JP2012229924A - 過酸化脂質の定量分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】顔の皮膚表面に存在する過酸化脂質の量を効率的かつ精度良く計測するための定量分析方法を提供する。
【解決手段】顔の所定部位における過酸化脂質の量を測定する方法であって、顔の所定部位に密着させ皮膚表面にある表皮物質を吸着させた濾紙をメタノールに浸漬し、その後、該メタノールにジフェニル−1−ピレニルホスフィンを加え、生成したジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシドの蛍光強度を測定することにより過酸化脂質の量を測定することを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、顔の所定部位における過酸化脂質の量を測定するための過酸化脂質の定量分析方法に関する。
近年の研究によれば、紫外線が皮膚に過度に照射されると、フリーラジカルや活性酸素を生じ、これらの物質が皮脂を酸化することで過酸化脂質が生成されることが報告されている。過酸化脂質は、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎、乾癬などの皮膚疾患に関与すると考えられており、いったん過酸化脂質が生成されると、酸化は連鎖的に進行し、皮膚表面に刺激を与えるだけにとどまらず、さらには分解して反応性の高いアルデヒドとなり、それが角層のタンパク質と結合することでカルボニル基を有する酸化タンパク質が生成し角質層の奥まで入り込んで細胞にダメージを与える。これらの角層酸化タンパク質は、皮膚の加齢に伴う老化や光老化を引き起こす要因であると考えられている。
このように過酸化脂質は、ヒトの皮膚の老化現象に影響を与えることが知られており、顔の表皮に存在する過酸化脂質の量を精度良く測定し、過酸化脂質の量と皮膚の各種現象との関連性を検討することは皮膚科学分野において重要な課題となっている。
顔の表皮に存在する過酸化脂質を測定する分析方法として、本発明者らは高感度の測定が可能なジフェニル−1−ピレニルホスフィンを蛍光試薬に用いた蛍光検出法を採用するが、過酸化脂質を抽出する過程においては、従来より、所定の溶媒を用いて被験者の皮膚から表皮物質を抽出し、かかる溶媒を濃縮乾固し、その後濃縮乾固物を再溶解して分析が可能な程度にまで過酸化脂質の濃度を高め(濃縮乾固及び再溶解)、これを検体とする方法が確立されていた。
しかしながら、本発明者らの研究から溶媒の濃縮乾固過程においては一部の過酸化脂質が分解し、前記の分析方法では過酸化脂質の定量に誤差が生じる可能性があることが確認された(図2)。また、濾紙で表皮物質を吸着しこれを溶媒で抽出する際、使用する溶媒によっては蛍光強度に誤差が生じ得ることも確認された(図3)。
さらに、表皮物質(過酸化脂質)の量は、個人による差が大きく(図1)、過酸化脂質の定量においては多数の被験者を測定する必要があるが、抽出溶媒の濃縮乾固等の操作には長時間を要することから、定量分析を効率的に行うことは困難であった。
本発明は、過酸化脂質を測定する定量分析法として蛍光検出法を採用し、従来における抽出方法の問題点を解消しつつ、特に顔の皮膚表面に存在する過酸化脂質の量を精度良く、効率的に測定するための定量分析方法を確立するものである。
特開2002−122593号公報
本発明は、顔の皮膚表面に存在する過酸化脂質の量を精度良くかつ効率的に測定するための定量分析方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、顔の皮膚表面にある表皮物質を濾紙で吸着し、かかる濾紙をメタノールに浸漬し、その後該メタノールにジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加え、生成したジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)の蛍光強度を測定することにより、効率的かつ精度良く過酸化脂質の量を分析できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、顔の所定部位における過酸化脂質の量を測定する方法であって、顔の所定部位に密着させ皮膚表面にある表皮物質を吸着させた濾紙をメタノールに浸漬し、その後、該メタノールにジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加え、生成したジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)の蛍光強度を測定することにより過酸化脂質の量を測定することを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法である。
さらに本発明は、メタノールが、純度が99.8質量%以上で、水分含有量が0.05質量%以下、不揮発成分の含有量が2質量ppm以下であることを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法である。
さらに本発明は、額部分の過酸化脂質の量を分析するときは、表皮物質を吸着させた濾紙を、濾紙1cm あたり200〜1000μL、特に好ましくは200〜400μLに相当する量のメタノールに浸漬することを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法である。
また本発明は、鼻部分の過酸化脂質の量を分析するときは、表皮物質を吸着させた濾紙を、濾紙1cm あたり200〜1600μL、特に好ましくは200〜500μLに相当する量のメタノールに浸漬することを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法である。
また本発明は、頬部分の過酸化脂質の量を分析するときは、表皮物質を吸着させた濾紙を、濾紙1cm あたり200〜1200μL、特に好ましくは200〜600μLに相当する量のメタノールに浸漬することを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法である。
さらに本発明は、濾紙を浸漬した後のメタノールを濃縮乾固することなく、これにジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加えることを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法である。
さらに本発明は、濾紙の厚さが、0.18〜0.23mmであることを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法である。
本発明の定量分析方法によれば、顔の所定部位における過酸化脂質の量を精度良く定量分析することができる。
また、所定の純度を有するメタノールで過酸化脂質を抽出することにより、蛍光強度の誤差を無くし精度良い定量分析が可能となる。
顔の所定部位に応じて所定量のメタノールで抽出することにより定量限度を上回る濃度の抽出溶媒を得ることができ、溶媒を濃縮乾固することなく分析することができるため、過酸化脂質が分解することなく正確に測定することができる。また、溶媒を濃縮乾固及び再溶解する工程が不要であることから分析時間を短縮することができ、効率的な定量分析が可能となる。
顔に密着させる濾紙を所定の大きさにすることにより、顔の皮膚に密着させやすく、また、メタノールに浸漬する際には、小さい容量のバイアル瓶の底に沈め、必要最少量のメタノールに浸漬することができる。このため、溶媒中の過酸化脂質の濃度を高めるための濃縮乾固・再溶解工程を採る必要が無く、精度の高い分析を行うことができる。
女性パネル24名の過酸化脂質濃度を示すグラフ 抽出溶媒の濃縮乾固が回収率に及ぼす影響を示すグラフ 抽出溶媒が過酸化脂質濃度に及ぼす影響を示すグラフ 抽出溶媒の量が回収率に及ぼす影響を示すグラフ 顔の各部位における過酸化脂質の濃度を示すグラフ 定量分析の工程を示す概念図
本発明の実施の形態を以下に詳しく説明する。
表皮物質の採取は、濾紙を皮膚に密着させ、濾紙に表皮物質を吸着させることにより行う。濾紙で表皮物質を採取することとしたのは、濾紙が実験用素材であり品質が一定であること、皮膚への影響が少ない天然素材であるセルロース繊維からなること、また、表皮物質を吸着しやすく、採取した表皮物質を溶媒を用いて抽出する際、溶媒と相互作用を生じることが少ないためである。
濾紙は、化学分析に使用できるものであれば、特に限定されるものではなく、市販品を使用することができる。市販品としては、例えばADVANTEC社製の濾紙「定量分析用5種C」があり、これを所定の大きさに裁断して使用することができる。
顔に密着させる濾紙の面積は、測定する部位や目的に応じて、0.1〜10cm の範囲で適宜選定することが好ましい。また、実施例に示すように、過酸化脂質を採取した濾紙を1cmあたり、額部分であれば200〜1000μLの溶媒に浸漬(鼻部分であれば200〜1600μL、頬部分であれば200〜1200μLの溶媒に浸漬)することにより、蛍光検出法による定量分析が可能な濃度の過酸化脂質の抽出溶媒を得ることができる。
このようにして抽出溶媒を得ることで、一般的に行われる溶媒の濃縮乾固及び再溶解を行う必要が無く、定量分析の効率化を図ることができると共に、濃縮乾固による過酸化脂質の分解が無く、精度の高い定量を行うことが可能となる。
また、実施例で濾紙を短辺5mm×長辺10mmの長方形の切片としこれを2枚使用したのは、小型のバイアル瓶の中で溶媒に浸漬することを可能とするためである。すなわち、小型のバイアル瓶の口頸の内径は約7mmであり、底面直径は約15mmであることから、バイアル瓶の底面付近にある少量の溶媒に浸漬することができるよう、口頸を通過し底に沈めることができる形状としたものである。このように少量の溶媒に浸漬することにより、本発明者らが用いた蛍光検出法の定量限界値である0.06ppmを超える濃度の抽出溶媒を濃縮乾固及び再溶解することなく得ることが可能となる。
このように顔に密着させる濾紙は、バイアル瓶の大きさに応じて適宜裁断し、これを複数枚使用するなどして表皮物質を採取することが好ましい。
濾紙の厚さは、0.18〜0.23mmであることが好ましい。0.18mmより薄いと、表皮物質を十分に吸着できない可能性がある。一方、0.23mmより厚いと浸漬するメタノールの量を増やす必要があるため検体の濃度が低くなり、分析に必要な濃度の検体が得られない可能性がある。
濾紙で吸着した過酸化脂質は、濾紙をメタノールに浸漬し、メタノールにより抽出する。メタノールは、純度が99.8質量%以上で、不揮発成分の含有量が2ppm以下、水分含有量が0.05%以下であることが好ましい。このような純度の高いメタノールは、本発明で使用するジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)やジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)等の試薬との相互作用が無く、正確な分析を行うことができる。また、皮膚に密着する濾紙及びバイアル瓶を予め純度の高い前記のメタノールで予め洗浄しておけば、さら精度の高い分析値が得られることが期待される。メタノールの純度に関する試験結果は実施例にて詳述する。
純度が99.8質量%以上で、不揮発成分の含有量が2ppm以下、水分含有量が0.05%以下のメタノールは、環境分析用として市販されているものを使用することができ、例えば、和光純薬工業株式会社製の環境分析用メタノール(純度が99.8質量%以上、水分含有量が0.05質量%以下、不揮発成分の含有量が1質量ppm以下を規格とする)や純正化学株式会社製の製品名「メタノール5000」(純度が99.8質量%以上、水分含有量が0.05質量%以下、不揮発成分の含有量が2質量ppm以下を規格とする)等を使用することができる。
表皮物質を吸着させた濾紙をメタノールに浸漬し、表皮物質(過酸化脂質)を抽出したメタノールにジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加えて過酸化脂質のヒドロキシペルオキシドと反応させ、得られた蛍光化合物ジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)の蛍光強度を測定することにより定量する。
ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)は、過酸化物と化学量論的に反応して、蛍光性を有するジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)を生成する。ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)は蛍光性を有しないが、ジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)は蛍光性を有するので、その蛍光強度を測定することにより、検体中の過酸化物の量を測定することができる。
ジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)を検出するには、励起光として352nmの光を照射し、380nm付近にピークを有する蛍光のピーク強度を検出する。蛍光強度(ピーク強度)は、市販の適当な検出器を用いて測定すればよい。蛍光強度は被検体の過酸化脂質の存在量を表す指標として評価することができる。
本発明で用いるジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)自体は公知化合物であり、市販品などから容易に入手できる。市販品としては、例えば、同仁化学社製「DPPP」等がある。本発明では検体中の過酸化脂質と反応させ、得られたジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)の蛍光強度を定量することにより検体中にある過酸化脂質の量を測定する。ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を含む試薬の形態は特に限定されず、固体でも液体(溶液、懸濁液など)でもよい。液体の場合には適当な溶媒(好ましくはジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)が一定の溶解度を示す有機溶媒など)に溶解または懸濁することによって試薬を調製することができる。
図1は、女性被験者24名の顔から採取した過酸化脂質の濃度を示すものである。濾紙(ADVANTEC社製「定量分析用5種C」)を短辺5mm×長辺10mmの長方形の切片に裁断し、この切片2枚を被験者の顔に密着させて表皮物質を吸着させた後、メタノール200μLに浸漬・抽出した。このようにして得た抽出液を検体とし、これにジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)(同仁化学社製「DPPP」)を加え、生成したジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)の蛍光強度を測定したものである。尚、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)は、HPLC用メタノールに2.5mg/Lになるように溶解したものであり、フローインジェクション分析システムを用い、検体とシステム中で反応させた。
図1に示すように過酸化脂質の量は個人差が大きく、皮膚の各種現象との関連性について有意性のあるデータを取得するためには相当数のサンプルが必要である。本発明者らは、高感度で測定できる蛍光検出法を採用するが、本法による定量限界は0.06ppmであるため、この数値を下回る被験者は定量データとして採用することはできない。
検体の濃度を高める方法としては、従来より抽出溶媒(メタノール)を減圧下で遠心し、溶媒を揮散させて濃縮乾固し、これを再溶解して対象物質の濃度を高め(濃縮乾固及び再溶解)、これを検体とする方法がある。
しかしながら、過酸化脂質を抽出した抽出溶媒(メタノール)を濃縮乾固することにより含有する過酸化脂質が分解され、定量測定値に誤差が生じる可能性があることを見出した。図2は、標準の過酸化脂質を濾紙にしみ込ませ、これをメタノールに浸漬して抽出し、抽出したメタノールを濃縮乾固せずにジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加えてジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)を生成し、蛍光強度を測定して回収率を測定したものと、抽出したメタノールを減圧下で遠心し溶媒を揮散させて濃縮乾固し、これをメタノール100μLで再溶解して検体とし、これにジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加え、回収率を測定したものとを比較した結果である。尚、標準の過酸化脂質とは、リノール酸メチルに紫外線(UV)を照射してその一部を過酸化脂質とし、溶媒に溶解し、濃度を検定したものである(過酸化脂質濃度0.77ppm)。また、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)は、メタノールに溶解し、2.5質量ppmのメタノール溶液として添加した。
図2の結果から、溶媒の濃縮乾固過程により、過酸化脂質の回収率は低下することが確認された(回収率約60%)。この結果から、過酸化脂質の定量分析において、その精度を高めるためには抽出溶媒を濃縮乾固することなく、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加えることが重要であることがわかる。
つぎに、過酸化脂質を抽出する溶媒の種類について検討した。
図3は、各溶媒で洗浄した未使用の濾紙(1cm)を、新たな各溶媒1mLに24時間浸漬し、浸漬後の各溶媒にジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加え、蛍光強度を測定したものである。ここで、特級メタノールとは、純度99.8質量%以上で、水分含有量が0.1質量%以下、不揮発物が5質量ppm以下のメタノール(和光純薬工業株式会社製の試薬特級メタノール)であり、環境分析用メタノールとは、純度が99.8質量%以上で、水分含有量が0.05質量%以下、不揮発成分の含有量が1質量ppm以下のメタノール(和光純薬工業株式会社製の試薬特級メタノール)である。尚、図3中、「洗浄なし」とは、濾紙を溶媒で洗浄することなく、環境分析用メタノールに浸漬したものである。
図3の結果から、未使用の濾紙でありながら、アセトンあるいは特級メタノールで洗浄し浸漬すると、浸漬したこれらの溶媒からは過酸化脂質の含有を示す蛍光が検出された。また、洗浄しない未使用の濾紙も浸漬した環境分析用メタノールから過酸化脂質の含有を示す蛍光が検出された。一方、環境分析用メタノールで洗浄し浸漬すると、浸漬した環境分析用メタノールからは蛍光は検出されなかった。このことから、環境分析用メタノール(純度が99.8質量%以上で、水分含有量が0.05質量%以下、不揮発成分の含有量が1質量ppm以下のメタノール)で濾紙を洗浄した後、環境分析用メタノールで抽出することにより、濾紙あるいは溶媒に由来する過酸化脂質濃度の分析誤差を解消することができることが確認された。
これらの結果から過酸化脂質の定量分析の精度を高めるためには、抽出溶媒を濃縮乾固することなく定量分析すること、また溶媒としては所定の純度のメタノールを使用することが重要であることが確認された。そして抽出溶媒を濃縮乾固せずに定量分析するためには、抽出した過酸化脂質の濃度が本発明者らが用いた蛍光検出法による定量限界濃度(0.06ppm)を超える必要がある。このため、濾紙から過酸化脂質を抽出するための溶媒の適切な量について検討した。
図4は、濾紙(短辺5mm×長辺10mmの長方形の切片2枚)に標準品(0.77ppm)10μLを吸着させ、これを環境分析用メタノールに浸漬し、標準品の回収率を測定した結果を示すものである。
図4に示すように、200μL以上の溶媒で抽出することにより、標準品を100%回収できたが、100μLでは数値のバラツキが大きく、回収率が低い結果であった。この結果から、抽出する溶媒(環境分析用メタノール)の量としては200μL以上が必要であることが確認された。尚、100μLで回収率が低い原因としては、濾紙が溶媒に完全に浸漬せず、標準品を十分に抽出できなかったことによるものと考察される。
つぎにヒトの各部位(額、鼻、頬、内腕)における過酸化脂質の量を測定した。
「試験方法」
定量分析の概略工程を図6に示す。
1)濾紙を裁断して得た短辺5mm×長辺10mmの切片を複数用意し、環境分析用メタノールで洗浄し乾燥した。
2)採取する各部位を洗浄し、2時間経過後に、濾紙の切片2枚を測定部位の皮膚に長辺が向かい合うように並べ、50gで荷重し表皮物質を採取した(各部位につき被験者3名)。
3)採取後は、小型のバイアル瓶に濾紙切片2枚を収容し、環境分析用メタノール200μLを添加して過酸化脂質を抽出した。
4)抽出溶媒は、濃縮することなくジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP)を加え、過酸化脂質との反応により生成したジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシド(DPPP=O)の蛍光強度を測定した。
「試験結果」
図5に示すように、額部では、平均で約0.3ppmの過酸化脂質を測定することができた。また、最も少ない被験者は、約0.12ppmであった。この数値は、溶媒200μL中の濃度を示すものであり、蛍光検出法による定量限界値は0.06ppmであることを考慮すると、例えば溶媒の量を400μLとしても、すべての被験者のデータが取得可能である(最少の被験者の濃度であっても0.06ppmを超えることができる)。さらに溶媒の量を1000μLとしても、平均の過酸化脂質量であれば定量可能であり、このことは、被験者の過酸化脂質量が正規分布に従うと仮定すると、約半数の被験者のデータを取得できることを意味する。したがって、図4の結果とあわせると、額部の過酸化脂質を定量するためには、濾紙1cmあたり環境分析用メタノール200〜1000μLで抽出することが好適であり、特に200〜400μLで抽出することが好適であることがわかる。
鼻部についてみると、過酸化脂質の濃度は平均で約0.48ppmである。また、最少値は約0.15ppmである。額部と同様の考察をすれば、鼻部の過酸化脂質を定量するためには、濾紙1cmあたり環境分析用メタノール200〜1600μLで抽出することが好適であり、特に200〜500μLで抽出することが好適である。
頬部では、過酸化脂質の濃度は平均で約0.36ppmである。また、最少値0.18ppmである。前記と同様の考察をすれば、頬部の過酸化脂質を定量するためには、濾紙1cmあたり環境分析用メタノール200〜1200μLで抽出することが好適であり、特に200〜600μLで抽出することが好適である。
尚、内腕部の過酸化脂質は、蛍光検出法における定量限界値より低い濃度であるため、本発明による定量分析法により定量することは不適であることが確認できる。

Claims (7)

  1. 顔の所定部位における過酸化脂質の量を測定する方法であって、顔の所定部位に密着させ皮膚表面にある表皮物質を吸着させた濾紙をメタノールに浸漬し、その後、該メタノールにジフェニル−1−ピレニルホスフィンを加え、生成したジフェニル−1−ピレニルホスフィンオキシドの蛍光強度を測定することにより過酸化脂質の量を測定することを特徴とする過酸化脂質の定量分析方法。
  2. メタノールは、純度が99.8質量%以上で、水分含有量が0.05質量%以下、不揮発成分の含有量が2質量ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の過酸化脂質の定量分析方法。
  3. 額部分の過酸化脂質の量を分析するときは、表皮物質を吸着させた濾紙を、濾紙1cm あたり200〜1000μLに相当する量のメタノールに浸漬することを特徴とする請求項1又は2記載の過酸化脂質の定量分析方法。
  4. 鼻部分の過酸化脂質の量を分析するときは、表皮物質を吸着させた濾紙を、濾紙1cm あたり200〜1600μLに相当する量のメタノールに浸漬することを特徴とする請求項1又は2記載の過酸化脂質の定量分析方法。
  5. 頬部分の過酸化脂質の量を分析するときは、表皮物質を吸着させた濾紙を、濾紙1cm あたり200〜1200μLに相当する量のメタノールに浸漬することを特徴とする請求項1又は2記載の過酸化脂質の定量分析方法。
  6. 濾紙を浸漬した後のメタノールを濃縮乾固することなく、これにジフェニル−1−ピレニルホスフィンを加えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の過酸化脂質の定量分析方法。
  7. 濾紙の厚さが、0.18〜0.23mmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の過酸化脂質の定量分析方法。
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