、レジストを中心波長405nmの露光機にて70mJの光エネルギーを照射した。露光後の積層体に、1%Na2CO3水溶液を0.2MPaのスプレー圧で噴きつけ、現像を行なった。その後、積層体の水洗・乾燥を行い、金属膜上に、サブトラクティブ法用のレジストパターンを形成した。
レジストパターンを形成した積層体を、FeCl3/HCl水溶液(エッチング液)に温度40℃で浸漬することによりエッチングを行い、レジストパターンの非形成領域に存在する金属膜を除去した。その後、3%NaOH水溶液を0.2MPaのスプレー圧で積層体上に噴き付けることで、レジストパターンを膨潤剥離し、10%硫酸水溶液で中和処理を行い、水洗することで櫛型配線(パターン状金属膜)を得た。得られた配線は、L/S=20μm/75μmであった。
さらに、パターン状銅金属膜を有する積層体に対して、ソルダーレジスト(PFR800;太陽インキ製造(株)製)を110℃、0.2MPaの条件で真空ラミネートし、中心波長365nmの露光機にて420mJの光エネルギーを照射した。
次いで、積層体を80℃/10分間の加熱処理を施した後、NaHCO3:10%水溶液を、スプレー圧2kg/m2で積層体表面に付与することで現像し、乾燥した。その後、再度、中心波長365nmの露光機にて1000mJの光エネルギーを、積層体に対して照射した。最後に150℃/1hrの加熱処理を行ない、ソルダーレジストで被覆された配線基板を得た。
10:基板
12:被めっき層
14、114:金属膜
16:パターン状金属膜
20:金属配線
22:絶縁性樹脂層
24:マスク
100、200:積層体

Claims (7)

  1. 基板上に、無電解めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基および重合性基を有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物を塗布した後、前記基板上の被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、前記基板上に被めっき層を形成する被めっき層形成工程と、
    前記被めっき層に無電解めっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、
    前記無電解めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層と無電解めっき液とを接触させ無電解めっき処理を行い、前記被めっき層上に金属膜を形成する無電解めっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法であって、
    前記無電解めっき液の銅電極を用いて測定した混成電位と、無電解めっき触媒が付与された被めっき層の表面電位との差が0.1V以下であり、
    前記被めっき層の表面粗さRaが200nm未満である、金属膜を有する積層体の製造方法。
  2. 前記無電解めっき触媒またはその前駆体が、平均粒径10nm以下の金属粒子を含む、請求項1に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。
  3. 前記被めっき層形成用組成物がスルホン酸基またはその塩を有する重合性モノマーをさらに含む、請求項1または2に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法より得られる、金属膜を有する積層体。
  5. 請求項4に記載の積層体中の金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状金属膜を形成する工程を備える、パターン状金属膜を有する積層体の製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法より得られる、パターン状金属膜を有する積層体。
  7. 請求項6に記載のパターン状金属膜を有する積層体と、前記パターン状金属膜を有する積層体上に設けられる絶縁層とを備える配線基板。
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